GOD EATER ー人外の王ー   作:継文

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九話

「では、隊長。まずは、君が気を失った所から、現在に至るまでの状況を報告をします」

 

仕事の態勢に入ったシエルがカズマの事を名前ではなく、役職で呼ぶ。

 

さっき、カズマと甘い雰囲気に包まれていたシエルだったが、その気まずさ等を微塵も感じさせない見事な切り替えっぷりだ。

 

公私をキッチリと別けるその姿勢は、カズマとしては文句は無いが、ここで会話に待ったをかけた。

 

「シエル、さっきはノリで説明を急がせるような事を言ったが、まずは飯を食わせてくれないか? 腹が減って仕方ないんだが」

 

「駄目です」

 

カズマの要求に対して、シエルはキッパリと断った。

 

「隊長は重症を負って生死の境をさ迷っていたのです。そんな人に目覚めた直後に食事なんてさせられません」

 

「そんなに酷かったのか?」

 

「はい。胃袋と肝臓の圧壊に背骨にヒビが入っていました。担当医の話では、並のゴッドイーターなら二回は死んでいただろう、と言っていました」

 

「おおぅ……、よく死ななかったな」

 

「隊長の偏食因子の適合率は一般のゴッドイーターよりも遥かに高いので、恐らくそのためでしょう」

 

端的に言って、偏食因子の適合率が高いということは、その分アラガミに近いと言うことだ。その為、適合率の高さに比例して、身体能力と自己治癒能力が向上する。

 

簡単に言ってしまえば、適合率が高ければ高いほどゴッドイーターとして能力が高くなる。

 

「それでも応急措置が終わったらすぐに騎士型アラガミに立ち向かうのは無茶が過ぎます」

 

「はあ? 俺はそんなことをしたのか?」

 

「覚えていないのですか? 騎士型アラガミに一撃与えて装甲の一部を結合崩壊させたことも」

 

「全く。俺の記憶に残っているのは騎士型アラガミの一撃で盾が砕けて盛大に血を噴いた所までだ」

 

カズマは本当に覚えていないので、シエルの話しは実感が沸かず、首を傾げた。

 

しかし、カズマは特に気に止めず、シエルに報告の続きを求める。

 

「どうせ一時的な記憶の混乱だろ、現場ではよくある事だ。シエル、続きを頼む」

 

「……了解しました」

 

いまいち釈然としなかったが、シエルは報告を再開した。

 

カズマの一撃を受けた後、大規模な偏食場パルスの発生が確認され、その後に騎士型アラガミがラーヴァナを駆って追撃してきた事をシエルは話した。

 

「━━ラーヴァナを駆る騎士型アラガミの追撃を振り切った後、学術都市にて再び大規模な偏食場パルスの発生を確認しました。そして、その偏食場パルスの発生元へと大量のアラガミが続々と集結し、現在学術都市は近付く事が出来ない状態です」

 

「ふうん。シエルの話しを聞く限りだと騎士型アラガミは感応種で、その能力は他のアラガミの操作か、ナナと同じ誘引か?」

 

「私も隊長と同じ考えです。現在、隊長とギルの神機に付着した騎士型アラガミのオラクル細胞と調査隊が採取したサンプルの分析が進められていますので、能力の事はじきに判明する筈です」

 

「分かった。騎士型アラガミの事は情報待ちだな。学術都市の詳しい事は━━」

 

「ハイハイ、ハーイ。その事なら私が報告するね」

 

カズマが学術都市の状態を尋ねようとしたら、今まで沈黙を保っていたナナが、待ってましたと言わんばかりに元気良く手を振り上げた。

 

「ナナがか?」

 

ナナが報告する事に一抹の不安を覚え、カズマは顔を引きつらせる。

 

カズマにそんな顔をされてもナナは自信満々な顔で、チューブトップに包まれた胸を反らした。

 

露出の高い胸を強調するようなポーズをとるナナだが、カズマはドギマギすることはなく、むしろ胡散臭そうな目で見るばかりである。

 

「ふっふっふ~ん。私もブラッドだからこのくらい余裕余裕♪」

 

「あー、分かったから早く報告しろ」

 

「うん」

 

基本的に報告会等では空気になっているナナだが、珍しく自分のターンが来て、嬉しそうに頷いた。

 

「それじゃあ、話すね。

学術都市に近付けないから無人飛行機で空から偵察することになったんだ」

 

「無人飛行機なんて物がよくあったな」

 

「なんかアメリカの支部から榊支部長が廃品を買い取って、それをリッカさんが改修したヤツって聞いたよ」

 

「飛行機を改修って……すげえな、リッカ」

 

「気分転換と暇潰しにちょうど良かった、ってリッカさんが言ってた」

 

「プラモデル感覚かよ」

 

「コホン!」

 

話が脱線してしまい、それを咎めるようにシエルが咳払いをした。

 

ナナは慌てて話を戻す。

 

「サリエルとかが居るから、空からの偵察はすごい高い所からやったんだけど、そしたら変な事が分かったの」

 

「変な事?」

 

「いろんなアラガミが沢山居るのに、何でか捕食活動をしてないんだ。榊支部長でも初めて見る事で、まるでアラガミの王国だって言っていたよ」

 

ナナは更に続ける。

 

「捕食活動をしてないから、安全かなって偵察隊が送られたけど、いきなり攻撃されたからすぐに撤退したって」

 

「そうか……」

 

ここでカズマは思案顔になって、腕を組んだ。

 

「なあ、ナナ。空からの偵察で騎士型アラガミの姿は見つかったのか?」

 

「うん。基本的に廃墟の中に居るみたいだけど、時々外に出てきて、しばらくしたらまた廃墟に戻ってた。詳しい事は榊支部長に聞いてね」

 

「おう。もう一つ聞くが、学術都市にはどんなアラガミが集まってた?」

 

「色んなのがいるよ。小型と中型と大型アラガミ全般と感応種全般。代表的なのはハンニバルに、アマテラス、アイテール、スサノオ、セクメト、テスカトリポカ、ディアウス・ピター。数は全部で大体三千匹くらい」

 

「アラガミのバーゲンセールかよ。しかも、ひでえラインナップ」

 

「あはは、リンドウさんも同じ事言ってた」

 

カズマはうんざりとした様子で肩を落とした。しかし、聞きたい事は聞いた。

 

気持ちをすぐに切り替えて、カズマはギルの方に向いた。

 

「ギル。俺の神機に付いてリッカから何か聞いてるか?」

 

「ああ、剣は無事だが銃は半壊。盾は全壊で廃品コース。神機の本体も損傷が酷いから、今は修復中だ」

 

「マジかよ。あの盾をオシャカにするとか、どんだけだよ」

 

ギルの報告で、カズマは思わず絶句した。

 

カズマが装備していたクロガネ大盾剛鱗は、彼が所有するシールド系では最高の防御力を誇り、デミウルゴスと呼ばれる巨大なアラガミの体当たりをもろに受けても歪みすらしなかった代物だ。

 

それを完全に破壊した騎士型アラガミの攻撃力には、恐怖すら覚える。

 

カズマは思わず愚痴をこぼす。

 

「たく、俺とギルの攻撃を受け付けない装甲に、シエルの狙撃を避ける身体能力、極めつけにシールドを砕く攻撃力だと? 硬い、速い、強い、とか最悪の三拍子だな。しかも感応種」

 

「だな。勝てるか?」

 

「勝つしかないだろ」

 

ギルの質問に対して、カズマは静かに答えた。

 

確かな覚悟を込めながら。

 

「俺達の負けは自分の死。だから負けそうになれば引いて、学習して対策を立てて、再戦に臨み、また負けそうになれば、引いて、学習し、再戦。これを勝つまでやる」

 

「確かにそれだったら負けないけど、あんまり格好良くないね」

 

ナナがからかう様に言い、カズマは笑いながら返した。

 

「ハッ、俺は格好良く負けるより、ダサい勝ちの方がよっぽど好きだ」

 

「ふふ、君らしいですね」

 

「全くだ」

 

カズマの言葉にシエルもギルも笑う。

 

「よし、報告会はこれで終わる。俺はこれからリハビリに入から、シエルには榊支部長への報告とブラッドの隊長代理を頼む」

 

「了解しました」

 

「私は?」

 

「ナナはいつも通りだ。シエルの仕事を増やすな。それとラウンジのキッチンで料理と称して怪しい科学実験をするな」

 

「ええ! そんな、酷いよお! それにあれは料理だし! 科学実験なんかじゃないし!」

 

「っるせえ、人間が昏倒するような異臭を放つ物体Xを作るのを料理と認めてたまるか! ギルはナナを監視しろ。ナナをラウンジのキッチンに近づけるな!」

 

「了解だ。じゃあ、早速ミッションに行くとするか。ミッションで疲れりゃあキッチンに入る余裕もなくなるだろ」

 

「オニー! アクマー!」

 

ギルは喚くナナを引き摺りながら病室から出ていき、シエルも一礼してから病室から出ていった。

 

一人残ったカズマはリハビリをするため、早速ナースコールを押して看護師を呼んだ。

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