『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
何度目かもわからない、地を揺るがす轟音が再び鳴り響く。
されどそれは今までの音とは違い、破砕音を含んで───
…そしてその時は来た。アリスやセリアはポーションを飲んでmpを回復させて準備は万端。
唯一の気掛かりでもある私は後3分で魔術制限が解除される。
最初は逃げ回って耐えてから…そこからが本当の意味での最後の戦いだ。
何回同じ事言ってるんだと思わなくもないけど…
…本当にこれで終わりにしよう!
────いざ!尋常に勝負!
まあ逃げ回るから正々堂々なんて微塵も考えてないけど。
魔銅の波は何故か私を狙って流れて来る。
余所見してていいの?魔銅君。
相手は私だけじゃないんだよ?
この戦場にはこの世界最高の魔法使い【大賢者】…アリスがいるんだよ?
「…『
アリスが次々に魔術を放ち魔銅の波の進行方向を制御する。
「…『
アリスの手札の中でも最大威力(と数字的に推測される)魔術2つが魔銅の波に直撃する。
するとみるみる移動能力が落ちていくのがわかる。
因みに私とセリアは事前に『
あれ?『
まあいっか。
辺りに雪が降り積もり幻想的な光景へと近付く。
しかし実情は見た目とは正反対であり、敵対する者を容赦なく極寒の地に閉じ込め活動を強制停止させるまさに地獄の様な場所である。
その状態でも魔銅の波は止まる事を知らない。
この極寒の地獄の中でも自らの分身に最大の損害を与えた相手を取り込もうと動く。
損害等は最初から考慮などしていないだろう。
本来魔銅に知性と呼べるものは存在しないだろう。
だが、それは動き続ける。
表面が気温と魔術によって停止させられ、表と裏を入れ替えて這いつくばり進む。
その様はまさに原始的な生き物の様だった。
そして滅ぼされたくない…いや、生き足掻く醜いその『生物』は幾年にも及ぶ経験により『本能』で最善策を考案する。そして魔銅は『生物』となり『知性』を獲得する。
その影響か形は損害を減らすために表面積が小さくなる様に変形して行き…球形へと変化する。
しかし魔銅は気付いていない。
己の損害を減らす事に気をとられて…
最大の危険因子を放置し時間を与えてしまっている。
そしてその危険因子は今、まさに…
アリスに気を取られてくれたお蔭で簡単に3分間凌げた。
それが何を意味するかって?
単純な話。
私が『
それすなわち、魔法と魔術が解禁されるってこと!!
アリスばっかに執着してないでこっちも見ろ!ってね。
「科学と狂気に紐解かれる
「『
詠唱を終えた。
さあこっからは私のターンだ!
攻守逆転、形勢逆転。
言い方は幾らでもあるけど、数分前とは違って私が獲物を狩る番だ!
昨日のエネステラと違って金属を取り込んでhpを回復する訳でも瞬時に傷を修復する訳でもない。
あれは
だから思う存分金属
魔銅が表面から
そしてお返しに大きめの標識をぶつけて少し距離を取る。
多少余裕があるし前々から確かめてみたかった事を試してみる。
話は変わるがファンタジー系統のゲームでは敵に状態異常を与える方法として大きく分けて2つある。
一つはポーション等のアイテムを使うことだ。
そして二つ目は自分のスキル…例えば魔眼とか魔法等で与える方法がある。
何故かわからないけど、この世界には『状態異常魔法』みたいのが存在しない。
いや、私が知らないだけであるのかも知れないけど…少なくとも一般的じゃない。
なら私のイメージが全てを支配するこの『
最初はポーションを再現しようと思ったけど色や味、そして何よりも原理が不明なので再現を断念した。
ならここで二つ目の方法に注目しよう。
そもそもこの『
イメージは相手の周辺に
渦巻く魔法の元を自分の意のままに操り、作り替えていく。
言葉にすると難しいけど、やってること自体は『
というかそもそも『
状態異常の定番と言えば毒や麻痺だけど金属相手に聞くとは思えないから今回は火傷にしようと思う。
集めた
魔銅から更に距離を取りイメージを固めるために目を瞑る。
銅が…金属が燃えるイメージ…工芸とかで赤く溶けている金属を思い出して……火…炎…焔…
よし!イメージが固まった。
喰らえ魔銅!
私は目を開けて魔法名を宣言する。
即興ではなく、明確なイメージを以てこの世界に顕現させる。
その猛々しい炎の名は───
「想像補完魔法『
その言葉と同時に空間が軋み、世界が創り変わる。
どこからともなく現れてきた熱量はその
余りの熱量に自然発火が起き、離れた場所にまで余熱が広がる。
直前に氷の世界が形成されてなかったならば、この余熱だけで世界を焼き焦がし、使用者諸とも消え去ることになっていただろう。
…mpが50000も持ってかれた。
でもその甲斐あって魔銅は見事に大炎上してる。
あれってhpとかあるのかな?
もしなかったら何を以て戦闘終了か判らないから嫌なんだけど…
身悶える様な動きをする魔銅。
元々氷点下100℃に曝されて温度が下がっていた所に火炎を付与された魔銅。
当初は下がり続けていた温度が上昇して何も感じない…むしろ助かると言いたげに元凶に棘を伸ばしていたが…徐々に異変に気付く。
20℃や30℃になった位ではその温度上昇が止まらない。
100℃や200℃になっても尚止まらない。
元凶である存在に棘を伸ばすが一向に当たらない。
気付くとその温度は1000℃を超え…銅の融点を超えようとしている。
赤く変色し所々が溶け落ちながら魔銅は最後の力を振り絞り、それを道連れにしようと考えた。
──この温度だ。触れたら倒せる。それで終わりだ。
そう考え棘を伸ばそうとするが既に棘は伸ばせなく代わりに液体と化した魔銅が少し飛び散るだけ。
ならばと直接動いて触れに行こうとするが、動く度に体が崩れて行く。
──何故?なんで崩れるの?まだ液体にはなりきってないはず…
魔銅は気付いていない。
直前まで極端に温度が低い状況に立たされていた事。
そして金属というのは急激な温度変化によって脆く崩れやすくなる事を。
液体になったらどうする?動けなくなるだけだ。何時かはこの魔法も途切れる。その時がチャンスだ。
そう考えながら液体になった。だが温度上昇はいまだに止まらない。1500℃を超えても、2000℃を超えても…
余熱だけで地面が融解し辺りは灼熱の地獄となる。数分前まで全てが凍てつく極寒の地であった事など忘れてしまったかの様に。
そして2500℃を越えた辺りで魔銅は更なる異変に気付く。
体が消失していってる?なんで?
違う。消失してる訳じゃない。蒸発しているんだ。どうする?あそこまで分解されたら意識なんて保てない…本当に消滅してしまう。昔の様に復活なんて出来ない。
そう判り焦って動こうとするも時既に遅し。
液状になり沸騰も起こしている体では動くどころか形を保つことすら難しい。
遥か昔に町を滅ぼし、国を滅ぼした醜悪な化物にして『不運の被害者』であり人工物でもある魔銅はその意識が拡散され分散されバラバラに壊れながら最後に何を思ったのだろうか。
もはや水溜まりと言っていいほど小さくなり、その水溜まりすらも僅か数秒で霧散するだろう。
そんな状況で魔銅は最期に自身を自らを純粋な
縛る相手がいなくなり集まる場所がなくなった魔法は霧散し…あれほど上昇していた温度は間も無くいつも通りに戻り…空に浮かぶ月も聳え立つ摩天楼も消え…全てが元に戻った大地に…
僅かばかりの銅が残る。
一人の少女が呟く。
「これで本当に終わり。遺物は回収するから…二度と復活しないでよ」
そうして少女は残った銅を自らの鞄に入れる。
そしてその場を無言で立ち去る。
そしてその場で戦闘が行われた証…それどころか魔銅が存在した証すら何もなくなり…
いつか魔銅という存在は永遠に忘れ去られるのだろう。
目撃者が忘れ…当事者が死に…滅した者が死んだ後…
その時が本当の魔銅の終わりなのかもしれない。
その終わり方はまるで人類と同じ様であり…皮肉にも魔銅が『憧れた』境地に、消滅後に辿り着く。
こうして世界から魔銅が……太古の人が残した遺物が一つは消える。
それは一見悲しい事に思えるがそれも又歴史なのだろう。
同じ様に『消え去った』歴史は無数に存在する…その仲間が一つ増えただけだ。
残る遺物は、後
──天より堕ち、地に託された最後の希望。
──未来の人類の環境を、整えるために造られた巨大な建造物群とその選定
──生ける希望を、その望みを懸けて行われる『試練』。
──全ての