1話 過去から現れた新たな敵
帝劇2階廊下ー
最近降魔は滅多に出なくなり、華撃団の出撃はあまりなくなった。それもあってか、帝都は以前より降魔被害に怯えることはなく、平和な毎日を送っていた。
そんな中数日前、誠十郎は神崎司令、もとい神崎支配人から帝劇の新しい公演の話を聞いた。皆次の公演を目指して一生懸命になっている。
ある日、サロン近くの廊下を歩いていた誠十郎に天宮さくらが話しかけた。
ー誠十郎さん、今度の公演は本当にシンデレラなんですよねっ
ーうん、そうだよ
さくらの言葉に誠十郎はそう返す。彼女は頬を緩ませていた。
ーふふっ、実はシンデレラ役は、神宮寺さくらさんもやっていたんですよ!
ーおお、そうなのか
旧帝撃の、そして今も幻都で戦っているという神宮寺さくらにこの上なく憧れている彼女。それと同じ役をやれると、はしゃいでいるのか。
そんなことを思っていると、後ろから声が聞こえた。
ーほらほら、まだ役は決まっていないのよ?
嬉しそうなさくらを見て微笑むアナスタシアがこちらにやってきた。そんな彼女にさくらが言う。
ーう…でも、アナスタシアさんや他のみんなには負けませんっ。私がシンデレラをやります!
ーふふっ、その意気よ
彼女がそう言うと、力強い声を響かせてもう一人やってきた。
ーお、なんだか賑やかじゃねぇか
赤髪を揺らして姿を見せたのは初穂だ。
ーやあ、初穂
誠十郎が彼女に言った。
ーおう、誠十郎。何の話してたんだ?
初穂はそう言う。
歌劇団の皆はその短くない付き合いに、隊長である誠十郎を、親しみを込めて彼を下の名前で呼ぶようになっていた。
誠十郎は初穂の問いに答える。
ー次の公演についてだよ
ーああ、今度はシンデレラらしいな
明るい声音でそう言う初穂は"でも"と続ける。
ーまだ役は決まってないけど、あたしはシンデレラ役は無理だろうな…こんななりだしな
彼女は少し暗い声を出した。そんな彼女に誠十郎は言う。
ーそんなことはないだろう。俺は初穂のシンデレラ、見てみたいよ
初穂は頬を染める。
ーえ?…そ、そうか?
ーああ、似合うと思うぞ
ーお、おう
誠十郎の言葉に彼女は満更でもないような様子だった。そんな彼らをさくらはじっと見つめる。
ー…むっ
なにやら不満げだ。
ーん?
さくらの様子に気づいた誠十郎は彼女の方を向いた。
ー誠十郎さんは、私のことは応援してくれないんですね
ーえ?…い、いや、そういうことじゃないぞ
不機嫌そうな声音に誠十郎は困り顔で返すと、彼女は続ける。
ー…本当ですかぁ?
ーほ、本当だよ
彼らのやりとりにアナスタシアが微笑んだ。
ーふふっ、さくらはそんなに誠十郎のことが気になるのかしら?
するとさくらは顔を真っ赤にして取り乱す。
ーなっ!そ、そんなこと!
あわあわとする姿もさることながら、誠十郎の前に"シュタッ"と現れるものがいた。
ーうお!あざみ!?
突然目の前に降ってきた黄色い忍者に彼は驚いた。そして、あざみは一言、
ー何やら騒がしい。どうしたの?
と言う。アナスタシアとさくらのやりとりを聞き、やってきたと言うことか。そんな彼女の疑問にさくらが言う。
ーな、何でもないよっ
ーさくら、顔が赤い。風邪ひいたの?
ーそ、そうなんだよぉ!朝からなぁんか具合が悪いなぁ、なんて…ははは
ー?
あざみは首をこてんと横に倒す。
先程のアナスタシアの言葉を意識しすぎておかしなテンションになるさくらを横目に、もう一度アナスタシアは言う。
ーふふっ、ごめんなさい、さくら
彼女は続ける。
ーそれで私、クラリスを探してるのよ。次の公演のシナリオは、彼女が少しアレンジしているでしょ?シナリオ作りにも興味があって、少し作業を見させてもらいたいのよ
アナスタシアの言葉に誠十郎は答える。
ーなるほど…う〜ん、俺は今日クラリスを見てないな。みんなはどうだ?
さくらと初穂が言う。
ーそういえば、私も見てないです
ーあたしも見てないな
そんな中、あざみが続く。
ークラリスならさっき、図書室の方に行くのを見たよ
彼女の呟きにアナスタシアが返す。
ーあら、そうだったのね
誠十郎が言う。
ーせっかくだし、みんなで行ってみるか
一行は図書室に足を運んだ。
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図書室ー
ークラリス、居るかしら?
アナスタシアは部屋の扉を静かに開けてクラリスが居るか確認した。
ーあ、居ましたよ
さくらは部屋の奥を見渡すと、本棚の影で隠れていたクラリスの背中を見つけた。
そして初穂が小さく言う。
ーあの感じだと、本を読むのに集中しているようだな…ああなったクラリスは何をしてもこっちに気づかないぞ
誠十郎が彼女に続く。
ーああ、俺もクラリスに初めて会った時、そのことを身をもって知ったからな…
彼は"一旦、出直した方が良いかな…?"と呟く。すると、
ー…思いつきません
クラリスはそう言って本をぱたんと閉じた。彼女は顔を上げると、誠十郎達に気づく。
ーん?皆さん揃って、どうしたんですか?
彼女の問いにあざみが答える。
ーアナスタシアが、クラリスが小説を書くのを見たいんだって
ーえ?そうなんですか?
意外、と言いたそうな目を向けたクラリスにアナスタシアが続く。
ーええ、演じる者として、脚本を書く人がどうやって考えているのか知りたかったのよ
ーうぅん、でも、生憎いいアイデアが思いつかなくて…こんな状態では、見ていてもあまり面白くないと思いますよ
ーいえ、そんなに気にしなくていいわ。ただ興味があっただけだし
そしてさくらが"それにしても"と続ける。
ーさっき読んでいたのは…シンデレラじゃないんだね?
ーはい、話をアレンジするにあたって、別の作品からイメージを膨らませているんです。でも、なかなかいいアイデアが浮かんでこなくて
クラリスの言葉に初穂が言う。
ーやっぱり話を考えるのも大変なんだなぁ
朝からずっと悩んでいたのか、頭を抱えるクラリスをよそに、"ぐぅ"とどこからか音が聞こえてきた。
その音の主はさくらのようだ。
ーお、お腹すいちゃった…へへ
もう太陽は、帝国劇場の真上にあった。
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食堂ー
さくらの腹の音と共に、皆で昼食をとろうという流れとなった。一行は食堂に着くと、ある人の姿に気づいた。
ーあ、師匠!
ーん?…おお、さくらじゃないか。それに歌劇団揃って、お昼ご飯かい?
ーはいっ
食堂の奥に一人椅子に座っていたのは、さくらの剣の師、村雨白秋だった。そして彼女の目の前にあるのは、
ー今日も、オムライスなんですね
そう言ったのは誠十郎だ。
ーああ、オムライスはこの世で一番美味なものだからね
白秋はそう答えるとまた、"ぐぅ"と音が鳴る。さくらの赤くなった顔が誠十郎の目に映った。そんな彼女を見て初穂が言う。
ーふふっ、さ、はやくご飯にしようぜ
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帝国劇場、ロビー
皆は昼食後、それぞれの部屋へと戻っていった。クラリスは新しくアイデアを思いついたようで、そんな彼女の執筆の様子を見に、アナスタシアは早速クラリスについて行った。
誠十郎はと言えば、
ーお、神山さんやないか!グッドタイミングや!
特に用もなく劇場をふらふらしていた誠十郎は、ロビーで風組の、いや今は売店の売り子であるこまちに呼び止められた。
ーどうしたんですか、こまちさん?
どうやら彼女はただ呼び止めたわけでもないようで、誠十郎に向かってぶんぶんと手招きしている。
ーちょっと来てくれへんかっ
ーはい
誠十郎はこまちのいる売店の方へ歩いていく。
ーちょっと手伝って欲しいことがあるねん
ー手伝いですか?
ーうん、そうや
こまちはそう言うと事の顛末を話し出した。
ーいやな、最近屋根裏部屋を整理してたんやけど、えらい昔の台本を見つけてな。これがもう大量で
ーむかしの台本って、まさか
ーうん、先代花組の公演で使ってた台本や。当時公演していた時に量産してそれを売ってたらしいんや
ーそうなんですか。じゃあ、それを移動させるって事ですか?
誠十郎の問いにこまちは元気に言う。
ーその通り!力仕事やから人数は多い方が良いと思ってな。呼び止めたってわけや
"そんじゃ、来てもらえまへんか?"と彼女は続ける。
ーはい、良いですよ
2人は屋根裏部屋に向かった。
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屋根裏部屋ー
ーやっと来ましたね、神山さん
誠十郎とこまちは部屋に入ると誰かの声を聞いた。
ーカオルさんも手伝いに?
誠十郎が言った。
ーええ、初めはこまちさんと2人で整理しようと思っていたんですけど、この量ですから
カオルはそう言って、彼女の後ろにある箱に顔を向けた。
ーああ、本当に沢山あるんですね
そして誠十郎は"そういえば"と続ける。
ーこれ、どこに移動させるんですか?
ー売店やで。ずっとここに置いておくのも流石に邪魔になってまうからな、売ろうと思うんや
ーえ、いいんですか?
ーおう、すみれさんには許可取ってあるし、大丈夫や
カオルは2人の姿を目尻に、台本が入った箱を持って言う。
ーさ、2人とも、早く運んでしまいましょう
ーん、じゃあ行きまひょか
ーはい
3人は重い箱を持って部屋を後にした。
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売店ー
ーふう、これで全部だな
ーそれでは、中を出していきましょう
ー台本はこの棚に並べていってや
箱を全て運び終わった誠十郎、こまち、カオルは、その中から台本を出していく。
どのくらい手を動かしただろうか、一冊ずつ空いている棚に台本を並べ、その数も半分ほどになった頃、
ーん?これは…
誠十郎は台本に混じって現れた、薄いものを手に取った。写真だった。
そこには、13人の少女達に風組の服を着た3人、陸軍の服を着た2人が、そして中心には、誠十郎の戦闘服に似た服を着た青年が写っていた。
ーどうしたんや?神山さん
ーああいや、こんなものが出てきて…
誠十郎はこまちとカオルに写真を見せた。
ーこの写真に写っているのは…旧帝国華撃団、それに巴里華撃団皆さんですね
ーじゃあ、真ん中の人はその隊長…俺の先輩って事ですか
こまちは"せやで"と続ける。
ーこの人、大神一郎さんって言うてな、それはもう隊員達に慕われていたって話や。ちなみに戦闘服着てる13人と大神さんで、大神華撃団なんて呼ばれてたらしいで
先代華撃団の隊長は誠十郎が思っていたよりも凄い人であった。俺も皆から慕われ、信頼してもらえるように努力しなければと考えた。しかしそれと同時に、13人から慕われていたということに、恋愛的な心労はとてつもなかったのではないかと脳裏をよぎったが、それ以上考えるのはやめた。
そしてカオルは目をカッと開いた。
ーそれにしても、このすみれ様…あぁ、今よりお若い時も美しいわ…!
ーはは…そ、そうですね
ーせ、せやな…
カオルの言葉に誠十郎とこまちは彼女がすみれの事をよく慕っているのを思い出した。少々その思いは強すぎる気はするが。
そんな時、噂をすればと言わんばかりに紫の裾を揺らしやって来る影があった。
ーあら、懐かしい写真ですこと
ーあ、すみれさん
すみれは写真を見て言う。
ーいつの間にか台本に挟まっていたのですね
彼女の言葉に誠十郎は言う。
ーええ、写真だけでも、とても良い関係なのが伝わってきます
ーふふっ、それはもう良い間柄でしたわ。私はこの方達と過ごした日々を、一生忘れることはありませんわ
そう言ってすみれは微笑む。とても優しい顔だった。本当に当時の仲間達とは仲が良かったのだろう。
ーそう言えば、すみれさん
ーん?なんでしょう
今まで気になっていたことを聞いてみる。
ー以前すみれさんは、俺のことを2番目に良い男と言ってくれました。もしかして1番って…この写真の…
すみれは誠十郎に顔を向けた。
ーふっふふ、さあ、どうでしょうね?
そんな事を言う彼女であったが、その目からは愛が溢れていた。
暖かい雰囲気に包まれる4人であったがそれを打ち消すように劇場にサイレンが鳴り響いた。
ー降魔や…!
ー!…神山くん!
ーはい!
皆は作戦司令室に急いだ。
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作戦司令室ー
誠十郎達が司令室に着き間もなく、他の隊員も次々と揃った。
ー早速、降魔の情報を教えてちょうだい
すみれがそう言うとこまちとカオルはモニターを映す。
ー上野に降魔出現や。でも今回は今までとは違うタイプの降魔や
ーはい、今まで戦った事のないものです
すみれは、映し出された降魔を見て目を見開いた。
ー!…あのタイプの降魔は滅んでいるはず…
彼女の驚愕の声を聞きさくらが言う。
ーえ、そうなんですか!
ーええ、10年以上前に…
そして、アナスタシアが続ける。
ーしかし、そんなに前の降魔の出現場所は清められていて、もう出てこないと聞いていますが
ー長い年月をかけてまた異なる場所に現れたと考えるべきかしら…?
すみれはそう答えた。
ーでも、今はそんな事を考えても仕方ないわ。神山くん!
すみれの呼びかけに誠十郎は隊員達に号令をかける。
ーはい!帝国華撃団花組、出撃!!
ー"了解!"
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上野ー
ー数は大したこと無さそうですね
クラリスが言った。
すみれが言うにはもう存在しないはずの降魔が、空を舞っていた。その数は30はあるだろうか。傀儡機兵より大きいが、それでも数的にはたいして時間を掛けずに殲滅できるだろう。
あざみが呟く。
ー降りてこないね
降魔達は空を駆けるばかりで降りてくる気配がない。こちらに気づいていないのか、そもそも戦うつもりがないのか分からないが、このまま野放しにすることもできない。
誠十郎は早速、皆に指示を出す。
ー撃ち落とそう!クラリス、アナスタシア!
ー"はい!"
2人は空に向かって攻撃を始めた。頭上にカラフルな光が舞っていく。
ー俺とさくら、初穂は落ちてきた降魔を撃破!
ー"了解 !"
ーあざみはクラリスとアナスタシアの援護だ!
ーわかった!
この戦闘の序盤においての要は遠距離攻撃ができるクラリスとアナスタシアだ。彼女達に降魔の攻撃が向かえば、それ以降の戦闘が難しくなる。それを考慮すれば、小回りが効き、器用な戦いができるあざみに2人を守ってもらうのが良いと判断した。
ー攻撃が効きづらいわね…!
アナスタシアは攻撃を放ちながら言う。それに続き初穂、
ー確かに、しかも身のこなしも今までの降魔より良くなってるな
あざみも降魔の攻撃に苦戦しているようで、少し動きが鈍くなっている。
ー誠十郎、手伝って…!
ー今行く!さくら、初穂、ここは任せたぞ!
ーはい!
ーおう!
上野の大地に降魔の雄叫びと蒸気の吹き荒れる音が響く。その音も小さくなってきた頃、新たに黒い影が上空に現れた。そしてその体には所々金の装飾のようなものが付いていた。
ーみんな、気をつけろ!増援が来たぞ!
誠十郎の声に皆"了解!"と答える。直後、作戦司令室からのすみれの声が聞こえてきた。
ー降魔兵器…!?
ーどうしたんですか、すみれさん!
ーかつて人の手によって改造された降魔です。あれも、今では存在しないはずのものですわ…とにかく油断だけはしないようにして下さい。普通の降魔よりは高い能力を有しています!
ー分かりました!みんな、降魔兵器と接近戦になる前に残りの降魔を一気に片付けるぞ!
ー"了解!"
ーまずは俺が一掃する!
誠十郎は二刀を構えると叫ぶ。
ー縦横無尽!嵐!!
大地を力強く蹴って戦場を駆け巡り繰り出される剣技。純白の霊子戦闘機・無限が駆けた道は、文字通り嵐が過ぎ去った後のように降魔が転がっていた。
彼の後ろには同じく黄色の無限が続いていた。
ー残ったのは私が!望月流忍法、奥義!無双手裏剣!!
放たれた手裏剣は、誠十郎が取りこぼした降魔を確実に葬っていく。
ーよっしゃ!後はあいつらだけだぜ!
ーもう少し頑張ろう!
赤い無限はハンマーの柄を肩にドシっと乗せ、桜色の無限は血振する。
一瞬だけ上野に静寂が訪れたが、それも間もなく降魔兵器の羽ばたく音でかき消された。降魔兵器は先の降魔とは打って変わり、無限に向かって一直線、突撃してきた。
ー構えろ、みんな!
誠十郎は周りを見る。降魔兵器は前方からしか来ていない事を確認すると更に指示を出した。
ー作戦は火だ!
彼の声に、皆は一斉に陣形を組んだ。誠十郎とさくら、初穂は横並びとなり、その前にあざみが、そしてクラリスとアナスタシアは彼女達の間から顔を出し、後衛となった。あざみを自由に戦わせ、取りこぼした敵を誠十郎とさくら、初穂が確実に狩り、更にクラリスとアナスタシアが援護する事で積極的な攻めの戦いを行うという陣形だ。
ーよし、行くぞ!
ー"はい!"
前衛の4人は走り出す。その間から後衛の2人は前衛の前方に迫り来る降魔兵器を迎え撃つ。
ー落ちなさい!
ー逃しません!
少しずつ減っていく敵に油断はせず、まずあざみが敵の密集を解いていく。
ーはぁぁああ!
大きな爪で体制を崩された降魔兵器達を誠十郎とさくらはすかさず斬っていく。
ーせや!
ーはあ!
そして初穂が弱った降魔兵器をハンマーの重い一撃一撃で確実に葬り去る。
ーどりゃあ!吹っ飛べぇええ!
ーみんな、良い調子だ。このままで行くぞ!
ー"おう!"
無限達は日に照らされ、煌めく体を激しく揺らし敵を屠っていった。
すみれの言った通り降魔兵器は最初に出た降魔より強く、多少手こずった。しかしどのくらい戦っただろうか、その敵ももう数えられる程に減っていた。
そこでクラリスが叫ぶ。
ーこのまま私とアナスタシアさんで決められれますよ!
アナスタシアも続く。
ーええ、そうね。誠十郎、良いかしら!
彼女達の言葉に誠十郎は力強く答える。
ーああ、頼む!
ーはい!行きましょう、アナスタシアさん!
ーええ!
2人は構える。
ーアルビトル・ダンフェール!
ーアポリト・ミデン!
クラリスとアナスタシアが放つ光が交差し渦を巻く。輝く豪流は凄まじい音と共に空間を引き裂いて降魔達を散らしていった。
ーよし!やりましたね!
目の前に降魔の姿が無いのを確認したさくらが声を弾ませた。彼女に誠十郎も続く。
ーうん、良くやったぞ2人とも
ーふふ、まあ、当然の結果ね
ーありがとうございますっ
そして、あざみと初穂が言う。
ーふう、任務完了…だね
ーそんじゃみんな!いつもの「アレ」やるか!!
初穂が言う「アレ」というのは、降魔退治が終わった後のお約束の「アレ」だ。
ーああ、そうだな
皆は無限から降りると誠十郎を真ん中にして集まった。
ーよし、じゃあいくぞ!
誠十郎は皆にそう言ってさらに続ける。
ー勝利のポーズ!
ー"決め!"
隊員達の背後には、美しい青空が広がっていた。
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作戦司令室ー
降魔との戦闘が終わり無事に帝劇に帰ってきた隊員達は、司令室で今日の反省を終えると、それぞれの部屋に戻っていった。そんな中、花組の隊長、誠十郎と風組はこの場に残るようすみれに指示されていた。
当のすみれは"少し待っていてちょうだいね"と彼らを待機させる。何をするのだろうかと誠十郎は考えていると、司令室に現れたのは月組の2人だった。
ーいつきちゃんに、ひろみさん…月組まで集めて、一体何をするんですか?
ー私から説明します
そう言ったのはカオルだ。彼女は誠十郎に顔を向ける。
ー今回の出撃に関して、降魔の出現と同時に奇妙なことが起こったのが月組の方達によって分かったということですので、その周知を行います
ー奇妙なこと…?
誠十郎がカオルの言うことにそう返すと、すみれが口を開く。
ーええ、降魔が現れた時、今までに確認されなかった現象が起きたのよ。その事について、いつきさん、ひろみさん、説明をお願いしますわ
すみれの言葉に2人は答える。まず話したのはいつきだ。
ーはい。まず、これを見てください
そう言われて目の前の巨大なモニターに映し出されたのは、長屋の狭い路地から空を見上げた映像だった。特段珍しさもないような絵面に誠十郎が言う。
ー何も異常はないように見えますが
不思議そうな顔をする彼にこまちが言う。
ーいや、ここからが問題なんや、神山さん
こまちがそう言ってモニターに目をやった時だった。映し出されたのは、突如青い空がガラスのように割れ、そこから大量の、それも先程戦った降魔達が飛び出してくる映像だった。
ーこれは…!
明らかな異常事態に誠十郎は声を詰まらせた。彼とは変わって落ち着いた声でひろみが続く。
ー空が割れているように見えますが、月組の科学班によると、何かしらの操作で時空の破壊が行われ、そこからこのように降魔が送られてきたという事だそうです
彼女の言葉を聞き、すみれが呟く。
ー時空の破壊…
ひろみが答える。
ーはい。そして、この現象はニ都作戦で生み出された幻都の存在が不安定となった結果であるという説もあります…
ーっ…そうですか…
かつての仲間達が生み出した空間が現代に悪い影響を及ぼしている可能性があるという話に、すみれは苦い表情を浮かべた。
いつきが言う。
ーそして、この降魔を分析すると
映っている降魔が拡大される。
ーやはり、現代には居ないはずのものですわね
今の帝国華撃団は見たことのなかった降魔。すみれが言うように今回の降魔は、ニ都作戦以前に旧帝国華撃団が戦ってきたものだったらしい。モニターには降魔のデータが新しく映し出される。
ーだとしたら、過去から何者かに連れてこられている、と言う事なのかしら…?
すみれがまた呟いた。ひろみが答える。
ーはい。神崎司令が言うように、現段階ではその説が1番有効なものとされています
誠十郎が言う。
ー過去から降魔を出現させる…か。そんなことができる敵が本当にいれば、今までにない熾烈な戦いになりますね…
暗い雰囲気の中、こまちが声を響かせた。
ーいやぁ、この映像、神山さん達が帰還する間に見たもんやったけど、やっぱりとんでもないことが起こる予兆みたいでちょっと怖いわぁ
さらにカオルが言う。
ーしかし、こう暗いままではできることもできなくなってしまいます
彼女達に続き、すみれは優しく微笑んで言う。
ーええ、そうですわね。ですから今はしっかりと体を休めましょう。帝劇の次の公演のためにも、あの子達には頑張って頂きたいですし
誠十郎以外の隊員を先に戻らせたのは、先程の話を聞かせ、変に緊張させないためだったのかもしれない。
ーさあ皆さん、今日はこの辺りで解散しましょう
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帝劇2階廊下ー
誠十郎が司令室から部屋に戻ろうとするところ、彼はさくら達がサロンでわいわいと賑わっているのを見つけた。
ーあ、誠十郎さん!
早速彼を見つけたさくらはこちらに手を振った。誠十郎も同じように手を振る。皆の近くに行くと初穂が問う。
ー誠十郎、さっきは何を話していたんだ?
ーん、まあ、色々だよ
歯切れの悪い言い方に初穂は頭の上に「?」を浮かべる。すると、さくらが言う。
ーま、まさか怒られてたんですか!?
ーなっ、そんなことはないぞ!
ーじゃあ、何してたんですか?
そんなやりとりにアナスタシアが言う。
ーさくら、あまり聞いてあげない方が良いわ。こういう場合は、まだ私たちは知らなくて良い情報という事なんだから
ーえ、そんなことが?
クラリスはアナスタシアの言葉にそう言った。そしてさくらはまたもや誠十郎に問う。
ーそうなんですか?
ーそ、そこはノーコメントってことで
ーむう
さくらは、理由はさておいて隠し事をされている感じに違和感があるらしい。そしてあざみは、
ー任務に関わる秘密なら仕方ない
忍びの者であるが故か、納得してくれた。
ーまあそう言うことだからさ、みんなは心配せずに過ごしてくれ
誠十郎がそう言うと初穂は"ま、細かいことは気にせずいこうぜ!"と場を賑やかす。
降魔が出現しても、今日も帝都は平和を保っている。これも皆、帝国華撃団の働き、そして目の前に広がる彼女達の笑顔があるが故なのだろう。誠十郎は帝都を、そして彼女達のために戦う心をより強く感じた。
窓から美しい夕日がこちらを照らす。そういえば、そろそろ夕飯の時間か。そんな事を考えていると、誰かの腹の音が聞こえた。
ーへへ、戦ったらお腹空いちゃった…
さくらの照れた頬は、橙色の光に照らされていても分かるくらいだった。
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次回予告ー
また空を割って出現した降魔、いや、あれは霊子戦闘機?
すみれさんが言うにはヤフキエルというらしく、これまた昔に帝都を脅かした敵が現れた!
やっとのことで撃退したら今度は帝劇の中庭に緑のデカブツが落ちてくる!
その中から現れた美少女とは!?
次回「天才発明家は爆発と共に」
太正桜にロマンの嵐!
すみれはん…老けたなぁ
ぬぁあんですってえ!?
今回の話はどうだったでしょうか?
ぜひ、コメントをお願いします!