『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
……どやぁ。
私は魔術である『
個性もある程度出したしセリアからの評価は満点以外ありえな───
「ハナさん?」
うん?セリア?どうしたの?
ちょっ、待って、ごめんって。
無言で笑みを浮かべて近寄らないで?
ストップストップ、ほら、3時間位前にやったじゃん?
わかる?ストップの意味。
「そうですね、『ストップ』には辞めてほしいという意味以外にも
くそぅ、セリアの記憶能力が想定より高かった。
恨むぞ、3時間前の私……!
◇
そんな姦しいじゃれあいは私の貧弱な
「はぁ…はぁ…ギブギブ、降参…」
「はぁ…ハナさんのせいですよ?」
もう汗でベタベタです、と言いながら手で扇ぐセリア。
私はそんな余裕ないって…!
…これが万年陰キャと深窓の令嬢の違いか。
それにしてもこのステータスにスタミナの項目を増やして欲しいところだよね。
hpとスタミナはどうみても別枠だし、別関数だからね。
「ところでちゃんと紅茶の淹れ方はわかりましたか?」
「それは…もう、ばっちり…だよ…」
息のほうがばっちりじゃない。
『
「よっこらしょっと」
まるでお婆さんみたいな声を出しながら立ち上がる。
…まあ
「単純明快な声を載せ~♪透明な空へと墜ちる~♪」
待ち時間が暇なので適当に元の世界の歌を歌って待つ。
うーん、曲は思い出せるのに題名が思い出せない…なんだっけ?
「そして私は机の上の新たな世界へ──おっ、出来たかな」
セリアに教えられた通り真面目にやる。
こういうのは得意だからね。伊達に中学の内申点稼ぎしてないよ。
「はい、これで
「…不本意ながら完璧です」
何が不満なんだろうか。
あ、歌ってたとこか。それかあれだけふざけてたのに、ってことかな?
「どやぁ…」
「そういうのって声に出すものなのですか?」
いえ、違うと思いますね。
◇
私が淹れた計3杯を私二杯、セリア一杯の内訳で飲み、一息つく。
あ、勿論今日の夜ご飯も食べたよ?
ノックの音…?ああ、この時間帯なら多分…
「いいよー」
「情報を持ってきました」
我らが情報収集係こと教皇サマだね。
「お疲れー…あ、そこに置いといて…そうだそうだ、
「まだ時間がかかりそうで…すみません」
「いいのいいの、気にしないで。それじゃあ今後も宜しくね」
「わかりました。
私の演技に乗れるなんて空気の読める教皇サマ…!
なんか普段とあんまり変わってない気がしなくもないけど気のせいでしょ。
というか昨日も来てたよね。まさか毎日…?
まあ気にしたら負け。
「ハ、ハナさん?あの方は…」
ああ、何て言ったっけ?ええと…
「ユリナリア・ルノメート・ルギエ…だった筈」
名前が長いんだよなぁ…ユリナリアなんたら?
そんな贅沢な名を…今日から貴女の名前はユルルだ。いいね?ユルル…なんて。
「【教皇】様じゃないですか!」
「そうね、教皇サマだね」
無言の空間が漂う…
「もしかしてハナさんってソルム神国の…」
あらぬ疑いを掛けられた気がする。
「ちがっ、違うよ!?ほんとに」
「狼狽えているのが…」
ああ、話せば話すだけ状況がややこしくなってくる。
「ユルル!…じゃなかった。教皇サマー、まだいるんでしょ?出てきてー」
「ユルルって何ですか…ッ!すみません!」
あ、本当に出てきた。正直半々位だと踏んでたんだけど。
「ふーん、
…ところで辞め時を失ったこの
「まあいいか。で、
「わかりました。『
む、それは…
「教皇!何やろうとしてるの!」
教皇がセリアのことを見ていることから、
「
…っ、頭の中を弄られる感覚がする。
大事な何かを抜き取られて、自分が自分でなくなる様な感じがする。
抑えられない痛みと精神を炙る様な熱が私を包む。
思考を、性格を、私という全てが再構成される様に意識が抜け落ちていく。
新生する人格が私を引き裂き、バラバラに刻まれていく。
新たな『私』が私を押し潰そうと、魂を穢そうと、心を盗もうとしてくる。
ああ、私はその『私』に首を裂かれ、血管を食い破られ、神経が圧迫される。
「主様!?すみません!」
ああもう、私に謝るとかどうでもいい。
この機会を生かしてこの国の乗っ取りでも企めばいいのに。
私が私で無くなり、亡くなり、失くなっていく。
私と私の境界が曖昧になり、統合され、されど吸収されていく。
だけど、私には『孤神の球体破片』…あれに精神ごと乗っ取られた経験がある。
あの時の恐怖に、感情の奔流に比べればこれなんて唯の水溜まりに過ぎない。
「で、ユルル。何をしようとしたの?」
私は怒りと威厳を込めて詰問する。
…ところで話は変わるけどここで白状していい?
あれだけ死にそう死にそう(意訳)って言ってたけど、喉元過ぎたから完全に熱さを忘れた。
それにあれよ?
昨日あんな地獄を体感して、その前は魔銅に精神を蝕まれて…この世界に来てどれだけ精神崩壊してるのよ、私。
三度目ともなれば反応するのが面倒な領域になってくるよね。
しかも魔銅とかあれとかと違って、明確に『精神崩壊しそう』ってわかってるだけ楽。
…人としての普通から逸脱してきた気がする。
自己紹介での鉄板ネタにでもなるかな?
『私の特技は、精神汚染されることです!』
みたいな?
…人としての価値観は
それに擁護するなら
最初にセリアを洗脳しようとしたのも私が『説明してあげて』って言ったのを勘違いしたっぽいし。
「わ、私は…」
「あ、
別にそんな耐性ないけど一応言っておく。
そもそも洗脳される機会なんていらないからなぁ。
「はぁ…まあいいや、私から説明するよ」
そういうわけで5分程度かけて私とユルルの
「そ、そういうこと…なんですか…」
セリアが完全に思考停止してるっぽい。
その間にユルルは部屋から追い出しといて、セリアの復帰を待つ。
暇だしもう一杯位お茶淹れてみよっと。
今回はさっきより多少長目に入れて見て…お、いい感じかな?
ふむふむ、上品な香りとなんちゃらな味が──
「ハ、ハナさん…」
「あ、セリア。戻ってきたの。お疲れー」
どうにか情報地獄から解放されたセリアが現世に戻ってくる。
「?」
あ、やっぱまだダメそう。