『少女世界攻略記録』   作:100110110011(2)の民

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78◇見るなかれ、視るなかれ、幾星霜が其処にあり

 

「…大正解…」

 

アリスがそう言った瞬間。

庭園の周囲に結界が張り巡らされ…鮮やかで美しい庭園が一瞬にして消え去り…

ボロボロの床に崩れかけの小屋が出現した。

そしてその崩れかけの小屋の真上に藍色の球体が浮かぶ。

 

その球体が何かしている訳でも、動いているわけでもないのに私は自然と強いプレッシャーを感じる。

そう。これこそが…我こそがこの国の中心にして核である…と言いたげな重圧(プレッシャー)だ。

それは生命力(のろい)の塊にも…そしてこの国の呪い(きぼう)にも思える相反する(類義な)雰囲気を漂わせながら空中に浮く。

あれはどう考えても人類には創れない。

そう直感するも、何故か(・・・)私は親しみを覚える。

その親しみは勿論私の技術や表面からのモノではない。

言葉に出来ない私の根源からの親しみだ。

されどその親しみは蜘蛛の糸よりもか細く、意識していても途切れてしまいそうなモノだ。

 

藍色の球をよく観察すると内部でどろどろとした何か液体の様な固体の様な不定形の存在が(うごめ)(ひし)めき合って見るにも耐えない(グロテスク)な様相を私の双瞳に写し出す。

その何かは私が観察している事に気付いたのかその動きを止め…

 

───。

 

一斉に私を視て…すぐにまた蠢き犇めく。

球体(それ)にとっては何の気もない動作だったのかもしれない。

しかし私は違った。

それがこちらを一瞥するだけで僅かに残る眠気は全て彼方まで飛び去り、私は恐怖の沼に沈む夢の様な(・・・・)気分になる。

それがこちらを注目した。たったそれだけの事実に私は絶望(安楽)を感じざるを得ない。

違う、絶望(歓喜)なんて安っぽい言葉では表現すら出来ない。

そう直感した。

そしてあれこそがこの世界(・・)真理(こんかん)(つかさど)る存在だと直感した…いや、させられた。

そう言えるほどの格差が…覆しようのない格差(不合理)がそれと私の間に存在する。

それなのに何故か親しみ(憎しみ)を覚える。

こんな物に憎しみ(親しみ)を覚える…いや、感慨(論理)を抱くことすら私程度では烏滸がましいのに…だ。何故?

相反する(対称な)矛盾する(単純な)思考が脳内にて交差し(空回り)交わり(飛び回り)、複雑に絡み合う(ほぐれる)

そう考えた瞬間。

貴方(それ)がもう一度こちらを見た。

今度は一瞥ではない。

はっきりと観察しようと此方(わたし)を見た。

そう…私が深淵を覗く(考察する)時、深淵も又此方を覗く(見極める)

その言葉がここまで合う状況も他にないだろう。

そして私はそこまでしかまともに考えを纏める事が出来なかった。

先程とは比べ物にならない程の圧力、恐怖(興味)絶望(歓喜)怒り(慈愛)悲しみ(狂喜)、それら全てが一斉に押し寄せてくる。

それは私なんて矮小(ちっぽけ)な存在が受け止めるには過剰であり…脳が理解の欠片すらも拒む物でも合った。無力感。大いなる未知。人間にとっての最大の恐怖は未定義であり未知でもあるのだからこの惨状を言葉で表そうと精一杯貧弱な語彙を振り絞る。

だが限界まで脳を動かし酷使しても表現出来る言葉なぞ私の中には存在しない。

私の語彙のせいだろうか?

いや、断じて違う。

この境遇におかれたのが私ではなく歴史上の文豪であろうと天才評論家だろうと、そしてそれは例え【大賢者(アリス)】だろうと変わらず、全人類にとって悠久不変の決められた結果なのだろう。

ただただ言葉に表現できないモノを味わわされ…そしてそれを誰にも伝えられない。

こうして頭の中で自身の置かれている状況を客観視でもしていないと直ぐにでも発狂してしまうだろう。

これが…地獄(てんごく)?いや、これは地獄(てんごく)なんて生易しい物じゃない。

そんな物よりえげつなく(慈愛に満ちて)絶望(きぼう)を宿した別の(モノ)だ。

あれが王権(この国)の象徴?

御前(あれ)はそんな物で収まるものなのか?

この世界全ての悪意(善意)憎悪(憧憬)憤怒(期待)哀愁(慈愛)()の感情を混ぜ合わせてもああはならないだろう。

そんな物がたかが国の象徴程度?

そんなわけがない。

 

そして…

 

それの目と思われるモノが気味悪く…言葉に出来ない醜悪(きれい)な配色で鈍く光る。

 

強烈な悪寒がして自分のステータスを急いで見る。

 

~~~~

名前:カ◼️セ=ハナ

種族:0

lv0(ボーナスポイント:+0)(+exp0)

職業:lv0

hp…0/0(-1145)

mp…0/0(-14672)

str…0(-115)

vit…0「+100」(-215)

dex…0(-115)

agl…0(+80)「+200」(-395)

luc…-14663(-14672)

 

状態異常:『◼️◼️◼️の◼️◼️◼️』(lv1)

~~~~

 

そう表記が揺れたのを見て…

 

《呪域『死帯享楽(ファイナル・リゾート)』が自動発動?…『◼️◼️◼️の◼️◼️◼️』を◼️ ─プロ ◼️更 ◼️…》

 

よくわからない表記の『死帯享楽(ファイナル・リゾート)』が自動発動し、ステータスの全てが元に戻ったのはほぼ同時だった。

そして次の瞬間には全ての恐怖(期待)等の感情が払拭され…

それは何もなかったかの様に浮かぶ。

 

「あ、…あれが?」

 

「…これが象徴…どうしたの?」

 

アリスの方を見るが特に変わった様子はない。

あの恐怖(興味)感じて(抱いて)も?あの絶望(希望)感を抱いて(感じて)も?

あの無力(ばんのう)感に苛まれても?

違う、それはあり得ない。

つまりアリスはこれを体感した事がない…と考えるのが普通。

これを知ってるなら「どうしたの?」なんて口が裂けても言えない。

もうあの球体を観察なんて出来ない。

今度こそあの荒れ狂う感情の波に飲み込まれてしまうだろう。

 

違う。アリスは味わわされてないんじゃない。

感じられる上限値を越えていただけだ。その性で感じたかろうと感じられない。

まあ感じたいとは一切思わない物だが。

なぜアリスには感じられない?

 

そこまで考えた時、再度悪寒が走る。

もしやと思い視線を上げると─

 

いや、あげる前から解りきっていたことだ。

あげなければよかった。

 

目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、目、

 

貴女(それ)には眼なんて物はないはずだ。

だが確実にそれは無数の眼でこちらを睨む。

それが先程の様に一瞥や観察ならまだ良かった。

 

しかしその目は明らかに『興味深いモノ』を見つけた赤子の様に…されど赤子どころか如何なる人類(ぶったい)でも産み出せない悪意(善意)を孕みながら此方(わたし)を見ていると確信させるモノだ。

 

最早逃げ出す事すら選択肢に浮かばない。

逃げ出すどころか背を向ける…いや、意識を逸らすだけで一瞬にして私の魂は刈り取られるだろう。

 

私は無力だ。私は何をすれば?私の存在は?私という物の意義は?私は愚かだ。私は無知だ。私は…何者だ?

 

哲学的な問いが浮かんでは消え、そして又浮かんでは消え…まさに儚い水泡の様に浮かんでは消えていく。

 

いや、正確には消えている訳ではない。

正確には、そんな事の解を出そうと目の前の存在が強大過ぎて自らの事など塵にすらならないと瞬時に悟るからだ。

 

横から何者かが誰かを呼んでいる気がするがそんな些細な事柄は一切気にならない。

今、私は、猛烈な無償(有償)悪意(善意)を叩きつけられているのだから。

 

 

 

 

 

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