GOD EATER ー人外の王ー   作:継文

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一話

ヴァジュラを倒したカズマ達は、輸送用の装甲車に乗り込んで帰路に就いた。

 

車内では、カズマの隣にシエルが座り、その向かい側にギルとナナが座っていた。

 

カズマとシエルは、携帯端末を挟んで今日の任務の報告書を作成しながらあれこれと議論している。

 

ギルは帽子を目深にかぶって、腕を組んで仮眠を摂っていた。

 

一人、やることの無いナナはと言うと、退屈そうに両足をプラプラと揺らしていた。

 

する事の無いナナは、ギルと話しをしようかと思ったが、寝ている彼を起こすのは悪いと思って話し掛けるのを諦める。

カズマを見る。報告書はもう出来上がったのか、携帯端末を仕舞ってシエルと雑談していた。

 

カズマと話しているのが楽しいのか、普段浮かべているシエルの氷の顔は溶け、柔らかな表情になっている。

 

カズマとの会話の中でシエルは時には笑い、驚き、また笑って、コロコロと表情を変えていく。それを見てナナは、シエルちゃんも随分心を開いてくれたんだなあ。と、感慨に耽っていたが。シエルと楽しそうに話すカズマが彼女の恋人に見え、なんとなく面白くない気持ちになった。

 

ナナとしては、シエルに恋人ができるのは喜ばしい事だし、祝福するのもやぶさかではない。だが、その相手がカズマなら話は別だ。

 

(邪魔しちゃえ♪)

 

そう思ったナナは早速行動に移る。

 

「シエル、この間渡したバレットはどうだった?」

 

「そうですね。威力は申し分無いのですが、射程が短い上にOPの消費が激しく、後衛には向かないというのが素直な感想ですね」

 

「そうか、今度のは良い出来だと思ったんだがな」

 

「ふふ、隊長はバレットを作成する時、攻撃力に偏重する傾向にありますね。何か性格が出ているのではないですか?」

 

「おいおい、それは━━」

 

「カ~ズマ♪」

 

シエルとカズマの会話に割り込むかの様に急にナナが擦り寄ってきた。

 

その行動にシエルは面食らい、カズマは仕方なさそうに溜め息を吐きつつ、ナナの方に向き直った。

 

「ナナ、任務中は俺の事は隊長と呼べ、といつも言ってるだろ」

 

「えへへ~」

 

「笑って誤魔化しやがって。で、何だ? 腹でも減ったのか?」

 

「うん、そんなところ。だからお菓子ちょうだい」

 

「たくっ、腹が減ったら擦り寄ってくるとか、身も心も猫になったか?」

 

「ゴロニャン♪」

 

カズマの呆れ気味の言葉もどこ吹く風、ナナは擦り寄せていた体をカズマの膝の上に横たえて、猫の如く目一杯甘えてくる。

 

端から見ればカズマとナナの関係は飼い主とペット、良くても父と子と言ったところだが、目の当たりにしていたシエルの心中は穏やかではなく、早速引き剥がしにかかった。

 

「ナナさん。隊長が困っています。すぐに離れて下さい」

 

「え~? そんなこと無いよ。ねぇ、隊長」

 

「いいえ。隊長は犬派なので猫っぽいナナさんが擦り寄っても困るだけです」

 

「むっ、それこそ違うよ。隊長は絶対ネコ派だもん」

「隊長の右腕である私が言うのですから間違いはありません」

 

「そんなこと言ったら私はブラッドの中で一番付き合いが長いもん。私の方が正しいよ」

 

不毛な言い争いがカズマを挟んで行われる。

 

カズマから引き剥がそうと、ナナの体をグイグイと押すシエル。

対して、引き剥がされまいとカズマの腰に抱きついて抵抗するナナ。

 

両者の力は拮抗していて、このままヒートアップするかに思えたが、カズマがシエルとナナの頭に軽いゲンコツを見舞って二人を止めた。

 

「きゃっ!」

「あたっ!」

 

「お前たちは何をアホな事を言い争ってるんだ。それと、そろそろ降車の準備をしろ。アナグラに着くぞ」

 

カズマは腰に抱きついているナナを押し退けながらそう言った。

 

押し退けられたナナは、装甲車の覗き窓から外の様子を伺った。すると、窓からは巨大な壁が見えてきた。

 

アナグラをアラガミから守る壁、アラガミ防壁だ。

 

これが見えてきたと言うことは、確かにもうじきアナグラに着くということだ。

 

「本当だ。帰ってきたね」

 

「毎回思う事なのですが、外に出ていたのは三時間程度なのに数日間振りに帰ってきた気持ちになりますね」

 

「あ、それ分かるー。何でなんだろね。あれかなあ、お腹が空いたから?」

 

「私は、アナグラが好きだからだと思います」

 

さっきまで言い争っていた空気はどこえやら。シエルとナナは雑談を始めた。

 

元々、シエルとナナの仲は良い。だから、先程のレベルの言い争いなど彼女達からしたらただの遊びに過ぎないのだ。

 

カズマは荷物を纏めながら、楽しそうに話しに華を咲かせるシエルとナナを見て満足げに頷いた。

 

やはり仲の良い者はこうしてお喋りしている方が平和的で良い。だがしかし━━

 

「お前ら、さっさと荷物を纏めて降車準備を済ませろよ……」

 

言われて気が着いたのか、シエルとナナは慌てて準備に取り掛かった。

 

「たくっ。ほらギルもそろそろ起きろ、アナグラに着くぞ」

 

準備を終えたカズマはギルの肩を揺すり、彼を起こす。

 

「ん、……もう着いたのか?」

 

「いや、まだだけどもうすぐ着く」

 

「そうか。じゃあ、準備を済ませておくとするか」

 

眠りから覚めたギルもあくびを噛み殺しながら準備に取り掛かった。

 

こうしてカズマ達、ブラッド隊は無事にアナグラに着き本日の仕事を終えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

アナグラのエントランス。そこはカズマ達以外のゴッドイーターやよろず屋などで賑わっている。

 

帰還したカズマ達は、作ったばかりの報告書を受付嬢のフランに提出した。

 

「お疲れ様です。では、この報告書はいつも通り榊支部長に提出しておきますね」

 

「ああ、よろしく頼む。俺達は先に上がらせてもらうぞ」

 

お疲れさん。と言って立ち去ろうとしたが、それをフランが呼び止めた。

 

「お待ちください。榊支部長から連絡があります、カズマ隊長とシエルさんは直ちに支部長室に出頭してください」

 

出頭? 何やら不穏な響きにブラッドの面々は顔を見合せ、こそこそと話し出した。

 

(出頭って、まさか俺がリンドウさんらと賭けポーカーやってたのがバレたのか?)

 

(隊長、そんなことをしていたのですか? ですが、それだとしたら私はその件に関しては無関係です。

もしかしたら、榊支部長が作ろうとした『失恋フレーバー』の製作を妨害した事なのでは?)

 

(ええ!? シエルちゃん酷い! あ、でも私もアバドンのコアと回復錠を無許可で合成しちゃったからそれじゃないかなあ?)

 

(ナナ、お前は後で俺が説教してやる。

だが、ナナの件だと本人が呼ばれないのが不自然だ。あれじゃないのか? 最近隊長がハルさんとやっている聖なる探求ってやつ。あれでついに女性隊員から苦情が来たとか)

 

(いや、ギル。それだと今度はシエルが呼ばれる理由が━━)

 

「こほん!!」

 

フランのわざとらしい咳払いでブラッド隊の井戸端会議は中断させられた。

 

フランの方を見ると、何やら怒りでひきつった表情でカズマ達を睨んでいた。

 

「ご心配でしたら榊支部長に直接お聞きになられたらいかがですか?」

 

正論だ。と言うか、殺しそうな勢いで睨んでくるフランが恐すぎる。

 

「あー、うん。そうだな、そうしよう。じゃあ今日は解散で、いいな?」

 

「は、はい。異論はありません」

 

「だよねっ、だよねっ! 良い子は早くお父さんのところにだよね!」

 

「おっ、おう。じゃあ隊長また明日な!」

 

蜘蛛の子を散らす様に、カズマ達はそそくさと解散した。

 

後に残ったのは受け付けカウンターに控えるフランだけだった。

フランは頭痛を堪える様にコメカミを押さえ、沈痛な面持ちで重い溜め息を吐く。

 

実はカズマ達の会話は全て聴こえていたのだ。

 

ブラッド隊の思わぬ問題児っぷりに目眩すら覚える。フランはそう思わずに居られない。

 

だが、彼女は知らなかった。それが氷山の一角でしかないことを。

 

 

 

 

支部長室前、カズマはドアをノックした。

 

「榊支部長、神堂カズマとシエル・アランソン。出頭命令に従い、参上しました」

 

『よく来てくれた。ドアのロックは外れているから入ってきてくれたまえ』

 

部屋の主から許可を貰い、カズマとシエルは互いの顔を見合せて頷き合うと、意を決してドアを開けた。

 

「やあ、任務後なのにすまないね。重要な用件だったから直接伝えたかったんだ」

 

ここ、極東支部の支部長、ペイラー・榊のいつも通りの柔和な笑顔に出迎えられ、カズマとシエルは戸惑う。

 

まさか、自分達は処罰されるために呼ばれたのではない? そう思いかけた。

 

「あの、榊支部長。私達に用とは一体……」

 

シエルが遠慮がちに問いかけると、榊は今まで浮かべていた笑顔を消して、厳かに告げた。

 

「単刀直入に言おう。新種のアラガミが出現した」

 

 

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