『少女世界攻略記録』 作:100110110011(2)の民
セリアから仕事終了の報告をもらったので考えるのを中断して思考を現実に戻す。
「今日の所はこれでいいかな。じゃあはいこれ、賃金」
そう言って私は金貨を2枚渡す。
「え?お給金はもう貰っていますよ?」
いいの、いいの。と言ってセリアを部屋から帰らせる。
何で金貨を渡したかって?
それは……
◇
それじゃあ考えの続きを…
どこまで考えたっけ?
…そうだ!魔術の元、魔素は有限で
考察を思い出して行こう。
推測した事柄を書き出す。
推測①『ステータス』はクロルマ達が創った
推測②
この2つが最重要かつ考察必須の命題。
『ステータス』について。
『ステータス』はこの世界の人類全員に付与される物。
……?
昔エネステラの研究施設みたいな所でエネステラの予測ステータスみたいの見なかったっけ?
確かあの資料みたいのまだ持ってるよね?
愛用バックを漁り、目的の資料を見つける。
──────────
『エネステラ』No.68
融合人形・エフェミルドール
危険度:2
hp 88888
3np 888
str 888
vit 888
dex 888
agi 888
《融合生命》
3npを1消費するごとにhpを1%回復、致死ダメージを受けたときには強制発動(即死効果では発動しない)
《壊死崩壊》
直接ダメージを与えた相手にvit半減の効果を与える(重複可)
《不死の生命線》
hpが20%未満になる度にstr、vitが2倍になり、hpが20%以上になる度にagi、dexが2倍になる
経験値:1.00×10^6(推定)
↓
~~~~
D.E.I『不死融壊の衣』(推定)
vit+88
《不死融合》
3npを8消費してhpを1%回復する
《不死衣装》
この防具は壊れても再生する
~~~~
補遺:エフェミルドールは不死をコンセプトとして作られた『エネステラ』であるが不死性を持つ『エネステラ』は暴走の危険性が高まりやすい傾向にあるため能力付与を絞って作成した。暴走は85%の確率で7000~7500年後と推測される。ステータスのゾロ目は偶然の結果である。このような事も起こり得るのか。エネルギー供給効率は2
資料詳細はA-68-2-f
材料:ヒト2体(余剰部分は処理済)、手7本、『エネステラ』コア-type A
エネロジスティクス『エネステラ』第七研究部門長-ヒムク
─────────
そうそう。
……よく見たら色々『ステータス』と違う。
まずmpに相当する部分が3npになってる。
それにaglがagi…正しい表記になってる。
それにlucの概念がない。
…ならこれは『ステータス』じゃない。
それなら…『ステータス』の前段階…いや、原本みたいな物?
確かに『ステータス』が出来る前も個人の力の測定位は出来そうだけど…
──『エネロジスティクス』は異常な…それこそ魔法の様な技術でエネルギーを生産する企業で──
エネ、ロジスティクス?
エネ、ステラ?
魔法の様な技術?
エネロジスティクス『エネステラ』第七研究部門
3np
天整統さんの時代には魔法はない。
どういうこと?
天整統さん曰くその時代には魔法はない。
そして魔法の様な技術を持っていたのがエネステラを作っていたエネロジスティクス。
そしてその会社の資料に出てくる『3np』という表記。
説明的に『3np』は消費して何らかの効果を引き起こす物。
まずここまででほぼ確定してることは『3np』=『mp』だと言うこと。
でもその時代には魔法は存在しない…天整統さん達がギリギリの所で封印か何かしたんであろう『AI』はエネロジスティクスの物品…
────
『神の試練』の近辺ではmpが平常時より迅速に回復する。
これは神がもたらした我々への挑戦状だ。
皆の者、全力かつ本気で取り組む様に。
これはクロルマ達の時代の宗教、聖ルグリエ教会が出した指令(英雄達の伝記より)
────
そしてこの『神の試練』とやらはおそらく『AI』の事。
mpが平常時より速く回復するなんて普通ありえない。
じゃあどの様に普通じゃなければ起こる?
答えは簡単。
空気中の魔素濃度が濃ければいい。
なんだっけ化学にもあるよね。るしゃとりえ?だっけ?まあいいや。
でもそんな事ある?
…今までの事を繋いで考えれば一つの真実に辿り着く。
まず、エネロジスティクスは『魔法の様な技術』を持っていて『3np……もといmpを知っていた』。そしてそんなエネロジスティクスが作った『神の試練』(=AI)に近付くとmpの回復速度が上がる。
…つまり、『そのAIが
その結論に辿り着く。
つまり時系列ごと整理するとこんな感じ。
天整統達がエネロジスティクスに洗脳されてAIを作る。
↓
ギリギリで洗脳が解けた人達が足掻いて『AI』を封印(?)をする。
↓
何かが作用して『AI』が魔素を吐き出し続ける。
↓
長年かけて復興した人類はその魔素を正体がわからないまま魔法を開発し普及。
↓
クロルマ達天才が魔素の有限性を悟る。
↓
魔法の劣化版である魔術を研究し魔素の省エネをがんばる。
↓
その途中で『AI』が復活し文明ごと壊す。
↓
文明崩壊の最中に何とか足掻いて『ステータス』を創り全人類に付与する。
(恐らく後続の人類に『AI』の対処を託すため)
↓
残った人類が頑張って『AI』を封印(or破壊)する
↓
その封印(破壊)と『ステータス』等の魔法により空気中の大部分の魔素を消費。
↓
何だかんだで文明が完全に崩壊
↓
時間をかけて現行の人類が出てくる。
↓
空気中の魔素が少ない事により魔法を使える人がかなり少なくなる。
(恐らく魔素の扱いに優れた(=レベルが高い?)人が魔法を使える)
↓
今
って感じかな?
これが事実だとこの世界は相当にヤバい。
この世界の基幹となっている魔術が有限だってのもヤバいし、何よりヤバいのは『AI』が完全に壊れてるかどうか不明だってこと。
人類の文明を二度に渡り崩壊させた『AI』
対戦カードは一度目の文明より科学力が落ち、二度目の文明より魔法が使えない三度目の人類。
この対戦カードでこっちに勝ち目はあるの?
…私が抱えるには大きすぎる問題になってきた。
一回別、の方向に向かおう。
──【大賢者】の因子…すまない。これは私が勝手に呼んでいるだけだがこの世界には数百年に一度とても論理的思考が得意でありかつ発想の飛躍が得意な人がいる。…それを【大賢者】の因子を持った人と呼んでいる──
これはいつぞやの天整統さんの遺言。
【大賢者】はアリスを見ればわかる様に魔法の扱いに特化している。
そしてその【大賢者】という職業保持者と天整統さんの考える【大賢者】の因子保持者が一致している。
この頃は【大賢者】はそもそも職業という概念はあったのか?という疑問。
でもこれは簡単であの職業決める水晶に天整統さんの遺言が入ってた事を考えればいい。
で、ここからが本題。
じゃあ何で魔法が(表面上)ない時代に作られた水晶に魔法系統の職業や『不思議之住人』なんて職業が表示されるの?という疑問。
…
…
……多分、だけど…
『ステータス』を作ったクロルマ達が後で付け加えたんだと思う。
ここで水晶を初めて見た時の私の
──部屋の中心にある水晶は何処か科学的で幾何学的雰囲気を出しながら…色んな所に魔法っぽい装飾や紋様がある──
『科学的で幾何学的』っていうのが恐らく天整統さんの時代に作られた機構。
『魔法っぽい装飾や紋様』はクロルマ達が後で付け足した物。
最後の疑問にして私が一番気になってる疑問。
本当に人によって使える魔術の属性は限定されてるの?
簡単に言うと『何で全員が全属性使えないの?』
魔術の起源…もとい魔素の起源を考えると全員が全属性使えなきゃおかしい。
なら何が影響して今みたいに?
…唸れ!私のファンタジー妄想力!
小説とかで良く使われる設定を思い出すんだ!
…魔法や魔術は術者の『想像力』で発動…
私は日本のマンガとかで魔法を沢山見てるから想像することなんて…
これだ!!
ずばり、『使えない原因は想像力が足りてない』!
…そろそろかな?
「ハナさん!これどういう事ですか?」
そう言いながらセリアが部屋の中に入ってくる。
その手に私が渡した金貨を持ちながら。
「この金貨、偽物じゃないですか!」
そう。私が渡した金貨は偽物である。
そして本物との差異はほとんどその重さだけである。
セリアは貴族だからお小遣いも金貨単位で貰ってるだろう。知らないけど。
それでも普通は金貨を持ち出さない。
でも家に帰って違和感に気付く……まあ実際に家まで帰ったかはわからないけど。
この金貨、何か軽くね?…ってね。
そうして私の部屋まで来て文句…或いは忠告をしにくる。
そしてその頃には私の長い考察が終わってその結果の実験台…もとい成果となるわけ。
いや、言い訳させてほしい。単純にセリアを困らせたくてこれをしたんじゃないのよ。
私は元々全員に全属性が使えると思ってたからこんな事をした。
何でかって?
そりゃあ………こっちの方が『面白くなる』からだよ?
という訳でそろそろセリアの相手をしよう。
「これ、本物より軽いんですよ!」
「あ、ありがと。それ金貨じゃないよ?」
「え?」
「表面を良く見てみ?」
「…小さく『子供銀行用途にお使い下さい』って書いてある…」
そういうこと。
Q.私が贋金作成で逮捕されかねないことすると思う?
A.そんな危ないことしない。
「今度発売するゲーム用の模造金貨だって、良く出来てるよね」
ちなみにアリス作。商品販売するかは未定らしい。
「……」
ここまで持ってきたのが恥ずかしくなったのか黙ってしまった。
…罪悪感ががが。
「まあそれはさておいて…」
「セリアってどの属性の魔術使える?」
「……水と風です」
ふてくされたような表情でこちらを見るセリア。
まあまあ落ち着いて落ち着いて、今からセリアは──
「これを良く見てて…」
──全属性の魔術使いになるんだから。
そう言って私は指先に火の玉を作り出す。
「唯の火…ですね?」
「そう。何の変哲もないただの【火属性魔術】」
「ところでこの火の仕組みって判る?」
「仕組みですか?それは詠唱で…」
「でも自然界にも火は存在するでしょ?」
「…判りません」
残念ながらこの世界では燃焼反応に酸素が関係してる…みたいな話はされてない、というか知られてない。
「まず空気がここにあるじゃん? 」
そう言って私は適当な場所を指差す。
そして次にまあまあの大きさの蓋付きの透明な瓶を手に取る。
そして指先の火をその中に入れて…蓋を閉める。
そして数秒待つと火は消える。
酸素がなくなったからだ。
「こんな風に火が消える。私は別に消そうと思った訳じゃないとして…じゃあ何で消えたんだようね?」
「…燃える物がなくなった…とかですか?」
「そう!ここまで判ったセリアはこの火を見ながら火属性魔術の詠唱を一つしてみて?」
「?いいですけど…」
「あ、この火をじっと見ながらね」
そうしてセリアは詠唱を始める。
っていうか自分が使えない属性の魔術の詠唱まで覚えてるのか、流石。
「あ!火が…え?どういう事ですか?私に【火属性魔術】の適正はなかった筈です…」
セリアは混乱してる様だけどもう一度混乱して貰う。
「次にこれを見て欲しい」
そう言って手の上で風をまあまあ強く吹かせる。そしてその風をセリアの方に向ける。
「じゃあ風属性の魔術をお願い。さっきの風の感覚を強く思い出しながらね」
そしてセリアは見事に魔術を発動させる。
やったねセリア、夢の全属性魔術使いになれたよ。
「ハナさん?これはどういう事ですか?私は確かに土と水属性にしか適正がなかった筈です。なのに火と風も…それに私のステータスにも【風属性魔術】と【火属性魔術】がありますし…」
「セリアはもし全人類が全属性の魔術を使えるって言ったら驚く?」
「それはそうですよ。今までそれでどれだけの人が……ってまさか、そういうことですか?」
「そう、そのまさか。おめでとう。セリアがその生き証人となって説は立証されたよ」
「大発見ですよ!」
これだけ見るとなんで今までこの世界の人は覚えられなかったのかと疑問に思うけど…まあいいか。
取り敢えず今は確かに『出来る事』が重要だ。
「明日にでも公表する予定。勿論その前にアリスにも色々聞くけどね?」
「という訳で…セリアの友達であんまり魔術が使えない人を明日の放課後までに2、3人集めてくれない?」
「わかりました!」
そんな快いセリフを残してセリアは帰っていった。
…今日は大部疲れたなぁ。
やってる事自体は昨日とそんなに変わらないのに。
…やっぱあれか。
異世界脳内会議のせいか。
今日はもう疲れたし寝よっと…
…何か忘れてる気がする…?
あ、洗濯。
またわからなかった。
くっ、魔術の深奥を解き明かした私ですら王城を包む巨大な謎には屈せざるを得ない…
え?今から見に行けって?
…流石に眠気の勝利。明日(の朝)にしよう。
…それじゃあお疲れ様でした。お休みなさい。
やっぱり疑問に思ったけど、この世界の人達はどうしてこんな単純な事実に今まで気付かなかったんだろう。
アリスとかなら気付いても……すやぁ……