GOD EATER ー人外の王ー   作:継文

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十三話

支部長室に入室したカズマとシエルは、榊との挨拶もそこそこに、早速騎士型アラガミの情報を確認する。

 

ソーマは自分の仕事に戻ったのか、カズマが入室した時には居なかった。

 

「さて、カズマ君が思ったよりも元気そうだし、早速本題に入らせてもらおうか」

 

「いやいや、支部長。俺が本調子じゃなくても本題に入るでしょ」

 

「ふふふ」

 

カズマのツッコミを笑って流して、榊は説明を始める。

 

「まず始めに、騎士型アラガミの正式名称が決まったから先に報告しておくよ」

 

「ああ、そう言えばまだ決まっていなかったスよね」

 

「そうだね。━━で、騎士型アラガミの正式名称は、アーサーに決定した」

 

「……」

 

騎士型アラガミの名前を聞き、カズマは言葉を失い、シエルは苦虫を噛み潰したかのような苦い顔になった。

 

「ん? どうしたんだい、二人とも急に黙り込んで」

 

「いや、その、よりによってアーサーですか?」

 

「それが何か問題かい?」

 

「問題も何も……何で英雄の名をアラガミにつけちゃうんですか。知らないですよ、奴を信仰するカルト教団が出来ても」

 

「うん、まあ、本部もその辺りは承知してくれてると思うんだけどね……」

 

榊は頬を掻きながら苦笑いを浮かべる。

 

まるで、仕方がない無いだろ。と言わんばかりの反応に、カズマは引っ掛かりを覚え、真面目に訊いてみた。

 

「リスクを背負ってまでアーサー、て名前にしたのは。もしかして、奴の能力に関係してるんですか?」

 

カズマの質問は核心を突いたのか、榊は生徒を褒め称えるような満面の笑みになった。

 

「その通り。いやあ、カズマ君は話が早くて本当に助かる」

 

言って、榊は机に置いてあるパソコンの操作を始めた。

 

すると、榊から向かって左側の壁際の天井から、プロジェクタと大型のスクリーンが降りてきた。

 

「君達にはこれを見て貰いたい」

 

言われて、カズマとシエルがスクリーンを見ていると、学術都市を見下ろす映像が映し出された。

 

榊が映像について説明する。

 

「これは三日前に無人偵察機で撮影した映像なんだが……」

 

カズマは映像に集中する。

 

学術都市は、アラガミの群れに周囲をグルリと囲まれており、広場には数体のアラガミがいた。

 

コンゴウ種やシユウ種やヴァジュラ種等、一通りの種類のアラガミがいるが、その中に騎士型アラガミの姿は無い。

 

広場に集まっているアラガミ達は、何をする訳でもなく、その場で思い思いに体を休めている。

 

偵察班時代に、様々なアラガミの生態を観察してきたカズマからしたら、それは有り得ない光景だった。

 

アラガミには縄張り意識というものがあり、それを侵した者は、例え相手がアラガミであっても攻撃を加える習性がある。

 

しかし、広場のアラガミ達はお互いの存在を認めつつも、まるで感知していない。

 

少しして、廃墟の中から騎士型アラガミが出てきた。

 

騎士型アラガミが右手をコンゴウに向けると、そのコンゴウは休めていた体を起こして騎士型アラガミの側に近づいた。

 

近づいたコンゴウは、頭を伏せたり、宙返りをしたりと、本来ならやる筈もない動きをしていた。

 

「これは、まさか騎士型アラガミが他のアラガミを操っているという事ですか?」

 

シエルが、自分の目を疑う様に言った。

 

カズマも同じ気持ちだった。

 

「なるほど。王様の命令みたいにアラガミを意のままに操る事が出来るのが奴の能力か、確かにこれを見たらアーサーと呼びたくもなる」

 

そう言って、カズマは騎士型アラガミこと、アーサーを睨む。

 

スクリーンに映し出されたアーサーの周りではコンゴウの他に、ヴァジュラやシユウ等が踊る様に身を捩らせていた。

 

その光景に、カズマはうすら寒い物を感じて、益々厳しい目で睨む。

 

「隊長、これは予想以上、ですね」

 

シエルもカズマと同じ気持ちで、話しかけた声は強張っていた。

 

シエルの言葉にカズマは頷く。

 

「だな。操作の能力って言っても、イェン・ツィーみたいな大雑把な物だと思っていたのに、あそこまで細かい指示が出来るとはな」

 

シエルとの会話もそこそこに、カズマはスクリーンから視線を外して榊に向き直った。

 

「さて、アーサーの名前の由来が分かったところで、次の話しだ」

 

榊は気を取り直す様に眼鏡の位置を直して言った。

 

「カズマ君とギルバート君の神機に付着したアーサーのオラクル細胞を調べたら、凄い事が分かったんだ」

 

「何が分かったんですか?」

 

「アーサーの特性さ。アーサーの細胞は、全てのアラガミの特長を有しているんだ」

 

一瞬、榊が何を言っているか理解が出来ずに、カズマとシエルはキョトンとするが、事の重大さに気付いて、すぐにハッとした顔になった。

 

「……まさか、アーサーは全アラガミの能力が使える、と言うことですか」

 

「それだけじゃないぞシエル。防御面でも全てのアラガミの特長を有しているとしたら、奴には弱点というものが無い」

 

シエルとカズマの出した結論は正解だったようで、榊は満足気に頷いた。

 

「その通り。アーサーは全てのアラガミの特長を持っているが故に、ヴァジュラの様に電撃を放つ事が出来るし、ウロボロスの様にレーザーを撃ち出す事も出来るだろう。装甲の方も、ボルグ・カムランの切断耐性にクアドリガの貫通耐性、それにヴァジュラの破砕耐性も持っているからどんな武装で挑んでも大きな効果は望めない。アラガミの複合装甲と言ったところかな。更に」

 

アーサーの反則的な特性に、カズマはそろそろ耳を塞ぎたくなってくるが、堪えて聞き続ける。

 

「偏食因子を自生しているから、捕食されずに神機が扱える」

 

あまりの反則ぶりに、カズマは思わず呟く。

 

「なんつーか、……盛りすぎだろ、それ。何でそんな奴が生まれたんですか」

 

「……私の推論だが、恐らく相互捕食の結果だと思う」

 

「相互捕食ですか?」

 

「アラガミは食べた物の性質を得ることは知っているね?」

 

「ついでに、都合の良い形に変えることも」

 

「なら話しは早い。他のアラガミを捕食していく内に、アーサーの体の中では弱点の淘汰が起こっていたのだろうね。他のアラガミの良いところだけを吸収して、弱点は切り捨てるといった感じでね」

 

「その結果がアーサーか……」

 

カズマは気持ちの整理をするために、深呼吸を始めた。

 

そして、真っ直ぐに榊を見詰めて宣言した。

 

「アーサーは必ず討伐しますので、支部長には最大限の協力を要請します!」

 

かつて、類を見ない程の強敵を相手に、カズマは言い切った。必ず討伐すると。

 

その言葉にどれだけの覚悟が込められているのか、榊に推し量る事は出来ない。

 

だから榊は、笑みを消して真摯に応えた。

 

「君達ブラッドへの協力を惜しむつもりは無い。思うようにやりたまえ。ただし、全員生きて帰ること。それが条件だ」

 

榊の言葉にカズマは頷き、一礼して部屋を出た。

 

それに続いて、シエルも部屋を出た。

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