………………このままキンジがヒロインにならないか心配です(;・ω・)
4/28 味気無いかと思い、サブタイトルをちょっと変えましたm(__)m
その日、加賀遼太郎は上機嫌だった。
以前より考案していた面白弾薬三種の生成につい先日成功し、今日の試し撃ちでもそれぞれ期待通りの結果を得られ、更に昼に買ったシャリシャリくんソーダ味は二本連続で当たりが出た。
だから、キンジがアポなしで工房に来た時も、特に気にせずに迎えた。
しかし……、扉の前に立っていたキンジは、顔色は不摂生な生活を送っている加賀の目から見ても相当悪く、目の下に分厚い隈を張り付け、まるでゾンビにでもなったかのように衰弱していた。
「オイッ!! どうしたんだ、キンジ!?」
「………………」
「キンジ?」
加賀の問いかけに、キンジは掠れた声でポツリとだけ呟いた。
「兄さんが……行方不明になった……………」
※ ※ ※
数ヶ月前、加賀遼太郎が遠山キンジに抱いていた印象は、女嫌いだが、何処までも武偵という職業にひた向きな奴、というものだった。
キンジの兄である遠山金一とも『装備科と依頼人』という繋がりがあった加賀は遠山家の体質、ヒステリア・サバン・シンドロームのことも知っていたため、キンジの女嫌いの理由については、想像がついていたのだか、彼のいっそ崇拝とも呼べる武偵への憧れは理解できなかった。
勿論、武偵は多くの人を凶悪化する犯罪から守る尊い職業だし、遠山家が代々続く『正義の一族』である事も分かっているが、彼の憧れはそう言ったモノとは少し違って見えたのだ。
だから聞いてみた。
「キンジ、お前は何で武偵を目指してるんだ?」
「何だよ、藪から棒に」
「いや、ちょっとした好奇心だ。教えたくなけりゃ別にいい」
「…………俺の兄さんも武偵なんだけどな」
「金一さんだろ? 知ってるよ」
加賀が何でもないように言うとキンジはギョッとした顔をした。
「何で知ってんだ!?」
「そりゃ、知ってるさ。俺のお得意様の一人だからな」
「ナッ!! そんな事聞いてないぞ!?」
「訊かれなかったからな。それより、金一さんが何でお前の武偵を目指す理由になるんだ?」
「……お前も兄さんを知ってるなら分かんだろ? あれこそ正に、最高の武偵だ。俺は兄さんみたいな正義の味方になりたいんだ!!」
「兄さんみたいな、ね……」
それを聞いたとき、加賀はキンジを危ういと感じた。自身の行動理由を他人に預けている人間は総じて強いが、脆い。
預けた相手が何者にも何事にも揺るがせないモノなら良い。しかし、人間にそれを預けた奴は往々にして揺らぎやすい。
他者とは、理解できないから他者なのだ。他者に対する信頼や尊敬は自分自身の認識でしかない。そして、人の認識や印象はひどく移ろいやすい。
「……ま、気負い過ぎんなよ」
「なんだよ、いきなり……。お前が気遣うとか気味が悪ぃな」
「ハッハッハ、撃ち殺すぞ、テメェ?」
※ ※ ※
(危惧してた事が起きちまったか……。キンジの精神的な脆さについては金一さんも結構心配してたからなぁ……)
衰弱していたキンジを中に入れて、お茶を出しながら、加賀はふと、東京武偵高校への入学が決まった時の、金一さんからの依頼を思い出した。
『もし、キンジが道に迷って泣いていた時に君が傍にいたら、助けてあげてくれないか?』
その時は、それ男に頼むことじゃなくないですか?とかなんとか言った気がするが……。まさか、その依頼のために動く日が来るとは思ってもみなかった。
想像以上に、というか予想外に面倒だった依頼内容に頭を抱えていると、 キンジが小さく声をかけてきた。
「悪ぃな。今、何処行ってもマスコミが追い掛けて来て、行き場がないんだ……」
「ああ? 何でマスコミがお前をストーカーすんだ? 遺族にお悔やみメッセージでも言いに来たのか?」
加賀が訊くとキンジは歯を食い縛り、目に涙を浮かべ始めた。
「お、おい」
「兄さんは、命懸けで乗客の命を救った英雄なんだ!! それなのに、アイツらは――!!」
「……とりあえず、ゆっくりで良い。何があったのか話せ」
それから加賀は、なんとか落ち着かせながらキンジから話を聞いた。
金一さんが乗っていた客船が武偵殺しによってシージャックを受けた。金一さんは自身の安全や犯人逮捕よりも乗客の安全を優先し、そのお陰で乗客に死傷者は一人も出なかった。しかし、クルージング・イベント会社のお偉方は自身の責任問題になることを恐れて、金一さんにその責任をお仕着せた。曰く、その場に居合わせたのにも関わらず、シージャックを未然に防げなかったのはその武偵の怠慢である、だそうだ。
聞いてみればなんてことはない、腐った大人が腐った手段で責任を居ない人間に押し付けただけの事だ。
本当に、下らない……。
「うぅ……ぅぁ……ぅぅう……!!」
こんな下らない大人の腐った事情で、誰かが泣くなんて……………………………………下らなさ過ぎて笑えちまうだろクソったれ!!!
「キンジ、三週間だ」
「……何がだよ?」
「三週間後の午後6時テレビのニュースを必ず見ろ。良いか、必ずだ」
「……三週間後に何があるってんだよ」
加賀は愛用の黒いインバネスコートを羽織り、滅多に出ることのない工房の扉に手をかけ、首だけでキンジの方へ振り返る。
「お前の兄貴からの依頼をこなしてくる」
キンジに顧客情報をあっさり渡してるのは、肉親でキンジが金一に並みならぬ尊敬の念を持っていたからです。ほかの顧客情報は勿論シークレットです( ´∀`)