「やあ、どうも! 君がブラッドの隊長、神堂カズマだね? 今日はよろしく頼むよ!」
「は、はあ」
出撃ゲートでブラッドと調査隊が合流した時、開口一番にそう話し掛けられた。
思わぬ元気良さに、話し掛けられたカズマは戸惑い、気の抜けた返事をかえす。
話し掛けてきたのは三十代の男。身長が185㎝もあるギルよりも背が高く、体のラインが分かりづらい防護服の上からでも目立つ大きな肩幅のおかげで近くに寄れば視界が彼の体で埋まってしまう程だ。
顔は欧米風の彫りの深い顔立ちで、白い肌に青い目と後頭部で纏めた金色の長髪、そして快活な笑みのおかげか、爽やかな印象を受けた。
「おっと、自己紹介がまだだったね。僕の名前はキース・コールドマン。調査隊の隊長さ」
自己紹介と共に差し出された右手を今度は戸惑うことなく握り、カズマは自己紹介をする。
「もうご存じのようですが。俺はブラッド隊の隊長、神堂カズマです。今日一日よろしくお願いします、キースさん」
「ハハハッ! 君は礼儀正しいね。たが、僕らの間に堅っ苦しいのは無しさ! 立場は違えど気持ちは同じの仲間じゃないか」
気持ちいい程に清々しい返事を受けて、カズマは思わず吹き出した。
「今日、同行するのが貴方でよかった。よろしくな、キース」
カズマの言葉で、キースは嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
自己紹介も終わり、ブラッドと調査隊一行は早速トレーラーに乗り込み、学術都市に向かった。
道中、車内ではキースを中心にして会話に花が咲き、非常に明るい雰囲気だった。特にナナとキースは気が合うのか、二人でおでんパンを頬張っていた。
程無くして目的地に着き、全員車から降りた。
調査隊の人数は、キースを含めて五人。全員が白い防護を着込み、さらにフードとマスクを着用するため、誰が誰だか判らなくなる。しかしキースだけは体格が並外れているので、見れば判る。
学術都市は黎明の亡都とも呼ばれ、貴重な蔵書が数多く残り、草木や綺麗な水も残っているので、人類にとっては重要な地域の一つである。
大小様々な機材を抱えた調査隊を中心にして、カズマが先頭を歩き、シエルとナナとギルが周囲を警戒している。
先日、ゴッドイーターが死んだ巨大温室に向けて歩を進めるが、カズマは左腕を真横に伸ばして静止の合図を出した。
「フラン、周囲にアラガミ反応はあるか?」
カズマは無線をオペレーターに繋ぎ、フランに呼び掛ける。
返事は直ぐに返ってきた。
『いいえ、有りません。展開している偵察班からもアラガミの出現報告は受けておりません』
「そうか、ならイレギュラーだ。新種のアラガミの足跡の他にラーヴァナの足跡を発見した。遭遇した場合は撃破するのか?」
『その必要はありません。護衛対象の安全を最優先に行動してください』
「了解だ」
通信を切ったあと、カズマはキースを呼んだ。
「キース! ちょっと来てくれ」
「どうしたんだい? カズマ。まだ現場にはついていないけど」
「ああ、けど問題が発生した。ラーヴァナがこのエリアに入ってくる可能性がある」
「それは本当かい?」
「ああ、間違いない。あれを見てくれ、新種のアラガミの足跡の他にラーヴァナの足跡があるだろ。風化具合からして二日前の物だ」
キースはカズマに言われた所を目を凝らして見る。
確かに、ラーヴァナと思わしき足跡があった。だが、それは微かな物で、素人なら絶対に見落とすような物だった。
キースは感心したようにカズマを見つめる。
「よく見付けたね。流石はブラッドの隊長だ」
「いや、ただ俺が偵察班上がりだから判るだけで、ブラッドは関係ない。とにかく、ここはラーヴァナの巡回ルートに入っているようだ。なるべく早く調査を済ませてくれ」
「オーケー、急いで済ませるように努力しよう。しかし、君はすごいな。どうだい、ゴッドイーターを辞めて調査隊に入らないかい? 君なら大歓迎だ」
「悪いな。ブラッドには好きな女がいるから辞めるつもりはない」
「ハハッ、なるほど! なら、君がフラれる事を願うよ。失恋したら心置きなくウチに来ると良い!」
カズマの返しがツボだったのか、キースは盛大に笑いながら調査隊の方へと戻って行った。
カズマはその背中にを見送ると、無線をオープンチャンネルに繋ぎ、シエルとナナとギルに連絡する。
「ラーヴァナが乱入してくるかも知れないから、各自気を抜くな。もし遭遇した場合は、ただちに撤退用のフォーメーションを組み、調査隊を安全地帯まで護衛しろ」
『了解しました』
『了解だ』
『りょーかい』
三者三様の返事を聞き届けると、カズマは現場に向けて歩を進める。だが、その目は新種のアラガミの足跡に向けられていた。
新種のアラガミの足跡の大きさは、およそ30㎝前後。そこから予想されるアラガミの身長は約2m。
(今で人に近い形のアラガミは何匹も居たが、大きさまで人間に近いのは初めてだな。しかもこの足跡━━)
カズマは何か、うすら寒いものを感じながら足跡を睨む。
(靴を履いた人間の足跡に似てやがる。大きさに形、ここまで人間に近いと気味が悪いな)
不穏な空気を纏いつつ、調査は始まっていく。
だが、カズマはまだ気付いていなかった。この新種がマガツキュウビにも勝る、過去最悪のアラガミだということを。