第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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-最後まで己の思いを貫いた者が真の勝者である-


新共和国の崩壊/後編

時間は少しばかり前に遡る。

 

ハイパースペースを航行中の新共和国軍のフリゲート“プリダスタネーション”はクワットの一行を乗せホズニアンを目指していた。

 

艦長はブリンダー中佐で乗組員は他のネビュロンB系列のフリゲートと同じく850名まで搭載出来る。

 

クラス2のハイパードライブを持つこの艦は順調にホズニアン・プライムへ近づいていた。

 

「大使、長旅ご苦労でした」

 

「いや、君たちのおかげで助かったよ」

 

セルヴェント大使はふと後ろの2人に目線を向けた。

 

ジョーレンもジェルマンもやり切った顔をして互いの脇腹を突き合った。

 

「艦長、間も無くハイパースペースを抜けます」

 

「よし、それでは大使ご準備を」

 

「そうだな、さて2人とも行こうか」

 

セルヴェント大使が2人の肩を掴むと3人とも歩き始めた。

 

「ええ」

 

「ああ、久々のホズニアン・プライムだ」

 

「初めてだろ」

 

「そうだった、シャンドリラはこれでも1回はあるんだがな…」

 

キツい冗談を言いながら3人はプリダスタネーションの艦内を歩いた。

 

3人が居住区画に移動する頃には既にハイパースペースから脱していた。

 

ブリッジやモニターと繋いでいる部屋からは都市の光で輝くホズニアン・プライムの姿が見えた。

 

「皆様、間も無く地上の宇宙港に入港しますのでご準備をお願いします」

 

1人の下士官が報告に来た。

 

若干疲れている大使館のメンバー達はようやく一息つけると思い安堵の表情を浮かべていた。

 

中には大きく背伸びをして独房と旅の疲れを誤魔化そうとする者もいた。

 

一行は少ないながらも荷物を持ち歩き始めた。

 

「そう言えばあの大量の武器とかはどうしたんだ?」

 

「持って来れるものは持ってきたが後は売っ払っちまった、案外高く売れたぜ」

 

「高くってどのくらい」

 

「10,000クレジットポンとくれたぜ、おかげでオンボロだがあのテイランダーが買えた」

 

「確かにちょうどいい金額だな」

 

2人は微笑を浮かべながら降り口のハッチまで歩いた。

 

するとちょうどヘルヴィがセルヴェント大使と話をしていた。

 

その様子を見ながらジェルマンは黙り込んだままだ。

 

ジョーレンからすれば今すぐここで大きなため息を吐きたくなる。

 

しかも今ちょうどセルヴェント大使が他の要人に呼ばれ1人になったというのにジェルマンはまだ動かない。

 

こいつの体はカーボン冷凍でもされたのかと思うほど彼女を見つめたまま固まっている。

 

「…やるか」

 

「あっ?やるって何をっ!」

 

ジョーレンはポケットに手を突っ込んだままジェルマンの尻を軽く蹴った。

 

それでもびっくりした彼は軽く飛ばされてしまった。

 

しかもちょうどヘルヴィにぶつかった。

 

「あっ…すいません」

 

「いえ…この度は救出して頂き本当にありがとうございました」

 

彼女は礼儀正しく頭を下げた。

 

「その…ヘルヴィさんはこれからどうするつもりで?」

 

「私は今は父について行くつもりです、これからどんな世界になって行くかまだ分かりませんし」

 

「いつかまた会えますかね…」

 

なんという事を言ってしまったんだと思いつつジェルマンはじっと彼女の顔を見つめた。

 

「ええ、同じ新共和国の為に働く者ですから」

 

「そう…ですか…そうですよね!」

 

「ええ!」

 

そういうとちょうどハッチが開いた。

 

気圧差で風が舞い込んでくる。

 

『足元に気を付けてお降り下さい、ここまでお疲れ様でした』

 

アナウンスとともに一行はぞろぞろと階段を降りて行く。

 

「それじゃあ」

 

「お気を付けて」

 

味気ない挨拶を交わすと2人は艦を降りていった。

 

その後ろからジョーレンは満足げな表情を浮かべて歩いてきた。

 

「よくも後ろから蹴りやがったな?」

 

「タマ蹴ってない分マシだろう、全くウブな奴はこれだから…立派なアカデミーで一体何を学んで来たんだ?」

 

「うるさいなぁ…とにかく行くぞ」

 

ジェルマンは足早に階段を駆け降りた。

 

一方ジョーレンはそれに続くように急いだ。

 

「行くってどこへ」

 

「当然情報部の本部だよ、きっと今頃人手不足だ」

 

「なるほどな…ってお迎えが来たぞ」

 

ジェルマンの顔を無理やり指で刺した方向へ向けた。

 

2人の士官がこちらに向かってくる。

 

敬礼し2人を出迎えた。

 

「お疲れ中尉、ストライン中将がお呼びだ」

 

「そちらの大尉も御同行願う」

 

2人は顔を見合わせ向けのスピーダーに乗り込んだ。

 

この時点で帝国軍の侵攻まで後1時間を切っていた。

 

 

 

-艦隊情報部本部 ストライン執務室-

先程の士官2人に連れられジョーレンとジェルマンはストライン中将の執務室まで連れられた。

 

ジェルマンにとっては慣れ親しんだ施設だがやはりジョーレンにとってはそうは行かないらしい。

 

スピーダーに乗った時からどこか緊張して見えた。

 

「おい一体どうしたんだよさっきから」

 

彼に小声で理由を聞いてみる。

 

ジョーレンを引っ張り耳打ちをした。

 

「なんか硬いぞ、どうしたいつもの感じは」

 

「いやな…一応情報部員なんだが本部に入るのは初めてで…それに元々俺の存在は抹消されてるわけだし…」

 

「はぁ…大丈夫だたとえならず者でもストライン中将なら広い心で受け入れてくれる」

 

「そうだと良いんだがな…」

 

彼はどこか弱気でこれ以上掛ける言葉が無かった。

 

それにもうストライン中将の執務室の前だった。

 

「2人が来た開けてくれ」

 

いつもの衛兵2人がコードを入力し一行を中に入れる。

 

「失礼します中将、ジルディール中尉とバスチル大尉をお連れしました」

 

士官が横に逸れ2人を見せた。

 

2人とも敬礼している。

 

ストライン中将も椅子の上で敬礼していた。

 

「ご苦労、下がってくれて構わない」

 

「では失礼します」

 

連れてきた士官達はゾロゾロと執務室を後にした。

 

ドアが閉まった事を確認すると少し間をおいてからストライン中将は話し始めた。

 

「中尉ご苦労だった、突然辛い任務になってしまったがよくこなしてくれた、そして」

 

ストライン中将はジョーレンの方へ目線を向けた。

 

彼は今までにない程気不味そうな表情を浮かべている。

 

説教前の子供みたいだ。

 

「一応三本は調べて貰った、確かに君は元パスファインダーで亡きドレイヴン将軍から直接潜入の司令が出ている」

 

「ええ…まあ…」

 

ストライン中将はゆっくりと彼に近づいた。

 

身長自体はあまり変わらないが威圧感は中将の方が何倍も大きい。

 

だがストライン中将はそんなジョーレンの両手を握りして感謝の言葉を露わにした。

 

「本当によくやってくれた、君の行動のおかげで大勢が救われたよ!」

 

「えっ?あっああ!ええ!まあ!ありがとう…ございます…」

 

予想していた感じと違いジョーレンは別の意味で困惑していた。

 

大体こうなるだろうなと思っていたジェルマンは微笑ましい表情で見つめていた。

 

「ジルディール中尉の話によればまだ君のように潜伏中の情報員や特殊部隊員がいるという事だな?」

 

「ええ、同じパスファインダーのメンバーもいます、それが何か?」

 

「…我々新共和国と帝国は戦争状態に陥った…」

 

ストライン中将は表情を重くし結果だけを説明した。

 

ずっと艦内にいた2人は全く外の情報を知らなかった為驚いている。

 

「はっきり言って勝つ見込みは五分五分といった所だ、その為にも優秀で経験豊富な情報員が欲しい」

 

「では我々に潜伏中の情報員を見つけ出して連れ帰ってこいと?」

 

「その通りだ中尉、君たちへの新しい命令はそれだ」

 

ストライン中将はデスクから司令の入った小さいイメージキャスターを手渡した。

 

「この中に任務の内容は入っている、後は」

 

『警告、ハイパースペースより帝国艦隊出現!繰り返す、ハイパースペースより帝国艦隊出現!』

 

警報音とアナウンスが入りストライン中将の言葉を遮った。

 

室内の3人ともありえないと言った表情だ。

 

中将はすぐさまデスクのコムリンクを起動し通信回線を開いた。

 

どうしようもない2人はただ黙って見ているしか無かった。

 

「オービタルベースこれはどういう事だ、帝国艦隊が出現したのか?」

 

『はい中将…!帝国艦数千隻が軌道上に出現!現在戦闘中です!』

 

「司令官のファンゼン准将と代わってくれ、早く!」

 

ストライン中将が通信をとっている間に衛兵2人が室内に入ってきた。

 

「閣下!」

 

「本部に移動する、全員用意を!」

 

『中将!』

 

「ファンゼン准将か、帝国軍はどうなっている」

 

『我が軍は圧倒的に不利です!このままでは防衛艦隊は全滅してしまいます!』

 

「なんとか防衛線を展開しろ、せめて元老院議員を避難させるまでは耐えるんだ」

 

『はい!なっシールドを!!』

 

雑音と共に軌道上の基地との通信が途切れた。

 

最後の言葉から察するにファンゼン准将と基地はもう…

 

悲しいが今は嘆いている場合ではない。

 

少し目を閉じ心を鎮める。

 

「…退却だ、ホズニアン・プライムから急いで脱出するぞ!」

 

「ですが中将!首都を捨てては…」

 

「どうせ今の戦力では勝てん、それよりも今は生き延びる事を考えろ」

 

「中将の言う通りだ、またここに帰ってくる為にも今は逃げるぞ」

 

ジェルマンは悔しそうな表情を浮かべていたが彼とてわかっているだろう。

 

辛い決断を下すのは部下ではなく上官の役目だ。

 

「全施設に警報を出せ!脱出するぞ!!」

 

ストライン中将の眼光には鋭く決意に満ちた光が灯されていた。

 

 

 

-新共和国元老院複合施設 元老院会議ビル-

再び時は少しほど前に遡る。

 

ジェルマンとジョーレンがストライン中将の執務室に案内されている頃元老院会議ビルでは議会が開かれていた。

 

内容は主に現在マジノ線の状況と今後の対策だがこの状況でも相変わらず元老院は動物園状態だった。

 

互いに批判しかせず一向に対応策を編み出そうとしない。

 

違う点といえば開戦の影響で軍縮派やモスマ派の勢力の方が不利だと言う点だ。

 

軍拡派は鬼の首を取った勢いで反対派の勢力を攻め立てる。

 

「なら一体この戦争はいつまで続くんだ!ようやく銀河内戦が終結したばかりだと言うのに…」

 

軍縮派の議員が壇上で叫んだ。

 

それに対し軍拡派の議員達が次々と罵声に似た批判を浴びせかける。

 

「そもそも軍備を増強しておけば防衛戦に持ち込む必要すらなく、戦争すら起こらなかった!」

 

「これは貴方達の怠慢と傲慢さが招いた最悪の結果だ!」

 

「そうだ!」

 

「銀河市民の敵め!」

 

これに対し軍縮派の議員達は返す言葉がなく黙り込むしか無かった。

 

先程の議員も威勢を失い狼狽えている。

 

さらに軍拡派の議員達の勢いは増しつつある。

 

「今からでも遅くはないでしょう皆さん!軍備の拡張と徴兵制の実施を我々は要求する!」

 

徴兵制という言葉に保守派や軍縮派の議員達はざわついた。

 

クローン戦争だって独立星系連合も旧共和国も徴兵制は取らなかった。

 

銀河内戦期だってそうだ。

 

帝国も独裁政治を敷いていたが徴兵制までは行っていなかった。

 

近年の銀河系において徴兵制とはそれ程珍しいものだ。

 

無論個々の惑星防衛軍では変化してくるだろうが銀河規模の政府が徴兵制を取るのはほぼない。

 

せいぜい今の帝国の私立軍である親衛隊がやっているくらいだ。

 

それほどの事を今壇上に立っている議員は口に出したのだ。

 

裏を返せばそれほど逸められているという事だが。

 

「だが徴兵制など…それでは親衛隊の二の舞ではないか!」

 

「なぜ我らが敵国の真似をせねばならないのだ!」

 

「軍備拡張ともかくそれだけは納得しかねんぞ!!」

 

やはり猛烈に反対されている。

 

「ではどうやってこの戦いに勝つつもりで?いくら兵器を増産しようとそれを操る兵士がいなくては軍は成り立たない!」

 

「軍の崩壊はすなわち戦線の崩壊を意味する!それは我が新共和国の敗北でもあるのだぞ!」

 

「それともなんだ?ドロイド軍でも蘇らせるのか?」

 

「非人道なのはお前たちの方だ!」

 

「そうだ!」

 

軍拡派の勢いは衰えない。

 

逆にヒートアップしてきた頃だ。

 

熱心なのはいい事だが話や思考に中身がないのでは意味がない。

 

そして時間がやってきた。

 

突如議会の照明が落とされ出入り口が封鎖された。

 

赤いライトに切り替わると大きな警報音が議会中に鳴り響いた。

 

議員達は混乱し動揺の声を上げている。

 

非常口が照らされ数名の士官が入って来た。

 

全員に聴こえるように大きな声で士官の1人が叫んだ。

 

「皆様!帝国軍の襲撃を受けました!念の為避難をお願いします!」

 

「通路はこちらです!!」

 

手を振り非常口を議員達に教える。

 

直後警報音が響いた。

 

『警告、ハイパースペースより帝国艦隊出現!繰り返す、ハイパースペースより帝国艦隊出現!』

 

「帝国の襲撃…?」

 

「バカな…マジノ線は破られたのか…」

 

「とっとにかく避難しよう!」

 

「そっそうだ!早くみんな早く!」

 

ゆっくりとだが全員が非常口に駆け込んだ。

 

腐っても元老院議員の彼らは一般人のようにパニックになったりせず焦らずしっかり列を作って非常口に入っていった。

 

士官達の誘導も丁寧で下手な混乱を産まずに済んだ。

 

「こちらですさあ!」

 

「そのまま真っ直ぐ行けば新型の非常口です!」

 

「あの」

 

1人の議員が士官に尋ねた。

 

レイアだ。

 

背後にはガー議員もいる。

 

「どうされました?」

 

「避難する前に連絡を取りたいの、この非常時ではシャンドリラや他の惑星にいる将軍が来れば脱出出来る確率も高くなるだろうし」

 

「でしたら我々にお任せを、議員方に何かあっては大変です」

 

「いや前線でも戦った事のある彼女ならきっと大丈夫だ、私も同行しよう」

 

「無茶だという事は分かっています、ですが彼らならきっとこの混乱から私達を導ける」

 

士官は困った表情を浮かべていた。

 

すると部下の1人が彼に耳打ちをした。

 

小さく小刻みに頷き逆に士官の方が耳打ちをした。

 

部下は敬礼し内容を理解したようだ。

 

士官は表情を変え2人に近づいた。

 

「でしたら彼らに護衛させましょう、そうすれば危険も少なくなる」

 

「わかりました、わがままを言って申し訳ありません」

 

「いえ、それでは議員方お気をつけて!」

 

「行きましょうオーガナ議員、ガー議員」

 

別の士官に連れらて2人は議員団から離れた。

 

士官の妙な目付きに見送られて。

 

 

 

元老院議員達はそのまま真っ直ぐ地下の脱出通路を移動していた。

 

最近できた真新しい簡素な通路は僅かな照明しかなく避難施設までの一本道しかなかった。

 

逆に言えばわかりやすい避難通路であり変に迷う必要がない。

 

それに防音であり何が走って逃げようとも探知され攻撃される危険性がない。

 

しかし熱源探知などを恐れてかスピーダーなどのビークルの通行は認められておらず徒歩でしか移動出来なかった。

 

だがかなり大きく広い通路なので数千人の元老院議員が一斉に走っていてもなんら問題はなかった。

 

そう、皆殺しにするのになんら問題はないのだ。

 

「なっなんだ!」

 

先頭を走っていた元老院議員達が動揺し声を上げた。

 

その後ろを走る議員達は前がよく見えず何が起こっているかわからなかった。

 

が音でわかった。

 

「プローブ・ドロイド!一体どこから!?」

 

アラキッド・インダストリーズ社製品のヴァイパー・プローブ・ドロイドが数体、独特の浮遊音と共に近づいて来た。

 

議員達は後退りするがもう手遅れだった。

 

プローブ・ドロイドはブラスターを議員達に向けた。

 

「嘘だ…嘘だ!」

 

プローブ・ドロイド達は真実という冷たい弾丸を彼らに突きつけた。

 

無防備で無抵抗な議員達はバタバタとブラスター弾の前に鮮血を流し斃れていった。

 

無機質な壁には議員達の生き血が絵の具のように撒き散らされていく。

 

ドロイドの足元には光を失い血や肉を垂れ流した議員達の尸が転がっている。

 

ドロイドにも返り血が付き黒いボディがベッタリと彩られている。

 

それでもプローブ・ドロイドは止まらない。

 

彼らは無慈悲な殺戮を続けた。

 

議員達は反対側に逃げようと走ったがそれも絶望に終わった。

 

後ろからも大量のプローブ・ドロイドが出現した。

 

議員達の悲鳴が通路に反響しより大きく聴こえる。

 

それはブラスターの銃声も同様で撃たれて死んでいく分悲鳴の方がどんどん少なくなっていく。

 

逃げる事もできず抵抗する事も叶わない議員達は順番に痛みと死を待つしかなかった。

 

誰もが仲間や己の死に目を背ける。

 

これほど悍ましい殺戮は新共和国や帝国、親衛隊にすら気づかれず静かに幕を閉じた。

 

逃げ込んだ元老院議員達全てが死んだことによって。

 

 

 

一方情報部の本部では。

 

既に帝国軍の数個連隊に包囲され戦闘が勃発していた。

 

幸い自動防衛システムと新共和国軍兵士達の奮戦により辛うじて侵入は防いでいるが長くは元たない。

 

その間に情報将校達はデータ消去や撤退の準備をしていた。

 

「準備できた者は急いで輸送船へ乗れ!なるべく早く此処を去るんだ!」

 

ストライン中将は全員に命令を出した。

 

もう施設内にも流れ弾が飛んで来ており負傷者を出していた。

 

ジョーレンはその間にもブラスター・ライフルで応戦しジェルマンはデータ消去に急いでいた。

 

彼らの働きは凄まじかった。

 

おかげで脱出にだいぶ余裕が持てた。

 

「中将、あと少しでデータ消去は完了しそうです!」

 

「そうか…よくやったぞ中尉、大尉!」

 

「わかってます、あと少しやれば…」

 

正確な射撃で上空からストームトルーパーを1人ずつ仕留めて行く。

 

敵は狙撃されている事に気付いてもどこにいるかまでは気付いていない。

 

気づけばストームトルーパーの一段を片付けていた。

 

おかげで地上の味方は無事撤退出来たようだ。

 

「完了しました!」

 

端末を切り離し急いでブラスター・ピストルに持ち替える。

 

ライフルを持ったジョーレンも2人の元へ近づいてきた。

 

「撤退状況はどのくらいだ?」

 

「駐留している八割が無事撤退に成功、ですがその後の事は…」

 

「現在職員の七割が脱出に成功しました」

 

衛兵の1人がそう報告した。

 

「全員無事に友軍部隊のいる基地に辿り着けたでしょうか…」

 

ジェルマンが不安な声を上げた。

 

「今は無事脱出できたと考えておこう、さあ我々も急ぐぞ!」

 

「はい!」

 

5人はデータ管理室を後にし通路を急いで走った。

 

攻撃により時々建物全体が揺れるがそんなことを気にしている暇はない。

 

傍を見ると同じように退却している兵士が見えた。

 

助けてやりたい所だがジェルマン達にも余裕がない。

 

ただ無事を祈ってやる事くらいしか出来なかった。

 

「ん…?」

 

真ん中を走るストライン中将は何かに気づいた。

 

彼は一瞬にして青ざめた。

 

衛兵やジェルマン達はまだその事に気づいていない。

 

まずいと思った彼は咄嗟に近くにいたジェルマンとジョーレンに「危ない!」と声を掛け2人を突き飛ばした。

 

2人はかなり遠くまで飛ばされた。

 

次に衛兵2人を引き離そうと思った矢先それは来てしまった。

 

窓ガラスが割れる音と爆発音が響き爆風があたり一面に広がった。

 

熱や破片から顔を守ろうと2人は腕で顔を覆い被せた。

 

「くっ!」

 

爆風は10秒くらいで過ぎたが目を開けた瞬間最後に見た風景とは大きく変化していた。

 

壁やガラスは崩壊して散乱し瓦礫には誰かの血がついていた。

 

大体予測は出来る。

 

「中将!!」

 

引き攣った声を上げ瓦礫に埋もれていた中将のそばに駆け寄る。

 

まだ息はある。

 

呼吸もしていた。

 

「…っ…ちゅう…い…か…」

 

弱々しい声音と共に目を覚まし首をジェルマンの方に向ける。

 

後から急いでジョーレンも駆けつけた。

 

ジェルマンはあまりのショックで混乱していたせいか彼に似合わない涙を流しあたふたしていた。

 

「今助けます!きっとバクタ液で…」

 

ストライン中将は笑みを浮かべた。

 

「手遅れだ…多分、足も切断されてるし内臓もだいぶ抉れてる…生きてるのが不思議なくらいだ、ハハ」

 

中将の息は荒い。

 

このままでは彼のいう通り本当に死んでしまう。

 

さっきから血の匂いが漂っている。

 

恩人であり上官でもあるストライン中将をジェルマンはどうしても失いたくなかった。

 

それは出会って数時間のジョーレンだって同じ事だ。

 

同じ軍の仲間であるし何より敵でない限り命が失われるのは嫌だ。

 

単純な理由だが誰だってもの前で人が死ぬのは嫌なものだ。

 

助けたいと思うはずだ。

 

「しっかりしてください中将!」

 

らしくもない弱気な事を言うストライン中将にジェルマンは声をかけた。

 

「私の指令は続いたままだが…最後にいくつか…頼みたい事がある…」

 

「なんでもどうぞ!」

 

あまり損傷が少ない方の腕をなんとか持ち上げてジェルマンの裾を掴んだ。

 

彼は勇気づけるためしっかり手を握った。

 

「私には…兄弟がいる…兄は死んだが弟がまだ生きている…名前はディクス・ストライン…階級は准将だ」

 

「そのディクス准将を探せば良いんですね?」

 

「いや…私の家族全員を集めてくれ…きっと今後の戦いで活躍する…」

 

「他には誰が」

 

ジョーレンが後ろから尋ねた。

 

ストライン中将は無理をして笑みを作り話した。

 

彼らには託せると信じて。

 

「兄の子ラクティス・ストライン…そして私の子…ノヴァン・ストライン…」

 

「3人だけですか?」

 

「ああ…ノヴァンの母親は…私の妻はもうこの世にはいない…だから彼をひとりにしないでやってくれ…」

 

「彼らはどこにいるんです?」

 

ジェルマンとは違い至って冷静なジョーレンは彼に尋ねた。

 

「ディクスはマジノ線にいる…ラクティスはヤヴィンの航空基地にいる…ノヴァンは…」

 

言葉が途切れ中将の意識が消えかけた。

 

ジェルマンが名前を叫び揺すぶったお陰でなんとか目を覚ましたが相当疲弊している。

 

ジョーレンも口調に焦りが見え始めた。

 

「ノヴァンの居場所は?」

 

「レンディリのアカデミーにいる…あの子を…たった1人の息子を頼んだぞ…」

 

「もちろんです中将…!」

 

「君は本当に優秀な…私の自慢の部下だ…」

 

ストライン中将の目からはジェルマンと同じように涙が流れていた。

 

彼はもう痛みを感じず死の恐怖はずっと昔に何度も味わってきた為その感覚は麻痺していた。

 

涙を流す理由は一つしかない。

 

「これから君は苦難の日々を送るだろう…それでも生き続けてくれ…」

 

「中将…」

 

「最後まで生きた奴が…己の思いを貫き通した奴が…勝者だからな…」

 

「中将!」

 

ストライン中将の意識は完全に途切れた。

 

彼はそこからピクリとも動かなかった。

 

呼吸は止まり意識もない。

 

静寂が訪れ辺りにはジェルマンの啜り泣く音が木霊した。

 

それでもストライン中将は笑っていた。

 

全てをジェルマンに託したまま安堵の微笑を浮かべ苦しみひとつない顔で旅立った。

 

ジョーレンも目を瞑り哀悼を捧げる。

 

彼の方が死は見慣れている。

 

戦場で多くの仲間と敵の死を目にしてきた。

 

だからこそジェルマンの悲痛な思いとストライン中将の想いが伝わってくる。

 

涙を拭い取りジェルマンは静かに話した。

 

「中将は…僕がアカデミー時代から気に掛けてくれて…家族のいない僕に居場所をくれた…」

 

「そうだったんだな…」

 

「だから…」

 

ジェルマンは立ち上がった。

 

涙を堪えストライン中将に顔を向けた。

 

彼は静かに大恩ある上官に敬礼した。

 

曇りひとつないクリスタルのような瞳からはジェルマンの強い意志が伝わってくる。

 

彼の言葉の続きは心の中で唱えた。

 

(僕が必ず貴方の任務を、遺志を成し遂げます)

 

静寂の中彼は別れと新たな一歩を進む決意をした。

 

走り去る姿に涙はなかった。

 

ストライン中将はここに置いていく。

 

いつか帰ってくる為に。

 

いつかこの地を取り戻す為に。

 

遺志を未来に受け継ぐ為に2人は走った。

 

 

 

「なるべく人を乗せろ!」

 

ジェルマンやセルヴェント大使達を連れて来たプリダスタネーションの艦長ブリンダー中佐は艦の前で叫んだ。

 

この宇宙港は今現在的の攻撃が比較的に少ない場所だった。

 

恐らく首都攻撃に集中している為宇宙港攻撃は後回しなのだろう。

 

脱出しようにも上空の防衛艦隊は既に壊滅状態だし逃げても捕まるのがオチだ。

 

実際もう逃げ場はなかった。

 

しかし長年の航行と戦闘で得た経験を持つブリンダー中佐と乗組員たちはそうは思わない。

 

まだ逃げるチャンスがある。

 

「艦長!あれを!」

 

「なんだ?おいみんな避けろ!」

 

乗組員のバンシウス少尉とブリンダー中佐が頭を抱えしゃがみ込んだ瞬間1機のエアスピーダーが帝国軍侵入用のバリケードをぶち破り侵入してきた。

 

ほぼ不時着に近い形で減速しギリギリのところで停止したエアスピーダーは無理が祟ったのか煙が立ち込めていた。

 

「誰だあんな交通法違反したのは…」

 

ゆっくり目を開けブリンダー中佐は誇りを払った。

 

スピーダーのキャノピーがゆっくりと上がる。

 

コックピット内も煙たいのか咳き込む音が聞こえた。

 

「一体誰だ…?敵か?」

 

「帝国軍があんなスピーダー使うと思います?」

 

「いや全く、取り敢えず民間人か新共和国軍所属っぽいが…」

 

煙で機体の中は見えなかったがパイロットの2人が徐々に姿を表した。

 

その顔と服装を見た瞬間誰もがギョッとした。

 

片方も名前を知っているしもう片方なんて新共和国の超有名人だ。

 

英雄とかそう言う単語を並べ立てても言い表せないほどだ。

 

「おっオーガナ議員!ガー議員!」

 

ブリンダー中佐と周りの乗組員たちは慌てて敬礼した。

 

なんとスピーダーの中から出てきたのはレイア・オーガナとタイ=リン・ガーだった。

 

みんなびっくりしている。

 

突然スピーダーが突っ込んできた事もそうだし中から有名な元老院議員が出てきた事もだった。

 

しかしレイアやガー議員はいたって冷静だ。

 

「艦長はどなた?」

 

「小官であります!ブリンダー中佐です!」

 

「他にここにきた元老院議員は?」

 

「殿下とガー議員の御二方だけであります、元々ここに滞在していたクワットの大使館メンバーが数十人と」

 

「やっぱり…私たちだけ…」

 

「仕方ない、我々だけでも生き延びた事を今は感謝しよう」

 

「ええ…他にいるのは?」

 

「なんとか撤退してきた防衛軍部隊とスターファイター隊だけです、いつでも脱出はできますが」

 

2人は顔を見合わせた。

 

出来ればもう脱出したい所だがなるべく仲間達を多く連れて行きたいというのもある。

 

「わかりました…出港の準備を…」

 

「ちょっと待ってください!」

 

遠くから1人の女性の声がした。

 

ヘルヴィだ。

 

「まだあの2人が…!」

 

「ヘルヴィやめろ」

 

後ろから父親のセルヴェント大使が止めに来た。

 

彼女はずっとジェルマンとジョーレンを待っていたのだ。

 

とはいえ待ち続けるにしても時間には限りがある。

 

「ここで我々もやられてしまえば2人の行動が全て無駄になる…!今は逃げるんだ…」

 

「そんな!まだあのお2人は生きているかもしれないのに!」

 

「だとしてもだ…ここで大勢を私情で巻き込む事は出来ない」

 

ヘルヴィの気持ちも分かる分セルヴェント大使は苦痛に満ちた表情を浮かべていた。

 

ブリンダー中佐やバンシウス少尉も俯いている。

 

「さあ、船に戻ろう…」

 

ヘルヴィは目尻に涙を浮かべていたが泣く事はせず必死に堪えていた。

 

そんな彼女を父は優しく宥めた。

 

ブリンダー中佐が「出港だ!」と覚悟を決め言おうとした矢先、奇跡は起こった。

 

突如謎の爆発音と共に空から何かが降ってきた。

 

それにと叫び声が聞こえた。

 

「なっなんだあれ?」

 

全員が見上げると人のような形をしたものが2つ降ってきた。

 

徐々に近づき姿が見え始める。

 

そしてブリンダー中佐やヘルヴィの顔色がガラッと変わった。

 

「あれは…!」

 

「ああ!まさかそんな…!」

 

セルヴェント大使も空を見上げて興奮している。

 

だがどんどん近くなるに連れて何処からか聞こえる悲鳴のような叫び声もよく聞こえるようになっていた。

 

「まさか…みんな避けろ!」

 

ブリンダー中佐はレイアやガー議員を連れて大きく離れた。

 

他の乗組員達も円形に広がっている。

 

直後パラシュートを開いた2人の男が縁の真ん中に降ってきた。

 

1人は急いで付与運となったバックパックを剥ぎ取りブラスター・ライフルを構え周囲を警戒した。

 

もう1人は足を滑らせ地べたに座り込んでしまった。

 

「立てジェルマン!着いたぞ!」

 

「足首…足首を挫いた…」

 

「おいおい大丈夫かよ…立てるか?」

 

「ああ…軽傷だ…」

 

彼はブラスター・ライフルを持った男に支えられなんとか立った。

 

それでもまだ足を痛そうにしていた。

 

「ジョーレン、なんかみんなに取り囲まれてるぞ…」

 

「ああ、ちょっと派手に降りすぎたな」

 

「ジェルマンさん!!」

 

ヘルヴィは満面の笑みと共にジェルマンに抱きついた。

 

あまりの勢いと突然の出来事にジェルマンは混乱しよろけそうになった。

 

「ヘルヴィさん!?あの…」

 

「よかったな坊主」

 

ジョーレンは彼の肩を叩きニヤニヤしていた。

 

一方のヘルヴィはずっとよかったと涙を流していた。

 

「無事だったかね…本当によかった…」

 

「大使、どうやら迷惑をかけてしまったようですね」

 

ジョーレンは大使と握手し軽く抱き合った。

 

「よし!今度こそ出港するぞ!みんな急げよ!」

 

乗組員達がやる気に満ち溢れた表情でプリダスタネーションに入っていった。

 

微笑ましい様子を眺めながらレイアとガー議員も同様に艦内へ入った。

 

「我々も行きましょうか」

 

「ええ」

 

2人は微笑みのままプリダスタネーションに乗り込んだ。

 

 

 

ネビュロンBは形状から言ってお世辞にも衝撃に強いとは言えない。

 

しかし300メートルの船体に積み込まれたターボレーザー砲やレーザー砲の威力は強力だ。

 

対空能力が高くエスコート・フリゲートとして高い性能を誇っていた。

 

「それで脱出の方法は?」

 

ブリッジに居座るジョーレンがブリンダー中佐に尋ねた。

 

「地上の中でハイパースペースに入る」

 

「はっ!?んな馬鹿な真似したらみんな死んじまいますぜ!」

 

ジョーレンはブリンダー中佐の肩を掴んだ。

 

しかし他の乗組員もブリンダー中佐も全力でやる気だった。

 

「船体を出し過ぎれば帝国間に狙われる、ギリギリのところでやるしかない」

 

「そもそもそんなことできるのか!?」

 

「初めてこの艦に乗った時すでにやった、出来ない事はない…そうだろう大尉?」

 

「はっはい!」

 

航行士官のニーベル大尉が頷いた。

 

とはいえジョーレンの不安感は拭いきれない。

 

「大丈夫かよ…」

 

「艦長、後方より敵スターファイター!」

 

「対空戦闘とシールドの用意だ、急げ」

 

敵のTIEインターセプターが3機追ってきた。

 

編隊を組みエンジンが攻撃されている。

 

偏向シールドを展開しているのでダメージはないがいつまでも持たない。

 

すぐさま後部のレーザー砲が反撃する。

 

反応が遅れた中央の1機に直撃し撃破された。

 

残りの2機は対空砲火を掻い潜りながら両脇から攻撃しようと画策している。

 

「前方からさらに3機接近!」

 

「チッ!あと少しだってのに…」

 

「後方からも機影を確認…ですが…」

 

レーダー士官はその機影をマジマジと見つめていた。

 

5機のTIEインターセプターが同時に攻撃しようとした矢先それは閃光と共に牙を剥いた。

 

一瞬のうちに脇に張り付いた2機のTIEインターセプターを撃破し並々ならぬ速さで前方の1機を撃破した。

 

生き残った2機のTIEインターセプターは回避し反撃しようとしたが敵機を振り切れずケツに突かれ両方とも木っ端微塵に破壊されてしまった。

 

「なっ…いったい何処の機体だ?」

 

「確認しました…防衛艦隊のAウィングです」

 

「援護に来たのか…」

 

ブリッジの乗組員達は少し困惑していた。

 

『こちら防衛艦隊のメッサー中隊所属のレヴ・ヴィレジコフ中尉だ、貴艦のハンガーベイに今すぐ着艦したい!』

 

「艦長のブリンダー中佐だ、着艦を許可するが我が艦は撤退中の為減速出来ない」

 

『そんなこと構うものか、自力でなんとかしてみせる!』

 

「わかった、ハンガーの偏向シールドを解除しろ」

 

プリダスタネーションのハンガーベイの偏向シールドの力が弱められた。

 

これでヴィレジコフ中尉のAウィングにもハンガーにもなんの悪影響も無くなった。

 

彼は思いっきりエンジンを吹かしプリダスタネーションのハンガーベイまで近づいた。

 

慎重に機体を操作し更に近づける。

 

タイミングを掴んだ彼はプリダスタネーションに振り払われる事なく無事に着艦した。

 

『助かったブリンダー中佐』

 

「こちらこそ、君は命の恩人だ」

 

「艦長、座標計算完了しました!」

 

「よし、頼むぞ大尉…」

 

大尉は集中力を切らさないよう一言も喋らずじっとモニターを見つめている。

 

ジョーレンも今までないほど緊張していた。

 

異様な空気感がブリッジを包んだ。

 

「今だ!」

 

レバーを引きプリダスタネーションはハイパースペースへ突入した。

 

脱出する事に成功したのだ。

 

 

 

 

 

シャンドリラでも1人の者が気高い決意をしようとしていた。

 

名前はモン・モスマ

 

新共和国誕生の聖母であり先代の元老院議長でもあった。

 

彼女は十分己のやる事を成し遂げ故郷シャンドリラで隠遁の生活を送っていた。

 

今の新共和国なら十分穏和的に平和を生み出せると思って。

 

だが小さな脅威がそれを阻んだ。

 

牙を抜かれ戦う力を失ったかつての帝国が再び銀河に台頭したのだ。

 

彼らは蘇った力で再び銀河に争いを招いた。

 

その厄災はモスマ自身と故郷シャンドリラにも降りかかって来た。

 

国の至る所に忌々しい帝国の旗が掲げられ新共和国の兵士達が殺され都市は焼かれた。

 

遂には彼女が住まうこの館にも帝国の手が伸びて来た。

 

大量のバトル・ドロイドと特殊部隊の兵士を送り込まれすでに屋敷のほとんどは陥落したも同然だった。

 

そしてモスマの籠る部屋の前まで敵は迫っていた。

 

衛兵や使用人達はみんな殺され残すはこの部屋に籠る者達だけだ。

 

彼女は目を閉じ今までの事と新共和国の未来を思った。

 

色々な事があった。

 

思えば彼女の自由への戦いはクローン戦争から始まっていた。

 

2,000人の議員の1人に名を連ね抗議した。

 

帝国誕生後は一度は逮捕されたが屈辱的な忠誠を誓い故ベイル・オーガナ議員と共に助け出された。

 

それでもなお彼女の自由への意志は潰えなかった。

 

ゴーマンの虐殺を非難し元老院を去った。

 

ハンドオフ作戦を成功させ遂には反乱同盟宣言を成し遂げ帝国に対する同盟を組んだ。

 

反乱同盟誕生後も何度も苦難の連続だった。

 

それでも自由と民主主義の為にここまで戦い新共和国を立ち上げた。

 

しかし最後の最後で詰めが甘かった。

 

まさか帝国が再び蘇ってしまうとは。

 

これは帝国を残し軍縮に切り替えてしまった彼女自身のミスだ。

 

それを今深く痛感していた。

 

「本当によろしいのですか?」

 

長い間補佐官を務めてきたアースキン・セマージがモスマに尋ねた。

 

モスマとは違い現実主義のセマージは彼女と度々衝突する事があった。

 

それでも彼はモスマの安全を第一に考え忠実な従者として、信頼できる者としてここまでついて来たのだ。

 

「ええ、ここで囚われ公開処刑されては大勢の民とこれから立ち上がる戦士達が希望を失ってしまうでしょうから」

 

「わかりました…最期まで殿下にお供します…」

 

「本当に今まで苦労をかけっぱなしで申し訳ないわ」

 

「いいのです…それを覚悟で私達はここまで来たのですから」

 

セマージの覚悟はすでに決まっていた。

 

そんな彼らを巻き込んでしまうと考えるとモスマは酷く居た堪れない気持ちになった。

 

だがこれ以外に道はない。

 

モスマの言う通り彼女が囚われ戦争犯罪者として公開処刑されれば多くの新共和国軍や各地の防衛軍の兵士達が絶望するだろう。

 

民主主義の聖母は死んだ、どうせ立ち上がっても同じ運命を辿るだけだと。

 

そうさせない為にも彼女は己で命を絶つ覚悟を決めたのだ。

 

民主主義と新共和国を守る為に。

 

「爆薬のセット完了しました」

 

1人の衛兵が彼女にそう告げた。

 

生き残った他の従者達も彼女の元へ集まってきた。

 

全員がモスマを見て悲しい笑みを浮かべている。

 

最期までお仕えできて光栄だと。

 

「祈りましょう…民主主義が再び勝利する事を、他の仲間達がフォースと共にある事を」

 

「フォースと共にあらん事を」

 

彼女達は目を閉じた。

 

未来に祈りを込めて。

 

 

屋敷の一角は突然謎の爆発を起こした。

 

その原因は分からなかったがその場にいた親衛隊には確かに分かる事があった。

 

モン・モスマが自決したと。

 

 

 

 

ホズニアン・プライムとシャンドリラの陥落はアクバー元帥達マジノ線の部隊だけでなく銀河の至る所で知る事となった。

 

あまりの急展開に政治家や地方の軍人達は動揺し震えた。

 

それは惑星キャッシークでも同様だった。

 

美しい自然に囲まれ毛むくじゃらの巨大で愛嬌あるウーキーが住む惑星もついこないだまでは帝国領だった。

 

奴隷として働かされていた彼らだったが新共和国の手により以前の姿を取り戻したのだ。

 

まだ復興段階であるのでこの地にも新共和国軍の一部が駐留していた。

 

あえて新共和国はこの惑星に専門の基地を作らなかった。

 

美しい自然を汚したくはないしウーキー達の迷惑にもなるだろうと思ったからだ。

 

そのせいもあってか両者の仲はとても良好でまるで家族にようだ。

 

「将軍!将軍!」

 

1人の士官が外のテントでカフを飲んでいる将軍を呼んだ。

 

椅子に座っている男は古めかしい黒いジャケットに白いシャツととても新共和国軍の将軍に見えない格好をしていた。

 

()()()()()()()()()()()がいいところだ。

 

しかし彼は新共和国の将軍であり銀河内戦の英雄でもあった。

 

彼の名前と彼の愛船は帝国でも有名だ。

 

「たった今新共和国軍司令部から入った情報によりますと…ホズニアン・プライムが陥落しました!」

 

隣にいた相棒のウーキーも驚きあたふたしていた。

 

彼も相当意外だったのか振り返りじっと士官の方を見つめていた。

 

「元老院や司令部など全てが壊滅…脱出出来た生存者はほんの僅かだとか…」

 

「いつ頃の話だ?」

 

「27時間前です…ですが実際は妨害など含めて更に前かと…」

 

彼は唸り声を上げた。

 

「少将には伝えたか?」

 

「当然です、我々はこれからどうすれば…」

 

士官は不安な表情を浮かべていた。

 

彼の側により優しく肩を叩いた。

 

「少将に伝えといてくれ、俺はちょっとやる事があるから少将の命令を優先させろとな」

 

「わかりました…」

 

士官は深く頷き駆け足で去って行った。

 

彼は腰に手を当て歩きながら考えを巡らせていた。

 

「チューイ!今すぐあいつに連絡だ、それといつ帝国の連中が来ても良いようにもう一度ファルコンの整備だ」

 

相棒のウーキーは唸り声を上げ彼にわかったと伝えた。

 

彼は空を見上げながら砂浜を歩いた。

 

伝説のミレニアム・ファルコンハン・ソロ、そして相棒チューバッカに休む暇はなかった。

 

 

 

 

「そうか…わかった…」

 

そういうと青年は通信を切った。

 

相棒のドロイドが電子音で迎えてくれた。

 

同じ目線になるように青年は膝を突いた。

 

「また戦乱の時代になってしまったようだ…きっとこれからも」

 

青年は義手の右手でR2ユニットのドロイドを優しく撫でた。

 

撫でるのをやめると青年は立ち上がり愛機とその先に映る美しい空を見つめた。

 

「戻ろうR2、銀河がまた僕たちを必要としている」

 

青年の相棒であるR2-D2は「ああ戻ろう!」と力強く言った。

 

青年は微笑んだ。

 

ふと耳を澄ませると彼の声が聞こえた。

 

目を閉じ微笑みながら返答した。

 

「わかってるよ“()()()”」

 

ジェダイ、ルーク・スカイウォーカーは再び争いばかりの銀河に帰還しようとしていた。

 

時代は再び戦乱へと流れていった。

 

過去の英雄達を、これから生まれ出る英雄達の運命を巻き込んで。

 

第二次銀河内戦の歴史が紡がれようとしていた。

 

 

つづく




もう10話か…
早いな…
時の流れは早いっすねぇ()



そしてAfter

や っ た ぜ


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