『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
◇
舞台は変わり王城内の訓練所へと移る。
「急な召集に集まってくれてありがとう。私が新しく宮廷魔術師第六席に就任した片瀬花奈です」
ローズさんが呼んでくれた…正確には集めてくれた宮廷魔術師団員達。
「さて、今日皆さんをお呼びしたのは他でもない宮廷魔術師団員の集団戦を練習して貰うためです。ポーションも一人二つまで配りますのでmpはある程度気にしないでいいですよ」
そう。アリスが言うには宮廷魔術師団員というのは自身の魔術技術に驕りを持つ部分があって協力戦とかはかなり苦手らしい。
それでも元が強いせいで方向性を修正出来る人がいないとか。
騎士団を一掃出来た私なら矯正出来る、ってアリスは言ってくれたし…
そらにしても一掃って…流石に盛りすぎ。
あれはあちら側の頭が魔銅で回らなかったからある意味仕方ない。
それにしても、やっぱり不審に思うよね。
こんな小さい人が突然宮廷魔術師になったらそりゃあ困惑するわけだ。
それに宮廷魔術師団員達は私の騎士団との模擬戦の時はここの警備で見れなかったって言うのも大きいのかな?
団員の顔を見れば不満や不平が目に見て取れる。
……この目は知ってる。
自分の理解出来ない物と出会った時に排除しようとする目。
それに私は身元不明出身地不明の完全不審者。
…疑われない要素がない、か。
「俺達は一人一人でも十分に強いです。態々団体戦なんてやらなくてもいいです」
私の『集団戦の練習する』っていう話に対して反抗の声が上がる。
生意気そうな若い…といっても私よりは年上だけど。
…まあ二十代っぽい男が意見を言う。
まあ反発は出るよね。
「勿論それはわかってるつもり。でも本当の強敵が出た時に個人じゃどうしようもないよ?」
戦争はある程度同等の国力なら数こそ正義な所も多い。
でもたまに私やアリスみたいな千の兵位なら蹴散らせる例外がいる。
…私が千人蹴散らせるか、っていうのは怪しいけどね。
…まあ、どのみちそういう一騎当千の相手にどう動くかは重要。
例えば私は全方向から絶え間なく魔術を撃たれ続けたら多分処理が間に合わなくなって『
でも単純に突っ込んでくるだけならビルを落としてもいいし標識を飛ばすでも分身を作るでも対処方法がある。
…ちなみにここまで全部アリスの受け売りだし、ここからも全部アリスの受け売り。
「そんな強敵はこの世界には存在しません」
これがアリスの言っていた『驕り』ってやつか。
「ほう…言うじゃない…なら私相手に模擬戦でもどう?」
「貴女は宮廷魔術師です。俺一人じゃ…」
「違うよ?ここにいる全員対私だよ?」
こういう相手には一回敗北を与えた方が後の話がスムーズに進む。
流石に今の挑発は堪えたのかほぼ全員が反応した。
精々15年しか生きてない若輩者があれこれ言うのもなんだけど…アリスにやれって言われたから。
「mpポーション置いとくから自由に取ってね…それじゃあ5分後模擬戦開始」
今の言葉が余計苛立たせたのか皆ポーションを取って飲みながらこっちを睨む。
まあ良い。君達には異世界の理不尽を味わせてあげよう。
その代わり他の宮廷魔術師団員より強くしてあげる。
それは実力とか魔術行使力とかじゃない、集団戦の妙技でね!
「それじゃあ…3…2…1…開始!」
その瞬間私は右手を空に掲げいつものフィールド、夜の都会と青い月を呼び出す。
しかしビルの代わりに配置するのは大量の剣。これで舞台は完成。
さあどんな戦法で来る?
どんな物を見せてくれる?
つまらない物なら片っ端から潰してあげるから大丈夫。
そして面白い物が出るまで何回でも繰り返してあげる。
『集団戦』らしくなるまで繰り返してあげるよ。
周りから様々な魔術が飛んでくる。自分達の実力を誇るだけあって、直撃したら私の貧相hpぐらいなら一撃で0になるだろう。
…でもそれは当たれば、の話だ。
自分の回りに竜巻レベルの突風を産み出し魔術の軌道を無理矢理ねじ曲げる。
「ほらほらどうしたの?一発も届いてないよ?」
…魔術は撃ってくるが皆バラバラだし連携のれの字もない攻撃ばかりだ。
次の行動には折角だし名前を付けとくか。
そうすれば名前から技の予測が立てやすくなるから…っていう期待も込めて。
「『
というわけで私は宣言通りに自分の周囲のみに展開していた突風を領域全てに広げる。
そうすると悲しいことに団員達は一人残らず…うん?二人残ったか。
さっき文句を言ってきた男と…あと一人は女性か。
何やら電気っぽいのを纏ってる。【雷属性魔術】持ちかな?
男の方は…文句を言うだけの事はあるね。
ビルとか爆弾は万一の事があると怖いからやめとくとして…
「『
周囲の気温を下げていく。アリスの魔術を再現する。消費mpは2000位かな?
-10℃…-20℃…-30℃…-40℃…-50℃…-60℃…
…ようやくギブアップした。
というか、かくいう私も温度をあげてなかったら凍え死ぬよ。
さて、解除。
お待ちかねの総評のお時間だ。
「さて、諸君は良く奮闘したが私は魔術を3つ使うだけで全滅してしまった。これの意味がわかる?さっき文句を言ってきた君?」
言うまでもなく3つっていうのは最初の突風と『暴風招来』、そして『極寒冷業』の3つのこと。
実際は『
というか『
ちなみに煽りは私の素の性格の悪さ半分と敢えてキレるように言ってるっていうのが半分。
「…俺らが弱いってことかよ!」
「そんな事を言いたい訳じゃない、君達は十分強いさ。でも敵に私みたいな化け物が現れた時どうするの?」
この弱みに漬け込む…っていうと少し語弊があるけど、まあこの機会に矯正していく。
「今回みたいにみすみす蹂躙されるの?」
蹂躙…蹂躙ねぇ…
私も『
「それは嫌でしょ?だから連携するの。一人一人の力は及ばなくても集団で越えれば勝ちだよ?集団戦とはそのためにある」
取りあえずアリスが言っていたことをある程度自分の言葉に変えながら伝えていく。
「宮廷魔術師団員だって戦争で誰も死んでないとは言わせないよ?それは力が及ばない一般兵が力を合わせて一人の団員を超えたから起きた物でしょ?」
というか一応同僚にあたるこの人達に死んで欲しくないっていうのもあるからね。
「なら最初から連携しておけば弱者が幾ら集まっても一人も死なない…でしょ?」
みんなの表情的に、一応私の宮廷魔術師就任と集団戦の練習について納得してくれたっぽい。
「という訳でだ。諸君には集団戦を学んで貰う。しかし私は幾ら強いとしても一介の子供だ。
なので君らに頭脳では全く敵わないだろう。だから私はいちいちアドバイスなんてしない。実践経験で学んで貰う。
私はさっきの3つの魔術しか使わない。だから戦略を練って一撃与えてくれ。
そうすれば取りあえずは合格としよう。戦略を思い付いたら呼んでくれ」
そう言い切り端に移動してポーションを飲む。威厳というか威圧感を出すために意図的に話し方を変えているけど疲れるなぁ。
だいたいワンセットにmp4000位かな。ならポーションは5本飲んどこ…
…最近ポーション飲み過ぎで依存症みたいになってる。
まあでも便利なのが悪いんだし。そしてそんなに不味くないのも後押ししてる。
お?まとまった?団員の一人が呼びに来たので立ち上がり中心まで行く。
「それじゃあ始めるよ…開始!」
色んな魔術が飛んでくるが全て突風で軌道をねじ曲げる。
ここまではさっきと変わらない。
変化としては…若干水や氷が増えた?位かな。
何も対策してないなら又全滅するだけだよ?
そう考えながらさっきと同じ様に風の範囲を広げようとした時。
団員達の前に土の壁が沢山出来た。
成る程、このために【土属性魔術】持ちを温存してたのか。
そして温度を下げても…【火属性魔術】持ちの人が炎をだして温度を安定させる。
考えるじゃん。
でもこれだと膠着状態。多分mpの差で団員達の壁が崩れるか炎が消える方が先。
…でも目を見る限り諦めてない。
まだ何か策があるんだろうな。
…?【水属性魔術】持ちと【風属性魔術】持ちが協力して水を竜巻の中に送ってる?
もしかして中に氷や水を入れて私に当たらないか試してる?
残念ながらそれは無意味だ。私の付近は台風の目みたいに無風状態…所謂凪って奴だし…
考えを一巡させ少し落胆した所…
…さっき耐えてた女性が何かしようとしてる?
女性…雷……足元の水…風で散乱?…もしかして!
そう思って風を解除しようとした時はもう手遅れ。
風に乗って拡散され足元にもばら蒔かれた水や風の中にある水を通じて電気が走る!
そして私は感電して…
…hpも50減ってるしこれは一本取られたなぁ。
そう思いながら魔術を解除していく。
「素直に言おう。私は君達に驚いている。正直2回目でダメージを受けるとは思ってなかった。これからはこの調子で集団戦も鍛えていってくれると嬉しい」
あんだけほざいといて二回目で食らうのって結構あれだけど…これで判ってくれた筈。
というか宮廷魔術師団員だけあって地は優秀だから連携とかもやろうと思えばある程度のレベルまでは簡単に出来るんだろうな。
今まではやる機会かなかっただけで。
「それじゃあ今日は集まってくれてありが…」
「すみません」
さっきの雷属性の女性じゃん。
どうしたの?
…あっ、もしかしてあんだけ大口叩いて一瞬でダメージ喰らったクソ雑魚ナメクジを煽りたいとか?
それは100%私が悪いんで全力で煽っていいですよ。
…まあそんなんじゃないんだろうな。
「どうしたの?」
「一回だけでいいですから本気で戦ってくれませんか?」
その言葉を受けて他の団員の方をチラッと見ると皆頷いてる。
…確かに最終的に越える目標は提示しておいた方がいいか。
…なんて主人公の師匠ポジションみたいな
まあでま、いずれ私は元の世界に帰る訳だし帰るまでには全員でかかれば私一人位倒せる様になってて欲しい。
「わかった。その代わりもし完敗したとしても気を落としたり意気消沈しないでよ」
そう言って再び訓練所の真ん中に立つ。
相手は宮廷『魔術』師団員だ。
少し反則な気がするけどまあ…これが私の本気だし良いよね?
「3……2……1………開始!」
団員達が色々準備しているがその準備が実る前に行動させて貰う!
「神域『
そう。魔術相手にはこれひとつでほぼ解決する。
宮廷魔術師団員にはアリスみたいなよくわからない魔術使う人はいないだろうしね。
いたら宮廷魔術師になってるだろうし。
序でに残りmpを全て使いここら一体の重力を出来るだけ上げる。
多分5倍とかになったのかな?
体感的にわかればつよつよなんだけど残念ながら高性能センサーは持ち合わせてないからわからない。
何となく消費したmpから5倍くらいでは、と予想しただけ。
生粋の武人なら5倍程度なら普通に動けるんだろうけどここにいるのは脆弱…とは言わないけど肉体的には屈強でない魔術師だけだ。
団員達は困ってるらしい。
なんせお得意の魔術が一つも使えない上に尋常じゃなく強い重力を受けて立ち上がれなくなってるのだから当たり前だろうね。
「これが現時点での君達と私の差だ。本気を出せば君達程度の魔術等全て抑え籠めるし立ち上がる事すら拒絶出来る。これが本物の化け物だ。君達は何れ協力してもいいし誰に助けを乞ってもいいし騎士団や他の宮廷魔術師に手伝って貰ってもいい…つまり何をしても良いが……化け物を倒せる様になって貰わないと困る。そのための今日の訓練だよ」
そう言って全て解除し『
「何か質問はある?」
質疑応答の時間を始めることにした。
本来はここで優雅に帰るのがベストなんだろうけど質疑応答して団員達の理解度をあげないと真の学習には繋がらないし、虚しいことにこっちの締まらない感じの方が私らしい。
そして一時間程質疑応答をして和やかに宮廷魔術師団員達と別れた。
ふう……もう9時半か。こんな遅くまで付き合わせるとか悪いことしちゃったかな?彼らも彼らで仕事があるだろうに。
それに大分威圧的に接しちゃったけど嫌われてたりしてないかな?
まあいっか。今度の練習で謝っとこう。
という訳で今日もお疲れ様でした。
それではお休みなさい……