真サクラ大戦〜時超え、空翔け、可能性の先へ〜   作:ざぎねぅ

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2話 天才発明家は爆発と共に 後編

そう、あれは…

 

―霊子…戦闘機…?

 

―無限…なわけねぇよな…

 

 誠十郎と初穂にクラリスとさくらも続く。

 

―羽が付いてます…

 

―飛べる…のかな?

 

 そうして立ち上がった皆をその霊子戦闘機のような物が見下ろしている。しかし、立ち止まっているわけにはいかない。誠十郎は声を張る。

 

―あざみ、アナスタシア!こいつを動けないようにしておいてくれ!

 

―"了解!"

 

―クラリスとさくらはいつきちゃんとひろみさんを安全な場所へ!

 

―"はい!"

 

 次々と指示を出す誠十郎は最後に、初穂と共に自分達の無限の方に駆け出す。

 

―いくぞ初穂!

 

―おう!

 

 無限まで走ってもさほど時間は掛からなかった。突如現れた暴れる敵と、アナスタシア、あざみが撃ち合う中、2人は無限に乗り込み起動させる。モニターのマップには、新たに時空の裂け目が増えていることが示されている。

 

―やっぱりか…!

 

―けど、いつ来てもぶっ飛ばしてやるぜ!

 

 無限に霊力が宿り、鋼鉄の体が力強く立ち上がる。輝く一つ目が敵を睨んだ。

 

―皆さん、大丈夫ですか!?

 

 司令室からすみれが通信を送った。

 

―はい!今あざみとアナスタシアが敵の対応を行なっています。今から俺と初穂が援護に向かいます!さくらとクラリスは月組の避難を!

 

―わかりました、ありがとうございます

 

 状況を報告した誠十郎は更に続ける。

 

―それで、あの霊子戦闘機のようなものは何ですか

 

 すみれは、聞かれることは分かっていたという様子で答える。

 

―時空の裂け目が新しく現れたので分かっているかと思いますが、あれも昔、帝都を襲ったものです。ヤフキエルと言いって、光武のような形をしていますが…

 

―ぐあ…!

 

 あざみがそのヤフキエルの攻撃を受けた。そんな姿を目に、アナスタシアは苦い声音で言う。

 

―中に人が入っていると思うと、下手に攻撃できないわね…!

 

 しかしすみれは言う。

 

―皆さん、その心配は無用です。ヤフキエルの中身は降魔ですから、いつも通り戦ってください!

 

 彼女の声に初穂はヤフキエルの方へ駆け出す。

 

―だったら手加減いらねぇな!

 

―待つんだ、初穂!

 

 誠十郎は彼女を止める。ヤフキエルが一体、また一体と増え出したからだ。

 

―ヤフキエルが増えてる!周囲に気をつけるんだぞ!

 

―ああ!

 

――――――――――――――――――――

 

 月組の2人の避難の為、さくらとクラリスは彼女達を連れて走っていた。

 

―はぁ…ここまで来れば大丈夫かな

 

―裂け目からも随分離れたし…はぁ…大丈夫だと思います

 

 2人の様子にいつきが言う。

 

―はぁ…はぁ…さすが、花組…あんまり疲れて…はぁ…ないですね…はぁ…

 

 ここまで休まず走り続けたのだ。相当、息が切れている。同じくひろみもだ。

 

―私達…はぁ、はぁ…現場に出ても走ることって…あんまりなかったから…はぁ…とっても疲れちゃいます…はぁ…

 

 そこでさくらは胸を張る。

 

―そりゃあ、鍛えてますからっ

 

 と言ったところで、頭上を黒い影が走った。カラスではないだろう。何しろとても大きいのだから。

 

―…?

 

 さくらはその影を追うと、

 

―わ!お、追ってきたの!?

 

 彼女は目の前に着地したヤフキエルに驚く。

 

―いつきさん、ひろみさん、私の後ろに!

 

 クラリスは2人の前に立ち、敵に向かって構えた。その手にあるのは魔導書だ。

 ヤフキエルは彼女達に拳を振り上げる。

 

―…!

 

 絶対絶命の瞬間、割って入ってくる者がいた。

 

―"せい!"

 

 響いた気合の声と同時にヤフキエルが視界から消える。代わりに現れたのは、翡翠と山吹色の霊子戦闘機、王龍(わんろん)だ。

 

―上海華撃団、参上!

 

―来てくれたんだ…!

 

 安堵するさくらの言葉に答えるように、シャオロンは言う。

 

―俺たちの力が必要なようだな!

 

―ちょっとあんたたち!気が緩んでんじゃないの?

 

 そう言っている間にも、ヤフキエルが周囲に増えていく。

 

―お、大漁じゃねえか!だがこんな数捌くなんざ朝飯前だぜ、いくぞユイ!

 

―言われなくても!

 

 2体の王龍は地を蹴ってヤフキエル達に迫っていく。

 

―セリャア!

 

―エイ!

 

 シャオロンとユイが生み出す王龍のコンビネーションは、その圧倒的な機動力でヤフキエルを翻弄し、疾風の如く繰り出される拳と双脚の連打でヤフキエルを撃破していく。

 そうこうしているうちに、さくら達が逃げられる道が開かれる。

 

―おい、行け!

 

―こいつらが増えないうちに早く!

 

―ありがとうございます!

 

 クラリスの言葉の直後、4人は開かれた道を走って行った。

 彼女達を目尻に送ったシャオロンは、目の前のヤフキエルを破壊すると言う。

 

―さて…

 

 そして見上げた。

 

―飛ばれちゃあ、攻撃できねぇだろ!

 

 頭上に広がるのは、青空の星のように点々と浮かんでいるヤフキエルの姿だ。星と言うには乱暴すぎるか。しかし飛びながら攻撃してきては流石に戦い辛い、シャオロンは思わず声を張り上げる。そんな愚痴のような叫びに、ユイは同じく見上げながら言う。

 

―インファイターな私たちとは、相性悪いもんね…

 

 とは言え中々降りてこないヤフキエルを眺めていると、突然その中の1つが火を吹いて落ちていった。

 

―あ…

 

―落ちてったね

 

 2人は赤い流れ星をぽかんと見つめている。いや、流れ星というにも乱暴か。そして、彼らの後方から冷たく落ち着いた声が響く。

 

―お困りのようだな

 

―この程度の相手に手こずるとは

 

 その声に振り向いてシャオロンは答える。

 

―やっぱりお前たちか、伯林華撃団

 

 ヤフキエルを落としたのは、その遠距離攻撃が特徴的な伯林華撃団だ。

 

―って!なんで伯林が帝都に!?

 

 ユイの言葉も当然、伯林華撃団は基本ドイツに居るはずだ。そんな彼女の驚きにエリスは答える。

 

―なんでもなにも、暇ができたから普通に観光に来ているだけだ

 

 ユイは”そっか”と続ける。

 

―ま、来てくれたんだし、ちゃっちゃと終わらせよう!

 

―そうだな。で、勝率は?

 

 マルガレーテはシャオロンの問いに即答する。

 

―100%

 

―フッ…そうこなくっちゃなあ!!

 

 シャオロンの声と同時に、霊子戦闘機たちが駆ける。

 アイゼンイエーガーが空に蠢くヤフキエルを墜とし、それを王龍が確実に破壊してゆく。嵐が通るように拳と銃弾が降り注ぎ、鋼の悪魔が次々と倒れ、爆散する。

 炎を纏いし龍の王と、獲物を捕らえた鋼鉄の狩人が力を合わせた時、そこに立つものは何であろうと逃げることすら叶わなかった。

 

――――――――――――――――――――

 

 

 一方さくらとクラリスは月組の二人を今度こそ安全な場所に避難させ、自分たちの無限のところに戻ってきていた。今、2人は鉄のからくりに霊力という血を流し込み、帝都を守護する巨人として立ち上がった。

 前方に見えるのは仲間が葬ってきた降魔兵器”ヤフキエル”の残骸、そして今なお地を駆け、剣を振るい、魔の弾を放ち、そして敵を叩きつける4つの勇士だった。

 

―クラリス、行こう!

 

―はい!

 

 この光景を見ては自分たちも負けてはいられない。さくらは刀を抜き、クラリスは魔導書を開き、飛び出した。入り組んだ町を器用に駆け巡って、迫りくるヤフキエルを打ち倒す。

 

―みんな!

 

―お待たせしました!

 

 最前線にたどり着いたさくらとクラリスが皆に戻ってきたことを知らせた。誠十郎は相手にしていた敵を切り伏せ、2人の方向に振り向くと”ありがとう、2人とも”と言うと更に続ける。

 

―みんな、作戦は林で行くぞ!

 

―はい!

 

 早速、誠十郎の指示で動く花組達。さくらと誠十郎は横並びで前衛中央に、左右に距離を開けて初穂とあざみが、そして後衛に初穂の援護としてアナスタシア、同じく後衛にあざみの援護としてクラリスが陣を形作る。さくらと誠十郎は両方刀の使い手であるため連携がとりやすい。初穂はその強力な火力の代わりに機動が重い。確実に敵の動きを止める必要があるため、アナスタシアのある程度精密な射撃でその弱点を補う。一方あざみは機動に関して申し分ないがその火力は突出しない。そのため、クラリスの大火力の魔法射撃で力不足を補う。

 林作戦はこのようにお互いのバランスを取り合うもので、上空から見ればクラリスとアナスタシアを軸にした扇型、またはその2人を短辺とした台形の陣形だった。

 

―はっ…!

 

―たあ!

 

 白銀の無限はその双刀でヤフキエルの装甲を断ち切り、桜色の無限はちらちらと舞い散る花びらの如く煌めく剣を振るい、敵を両断していく。

 

―止まりなさい…!

 

―そりゃあ!

 

 群青の無限が放つ光弾は宙を穿って突き進み、ヤフキエルは火花に抱かれて身を反らした。その姿を紅蓮の無限が見逃すはずもなく、その背丈ほどある大槌を天罰かの如く振るうことで、敵を木端微塵と化していた。

 

—望月流忍法!

 

 黄色の無限は囲まれている。かと思えばそれは、敵の注目を敢えて自分に集中させただけだった。

 

—はっ!

 

 群がるヤフキエルの中心で無限は力強く大地を蹴り、その頭上に飛び上がった。全身を覗かせ日の光を浴び輝く。その姿はまさに黄金であった。

 跳躍後の自由落下へ差し掛かろうとしたその瞬間、

 

―影分身!!

 

 黄金の無限は6つに分かれ着地する。先程とは真逆にヤフキエル達を囲んだ状態でその背を蹴り飛ばし、なるべく密集させるようにする。すると、

 

―まとめて吹き飛ばします!

 

 そうして、深緑の無限が繰り出した大魔法はヤフキエルを炎に変えた。遠距離にでも感じられそうな熱が爆風と共に発生するが問題はない。その火の嵐を覆い包むようにバリアが貼られている。凄まじい威力をしてなお受け止められるその大壁は、彼女が心からこの町を守りたいと思う決意の硬さを示しているのだ。

 花組の絆は戦いの中でも感じられ、そう言わずとも彼らの連携がその強さを物語っていた。その強大さに身を震わせたか、時空の裂け目はいつしか2つとも消えていた。援軍はもうこない。遠くで戦う上海と伯林華撃団の活躍も相まって、急遽始まったヤフキエル掃討の任務は程なくして終わりを迎えるのだった。

 

――――――――――――――――――――

 

サロン―

 

 

 窓から夕日を浴びたサロンにさくらとクラリス、誠十郎は来ていた。

 

―はぁぁぁ…つかれたぁぁ…

 

 さくらは全身から息を出したかのように、深くソファにうつ伏せで身を預けた。そのまま一体化してしまいそうなくらいにふにゃふにゃだ。

 

―ははっ、さくらは今日、朝から動きっぱなしだったからな。しっかり休むんだぞ

 

 そう言う誠十郎にさくらが問う。

 

―誠十郎さんは疲れてないんですかぁ?

 

―まあ、鍛えてるからな

 

 そんな回答にクラリスは目を細め微笑んだ。

 

―ふふっ、2人とも同じことを言っていますね

 

―え?そんな事言ってたのか?

 

 クラリスの言葉に、誠十郎の目がさくらを写す。

 

―ふふ…

 

 彼女を見れば、こちらに優しく微笑みを向けていることが分かった。疲れた表情だからなのか知れないが、その表情は誠十郎にとってとても大人びていて、アナスタシアにも劣らない色気を感じさせた。そんなさくらの雰囲気に誠十郎はどきっとさせられる。

 

―む…

 

 と思えば今度は唇を尖らせる。何故だ。

 いつもながらほんわかした空気だったがしかし、

 

 ズドオオオオオオオオオン!!

 

―んぎゃあああああああああ!!

 

 爆発かと思うような轟音と共に初穂の叫び声が聞こえた。

 

―何だ!?

 

―爆発!?

 

―と、とりあえず中庭に行きましょう!

 

――――――――――――――――――――

 

中庭―

 

 

 とてつもない音に、花組達は続々と中庭に集まっていた。

 

―こ、これは…

 

 先に来ていたアナスタシアが目を丸くしてつぶやいた。

 

―な、なんか落ちてきたんだよぉ!

 

 恐らく落ちてきた様子を目の前で見ていたであろう初穂は縋るように声を上げる。

 

―どうしたの?

 

 あざみはどこからともなく現れ、様子を伺いに来た。その直後に誠十郎、さくら、クラリスがやってくる。そして霊子水晶の前、そこに煙を上げて横たわるデカブツを見て驚愕する。

 

―こ、これって…

 

 さくらは確認するように誠十郎とクラリスに振り向いた。

 

―ええ、緑の…

 

 クラリスも続いて誠十郎を見た。

 

―霊子…戦闘機……

 

 そうだ。彼らには霊子戦闘機に見えた。2本平行に並んだレールを走る2つの目。緑のベース色にところどころ金の装飾が施されている。そして両腕両肩にはなにやら砲のようなものが備わっている。

 

―でもあれ、三式光武に似てるかも…

 

 確かにそうだった。目の前をじっと見つめるさくらの言う通り、その姿は霊子戦闘機というより霊子甲冑の風貌だ。

 

―ああ、だったらこれは…

 

 ”かつての光武だ”

 

 誠十郎はそう口に出そうとしたとき、中庭にもう1人現れるものがいた。

 

―何が起きたんです!?……の?

 

 すみれだ。激しい物音に驚きを隠せないという様子だったが、それは落ちてきたものを見た瞬間別の驚きへと上書きされた。

 

―こ…れは……

 

―すみれさん…これって

 

 彼女に声をかける誠十郎など気にせず、信じられないという表情で目を見開きながら歩いてくる。

 

―光武…弐式……

 

 そうつぶやくと、すみれは光武弐式に手を触れた。

 

―…!

 

 その瞬間、光武は蒸気を噴き出す。すみれは驚き体を一瞬震わせたが、直後に起こる出来事に身構えた。

 操縦席のハッチが開かれたのだ。それはゆっくりと、すみれにとっては永遠にも思えるような時間をかけてだ。

 

―…ん、ここは…

 

 紫の三つ編みが見えたかと思えば、

 

―お、久しぶりの帝劇の匂いやな…

 

 今度は関西弁が聞こえてくる。

 

―でもさっきまで幻都におったし…ん?…ということはウチはついに実験中に死んでもうたのか…!?

 

 そんな独り言を聞いて我慢できなかったのか、ハッチが完全に開く前にすみれが言う。

 

―死んでなんか…いませんわ…

 

 すみれの言葉に”そうなんか”と答えてまた独り言を続ける。

 

―じゃあ、なんかの間違いで幻都から元の帝都に戻ってきてしまったっちゅうことやな…どないして帰ろ…

 

 そしてついに、すみれと光武の間を隔てた時が取り払われた。すみれは扉の先にある顔を見ると、今にも泣きじゃくりそうに表情をゆがませた。しかし、涙は流さない。流すわけにはいかない。すみれは静かに喉を震わせる。

 

―紅蘭…なのですね…?

 

 紅蘭と呼ばれたその人は目を細め、ずれていた眼鏡を上げると顔をすみれに近づけた。

 

―んん?

 

 すみれは紅蘭をじっと見つめる。

 

―もしかして…すみれはん…?

 

 まごうことなく紅蘭だと確信するとすみれは、無意識に優しく彼女を抱きしめた。

 

―ああ、よかった…

 

 本来なら叱ってやらねばならなかった。帝都を守るために幻都へ行ったのに、事故だろうとはいえこうして帰ってきてしまったことを。しかしそんなことより仲間に会えた喜びが上回ったのだ。無事だった友が愛おしくて、仕方がなかったのだ。

 紅蘭は抱きしめられながら周りを見渡すと、その目に誠十郎たち”今”の花組を写した。そして気付く。

 

―ここ、まさか未来の帝都なんか?

 

 紅蘭の問いにすみれは彼女の顔を見て答える。

 

―はい、そうです

 

 その表情はとても暖かかった。

 

―にしても…

 

 そう言って目を潤す彼女を見つめ、紅蘭は静かに呼ぶ。

 

―すみれはん…

 

―はい…

 

 すると紅蘭は眉を八の字にした。

 

―老けたなぁ…

 

 周りにいる誰もが、場が凍りついたのを感じた。

 

―な…ななな……な

 

 感動の再会だからといってそんなことを言えば流石に、

 

 

―ぬぁああんですってぇえええ!?

 

 

 百年の恋も冷めやらぬ気分だろう。

 

――――――――――――――――――――

 

 

次回予告―

 

 

 紅蘭は幻都の中である実験中に今の帝都に落ちてきたらしい

 降魔皇との戦いが徐々に明かされていく中、今度現れるのは黒い光武を引き連れた仮面の鬼?

 またまたすみれさんが言うには、あれはさくらがあこがれる真宮寺さくらのお父さん!

 なんだけどちょっと様子がおかしい。さくらぁ、さくらぁ、なんて言いながら暴れてる!

 旧式の光武を整備できると知った令士もウッキウキだ!

 

次回「闇剣豪、再び」

 

太正桜にロマンの嵐!

 

紅蘭も出撃してください!

よっしゃあ!すみれはんの分もやったるで!!

 




今回の話はどうだったでしょうか?
ぜひ、コメントをお願いします!

次回更新はかなり先になりそうなので、気長に待っていただければと思います
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