キンジのヒロイン力がヤバ過ぎて笑えない(;・ω・)
冬の日の入りは早いもので、夕方の五時にもなればもう外は暗い。
「兄さんからの依頼って……何があるってんだよ………」
キンジが加賀に話をしてから今日でちょうど三週間目だ。その間もキンジは何もやる気が起きないでいた。あれから何度か加賀の工房に行ったが、普段滅多に工房から出ることのない生活をしてるくせに、いつ行っても不在だった。しかし、あの工房は意味が分からないほどセキュリティがしっかりしていて、マスコミから逃げるにはうってつけなため最近はかなり入り浸ってしまっている。
「確か午後6時のニュースだったよな」
キンジは意思を感じさせないノロノロとした動きでテレビのスイッチを入れ、チャンネルを回した。
『こちら、先日遠山金一武偵の職務怠慢と武偵殺しによって大きな打撃を受けたクルージング・イベント会社の新型豪華客船の甲板より生中継でお送りしております』
「…………っ!!」
キンジは歯を食い縛り、親の仇を見るようにテレビを睨み付けた。
『本日はあの痛ましい事件から完全に立ち直るべく、この豪華客船の甲板より、大規模な花火大会を今までにない形で開催!! 何でも最新の技術によって花火の大幅な小型化に成功し、本日はその開発者で東京武偵高校のアムドの所属でもあります、加賀遼太郎さんの監修の下、本物の拳銃を用いてこの夜空に大輪の花火を打ち上げるとのことです!!』
(加賀が……? アイツ、一体何考えてんだ?)
キンジの疑問を置き去りに、画面の向こうでは甲板の真ん中に設置されたステージで加賀は音楽に合わせて上空に曲芸撃ちを行い、加賀が作ったらしい花火弾が夜空に色とりどりの華を咲かせていた。中継をしている女性アナウンサーは仕切りに凄い凄いと絶賛している。
しばらくそうしていると、唐突に加賀が動きを止めた。
『どうしたのでしょうか? 加賀さんが突然止まってしまいました』
アナウンサーが心配する中、加賀は何度か息を調えるような仕草をした後、大きく深呼吸をする。
『今から特別プログラム!! 俺からある人へこの花火を使ってメッセージを送ります!!』
『な、なんと!! 加賀さん、このイベントを使って思いを伝えたい人がいらっしゃるようです!!』
(おいおい、本当に何考えてんだ!?)
加賀はゆっくりとした動作で新しい弾のリロードを終えると、その銃を空に向け――――
『これが俺のメッセージだ、クソ野郎!!』
暴言と共に撃ち出された花火弾は夜空のキャパスにデカデカとメッセージを吐き出す。
【テメェらの罪状は上がってる。さっさと自首しろ、クソ野郎】
「『は?』」
偶然にも画面の中と外で声が重なった。呆然とするアナウンサーを尻目に加賀は不敵な笑顔を張り付けて、カメラに向かって話し出す。
『メッセージの通りだ、この船のクルージング・イベント会社のクソ野郎ども。テメェらの船舶安全法違反、横領、国際犯罪グループとの取引その他諸々証拠もガッツリ揃えてやったんだ。言い逃れなんてできねぇし、させねぇよ』
言いながら、加賀は懐から証拠や証拠品のリストらしき紙束を取りだし、ヒラヒラと振り、懐に戻すと再び空に向けて今度は数発発砲する。
【遠山金一最高!!】【金一さんのお陰で命拾いしました】【カナさん、結婚してくれー!】【金一さん、感謝してます】【I love 遠山!!】
『これは、金一さんに命を助けられた武偵どものメッセージの一部だ。テメェら、遠山武偵の事ずいぶん馬鹿にしてくれたみてぇだけどな。遠山金一は消え行くはずの命を数多く救った俺たち武偵の誇りだ。それを踏みにじるってんなら――』
加賀は、静かに銃口を船の天辺ではためく社章を入れた旗に向け、
『―――ブタ箱ブチこまれる覚悟くらいしろやああああああああああ!!!!』
放たれた銃弾は炎の尾を空中に描きながら旗を焼き尽くし、
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!!!
大 爆 発 し た!!
「ったく、無茶苦茶し過ぎだ……バカ野郎」
キンジは、一気に光量を増した画面を見詰めながら、静かに滂沱の涙を流していた。
嬉しかった。兄の事を武偵の誇りだと言ってくれた事が、自分の誇りでもあった兄を認めてくれた事が、こんなとんでもない手間を掛けて、おそらく自分のために動いてくれる友人がいる事が…。
キンジはただ、例えようもなく嬉しかった。
画面の中ではこの騒ぎの主犯であり、キンジの最高の友人が、カメラに向かって何の含みもない笑顔浮かべていた。
『見てるな、キンジ。これが武偵だ!!』
はい、という訳で主人公はキンジの友人から親友に格上げです!!
やったね、キンちゃん!! 親友ができたよ!