第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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-滅んだ国に対し捧げるのは命ではなく、想いだけで十分だ-



マジノ線からの撤退

-旧新共和国領 ライン宙域 第十六艦隊駐留地点-

各戦線に配備された新共和国防衛艦隊は危機的状況に陥っていった。

 

前からは第三軍の追撃艦隊が、後ろからは第一軍と第二軍の追撃艦隊がそれぞれ押し寄せて来ている。

 

なんとか衛星マジノに籠る主力艦隊は無事包囲線を突破し別の場所に移動していた。

 

アクバー元帥は撤退の為に艦隊を集結させているが混乱した現在の新共和国軍ではそう簡単には行かない。

 

指示に従わない者や「このまま祖国の為に殉死した方がマシだ」と訳のわからないセンチメンタリズムを語り出し艦隊を止める者もいた。

 

よくて半数くらいがアクバー元帥の元に集結した。

 

そしてこの第十六艦隊はアクバー元帥の命令を拒否した側だった。

 

「ガーレメン少将、本当によろしいのですか?」

 

「ああ…全艦ハイパースペースへ!」

 

「少将!ハイパースペースより敵艦隊!」

 

命令を出した瞬間ブリッジの外には数十隻上の帝国艦隊が出現した。

 

艦列を並べたインペリアル級の一斉射撃が閃光を作り出し回避も防御も出来なかった友軍艦を破壊した。

 

アクセサリーのように爆発の連鎖を生み出し星とはまた違う瞬きを生み出した。

 

「GR-75輸送船三隻大破!被害拡大中!」

 

「少将!」

 

「構わん…ハイパースペースへ!」

 

ガーレメン少将は部下の言葉を遮り再び命令を出した。

 

艦隊はハイパースペース内に突入し危機を抜け出せたかに思えた。

 

実際は違った。

 

「なっなんだこれは!?」

 

「重力井戸です!ハイパースペースから弾き出される!」

 

引き攣った士官の声と共にハイパースペースから全艦弾き出されその無防備な船体を帝国艦隊の前に曝け出してしまった。

 

一斉に弾き出された第十六艦隊の艦船達は姿勢制御が取れずに僚艦と衝突し始めた。

 

それだけでは済まされない。

 

反撃も防御も出来ない無力な敵を獰猛な帝国艦隊が見逃すはずがない。

 

雨のようなターボレーザーとプロトン魚雷の数々がシールドを打ち破り艦にダメージを与える。

 

なんとか体制を立て直そうと身動きを取るが帝国艦隊の網の中に入ってしまったのではもう遅い。

 

四方から一斉に放火を浴びせかけられ次々と爆沈していった。

 

「反撃だ!敵に好き勝手させるな!」

 

「ダメです!陣形が崩壊して身動きが出来ません!」

 

「そんな…」

 

「砲撃来ます!」

 

反撃など何一つできないまま第十六艦隊は壊滅した。

 

 

 

 

-ケルク宙域 ケルク・マイニング・コロニー 新共和国防衛艦隊合流地点-

撤退した新共和国防衛艦隊は全てこのダンクルク宙域に集まっていた。

 

数百年程前までこのマイニング・コロニーでも盛んに採掘が行われていた。

 

今では採掘が非常に難かしく更には採掘していた資源もほとんど尽きてしまった為已む終えず放棄されてしまった。

 

そんなケルク・マイニング・コロニーには既に数百隻以上の新共和国艦が集結していた。

 

見渡すと損傷艦がかなり多く撤退戦の凄まじさが表されていた。

 

『アクバー元帥、ご無事で何よりです』

 

「メイディン将軍こそ無事で何よりだ、尤も他の部隊はそうではないがな…」

 

『はい…既に第八、第十一、第十四、第十六、第十七、第十九、第二十三、第二十四、第二十五、第二十六は既に壊滅したと』

 

無事撤退に成功したメイディン将軍の報告は深刻なものだった。

 

アクバー元帥やライカン将軍、メイディン将軍の艦隊も含めて新共和国軍は大きく27つの艦隊に分けられていた。

 

元帥の主力艦隊を除く残り26の一個艦隊の数は大体五十数隻。

 

報告だけで言えばそのうちの十個艦隊分が壊滅してしまった事になる。

 

「ヴェラック艦長、情報が途絶えている艦隊はどうなっている?」

 

アクバー元帥は同じくモン・カラマリで旗艦ホームワンの艦長であるヴェラック艦長に尋ねた。

 

彼は隣に佇むハシュン中佐からタブレットを受け取り読み始めた。

 

「壊滅した主力艦隊を除いて未だ連絡がつかないのは第四艦隊と第七艦隊、第十、第十三艦隊です」

 

「集結地点にはどのくらい集まっている?」

 

「第三、第五、第十五、第十八、第二十、第二十一、第二十二、第二十七の八個艦隊です」

 

『ライカン将軍の第二艦隊などは?』

 

「彼らには別働艦隊を率いてもらう事となった、第六、第九、第十二艦隊はライカン将軍に続いている」

 

最悪の事態と撤退出来る可能性を増やすべく元々あった別働艦隊をヤヴィン方面へ撤退させるようアクバー元帥は指示を出した。

 

今の所帝国艦隊はアクバー元帥の方ばかりに目がいっておりライカン将軍の艦隊には気づいていない。

 

うまくいけば無傷のまま五個艦隊以上を無傷で逃す事が出来るのだ。

 

『帝国艦隊は敗残勢力を掃討しつつ真っ直ぐ我々を目指しています』

 

通信の向こうからオランダー・ブリット中佐報告した。

 

メイディン将軍の第三艦隊は比較的無傷に近い状態だったが他の艦隊はそうではない。

 

今の新共和国防衛艦隊は士気の面でも戦力の面でも現状の帝国艦隊と戦うなど到底無理な状態だった。

 

それに敵には超兵器を搭載したインペリアル級がいる。

 

このまま追撃されては必ずあの艦が出現し再び大打撃を被るだろう。

 

最悪全滅するかもしれない。

 

『それに首都を攻撃した艦隊が戻ってくるかも』

 

「そうなれば我々の艦隊は前後から挟撃され全滅してしまいます!」

 

ハシュン中佐は声を荒げた。

 

アクバー元帥はそんな彼を宥めた。

 

彼の言い分も分かるし実際同じ気持ちだ。

 

そこで彼は提案した。

 

「…一つだけ策がある」

 

悲観的な状況の中アクバー元帥のその提案に誰もが目と耳を傾けた。

 

名将ギアル・アクバーは何度も新共和国を、反乱同盟を危機から救ってきた人物だ。

 

彼のためなら命は惜しくないという将兵は何万人もいる。

 

そんな元帥の策はこの状況で何か突破口になるかもしれないのだ。

 

いや、必ず突破口になるだろう。

 

「全艦隊をコロニーの裏側へ回してくれ、そしていつでも撤退できる準備を」

 

『何をするおつもりですか?』

 

「敵が超兵器を使用するなら我々はそれを利用するまでだ、このコロニーは“コアクシウム”を採取していたんだったな?」

 

 

 

「全艦俺に続け!!」

 

分艦隊旗艦イルージョニストのブリッジで男は叫んだ。

 

目の前には帝国艦隊が砲艦を並べて迫ってくる。

 

男のイルージョニストはスターホーク級なので多少の無茶には耐えられるだろうが他の艦はそうはいかない。

 

無茶に突っ込めば命を散らしてしまう。

 

既に本来の指揮官はそれと同じ事をやって戦死してしまったが。

 

元々五十数隻いた男の所属する艦隊は指揮官が元々頑固で柔軟性とは縁のない人物だった。

 

更には首都陥落を聞き絶望したのか古臭いセンチメンタリズムに陶酔し自殺行為とほぼ同義の戦いを繰り返し戦死してしまった。

 

1人で死ぬ分には勝手にしろと男は思う。

 

だがそれで部下を巻き込むのは許せぬ行為だと男はより一層強く思った。

 

だからこそ生き残った艦隊や周辺の機動艦隊を纏め全員を逃がそうとしていた。

 

多少無茶な方法を使って。

 

「准将!やはりこの戦術は無理だ!」

 

「無理だぁ?パーネメン中佐、今お前無理だと言ったな?それは敵艦隊の方だ」

 

「何を言い出すんだ准将!」

 

「敵艦隊が我々を阻止する事は不可能という事だ!」

 

幕僚のパーネメン中佐は頭を抱えた。

 

帝国艦隊のターボ〜レーザーが艦の偏向シールドに直撃し振動となって襲いくる。

 

「さて…敵はどこまで奇術に乗ってくれるかな」

 

「敵艦隊がファイター隊を展開して来ます!」

 

「掛かった」

 

男はニヤリと笑った。

 

今まで全速力で突き進んでいた新共和国艦隊は徐々に後退し始めた。

 

一見TIE部隊との戦闘に望む為かと思ったがそうではない。

 

准将の策略の一つだった。

 

「全艦今まで溜め込んでた分ぶっ放せ!フリゲートとコルベットは対空用意だ」

 

各艦が最大出力の砲撃を一斉に打ち出した。

 

特にフルパワーのスターホーク級の一撃は強烈でシールドを展開しているのにインペリアル級にかなりのダメージを与えた。

 

プロトン魚雷や振盪ミサイルも同時に放たれとても偏向シールドだけでは対処しきれない。

 

帝国艦隊は次々と被害を増していた。

 

だが帝国艦隊はこれといった反撃をして来ない。

 

して来ないというより出来ないのだ。

 

今ここで砲撃すれば味方のTIE部隊に直撃し被害を被る事になる。

 

敵艦隊攻撃の剣が逆に敵の盾とされてしまったのだ。

 

帝国艦隊はそうしない為に包囲陣形を作り出し敵を囲もうとした。

 

しかしこれも男の予測の範疇だ。

 

「包囲しての集中攻撃…得意の楔形集中砲撃をすれば勝てたのにな」

 

腕を組み敢えて敵側の目線に立って考えた。

 

が同情などは一切なかった。

 

「突撃陣形のまま敵の包囲網を突破する!」

 

スターホーク級はMC75装甲クルーザーが装甲の脆いフリゲートやコルベットを守るように取り囲む。

 

帝国艦隊は包囲陣形を取った為艦と艦の幅が広まっている。

 

これほどまでに薄くなった艦列を突破するのは雑作もないことだ。

 

懐に入られたインペリアル級ほど弱いものはないと男は思っていた。

 

下船部のソーラー・イオン化反応炉に放火を叩き込む。

 

数機の爆撃機がブリッジの偏向シールドを2つとも破壊し防御力を薄める。

 

叩き込まれた砲火の数々は反応炉を完全に破壊しインペリアル級を一気に大破まで押し込んだ。

 

僚艦のアークワイテンズ級やレイダー級も砲火に耐えきれず轟沈した。

 

一気に数隻の艦が行動不能になった為鮮烈には大きな穴が空いた。

 

この好機を逃す訳なく最大速度で新共和国艦隊は駆けた。

 

「全艦ハイパースペースへ!」

 

重力井戸搭載艦を持たないこの帝国艦隊はハイパースペースに逃げ込んだ新共和国艦隊をこれ以上追う事は出来なかった。

 

つまり彼らは無事脱出する事に成功したのだ。

 

ブリッジでは大勢の乗組員達が生き延びた事に安堵し喜びの微笑みを浮かべている。

 

「一時はどうなるかと…」

 

「なぁにどうにかさせない為に立派なアカデミーに通った将帥がいるんだろうが」

 

男は何故か皮肉を込めて自重気味に笑った。

 

部下を扱いその部下をなるべく生かし戦果を挙げる。

 

それが出来てこそようやく一人前の指揮官だ。

 

優劣はそこから付いて行く。

 

まだスタートラインに立っただけだと男は考えていた。

 

「少しは兄貴達に近づけたかな…」

 

「本当にいつもヒヤヒヤさせる…“()()()()()”准将」

 

ディクス・ストラインはやれやれと言った表情でブリッジの外を見つめていた。

 

 

 

獲物を目の前にして帝国艦隊が引き下がる事など有り得ない。

 

徹底的に追い詰め完膚なきまでに叩きのめす。

 

銀河内戦に敗北し蘇った彼らの同じ事だ。

 

むしろその苛烈さは屈辱を晴らそうとさらに大きくなっていた。

 

「敵艦隊はスターファイター隊を展開し我が艦隊を撹乱しようとしています」

 

「無意味な事だな、TIEディフェンダー、TIEパニッシャー隊投入!奴らに絶望を見せてやる」

 

ローリング大将軍は命令を出した。

 

彼は大将軍ではあるが地上軍というよりスターファイター部隊が担当だった。

 

以前はスターファイターの実力を昇進の為にしか使わなかったローリング大将軍だがその考えは内戦中変わった。

 

彼は理解したのだ。

 

戦況を大きく覆す可能性があるのは艦隊ではない。

 

スターファイターにあるのだと。

 

例を挙げるなら二度に亘るデス・スター戦などがそうだ。

 

帝国は変化したのだ。

 

従来の力を維持しつつより柔軟な方向へと。

 

その先駆けたるスターファイター隊が一斉に出撃した。

 

TIEディフェンダーにTIEパニッシャー。

 

後続に続く機体のほとんどはTIEインターセプターやバージョンアップしたTIEボマーなど新型ばかりだ。

 

物量と精鋭の2つを兼ね備えた帝国軍スターファイター隊に恐れるものは何もない。

 

『ジョナス大佐、敵スターファイター中隊が真っ直ぐ艦隊を目指しています』

 

「ミアンダ少佐撃撃を頼む、全機しっかり編隊を組んでおけ」

 

『了解ジョナス大佐、サイス中隊全機続け』

 

ミアンダ少佐とサイス中隊のTIEアドバンストv1とTIEインターセプターが先行する。

 

少佐のTIEアドバンストv1は尋問官や脱走したパイロット、リンドン・ジェイヴスが使用していたモデルとは少し違う。

 

武装が追加され各種の性能が倍以上アップしている。

 

ミアンダ少佐はさいす中隊を振り切ろうとする中央のYウィングに狙いを定めた。

 

「敵は爆撃機の中隊だ、機動性を活かして一気に畳み掛ける」

 

レーザー砲が放たれ回避が間に合わなかったYウィングが1機撃墜された。

 

爆散し破片となったYウィングの残骸の中を切り裂くようにミアンダ少佐のTIEアドバンストv1が駆けた。

 

回避の遅れた1機を撃墜し流れるままもう1機のYウィングの背後を取った。

 

強力な一撃が叩き込まれ一瞬のうちに3機のYウィングが犠牲となった。

 

他のサイス中隊機もTIEインターセプターの機動力を活かし鈍足で旧式のYウィング部隊を翻弄した。

 

『敵艦隊は完全に戦列が崩壊し始めています』

 

「各個撃破に移る、ハイスマン大尉、バルトホルン大尉、露払いは頼んだぞ頼んだぞ」

 

2機のTIEディフェンダーが先行し配下の中隊その後に続いた。

 

アイルフレート・ハイスマンゲイルハルト・バルトホルンは内戦後の帝国軍において右に出る者はいない程のエースパイロットなっていた。

 

互いに数百機以上の敵機を撃墜し現在の帝国ではパイロットを目指す若者の憧れとなっていた。

 

そんな2人はTIEディフェンダーよりも高性能のTIEディフェンダー・エリートを優先的に配備されその期待に恥じぬ戦いぶりを見せていた。

 

今も機体性能を活かし迫り来るXウィングやAウィングの編隊を狩り尽くす。

 

守るはずの味方艦隊を差し置いて新共和国軍機は逃げ出し始めた。

 

無論そんな臆病者達が戦場で生き残れるはずもなく次々とハイスマンとバルトホルンのスコアに加算されていった。

 

戦場にはそんな犠牲者達の亡骸の代わりに機体の破片が無造作に散らばっていた。

 

「道が開けた、全機仕事の時間だ!」

 

TIEパニッシャーやTIEボマーが突撃した。

 

この恐ろしいTIEシリーズの爆撃機は孤立した敵艦に牙を剥く。

 

魚雷や爆弾を投下し次々と破壊していった。

 

そのうちの1機は他の機体とは比べ物にならないほどの戦果を挙げていた。

 

ハンス・ウルリッヒ・ルーデル少佐のTIEパニッシャーだ。

 

彼の謎は帝国軍の中で最も深い。

 

まずどこで生まれたか、いつ頃帝国軍に入隊したかまるで不明だ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

事実だけ述べるなら銀河帝国最強の爆撃王と言ったところだろう。

 

そんな彼はとんでもない逸話があった。

 

ある者は相棒と共にTIEストライカーに乗り込み迫り来る地上部隊を全て仕留めたと言う。

 

またある者はTIEボマーに乗り込み新共和国の機動艦隊をたった1機で殲滅したとも言われている。

 

多分これらは全部真実なのであろうが本人はいっつもぼやかしてばかりだから不明な点が多い。

 

そしてローリング大将軍は彼のことをいつもこう評価していた。

 

「奴はたった1人で一個兵団どころか一個艦隊以上の価値と戦果を挙げられる」

 

恐ろしい評価だが誰しもが納得し否定しようとしなかった。

 

先のマジノ線の戦いでは彼と僚機の3機でMC80一隻を含めた機動艦隊を殲滅するほどの戦果を挙げた。

 

既にコルベット艦を二隻ほど大破させ余力のある状態ですれ違い様にXウィングを1機撃墜する。

 

そして彼はある一隻の敵艦に目を付けた。

 

一応後から分かった事なのだがそれは旗艦のスターホーク級だった。

 

いくらTIEパニッシャーといえどスターホーク級にダメージを与えるのは難しいだろう。

 

だがそんな道理すら打ち破るのが彼だ。

 

「敵艦に急降下爆撃を仕掛ける」

 

『不可能です!いくらなんでもスターホーク級の装甲は打ち破れません!』

 

「よく見ろ敵は傷ついている、損傷箇所に魚雷と爆弾を撃ち込みまくれば少なくとも行動不能には出来る」

 

『ですが…』

 

「やらねばらなんのだ!」

 

『中佐!』

 

2機のTIEボマーを置いてたった1機で爆撃を敢行した。

 

護衛機や護衛艦の姿はなくルーデルの言う通りこのスターホーク級は少し損傷している。

 

しかし対空能力は健在だ。

 

レーザー砲を掃射しTIEパニッシャーを近づけんとする。

 

「それにしてもうるさい艦だな」

 

対空砲が彼の機体を狙う中ルーデル少佐は危機感などまるでない様子でぼそっと呟いた。

 

慌てる事なくターゲットをロックする。

 

プロトン魚雷やプロトン爆弾を装填し爆撃の時をまった。

 

最大加速度でギリギリの付近まで接近する。

 

慌てた部下の1人がルーデル少佐に通信を入れる。

 

『少佐!もう十分接近しています!爆撃を少佐!』

 

されどルーデルは一向に投下しようとしない。

 

部下はさらに慌てた。

 

『少佐の積み込まれている武装ではそれ以上行くと爆発に巻き込まれてしまいます!』

 

「そんな事分かっている、だがこうでもしないとこのデカブツは倒せん」

 

『ですが少佐の機体がやられてしまいます!』

 

「この機体はシールドも付いてるし頑丈だ、ストライカーのようなヤワな機体ではない!」

 

そう言うと少佐はさらに急接近した。

 

ついに彼の機体は限界点を超えた。

 

それでもなお彼は爆撃しようとしない。

 

しかもブレーキを踏む素振りは一切見せないのだ。

 

ようやくルーデル少佐が操縦桿のスイッチを押したのはスターホーク級の偏向シールド内到達した頃だった。

 

機体に搭載されている全ての魚雷と爆弾を解き放ちこれでもかと言うほどスターホーク級の胴体に食わせてやった。

 

損傷箇所に突き刺さった魚雷は即座に爆発を起こし何十もの爆弾はデュラスチールの装甲すら溶かして貫いた。

 

しかし大変な事も同時に起こった。

 

なんとルーデル少佐の機体がすっぽり爆発の中に埋もれてしまったのだ。

 

『少佐!!少佐!!』

 

部下が必死に叫ぶが通信は帰ってこない。

 

そんなまさかと思った矢先爆撃の魔王は蘇った。

 

無傷な状態のまま爆煙の中を切り裂きその機体と共に姿を表したのだ。

 

「前が見えなくて大変だったぞ」

 

『少佐大変です!戦艦が炎上しております!』

 

ルーデルが機体を反転させ振り返るとそこには驚きの光景が広がっていた。

 

あのスターホーク級が真っ二つに切断され炎上している。

 

艦のあちこちから炎と煙が上がり小爆発を繰り返していた。

 

ルーデルはたった1人であのスターホーク級を大破まで至らしめたのだ。

 

新共和国の期待を背負ったバトルシップはゆっくりと沈んでいった。

 

それはリーパーのブリッジでも捉えていた。

 

「敵旗艦轟沈を確認!」

 

「おぉ…!流石ルーデル少佐だ…」

 

ブリッジの将校達から歓声が響いた。

 

「敵艦隊の損耗率およそ八割です」

 

「壊滅…だな」

 

「残存艦艇を掃討しつつ艦隊を再編成させろ」

 

オイカン元帥は冷静に命令を出した。

 

帝国軍は今も各所で勝利を収めており新共和国軍の全体の掃討率は4〜5割と言った所だ。

 

アクバー艦隊も帝国軍の必要以上の追撃でだいぶ戦力をすり減らしている。

 

他の艦隊だって無傷なものは殆どない。

 

特にアキシャル・シージ・レーザーキャノンの効力は絶大だった。

 

長距離から敵艦隊を一方的に攻撃し蹂躙することが可能だった。

 

数が少ないとは言えこれだけの被害の少なさであれだけの敵艦隊を殲滅出来たのは間違いなくあの砲のおかげだ。

 

「オイカン元帥、偵察隊より報告です」

 

下士官がオイカン元帥に報告しモニターに情報を移した。

 

「敵の残存艦隊はケルク宙域の旧採掘コロニーに集結しています」

 

「武装はないが補給や再編成を行うには都合の良い場所だろう、まだ資源が残ってるかもしれないしな」

 

「ホームワンも確認された為恐らく敵艦隊のほとんどが集結しているでしょう」

 

「なら次の目的地はそこだな、ケルク宙域の敵を殲滅する」

 

「了解、全艦艇は残存兵力を掃討しつつハイパースペースジャンプの用意を」

 

ブリッジが一様に慌ただしくなり始めた。

 

新共和国崩壊の最後の戦いにして“()()()()()()()()()()()”が今始まろうとしていた。

 

 

 

 

迫り来るリーパーと帝国艦隊を発見したのは艦隊の補給と撤退準備が完了した頃だった。

 

艦隊はコロニーの裏側に集結しケルク・マイニング・コロニーは簡易的な要塞というよりも盾のように扱われていた。

 

大小様々な小惑星がかなり均等に散りばめられインペリアル級では到底突破出来ない。

 

かと言ってグラディエイター級やアークワイテンズ級などを突撃されれば待ち構えられた敵の集中砲火を受け全滅してしまう。

 

抜かりない防衛網がコロニーの周りに張り巡らされていた。

 

これはアクバー元帥が帝国艦隊を足止めする為に用意したものだった。

 

帝国艦隊がたった一つのある戦法を行わせる為に。

 

まずは小惑星帯を退けようとインペリアル級が一斉に八連ターボレーザー砲を放った。

 

爆発を起こし小惑星の幾つかは砕けたが返ってデブリを増やす結果になってしまった。

 

それに目標のコロニーにはなんのダメージもなさそうだ。

 

新共和国艦隊はなんの攻撃も受けずに撤退を開始しようとしていた。

 

「今のうちに第一陣はハイパースペースへ!重力井戸の範囲外だ」

 

数十隻の艦船が一斉にハイパースペースへと突入した。

 

帝国のインターディクター級の重力井戸ではまだ新共和国艦隊の全てを範囲内に収めることは叶わなかった。

 

おかげでまず第一陣の艦隊が無事に脱出した。

 

「元帥!敵艦隊に例の砲撃艦を発見しました!」

 

「やはり来たか…全艦退却用意だ!発進の用意を急げ!」

 

ここまでは全て元帥の予測通りだ。

 

帝国艦隊は道を切り開く為コロニーごと破壊してしまおうと考えた。

 

普通の兵器ではそんな事は無理だがあれなら出来る。

 

数を束ねれば惑星すら破壊出来るアキシャル・シージ・レーザーキャノンなら朝飯前だ。

 

むしろこの兵器ならコロニーどころか艦隊すらそのまま吹き飛ばせる。

 

アキシャル砲を装備したインペリアルⅠ級が艦隊の前に姿を表した。

 

「敵砲艦、砲撃モードに移行しました!!」

 

「凡そ50秒後に照射開始します!」

 

「まだだ、まだ引き付けるのだ!」

 

下手に移動して敵に真意を悟られてはきっと別の手を試してくるだろう。

 

そうなっては無事に艦隊を撤退させる事が叶わなくなる。

 

全員を生かす為に危険を冒す必要があるのだ。

 

「残り30秒です!」

 

「発信しましょう!もう十分です!」

 

「いやもう少しだ…」

 

「元帥!」

 

危機感を覚えたヴェラック艦長がアクバー元帥に進言する。

 

だが元帥は鋭い眼光のまま微動だにしなかった。

 

「残り20秒です!」

 

敵のインペリアルⅠ級はいつ撃ってきてもおかしくない状態だった。

 

されどアクバー元帥と新共和国艦隊はまだ動かない。

 

その忍耐力が功を奏し帝国艦隊はまだ真実に気付いていなかった。

 

「残り10秒!!」

 

「全艦最大船速で発進せよ!!」

 

ついにアクバー元帥が命令を出した。

 

コンマ何秒も掛からずに新共和国艦隊はエンジンの光を灯し目にも留まらぬ速さで進んだ。

 

10秒後、新共和国の予測はブレる事なくアキシャル・シージ・レーザーキャノンは発射された。

 

数十隻のインペリアルⅠ級がコロニーの一点に集中して照射する。

 

ターボレーザーすら効かないマイニング・コロニーを一瞬のうちに溶かし始めた。

 

当然それだけの衝撃がコロニーに与えられたという事になる。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()”。

 

アクバー元帥の言った通りこのケルク・マイニング・コロニーでは艦船の燃料となるコアクシウムを掘り出していた。

 

未精製なコアクシウムは僅かな刺激や温度変化だけでも次元の壁を引き裂くほどの爆発を起こす事がある。

 

このコロニーのコアクシウムはほとんど採掘されてしまったとはいえ完全に無くなった訳ではない。

 

まだ数隻分の艦船の燃料を補う程のコアクシウムは残されていた。

 

そんなものにこれだけの衝撃を与えたらどうなることか理学知識がなくても分かるだろう。

 

「コロニーに異常発生!埋蔵コアクシウムが間も無く爆発します!」

 

「帝国艦隊戦線より後退中!距離が離れて行きます!」

 

「全艦ハイパースペースへ!」

 

帝国艦隊との距離は更に離れた為完全に重力井戸の範囲外に脱した。

 

新共和国艦隊はこれで完全に帝国の手から抜け出したのだ。

 

全艦艇がハイパースペースに突入し急いで宙域から逃げ出すことに成功した。

 

直後限界を迎えたコアクシウムは大爆発を起こし周りの全てを飲み込んだ。

 

 

 

「…損害確認」

 

オイカン元帥は頭を押さえながら部下に尋ねた。

 

コロニーの異常に気付いた帝国艦隊は即座に攻撃を中止し全艦がなんとか爆発の範囲外まで避難した。

 

それでも超強力の余波が艦隊を襲い無傷の艦は少なかった。

 

「前衛艦隊の6割が小破及びシステムの異常です、それとアキシャル砲のシステムにも異常が発生したと」

 

「せっかくの兵器が…しばらくはクワット行きだな」

 

ローリング大将軍は残念そうに呟いた。

 

しかし彼はすぐに思考を切り替えた。

 

敵を逃したというのにブリッジの将校達は同様の色一つ見せていない。

 

それどころか至って冷静だ。

 

「追跡装置は正常に機能しているな?」

 

「はい、“()()()()()()()()()”はとても役に立っております」

 

「それは亡きターキン総督も喜ぶだろう」

 

追跡装置。

 

かつてターキン・イニシアチヴはとある追跡装置の研究を進めていた。

 

0BBY頃には関連する情報ファイルがスカリフでも確認されている。

 

まだ試験段階でその性能はお世辞にも高いとは言えない。

 

なにせ本来の時空では登場するのは3()0()()()()()()()()だ。

 

が今回のような場合においては画期的でとても有効だった。

 

その名は()()()()()()()()()()()()

 

ハイパースペースを航行するスターシップの特定が出来るアクティブ追跡装置だ。

 

精度は低く100%の性能を引き出すには途轍もない苦労が必要だったが今回はそれらのデメリットよりも逃げた敵を追えるメリットの方が大きかった。

 

「敵はおそらくこの星系にジャンプするつもりです」

 

「直ちに追撃だ、じっくりと敵を殲滅してやる」

 

「ローリング大将軍」

 

大将軍が悪い笑みを浮かべていると彼のそばに控えていたアスタロフ・べリューゲン親衛隊中将が彼の名前を呼んだ。

 

上機嫌だったローリング大将軍は親衛隊の彼に名前を呼ばれた途端少しムッとした。

 

「なんだ」

 

「総統府よりホズニアン・プライムへ集結命令です」

 

「後にしろ、眼前に敵を逃す訳にはいかん」

 

「ですがこれは代理総統直々の命令です」

 

その瞬間ローリング大将軍の表情をは変わった。

 

総統府の命令といえどどうせくだらぬ小役人が保身に走って命令したのだろうと思っていたからだ。

 

それに親衛隊の奴の言う事など彼は鼻から聞く気がない。

 

だが総統の名前を持ち出されれば別だ。

 

「…いくら総統の命令といえど敵を逃す訳にはいかん、直ちに許可を取れ」

 

『それはならん大将軍』

 

突如通信が開き総統府長官のハインレーヒ・ルイトベルンの姿がモニターに映った。

 

オイカン元帥含め諸将が敬礼する。

 

『これは総統閣下のご命令だ、それはつまり亡き皇帝陛下の命令も同然だ』

 

「では目の前の敵を放っておけと言うのか!また奴らはいつ勢力を拡大してもおかしくはないぞ!」

 

ローリング大将軍は言葉を振るった。

 

彼の意見は尤もだ。

 

新共和国は放っておけばきっと力を蓄えるあろう。

 

そうすれば再び戦乱が訪れてしまう。

 

敵は倒せる時に倒しておく必要がある。

 

それでもハインレーヒ長官は首を振った。

 

『その点については既に手を打ってある、とくかく君達の艦隊は今すぐホズニアン・プライムに向かうんだ』

 

「だがっ…!」

 

ローリング大将軍は尚も食い下がった。

 

それはハインレーヒ長官も同様で彼は冷徹な眼差しを大将軍に向けていた。

 

『これは絶対だ、従わななければそれ相応の処罰が下る…分かったな?』

 

その眼には「これ以上はないぞ」という強いメッセージが込められていた。

 

「…了解…全艦ハイパースペースへ突入だ急げ!!」

 

通信が切れ帝国艦隊はホズニアン・プライムへの座標計算を始めた。

 

アクバー元帥達の知られざる所で新共和国艦隊は存亡の危機に立たされそして救われた。

 

だが誰も理解していなかった。

 

新共和国の崩壊など始まりに過ぎなかったのだ。

 

戦争の時代は始まったばかりなのだ。

 

 

つづく




一旦ここで区切りかな?
それでもまだまだ続くんでご安心を(安心できるか)
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