『少女世界攻略記録』   作:100110110011(2)の民

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67◇『少女異世界攻略記録』

 

 

場所は移り、街から少しだけ離れた空き地に着く。

ガスロさんのパーティーメンバーやアリス、セリアも来てる。

 

さて、それじゃあやりますか。

何でガスロさんが私と戦いたがるかはわからないけど…まあいいか。

 

ポーションも少し飲んで使用可能mpはぴったり10000。

全力からは程遠いけど…まあいいか。

 

「それじゃあ始めましょうか。そちらからどうぞ」

 

「おう、それじゃあ遠慮なく!」

 

そう言うとガスロさんはかなり速い速度でこちらに迫ってくる。

 

「『舞踏城(タンゼンシュラウス)』!」

 

6分100倍。

これで消費mpは600。

だから残り9400で…まあまあまあ。

 

その有り余るaglでガスロさんの攻撃を避け続ける。

けどこれだけじゃあ幾らノーダメージでも防戦一方だから…この2つを試してみよう。

 

『魔法更始:詠唱組成』

詠唱をし発動する現象を明確に言葉にする事で消費mpを軽減もしくは効果を増大させる。

 

《生誕金属》

魔銅製の剣をmpを1000消費し作成可能。6時間後自動消失。

 

ちなみに剣の性能は悪くない。

str+500を誇るつよつよ剣だ。

 

「古より受け継がれし剣よ!我が手に継承されよ!《生誕金属(グラウンド)》」

 

右手に『純白の十字教会(イノセンス・クレルモン)』、左手に『グラウンド』を構え相手を迎え撃つ。

 

今までは流したり避けたりしてたガスロさんの剣を真っ向から弾く!

 

舞踏城(タンゼンシュラウス)』による高いaglと剣でブーストしたstrでようやく弾くけるんだから…ガスロさんのstrはかなりの物なんだろうね。

 

「急に力が強くなった…!その剣の仕業か!」

 

ちなむところ、この剣には隠し機能があるけど…まあそれは見せるわけにはいかない。

それまですると模擬戦じゃなくて殺し合いになっちゃうからね。

 

というわけで改めて正式ステータスどーん。

 

─────

魔銅剣『グラウンド』

str+500

《焼身転化》

自身のhpとmpを1000削り3秒間のみ自身の周囲10mの気温を1000℃まで引き上げる。又これにより生ずる熱は外部には効果を及ぼさず使用者にも効果を及ぼさない。

─────

 

更に言うと、今hp1000削られるとhpが0になって自動で『死帯享楽(ファイナル・リゾート)』が発動する大惨事だからっていうのもある。

 

 

 

 

…さて、そろそろか。

事前に五分経ったら本気でやってくれって言われたから…

 

「神域『科学式論理体系の世界(ロジカル・ワールド)』」

 

さて、根比べだ。

私は左手の中で溶かされ消えていく剣を眺めながらそんなことを思う。

 

私の装備するD.E.Iは溶け落ち、されどその防具の持つ機能により修復される。

ぎりぎり修復速度の方が勝ってるからこうなってるけど、もし負けてたら壊れてたのかも…怖っ。

 

使い始めて丁度30秒。

それはつまり私達二人がこの神域に踏み入れてから30秒が経ったことを示す。

まだ効果時間が30秒少し残ってた筈の『舞踏城(タンゼンシュラウス)』の効果が消え失せ、途方もない喪失感に見舞われる。

 

そんな私よりも、ガスロさんの方が状況は酷い。

立ち上がれなくなり、地面に倒れ伏すガスロさん…違うな。

立ち上がろうとしても力が入らない、か。

 

「終わりでいいですか?」

 

これ以上は不味いと思ったからそう尋ねる。

神域は原理不明かつ消費なしの超強力な技だけど、何にダメージを与えてるのかがわかりにくいのが対人戦闘で使用を躊躇う要因。

まあ強い人相手ならばんばん使うけどね。

 

「あ…ああ、すまないな。降参だ」

 

解除解除っと。

余り良い勝ち方じゃないけど…まあギリギリ及第点だと思う。

色んな縛りがあったからね。

 

「それで…何か掴めましたか?」

 

私なんかと模擬戦して何が良いんだろうか。

それが気になって質問してみる。

それにガスロさんも本気を出していたわけじゃないだろう。

私が魔銅剣のあれを使えなかったのと同じでガスロさんにも模擬戦では使えない奥の手はあるだろうしね。

これでCランクの実力を見誤っちゃいけない。

Cランク相手でも無双出来るんだとか変なことは考えない。

 

「ああ…少しだがな」

 

まじですか。

私なんて『魔法更始:詠唱組成』便利だなぁ、とか『グラウンド』意外と使い道多そうだなぁ、とかそれぐらいの感想しか出てこないのに。

 

得られたものを全部聞くのも手の内を話させてる様で気が引けるからやめとく。

 

「そういえばガスロさん」

 

「どうした?嬢ちゃん」

 

折角ここまで親しくなった?んだ。

ちゃんと言っておかなきゃね。

 

「私、貴族に…」

 

「ああ、貴族令嬢ってことか。言葉遣い的にそうだと思ったよ」

 

いや、微妙に違う。

 

「…最近なりました。ちなみに宮廷魔術師第六席です」

 

あ、黙っちゃった…というよりは固まっちゃった。

まあ今まで伯爵本人レベルに地位がある人にタメ口どころか気軽にお願いとかしてたわけだし…しょうがない、のかな?

 

「す、すいません宮廷魔術師様…」

 

「別に前の口調で良いですよ?私は気にしませんから」

 

何なら私もこの敬語モドキみたいな口調を辞めたいところ。

なんか辞め時を見失っちゃったんだよね…

 

そこで見てる人の内、一人は伯爵令嬢だしもう一人はあの第二王女だって言ったらどうなるんだろう。

 

ふと、そう思ったけど思うだけに留めておいた。

別に大事(おおごと)にしたいわけじゃないからね。

 

「そうは言わましても…」

 

お、これは良い機会なのでは?

 

「私も敬語やめるからおあいこでどう?」

 

渋々、苦虫を噛み潰した様な表情で首肯する。

 

「ガスロさんはどうしてそんなに貴族を?」

 

流石に怖がり過ぎでは?

そう思った私は直接本人に訊いてみる。

 

「いや、昔オルンクっていう貴族に騙されてな…」

 

「なるほどね…あ、もう大丈夫だよ」

 

「どういうことだ?」

 

「私がその貴族を何とかしてあげるし、最悪後ろ楯様が何とかしてくれる。多分私の友人とか言えば上手く行くよ」

 

「どうして俺にそこまで…」

 

どうして…か。

善人や聖人なら人を助けるなんて当然のことです、みたいな事を言うんだろうね。

でも残念、私は醜い醜い貴族の子な上、あの腹黒天才王女の親友だ。

そんな利益の出ないことするわけない。

 

「気にしないでいいよ。唯、『貸し一つ』ってことでいいよ。…貴族っぽいでしょ?」

 

まあその『貸し』を返して貰う機会が来るかは知らないけどね。

そう言って私…とセリア&アリスは街へと向かう。

 

「…そういうことかよ」

 

そうガスロさんが呟く。

そしてその後に小さな声でこう呟くのも同時に聞こえた。

 

「……ありがとな」

 

 

貴族に向かって『ありがとな』なんて不敬だ!…なんてね。

 

 

 

というわけで帰って参りました宿!

お風呂に入って、寝間着に着替えて、ベッドに入るだけ!

 

「ふぬわぁ~疲れたね…」

 

私の気の抜けた声が宿の部屋に響く。

見知った人しかいないとはいえ少しだけ恥ずかしい。

 

「本当に疲れました…」

 

そりゃあセリアは元々箱入り娘だから余計こんな事態に巻き込まれて疲れるだろうね。

 

…アリスが黙り混んでる。

いや、アリスが黙ること自体は全然珍しくないししょっちゅうあることだから気にしなくてもいいんだけど…

 

「アリス、どうしたの?」

 

私達の会話を聞いてるっていうよりは、どちらかというとなにかを思案している感じの表情。

 

「…………ん。少し気になっただけ」

 

それにいつもより少しだけ話し始めるまでの時間が長い気がする。

 

「私達に話せることでしたら話してみたらどうでしょうか」

 

「ほら、話すついでに判ったりすることもあるじゃん?」

 

言うまでもなく、上が私で下がセリアの言葉である…

え、そんなわけないって?

万に一つ…盛ったわ、億に一つ(くらい)は可能性があると思ったんだけど…

 

まあいいや、そんなことよりも本題はアリスのお悩み相談だ。

 

「…ありがと…」

 

運良くというか都合良くというか、私達にも話せる内容だったらしく布を編むように少しずつ言葉を紡いでいく。

 

「…昨日、エネステラ…でてきた…」

 

そうね、なんだっけあれ…名前が出てこない。

その後すぐ合体して魔銅化物になったっていう印象しかないから…

 

あれ、あれだよ。あれ…ここらへんまで出てきてるんだけど…

 

「…変質合金ラプコズミック…」

 

アリスが心を読んだかの様に言ってくれる。

でも本当に印象薄くない?まあいいや。

 

「それがどうしたの?」

 

まだ倒せてなかったとか?でも確かにD.E.Iは出たし…

 

「早すぎる」

 

「そういうことですか…確かにおかしいですね」

 

なるほど、それは早すぎる…って何が?

自分の記憶書庫からエネステラ関連の物を引っ張り出す…あ、これか。

 

『地下暴走って言うのは王国というかここら一帯全体で2ヶ月に1度程度、長い時は半年起こらない時もあるが、そのくらいの頻度で起こる自然災害みたいなものだ。

今回みたいに王都で起こることは滅多にないがな。

それで強いやつ…つまり『エネステラ』が地下から今回の様に出てくる』

 

これは初めてエネステラ関連の事件に巻き込まれた…つまりあの融合人形(エフェミルドール)とのゴタゴタの後にメルケルトさんから言われた言葉。

 

それでアリス達が引っかかってるのは『2ヶ月に1度』ってところか。

融合人形事件は、私が来てから数日だから今回のこれまで二週間ちょっと。

それは確かに2ヶ月の誤差だとは考えにくいなぁ…

 

「…ハナ、何かわかる?」

 

私がエネステラ関係で持ってる情報はほぼない。

それこそ『エネロジスティクス』が『エネステラ』を作ってて王都地下に巨大研究施設があるくらい。

別に今早くなる理由は知らないはず。

 

「残念ながら力になれなそう」

 

「…」

 

「これからより一層エネステラに気を付けなくてはいけませんね」

 

解決策…というか妙案が見つからなかったからか何となくお開きみたいな雰囲気になる。

…久しぶりに異世界脳内会議でも開く?

でも今疲れてるしなぁ…それに情報はほぼゼロだし。

 

ふむぅ…

 

5分位思考の海に沈んでいると疲労による眠気に気付く。

まあ時間も時間だし私も寝るか。

 

というかセリアはもう寝ちゃってるよ。

まだ5分ちょっとしか経ってないのに…

まあ、ある意味予想通り…アリスは寝てないけど。

 

「…どう?」

 

私と目が合ったアリスがそう訊いてくる。

 

「魔(どう)だけに?」

 

私はそう答えて反対を向く。

そして私はセリアを起こさない様に小さな声で誰に向かってでもなく呟く。

 

「今日もお疲れ様でした。お休みなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

『この異世界がどうか』

アリスが訊きたかったのはそういうことだろう。

慣れない環境、慣れない法則、見知らぬ人々、見知らぬ文化。

それら全て含有した異世界に、別に望んだ訳でもないのに跳ばされた私。

 

そんな私をアリスは心配してるんだと思う。

つまらなくないか、不安じゃないか、…っていう風に。

 

 

正直に言えば不安も恐れもある。

今日の魔銅球体との戦闘だって『炎焔の束縛(フレイム・ピラー)』が効かなかったら、というかそもそも発動しなかったらどうなっていたのか。

 

これから先、貴族になって権力争いとかしなきゃいけないのか。

 

不安も心配も恐怖もあるけど…

 

でも、私には仲間も親友もいる。

だから、私はこの異世界に永住するのも最悪、良いかなと思い始めてる。

まあそれでも帰る方法は探すけどね。

 

 

だから、この世界を攻略していこう。

最奥まで、最深まで、最高まで、最果てまで、全部全部探索しつくして100%攻略(コンプリート)しよう。

 

それが無責任に帰ることになる私の責任の取り方。

森羅万象全てを知ることはできないかもしれない。

でもそれは必ずしも完全攻略の不可を示すわけじゃない。

 

ここが現実(かくう)異世界(おとぎばなし)だから。

仲良くしたい人と仲良くなり、遊びたい人と遊び、付き合いたい人と付き合う。

 

現実(ゲーム)ってそんなもんでしょ?

 

 

それが私の──いや、私なりの『異世界攻略記録』だ。

 

 

 

 

 

 

 

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