GOD EATER ー人外の王ー   作:継文

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プロローグ

砂混じりの渇いた風が吹き荒ぶ廃墟。そこにはかつて栄華を極めた人間の姿は無く、荒れ果てたビルが墓標の如く建ち並ぶ、寂寥とした光景が広がるばかりである。

 

そんなビルの墓場を我が物顔で徘徊する虎に似た巨大な化け物が一匹。

 

──アラガミだ。

 

2050年代に発見されたオラクル細胞によって構成された人類の天敵。そして地球上で最も繁栄している生き物でもある。

 

虎に似たアラガミ、ヴァジュラと呼ばれるそれは一度足を止めた。捕食対象を探して鼻を鳴らしながら辺り見回したが、獲物となる物が見付からず、止めていた足を動かしてその場を後にする。

 

その様子をビルの屋上や影から監視する四つの影あった。

 

『こちらシエル。高台を確保しました』

 

不意に、影の内の一人の無線に理性的な少女の声が入った。

 

「了解。シエルはそのまま指示があるまで待機していろ」

 

「了解しました」

 

無線に答えた影は一人の少年だった。年の頃は18、名前は神堂カズマである。

灰色の頭髪と鋭い眼付きとは対照的な気だるげな雰囲気が特徴的な少年である。

 

カズマは巨大な剣、神機を肩に担いでその場にしゃがんだ。そして、自分の右手首に嵌められた腕輪に僅かに視線を送った。

 

カズマはただの少年ではなかった。彼はアラガミに対する唯一の対抗手段であるゴッドイーターなのだ。

 

ゴッドイーターとは、アラガミと同じオラクル細胞を用いた生体兵器、神機を操り、人類の天敵であるアラガミを狩る者達の総称である。そして、彼らの右手首には例外無く、腕輪が嵌められいる。

 

カズマは腕輪を見るたびに思う。これは対外的には神機の制御装置だと言われてるが、まるで飼い犬に着ける首輪の様だと。

そう思うと腕輪は何時もよりも重く感じ、陰鬱な気持ちになっていく。

 

『こちらギルだ。所定の位置についた、何時でも始められるぜ』

『ナナもー、準備オッケーだよ』

 

ギルという成年の力強い声と、ナナという少女の能天気な声で現実に戻され、カズマは気持ちを入れ換える。

 

「よしっ、準備は終わった。後はどうするか分かってるな?」

 

『はい、私達は無駄無く迅速に──』

 

『かつ、状況に合わせて臨機応変に──』

 

『アラガミもご飯も平らげろ♪』

 

カズマの問いかけにシエル、ギル、ナナの順に答えた。

 

ナナが答え終えたのと同時に、ビルの屋上に潜んでいたシエルが地上にいるヴァジュラの胴を狙撃した。

 

突然の攻撃にヴァジュラは動揺したのか、数歩よろめき、隙を作ってしまった。

 

その間にとばかりに、カズマがビルの死角から躍り出て、神機の刃をヴァジュラの左前足に叩き込んだ。

 

刃が食い込んだ箇所から赤い血が吹き出し、痛みのためヴァジュラが咆哮を上げた。

 

だが、相手は人類の天敵とまで呼ばれるアラガミ。痛みを無視して、カズマを叩き潰す為に無事な右前足を振りかぶった。

 

しかし、それを阻止するタイミングで槍状の神機を構えたギルがビルの中から飛び出して、ヴァジュラの後ろ足に槍の穂先を深々と突き刺した。

 

二度目のヴァジュラの悲痛な咆哮がカズマとギルの鼓膜を震わす。

前足と後ろ足を潰されては流石にバランスを保つことは出来ず、ヴァジュラの巨体が地面に崩れ落ちる。

 

それを待ってましたと言わんばかりの嬉々とした表情を浮かべたナナがビルの窓ガラスを割って、ハンマー状の神機を振りかぶったまま三階から落ちてきた。

 

その落下地点はヴァジュラの頭部。

 

「でやあああああああああぁ!!」

 

力の籠ったかけ声と共に降り下ろされたナナのハンマーはヴァジュラの頭部を砕き、地面に蜘蛛の巣状の亀裂を走らせた。

 

三度めの咆哮は上がらなかった。けれども、ここにいる誰もが知っている。頭を砕いたくらいではアラガミは死なない。確実に葬るには、コアを摘出しなければならないと。

 

剣状の神機を構え直したカズマがその切っ先を弱ったヴァジュラに向けると、カズマの神機のコアから真っ黒なオラクル細胞が吹き出し、巨大で禍々しいアギトを形成した。

これは神機のプレデターフォームと呼ばれるアラガミを喰らう為の形態であり、ゴッドイーターの名前の由来。そして、神機の真の姿である。

 

カズマが喰らえと命じると、神機のアギトは荒々しくヴァジュラに食らい付き、肉特有の生々しい咀嚼音をたてる。やがて、コアを食らったところでカズマが神機を引き抜いた。

 

すると、ヴァジュラは溶ける氷の様に体が崩れていき、黒い水溜まりとなり、それも跡形もなく消えていった。

 

「うしっ、任務完了だな」

 

ヴァジュラが完全に消えたのを確認して、カズマは納得したように頷いた。

 

「何だ? もう終わりか。退屈しのぎにもなりゃあしないな」

 

物足りないと言わんばかりにギルが盛大に肩を竦めた。

それを頼もしいと思いいつつも、カズマは少し疲れたように溜め息を吐いた。

 

「ギルは若いなあ。俺はもう十分働いたって感じだぞ」

 

「え~? 隊長オジサン臭~い」

 

「そうだぞ、隊長は俺よりも若いだろうが。老けるのには早すぎるぞ」

 

「ぬぐ、お前ら言いたい放題だな……」

 

軽口をたたき合うカズマとナナとギルだったが、その視線は周囲を警戒しており、神機も構えたまだった。

 

カズマ達は知っている。ゴッドイーターは油断した者から死んでいくのを。

 

少しすると、ビルの屋上に上がっていたシエルが合流した。

 

「それじゃあ、ブラッド隊アナグラに帰投するぞ」

 

「「「了解!」」」

 

これがカズマの生きる世界であり、彼が率いるブラッド隊である。




初書きとなります継文です。最後の閉め方がやや強引でしたが、プロローグはここで終わります。
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