-惑星カリダ カリダ・アカデミー-
カリダの帝国アカデミーも帝国の勝利により復活し以前のような活気を取り戻していた。
これこそこの惑星にとってはあるべき姿だ。
帝国がもたらしたのは何も害ばかりではない。
曲がりなりにも銀河規模の平和を一時でも生み出し様々な惑星に繁栄と利益をもたらした。
帝国が悪だとしても銀河系の人々から見た場合は少し変わるはずだ。
むしろ今敗者であり悪なのは新共和国の方だ。
カリダ・アカデミーに三個中隊、432名の外人部隊スワンプ・トルーパーが外の訓練場に整列していた。
普通のストームトルーパーの整列と見比べても彼らの列はあまり綺麗ではない。
しかもまだ制服や装備を与えられておらず各々全く別の服装であった。
余計に規則性が薄れてしまう。
そんな彼らに副連隊長であるアデルハイン中佐が全員に様々な紹介などをしていた。
「諸君らは第六親衛連隊の附属中隊として帝国の為に戦ってもらう。詳しい事は連隊長シュタンデリス大佐がこれから説明する」
アデルハイン中佐は敬礼してジークハルトに席を譲った。
指揮官の登場で外人部隊の隊員達から完成や拍手が湧き上がった。
調子に乗って口笛を吹く者もいた。
そんな中でもジークハルトは実直な表情と敬礼のまま全員の前に立った。
拍手喝采が鳴り止むとイークハルトは咳払いし冷徹な目を彼らに向けた。
「拍手は嬉しいが兵士である以上上官が前に立つ時は敬礼で迎えろ。これは帝国軍兵士としての絶対条件だ」
一瞬で気まずい空気がその場に流れた。
ジークハルトは気にせず話を続ける。
「諸君らの腕前は重々承知している、戦いの経験は個々の能力の優劣を上回る。だが帝国軍の一員として戦うには規律が足りない」
褒め言葉の次に彼はあえて厳し言葉を送った。
本来は1人1人に言いたいところだがそんな余裕も時間もなかった。
「まずこれだけは守ってほしい。仮にどんな状況に陥ろうと何が起ころうと“上官の命令は絶対”だ。上官に全てを預けろ、いいな?」
彼らは戸惑いながらもしっかりと敬礼をした。
全員が敬礼するのを見届けるとジークハルトは頷いた。
「では後の事は頼んだぞ大尉、キャプテン」
「はっ!ではまず装備と制服を支給する!第一分隊前へ」
別の将校に後の事を任せジークハルトはアデルハイン中佐を手招きして少し遠くのテントまで歩いた。
他の外人部隊のスワンプ・トルーパー達も続々と装備を受け取りソワソワしている。
2人は近くの椅子に腰掛けため息をついた。
「まさかあそこまで酷いとはな…規律どころか練度も怪しくなってきた」
「まだ時間はあるしこれから鍛えていけば…それに多少優秀なら規律や指揮系統が悪くても大丈夫なんじゃないか?」
アデルハイン中佐の考えにジークハルトは静かに首を振った。
そこで彼はちょっとした昔の話を彼にした。
「昔…ヤヴィンⅣ攻撃部隊に所属になった時、1人の兵士が錯乱したのか命令を無視して1人で拠点から単独突撃に出ちまった」
ジークハルトは苦々しい思いを押し殺して彼に話した。
「そしたら敵の特殊部隊に見つかりそいつは当然殺されしかも来た位置を発見され拠点も奇襲された」
「そんな事が…」
長い戦友であっても互いに別々の部隊に配属になることが多々あった為アデルハイン中佐も知らない事があった。
「強さはどうでもいい、命令違反を犯すようなトルーパーが1人いるだけで部隊が全滅の危機晒されるという事だ」
「確かにな…やはり精神面を主に鍛えるか?」
「ああ…少なくとも並のスワンプ・トルーパーや宇宙軍トルーパー以上の忠誠心が必要だ。そうでなければ外人部隊なんて3年で瓦解する」
「厳しい評価だな」
「あんな民兵の寄せ集めみたいの見せられたそうなる。他の兵士達に示しが付かん」
アデルハイン中佐は相槌を入れ2人とも立ち上がった。
そろそろ部隊員達がアーマーに着替え終わり装備の扱いに困っている頃だろう。
2人は他の部隊も見渡しながら状況をよく観察した。
少なくともアーマーや武器を持たせれば少しは形になっている。
既に射撃訓練に移っている部隊すらあった。
第六連隊に配属される部隊も全員がアーマーとヘルメットを着込み右手にブラスター・ライフルを持っていた。
「早速だベール軍曹、君の分隊で目の前のEウェブを射撃状態に組み上げてほしい」
「俺…いや小官の分隊がでありますか?」
「そうだ軍曹、まず何をするのか見せてくれ」
「はぁ…全員Eウェブを組み立てる、2人は隊を護衛せよ」
「はい」
駆け足で現れたスワンプ・トルーパー達がEウェブの周りに集まった。
2人はブラスター・ライフルを構え周囲を警戒した。
その間に残りの分隊員がEウェブの組み立てを始めた。
少しぎこちない動きはあったが新兵にしては早い方だった。
「まず三脚を立て…」
Eウェブの三脚が立てられ次に2人のスワンプ・トルーパーがEウェブの本体を持ち上げた。
「Eウェブ本体を固定する、固定がしっかりしていなければ射撃の反動で固定が外れてしまう」
三脚に本体を乗っけてしっかりと金具を固定した。
固定しすぎてないか砲手がEウェブを少し回して確認する。
「そして冷却装置を合体しさせる、これで完成だ。射撃時には冷却を管理する兵士1名と砲手が1名必要になる」
1人のスワンプ・トルーパー冷却装置の近くに腰を下ろした。
これが本当の戦場ならもう援護射撃を開始しているはずだ。
ここまでかかった時間は1分半くらいだった。
「見事だ軍曹、だが実戦ではこれよりも早く組みたて攻撃に移る必要がある。君たちには3週間で並の兵士以上の存在になってもらう必要がある」
ベール軍曹や彼の分隊員達が隊列に戻る。
既に目元はゴーグルで覆われマスクやヘルメットを装備している為表情は見えないがそれでも彼は連隊長として1人1人の眼を見て話した。
「出来なければお前達は皆使い捨てのドロイドのように前線で死ぬ事となる。それは君たちも私も望まないはずだ」
スワンプ・トルーパー達は頷いた。
「技能を付け帝国の為に勝利のその先まで戦い続けよう!」
外人部隊の隊員達から歓声が湧き上がった。
ジークハルトは少し苦笑いを浮かべた。
本来ならこんな言葉かける必要もないのだろう。
どう言いくるめようと使い捨ての兵士と言われてしまえばそれまでだ。
しかしジークハルトはそう思わないようにした。
非情に成れない彼の悲しい性がここに現れていた。
-帝国領 アウター・リム・テリトリー セスウェナ宙域 惑星エリアドゥ-
大セスウェナに位置するこの惑星は辺境に位置しているにも関わらず下手なコア・ワールド惑星よりも発展していた。
ロマイト産業による恩恵はこのエリアドゥを「アウター・リム界のコア・ワールド」と呼ばれるほどに栄えていた。
それは新共和国時代でも同じ事だった。
ロマイトを産出し続けるエリアドゥをいくら“
多少衰退したもののほぼ依然と代わりない発展と栄華を極めていた。
無論それだけで満足しているわけではないが。
またエリアドゥとある冷酷な支配者を産んだ事で有名だった。
帝国の初代グランドモフでありこの惑星を統べる一族が産んだまごう事なき悪魔の天才。
その名は“ウィルハフ・ターキン”。
様々な目線や感じ方で未だに銀河中の人々に鮮明に記憶されている。
彼と彼の一族はこのエリアドゥの支配者であり守護者でもあった。
エリアドゥの固有種には獰猛なネコ科や肉食性甲殻類の生物が存在し更にはヴィアモックと呼ばれる獰猛な霊長類すら生息していた。
端的に言って人が安全に暮らせる惑星ではない。
おかげで惑星への入植はだいぶ遅かった。
しかし人の開拓精神は抑えられない。
やがて旧共和国初期にはエリアドゥに入植が開始された。
そこで活躍したのがウィルハフ・ターキンの先祖達だ。
彼らはエリアドゥの黎明期に獰猛な生物やアウター・リムの悪党から開拓者を守り続けた。
彼は護衛や警察的な役割を果たす事で財をなしたのだ。
やがて人々はそんな彼らを求め、彼らの役割はエリアドゥが属す宙域全体へ広がっていき最後にはグランドモフとして銀河系へと広がった。
そしてその末裔である現在のエリアドゥ総督(知事と称される事もある)“ヘルムート・ターキン”がその役を引き継いでいた。
まだ彼は18歳にも関わらずエリアドゥの総督の他にも辺境保安軍の最高司令官などを任されている。
数年前は自分で部隊を指揮し大セスウェナを守っていた。
民衆からも軍からも政治家からも支持を集めた彼は“
当人がそれを望んでいたわけではないにしても民衆達の熱狂ぶりは凄まじいものだった。
実際彼の手腕がなければウィルハフ・ターキンという戦犯を生み出しその一族が統治者である惑星がここまで衰退せずに栄え続けるなど無理な話だ。
その若き天才が大勢の辺境保安軍将兵に囲まれとある客人を待っていた。
客人を乗せたラムダ級T-4aシャトルが2機のTIEインターセプターに護衛されヘルムートの前に着陸する。
その風が彼の爽やかで美しい髪が靡いた。
音が聞こえラムダ級のハッチが開いた。
ハッチが完全に開くとまずは2人のショック・トルーパーが姿を表した。
儀仗用の銃剣が付いたDTL-19重ブラスター・ライフルを両手に持ちいつでも主人を護衛出来る体制にしている。
ショック・トルーパー2人の後に招かれた客は姿を表した。
立派な衣装を身につけ更に2人のショック・トルーパーを護衛に付けている。
「ようこそエリアドゥへ、ゼールベリック大臣」
第三銀河帝国外務大臣マティアス・ゼールベリックは微笑を浮かべヘルムートに近づいた。
ゼールベリック大臣は両手を差し出し握手を求めた。
当然これを断るわけはない。
同じく笑みを作り客人を歓迎した。
「あなた方の勝利を祝いたい、よくぞ新共和国を打ち倒してくれた」
「まだまだ戦いはこれからだよターキン知事、君達こそ彼らに反旗を翻した一番最初の勇気ある者達ではないか」
「反旗を翻すといえど我々は新共和国艦隊を抑留しているだけに過ぎません。帰る場所のない数万名の将兵をね」
「そこが恐ろしい所だ。敵を打ち倒すのではなく最小限の犠牲で敵をまるまる生捕にした」
2人は話を盛り上げる中ヘルムートはラムダ級から姿を表す帝国軍の将校達を見つめた。
普通の正規軍将校もいれば新しく出来た親衛隊の将校もいる。
だが階級章を見るに皆佐官以上だ。
本来ならヘルムートもあの軍服を着ているはずだったのになと消えてしまった未来を思い起こした。
「既に死に体の国の物だ、後は誰がどう使おうが勝手でしょう?」
「恐ろしい少年だ、さすがはターキン一族。そう思うだろう?ザーラ司令官」
ゼールベリック大臣は彼の後ろにいた女性将校を呼んだ。
名前はエリアン・ザーラ。
ゼールベリック大臣達を護衛して来た艦隊の司令官でありターキンと深い関係にあった人物だ。
彼女の旗艦である“ターキンズ・ウィル”からもその関係性は表れているだろう。
第一デス・スターの破壊で損傷を受け解体される予定だったインペリアルⅡ級をあえてその姿のまま旗艦とした。
新共和国に、反乱軍に対してその罪を思い起こさせる為に。
「彼女はエリアン・ザーラ、君の大伯父であるグランドモフターキンの…まあ弟子…と言った所だ」
「大伯父上の…」
ヘルムートとザーラ司令官は握手を交わした。
彼女はじっとヘルムートを見つめた。
まだ若い彼はあのターキンのような貫禄や風貌は持ち合わせていない。
一見ただの顔のいいおぼっちゃまだ。
しかしザーラ司令官には分かった。
彼のオーラとその青色の瞳から放たれる眼光は確かに彼女が憧れたターキンと同じ物だ。
絶対的な支配者、そして生まれながらの王たる威圧感がこの若さで放たれている。
畏怖の念を覚えるほどだ。
きっとターキン総督もお若い頃はこのような感じだったのだろうと容易に想像出来る。
「君たちはこれから帝国の一部となる。君には言ってしまえば大伯父の“
「具体的には何を?」
「君には代理総統から第三銀河帝国“初代グランドモフ”の地位が与えられる、大セスウェナから隣の宙域まで全て君のものだ」
「それは身に余る光栄です」
なんらかの地位や名誉は与えられると思ったがまさか初代グランドモフとは。
亡き大伯父の跡を引き継いで現帝国の人柱になれというのか。
今ヘルムートがエリアドゥでやっている事と同じように。
しかし彼に能力はあっても断る力はなかった。
「それと同じく君に相応しい艦船をプレゼントしようと思う、名は“エグゼキュートリクス”。これも偉大なグランドモフターキンの所有物だった」
「それならついでに“キャリオン・スパイク”を頂戴したいですね。あの船こそ大伯父の意志と魂が込められた船だ」
キャリオン・スパイクというのはこれもターキンの船でありそれこそスター・デストロイヤーに引けを取らない高性能なテクノロジーが満載のコルベット艦だ。
バーチ・テラーの反乱などで強奪されたキャリオン・スパイクだったがやがては帝国の元へと戻ってきた。
どうせ大伯父の代わりを務めるならばと彼は少し無茶な要求をした。
するとゼールベリック大臣は笑声を立て彼にキャリオン・スパイクの事を話した。
「ハッハッハ、それも与えようと思ったのだがね。キャリオン・スパイクは残念な事に消息不明のままなのだ。破壊されたか強奪されたかも分からない
「なるほど…仕方ありませんね」
「立ち話も何だ、そろそろ移動しようじゃないか」
彼らは談笑を絶やさぬまま階段場所へと歩いた。
ミッド・リム コメル宙域 ナブー星系 惑星ナブー-
エリアドゥと同じく惑星ナブーは帝国にとって最も重要な人物を生んだ惑星だった。
平和で自然の美しいこの惑星が生んだ男の名は“シーヴ・パルパティーン”。
第一銀河帝国の銀河皇帝である。
平和を重んじる惑星から銀河史上類を見ない独裁者を生み出すなど何たる皮肉であろうか。
しかも旧共和国や新共和国と比べても曲がりなりにも平和を生み出したのだから更なる皮肉である。
美しい平和な星という評価は徐々に悪魔の帝国と皇帝を生み出した星に変わりつつあった。
平和を維持する為にはナブーもその評価を甘んじて受け入れるしかなかったのだ。
第三銀河帝国が再誕生し新共和国を打ち倒すこの時までは。
この評価を快く思わない者達にとってはこれは好機だった。
「女王陛下、私は残念に思います。貴女を拘束せねばならぬとは…」
「そう貴方の良心が訴えるなら今すぐにこんな事をやめるべきです。それは貴方を含めた誰しもが望まぬ事なのですから」
「ですが陛下、我々はやむ終えず立ったのです。祖国を守る為には他に道がない」
別の保安軍メンバーである若い兵士が本来守るべき女王にピストルの銃口を向け動けないようにしている。
他にも保安軍キャプテンであるコォロが彼の副官や部下に銃口を向けられていた。
ナブー王室保安軍も一枚岩ではなかった。
皇帝の死後、帝国はシンダー作戦の標的をこの惑星に選んだのにも関わらず帝国シンパの保安軍兵士が大勢いたのだ。
帝国が弱体化した後は一派の勢力は弱まっていた。
だが運命は彼らに味方したのだ。
帝国は知っての通り蘇りコルサントすら取り戻した。
それは帝国シンパの者達にとって立ち上がるべき時であった。
彼らは密かにクーデター派と身を改め祖国ナブーを守る為に決起を起こしたのだ。
結果保安軍の2/3が参戦したクーデター派は首都シードを陥落させこうして女王や要人を皆人質にとっていた。
「クーデターなど起こして徳をするのは我らではありません」
「そう、我らはただ安寧が約束されるのみ。されどそれで十分ではありませんか陛下」
階段をコツコツと音を立てながら1人の王室保安軍将校が現れた。
その姿を目にして要人達や女王ソーシャ・ソルーナは目を見開いた。
「クリース宙将…」
保安軍に新設されたナブー王室保安軍宇宙艦隊部門のトップであるネヴィー・クリース一等宙将が姿を表した。
新共和国の支援で遂に保安軍にも宇宙艦隊が設立されたのだが結果として己の首を間接的にではあるが締める形となったのはとてつもない皮肉だろう。
今や宇宙艦隊も宇宙戦闘機隊も地上の保安軍も殆どがクーデター一色に染まっている。
「三等宙佐、陛下達をお連れしろ」
「わかりました、さあ此方へ」
副官のハウント宙佐に連れられ女王やキャプテン達は軟禁場所へ連れられた。
その間にもシードや王宮の制圧は進んでいる。
クリース宙将が玉座の通信システムをオンにし首都全体に通達した。
『我々は今日祖国を守る為、更なる祖国の繁栄の為に決起した』
クリース宙将の声が戦闘中や連行中の兵士や市民達に広がる。
一瞬手を止め皆宙将の言葉に耳を傾けた。
『ホズニアン・プライムは陥落し今や新共和国は崩壊した。彼らが抑えてきた海賊やかつてナブー侵略時のような企業軍の攻撃がやがてこの星を襲うだろう』
呼吸の間を置き落ち着いて話す。
その間に出撃した保安軍のN-1スターファイターがシードの上空を飛行した。
『再び帝国に続くのだ!我がナブーが生み出した英霊シーヴ・パルパティーンが創りし帝国に!その為に我々は立ち上がる!』
クリース宙将の高らかな宣言はシード中に、延いては惑星中に響き渡った。
「よし行け!前進だ!」
訓練用のドロイド軍相手に外人部隊のスワンプ・トルーパーたちが勇ましく突撃を繰り返す。
模擬弾を喰らったドロイドたちがバタバタと塹壕の中に倒れていった。
頭上を何発か模擬弾が飛び交い地面で爆発が起こる。
これも殺傷能力が皆無の模擬弾だが実際の戦場とほぼ同じ雰囲気を作り出すには十分だ。
外人部隊指揮官のペルタリス上級大尉が前線で大声をはりトルーパー達を突撃させる。
ジークハルト達の予測通り外人部隊は決して低くはなかった。
大なり小なり戦いを潜り抜けてきたのだろう。
とはいえジークハルト達の想像していた練度よりはだいぶ低い。
中には候補生同然の動きをする者もいた。
おかげで隊列が少し乱れ隙が生まれいる。
だがその反面ずば抜けて練度の高い兵士もいた。
特にベール軍曹とその分隊は高いチームワークと戦闘能力を誇っている。
そして将校達の目を引く人物が1人いた。
「これじゃあ次の戦いはお留守番か物資護衛だな」
「ええ、流石に戦場に出すのは酷でしょう。まあ第224師団はすぐに戦場に突入させるそうですが」
「ゾデル准将は正規軍のはずだが…正規軍の部隊にも配属されてるのか?」
「ジークハルト、外人部隊は正規軍にも配属されるようになってる。まあ使い勝手はいい方が助かるからな」
連隊長としてしっかり模擬戦の様子をチェックしながらアデルハイン中佐やヴァリンヘルト上級中尉の言葉に耳を傾けた。
他にも外人部隊専用の督戦部隊隊長であるリーレンツ・ツヴァイク少佐などが視察していた。
新設の外人部隊はほぼならず者に近しい者まで入隊している為督戦隊のような秩序を保つ部隊が必要になってきた。
彼らは主に保安局や親衛隊保安局から選ばれ裏切り者や脱走兵を出さぬよう監視した。
「それにしてもゾデル准将はまたミンバン行きか…気の毒なこって」
パイロットスーツで左手にヘルメットを持ったままハイネクロイツ中佐が一行の中に割り込んだ。
「ああ…また地獄に戻るなんてな…スタッツは死んじまってるし、ボランディンは気づけば中佐だし」
「むしろあそこからよく生きて帰ってこれたな。まあ再度のミンバン配属は流石に気の毒だとは思うが…」
彼らは皆苦笑を浮かべ惑星ミンバンに再び配備される第224帝国機甲師団の面々に同情した。
銀河内戦期より前から続くミンバン戦役の地獄のような戦いは帝国内でも悪い意味で有名だ。
そもそもミンバン自体現地のミンバニーズ以外生存に適していない。
空気中にはカビの胞子が舞い水には危険な病原菌が存在し、惑星は高温体質で湿地と泥の平原しかない為脱水症状に陥る危険性もある。
何より大気には大量のイオンが含まれ常に霧が立ち込めている。
天候も最悪だ。
それでもなおこの地に眠る鉱山資源の為帝国やそれ以前の多くの企業はこの惑星と戦った。
当然戦いは激化した。
文字通りの泥沼の戦いが長期にわたって続いたのだ。
いつしかミンバンに派遣される事は懲罰的な意味合いを持ち合わせていた。
「それにしてもあの兵士は誰です?」
ヴァリンヘルト上級中尉は1人のスワンプ・トルーパーに指を指した。
E-11に近接戦闘用の銃剣を装備し接近戦と銃撃戦で多大な戦果を挙げている。
あのような戦い方は帝国軍や親衛隊内でも珍しい。
「彼は…」
ジークハルトがタブレットをスライドした。
その兵士はすぐに見つかった。
「ランス・バルベッド伍長…元ヘル傭兵団の一員で二日前外人部隊に志願…」
「傭兵にしては動きがいいし規律が整ってる」
「期待の新人だな」
「そうなんだが…どこか見覚えが…」
ジークハルトはタブレットを見つめながら独り言のように言葉を漏らした。
-コルサント 親衛隊本部-
親衛隊本部には親衛隊保安局の本部も同時に入っていた。
そして今日この場所にある高級将校が集まっていた。
1人はフューリナー上級大将。
もう1人は親衛隊保安局のフリシュタイン大佐だ。
彼は親衛隊保安局長官ディールスのそばに控えていた。
最初に口を開いたのはフューリナー上級大将だった。
「そういえばセフ・コンの件は片付いたのか?」
「ああ、例の部隊に入れる形で戦力の9割は回収出来た。残りの1割もそうするつもりだ」
「シュメルケは完全に使い潰す程でいたが」
「まあそれでも構わんさ、次の戦力が入ってくれば彼らは無用になるからな」
あまりの冷酷さにディールス長官は悪い笑みを浮かべた。
フューリナー上級大将も苦笑を浮かべている。
「さて特殊部隊の上級大将がわざわざ頼み込んだんだ、ちゃんと調べておいてくれただろうな?」
ディールス長官はフリシュタイン大佐の方に顔を向け頼まれた物を渡すよう合図した。
彼は小さく頷き後ろにいた情報部士官からタブレットを受け取りフューリナー上級大将に手渡した。
彼は書かれた文章にざっと目を通した。
「ギデオンにキャナディ…ダトゥー…グリス、エンゲル、ピーヴィー、ハックス…そしてジャージャロッドの一家か。中々多いな」
「ご要望通り内戦期終盤の帝国軍及び、官僚や総督、政治家、技術者などの行方不明者リストを制作しましたが…なにぶん数が多く…」
「エンドアの敗北でも十分な混乱だったからな。未だに明確になった戦死者よりも行方不明者の方がかなり多い」
「だがこれは今の帝国で一番質の良いリストだ。何故こんなものを欲しがった?」
ディールス長官は椅子に座り尋ねた。
フューリナー上級大将は少し間を起き、話すかどうか思考を重ねた。
彼の考える事は基本あまり公にしない方がいい事ばかりだ。
「…未だに帰属していない帝国の残党が独自の勢力を形成し身を潜めている」
フリシュタイン大佐もディールス長官も驚きはしたが表情や声には出さなかった。
それでは外部の者に漏れてしまう危険性があるし何より冷静に考えれば有り得る話だ。
帝国は帝国自身にすらわからないほど分裂し独自の勢力を形成した。
そのうちの幾つかがまだ残っていてもう存在しない新共和国から身を潜めていてもおかしくない。
「規模はどのくらいだ?いくつある?」
「規模は定かではないが複数あるだろう。それをこれから調べる必要がある」
「見つけてどうするおつもりですか?」
「もしもに備えて手は打っておく…同胞を打つのは心苦しいか仕方ないしもう“
彼はそう評した。
そして冷酷な笑みを浮かべ彼はタブレットに再び目線を向けた。
いくら同胞を討とうとも総統と我々の進む道は決まっている。
皇帝の意志を継いだ第三銀河帝国は前進し続ける。
3週間という長いようで短い訓練期間が終わった。
ついに彼らは前線に赴く事になる。
わずか3週間で彼らの表情や動きはかなり良くなった。
少なくとも練度だけは一人前だ。
少し窶れハイライトが消えかかっている瞳を全員が指揮官ジークハルトの方へ向けた。
最初に会った時のような感性や拍手はもうなかった。
ただ物音と共にずらりと並ぶ敬礼だけだ。
「我々はこれからウェイランド防衛軍に協力し現地の抵抗勢力及び新共和国軍を殲滅する」
彼らは隣の者の顔を見合わせて声を上げた。
まだこの辺は一人前の兵士ではない。
「当然お前達も戦う事となる、だが恐れる必要はない。総統閣下と帝国の為にお前達の有用性と忠誠心を示すのだ!」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
全員がブラスター・ライフルを持つ右手や左手を高く振り上げ熱狂的な勇ましい叫び声を上げた。
あえて彼らを静止するような真似はせず彼らの戦意を限界まで向上させた。
参戦する外人部隊の全員が基地内に駐留中のセキューター級に乗り込んだ。
兵は少なくアーマーのカラーは違えどその姿はかつてのクローン戦争を思い起こさせた。
セキューター級の形状が若干ヴェネター級やアクラメイター級に似ているのもその要因だろうか。
スワンプ・トルーパーやストームトルーパーが全員乗り込みセキューター級のハッチが閉じた。
艦の安全装置が解除され徐々に船体のスラスターが光を放ち起動する。
上空に何もないことが確認されついにセキューター級は出港した。
後部のメインエンジンが青白い光と共にゆっくりと空へと駆け上がる。
遂に戦いの時だ。
さまざまな思いを乗せながらセキューター級は次の戦場へと向かった。
つづく
久しぶりの投稿
そういやもう7月ですねぇ
早いもんだべ全く
歳とっちまう(一応Eitoku Inobeは7月生まれ)