GOD EATER ー人外の王ー   作:継文

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六話

騎士型のアラガミとカズマ達は、学術都市の広場で対峙していた。

 

カズマ達の予想では、騎士型アラガミは非常に好戦的で直ぐに襲いかかってくるものと思ったが、仕掛けてくる様子がない。

 

騎士型アラガミは、右手にバスターブレードを持ち、左手にロングブレードを持っている。そして、腰を落としてどっしりと構える様は野性味が溢れ、飛びかかろうとする獣の様だ。だが、構えるだけで襲いかかって来ない。こちらを観察するように、兜の隙間から覗く複眼をギョロギョロと動かすだけだ。

 

「かかってこないな……」

 

カズマの隣でチャージスピアを構えたギルが呟いた。その声に戸惑いが混ざっているのは、気のせいではないだろう。

 

「隊長、この隙に退くことを提案します」

 

背後に控えるシエルからの提案にカズマが頷こうとした時、騎士型アラガミの口が開いた。

 

「━━ヵ、カカッ、カカカカッテ、コナ……コナコナナイィ」

 

━━喋った!

 

まるで壊れた無線機のように呂律が回っていなかったし、ひび割れたノイズのような声音だったが、神機の捕食形態のような醜いアギトから人語が出てきたのを確かに聴いた。

 

これには誰もが驚きを隠せず、呆然とする。

 

騎士型アラガミは更に喋る。

 

「タイイィチョオオォォオォォォ。コノスキ、スキスキニイイィィイ!」

 

発音も呂律も滅茶苦茶なガタガタの声で吼えると同時に、騎士型アラガミはいきなり動き出した。

 

騎士型アラガミは地を蹴り、右手に握ったバスターブレードを振り上げたまま弾丸の様な速度でカズマに肉薄する。

 

「!!」

 

突然の事に反応できたのは流石と言うべきか、カズマはシールドを展開して防御を行った。

 

間一髪の所でバスターブレードの刃を防いだものの、全身がバラバラになりそうな衝撃を受けてカズマは自身の筋肉が何本か千切れる音を聴いた。

 

「「隊長!」」

 

シエルとギルが叫ぶ。

 

だが、彼らも幾多の修羅場をくぐった猛者。カズマが攻撃を受けきった事で騎士型アラガミの動きを止めたのを好機と見るや否や、直ぐに攻撃に移った。

 

シエルは狙撃弾で頭を、ギルはスピアで腹部を、同時に攻撃した。

 

しかし、騎士型アラガミの反応と装甲は凄まじく、シエルが放った狙撃弾は左手に握ったロングブレードの腹で防ぎ、ギルのスピアは甲冑によって弾かれた。

 

「そんな!」

「何だと!」

 

騎士型アラガミは攻撃してきたシエルとギルを意に介さず、カズマを押し潰そうと、防がれたバスターブレードに力を込めた。

 

更なる圧力を受けて、カズマの骨がミシミシと悲鳴をあげる。

 

「ぐっ、……のや゛ろ゛お゛……」

 

カズマは膝が折れそうになるのを必死に堪えて、上半身を捻って自分に掛かる力をいなした。

 

力をいなされたことで、騎士型アラガミはバランスを崩し、倒れそうになる。その隙を見逃さず、カズマは背後に回り込む、その擦れ違い様に足を払うと同時に騎士型アラガミの首に目掛けてロングブレードを切り上げた。

 

綺麗な弧を描いて襲い掛かったカズマの刃は、吸い込まれる様に騎士型アラガミの首に当たったが、金属を弾く音と共に火花を散らすだけに終わった。

 

カズマは忌々しげに舌打ちをした。

 

(クソッ! 装甲の隙間を狙ったのに、どんだけ硬いんだよ!)

 

思うようにダメージは与えられなかったが、状況は悪くない。カズマは背後を取り、騎士型アラガミは体勢を崩してダウン状態だ。

 

このチャンスを逃す手はなく、カズマとギルは神機を振りかぶって総攻撃体勢にはいる。

 

その時、シエルは気付いた。

 

騎士型アラガミのマントが帯電していることに。

 

この光景はよく知っている。ヴァジュラが全方位を電撃で包み込む前兆だ。

 

「隊長、ギル! 退避してください!!」

 

シエルは叫んだ。

 

ギルは素早く反応して、すぐさま後方に跳んで安全圏に逃れた。

 

カズマも距離を空けようと跳んだが、騎士型アラガミの攻撃を受けたときに脚の筋肉が一部断裂していたのか、激痛が走って思うように距離が開けられなかった。

 

騎士型アラガミのマントから放電される。カズマは電撃の直撃を食らい、身体が吹き飛ぶ。この時点でカズマの体は麻痺し、意識が半分飛んだ。

 

吹き飛ばされたカズマは人形の様に地面を転がり、仰向けに倒れる。

 

体勢を立て直した騎士型アラガミは、猛スピードでカズマに突進する。

 

シエルが狙撃弾を放って騎士型アラガミを止めようする。しかし、騎士型アラガミはそれを体を屈めて避けた。

 

ギルがスピアのチャージグライドで騎士型アラガミに突っ込む。それを頭に受けても騎士型アラガミの足は止まらず、槍ごとギルを弾き飛ばした。

 

そして、カズマに接近した騎士型アラガミは高々と飛び上がると右手に握ったバスターブレードのオラクル細胞を活性化させる。

 

バスターブレードの刀身が不気味な赤い光に包まれ、刀身が伸びる。

 

(あれは、━━いけない!)

 

シエルは危険を感じて、反射的にスタングレネードを投げた。

 

(間に合って!)

 

シエルがスタングレネードを投げたと同時に、未だに半分意識が飛んでいるカズマはぎこちないながらもシールドを展開して防御態勢に入った。

 

スタングレネードの破裂音と共に視界を埋め尽くす強烈な閃光が騎士型アラガミを襲う。

 

スタングレネードの効果で騎士型アラガミの意識は一瞬だけ真っ白になる。そして、バスターブレードを覆っていた赤い光は消えた。しかし、騎士型アラガミは止まらず、バスターブレードを通常状態のまま降り下ろした。

 

騎士型アラガミの膂力と落下エネルギーと体重が集束したバスターブレードの一撃は凄まじく、カズマが展開したシールドを破壊し、神機ごと彼の胴体を押し潰した。

 

カズマの口から大量の血が噴水の様に吹き出した。

 

「隊長!!」

「いやあああああぁぁぁぁぁ!!」

 

ギルの叫びとシエルの悲鳴が学術都市に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

時間は少し戻り、カズマ達と騎士型アラガミが対峙していた頃。ナナは調査隊をトレーラーまで送り届けていた。

 

調査隊の護衛中、ナナは後ろ髪を引かれる思いでしきりに後ろを振り返っていた。

 

彼女はカズマ達が心配だった。

 

別にカズマ達を信頼していない訳ではない。カズマの卓越した指揮能力と抜群のチームワークで接触禁忌種を鼻歌混じりに狩るような人外達だ。だからナナはこの世で最も彼らを信頼している。

 

しかし、心配が拭えない。まるで誰かに心臓を鷲掴みにされたような息苦しさすら感じる。

 

ナナはトレーラーに駆け寄って運転手呼び掛けた。

 

「ねえねえ、もうちょっとだけ作戦領域に近づけませんか?」

 

「はあ? なに言ってんだよ! そんなことしたら俺達がアラガミに喰われちまうだろ」

 

「で、でも、私の仲間が心配で━━」

 

「あんたは神機なんて物を持ってるから怖くないかも知れないけどなあ、俺達はただの人間だ!」

 

トレーラーの運転手に怒鳴られ、ナナはすごすごと引き下がった。

 

そんなナナの背中を見て、運転手は小さく鼻で笑いながら聴こえないように言った。

 

「ふんっ、ゴッドイーターは俺達人間の為に戦ってるだろ? だったら死ぬまで戦って、俺達の役に立ちやがれってんだ」

 

しかし、聴こえないように言った運転手の言葉は、ナナの耳に届いていた。

 

運転手の言葉でナナは悔しさと怒りで顔が真っ赤になった。

 

(私達は道具じゃないよ! 私達だってアラガミと戦うのは怖いし、死にたくなんてないよ。それなのに━━!)

 

ナナの怒りが涙になって溢れ出ようとした時、肩を叩かれた。

 

「どうしたんだいナナ、悲しい顔をして。せっかくの美人が台無しじゃないか」

 

キースだ。他の調査隊員達はトレーラーの中で、彼だけ外に出てきたのだ。彼は相変わらずの陽気な調子で、見上げる程の巨体と相まって安心感があるが、ナナは話しかけないでと言わんばかりに顔を逸らした。

 

「ごめんキース。今ちょっと余裕が無いから━━」

 

話しかけないで、と言おうとした時、ナナの耳にギルの叫びとシエルの悲鳴が聞こえた。

 

五感が優れるゴッドイーターでも聴こえるか聴こえないかの小さな音だったが、彼女にとって何よりも大切な仲間の声だ。聞き逃さないし、間違える筈がない。

 

ナナは助けなければ! と思い、ハンマー型の神機を担いで駆け出そうとした。

 

それをキースは慌ててナナの腕を掴んで止めた。

 

「待った! どこに行くんだナナ!」

 

「離してキース! 行かないと、私が行かないと皆が死んじゃう!」

 

身体能力が常人の倍はあるゴッドイーターの歩みを一般人に止められる筈がなく、ナナの小さな体にキースの巨体がズルズルと引き摺られる。

 

仲間の危機にナナはある種のパニック状態に陥っていた。

 

キースは急いでナナの前に回り込むと、彼女の頬に平手打ちを打ち込んだ。

 

パンッ! と乾いた音が響き、ナナは自分が何をされたか分からず、呆けた顔になる。

 

キースはナナの両肩を掴んで、しゃがんで視線を彼女に合わせると言い聞かせるように言った。

 

「君が一人で行ってどうする! 仲間のピンチなんだろう!? だったら僕に話せ! 確かに僕はナナよりも断然弱い。ゴッドイーターでもない。でも僕は君達の仲間だ! 味方だ! 頼り無いかもしれないけど頼ってくれ!」

 

怒鳴っているのはキースなのに、いつしか彼の目には涙が浮かんでいた。仲間を本気で想う熱い涙が。

 

それにつられるように、ナナの目にも涙が浮かび頬を伝ってぼろぼろと溢れる。

 

「頼むから一人で戦おうとしないでくれ。僕達は一人で戦っているんじゃない。皆で戦っているんだ」

 

ナナはついに声を上げながら泣き出し、全てを話した。

 

自分の感じている不安と運転手に道具扱いされたことを、そして仲間の声を聴いて危機を悟ったことを。

 

ナナが泣きながら話す間、キースは彼女の背中をあやすように叩きながら真摯に聞き入っていた。

 

そして、ナナの話を聞き終えたキースは安心させるように明るい調子で言った。

 

「よく話してくれた。少し待っていてくれ」

 

茶目っ気たっぷりのウインクを残して、キースはトレーラーの荷台へと入っていった。

 

何をするつもりだろう? ナナがそう思ったら、トレーラーの荷台からキースと調査隊の皆が次々に降りてきて、運転席に向かっていった。

 

少しすると━━

 

『なっ、何だお前達は!? やっ止めろ! こら! その手を離━━! アッーーーーー!』

 

━━運転手の運転手の断末魔が聴こえてきて、それが止むとキースと調査隊の面々がナナの所へと戻ってきた。

 

「さあ! 車に乗ってくれ。一緒に仲間を助けに行こうじゃないか!」

 

「う、うん」

 

どこかスッキリとした顔をしているキースに言われ、戸惑いながらも頷いてナナはトレーラーに乗り込んだ。

 

乗り込む際、助手席を見ると安らかな顔で眠っている運転手の姿があった。

 

ナナは運転席に着くキースに何をしたの? と目で尋ねると、キースはまたもや茶目っ気たっぷりのウインクをしながら答えた。

 

「大人の交渉ってヤツさ。 まだ子供のナナには話せられないね」

 

なんとなく背筋にうすら寒いもの感じたナナは、くわばらくわばらと思い、気持ちを切り替えた。

 

(待っててね、カズマ。皆!)

 

ナナと調査隊を乗せたトレーラーは仲間の救出に向けて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「この野郎!」

 

ギルの怒声と共に鋭い槍の突きが矢継ぎ早に繰り出される。

 

対する騎士型アラガミは距離も離さず、神機すらも構えずに回避に徹している。

 

顔面を狙って放たれた突きは首を傾げるだけで避け、胴へ目掛けた凪ぎ払らいは一歩下がるだけでかわし、脚を狙った突きは片足を上げるだけで外す。

 

ギルの攻撃をことごとく避けているというのに、騎士型アラガミは反撃をしてくる様子が一切ない。

 

(舐めやがって!)

 

内心では舌打ちをしながらギルは激情のままに吼える。

 

「テメェはぶっ殺す!!」

 

 

 

 

ギルが攻撃を加えている間、シエルは倒れたカズマに駆け寄り、応急措置を施そうとしていた。

 

「っ!」

 

カズマの姿を見て、シエルは思わず絶句した。

 

カズマの胸は呼吸の為、僅かに上下している。だが一呼吸毎にカズマの口からは血が吹き出し、血の泡が口の端から溢れている。衰弱が激しく咳き込む体力すらない。

 

内蔵がやられている。致命傷だ。即死でないだけで奇跡だ。でもすぐにでも死んでしまう。

 

希望も何も無い言葉が次々に脳裏をよぎる。シエルは絶望に目の前が真っ暗になりつつも僅かな望み、それもまばたきをしただけで消えてしまいそうな程の小さな望みに賭け、半狂乱になりつつも治療にあたる。

 

いや、自分の愛する人だ。例え蘇生する確率が0%であっても諦められる筈がない。

 

まず、カズマの体を横に向けて少しでも血を吐き出させて気道を確保する。

 

(大丈夫、まだ間に合う間に合う間に合う間に合う間に合う間に合う間に合う! 間に合え!!)

 

自分に言い聞かせるように、あるいは呪いをかけるように必死になって言葉を紡ぐ。

 

気道を確保したシエルは、自分の口に回復錠を入れて噛み砕く。

 

(今の隊長は薬を飲み込む力は無い。なら粘膜から直接吸収させるまで!)

 

回復錠はゴッドイーターの中にあるオラクル細胞を無理矢理に活性化させて、服用した者の外傷を修復させる薬だ。だが、傷は直せても既に失われた器官の再生や血の補充もできない。しかもカズマ程の重傷だと繋げるだけで精一杯で傷が再び開く恐れがある。

 

口の中で回復錠を粉々に噛み砕いたシエルは、カズマの鼻を摘まんで口を開けさせると、迷わず自分の口を合わせて噛み砕いた回復錠を唾液と共に流し込んだ。

 

自分の行為に恥ずかしさや嬉しさも無かった。ただ必死だった。ただただ、カズマを死なせたくなかった。何をしても絶対にカズマを助けたいだけ。ひたすらに必死だったのだ。

 

シエルは、砕いた回復錠を奥へ流すために自身の舌をカズマの舌に絡ませた。

 

一通り回復錠を流し込んだシエルは口を離して、後は祈るようにカズマの手を両手で握った。

 

「……お願いですカズマ、まだ逝かないで下さい。私を……置いて逝かないで下さい。まだ私は君と話したい事があります。君と別れたくないんです。君が大好きなんです。だから━━」

 

━━死なないで下さい。そう言おうとした言葉は唐突に止まった。

 

シエルが握るカズマの手が動いたのだ。

 

シエルは、思わず俯けていた顔を上げ、カズマを見た。

 

カズマの目が開いていた。しかもはっきりとした意思を宿している。

 

シエルは歓声を上げようとしたが、カズマの様子がおかしいことに気が付いた。

 

意識を取り戻したカズマはシエルを見ていない。

 

カズマはシールドが砕けた神機を杖代わりにして立ち上がった。

 

「待って、まだ動いてはダメです!」

 

シエルの静止の声など聞こえていないのか、立ち上がったカズマは壊れかけた神機を引き摺りながら歩き出す。その行き先はギルと交戦している騎士型アラガミの姿がある。

 

カズマはやるつもりだ。自分が死にかけながらも腕と脚が動くからという理由だけで。武器があるという理由だけで。

 

カズマが接近して来たことに気づいたギルの動きが驚きで止まる。それに合わせて騎士型アラガミの動きも止まる。

 

カズマはよろけながらも壊れかけた神機の切っ先を天高々に掲げた。それだけで傷が開きかけて口の端から血が流れ出た。だが、カズマの鋭い目は戦意に満ち溢れていて、とても死にかけには見えなかった。

 

騎士型アラガミはカズマの姿を認めると、彼に向き直って腰を落として両手に握った二本の神機を構えた。

 

ギルは声をかけようとしたが、カズマの並々ならぬ覚悟を秘めた姿に言葉を失う。

 

騎士型アラガミはギルよりも死にかけのカズマを脅威と判断して、爆発的な瞬発力をもって全力で襲いかかった。

 

騎士型アラガミの全力はゴッドイーターでも目で追うことは叶わず、もはや消えたようにしか見えなかった。

 

刹那の瞬間に接近する騎士型アラガミ。振るわれた二本の神機はカズマの胴体を両断しようと挟み込むように振るわれる。

 

騎士型アラガミの神機がカズマに触れそうになる、その瞬間、騎士型アラガミの肩に雷が落ちた。

 

いや、正確には雷と見間違う鋭さでカズマが神機を降り下ろしたのだ。

 

神機の刃は、火花を散らしながら騎士型アラガミの肩の装甲を砕いたものの、中身には届かなかった。

 

カズマの雷の斬撃をもってしてもダメージを与える事は叶わなかった。しかし、刃を受け止めても衝撃までは受け止められず。騎士型アラガミは無様に地面に叩き伏せられた。

 

カズマは倒れ伏した騎士型アラガミを冷めきった目で見下ろすと、口からは血の塊を吐き出して今度こそ本当に気を失ってその場に倒れた。

 

ギルは慌ててカズマを抱き上げると、急いで騎士型アラガミから離れた。

 

ギルは抱き上げたカズマをぶん殴って説教をしてやりたかった。しかし、腕の中のカズマは眠るように静かに目を閉じ、口の端から血を流しいて顔面は蒼白だ。それを見てしまっては何も言えなくなってしまう。

 

一方、騎士型アラガミは倒れ付したまま混乱していた。

 

周りの人間から隊長と呼ばれていた、灰色の髪の毛と鋭い目を持った人間、あれは確かに倒した筈だ。それなのに再び立ち上がった。しかも二度も自分を倒した。

 

アイツは危険だ。殺さなければダメだ。

 

騎士型アラガミは緩慢な動きで起き上がると、ギルに抱き抱えられた少年をみつめる。騎士型アラガミの敵意はカズマ一人に向けられていた。

 

体勢を整えた騎士型アラガミは、カズマを殺そうと身構えた。その時、横合いからトレーラーが突っ込んで来て、騎士型アラガミを撥ね飛ばした。

 

その光景を見ていたシエルとギルは驚きで目を丸くしていたが、トレーラーの後部扉が開き、ナナが車内から呼び掛けてきた。

 

「二人共、早く乗って!」

 

ナナの声に急かされて、シエルとギルは急いで乗り込んだ。

 

乗り込む際、騎士型アラガミが起き上がるのが見えたので、カズマをナナに任せると、ギルは神機を銃形態にして連射弾を叩き込んだ。

 

流石に起き上がる途中では避けようは無く、全弾余すこと無く体に受けて騎士型アラガミはたたらを踏んだ。

 

その隙にトレーラーは砂煙を巻き上げながら戦線離脱した。

 

騎士型アラガミはそれを何もせずに見送っていたが、まだ戦意はある。

 

そう、撤退戦はまだ終わりではないのだ。




予想以上に長くなってしまいましたが、カズマ達の撤退戦はまだ終わりません。

このまま続けるとさすがに長すぎる気がするので一旦ここで切ります。

なお、回復錠の原理や応急措置の方法等は、独自解釈等を多分に含みますので、軽く流して頂ければ幸いです。

次話で撤退戦は終わります。

それでは今回はここで失礼します。
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