『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
一限目の模擬戦の疲れを引き摺りながら家…というか王城の自分用の執務室に帰る。
ドアを開けるとそこには─────
───絶望だわ、こんなの。
机の上から書類の束が覗く。ざっと5cm位かな?
単純計算で500枚ってところだと思う。
駄々を捏ねた所で変わるのは王城内部での私の悪評価だけなのでしぶしぶその束の開封作業に取り掛か──あれ?
「ローズさん、これ整理されてる?」
そう、内容毎にソートされてるのだ。
例えばこの束は格式高い封筒、この束は請願書っぽい、これはめちゃくちゃ豪華…みたいに。
まあ一番大きい束が大きすぎて大した意味になってない気がするけど。
「差出人毎に整理させて頂きました。御気に召しませんでしたでしょうか」
「いや、むしろありがたいよ」
私はどの貴族が偉くて…みたいなことはわからないから、そういう気遣いは単純にありがたい。
ちなみにこういうときに肝心な側仕え…もといセリアは飛び級目指して鋭意勉強中なので呼び出しとかはできない。
私も本来なら勉強しなきゃいけないんだけどね…
まあ明日からは普通に勉強するよ。それにこれが終わったら今日もする予定はあるし…
果たして今日中に終わるかは置いといて。
まあそんなのは気の持ちよう次第だ。
終わると思えば終わるし、終わらないと思えば終わらない。だから精一杯がんばるぞーっと。
軽く意気込んでから書類の束を開く。
無駄に緊張するなぁ…
まずは…宮廷魔術師団員達の街外での演習について…か。
一人一人の予定が書いてあるから大分見やすく整ってる。
軽くだけど一応全員分の予定を確認したし、演習で行く場所の情報もローズさんに聞いて確かめた。
…まあ問題ないんじゃないかな?
という事でアリスから貰った判子を押す。
なんか普通のキャリアウーマンみたい。
ちなみにこの判子は割と大事なものらしく失くすと色々面倒臭いらしい。
大切に鞄に突っ込まなくては…!
本当にこの鞄便利だよなぁ。ある意味この世界で一番ぶっ壊れてるんじゃない?
実質無限インベントリでしょ?あんな最序盤に見つかっていいものじゃないって。
普通は二週目とかのコンプ要素を集める用の物だって。
今度アリスに頼んで複製してもらえないかな。
まあ流石に無理だろうとは思うけど……
私はそんなことを考えながら別の束を開く。
さて、次は…王都の孤児院の給付金の減額について。
何でこれが私の所に来てるの?
まあでも来てる物は仕方ない。ちゃんと仕事しなきゃね。
…要は貴族に分配するお金を増やして孤児院に給付するお金を減らすと…ダメでは?
一応中身を確認しないと。直感で判断するのは駄目だよね。
…まず孤児院へのお金の横領が発覚。
そしてその状況でも孤児院からは文句が来ていなくて確かめにいった所困窮していなかった。
それで…貴族は2ヶ月前のエネステラ被害での急な出費や去年の不作で借りてたお金を返せずに困窮している人が多い。
それに貴族によっては身売り紛いの事をさせられてる…
後でアリスに…いや、あの教皇に孤児院の様子を確認させて本当に困窮してなかったらこの書類は認可の判子を押す。
だから保留。
次…騎士団用の武器について。
だから何でここに来るの?
セルグヌへの遠征での消費を賄うための出費…
あ、これは私の所で合ってたわ。
そうね……認可してあげたいけどこれは国庫の状態次第かな?
…アリスに武器の作成を頼む?
でも作ってくれなさそうだよね…
『…私である必要ある?』
とか言いそう。言わなかったらゴメン。
後で聞いてみよう……?
待てよ。
そういえば私セルグヌ領を貰ったんだよね。
そしてそこからの税金の一部が収入になる…ならその一部が武器でも良くね?
それこそ(鍛冶屋さんは)税を2割減らす代わりに武器で納めて…みたいな。
…よく考えたら駄目だな。そしたら皆鍛冶職人になってセルグヌ領元々の強みとかがなくなっちゃう。
良い案だと思ったんだけどな…まあ仕方ないか。
という訳でこれも保留。
次…下級官吏が結託して横領…はい。
この犯罪者から罰としてさっきの武器代+αを出させたら?
…まあ一応確認だけするか。
うん。情状酌量の余地がない横領だ。
やっぱ罰代わりに武器代+αを払わせるのがいいのでは?
という訳でそういう旨を書いてさっきの書類と一緒に完了ボックスにいれる。
まあ私が最終決定権を持ってるわけじゃあないし。
恐らくシルクエスさんかアリスの所に最終的に行き着くでしょ。
次は……
◇
…ふう、これで一通り終わったかな。
正確には本来の仕事は終わった。
え?他はあるのかって?
そりゃあ有るに決まってるよ。
教皇サマから貰った大量の各地の情報がね。
そもそもこれが500枚中450枚位を占めてる。
これ今日中に終わる?
…と思ったけどさっきまでの公式の書類と違って一枚に書いてある情報量に差がある。
長いやつでも5行で短いのだと1行ってところか。
これなら……まあ終わるでしょ。というか終わって欲しい。
という事で記念すべき1枚目。
王都の果物屋にて強盗が発生。その場にいた冒険者(ランクC)が取り押さえる。
犯人は……
はっきり言ってどうでもいい。
次…
アルカム領のマヌナ村にて結婚式が行われたがその最中に新婦が病で倒れる。病状は…
どこ?そしてこの情報いる?しかもその病気って病状を見る限り肺炎かな?
まあいいどうでもいっか。私に解決できるわけじゃないだろうし…
…
…
…154個目。いい加減飽きてきた。心底どうでもいい内容が多い。
何だよ
いや、何でも報告しろって言ったのは私だけどさ。
幾らなんでも限度がない?
155個目
隣国との境界線で不穏な動き…?
多分重要そうな奴だ。
何々…?
隣国(メトメフ帝国)とこの国の境界線(セルグヌ領の少し先)にて不審な動きをする集団を発見。又その集団を追跡した所帝都に繋がる道に入る。
続報は帝都に着く又は目ぼしい情報が入ったら。
…この情報網も捨てたもんじゃないかも。
…
…
…430通目
ソルム神国で結婚式が…
はい、パス。
こんだけやれば大体どれが重要かわかるようになった。
そして今のでラスト!
…終わったぁ~
今回のこのゴミ山…じゃなかった、情報の山の中で重要な物は…
隣の国の不穏な動きの奴とどっかの小国の宮廷魔術師の訃報…位かな?
…そういえばこの報告書見て思ったけど地図が欲しい。
どこに何の国があって首都があるとかが全く頭に入ってこない。
作らせるか。
「ッ! 主様…報告書を持って参りました」
丁度いいとこに教皇が来た。
後折角今仕事が終わったとこなのに新しい仕事を持ってこないで欲しかった。
まあ流石にそれは無茶ぶりか。
「ん、ありがと」
「後、地図作ってくれない?」
「地図…ですか?す、すみません。口答えをしてしまって…」
「それはいいの。あの時は少し酔ってただけだから」
本当は忘れて欲しいし何なら今すぐ抹消したい黒歴史だったり。
殴ったら記憶消せるかな…いや、何でもない。
精神分析 (物理) ならぬ精神分析 (魔法) みたいのないのかな。
「それで地図というのは…?この王都周辺の地図なら既に…」
「そういうのじゃなくてもっと範囲が広いやつ。世界全部がその中に収まる位の」
つまり私が欲しいのは世界地図改め『異世界地図』だ。
「私がその地図に求める事はそんなに多くない。まず海岸線と各国の首都は絶対で国境や川はある程度適当でもいいし細かい地名とか村はいらない」
「それぐらい大雑把でいいから世界地図を作って」
「かなりの時間を要する事になりますが…」
まあそうだよね。日本地図作るのだって道具がなかったら数年は最低でもかかると思う。
ましてや私が欲しいのは世界地図だ。
如何に大量の信者(奴隷)を持ってる教皇とはいえ途方もない時間が掛かるだろう。
「今まで頼んでた情報集めからも多少人員を引っ張っていいから…だいたい1ヶ月」
「勿論それまでに完成させろって訳じゃなくてそのタイミングで途中経過を見せてって事」
「了解しました。私も世界の全貌は気になるので急がせますね」
「ありがと。持ってきた書類はそこに置いて帰ってね」
そんな感じで教皇を帰るよう促す。
これで後1年もあれば世界地図が出来るかな?
まあ1年もこの世界に滞在したくはないし本当は地図が出来るよりも前に帰りたい。
まあでもアリスとかセリアのお陰で暫くこっちに残っていいかなって思ってるのも事実。
そうだな…帰る方法が見つかっても地図が完成するまで帰らない…とかいいかもね。
もしこっちから物が持って帰れたらその地図を見て色々思い出したりできそうだし。
ならそのためにも今の内に色々思い出を作っとこ。
「あ、すみません。一つだけ確かめたい事が…」
以外にもまだ要件があったらしい。前回あんな事をした以上確認の1つや2つ位自由にさせるべきだね。
「なに?」
「誰にも言ってませんが…私の能力に『
「ほうほう」
なんだその厨二心を
私もそういうのほし…くないわ。正気に戻ろうね。
「それを使うと使った相手が何の『大罪』…私の能力消失基準となっている7つのどれに近いかが解る…という効果で…」
「それで私にそれを使いたい…ということ?」
「その通りです…」
「勿論良いよ。あ、でも結果は教えてね」
まあ減るもんじゃないしね…減らないよね?生命力とか帰還可能性とか。
「それは勿論お伝えします」
何て出るかな?
一番面倒なのは異世界人だから判定できないってパターン。
そうだとなし崩し的に教皇に素性を教えないといけないし…まあそうなったら今まで以上に奴隷扱いになるだけか。
それで個人的に嫌なのは…色欲と暴食かな?
普通に女子として当たり前のことだけどね。
「……!」
何やら驚いている様子。これはもしかして面倒なパターン引いたかな…?
「何か問題でもあった?」
「いえ、きちんと結果は出ました」
「なら良かった。それで…?」
「…『傲慢』です」
傲慢…かぁ。思い当たる節はあんまないけど教皇(の能力)の言ってることだし多分あってるんだろうな。
「そういや何で驚いた様子だったの?」
「『傲慢』って出る人はほとんどいないんですよ」
「逆に他には誰がいるの?」
「そうですね…言い伝えでも『傲慢』は聞きませんが…あ、これは噂ですがクロルマ・ルスペ様は『傲慢』だったらしいですよ?」
それ誰だっけ?何か名前聞いたことあるんだよなぁ…あ!あれだ。偉人の記録みたいな所に載ってた人。
確か魔術を作った人だった気がする。
「他にはいるの?」
「【教皇】に伝わる歴史書にはその一人しかいませんね」
噂とか言ってたのに情報の出典を自らばらしていくスタイル。嫌いじゃないし好きでも…いや、自ら情報公開してくれるんだから好きだわ。
「…でも私は主様以外にもう一人知ってます」
「誰?」
「でも変なんですよね。昔みた時は確かに『強欲』だったはずなんですよ。でもこないだ見てみたら『傲慢』に変わってたんですよ?」
「普通は変わるものじゃないのにですよ?だってその人の根幹を成す部分が変わるなんて…」
「特異性はわかったから…それで誰?」
教皇が最近会った。昔も会った事ある。
…薄々察しはついてるけど一応聞いておく。
ほら、確認よ確認。報告、連絡、相談の相談よ。
「この国の第二王女様ですよ」
知ってた。
やっぱりアリスだったか…。
どんだけあの人はイレギュラーな事態を起こせば気がすむの?
「もしかして残ってる記録ではその3人だけ?」
「そうですね…それにしても不思議ですね。『傲慢』なんて滅多に出ない大罪なのに…」
そんなに出ないものかなぁ。
割と傲慢な人とか転がってそうだけど。
あまり長く教皇を招いてるとあらぬ誤解を招きそうなので帰した。
傲慢…かぁ…。
…主人公……傲慢…まさかね。
あ、それか教皇って神から貰う職業だからこの世界に飛ばされたのに帰ろうとするのが傲慢…とか?
…考えてもキリがないや。
さて、寝やすい服装に着替えて…?
そういえば私洗濯してないし服を畳んだ記憶もあんまりない…なのに綺麗に整えて箪笥に入ってる……ローズさんがやってくれたのかな?
そういえばどんな風に洗濯してるんだろう。
暇だし寝る前の運動がてら聞きにいってみよう。
よし、王城探検隊だ!
…なんか深夜王都徘徊大作戦を思い出す名前だなぁ。
確かあの時の正式名称は“片瀬花奈主催! (参加者一人) 『深夜の王都を徘徊しようプロジェクト』”だったっけ?
そういえば“片瀬花奈主催! (参加者一人) ”も名前の内だったなぁ。