GOD EATER ー人外の王ー   作:継文

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十五話

カズマが目覚めた次の日、彼が率いるブラッド隊は学術都市に向かっていた。

 

アーサーに対して威力偵察を行うためだ。

 

現在、カズマ達は、ギルが運転するジープで学術都市を目指して荒野を走っているところである。

 

荒野の悪路を走行しているので、車内はガタガタと音をたてて揺れ、時折激しく揺れる事もある。

 

ハッキリと言って、乗り心地は最悪であるのだが、誰も顔に不満を浮かべていない。

 

カズマは助手席で地図を広げてギルをナビゲートし、シエルは後部座席で無線を通じてフランと連絡を取り合っている。そして、シエルの隣に座るナナは、持参したおでんパンを頬張って腹ごしらえをしていた。

 

ナナはおでんパンを咀嚼しながら、カズマの背を見つめる。

 

その眼には、信頼と不安が入り交じった複雑な色が浮かんでいた。

 

(むー、カズマは昨日起きたばかりなのに、いきなり出撃して大丈夫なのかなあ。この間はほとんど死にかけたって言うのに……)

 

カズマの背を見つめながら、ナナは思案する。

 

その様子に気が付いたシエルは、フランとの連絡を切り上げて、小声でナナに話しかけた。

 

(ナナさん、隊長を見詰めてどうしたのですか?)

 

(うーん、別にどうって言うことはないんだけど……ちょっと心配だなぁって)

 

(心配?)

 

シエルが引っ掛かりを覚えて反芻した言葉に、ナナは慌て補足した。

 

(あっ、別にカズマを信用していない訳じゃないよ。ただ……)

 

(ただ?)

 

(また無茶をしないかな? って)

 

ナナの心配にシエルも思うところがあるのか、急に思案顔になった。

 

(その可能性は……無い。っと言い切れないところがカズマの不徳がなせる業ですね)

 

(だよねー、カズマの無茶と私達の無茶って、基準が違うもん)

 

シエルの言葉に、ナナは我が意を得たり、と言わんばかりに顔を輝かせた。

 

彼女達は更に話を続ける。

 

(ねえ、シエルちゃん。今日のカズマはどんな無茶をすると思う?)

 

(私は、アーサーとの一騎討ちをすると思います。ナナさんは?)

 

(私は、単独でアラガミの群れの突破かなあ)

 

(それは中々いい線をいってますね。ならば、今日は━━)

 

「お前ら聴こえてるぞ」

 

シエルとナナの雑談が盛り上がってきたところで、カズマの一声で打ち切られた。

 

「たく、小声で何を話してるのかと思えば、今日の俺がどんな無茶をするかだと? お前らには、そんなに俺が無鉄砲に見えるのかよ」

 

カズマの言葉に、シエルとナナは目を丸めて互いの顔を見合わせた。

 

その要約はこうだ。

 

『自覚なかったの?』

 

運転しているギルもポーカーフェイスだが、思いは同じだった。

 

車内が変な沈黙で静まり返った。

 

ここで初めてカズマは、自分が馬鹿なことを言ったのに気が付き、戸惑いながらギルとシエルとナナを見回した。

 

「……俺、もしかして変な事を言ったのか?」

 

「……私は、成長したなあって、思うけど。シエルちゃんはどう?」

 

普段の毅然とした、カズマらしからぬ弱気な態度を見て、ナナは意地の悪い笑みを浮かべてシエルに尋ねた。

 

シエルはそれに得心がいったように頷き、口元を僅かに弛めて言った。

 

「私もナナさんと同意見です。加えて言うならば、四足歩行から二足歩行への成長ですね。その事に関して、ギルから一言お願いします」

 

急に会話を振られたギルは慌てることはなく、それどころか盛大に笑って答えた。

 

「はははっ! 今日はカズマの進化のお祝いにラウンジで一杯奢ってやる!」

 

「あっ! じゃあ、私は新作の『なんくるないざー極』試食第一号の券をあげる!」

 

「では、私は秘蔵のカルビのブロマイドを隊長に進呈します」

 

思わぬ集中砲火を承けて、カズマはタジタジになった。

 

「ぐっ、お前ら……言いたい放題言いやがって。っつーかナナのは全然嬉しくねーよ! 一体何の罰ゲームだ。それは!」

 

「えー、ひどーい! 今度のはちゃんと美味しく出来たもん! …………私はまだ食べてないけど……」

 

「はいっ、アウト! 制作者が試してもない物を誰が口に入れるか! 悔しかったら食えるものを持ってこい!」

 

カズマとナナがギャーギャーと言い合い、車内が賑やかになった。

 

しかし、カズマは急に黙り、車の進行方向を見据えた。

 

たったそれだけのことで、全員真剣な顔付きになり、車内の空気が一気に張り詰めた。

 

カズマの視線の先には、学術都市の大森林があった。

 

そう、目的地である学術都市に近付いてきたのだ。

 

「シエル。状況報告」

 

「はい。現在、学術都市上空に無人機を飛ばし、アーサーの偏食場パルス全体をモニタリングしています。その中心部をアーサーの仮想目標として、レーダーにポインターを設定しています。ですが少々精度に欠けるため、過信は禁物とのことです」

 

「構わない。大まかでも、レーダーに映らない奴を補足出来たんだ。これで奇襲を喰らう事はないだろう」

 

アーサーはアバドンと同様にレーダーに映らないアラガミだ。そのせいで前回は先手を打たれてしまった。

 

その対抗策として、アーサーが円形に展開する偏食場パルスから中心を割り出し、そこにアーサーが居ると仮定して、レーダーにポインターを表示したのだ。

 

「シエル、ギル、ナナ、今回の作戦内容は分かっているな」

 

カズマは広げていた地図を片付けながら確認を取った。

 

「はい。第一フェイズとして、学術都市の外周のアラガミに対して戦闘行為を行い、敵の組織力、又は戦力を測ります」

 

「だが、なるべく深追いはせずに、即時に撤退出来るように車の300m以内で活動、だろ?」

 

「それで、もしもアーサーが動いたら二手に別れて、片方が足止め、もう片方が退路の確保するんだよね」

 

シエル、ギル、ナナの順に答えのを聞き届け、カズマは口の端を吊り上げて笑った。

 

「よし、各自作戦内容を覚えているようで何よりだ。良いか? 今回の作戦目標はアーサーの情報をなるべく多く拾って帰ることだ。だから、命を賭ける必要は無いし、無茶をする必要もない。分かったな?」

 

「「「了解!」」」

 

全員の力強い返事を聴いたところで車が止まった。

 

遂に目的地に着いたのだ。

 

「着いたな。ブラッド隊、降車。これより作戦行動を開始する!」

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