『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
「これで本当に終わりですね」
セリアが少し寂しげに言う。
…魔銅はあんな被害を出したから同情する余地もないし、そもそも金属なんだから……
でも、それでも謎の寂寥感がある。
何か求めていたものと違う。
柄にもなく、そう思ってしまう。
本来なら、『よし!これで一件落着!無事解決だね!』みたいな感じになると思ってたんだけど…
「…ハナ…お疲れ様…」
アリスが気遣ってくれる。
けど私は何もしてない…いや、何もしてないは言い過ぎか。
でも私がやったことなんて精々『
その後は、聞こえない筈の悲鳴を幻聴していた。
…敵を目の前にそんな余裕を抜かすなんてあり得ないんだけどね。
「ありがと。それですぐ帰る?」
この後どうするか。
この街にまだ泊まるのか…それともすぐに帰るべきなのか。
学校があるから早く帰った方が良いんだろうけど…
でも疲れたからすぐに動きたくない、っていうのもある。
それに散々走ったから明日以降筋肉痛になりそう。
だから
「そうですね…第二王女様は…」
セリアがそれに返答し…
「…仰々しい」
アリスがそれを遮る。
…まあそれもそうか。
さすがに死線を乗り越えてそれでも肩書き呼びっていうのは違和感だよね。
…実の所としては、今初めてアリスがセリアのことを本心から認めたってことだろうけどね。
思慮深い…悪く言えば人を信用しないアリスの悪い所が出てる。
あれだけ『認めた』なんてこと言いながら…って私がとやかく言うことでもないか。
「え?」
「…その呼び方仰々しいからやめて…」
「え?じゃあ…アリス様?」
「…それでいい」
セリアの性格的に『アリス』って呼ばせるのは無理だと悟ったのか特に引き下がることもなく了承する。
雰囲気を変える様にコホン、と咳払いをしてからセリアが話を続ける。
「それでアリス様、ハナさん、どうしましょうか」
セリアが改めて今後の予定を決める。
「…申し訳ないけど、私が決めさせてもらう」
アリスが形だけの謝罪をして私達の予定を告げる。
まあ私達二人…というか少なくとも私はアリスの立てた予定に逆らうつもりも反対するつもりもない。
この世界に来たばっかりの異世界初心者が自分勝手に行動したらハチャメチャになるのはわかりきってるからね。
素直に隠居…はしないけど、アリスに従うよ。
「セリアはそれでいいの?」
私が良くてもセリアが良くない可能性っていうのは普通にあるし、何ならセリアは伯爵令嬢なんだからティーミール家なりの未来設計図があるっていうこともあり得る。
立場的にアリスに文句を言いにくいかもしれないけど…もし異論とか不満があるなら私が出来る限り交渉して譲歩をもぎ取るつもり。
アリスがそんなこと言うなら私、この国から出てくから!みたいな感じで言えば簡単に譲歩してくれるんじゃないだろうか。
そんな簡単にはいかないかな?
まあどちらにせよセリアの返答次第。
「私は別に構いませんよ」
何やら
…そうそう、王命とかいう奴。
それでアリスは滅多に王命を出さないからこなせたら箔が付く…らしい。
まあセリアの言い方的に建前っぽいけどね。
「まず、二人には学院を近い内に飛び級してもらう」
……あ、ほんとにそうなるんだ。
セリアも絶句してるけど良いの?それ。
「あの学院の飛び級制度は施行されたことがないから、飛び級さえ出来れば
ここでの上手く行くっていうのは学校が自由登校になることだろうなぁ。だから貴族としての仕事も…って、え?
飛び級制度の施行回数0?
つまり前人未到の天才達になれってこと?
「大丈夫、ハナと私がいれば簡単な話」
おーい、え?うん?
然り気無く私が天才みたいになってるけどそんなことないよ?
「ちょっ、アリス。それ無理じゃ…」
「ハナは何だかんだ言いながら出来るから問題ない。今までの行動を思い返して」
みゅん…
私は反論出来ずに黙るしか出来なかった。
そんなこといっても私は凡人だから………
…自分でも流石に無理があるってわかるわ。
異世界転移に巻き込まれてエネステラを二体倒して貴族と宮廷魔術師になって第二王女と親しくなる…流石に凡人だって言い切れない要素が増えすぎ。
よし、これから私は天才だ!!
…アリスにメンタルを木っ端微塵にされそうだからやめとこ。
精々、ミニ天才位が…いや、非凡人位にしとこう。
「まあ取りあえずは飛び級…だね…」
やる気無さげな、でも信頼を感じさせる言葉でアリスは締める。
昔ならこんな『抜けた姿』を見せなかっただろうな……あれ?
「結局この後帰るの?」
話を原点回帰させる。
「…悩み処ではあるけど…休む」
あっ、最終的にそうなるんですね。
「…後、ハナは宮廷魔術師団員の引き締めをお願い」
え?
どうやら宮廷魔術師団員は最近調子に乗ってるから何とか改善して欲しいらしい。
いや、それはいいけど私に頼むことなくない?シルクエスさんとかいるでしょ?
ああ、その引き締めとやらで『配下』を作れ、と。
なるほどなるほど…理解だわ。
つまり、私は貴族に成り立てで配下や関連者が少ない。
だからこの慢心更正機会をフルに活用して『自分の配下』を作ってこい、ってことか。
アリスも良く考えるなぁ…
◇
というわけで戻って参りました、『木漏れ日の大地』。
予想外に2日連続で泊まることになったわけだけど…まあそれはさておき。
流石にこの体力で料理っていうのは
うまうま。
一応人前だからか、アリスとセリアは貴族モード…つまり食事中は黙る方針らしい。
一人で喋るほど悲しい人でも、知らない人に話しかけられる程コミュ
黙々と食べる名前知らない魚は美味しいなぁ。
あ、ウェイトレスさん。お水下さいな。
え、お酒?いらないですよ。
お酒でやらかしたことあるんで、あはは。
…喋りたい、というか何か悲しいからこんな感じで喋りたい欲を抑える…って、うん?
「ガスロさん?」
ガスロさんってのはチンピラに見える一般優秀冒険者パーティーのリーダーだ。
その厳つい見た目から初見だと幼女関係の犯罪者に見えなくも…唯の偏見だわ。
まともな視線で見れば、無愛想だけど優秀な冒険者みたいな感じかな?
「ああ?ドゥルジの嬢ちゃんじゃないか」
え、誰それ。どっかの宗教の悪神じゃん…あ。
そういえば前回の私が、独断偏見の
「ガスロさん、すみません。ドゥルジっていうのは偽名で…」
多分いい人だろうし本名教えてもいいよね。
「そうだろうなとは思ったんだよ。名前を呼んだ時の反応が遅れてたからな」
まじですか…そんな事気付けるの流石冒険者だわ。
「騙していたのは本当にごめんなさい。本名は花奈片瀬と言います」
名前から名字の順番で名乗るのが普通な場所で片瀬花奈って名乗るのもあれだから名乗り方を改めてみた。
「偽名に原型がないんだが…見た目と言葉遣いに反して案外腹黒いんだな」
お、私のこと知らないっぽい。
まあそりゃそうか。成り立てほやほやの新人貴族の名前を覚えてるのなんてそれこそ貴族位しかいないだろうし。
というかこの世界の人って口説きというか女性の扱い上手くない?
あ、別に上手くない。普通ですか。
つまり私の男性との会話経験が少なさ過ぎて感覚がバグってるだけ。
うーん、悲しみ。
…そんなに腹黒い?
というか腹黒さだったらそこで魚を頬張ってる王女様の方が何段階か上だよ?
序でに言っておくとそこで野菜を頬張ってる方は善人の塊みたいな感じだし…
まあそんな思いを全部胸の中に隠して…
「そんなことないですよ」
その一言に集約する。
「それはそうと昨日はありがとな!」
昨日…昨日…?
なんかやったっけ。
ああ、色々やってたわ。
今日昨日は魔銅の印象が強すぎてそれ以外の印象があんまないんだよなぁ。
でも誉められて悪く思う程ひねくれてないから単純にうれしみ。
「どういたしまして、こちらこそ庇って下さりありがとうございます」
今思い出したけど、一回ガスロさんに庇われてたんだよね。
というわけでお礼をしておく。
お互いがお互いを尊重して感謝しあう。
へいわなせかいだぁ。
「そんな嬢ちゃんを見込んで少しお願いしてもいいか?」
私を見込んで?
簡単かつすぐに終わるものならいいけど…
難しいやつは単純に私が嫌だし、時間かかる奴は明日王都に帰る以上無理。
「内容を聞かない以上なんとも言えないですね」
ガスロさんは手を合わせて丁寧にお願いしてくる。
「模擬戦してくれないか?」
……予想以上に軽い話だった。
てっきり冒険者としての依頼かなんかを手伝ってくれとかだと…というか、それよりも、だ。
「私で良いんですか?」
そう、それだよ。
私は別に剣の技術があるわけでも戦い方が上手いわけでもない。
唯魔法と魔術でごり押ししてるだけだから…
それに戦い方を磨きたいならアリスの方が適任だと思う。
まあ許可してくれるかは別として。
「ああ、嬢ちゃんが良いんだ」
そのセリフは別の機会に言って欲しかったな、っと。
そこまで求められて断るってわけにもいかないか。
それに私自身も嫌な訳じゃない。
「二人共、良いよね?」
口では答えてくれないけど首肯してくれたからOKってことだ。
「それじゃあ行きましょうか。ガスロさん」
私は立ち上がりながらそう声をかける。
「今からで良いのか?明日でも…」
「早い方がそちらも良いでしょう?さあ、行きますよ」
アリスとセリアから誰だお前みたいな視線を感じるけど無視無視。
『
ステータス半減とmp激減…まあハンデとして丁度いいでしょう…なんてね?