GOD EATER ー人外の王ー   作:継文

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七話

トレーラーに乗り込み、騎士型アラガミの姿が見えなくなるまで走ったところでシエルはようやく一息ついて神機をおろした。

 

「ナナさん、隊長の様子はどうですか?」

 

カズマの様子を看ているナナにシエルは訊ねた。

 

飲料水で濡らしたタオルでカズマの口の周りに付いていた血を拭いながらナナは答える。

 

「一応は大丈夫みたい。呼吸は苦しそうじゃないし、心臓もちゃんと動いているよ。まるで寝ているみたい」

 

「そうですか。では、ひとまずは安心ですね」

 

「この馬鹿野郎は無茶し過ぎなんだよ。今みたいに寝ている方が静かで助かる」

 

ナナの答えにシエルは胸を撫で下ろし、ギルは苛立たしげに憎まれ口を叩く。

 

いつもならカズマに対する憎まれ口等を咎めるシエルだが、今回に限っては同意見なので頷いた。

 

「そうですね。カズマが寝ていると私達の心労もかからず、楽なのですけど」

 

「隊長、また何かやったの?」

 

一人、カズマの怪我の経緯が分からないナナは、シエルに訊ねた。

 

シエルはかいつまんで説明した。怪我がまだ癒えてもいないのに再び騎士型アラガミに挑んだことを。

 

それを聞いたナナは心底呆れた顔になった。

 

「うわあ、隊長バカだぁ」

 

「はい。傷が完治したら皆で説教して上げましょう。それはそうと、ナナさんは何故私達が戦っているところに? 合流地点から大きく外れていますが」

 

急に話題を変えて、シエルはナナが助けに来てくれた経緯を聞いた。

 

 

 

「そうでしたか。ナナさん、それに調査隊の皆さん、助けていただきありがとうございました」

 

話を聞いたシエルとギルが頭を下げると、運転席に座るキースが快活に笑った。

 

「ハハハッ! 僕達は助けたいから助けただけさ。こんなことでいちいち頭を下げていたらキリが無いよ」

 

キースがそう言うと、他の調査隊の隊員達も気にするなと言わんばかりに笑い飛ばした。

 

トレーラーの中に笑い声が響き渡り、和やかな雰囲気が包み込む。

 

しかし、突然シエルとナナとギルの無線にフランの緊迫した報告が入ってきた。

 

『緊急事態です! ラーヴァナの出現を確認しました!』

 

和やかな雰囲気は一瞬にして消え、シエル達は厳しい顔に変わった。

 

「ブラッド了解。調査隊の皆さん、アラガミが来ました。なるべく前の方に集まって何かに掴まっていてください」

 

『あ、いえ、待ってください。ラーヴァナ、ブラッドの交戦していたポイントに向かっています。こちらにはまだ気付いて無いようで━━っ! 交戦していたポイントにて大規模な偏食場パルスの発生を確認! その範囲……その範囲は……』

 

範囲を答えるだけなのに何故かフランは何度も言葉をつっかえさせる。さすがにシエルも焦れてきた時、フランはやけくそ気味に叫んだ。

 

『範囲は約十㎞! 交戦していたポイントを中心にして半径十㎞に渡り、大規模偏食場パルスが発生しています!』

 

「なっ!」

 

シエルは思わず驚愕の声を上げるが、報告はまだ続く。

 

『ラーヴァナがこちらに接近! 追い付かれます!』

 

何故? そう思わずにいられない。ラーヴァナはトレーラーから離れた場所にいた筈だ。トレーラーの存在に気付く術は無い。

 

(まさか、騎士型アラガミが何かした?)

 

ラーヴァナが向かっていた場所には騎士型アラガミが居る筈。そして、その場所を中心にして発生した感応種の証しでもある偏食場パルス。

 

(それらから導き出される答えは、騎士型アラガミは感応種であり、その能力は他のアラガミの操作?)

 

「シエル、来たぞ!」

 

答えを導きだしかけたところで、ギルの鋭い声でシエルは我に返った。

 

「迎撃準備!」

 

シエルの号令でギルはトレーラーの後部扉を蹴破り、扉を開け放つ。

 

シエルは腹這いの体勢でスナイパー型の神機を構え、ギルは腰だめにアサルト型の神機を構える。ナナはカズマを前の方に移動させて、彼の体を押さえて衝撃に備える。

 

追ってくるラーヴァナをスコープ内に収めると、シエルは驚愕で目を見開いた。

 

追ってくるラーヴァナは既に砲身を展開しており、ラーヴァナ自身の背には騎士型アラガミが乗っているのだ。

 

アラガミは群れを成すことはあってもここまで協力的にはならない。他種族での協力なんて前例すら無い。

 

だが、現にラーヴァナは騎士型アラガミを背に乗せて、騎士型アラガミの意に沿うかのように走っている。

 

トレーラーが道幅の狭い林道に入った。そこで騎士型アラガミの駆るラーヴァナは急停止して身を伏せるように構えた。

 

射撃体勢に入ったのだ。

 

「回避! ハンドルを切ってください!」

 

シエルの張り上げた声と同時にラーヴァナの砲身から巨大な火球が撃ち出された。

 

シエルの指示に即座に反応していたキースはハンドルを右に切った。それにより間一髪のところで火球を回避する。

 

避けた火球はトレーラーのすぐ横の地面を抉り、爆発四散した。

 

火球の轟音と衝撃波と地面の破片がトレーラーを殴る。

 

大きな衝撃を受けて、トレーラーの車体が激しく揺さぶられる。

 

車内はシェイクされて調査隊の悲鳴がこだまし、機材が散らばる。

 

ナナは未だに意識の戻らないカズマの上に覆い被さって、彼を庇う。

 

「こなくそ!」

 

キースは倒れそうになる車体を巧みなハンドル捌きでなんとか体勢を立て直した。

 

その際に車体が更に大きく揺れて調査隊の機材がいくつか車外に投げ出された。

 

そんな激しい揺れの中にあってもシエルとギルは体勢を崩さず、銃口をラーヴァナに向け続けていた。

 

揺れが治まり、ギルがアサルト型の神機のトリガーをひく。

 

「次弾を撃たせるなよ!」

 

「当然です」

 

シエルはスナイパー型の神機に弾を装填する。

 

そして、引き金を引いた。

 

放たれた弾はラーヴァナの砲口にまっすぐ入り、その奥にある弱点の核を撃ち抜いた。

 

シエルの弾でラーヴァナは一時行動不能に陥り、そのまま地に倒れ伏した。

 

その間もトレーラーはスピードを弛めず、猛スピードで走り去っていく。

 

 

 

 

 

騎士型アラガミは倒れたラーヴァナを見る。

 

まだ息はあるが、すぐには動けない。目標であるトレーラーは既に遠くに走り去った。

 

これ以上の追跡は不可能と判断して、騎士型アラガミはトレーラーの走って行った方向に背を向けて学術都市へ向けて歩き出した。

 

騎士型アラガミは思う。あの灰色の髪の人間は必ず殺さなければならないと。

 

灰色の髪の人間を倒した途端、何故か他の人間たちは無秩序に動き出し、何も恐れる事はなくなった。

 

灰色の髪の人間を殺せば自分に対する脅威は無くなり、他の人間達が狩りやすくなる。

 

でも灰色の髪の人間は強い。どうすれば勝てる?

 

騎士型アラガミは疑問に対して一つの答えを出した。

 

━━学ばなければならない。人間達の習性、言葉、在り方、何から何まで全て学ばなければならない。そうすれば人間の弱点が見えてきて、あの灰色の髪の人間も殺せるかもしれない。

 

騎士型アラガミはヴァジュラのマントをなびかせながら歩く。その様は正に人外の王であった。

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