なんか一人だけ世界観が違う 作:志生野柱
雪かきは想定より簡単に終わった。
フィリップは当初、まだ固まっていない雪をシャベルで退けて、ガチガチに凍った雪をノコギリで切り出して捨てて……という重労働を想定していた。所謂雪かき、普通はそうする作業を。
だが実際には、アンテノーラの蹴り数発で十分だった。
倉庫へ道具を取りに行ったカノンが帰ってきた頃には、扉の半分ほどを埋めていた雪は完全に消え、外開きの可動域を完璧に確保していた。
「流石北部の建物だね。横からの力にも強く出来てる」
「他の所は違うのですか?」
割れも歪みもない壁と扉を、フィリップは感心の目で見遣る。
シャベルで殴り掛かるカノンを片手で抑えながら、アンテノーラは素朴な疑問を口にした。
大陸南部から遥々王都までやってきた彼女だが、陸は一年目。積もった雪を見るのも今回が初めてだし、人間の建築事情なんか知る由もない。
かと言って、フィリップもそれほど詳しいわけではないが。
「窓枠が外れたり、扉が外れたり、壁が崩れたり……凄いよ、雪の重みって。どう建てたら耐えられるのかは知らないけど。建材も設計も違うんだろうね」
のほほんとした会話を切り上げ、ドアノブに手を掛ける。
雪の下に埋まっていた金属は、手袋越しでも僅かに感じるほど冷え切っていた。
だが、その機能は損なわれていない。
ドアノブはすんなりと回り、鍵の掛かっていない扉は僅かに軋みながらも滑らかに開いた。
明かりも無く、雨戸も閉め切られた聖堂内は暗く、全くと言っていいほど何も見えない。
入口の明かりが届く範囲は綺麗なもので、埃が積もっている様子もなければ、雪が入り込んで濡れているなんてこともない。手入れがきちんと行き届いているようだ。
「さて、取り敢えず明かりを──」
「──待って。誰かいるわ」
「……え?」
無警戒に中へ入ろうとしたフィリップの肩を掴み、警告したのはカイナだ。
人間には見えない光量の暗所でも、エルフの感覚なら問題なく見通せるのはエレナで知っている。
つまり、彼女はフィリップには見えない場所を見た上で警告しているということ。
「……血塗れのドレスを着た女ですか?」
「いえ、防寒着……ね。色は分かりにくいけど、たぶん土色? 倒れて動かないわ」
言って、カイナはつかつかと暗闇の中に踏み入っていく。
アンテノーラの魔術が礼拝堂の各所にある燭台へ火を灯し、堂内を照らし出した。
礼拝堂の最奥には祭壇があり、燭台と、聖典が一つ。
たったそれだけの、聖女や天使の像もステンドグラスもない、簡素な空間だ。縦横二十メートル前後の、本当に、ただ日々の祈りを捧げるためだけの場所。
その中に、人が倒れていた。
身に纏っているのは僅かに土で汚れた防寒具とケープ。あの血塗られたウエディングドレスではない。
「管理人ですか?」
「いや、違う……誰だ?」
フィリップは無警戒にのこのこと歩み寄り、身体を丸めるように倒れている人間の顔を覗き込んだ。
女だ。
だが初老の管理人とは違う。三十代くらいだろうか。王国人として平凡な顔立ちだが、血の気の失せた土気色の肌や病的に痩せた身体が目に付く。
首筋に手を添えれば、冷たいながらも僅かな拍動を感じた。
「死体……じゃないな。まだ生きてる。脈も呼吸もかなり弱いけど……え、ホントに誰? ここで何してたの?」
駅宿の宿泊者名簿は見たが、フィリップたちと商人ギルドの女性以外に宿泊客は居なかった。
というか、倒れている女は防寒具こそ着ているものの、どう見ても旅装ではない。まず荷物らしきものが見当たらない。
近所の人がふらりと礼拝に訪れたような、そんな出で立ちだ。
「お祈り中に吹雪で扉が塞がれて、そのまま……とか?」
「いやいや、脱水か空腹か、或いは低体温かは知らないけど、倒れる前に窓から出ればいいじゃん。そこに駅宿があるんだし、助けを求めれば良かったでしょ」
というか本当に近所の人なら、空模様から大体の天気が読めるだろう。
吹雪になりそうな雪の中でわざわざ教会に行くことも、大雪の中で長々とお祈りをすることもなさそうだが。
「病気なんじゃないですか? ほら、すごく痩せてますし。窓は胸の高さですから、元気が無いと窓枠を越えられないんじゃないかと」
「確かに──」
カノンの言葉に頷きかけたフィリップの言葉は、途中ではたと途切れた。
床に横たわった瀕死の女を見ていた視界の端に、気付けば、真っ白なものが映り込んでいた。
弾かれたように顔を上げれば、真っ先に目に入るのは、赤。
白地によく映える、鮮やかな血の色。
そして燭台の明かりを受けてきらりと輝く、鈍い銀色。
「うわあぁぁっ!?」
ほんの五歩ほどの距離に現れた“お化け”に、フィリップは蛇を見つけた猫のように飛び退いた。
どん、と背をぶつけたカイナは一歩も揺れることなく壁のように受け止め、宥めるように肩に手を置いてくれる。
外法で蘇生した死者か、はたまた神話生物や神格に類するものかは知らないが、突然出て来られるとびっくりするのは仕方ない。
そもそもフィリップはジャンプスケアに弱いのだし。
「び、っっくりしたぁ! 昼間には出ないって話じゃないの!?」
「それ言ったのフィリップ様です!」
ばくばくと喧しい心臓を押さえるように胸を押さえるフィリップ。
厳密にはフィリップが読んできた怪談の傾向はそうだというだけで、“それ”の正体すら判明していない以上、性質もまだまだ不明なのだが。
“お化け”と倒れた女をじっと見ていたアンテノーラは、身を傾けてフィリップの耳に唇を寄せる。
「……所有者様、その倒れている人間、僅かながら魔力の反応が。詳しいことは分かりませんが、何かの魔術を使っているようですわ」
「うーん……これは状況から見た推測だけど、あれは死霊術で作り出された生霊の類じゃないかしら」
耳孔から脳髄が溶け出てしまいそうな美声に、ぞくりと背筋が震える。
そのせいで話が半分くらいしか入ってこなかったが、カイナの補足のおかげで言わんとするところは分かった。
つまり──あれは魔術の産物で、倒れている女が術者。
しかし、それもそれで妙な話だ。
死霊術は帝国では盛んに研究されているものの、王国では禁忌の術法として扱われている。
フィリップの知人で唯一の死霊術師はフレデリカだが、彼女はそれを教わるために遥々帝国まで行ったという。
倒れ伏す彼女が王国では珍しい死霊術師なのだとしたら、こんなド田舎で一人ぶっ倒れているわけはない。王宮の保護なり監視なりを受けているはずだ。
魔王軍幹部という、フィリップより死霊術に詳しそうなカイナの言葉でなければ、思わず反論していただろう。
「生霊……幽体離脱みたいなことですよね? 起こしたら戻りますか?」
「いいえ。普通、霊体と肉体の間には解きようのない魔術経路が繋がっているはずですわ。しかし、今はそれが感じられませんし、能力不足で術式暴走……肉体から分離した霊体が肉体に戻れなくなっている状態かと」
問いの宛先はカイナだったが、答えたのは魔術的な感覚に優れるアンテノーラだった。
ふむ、とフィリップは暫し思考し、
「取り敢えず殺せばいいよね?」
極めて単純な結論を出した。
いくら幽体離脱しているとはいえ、魔術である以上は体内を巡る魔力と、魔術式を演算する脳が必要だ。
となれば、魔術の強制停止には首を斬り落とすのが確実。
「本物のお化けになったらどうするんですか?」
「仕組みの解明にご協力頂く」
カノンの揶揄に笑いながら返し、剣を抜く。
青白い輝きを放つ刃が鞘から覗いた、その直後。
「あぁ、あアァァァァ──!!」
甲高い絶叫と共に、紅白のドレスが翻る。
既に“お化け”に相対するメンタルセットを崩し、単なる殺人行為──路傍の石を蹴るのと同じテンションになっていたフィリップは、騒音に不愉快そうな目を向けた。
短剣を腰に構えて走り寄る女。
如何様にでも殺せる鈍臭い動きを無感動に一瞥すれば、庇う位置に立って構えたカノンの背が女を隠す。
そして──女は妨げるものなど何もないかのように駆け抜け、カノンをすり抜けた。
翻る血塗れのヴェール。
その向こうに、憎悪に満ちた双眸が見えた。
何の変哲もないが故に殺傷能力の確かな短剣は、今やフィリップの眼前に至る。
「短剣まで──!?」
昨夜の時点で、そいつを掴んで拘束することが出来ないのは分かっていた。
現在可能と判明しているのは、龍貶しによる短剣の防御。短剣を弾けば力に応じて姿勢を崩させることもできる。
しかし今、肉楯となったカノンは無傷のままだ。
短剣にも透過特性を付与できるのか、或いはそもそも人間以外には触れられないのか、魔術耐性なんかが関係しているのか。
何も分からないが、今は思索に浸っている場合ではない。
腰だめの短剣を剣で弾いて姿勢を崩すのは、フィリップの体重と技量では難しい。
やってやれなくはないかもしれないが、仕損じれば短剣が腹に突き刺さる。
安全な回避を選ぶべきだ。
「っ──!」
膝を抜くように姿勢を崩し、そのまま拍奪の歩法で滑るように二歩。
女はヒールを鳴らし、甲高い叫び声を上げながら、フィリップの一歩横に短剣を突き出した。
「そんなナリで、両目と脳で物を見てるのか」
抜き放った剣を短剣へ叩きつける。
本当なら腕でも首でも落としたいところだが、無駄に終わるのが分かり切った攻撃には一瞬も使いたくない距離だ。
短剣を叩き落せたら良かったのだが、残念。
斬撃ではなく衝撃を主として、相手の肘関節を壊す勢いで剣を叩きつけたというのに、女の手は吸い付いているように短剣を放さない。
叩きつけられた衝撃と運動量によって大きく姿勢を崩し、膝まで突いているが、凶器は依然として手中にある。
そこまでは想定済みだ。
面倒だとは思うが、驚きはない。
だがフィリップは目を瞠った。
視界の端に鈍い銀色が煌めく。
剣を振り下ろした後隙に、横合いから更なる突進が繰り出されていた。
「っ!?」
カノンは逆側。しかも
咄嗟に手を伸ばすが、鉄の短剣も、それを握る手も、レースのグローブに包まれた腕も、霞のようにフィリップの手をすり抜ける。
鋭利な突端は何に妨げられることもなく、吸い込まれるように脇腹へ至り。
「危ないわよ」
「っ!?」
横合いから伸びてきた長い脚が、致命の一撃を弾き飛ばした。
さながら剣戟のような、金属同士の激突する甲高い音が響く。
透過自在の謎の短剣と革のブーツの接触とは思えない、青白い火花が散った。
自己強化魔術を施したエルフの蹴りは、突き出された手の先にある短剣との接触のみで、女の矮躯を壁まで吹っ飛ばす威力だった。
壁に叩きつけられて地面に落ち、精緻なウエディングドレスがくしゃりと広がる。
「……二人目?」
フィリップが膝を突かせた初撃のやつと、いまカイナが蹴り飛ばした追撃のやつ。
礼拝堂にはウエディングドレス姿の女が二人いた。
「いえ、三人目もいます。扉のところ……とか、言ってる場合じゃないですね」
扉を塞ぐように一人。
術者を守るように一人。
フィリップの後ろに、カノンの正面に、アンテノーラの背後に、カイナの脇に──全く同じ姿をした白いヒトガタが次々に現れる。
何も無いところから、何の予兆も無く。瞬きの間に現れて立っている。
「なんだコレ──」
気付けば、“お化け”は十体以上になっていた。
どいつもこいつも同じ顔、同じ格好、血汚れの形まで完璧に同一だ。だらりと下げた腕の先には、お揃いの量産品。
「……滅茶苦茶強くない? 死霊術は禁忌とか言ってる場合じゃないでしょ」
フィリップは呆れたように笑う。
幽体離脱だか何だか知らないが、殆ど防御無視が出来て、殆ど無敵な召喚物を、同時に十体以上使役できると考えると破格の性能だ。
まあ本職の戦闘魔術師と一対一の正面戦闘で勝てるかと言われると、色々と不足はありそうだが。
しかし奇襲性は高いし、ジャイアントキリングも狙えそうだ。
……魔力障壁で防がれるとか、魔術攻撃は透過できないとかだと、ちょっと話は変わってくるけれど。
それでも、偵察や諜報なんかには物凄く有用だろう。
合理を語るなら、王国はこれを禁忌指定して研究を制限するべきではないはずだ。
そんなモノに取り囲まれながらフィリップは身構えるでもなく、この中で最も魔術に長けたアンテノーラを見遣る。
すると、今度はカイナからも答えが返ってきた。
「いえ、このような魔術は聞いたことがありませんわ」
「私も死霊術に詳しいわけではないけど、エルフもヒトも、獣も虫も、一つの肉に魂は一つよ。直感的に分かるでしょう」
死霊術の禁忌指定などない魔王陣営の二人が口を揃える。
どちらも死霊術使いではないが、知識の量ならフィリップ以上だろう。
つまりこれは死霊術ではないか、もしくは術式が正常な状態ではないか。
倒れている女が物凄く才気あふれる手練れという可能性もなくは……限りなくゼロに近いが、なくはない。
「人格の分裂が霊体に影響したって感じじゃないですか? いや、こんな馬鹿みたいな数の主観が一人の精神に同居できるとは思えませんけど」
「精神疾患でこうなるの? なら自己批判を繰り返し過ぎて希薄化したケースじゃない? 自分が自分だっていう自己定義が無くなったんだ。前に何かで読んだ」
死霊術ではなく人間の脳や精神障害に詳しい二人は顔を見合わせる。
二人とも興味深そうにしているが、周囲に佇む凶器を携えた女を見る目は、実験動物を見るもの。“敵”ではなく、俎上の魚かケージ内の鼠に対峙しているかのようだ。
「流石、お詳しいですね。で、治療法は?」
「治療法? 壊れて砕けたガラスを無理矢理に継ぎ直したところで、元通りにはならないし──そもそも、どこの誰とも知れない死霊術師のメンタルケアをしてやる理由はない。敵意があるなら尚更に」
いや──敵意も殺意も無いのかもしれない。
フィリップの推測通りの精神状態なら、希薄化した自我では感情を主観的に把握できないはず。
敵意も殺意も自分のものではなく、「自分が持っているらしいもの」程度にまで薄くなる。
尤も、その程度の動機で人間を殺すのが不自然とまでは言い切れないが。
だが、まあ、だからどうしたという話ではある。
敵意も殺意も無かったとしても、殺しにくるなら殺し返すまでのこと。
傍迷惑だ勝手に死ねと思いこそすれ、「だったら許してあげようかな」という気分にはならない。
「やることは変わんないよ。──術者を殺す」
とはいえ、壁をすり抜ける霊体たちだが、フィリップたちに対しては壁として機能する。
特に短剣が。迂闊に動けば防御不可の一撃が一方的に、四方から突き刺さることになる。
となれば遠距離攻撃だが、相手の魔術適性はどう考えてもフィリップより上だ。
距離的には『
むしろ憐憫と羨望を以て、速やかな死を与えてやりたいと思う。
とはいえカイナの手前、銃は見せない方がいいだろう。
──そんな余裕に満ちた殺人計画を立てていた、その最中。
ふ、と十数体のヒトガタが一斉にブレる。
風に吹かれた霧が揺らぐように、その輪郭が大きく崩れ──全ての霊体が一斉突撃を敢行した。
前後左右からナイフが迫る。
カノンもアンテノーラもカイナも対象とした、手あたり次第の無差別攻撃。
「ッ──!?」
どうやら目と脳だけでなく、耳もあったらしい。
あと生存欲求と──
「びっくりした……!」
拍奪の歩法も使い、四方八方から襲い掛かるヒトガタの間をすり抜ける。
幸い、敵の動きは一般的な人間のものだ。
動体視力を振り切るような速度でもなければ、宙に浮いたり、瞬間移動したりもしない。互いが互いをすり抜けたりも出来ないようで、多対多戦の訓練を受けていない素人そのもの。
フィリップが問題なく躱し切れるということは、化け物たちにとっては欠伸が出るような速度だ。
当然に、誰一人として傷付くことなく第一波を凌ぐ。
しかし刃物には弾切れが無い。
霊体に疲労があるのかは知らないが、一度の突撃でスタミナが切れるほど虚弱でないのは、あの商人の凄惨な死に様が物語っている。
「カノン、本体を殺せ」
「はぁい」
軽い返答と共に、カノンは蝙蝠のような翼を広げて天井近くまで飛び上がる。
「頭上に気を付けてください、ねッ!」
大きく振りかぶり、何かを投げるような動き。
その手中には何もない。種も仕掛けも無い──なんてことはなく。
降り注ぐのは無数の針だ。
猛毒を湛えた漆黒の棘。グラーキの細胞をベースとした刺胞の雨。
人間相手なら掠めるだけで致命的な、広範囲遠距離攻撃。
“お化け”たちは本能でそれが危険なものだと気付いたのか、本体である倒れた女性を庇おうとする動きを見せた。
だが、高所から投げつけられた細い針に対抗できるような速度はない。
ざあっ、と雨のような音と共に、女性を中心に先鋭な雨が突き立った。
ウェディングドレス姿の霊体は凍り付いたように一斉に動きを止め、ふ、と掻き消える。
何度か見た通りの唐突な消滅だが、再び現れることはないだろう。
倒れた女性の下に、じわじわと血が流れ出る。
どす黒く変色し、腐臭を漂わせる死んだ血液が。
「ふう……」
大きく息を吐く。
“お化け”は完全に消えた。
タイミングからして、倒れていた女が深く関わっていることは間違いないだろう。
本当に死霊術で、本当に精神異常が原因で分裂していたのか。そもそもどうしてこんなところで倒れていて、どうして攻撃してきたのか。
分からないことは山のようにあるが──疑問はない。
「……で、この人間は誰なの?」
「もう死んだどこかの誰かです。気にするだけ無駄ですわ」
真面目なカイナに淡々と返すアンテノーラ。
冷たくも感じられる、単純に微塵の興味もないだけの答えに、フィリップもうんうんと頷いた。
「さ、準備して帰ろう……と言いたいところだけど、流石に死体と棘は片付けようか。宿の人に迷惑だからね」
嫌そうな顔のアンテノーラを置いて、カイナは「荷造りをしてくるわね」と言ってさっさと離脱する。
じゅるり、となにか湿った音に振り返れば、カノンはやる気に満ちた顔をしていた。
「…………」
「しょっ……掃除の邪魔なので、フィリップ様は楽器を連れて出立のご準備でもなさってください」
食事って言おうとしたなコイツ。
フィリップとアンテノーラは顔を見合わせ、無言の内に心が揃っていることを確認する。
まあ別に、どこの誰とも知れない人間の死骸だ。好きにすればいいけれど。