第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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-希望の光は絶望よりも小さくそして強い-


崩壊後の地方

-ゴーディアン・リーチ 残存新共和国絶対防衛線-

マジノ線から撤退したライカン将軍らの艦隊はヤヴィン星系のあるゴーディアン・リーチへ逃げ込んだ。

 

元々存在していた兵力と合わせてこの場所の残存新共和国軍は現在一番の戦力を誇っていた。

 

当然残存軍は帝国軍の襲撃に備えてヤヴィン4を主軸とした防衛線を展開した。

 

新共和国にとっては聖地であるし帝国にとっては絶好の仇討ちをする為のポイントだ。

 

両者とも譲る事はない。

 

最初に動いたのは勢いに乗じて亡きデス・スターの乗組員達の敵討ちに打って出た帝国軍だった。

 

真っ先に先遣隊を派遣しヤヴィン星系の新共和国軍を攻撃した。

 

何度かの小競り合いを行い現在は帝国軍の第一攻撃目標となっていた。

 

そして今日もこの地では熾烈な戦いが繰り広げられる事となる。

 

 

 

 

数百機のスターファイターが小惑星を掻い潜り最大加速で突き進んだ。

 

AウィングやXウィングを先頭に疎らだが編隊を組み不足の事態にも備えていた。

 

その後方にはYウィングやBウィングのような爆撃機が続いた。

 

まだSフォイルは開いておらずなるべくエネルギーを節約している。

 

小さな小惑星がコツンコツンと1機のXウィングに当たった。

 

偏向シールドの影響で損傷は見られないが上官のパイロットから注意された。

 

このXウィングに乗り込むパイロットはまだ新兵でベテランや先輩達のような機敏な動きはこなせていない。

 

その為中くらいの小惑星は回避出来ても小型の小惑星は避け切れなかった。

 

基本的に新兵は扱い易いXウィングやYウィングを主に使用している。

 

後者の方はオンボロだとか新兵達からの評価は低いがBウィングやAウィングに比べて頑丈でとても扱い易い。

 

新共和国一高速なAウィングや重火力で低速のBウィングなどは新兵達にはまだ手の余る代物だ。

 

尤もXウィングやYウィングの方も手に余る代物と言っても過言ではないのだが。

 

強力で万能とも評価出来るこれらの機体を完璧に使いこなし十二分の成果を発揮するなど新兵にはまだ出来ない。

 

高い技術と経験が必要だ。

 

その両者を兼ね備え迫り来る次の戦いを、さらに次の戦いをと制していった者達が優れたパイロットとして名を刻むのだ。

 

「作戦通り散開、艦上からの爆撃を行う」

 

新共和国スターファイター隊が小惑星帯を挟みながら三方向に分かれた。

 

操縦桿を横に倒し速度を調節しながら確実に己の道先へと進んだ。

 

こう言う面でも新兵と先輩の練度差は浮き彫りになっていた。

 

何人かは機体を岩石に擦り当ててしまい減速し過ぎたせいで編隊から離されてしまった者もいた。

 

部隊長のラクティスはそんな光景に少し苛立ちを覚えつつも冷静になる為息を吐いた。

 

彼の乗り込むXウィングは他の機体と違い特別なペイントが許されていた。

 

赤いラインの代わりに灰色のラインが引かれており翼には今まで撃墜してきた敵機の数が記されていた。

 

他にもレーザー砲の先端などに黄色いラインが敷かれている。

 

「シールドの出力を正面に回せ、じゃないと対空砲ですぐにおじゃんだ」

 

命令を聞いたパイロット達が機体を操作し正面シールドの出力を上げた。

 

他にも個人の判断でレーザー砲のエネルギーチャージを行うパイロットも現れ始めた。

 

216機近くのスターファイターがそれぞれ3つの大隊に分かれ攻撃準備をしていた。

 

『隊長、先行Uウィングのサーチ9からの信号が途絶しました!』

 

あまり喜ばしくない報告が部下の機体から流れた。

 

敵に発見され件のUウィングは撃墜されてしまったのだろう。

 

悲しくはあるが嘆いている場合ではない。

 

これ以上の犠牲を出さぬよう努めるのが指揮官の務めだ。

 

「全機魚雷装填、Sフォイル戦闘ポジションへ!帝国艦隊に奇襲を敢行する!」

 

『了解大隊長(ウィング・リーダー)、スカイ中隊準備よし』

 

『ブラウン中隊準備よし』

 

『ネイビー中隊問題ありません』

 

『オウル中隊準備よし』

 

『ライト中隊問題なし!』

 

「サーベル中隊もいけるな?」

 

ラクティスが部下達に尋ねた所次々と異性のいい声が響いた。

 

指揮は問題ない、あとは仕掛けるだけだ。

 

「攻撃開始!」

 

操縦桿を前に倒し72機のスターファイターが一斉に降下し攻撃を仕掛けた。

 

他のスターファイター大隊も同様に攻撃を開始した。

 

だがそううまくは行かなかった。

 

『こんな数交わし切れ…』

 

『もうだめだ!やられた!』

 

悲鳴や叫び声と共に何機かの応答が途切れた。

 

両脇を見渡せば放火をもろに喰らい炎上し爆散する友軍機の姿があった。

 

ラクティスら生き残った部隊はなんとか攻撃を避け反撃に出ようとする姿があった。

 

「十字砲火に気をつけろ!この艦列隊形…我々の攻撃を予測していたか!」

 

ラクティスの予想通りスターファイターによる奇襲攻撃を予測した帝国軍はアークワイテンズ級やグラディエイター級などを多く配備し徹底的な対スターファイター用の防御陣を作った。

 

他にもレイダー級のような艦船が遊撃行動に移れるように間隔に幅がある。

 

見事に敵の罠に嵌ってしまった。

 

「作戦は失敗か…!」

 

苦虫を噛み潰しながらもラクティスは機体を操り次の指示を出した。

 

「全機予定通り爆撃を開始しつつ退路を形成!友軍艦隊の攻撃に合わせて退却する準備だ!」

 

『リーダー、全方位から敵機多数接近!』

 

冷や汗をかきながらラクティスは四方を見渡した。

 

空母のクエーサー・ファイア級やインペリアル級のハンガーベイから大量のTIEインターセプターやTIEブルートが出現している。

 

すでに戦闘は始まっており物量に押された味方機が次々と撃破されていった。

 

その様子を見た機体のアストロメクが悲鳴を上げる。

 

「編隊を保ったまま散開!爆撃機は敵機と極力戦闘を控え敵艦への爆撃に専念しろ!」

 

『了解!』

 

ラクティスは舌打ちしながら機体を一回転させ砲撃を避けながら2機のTIEインターセプターを撃墜した。

 

しかし取り残した機体により反応の鈍い新兵のXウィングが撃破されてしまった。

 

このままでは三個大隊全滅の危機だ。

 

既に大きな打撃と素早い舞台の展開により組織的行動が小規模なものしか出来なくなっている。

 

パイロット達にとって辛い戦いがこうして始まった。

 

 

 

 

-帝国領 デノン星系 惑星デノン-

この地は英雄マクシミリアン・ヴィアーズ大将軍の故郷でありコルサントと同様惑星全体の都市化が進んだエキュメノポリス惑星だった。

 

それこそコルサントと同等までは行かないでもインナー・リム内では十分豊かな惑星である。

 

コレリアン・ランやハイディアン・ウェイと言った航路と繋がっており戦略的にも重要価値は高い。

 

今後はハイディアン・ウェイも以前のように防衛部隊や警備隊が展開される事だろう。

 

「久しぶりの故郷はどうだったゼヴロン?」

 

父ヴィアーズは息子に尋ねた。

 

「久しぶりに友達と会ったよ、元気そうだった」

 

「それはよかった。明日は母さんのお墓と母さんの実家に行こうと思うんだがどうする?」

 

「僕も行くよ、父さんがしっかりやってるって所報告しなきゃね」

 

「ハハハ、それは困ったな」

 

2人は笑みを浮かべたままこないだの式で貰った勲章などの整理をしていた。

 

ゼヴロンとマクシミリアンの親子関係は以前ではもっと冷え切っていた。

 

ゼヴロンの母親、つまりヴィアーズ大将軍の奥さんが死亡し彼は父親としてゼヴロンを厳格に育てた。

 

彼をCOMPNORの青年グループに入れたのもそう言った所で母に敬意を示して欲しかったからだ。

 

だがヴィアーズ大将軍は妻を失った苦痛を帝国の為に戦う事で埋め合わせ息子に対する愛情が疎かになっていた。

 

結果ゼヴロンの心は父親から離れていき母親の愛情を求めるようになっていた。

 

いつしかそう言った感情はうねりにうねって帝国に対する不信感などにも変化していった。

 

両者が求めた姿から両者とも離れていってしまったのだ。

 

そんな悲しい親子が和解したのはやはりエンドア戦での動乱にあった。

 

帝国の敗北と皇帝の崩御を聞いたゼヴロンには3つの選択肢があった。

 

一つはこのまま現地の部隊と共に勝ち目のない戦いを行う事。

 

二つ目は失われた未来とあの世の母を思いながら自らの命を絶つ事。

 

最後の選択肢は帝国を捨て新共和国に亡命する事だった。

 

ゼヴロンの考えは後者2つの方にあった。

 

帝国と心中するくらいだったら自ら命を絶つし帝国から離れ帝国と戦うのも悪くないと思っていた。

 

彼も父親と同じく母を失い心は完全に希望を失っていた。

 

ついに彼が駐留する惑星にも新共和国軍が侵攻してきた。

 

そこでゼヴロンは新共和国へ亡命しようとした。

 

だが運命は変わった。

 

彼の部隊は新共和国軍の包囲から助け出され亡命することはなかったのだ。

 

ゼヴロンの父であるマクシミリアン・ヴィアーズ大将軍に助け出されて。

 

ヴィアーズ大将軍は先頭に立って指揮を取り息子を救い出す為に一番最初に駐留基地に乗り込んだのだ。

 

普段ならこんな無茶はしない。

 

されど彼は父親であり残された息子をどんな形であろうと愛していた。

 

それは妻の死とそれからなる互いの心情の変化によって見えなくなっていただけであり根本の気持ちは何も変わっていない。

 

COMPNORの青年グループに入れたのもゼヴロンの事を思ってだった。

 

それが本人に伝わっていたかはともかく。

 

そして息子の危機に立ち上がらぬ父親はいないであろう。

 

愛情がある限り父親は息子のために立ち上がる。

 

それは英雄であろうと軍人であろうと変わらない。

 

事実救援に来た部隊の中で一番最初にゼヴロンにその姿を見せたのはヴィアーズ大将軍本人だった。

 

そこで完全にとはいかないまでもゼヴロンとヴィアーズ大将軍の心の曇りは晴れた。

 

大将軍は息子の無事に人目も憚らず涙しこの青年を抱きしめた。

 

彼のその涙は大勢の将兵が目撃していた。

 

同じCOMPNORの大隊メンバーや連れてきたストームトルーパーやスカウト・トルーパーなど。

 

そして何より父の情に触れたゼヴロンに大きな変化があった。

 

彼は理解したのだ。

 

求めていたのは母親の愛情だけでなく父親からの愛情もそうだったと。

 

ずっと昔の幸せだった小さな頃の愛情をゼヴロンは求めていたのだ。

 

当時の父の階級はまだ低くとても若かったが活気に満ちており優しい笑みを持つ温かい父親だった。

 

もうあの光景には戻れないが父の思いは何も変わっていない。

 

ずっと欲していたものは身近にあったのだ。

 

ただお互いがすれ違ってばかりいたから気づかなかった。

 

だが本当に手遅れになる前に両者のすれ違いは終わった。

 

親子の絆を彼らは取り戻したのだ。

 

「…父さん実は…」

 

ふと決心したかのようにゼヴロンが口を開いた。

 

ヴィアーズ大将軍は首を傾げた。

 

「僕はこのまま親衛隊に入ろうと思うんだ…僕が親衛隊に入れば父さんはもっと評価されて母さんの為にも…」

 

「ゼヴロン、それはよせ」

 

ゼヴロンの考えはすぐに却下された。

 

あまりの速さとまさかの言葉にゼヴロンは唖然としていた。

 

流石にすぐ認めるとはいかないまでも少しは考えてくれると思っていた。

 

「でも親衛隊なら今の階級を保持したまま移籍できるし…父さんやみんなのためにもなるよきっと」

 

「ゼヴロン、お前の気持ちは私もきっと母さんも嬉しい。でも親衛隊だけはダメだ。お前は今のままで十分父さん達の誇りだ」

 

「…どうしてそんなに親衛隊を拒むの?」

 

「いずれ分かる…いや分からない方が幸せかもしれんな。親衛隊はお前が思っている以上に危険な組織なんだ」

 

ヴィアーズ大将軍は軽く頭を撫でると部屋を後にした。

 

ゼヴロンに大きな謎を残して。

 

 

 

-エリアドゥ 辺境域保安軍本部-

宇宙に浮かぶ三隻のインペリアル級を傍にラムダ級と数十隻のゴザンティ級が本部の軍港に降り立った。

 

ヘルムートや一部の保安軍司令官達は停泊しているインペリアル級の前で艦隊の指揮官を待っていた。

 

軍港付近にはインペリアル級の姿を一眼見ようと将兵が大勢集まっていた。

 

多くが「保安軍は帝国軍に吸収され自分たちも帝国軍人の一員となる」という噂から来ていた。

 

その為入港したゴザンティ級には自分たちようの帝国軍服があるのではとも言われていた。

 

ラムダ級がヘルムート達の前に着陸した。

 

ヘルムートは一足先に帝国軍の軍服に着替えていた。

 

4つのコードシリンダーを差し込み左胸にはグランドモフの青6つ、赤3つ、黄色3つの階級章を身につけている。

 

ラムダ級のハッチが開き3人の将校と6人のストームトルーパーが降り立った。

 

「閣下、搬入準備整いました!」

 

ラムダ級から降りたレーゲン少佐はヘルムートの事を閣下と読んだ。

 

年齢は向こうのほうが10歳ぐらい上だが階級で言えば彼は一介の少佐に過ぎずヘルムートはグランドモフだ。

 

圧倒的な階級の差がそこに存在していた。

 

ヘルムートと後ろの司令官達は敬礼し話し始めた。

 

「30分後に制服の配布を始めろ。その間に本部の改装を急げ」

 

「了解しました」

 

司令官達は頷きさらに後ろで控えていた副官と共に各部署に指示を出しに行った。

 

その様子を彼は目で見送った。

 

「貴方の旗艦、エグゼキュートリクスが上空でお待ちです」

 

その言葉に頷きヘルムートはレーゲン少佐に連れられラムダ級の船内に入った。

 

その間にゴザンティ級の周りでは宇宙軍トルーパーや士官達が忙しそうにコンテナを運んでいた。

 

コンテナの中は基本衣服などが大半だったが中にはブラスター・ライフルやブラスター・ピストルもあったので慎重に運ぶ必要があった。

 

あまりに大型のコンテナはゴザンティ級に積み込んだ輸送用の小型スピーダーで運んでいる。

 

「会場に直行だ、その場で開封するぞ」

 

「了解」

 

補給士官の大尉が命令を出した。

 

コンテナを運ぶ宇宙軍トルーパー達が彼の前を横切る。

 

「会場に集まるよう放送をかけるよう頼んでくれ」

 

「了解しました」

 

「混乱が起こらぬよう誘導を頼む。まずは制服から次に武器だ」

 

「両方一変に配ってしまえば?」

 

「それだと混乱が起こる。なるべくスムーズに行いたい」

 

「わかりました」

 

「さあ新たな同志達を歓迎する準備だ!」

 

大尉は珍しく張り切っていた。

 

いつもは黙々と部隊の食糧のカロリー計算をしたり補給の書類に目を通したりと本人としては比較的つまらない仕事をしていた。

 

その反面自分には能力がない事も理解しており今の状況を甘んじて受け入れていた。

 

だがこの仕事をスムーズに成功させれば少なくとも上級大尉や少佐に昇進させる上官から約束を受けたのだ。

 

張り切るのも無理はない。

 

逆に失敗すれば階級を下げるとも言われているので気を張らずにはいられなかったが。

 

その間にヘルムートを乗せたラムダ級はエグゼキュートリクスへと着艦した。

 

数十名のストームトルーパーや将校に出迎えられ自身の旗艦であり大伯父の旗艦に足を踏み入れた。

 

まだこの艦が自分のものになったという実感は湧いていない。

 

昔一度だけだが大伯父ウィルハフや父と共にこの艦に乗り込んだ事がある。

 

あの時はまだ幼くこの艦と一族の偉大さも重要さも理解出来ていなかった。

 

そんなヘルムートに彼の父も大伯父ウィルハフからも思想や理想なんてものをよく聞かされた。

 

それをいくら持ち合わせていても能力がなければ意味もないことも。

 

思い出に浸っているとすでにブリッジの中まで

 

「こちら艦長のヒンデイン・ダック准将です」

 

エグゼキュートリクスの艦長ヒンデイン・ダックが敬礼した。

 

他にも数十名の将校が力強く敬礼し新たな主人を出迎えた。

 

「お待ちしておりましたグランドモフターキン!再びターキンの名の指揮下に入れて光栄です」

 

「ああ…私も大伯父と同じ呼ばれ方をされて光栄だよ。早速鹵獲したスターホーク級をザーラ艦隊に送り届けるぞ」

 

「はいグランドモフ」

 

ヘルムートはそのままレーゲン少佐を背後に控えさせたままブリッジに立った。

 

じっとエリアドゥの市街地を見つめる。

 

姿その姿はどこか大叔父に似ていた。

 

 

 

-クワット 軌道上造船所-

数年前、旧反乱同盟から受けた奇襲攻撃によるダメージも月日が経てば元通りだった。

 

むしろ以前より生産力はアップし来るべき更なる軍拡に向けて大量の兵器を日夜製造中だった。

 

ドックには完成し今にも発艦出来そうなインペリアル級が並んでいた。

 

地上の工場ではウォーカーが大量に製造され次々と運搬用の輸送船に積み込められている。

 

クワット全体が一眼となって軍事兵器を作り上げていた。

 

「あのインペリアル級は新造艦の実験として改修するそうです」

 

「例のアキシャル砲か、何せマジノの戦闘で一部の砲が使えなくなったからな」

 

「今後新共和国軍の残党軍討伐に回されるとか」

 

「全く…軍備縮小法なんてやらずにクワットやコレリアやサイナーに手当たり次第に発注して軍拡してれば崩壊しなかっただろうにな」

 

「そんな事軍隊アレルギーで兵器アレルギーのモスマがやると思います?」

 

この区画の造船所所長は皮肉まじりに彼に疑問を投げかけた。

 

ヴァティオンも苦笑いだ。

 

笑い話で済ましているが実際の所クワットは新共和国に相当恨みを持っている。

 

造船所を奇襲され多くの社員が死亡した。

 

それだけには飽き足らず自社のスター・デストロイヤーを強奪し勝手に別物に作り替えるようなクズだ。

 

しかも商売相手の帝国を潰され大幅な軍縮により軍事産業は一気に衰退した。

 

あと10年も新共和国の時代が続いていたらクワットは大変な事になっていただろう。

 

まあこんな事言っているがクワット社も新共和国、反乱同盟にスターファイターやフリゲートを横流ししているのだが。

 

あくまで商売、されど恨みはまた別と彼らは独自の基準で割り切っていた。

 

「…一応新共和国に回す用だったフリゲートとAウィングは残っているな?」

 

「ええ、処分に困ったので工廠の隅の方に置いてあります。取り敢えず二十隻は確保してあります」

 

ヴァティオンは顎に手を当て邪悪な商売方法を考えた。

 

この世界の軍事産業は普通にシャトルや船を作って売るよりも何十、何百倍も利益がある。

 

何せまだ銀河系は安定しているとは言えず銀河規模の国家や地方の防衛軍がこぞって兵器を求めるのだ。

 

求められたら作るし売るしかないだろう。

 

何も売る為に誰かを殺したり、誰かを攻撃させたりはしていない。

 

求められたから売ってる、ただそれだけだ。

 

そして今新共和国の残党軍はきっと求めているはずだろう。

 

戦う為の力を。

 

「今でのルートは確保されているか?」

 

「ええ、一応重要拠点や新共和国の残党が籠りそうな場所には運搬出来ますが」

 

「連中が欲しがるなら完成品に少しばかり細工して残党どもに売ってやれ。それもなるべく高く売りつけるんだ」

 

「えぇいいんすか?帝国にバレたら即刻銃殺刑ですよ?」

 

「構わん。どう足掻いたってこの戦争は帝国が勝つ。いやもう勝ったな…俺達はその僅かな合間だけ一儲けするだけだ」

 

「分かりました」

 

工場長は軽く頭を下げ指示を伝えに行った。

 

建造されるインペリアル級を見下ろし彼はながら彼は一息付いた。

 

いつ見てもインペリアル級の造船ドックの光景は鳥肌が立つ。

 

しかもこれを人が足も付かない空の果てで造り上げたと思うと感慨深い。

 

「さて“()()()()()()()”の方を見に行くとするか」

 

ヴァティオンは幾人かの社員を引き連れてこれより更に地下の階層へ向かった。

 

この造船所のステーンションは通常の造船ステーンションよりも大きく一度に様々な艦船を建造出来る。

 

その為スター・デストロイヤーを造りつつスター・ドレッドノートも造る事が可能だった。

 

まあ帝国にくれてやる分のスター・ドレッドノートを造っているわけじゃないが。

 

エレベーターから降り彼らはドレッドノートの造船所区画に足を踏み入れた。

 

さっきの区画よりも何十倍も大きな造船所区画に三隻のスター・ドレッドノートが並んでいた。

 

若干だが同じドレッドノートでもエグゼクター級に似ている部分があった。

 

しかし大きさはエグゼクター級よりも小さい。

 

「これがか…」

 

「はい、正式な名前は“マンデイターⅢ級シージ・ドレッドノート”。マンデイターⅢ級スター・ドレッドノートのモデルチェンジバージョンです」

 

「マンデイター・ラインの復活というわけか」

 

ヴァティオンは嬉しそうにニヤリと笑った。

 

マンデイター・ラインの歴史を辿っていけばクローン戦争の数十年前にその起源を持っていた。

 

最も初期型のマンデイター級はクワットの防衛軍で使用された。

 

今でも記念艦となったうち一隻がクワットの兵器博物館に飾られている。

 

次のモデルであるマンデイターⅡ級は数千年ぶりに蘇った共和国宇宙軍で使用された。

 

主力のヴェネター級よりも遥かに強力なマンデイターⅡ級は当時の連合軍レキューザント級軽デストロイヤーが千隻束になっても勝てない程の力を誇っていた。

 

間違いなく共和国宇宙軍と戦線の維持に貢献しただろう。

 

そして時代は流れその技術と系譜は受け継がれて来た。

 

その末裔がこのマンデイターⅢ級であり現在のマンデイター・ラインの最高峰の艦であった。

 

ターボレーザーの数は流石にエグゼクター級と同等までは行かないまでもインペリアル級の50倍近い火力を誇っていた。

 

そして何より特徴的なのはこの艦にはあのアキシャル・シージ・レーザーキャノンの簡易型である試作型軌道機関砲が備わってる事だった。

 

威力や効力はアキシャル砲を下回るが十分な連射力とエネルギーチャージ時間の短さ、何より砲撃中も他の火器を使用出来る点が強みだ。

 

当然チャージ中、敵からの攻撃を守る為にTIEシリーズの機体が84機搭載可能だ。

 

他にも地上支援の為AT-AT12機、護衛ウォーカー24機、地上兵士二個師団を常時搭載している。

 

予定では将校、下士官合わせて10万9,000人が運用する。

 

「本当にこの艦をあの連中に渡すんですか?」

 

区画の責任者が不安そうな表情でヴァティオンに尋ねた。

 

彼の目はこう言っている。

 

「あのような不確定な組織ではなく現在の帝国に売り渡してはどうか」と。

 

確かに堅実な方法を取るとしたらそちらだろう。

 

しかしヴァティオンはあえて茨の道にも近しい方を選んだ。

 

「当然だ、この歴史ある艦を持つに相応しいのは彼女と彼女が率いる偉ばれし新の帝国だけだ」

 

「発覚すれば…少なからず第三帝国からは相応の制裁が…」

 

「そんなものに怯えて悪魔の軍事産業が務まると思うか?武器を欲する者に然るべき武器を与え望みを叶える。それが我々の仕事だ」

 

悪魔と神が入り混じったような笑みを彼は向けた。

 

彼女達は戦い意地でも生きる事を選んだ。

 

その為にヴァティオンは求められたのだ。

 

残党である彼女達がより高みへ向かう為に。

 

力が必要だ。

 

その望みを込めた三隻のドレッドノートをヴァティオンは見つめていた。

 

 

 

 

『大隊長もうダメです!我々しか残ってない!』

 

ラクティスは軽く舌打ちをした。

 

僅かなXウィングとYウィングが砲撃の間をくぐり抜ける。

 

216機近くいたはずのスターファイター隊は気付けばもう半数以下になっていた。

 

TIEの大軍と圧倒的な火力の前に編隊は崩壊しまともに爆撃すら喰らわせられなかった。

 

三個大隊の奇襲攻撃を持ってしてもまだ三隻のインペリアル級を中破させ、いくつかのコルベットやクルーザーを鎮めただけだ。

 

当初の予測された戦果よりも圧倒的に低い。

 

そればかりか大損害を被り続けている。

 

誰がどう見たって作戦は失敗だ。

 

「退却の用意だ!全機ポイントCに集結し敵部隊を突破する!」

 

『りょっ了解!』

 

「気をつけろチローニ!ケツにつかれてる!」

 

『目視出来ない!もうダメだ対空砲まで来た!』

 

「少し待て今助ける!」

 

『手遅れだ!!あぁ!!』

 

「チローニ!!」

 

ラクティスは炎上し爆散する部下の機体をただ見つめる事しか出来なかった。

 

また1人仲間を失った。

 

今のラクティスでは戦場だからと言う理由で割り切ることが出来なくなっていた。

 

深い悲しみを覚え一瞬のうちに怒りに変わった。

 

至って冷静なままだが敵を恨みそれを原動力とするエネルギーが更に増えたのだ。

 

徐々に生き残った友軍機が集まって来た。

 

生き残った機体はどれも少し煤の付いた今まで戦いを経験した事のある者達ばかりで新兵の生き残りは少なかった。

 

ざっと6割程度、4割程度というところだろうか。

 

損耗率が高く通信越しでももう新兵達の精神力は限界だということが分かった。

 

だが生き延びる為には無理でもやってもらうしかない。

 

「編隊を組んで最後の攻撃に移る。なるべく集中攻撃を喰らわせるんだ」

 

『了解ウィング・リーダー…!』

 

「ブラウ、爆撃隊の指揮を取れ。ジェスターは護衛の指揮を。タラソフと俺の中隊で敵のファイター隊を撹乱する」

 

『分かった!』

 

『ケツをぶち抜かれるなよ!』

 

「当然!」

 

数十機のAウィングとXウィングが散開し三個大隊の列を離れた。

 

部隊に近づくTIEブルートやTIEインターセプターの編隊をかき乱しつつ取り囲まれないよう加減速を続けた。

 

敵機を1機墜とせばすぐさまエネルギーをエンジンに振り分け最大加速で逃げ回り敵が背後に付いたら他の中隊員と協力して敵機を撃破する。

 

そして攻撃時は全エネルギーを火力に集中し一撃離脱の戦法を取っていた。

 

ラクティスもその中で戦果を挙げていた。

 

周りの様子を確認しつつ護衛部隊や爆撃部隊に取り付こうとする敵機をなるべく排除した。

 

予想外の動きに敵部隊の注意はラクティス達数名に集まっていた。

 

「このまま敵機をなるべく引き付けて仕留めろ!爆撃隊に近寄らせるなよ!」

 

彼の指揮するサーベル中隊は見事な操縦テクニックで帝国軍の一般パイロット達を翻弄した。

 

Aウィングが高速で敵部隊を見出し注意を集めたところを頑丈で強力なXウィングが堕としてく。

 

冷静に1機ずつ撃破しTIE部隊を味方の爆撃部隊から引き離していく。

 

通常の護衛部隊も損失を出しつつもクルーザーやTIE部隊の猛攻から爆撃部隊を守っていた。

 

『ポイントに付いた!魚雷でシールドとリアクターを沈黙させる!』

 

YウィングやBウィングの爆撃が始まった。

 

放たれたイオン魚雷やプロトン魚雷がインペリアル級のシールド発生装置を破壊又は無力化しその分厚い壁をぶち破った。

 

リアクターの攻撃部隊は下船部のターボレーザー砲を避けながらシールドの停止と同時にミサイルを撃ち込んだ。

 

十分な破壊力を誇る震盪ミサイル数十発が下船部のリアクターを粉微塵になるまで破壊しインペリアル級を沈黙させた。

 

ようやく一隻のインペリアル級を大破させたのだ。

 

『攻撃の手を緩めるな。周囲のクルーザーも片付けて道を開くんだ』

 

冷静な部隊長の判断でインペリアル級の爆発から逃れ散開した機体が次は護衛艦のアークワイテンズ級を狙った。

 

インペリアル級に比べたらアークワイテンズ級のシールドも装甲も大した事はない。

 

Bウィングがフルチャージの一撃と魚雷を一発撃ち込むだけで沈み始めた。

 

残り二隻だ。

 

後に席のインペリアル級と護衛艦隊を撃破すれば部隊は無事に撤退出来る。

 

「このまま出し惜しみせず攻撃だ!なんとしても無事に撤退するぞ!」

 

『中佐大変です!ハイパードライブから数隻の艦影を発見!』

 

「どこから来る!上か?下か?目の前か?」

 

部下は焦りながら計測した。

 

『うっ上からです!我々の頭上より45度真横に突っ込む形で来ます!』

 

「嘘だろ…シールドの出力をもしもに備えて頭上に展開しろ」

 

自らも回避しようと機体を旋回させる。

 

その10秒後にハイパースペースからその艦隊は現れた。

 

多くの“味方”を引き連れ到着と同時に砲撃して。

 

インペリアル級数隻に爆発が起こり閃光が灯された。

 

何人かが急いで出現した艦隊を確認すると思わず絶句し喜んだ。

 

『味方です!味方です大隊長!スターホーク級と新共和国艦隊です!損傷してるけど味方だ!』

 

「ああ分かってる准尉!作戦変更、艦隊をエスコートして脱出する!幸い敵さん友軍艦隊の出現で逃げ腰みたいだからな」

 

突如出現した友軍艦隊は砲火を一点の艦隊に集中し次々と大火力を浴びせていった。

 

徐々にインペリアル級や周囲の艦が散開し陣形を転換する。

 

そこにわずかながら隙が生まれた。

 

「同時に二隻のインペリアルをやるぞ!爆撃部隊も護衛部隊も全火力をブリッジとリアクターに集中しろ!」

 

『ですが現在の戦力では一隻が精一杯です!』

 

「やらねばならんのだ!ネヴァンの大隊に俺の隊の半分を組み込めば足りるはずだ!」

 

『チッ!無茶言う!』

 

「撃墜されないうちにとっとと決めるぞ。幸い敵の注意はあの艦隊に向いてる」

 

『了解大隊長殿!やってやる!』

 

「チャンスは一度、撃破出来なかったら射程外まで全力で逃げろ!それだけしかない…」

 

再び編隊が組み直され対空砲火が激しい中数十機のスターファイターが機体の何百倍も大きなスター・デストロイヤーへ突撃する。

 

最新鋭のインペリアル級にはミサイルや魚雷発射管も搭載されており新共和国のパイロット達はさらに苦戦を強いられていた。

 

対空砲火を交わし切れずシールドが限界に達した新兵のXウィングがラクティスの隣で爆発した。

 

仲間が死ぬ度に彼は苦虫を噛み潰した。

 

それと同時にそれだけでは収まらない苦々しい気分が彼の腹の中に充満する。

 

「タラソフ、先行するぞ!ターボレーザーを叩き潰す!」

 

『了解!!』

 

ラクティスとタラソフ大尉のXウィングが最大加速でSフォイルが非戦闘時の水平状態のまま近くのインペリアル級に突っ込んだ。

 

素早さと洗礼された無駄のない動きにより帝国軍の砲手達はこの2機を撃墜する事が叶わなかった。

 

また機体の面積も小さい為撃墜は更に困難だ。

 

「もう少し…もう少し…」

 

ラクティスはセンサーと主砲のチャージ状況を眺めながら機体の操縦桿を握った。

 

後少しでフルチャージ出来る。

 

「今だ!」

 

2機とも同じタイミングで同じようにSフォイルを開いた。

 

ちょうどSフォイルの合間をターボレーザーの砲弾が通り抜ける。

 

間一髪だった。

 

X字のスターファイターが遂にはインペリアル級に取り憑いた。

 

4つの翼から放たれる最大砲火をインペリアル級の砲塔に浴びせかけた。

 

シールドは破られ砲塔は次々と爆散して行った。

 

ターボレーザー砲はどうしても次の砲撃までに数秒ほどタイムロスを生んでしまう。

 

それだけ強力な一撃を繰り出せるのだがスターファイター相手だとどうしても大きな弱点となってしまった。

 

元よりターボレーザー砲は対空向きではないのだが通常のレーザー砲が少ないインペリアル級では致し方なかった。

 

その為に護衛用のクルーザーが常に存在しているのでその弱点は克服されているが。

 

だがここまで接近されてしまえばもう遅い。

 

一基ずつ破壊されてしまった。

 

「上下合わせて砲塔は60、イオン砲も合わせればざっと100。それが二隻分。なるべく潰すぞ」

 

『了解!1人五十基か…』

 

「TIEファイター144機よりはマシだ、さあ行こうか!」

 

砲塔の爆発を回避しながらターボレーザーや魚雷発射管を次々と破壊する。

 

すでに上部の軽ターボレーザー砲は1/4片付けた。

 

それでも攻撃の手は止まらない。

 

チャージと集中砲撃を繰り返しながら手早く砲塔を片付けていった。

 

敵はどうやら艦載機を使い果たしたのかTIEインターセプターやTIEブルートを放ってこない。

 

尤も敵機がいた所で何かが変わる訳ではないが。

 

『こちら攻撃グループ、爆撃を開始する』

 

「了解、タラソフ次の仕事だ」

 

『了解!』

 

味方の大隊に任せてラクティスとタラソフ大尉は再び水平状態のまま前方のインペリアル級に突撃した。

 

奥のインペリアル級は見た所出現した新共和国艦隊の砲撃を受け既に撃沈間近であった。

 

しかし最後の抵抗と言わんばかりか残りのスターファイターを全て発艦させてきた。

 

『ラクティス、TIEブルートが9機、TIEインターセプターが3機、TIEボマーが4機来るぞ!』

 

機体をセットしながらラクティスはヘルメットの通信機に手を当てる。

 

圧倒的な物量差の前には細かな連携で対応するしかない。

 

「インターセプターからやる。その次にブルートを堕としてボマーを仕留めるぞ」

 

『俺が引き付ける、お前は攻撃を』

 

「任せろ」

 

2機のXウィングは今度は互いに別々のスピードで敵の飛行群へ突っ込んだ。

 

戦艦クラスの速度とは違いスターファイター、特にTIEシリーズのスピードは凄まじくすぐに敵の戦闘群と衝突し戦闘が始まった。

 

タラソフ大尉はあえて敵機をTIEブルート1機のみ撃墜し敵戦闘群の中央をすり抜けた。

 

反転した全TIE部隊がタラソフ大尉のXウィングを追いかけようとする。

 

しかし旋回中に狙われたTIEインターセプター1機とTIEブルート2機がラクティスのXウィングから攻撃を受け撃墜された。

 

その間にタラソフ大尉は全エネルギーをエンジンとシールドに回し残りの12機のTIEから逃げ回っていた。

 

しかもあえて複雑な動きを取り敵の編隊を見出そうとしている。

 

逆に戦闘群の背後に付いたラクティスは容赦無く引き金を引き生き残った2機のTIEインターセプターを撃墜した。

 

ラクティスの危険性に気づいたTIEブルート数機が大きく旋回し背後を取ろうとした。

 

しかし今度はタラソフ大尉に狙いを定められ一度に3機のTIEブルートが失われた。

 

残り7機。

 

しかもパニックを起こしたのかTIEボマー1機が突如編隊から外れた。

 

この機を逃すラクティスではない。

 

まずはそのTIEボマーを追いかけようとした別のTIEボマー2機を撃墜し最後に余裕綽々のままパニック状態の敵機を己のスコアに変えた。

 

だが突然の狙いの変更は敵にとっても大きなチャンスだ。

 

残りのTIEブルート2機がラクティスの背後を取ったまま仇討ちを始めた。

 

流石のラクティスも少し厄介だ。

 

「タラソフ、X戦法をやるぞ」

 

『私の機体に当てるなよ…!』

 

「当然…お前は俺のケツについた2機を、俺はお前のケツについた2機をやる」

 

『一度旋回して始めるぞ!』

 

「オーケー、先に俺がやる。お前はその後にやれ」

 

『わかった…!』

 

敵機を後ろにつけたまま2機のXウィングが旋回しちょうど同じ位置にいた。

 

タラソフ大尉の方が少し速く、ラクティスの方が若干スピードを落としている。

 

X戦法とはクローン戦争期にある共和国軍のパイロットがこれに近い戦い方を行なったのが発祥と言われている。

 

クローン戦争時代、連合軍は大量のドロイドファイターで共和国軍を圧倒した。

 

その為技量で優っていても物量で背後に突かれてしまう事が多々あった。

 

なに分ドロイドは死の恐怖がないので多少無茶な戦術もやり遂げる。

 

そんな危機的状況を打ち破る為共和国軍のパイロットはある事をやった。

 

背後を取られた友軍機同士で接近し合い回避する寸前で片方に張り付く敵機を撃破する。

 

そして自由になった方が今度はもう片方に張り付く敵機を撃墜、もしくは肩代わりし敵機を撃破するといったものだ。

 

ちょうど友軍機が接近し散開する姿がX字を描いていた為X戦法と言われている。

 

ただこの戦術は背後に敵を抱えたままギリギリまで味方機と衝突寸前まで接近する必要がありかなりの技量を必要としていた。

 

だが長い間戦場を共にしてきた二人ならそれは可能だった。

 

今もこうして両機はゆっくりと近づいている。

 

「後少し…狙いをつけて…」

 

深呼吸しながらより正確に狙いを定める。

 

それも自機の後ろに張り付く敵機の攻撃を避けながらなのでかなり精神力を削っていた。

 

もう少しで予定された地点だ。

 

「こいつでくたばれソーラーパネル野郎!!」

 

引き金を引き強烈な一撃をTIEブルート達に食らわせた。

 

見事なタイミングとポイントのおかげで一度に2機のTIEブルートを撃破した。

 

敵機の撃破を確認したタラソフ大尉が今度はラクティスに取り付くTIEブルート2機を撃墜し破片に変えた。

 

一瞬のうちに16機のスターファイター戦闘群を全滅させたのだ。

 

それを祝福するかのように近距離でスターホーク級の最大火力を叩き込まれたインペリアル級が爆煙を上げ沈んでいた。

 

更に通信機からいい報告が飛び交う。

 

『中佐!敵のスター・デストロイヤーを撃沈させました!』

 

後ろを見るとブリッジや下船部が爆発し煙を上げながら崩壊していくインペリアル級の姿があった。

 

なんともいい眺めだ。

 

素晴らしいの一言に限る。

 

すぐにラクティスは命令を出した。

 

「全隊!このまま脱出するぞ!敵さんトンズラ来いて逃げるようだしな!」

 

帝国艦隊は残存艦艇をまとめ上げ撤退を開始していた。

 

予想外の反撃と敵艦隊の奇襲によりひとまずは不利と悟ったのだろう。

 

もう壊滅状態の新共和国スターファイター隊としてもちょうどいい頃合いだ。

 

お互いに引き時だ。

 

先行する2機に追い付こうと生き残った数十機のスターファイターがエンジンの光を放ちながら近づいてきた。

 

「周囲の全味方艦隊にも通達だ、撤退するとな」

 

『その必要はないぞストライン中佐』

 

ラクティスはハッとした。

 

聞き馴染みのある本来ここにはいないはずの男の声だった。

 

ラクティスにとってそれは相当馴染み深いはずだ。

 

なにせ自分が新共和国の、反乱同盟のスターファイター隊の一員となったのはこの声の主のおかげだし男は数少ないラクティスの親族であった。

 

よく見るとそのスターホーク級は他の艦とは違う特別なラインが引かれている。

 

男の指揮する艦には全て同様の印があった。

 

「ディクス叔父貴!」

 

『久しぶりだなラクティス。戦場での再会なんて女だったら通信機越しでも投げキッスをしてる所だぜ』

 

敗北と苦戦続きのラクティスに久しぶりの心からの笑みが表情に現れた。

 

重なった敗北よりも再会の喜びの方が大きく勝っていたのだ。

 

彼らはまだ希望を捨ててはいなかった。

 

 

つづく




今日ウルトラマンの日らしいっすよ(全く関係ないことを言うスタイル)
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