『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
68◇英雄凱旋を告げる爆音ファンファーレ!!
◇
…朝。
私は漲る力を深呼吸と共に体の外へ発散していく。
うーん、いい朝。ちなみに時間帯としてはかなり早い。
それこそ日の出前だ。
「セリア、おはよう」
そんなタイミングで丁度起きたセリアに声をかけつつ私は持ってきた…もとい鞄に入ってる服に着替える。
さて、気を取り直して今日も1日頑張って行きましょう、っと。
泊まっていた宿を後にして、王都へ向かう道を歩く。
ところで今更だけど何で歩くの?
「アリス、馬車とか使わないの?」
ほら、王族とか貴族って馬車みたいな移動手段に頼ることが多いじゃん。
それに態々歩いていく必要もないよね。
「…使ってもいいけど…どうせこれの方が速い…」
ちなみにアリスが言う『これ』は『
この中でaglが一番遅いセリアでさえaglが10,000を超えるこの優秀魔術によって穏やかに歩いてる様に見えるけど、その実かなり速い。
それこそ肩で風を切る感覚を思いっきし体感できる位。
空気抵抗、空気抵抗…私の物理化学の知識源であるおばあちゃんは時間の都合なのかなんなのか高校範囲の途中までしか教えてもらえなかったから空気抵抗の式は知らない。
何か式が存在してるってことだけは知ってるんだけどね…
◇
さて、突如始まったインターバル走に文句を言わせて欲しい。
…理屈的にはわからなくもないのよ、わかりたくないけど。
私の『
それで何をとち狂…じゃなかった。どう気が触れたのか『…2分走って10分休めばいい』ってほざいた王女がいたわけよ。
確かにそうよ。
しかもその2分も全力疾走するわけじゃなくてちょっと速めのジョギングぐらいのペースだから本当の意味でのインターバル走ではないのよ。
でもこんな体育会系みたいなことしなくていいじゃん…
というわけで現在、n回目の休憩なう。
あ、勿論nは自然数ね…って誰に言ってるんだろう。
「はぁ…はぁ…」
私の体力が
──隠さなくていい人間関係っていいな……
…なんて強がっちゃったり。
さて、私はどうにかしてこのインターバル地獄から逃げださなきゃいけないわけだ。
どうすれば……
そう思って鞄を漁ってると2つの時計が手に当たる。
赤と青の時計…これどこのやつだっけ?
ああ、無限迷宮産か。
反魔銅薬複製装置のために周回した時の副産物だったっけ。
時計…時計…時計ってことは時間関係だよね?
本来の時計なら時刻調節ボタンにあたる所を押したら疲労が吹き飛んだりしないかな。
ポチっと。
私は何の気なしに赤の時計のボタンを押す…もとい捻る。
ちなみにアリスとセリアからは見えない角度で押してる。
バレたら面倒なことになる可能性もあるからね。
え?考えなしだって?何か事故ったらどうするのって?
……疲れてて考えてなかっ…てないよ?
うん、大丈夫大丈夫。
ほら、結果的にはオーライだし。
私は突如として沸き上がってきた焦燥に対して使用結果を突き付けながら落ち着く。
───────
『
再使用まで後…7184秒
───────
7184秒…だいたい2時間ってとこか。
本来この時間なら後
っていうことはもしかして
…一応『
ふむむ…使った人物が保持してるCTの内、一番長い奴を3時間減少ってところか。
もしかしたら割合減少かもしれないけど…まあわからない。
それに今回は幸い?にも12時間経過してから使ったけど本来『
まあもうないものを確かめても仕方ない。
赤の時計は押したら壊れたし…青は今使う必要もないでしょ。
さて、後は二人にバレない様に…
「…ハナ、なにしてるの?」
アリスがジト目で見てくる。
最早ここまで行くと尊敬の念だわ。
「ちょっとした実験をね。これわかるでしょ?」
「…迷宮産時計…」
凄い色々略してるけど伝わってるなら僥倖僥倖。
「これの赤をさっき使ってみた」
「…」
あ、どうなったか言え、ってことですねわかります。
ここで変な演技をして……面白そうかも。
ちょっとだけやってみようか。
「特になにも起こらなかったよ。いつも通り私は…」
私の何もないという言葉に、興味を失くしかけたアリスが思わず振りかえる様な言葉…
「神様に感謝してるし」
…なんてね。
我ながら
いやぁ…やっぱり私、演技のセンスが──
「『
ちょっ、まっ、寒っ。
「アリス、ストップ!違う、違うから!冗談!」
え、止まらないんだけど?
これ永久保存版人間剥製作成ルート?
待っっ!
「ごめっ!冷た…くない?」
あ、感覚が麻痺して…眠くなって……
「『
なんだろう。体も暖かくなってきて…あ、お迎えが──
「熱っっつ!」
ひとしきり騒いでアリスを見ると、いつもの言語化不能な表情をしてた。
あっ、これ最初から気付いてたやつだ。
セリアが心配したんですよ、的な表情で此方を見ている…
お、『
agl増やして逃げればいける…!
「『
あれ?mpが三人分…あっ!
さっきまでの癖で三人分使っちゃった。
アリスが
やば、死んだかも。
───日本人奥義『
◇
そんな感じで私達一同はすこぶる平和に王都に帰…りたかった。
そう、それはだいたい後1時間歩けば王都に着くっていう頃。
まあそれは私の体力が棺桶に片足どころか全身ドップリ浸かってるっていうことでもあるんだけど…
「…ここで待ってて」
「どうしてですか?もう少しで到着しますのに…」
「…馬車を待つ…一連の出来事を
「え?じゃあ…」
そこまで言いかけた時、丁度とてもおおきい馬車が来た。
あ、ローズさんが乗ってる。迎えに来たのかな?
「只今参上致しました。お待たせしてしまい誠に申し訳御座いません」
相変わらず懇切丁寧な敬語を使うのでそれを
…宥めるって何だっけ。
ローズさんによるとだいたい15分後位に正門に着くからそのタイミングで外に向かって手を振ったりファンサービスみたいのをすればいいみたい。
そう思うと元の世界のアイドルとかって大変だったんだなぁ。
というわけで正門に着いた。
「カタセ様!顔をお見せになって下さい!」
窓の外からそんな感じの声が聞こえ始める。
仕方ない。アリスにこないだ話した様に私はずっとこの世界に関わり続けるんだからこれくらいのファンサはしないとね。
私の承認欲求が満たされて…っていうと見栄えというか言い方があれだから…私を求める声があり、嬉しくなってくる。
…あんま変わらない?まあいいや。
顔を出し歓声に答える様に声を出す。
「皆!集まってくれてありがとう!後わたしの事はハナでいいですよ!」
「わかりました!ハナ様!」みたいな声が聞こえてくる。あれ?ハナで良いって言ったよね?
本来は魔術か何か使って見世物をしたいけど生憎魔法は…うん?良く考えたらもう21時間経ってるじゃん。
それはつまり…?
よし!一発ド派手なのやりますか!
ローズさん曰く城に着くまでに30分位かける予定らしい。なら色々演出できるでしょ。
「此処は私の望む世界ではない…」
「ならば此処を我が世界へと変化させる…」
「科学よ!論理よ!私のために…」
「
「そして今を以て此処こそが…」
「欺瞞でも仮初めでもない…正真正銘私の世界!」
「
「科学と狂気に紐解かれる
ここまでを小声で詠唱する。今回は広い方が良いので100mで使おう。
「『
ちなみに『
何時もの月が浮かび…今回はビル群はなしで。
流石に住宅や建物に被害が出るとヤバいから…
代わりと言ったら何だけど、上空にカラフルな彗星みたいのを大量に散らす。
彗星と言ってもまあまあ大きいメタンハイドレートに色んな金属をくくりつけてそれごと燃やして炎色反応を起こしてるだけ。夢もロマンもあった物じゃない。
メタンハイドレートの構造とかあんま知らないから、この演出地味にmp使う。
というか『
夢希望がなくても王都の人達は喜んでくれてるしいいか。
それにしても我ながら綺麗な演出だなぁ…
今度自分だけで観賞…いや、それだと『
あの時計を集めるっていうのも視野にいれとこうかな。
というわけで城に着いたので最後に彗星を集めて衝突させ良い感じに濁したタイミングで月を…つまり夜の状態を解除した。
一応『
というかいつも『月』がこの魔法の象徴みたいになってたけど別になくても発動出来るからね…
あ、ポーションうまー。
◇
王城に入って馬車から降りて向かった先は謁見室だった。
まあ正確に言うなら入る前に身支度を整えられたし、沢山の侍女達に服を取り替えられていい感じに着飾らさせられた。
しかし前回と違って色んな貴族が左右に控えている。
アリスから作法自体は聞いているけどミスらないか不安。
…「こんな小娘が…」「どうせ媚を売った…」
そんな話が何処からともなくひそひそと聞こえてくる。
良いのかな?ここ謁見室だよ?まあまだ国王はいないしギリギリセーフなんだろうな。
勿論私は気に入らない。
でもここで変な事しても面倒になるだけだしここは我慢…我慢…
「胸は慎まし…」
…後でアリスにチクっとこ…うん。勝手に破滅しとけよ。
おっといけない。掃き捨てる様な汚い言葉遣いが出てしまった。これからこういう場も増えるんだからなるべく抑えないと…
「第二王女様に取り入っただけの愚か者が…」
お前こそ愚か者だろこの野郎!!
危うく喉から声が出るとこだった。
というかいいの?
今、お前の上に爆弾作れるし、なんなら『
◇
……国王の登場だ。妙に
尚実際はアリスの
ゴホン!
…何でもない。
「カタセハナ!此度の活躍を評し正式に宮廷魔術師第
ちなみにこの国王の言い方だと今初めてなった、みたいな言い方だけど書類上は昨日の内にはなってた。
え?それ以前はって?
唯の男爵…ですらなかったわ。その位を貰うのもこの授与式だわ。
…もしかして私おもいっきり平民だった?
なのにセリアとかアリスにため口…うん、気にしないことにしよう。
「ははっ…有り難き幸せです。今後も精進して行きます」
「そしてこの功績を以て子爵に任命する」
ふぬ?
聞き間違いじゃなかったら磁石…じゃなかった。
子爵って聞こえたんだけど…
「そして領地として元セルグヌ領の統治を任せる」
…あれ?
そんな話あった?
情報のダブルパンチを貰い混乱したまま謁見は終わり、部屋に返された。
あれ?セリアとアリスはどうしたんだろう?
「ローズさん。セリアとアリスはどこに行ったんですか?」
「愚妹は家に返しました。第二王女様は御自身の部屋に戻っていると愚考しますが何上あの方の行動はわかりません故御容赦下さい。お望みとあらば愚妹をお呼びしましょうか?」
1会話に「愚」って文字が3回も入るのか…
時間は…もう夕方か…なら呼ぶのも悪いかな。
「いや、大丈夫」
…地味に演出とかで疲れてるし寝ようかな。
…いや、折角『
少しだけ遊ぼうっと。善は急げだ!
(アリスから貰った)ポーションを数本飲み干し、私はローズさんに頼む。
「宮廷魔術師団員の中で私の就任を歓迎してる人達を集めてくれませんか?」