『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
◇
いや、まだ焦る時間じゃない。
運悪く1限目が魔術の授業だったことを嘆きながらそんなことを考える。
「事前告知通り、今日は今までの成果を見せて貰うので模擬戦をして貰います」
ふう…落ち着こう。落ち着いて状況を整理しよう、
『
おーけーおーけー、我宮廷魔術師ぞ?
そんなに焦ることはない。
ほら、私も人の事言えないけど、ここにいる人は学生だ。
だから並大抵の相手ならどうにか……
「模擬戦の相手はこちらで実力が拮抗するように選んだので…」
なるでしょ。それに宮廷魔術師なんて例外中の例外だから実力が拮抗する相手なんていない筈。
まあ大半の相手なら4000あればいけるでしょ。
『
「カタセさんは…第二王女様とで…」
ううん?私の聞き間違えじゃなければ、アリスが相手…?
アリスのステータス……
…この状態で勝つの無理では?
それに神域とかは魔術じゃないから成績が微妙になる、というか神域やら呪域は色々と反則臭い。
それは流石に一般人相手には大人げ…アリスならよくね?
いや、違う。
アリスは自分が大賢者であることを隠してる。
つまりあの大量の固有魔術を全て使うわけじゃない。
それなのに私が全力全開で行くのは、アリスの隠し事を暴く危険性もあるからよろしくない。
ふむふむ、それはそうとして不味い。
神域やら呪域は制限するけど、負けるつもりはさらさらないし、ましてや国の魔術師の象徴たる宮廷魔術師が学校の模擬戦で負けるのはすごーく不味い。
…現在時刻9:00…後大体30分で前回の『
この先生のことだから成績順とかじゃなくて単純に名前順で順番を決める筈。
そして、不幸にも片瀬っていう名前だから五十音順的に私の順番までに15分稼げるかは微妙。
あ、一見すると
そんなことを考えていると、セリアの出番が来たみたい。
セリアの名字はティーミールだから相手の名前がかなり早かったのかな?
◇◆セリア視点◆◇
呼吸を整えて舞台に上がります。
ハナさんは何故か朝からあたふたしていますが…それよりも目の前の実技に集中しましょう。
私は結果的に学院をサボる形になってしまったわけですから、他の生徒の皆さんと差がついてしまったと思います。
…確かに、一連の事件で戦闘関係の技術は成長した気がしますが、学院はそれだけを学ぶ場所ではありません。
先人や偉人の軌跡や失敗談からそれを繰り返さない様にする、なんていうのも立派な学院に通う目的の一つです。
そういう面で言えば私は遅れてしまっているわけですから、その遅れを取り戻さないといけません。
…そういうことを鑑みても、魔術の模擬戦では負けるわけには行きません。
先生はこの模擬戦を拮抗するように組んでいるとは思うのですが…
その予想を覆して安定した勝利、とか出来れば問題はないでしょうか。
「よろしくお願いします」
私は対戦相手となる人に頭を下げ、礼を尽くします。
一言二言会話をしてから先生の合図を待ちます。
「3…2…1…開始!」
私はハナさんの様に特異な魔術を使えるわけでもアリスさんの様に大量に魔術が使えるわけではありません。
私にも固有魔術がないわけではありません。
それはここ数日の二人をみていたからこそ増えたものではありますが…
しかし、その魔術は使えば一撃で勝負が決まる様な物でもありません。
相手の方が振り下ろす剣撃を目で見て避けます。
ここに通っている方々は基本的に裕福な人が多いです。
なので卒業後に冒険者や傭兵の様な荒事を専門とする職業に就職する人はあまりいません。
なので剣技も宮廷用…つまり儀礼に特化したものであり、魅せる剣になります。
勿論、宮廷儀礼式の剣術使いでも強い方はいますが…私も含め、まだ学生なので本当に魅せるだけのものになります。
そして私も貴族なので宮廷儀礼の剣技の型は覚えています。つまり、型や癖を知っている振り下ろしや切り上げに当たる理由はない、ということです。
しかしそれは相手も同じこと。
お互いがお互いの手札を知っているからこそ起きる硬直…一応魔術の授業らしく合間合間で魔術は使われてますが…それでも硬直状態です。
──試合開始から2分。
変化が起きないまま時間が経過し、お互いがお互いの動きに慣れてきた時間です。
さて、変化を加えましょうか。
ハナさんの世界を塗り替える魔法の様な強制力はありません。
アリスさんの戦況を覆せる程の万能性もありません。
本当に局所的かつ弱い魔術です。
しかし…
「『明滅暗転』」
一瞬だけ相手の視界を黒に染め、その直後に強い光を浴びせる。
それだけの魔術です。
しかし、弛緩しきった戦況を覆すのには十分だった様ですね。
私の勝利を告げる宣告が先生から出されます。
不意打ちで勝ったようなものですが…アリスさんやハナさんにはギリギリ誇れます。
二人に認めて貰ったのです!醜態を晒す訳にはいきませんから…!
◇◆ハナ視点◆◇
ふほーん。
セリアの試合を見ながら私は素直に感心していた。
相手と同じ実力だと思わせて油断した所をわからん殺しする…素直にすごいと思う。
というより私としてはセリアが剣を扱えることにも驚いてる。
だって私は未だにあれだよ?
中学の時に僅かにやった剣道頼りだよ?
それに比べてセリアの剣筋が綺麗なこと。
ああいうのを魅せる剣、っていうのかな?
私も今度セリアに頼み込んで教えてもらおうかな…
…こう見るといつぞやの
そう、あれが普通じゃないんだ。こっちが平均。おけ?
更に付け加えるなら、この学校は『王立』なんだから優秀な人しかこない。
つまるところ、ここにいる人達はみんな同年代の中でも選りすぐり中の選りすぐりだ。
だからここでの平均は世間での偏差値60とか70になるわけで…
あ、そういえば偏差値60といえば上位33%、偏差値70といえば上位2%みたいに思ってる人が多いけど、それは『正規分布』って時だけなんだよね。
正規分布の説明は…わかりにくいのと面倒だから割愛。
要約すれば綺麗な分布ってやつだ。
どこかで偏ってるとかそういうことじゃなくて…
「カタセさんと第二王女様は舞台に載って下さい」
私の精一杯の現実逃避が無情にも断ち切られる。
…現在時刻9:20…
…せめてもの足掻きで杖(mp200貯蔵)を持ってきた。
一応有難い事に装飾品は自由だから時計(魔銅製)とか衣(不死の化物製)とかは使える。
合計mpは3868…
これでアリス(最大mp14000位)と戦うの?しかもあんな量の魔術覚えてるアリスと?
まあしょうがない。模擬戦だけど私だって宮廷魔術師の端くれだ。
それに困った事に負けず嫌いなものでね…
まあ足掻くだけ足掻きますよっと。