第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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-戦いの真の目的を知る者は少ない-


鋼鉄の巨人

 

-ウェイランド軌道上 ISD アダプテーション-

時は2日ほど遡る。

 

あの後アデルハイン中佐は急いで連隊の指揮官達に作戦を説明した後味方の基地を一回経由して宇宙へと上がった。

 

敵の砲撃範囲がどれほどのものか分からない以上なるべく遠くから移動するのが望ましい。

 

移動中に砲撃されて戦死してはジークハルトにも連隊にも面目が立たない。

 

だがアデルハイン中佐の考えは正しく多少時間は掛かった物の彼らと彼らの運んだ兵器は無事に軌道上の艦隊まで辿り着けた。

 

彼らが移動した頃には艦隊の前に艦船の破片が散らばっており戦闘が行われた事を想起させた。

 

見たところ友軍艦隊に損害はなく一方的な戦いだった事が分かる。

 

ラムダ級でインペリアルⅡ級スター・デストロイヤー“アダプテーション”に向かったアデルハイン中佐一行は艦隊司令官の下へ急いだ。

 

司令官ラインス・ヴェルゼゲルト中将はアダプテーションのブリッジで素っ気なくも暖かく歓迎してくれた。

 

「ご苦労中佐。現状は理解している」

 

「では中将、急いで降下隊形に入りましょう。陽動部隊としてシュタンデリス大佐の隊が動き出す前に」

 

「そうしたいのは山々だがこちらも問題が発生している。君たちに与えられる艦は多くてインペリアル級一、二隻のみだ」

 

「十分ではありますが何故ですか?」

 

たかが基地の上空を封鎖しゴザンティ級と部隊を降下させるのにはインペリアル級が一隻いれば十分だ。

 

むしろ的基地にシールドさえなければインペリアル級の軌道上爆撃ですぐ方がつく。

 

既に敵基地に強力な惑星シールドが検知されている為その戦術は叶わないのだが。

 

それよりも不思議なのはインペリアル九一隻に限定する事だ。

 

アークワイテンズ九一隻やグラディエイター級一隻と言われれば流石に反論せざる負えないがこの場合はそうではない。

 

「道中見た通り先程艦隊戦が発生した。恐らくクーデター軍の分艦隊だとは思うが何かが妙だった」

 

「妙とは?」

 

「敵艦に数隻新共和国のマークを入れた艦があった。新共和国からの贈り物なら納得が行くがどうもおかしい」

 

それもそのはず、敵は新共和国の残存軍と結託しておりそのせいで地上部隊も損害を少し被ったのだから。

 

あの連中がいなければ今頃包囲殲滅戦で無条件降伏させている。

 

態々あのデカブツ達だって宇宙に運ぶ必要はなかった。

 

新共和国は常に我々の邪魔ばかりするとアデルハイン中佐は苛立っていた。

 

「それは敵が新共和国の残存軍と手を結んでいるからです」

 

「やはりか…ならば近い内に敵の反抗作戦が開始されるだろう。地上はともかく艦隊はな」

 

「そんな状況下でありながら何故我々にインペリアル級を?」

 

ヴェルゼゲルト中将は軍帽を被り直し彼に説明した。

 

「敵は恐らく地上と両方で総攻撃を開始するだろう。だから敵の攻勢が始まるより前に敵を引き摺り出す」

 

「つまりそのために陽動として我々が地上への攻撃し窮地に陥り敵が出現した所を艦隊で叩くと?」

 

「その通り、敵を殲滅するための囮部隊になってもらう。当然地上でも勝ってくれないとこちらとしても困るので宇宙の事は気にしなくていい」

 

中将の艦隊はインペリアルⅡ級八隻、アークワイテンズ級十四隻、グラディエイター級二隻、クエーサー・ファイア級一隻の編成だ。

 

またヴェルゼゲルト中将自身も五度の艦隊戦に今まで大勝した事があり能力も申し分なかった。

 

複雑な作戦ではあるが敵を殲滅するには理に叶っており何より味方を見捨てないという新共和国の弱点に漬け込んだ見事な策略だ。

 

確かにインペリアル級が友軍の基地を攻撃している様は絶望的であり憎悪を引き出させるだろう。

 

それにヴァルゼゲルト中将の作戦ならこちらの作戦も下手に変更する必要はない。

 

ジークハルトが作り出す陽動をさらに陽動に使い艦隊ごと新共和国軍を殲滅する。

 

複雑な戦いになりそうだが現状で一番良い策だろう。

 

「よければ奇襲で壊滅させそれでも無理なら挟み撃ちで完全に殲滅する。それで作戦はいつ行われる?」

 

「二日後です。急ぎましょう、早くこの惑星も解放してやりましょう」

 

「ああ、亡き陛下の宝玉ともご対面したいところだしな」

 

「陛下の…?」

 

微かな噂話だがウェイランドには故シーヴ・パルパティーン皇帝の巨大な宝物庫があると言う話だ。

 

真実かどうか帝国軍人でも不明な所だがおそらくそれのことを指しているのだろう。

 

「いやなんでもない…私は少しこう言うオカルトチックな話が好きなのでね。再び帝国に勝利を捧げよう」

 

「はい、亡き皇帝陛下の為にも!」

 

今戦いに乗り出そうとしている友の為にも。

 

彼は心の中でそう付け足した。

 

 

 

 

ゴザンティ級からのウォーカー降下というのは何も珍しい事ではない。

 

艦隊から部隊を展開する時は少なからずゴザンティ級や現在では使用例の少ないATホーラーに運ばれ降下したりする事はよくあった。

 

ジークハルトだってアデルハイン中佐だってよくやっている。

 

だが敵基地の直上から一気に降下する事は前例がほとんどない。

 

何せ敵の砲火に晒されて仕舞えばゴザンティ級やウォーカーが撃破されてしまう可能性が大いにある。

 

AT-ATだって無敵ではない。

 

特に腹部の装甲はコックピットや胴体と比べてさほど高くない。

 

基地のレーザー砲の威力なら腹部の装甲を貫き撃破する事も可能だ。

 

その為基本は基地のギリギリにAT-ATを降下させ前進し基地を制圧するという流れになっている。

 

だが今回は時間がなくそんな悠長に突進していてはジークハルトの言った砲にやられ何も出来ず全滅してしまう。

 

それだけ限られた状況下では多少無茶苦茶な戦術も使わざる負えない。

 

当然勝率を上げる為の細工は既にしてある。

 

だが不安感というものはどうしても払拭出来なかった。

 

「エリートAT-ATか…」

 

「先日のホズニアン・プライム攻撃でストライク1が破損し代理としてこの機体が…」

 

インペリアル級のブリッジの中でアデルハイン中佐と甲板士官のグリッジ中尉がゴザンティ級にドッキングされている黒いAT-ATを眺めていた。

 

中尉の言う通り本来ジークハルトが指揮するストライク1はこないだのホズニアン・プライム戦で敵機の特攻を受けて損傷した。

 

幸い前足一本が大破するだけで済み修復は比較的楽ではあったのだがどうしてもこの戦いまでには直せなかった。

 

その為戦力増強の意味合いも含めて補充としてエリートAT-ATが1機配備されたのだ。

 

通常機よりも装甲や火力が高く何より今まで培ってきたデータから足回りの兵装がだいぶ強化されてる。

 

ホス戦のようなケーブルで転倒させ撃破などはもう不可能だ。

 

と同時に貴重品でありアデルハイン中佐でさえも気の期待を見る事は殆どなかった。

 

「一応指揮官機ですので中佐がご登場していただく事になりますが」

 

「そうだな…私のストライク2はニーゼンエルクに任せよう」

 

「わかりました。パイロットは?」

 

「パイロットは変えなくていい、ありがとう中尉」

 

「中佐とエリートAT-ATの活躍期待してますよ!」

 

グリッジ中尉に見送られながらアデルハイン中佐は新しいストライク1へと向かった。

 

既に整備や弾薬の装填は完了しており数名の技師官が異常はないか外からチェックしていた。

 

隣には元乗機のストライク2が同じようにゴザンティ級にドッキングされている。

 

灰色の装甲を持つストライク2と違ってこのストライク1は誰でもわかるような威圧感を持たせた黒い装甲が印象的だ。

 

実際この黒色は敵に威圧感と恐怖を与える為に塗装されており新共和国軍ではこのウォーカーが戦場の幽霊や化け物の類として語り継がれていた。

 

そんなウォーカーが今から降り注ぐペルタ基地の敵はさぞかし不幸なことだろう。

 

いきなり空に隠れて降り立ったウォーカーに文字通り蹂躙される。

 

しかもこのゴザンティ級には少し工夫がされているので敵はギリギリまでこちらに気づく事はない。

 

気づいた時には死が迫っている。

 

可哀想ではあるが同情はしない。

 

既に敵は同じように仲間の命を奪ったし銀河の秩序を乱した奴らに慈悲を与える必要はない。

 

アカデミーの教官にも歴代の上官達にも同じ事を言われてきた。

 

「中佐、全隊降下準備完了しました!」

 

外でゴザンティ級の艦長達と連絡を取っていたハストフルク中尉が敬礼し報告した。

 

周りの数名の艦長達も同じように敬礼している。

 

ゴザンティ級の艦長は基本尉官や高くても少佐程度。

 

今の彼は名の通り中佐でありこの場の誰よりも階級が高かった。

 

その為敬礼と敬語で迎えられるのは当然の事だった。

 

「降下に備えて全員ウォーカーの中で待機。予定通りに作戦開始だ」

 

「了解」

 

艦長達はそれぞれの持ち場に戻りハストフルク中尉もアデルハイン中佐もそれぞれAT-ATの中へ入った。

 

機体の中には既に攻撃部隊のジャンプトルーパーいてコックピットに向かえばAT-ATパイロット2人が機体の状態をチェックしていた。

 

先に気づいたのはWD-211の方でその後にWD-212が敬礼しコックピットに彼を迎え入れた。

 

「新型機だが操作はどうだ?」

 

一応エリート2人に尋ねてみた。

 

慣れ親しんだ機体ではない為不調子なのかもしれない。

 

そう言った可能性も考慮してだった。

 

「問題ありません、以前のAT-ATより断然性能がいい」

 

「指揮能力も大幅に強化されています」

 

2人とも冷静に機体を見極め完璧に運用出来るという確固たる自信が湧き出ていた。

 

どうやら微かな不安は杞憂だったらしい。

 

なら後は実行に移すのみである。

 

「予定通りスカウト隊のジャマー配置を行い全部隊を展開する。ストライク・スカウトは?」

 

「配置完了です。ご命令でいつでも降下出来ます」

 

「ウェイランド軍の機甲部隊は?」

 

「全隊配備完了です」

 

知ってはいたがウェイランド軍の機甲部隊の動きは中々良い。

 

帝国軍ほどではないがそれに追随出来る程の練度を誇っている。

 

おかげで今回の作戦を遂行する事が出来そうだ。

 

「甲板士官並びにゴザンティキャプテンへ、出撃だ。降下準備に入る」

 

『了解中佐』

 

直後ゴザンティ級を止めていた安全装置が外れ薄い偏向シールドをゴザンティ級数隻が易々と突破した。

 

そうすればもう宇宙空間だ。

 

他の数隻のゴザンティ級はもうそれぞれの位置に待機している。

 

敵のセンサーを考慮すればこれがギリギリの距離だ。

 

これ以上踏み込むと敵のセンサー範囲内に捕まり作戦は失敗してしまう。

 

失敗しなくとも余計な損害を被るだろう。

 

せっかくの奇襲の効力も半減してしまう。

 

まあその心配は後少しすれば消え去るのだが。

 

「中佐、全スカウト部隊からジャマーの設置と一部シールドの破壊に成功したと」

 

ほら来た。

 

流石は第六親衛連隊のスカウト・トルーパー隊である。

 

予定から1秒たりとも遅れていないし早くもなかった。

 

これで最高の舞台が揃った事になる。

 

敵の索敵能力はほぼないに等しくシールドも一部機能していない。

 

今頃殆どの砲塔がジークハルト達のいる山の方へ向いているだろう。

 

何せ敵は山の方にいると思っており軌道上から降下してくるとは予想だにしていないはずだ。

 

制圧を手早く済ませれば強力な敵の放火を浴びずに済む。

 

特にジークハルト達を攻撃したあの重砲。

 

あれの威力を喰らわずに戦いを終える事が出来るのは好都合だ。

 

「ストライク・フォース全隊に命令」

 

これで全てが決まる。

 

この惑星の運命も、ジークハルトの運命も。

 

ならなるべく良い方向に進めなければ。

 

「作戦開始だ」

 

ウォーカーを乗せたゴザンティ級は次々と地上へと降下していった。

 

仇討ちとして地獄を作るために。

 

 

 

-ウェイランド ペルタ基地-

ペルタ基地は陥落した収容所や現在陥落した駐屯地とは違いしっかりとした索敵がなされていた。

 

センサーがあるのにも関わらずサーチライトが照らされ兵士達が目を凝らし周囲を警戒している。

 

その基地内を数名の新共和国将校が通った。

 

護衛の新共和国兵を数名連れており見張りを続ける他の新共和国兵やクーデター兵に多大なる威圧感を与えていった。

 

その様子を見てクーデター兵達は少し愚痴を溢していた。

 

新共和国残党軍とクーデター軍の仲は見かけよりもだいぶ悪い。

 

どうも新共和国軍は残党であるにも関わらず銀河系の防衛軍という肩書きもあってか地方のクーデター軍に対して高圧的であった。

 

無論そうではないものもいるのだが全体的にどこか下に見ている感触は否めなかった。

 

銀河系から民主主義を勝ち取ったという影響なのか完全な腐敗ではないにしても彼らはどこか傲慢だった。

 

高圧的な態度が両者の関係に軋轢を生むのは当然の事であり上層部はともかく現場の特にクーデター軍の指揮官達は協力体制が瓦解するのは時間の問題だと捉えていた。

 

元々新共和国軍、かつての反乱同盟軍自体ならず者や危険人物の寄せ集めである為お世辞にも立派な軍隊とは言えないが。

 

そして彼らはさらに慢心癖にも取り憑かれていた。

 

首都で新共和国が敗北したのはあくまで奇襲と物量差にあると考えた彼らはまだ士気や練度では勝っていると思っていた。

 

あのBV砲の存在も大きかったのであろう。

 

様々な要因が重なり彼らは帝国軍の事を脅威とは思わなくなっていた。

 

むしろ将軍の指揮に従えばいつでも倒せる、我々の勝利はすぐそこだと確信していた。

 

その為多少盲目になり慢心へと繋がった。

 

「敵が動いた。全BV砲を戦闘配置だ」

 

先程の将校がBV砲の砲兵に命令を下した。

 

彼はBV砲専門の砲術長でありパルベン将軍の信頼のおける部下であった。

 

砲術長の命令を聞いた砲兵達は一瞬戸惑った。

 

「よろしいのですか?それではクーデター軍の駐屯地ごと吹っ飛ばす事になりますが」

 

クーデター軍はこのウェイランドにおいて唯一の友軍である。

 

その友軍を攻撃して良いのかという疑問は一兵卒だと抱くことだ。

 

「構わん、駐屯地ごと更地にしてしまえ。既に駐屯地の部隊は壊滅している」

 

「了解」

 

「砲弾は炸裂弾を使え。確実に敵を殲滅するぞ」

 

命令通り砲弾を装填し砲撃目標をセットした。

 

砲塔が徐々に駐屯地の方に回転し狙いを定める。

 

基本的には電子操作だが僅かな調整は当然砲兵達がやる必要があった。

 

「全偏向シールドが一時的に解除されるからその間に砲撃しろ」

 

砲兵達がそれぞれ位置につきタイミングを待った。

 

緊張はしていない。

 

むしろ自らが放つ砲弾が敵を殲滅する事に対して高揚を感じていた。

 

多少サディスト的な面がないと戦場では心の均衡を保てない。

 

何せ人を殺したり殺されたりする場所だ。

 

優しすぎればすぐに壊れてしまう。

 

「…そろそろだな…全員用意しておけ」

 

近くの時計を見て砲術長が指示を出した。

 

すると1人の砲兵が何か異変に気づいた。

 

何か妙な音が聞こえるのだ。

 

その音は次第に大きくなり隣の同僚や将校達も妙な顔を浮かべていた。

 

明らかに何か妙な音がしている。

 

「砲術長…なんの…音でしょうか…」

 

「さあな…っ…!!」

 

砲術長がふと暗闇の空を見上げると違和感の正体に気づき絶句した。

 

どうして今までこれに気づかなかったのか。

 

暗闇に突如姿を表す強大な敵を見て言葉には出さなくとも心で思った。

 

周りの兵達も気付き始めた。

 

目を見開き後退りしようとしている。

 

顔は恐怖に引き攣り先程までの静かなる威勢は無くなっていた。

 

ただ一つ心の中に理解不能という文字を浮かべていただけだった。

 

当然それは基地内の全員がそうだった。

 

兵舎の前で、砲塔の前で、見張り台の前で、そして司令室の中で。

 

全員が理解不能といった表情を浮かべ武装を構えぬまま上空の物体に釘付けになっていた。

 

もちろんその中には絶望も含まれている。

 

様々な感情が渦巻きやがては恐怖へと変わった。

 

本来の職務を忘れてこの場から逃げ出そうとする兵士も何人か現れはじめた。

 

だが最悪は止まる事なく降り落ちた。

 

場所を厭わずその化け物は次々と基地内に降り立ったのだ。

 

轟音が響き兵舎や建物、逃げ遅れた人を潰し数十機以上のそれは宇宙から敵基地に足を踏み入れた。

 

第六親衛連隊のストライク・フォースが降下に成功したのだ。

 

恐怖に固まった兵士達はその様子をただ引き攣った顔で見つめるしかなかった。

 

そんな彼らをAT-AT数台がサーチライトを点灯し暗闇の中でギラリと光るコックピット部分の“目”で見つめた。

 

赤く光る目と眩いライトの光が彼らの恐怖をさらに刺激させた。

 

そして顎の銃口が明らかに赤く滲み始めているのも見えた。

 

瞬間彼らの精神は限界に達した。

 

絶望を浮かべた表情のまま冷や汗を浮かべ対して疲れてないのにヘトヘトの状態で逃げ出す。

 

恐怖で体が硬直しうまく足を動かせないのだ。

 

息も荒くなっており涙まで出始めた。

 

既に遠くでは爆発音や放たれるレーザー砲の音が聞こえた。

 

同時に斃れゆく仲間の悲痛な断末魔も。

 

それは彼らにも同じように降りかかった。

 

チャージされたAT-ATの重レーザー砲が放たれ必死に逃げようとする兵士達を容赦なく吹き飛ばした。

 

最期の瞬間掠れた声で助けを求めたがそれすらレーザー砲の中へ消えていった。

 

高エネルギーの塊が彼らの肉体を文字通り消し去り肉片や血液一滴すら残らず死を与えた。

 

きっと痛みはなかったのだろう。

 

そんなもの感じる前にあの世行きのはずだ。

 

でなければ熱で身体が焼かれる痛みを感じながら死んだ事になる。

 

想像するだけでも震えが止まらない。

 

自分だったらと想像すると恐ろしい。

 

尤もそれに見合うだけの理由があるからこうなっているのだが。

 

AT-ATは止まる事なく逃げたり応戦してくる敵兵を蹴散らしその四本足で大地を踏み荒らした。

 

だが彼らの動きには組織的な動きがあり目的があった。

 

まず優先してターボレーザーや砲塔を狙っている。

 

いくらAT-ATといえどこれらの兵器はある程度の脅威となりうる。

 

使いようによってはダメージを与える事も出来るし後続部隊にも厄介な敵となるだろう。

 

そして次に重火器を持った兵士だ。

 

理由は砲塔群と同じだ。

 

ミサイルランチャーやブラスター砲はあたりどころによっては十分脅威だ。

 

AT-ATはともかく護衛のAT-STなどにも十分ダメージを与えられる。

 

その為にも早めに排除する必要があった。

 

尤もそんな武装を持つ敵兵は少なかったが。

 

そして次に逃げ惑う敵兵とブラスター・ライフルなど雑多な小火器で戦う敵兵。

 

これらの脅威はウォーカーからすれば微塵もないに等しい。

 

踏み潰すだけで即死、両耳のブラスター砲を喰らっても即死、顎の重レーザー砲なんて即死どころか遺体すら残らない。

 

先程の敵兵士達と同じように。

 

連中の持つ武装ではAT-ATになんのダメージも与えられない。

 

凹みや煤すら付かない。

 

それでも敵は敵なので殲滅する必要があった。

 

こうしてペルタ基地は戦禍の火に包まれた。

 

「退却!!退却だ!!」

 

「もうダメだ!ワァ!!」

 

流れ弾を喰らった兵士が背を向けて斃れた。

 

破壊された兵舎や格納庫の瓦礫に隠れながら応戦していた隊長が斃れた兵士の遺体に近寄った。

 

彼の横では必死に退却する歩兵達が通り過ぎていった。

 

「おい!…あぁ…ああ…!!」

 

遺体を揺さぶる隊長だったが大きな足音と特徴的な銃撃音を聞き一歩後退った。

 

建物の路地裏から数十名の歩兵が溢れるように現れた。

 

表情には今すぐ逃げろと言った思いが込められている。

 

言われなくたって隊長は逃げ始めた。

 

次に姿を表したのはあのAT-STなのだから。

 

対歩兵戦ではAT-ATよりもAT-STの方がはるかに脅威となりうる。

 

俊敏で中々に強固なこの機体は見かけに似合わず強力な武装がたくさん備わっている。

 

顎の中型ブラスター砲は一撃で歩兵を絶命させられるし左右の震盪手榴弾ランチャーは数発撃つだけで分隊規模の歩兵を殲滅する事が可能だ。

 

しかも索敵範囲も広く歩兵の奇襲などもほぼ無効化してしまう。

 

これよりも進化したAT-STマークⅢがストライク・フォースでは使用されていたが今回は旧型のAT-STでの出撃となった。

 

旧型と言っても性能は十分であるしこのような基地内での戦闘ではツイン・レーザー砲よりも通常武装の方が効力を発揮する。

 

これも使い分けというやつだ。

 

どちらにせよ歩兵にとっては脅威である事に変わりはない。

 

そしてその力は遺憾無く発揮された。

 

「クッソ!!このバケモノめ!!」

 

「バカ!止まるっガハァッ!!」

 

忠告した兵士がブラスター砲の一撃を喰らい絶命した。

 

半狂乱状態の兵士は効きもしないブラスター・ライフルを放ちAT-STを攻撃した。

 

当然装甲は打ち破れずAT-STには無視されていった。

 

その間にもAT-ST全てのブラスター砲が逃げる味方を殺していった。

 

1人また1人と体に弾痕を残し死んでいった。

 

絶望で曇った表情に飛び散った血液が掛かり詰めた地面に転がっている。

 

兵士はまだAT-STの足元近くで戦っていた。

 

どこへ銃弾を放ってもAT-STの装甲に傷一つ付かない。

 

その事がどんどん焦りへと繋がり悲劇は起きた。

 

なんとAT-STの足元で足を挫き転んでしまったのだ。

 

当然AT-STのパイロット達はそんな事に気づいていいない。

 

全体から見れば小さいAT-STの足が兵士の目の前に近づいた。

 

この機体の重量で踏まれてはどうなるか誰だって分かる。

 

先ほどまでの威勢はどこかへ消え去り絶望にただ恐怖する声が響いた。

 

「クソッ!!クソっ!!あっ!!あぁあ!!わぁああああ!!」

 

バキバキという骨の砕ける音と、ブチブチという臓器や肉体が潰れる音が周囲に響き渡った。

 

断末魔の叫びは消え去り代わりに口から血を吹き出し踏み付けられた草のような格好になっている。

 

思いっきり踏み付けられたせいで胴体と下半身は千切れ別々に横たわっていた。

 

その様子を全く気にしないAT-STは残りの敵兵を掃討する為に進み続けた。

 

AT-STから逃げていた数名の兵士も退却を促していた隊長もとっくの昔に全員死んでいた。

 

一個中隊を数分で殲滅させられるこのスカウト・ウォーカーだ。

 

歩兵数名など1分も掛からずに殲滅してしまった。

 

近くを見渡せば他のウォーカーも同じように戦闘している。

 

数名の兵士達が迫撃砲をAT-ATに向けていた。

 

「撃てぇ!!」

 

指揮官の命令で砲弾が発射され一発だけ外したが残りの全弾がAT-ATの装甲に命中した。

 

兵士達は固唾を飲んで見守っていた。

 

直撃した部分から火薬の煙が晴れその装甲が浮き彫りになった。

 

そして兵士達は絶望した。

 

直撃した部分には傷一つ付いていない。

 

「次弾装填急げ!!一点集中攻撃で!!」

 

部隊長が言い終える前に反撃として強力な一撃を喰らい迫撃砲ごと吹き飛ばされた。

 

敵の殲滅を確認するとこのAT-ATは敵の最終防衛線に目を付けた。

 

迫撃砲や重砲が配備されバリケードのようなものも徐々に展開され始めていた。

 

車長が他のAT-ATや護衛のAT-STと連携を図り簡易的だがヴィアーズ隊形に似たものを作り出す。

 

「基地にある大砲全部もってこい!!砲弾もだ!!どんどん撃ちまくれ!!」

 

焦りながらも新共和国軍の隊長が指示を出している。

 

ウェイランド軍の装備に慣れていないのか若干砲撃までの動作が遅かった。

 

「撃て!!」

 

ドンドンと轟音を立てながら砲が強力な一撃を放った。

 

しかし数発がAT-ATに当たらずやはり当たったとしても目立った損傷はなかった。

 

それよりもあれだけの砲弾を撃ち込んだのに敵機を1機も撃破出来ずほとんど外しているというのが由々しき事態だ。

 

隊長が部下達を叱りあげる。

 

「ちゃんと狙え!!友軍に誤射したらどうするんだ!!」

 

「しかし隊長!コイツはクローン戦争以前のモデルでまともに的を狙える制度なんてありませんよ!!」

 

他の兵器もどれも新共和国軍からすれば旧式で威力不足だ。

 

それでも今ここにある武装の中では最も火力が高い。

 

そこで隊長はある事を思い出した。

 

「BV砲はどうした!!あれならスノーウォーカーの装甲だって…」

 

「応答がありません!それにこの狭い基地内じゃあれの真価は発揮されませんよ!!」

 

「なんて事だ…とっとにかく次の一撃をどんどん撃て…!!撃って撃って撃ちまくれ!!」

 

焦りのせいなのか隊長の指示は雑なものになっていた。

 

再び砲弾が放たれたが結果は同じでまるで効果は薄かった。

 

それどころかウォーカー部隊の進撃の勢いは止まる事はなかった。

 

逆に顎の重レーザー砲が残りに少ない砲塔を破壊していく。

 

到底勝機など見出せなかった。

 

そして遂に兵士達は戦う事を諦めた。

 

「もうダメだ…逃げろ…逃げろ!!」

 

隊長の隣にいた1人の砲兵が武器を捨てて突然逃げ出した。

 

当然止めないわけにはいかない。

 

「おっおい待て!!逃げるな!!」

 

隊長は大慌てで静止しようとするがもう遅かった。

 

逆にそれに続こうとする者が続出した。

 

「そうだ…もう終わりだ!!」

 

「逃げろ…撤退だ!」

 

「お終いだ…」

 

1人また1人と兵達が離れていく。

 

隊長はただ大声を上げて止めるしかなかった。

 

それだけ絶望感がそこにはあった。

 

「もうダメです!防衛戦は!突破されました!」

 

「おっおい!」

 

遂には彼の副官までもが逃亡を始めた。

 

もうその場には隊長1人だけだった。

 

1人の孤独はそれは計り知れないものだ。

 

どんなに屈強な精神を持とうとその孤独に打ち勝つのは難しかった。

 

隊長は負けたのだ。

 

その恐怖に。

 

「撤退!!退却!退却だ!!」

 

詭弁のように撤退や退却の二文字を言いふらしながら情けなく涙を流し必死に走る。

 

だが天はそれを許さなかった。

 

なんと彼らの目の前でバリケードが完全に封鎖されてしまったのだ。

 

「おい!!開けてくれ!まだ味方がいる!!頼む開けてくれ!」

 

走りながら必死に隊長は扉の向こうへ語り掛けた。

 

無論その程度の言葉でバリケードは開かない。

 

彼らは取り残されてしまった。

 

「敵が!敵が来てるんだぞ!!」

 

今まで誰にも見せた事のない表情を浮かべながら隊長は走った。

 

そのせいで周りが見えていなかったのだ。

 

その敵が、AT-ATがどうなっていたかを。

 

何故逃げ惑う兵達をウォーカーがほとんど攻撃しないのか。

 

それはこのバリケードを最大火力で破る為だった。

 

必死に走る隊長の直上を赤いレーザー弾が横切った。

 

たまたま上を見上げていた隊長にははっきりとその閃光が目に映った。

 

その光弾が次にどこへ飛んでいくのかもよく理解していた。

 

最大火力の重レーザー砲はバリケードを完全に打ち壊しその破片を散らばらせた。

 

当然逃げる兵士達の方にもその破片は十分人を殺せる勢いで飛んで来た。

 

隊長が最後に見た景色はその破片が目の前にゆっくりと迫ってくるそんな景色だった。

 

 

 

「奇襲は成功!急いで部隊を…!」

 

突如アデルハイン中佐のストライク1を謎の大きな振動が襲った。

 

おかげで命令を完全に言い切れなかった。

 

恐らく装甲のどこかにダメージが入ったはずだ。

 

出なければこれほどの衝撃は出ない。

 

エリートAT-ATにここまでの衝撃を与えられる兵器はほとんどない。

 

あるとすればただ一つ。

 

「新型の重砲か…!」

 

中佐は軽く歯噛みした。

 

未だに新型の重砲の位置が判っていないが彼にとって少し気がかりであった。

 

降下時に踏み潰された事に期待を賭けていたがやはり存在していた。

 

確認すると僅かな砲兵達がこちらに砲身を向け次弾を装填しようとしていた。

 

ジークハルトの推測に間違いはなかった。

 

通常のAT-ATの装甲だったら今頃装甲を撃ち抜かれ大ダメージを喰らっていただろう。

 

エリートAT-ATに助けられたようなものだ。

 

それに今ので重砲の位置は割り出せた。

 

ある程度束になって置いてある為破壊は比較的簡単だ。

 

「ミサイルを敵銃砲群へ、ここで脅威を片付ける!」

 

「了解」

 

パオロットがミサイルを調整し確実に敵の銃砲を破壊出来るようにセットした。

 

その間にも敵の重砲はストライク1を砲撃する。

 

再び機体にダメージを喰らった。

 

AT-ATの速度じゃあの砲弾は回避する事が出来ない。

 

流石にこれ以上喰らえば無事では済まされない。

 

敵が砲を置いて逃げてくれてよかった。

 

あれが全部正常に稼働していたらAT-AT部隊とは言え壊滅的な被害を受けていただろう。

 

無論そうさせない為に奇襲を敢行したのだが。

 

「ミサイル発射」

 

冷たさを感じる声でパイロット達がミサイルを放った。

 

エリートAT-ATから放たれた数発のミサイルが宙に放たれ大きく楕円を描いた。

 

砲兵達は次の砲弾を装填しようとしていた為回避したり防ぐ事は出来そうになかった。

 

今装填された砲弾が散弾であったなら少しは防げたかもしれないが今装填された砲弾ではどうしようもない。

 

ミサイルは重砲とその周辺に着弾し爆発を引き起こし兵士共々吹き飛ばした。

 

威力に耐えられず破壊され地面に崩れ落ちた砲身が別の重砲に直撃し砲身をへし折った。

 

これでひとまず脅威は去った。

 

だが完全に脅威がなくなった訳ではない。

 

ジークハルトの報告から推察するにこんなのは僅かな物だ。

 

恐らく他にも存在していはずだ。

 

とはいえAT-ATのような図体では捜索に些か不便をきたす。

 

「ジャンプ隊で残りの重砲を全て破壊する!脅威を速やかに排除するんだ」

 

『了解中佐!』

 

ストライク7から返答が届いた。

 

各AT-ATのハッチから一斉にジャンプトルーパー隊が出撃した。

 

普通はAT-ATを一旦下ろしたりして部隊を展開させるのだが今回は時間もない為通常の状態で部隊を展開した。

 

元よりジャンプトルーパー隊の技能もあってか部隊の展開はとても素早く行われた。

 

収容所の時と同じように空を舞う兵士達が次々と建物を破壊し敵兵を打ち倒していった。

 

「全隊、このまま本部を攻撃する!ウェイランド軍と地上部隊は?」

 

「後3分後に到着します」

 

「全部隊で基地を封鎖し本部に突入させろ。残りの戦力は敵部隊の掃討に使え!」

 

まだ戦闘が始まって1時間も経っていないが既に帝国側の勝利は確定したようなものだ。

 

燃え盛る基地を見つめながらアデルハイン中佐は緩まぬ意志で敵を睨みつけた。

 

 

 

司令室がある本部もAT-ATやジャンプトルーパーの攻撃を受け被害を被っていた。

 

外側の通路は砲撃で穴が開き、瓦礫が散乱している。

 

無造作に倒れる兵士を横目に生き残った残りの兵達は必死に応戦を繰り返していた。

 

その間にも司令室では基地内や基地外の部隊に指示を飛ばしている。

 

ただこの状況に焦っているのは彼らも同じだ。

 

「本部を封鎖し地下の退路を守れ!今すぐ友軍艦隊に援軍を要請するんだ!」

 

「だが将軍、そんな事しては大攻勢の為の戦力が…!」

 

ブラウンス中将はパルベン将軍に対してかなり強めの声で咎めた。

 

新共和国艦隊は彼らにとって新型のBV砲と並んで最後の希望だった。

 

本来であれば予定通りBV砲を使って敵基地を潰し弱った所を艦隊と共に奇襲を仕掛け首都を奪取する算段だった。

 

ウェイランド軍の艦隊はお世辞にも強くない。

 

その為にはどうしても新共和国軍の豊かな艦隊戦力が豊富だった。

 

軌道上を封鎖し完全に退路を絶った所で新共和国地上軍とクーデター軍の全戦力を投入する。

 

これがパルベン将軍が持ち込んだ案であり息詰まっていたクーデター軍唯一の希望だった。

 

その為に多少の損害にも目を瞑ってきた。

 

全ては大義を叶える為だと信じて。

 

だがその希望は今立たれようとしている。

 

希望を持ち込んだ新共和国の手によって。

 

「今艦隊の支援がなければ我々は全滅する!司令部だけでも生き延びねばならんのだ!」

 

「ならせめて全地上部隊の回収を…!」

 

「時間があるならな、その為にも急いで脱出準備だ!」

 

パルベン将軍が意見を曲げる事はない。

 

今の僅かな会話や言葉の強さでブラウンス中将は確信した。

 

帝国の圧政から肩を並べて戦う仲間のはずだったのに今では全く他人に見える。

 

他人に自分達は仲間の殺生権を握らせていたのかと思うとどうにも不快な気持ちに陥った。

 

「将軍!!上空に敵スターファイターが!!」

 

「四方全ての敵機甲部隊が基地内に侵入!歩兵部隊を展開し本部に突入しようとしています!」

 

士官達の報告はどれも絶望的だ。

 

地上も空もその先(ルビ 宇宙)敵だらけ。

 

もう逃げ道などほとんどなかった。

 

「ここまでか…地下通路の退路を死守し我々が脱出するまでの時間を稼ぐのだ。行こう、再びこの地に返り咲く為にも今は耐えるのだ」

 

ブラウンス中将の力ではこの決定は覆せない。

 

今は逃げるしかなかった。

 

仲間を、故郷を見捨てでも。

 

「絶対死守命令を出した後全員撤退だ!急げよ!」

 

パルベン将軍とブラウンス中将は僅かな護衛を連れて司令室を後にした。

 

エレベーターはいつ緊急停止するかわからないので多少時間は掛かりはするものの非常用階段を使う事にした。

 

それでも一行は普通よりもかなり早い速度で移動していた。

 

道中建物全体が揺れ壁や天井が崩落しかけたがそんなこと気にしている余裕はなかった。

 

白いライトが点灯している階段を駆け抜け遂には地下通路まで辿り着いた。

 

通路には数名の新共和国兵とクーデター軍、新共和国軍の将校がいた。

 

顔色はあまりいいとは言えず聞き迫った表情のまままだ見ぬ敵を警戒していた。

 

彼らのすぐ後ろには数台の大型スピーダーが停まっていた。

 

小さなブラスター砲が一門だけのこのスピーダーが彼らの残された脱出手段だった。

 

「お急ぎください…いつ敵が来るかわかりません…!」

 

兵士に急かされ2人と将校達がスピーダーに乗り込んだ。

 

周囲を警戒する余裕もなくスピーダーは一斉に走り出した。

 

恐ろしいほどのスピードでスピーダーは進んでいる。

 

地下の車両用通路の移動したのだろうか。

 

無機質な壁に僅かに設置されているオレンジ色のライトだけが唯一の灯りだ。

 

スピーダー内もほとんど灯りがなく自分の暗闇に慣れてきた目だけが頼りだった。

 

耳を澄ませば何か呪詛のような声が聞こえてくる。

 

パルベン将軍の声だ。

 

いい歳をした大男が少し皺が寄った両手を顔に押さえて小言を垂れながら震えている。

 

「何故だ…何故いつも帝国に勝てない…」

 

中将の目線から見てもその光景は気味が悪かった。

 

動向は完全に開いておりハイライトはほとんどなく冷や汗がダラダラ出ていた。

 

あの冷静でこちらが冷や汗が出るほど冷酷な将軍は影も形もなかった。

 

ブラウンス中将は今更になって後悔する。

 

何もクーデターや自分の想いに後悔したわけではない。

 

帝国の圧政から市民を守るのは当然の義務であるし新共和国が敗北したからといって帝国に再び頭を垂れようとするウェイランド政府が許せなかった。

 

その為にこうして決起した事に後悔はない。

 

たとえどんな結果になろうと悔いは微塵もなかった。

 

ただ-

 

 

ただ、手を組む相手を間違えた…そのことが唯一の後悔だった。

 

新共和国はともかく新共和国軍に期待し過ぎた。

 

彼らもこのウェイランド軍と同じく寄せ集めの烏合の衆に過ぎなかったのだ。

 

帝国を倒したというのも所詮は過去の犠牲があってこそだ。

 

今の彼らは今や栄光に溺れる身分知らずの連中に過ぎない。

 

きっと第一線で戦った兵士などほとんどいないのだろう。

 

そんな彼らと共に戦ったって帝国に勝てるはずなかったのだ。

 

そこが唯一の失点だった。

 

多分このまま艦隊と共に逃亡し再起を図ったところでもう勝ち目はないだろう。

 

今のブラウンス中将は完全に諦めムードだった。

 

「もう少しで地上に到達します」

 

「急げ…そのまま近くの駐屯地まで向かうんだ…」

 

「了解…」

 

ドライバーの重たい声がスピーダー内に響いた。

 

数台のスピーダーはよりスピードを増し一気に通路を駆け抜け外に出た。

 

 

はずだった。

 

 

目の前を駆け抜けたスピーダーが突如爆発を起こした。

 

破片が散らばりいくつか小さなものが窓ガラスに衝突した。

 

これがオープンタイプのスピーダーだったら少なからず負傷者が出てたことだろう。

 

続け様に放たれた赤いレーザーが今度は次々と後続のスピーダーを破壊していく。

 

パルベン将軍は俯いたままだったがブラウンス中将は後ろを見つめていた。

 

破壊されるスピーダーの中には顔も知った同じ大義を抱いた同志たちがいた。

 

何故かこの時のブラウンス中将には悲しさも怒りも湧き上がらなかった。

 

突然スピーダーが大きく旋回し車内が大きく揺れ動いても何も感じなかった。

 

ただここで死ぬんだという事実が深く身に染みていた。

 

「ああ!!わあああ!!」

 

ドライバーが絶叫し直後スピーダーと何かが激突した。

 

スピーダーは大きく潰れぐしゃぐしゃになった。

 

小爆発も起きブラウンス中将達も巻き込まれてしまった。

 

彼はスピーダーから投げ出された。

 

最期の瞬間に見えたのは強靭なAT-ATの足で、最期に思った事は仲間への謝罪の言葉だった。

 

 

 

「…うぅ…」

 

何かが燃える音と自分が地を這う音だけが聞こえた。

 

AT-ATの足にスピーダーが激突し乗っていた全員が潰されるか爆発に巻き込まれるか外に飛ばされるかのどれかだった。

 

つまり残された道は死だ。

 

だが彼だけは奇跡的に生き残った。

 

負傷しながらも意識があり立ち上がる力も残っている。

 

パルベン将軍は偶々スピーダーから大きく飛ばされ奇跡的に一命を取り留めたのだ。

 

頭からは血が流れ意識もどこかぼやけるし体はあちこち痛いがそれ以外に異常はなかった。

 

「…急いで脱出を…っ…!!」

 

一気にパルベン将軍の表情が引き攣った。

 

息が荒くなり手足が震える。

 

急に立ち上がる力がどこかへ抜けてしまった。

 

急に過去ので季語をと思い出した。

 

初めて帝国に叛逆した日の事を。

 

まだ地方防衛軍の佐官クラスの指揮官だった彼は砲兵部隊を率いて帝国軍のウォーカー部隊を待ち伏せした。

 

まだとても若く不可能はないと思い込んでいた彼はその時現実を打ち付けられた。

 

待ち伏せたウォーカー部隊の恐ろしさを彼は分かってしまったのだ。

 

いくら砲を叩き込もうとなんのダメージもなく進み続けるあの無敵の軍団を。

 

反撃され彼は仲間を大勢失い自身すら死の恐怖をこれまでにないほど身近に感じながら這いつくばって逃げた。

 

初めてだ。

 

この世に勝てない相手がいるなんて。

 

それでも諦めなかった。

 

恐怖に耐え作戦を考えそしてやがては勝利を掴んだ。

 

初めてウォーカー部隊を打ち破ったのだ。

 

あの時の勝利は今でも覚えている。

 

初めてウォーカー部隊が自分たちの前に屈したのだ。

 

気分は爽快で勝利の喜びを噛み締めていた。

 

将軍となった今でもあの時のことは覚えている。

 

やはり勝てない相手など存在しないのだと。

 

それは今でも変わらなかった。

 

変わらなかったはずだが彼の前には今こうして過去からの恐怖がやってきた。

 

頑丈な装甲に冷酷な赤い一本の瞳がこちらを見つめている。

 

ああ、死ぬのか。

 

ふと周りを見つめると彼の近くにブラスター・ピストルが一丁落ちていた。

 

誰のかはもうわからない。

 

自然とパルベン将軍はブラスター・ピストルに手を伸ばしていた。

 

何故だかは分からない。

 

でももうどうでも良かった。

 

せめて最期に一矢報いれるのなら。

 

ピストルを構え頑丈なコックピット目掛けて狙いを定める。

 

パルベン将軍はここで終わりだがきっとその次を行く者達がいる。

 

昔自分が仲間の屍を飛び越え戦いに出向いた時と同じように。

 

その為の最期の抵抗だ。

 

完全に折れてはいなかった彼の心が今闘志を露わにしていた。

 

「しん…共和…国の……力を…」

 

震える腕を抑えながら引き金を引いた。

 

だがその瞬間に見えたのはAT-ATの両耳から放たれたレーザー砲だった。

 

パルベン将軍は最期の一矢を見届ける事なく死を迎えた。

 

 

 

-ウェイランド 軌道上-

宇宙では一足遅くクーデター軍や新共和国軍に救援が訪れた。

 

MC80が三隻、ネビュロンB六隻、CR90八隻に加えて地上への救援用のGR-75中型輸送船が七隻。

 

どの艦も真っ直ぐウェイランドに向かって進んでいる。

 

センサーに敵艦の姿はなくとても静かな宇宙(うみ)だった。

 

既に軌道上にはインペリアル級の影は見当たらず作戦は終了した後だった。

 

遅かったかと艦長達が歯噛みしながらも全巻最大船速で大気圏に降下しようとしていた。

 

帝国軍のウォーカー部隊と言えど今の新共和国艦隊に勝てるはずがない。

 

敗北し無様な残存兵力となった今もだ。

 

だがこの艦隊は地上に急ぐ余り気付けていなかった。

 

何故センサーに何も映らないのか。

 

どうやって敵が地上に降下出来たのか。

 

敵艦隊はどこへ行ったのかと。

 

味方を助けると盲目になり周りがよく見えずにいた。

 

その結果釣られてしまったのだ。

 

宿敵の宇宙艦隊に。

 

進み続ける新共和国艦隊の背後を黄緑色のレーザーが横切り数十発以上が新共和国艦船に直撃し爆発した。

 

シールドを展開する暇もなくいくつかのエンジンがレーザーによって破壊された。

 

当たりどころが悪く航行不能に陥ってしまった艦もいくつかあった。

 

そんな中でもこの攻撃は降り止まない。

 

偏向シールドが展開されなんとか防げるようになってきたがそれでも耐えきれず轟沈する僚艦がブリッジから見えた。

 

「バカな魚どもが網に掛かりやがった!全艦、このまま砲撃し敵艦隊を殲滅する!」

 

アダプテーションのブリッジの中でヴェルゼゲルト中将は興奮気味に命令を出した。

 

彼は戦闘時になると少し性格が変わる。

 

新兵や新任の士官ならともかく長い間彼と共に戦ってきた士官達からすれば慣れた光景だった。

 

それに誰がどう見てもこの状況は圧倒的に帝国艦隊側の有利だ。

 

背後からの奇襲に成功し敵に手痛い一撃を喰らわせてやった。

 

しかもエンジンが大きく損傷し艦隊が急速反転することが不可能になっている。

 

敵は大規模な反撃が出来なくなった。

 

砲塔がいくつか回転し虚空に向かって砲撃するがほとんど意味を成さない。

 

それにあんな攻撃、当たっても大した事はない。

 

一方こちらの最大火力のターボレーザー砲はMC80のような大型艦船はともかくコルベットやフリゲートのシールドなど用意で突破出来る。

 

完全に帝国艦隊の独壇場だ。

 

それでも新共和国艦隊は必死に地上へ逃れようとしている。

 

応戦しつつ残りのエネルギー全てをシールドとエンジンに回しなんとか進もうとしていた。

 

当然帝国艦隊も逃すはずがない。

 

より火力を一点に集中し敵艦のシールドを打ち破る。

 

間髪入れず打ち破られたシールドの先に黄緑色の光弾が叩き込まれた。

 

爆発の光が宇宙に灯されいくつかの破片を散らばしながら艦は逃れようと前に進んだ。

 

だがどの艦も逃げてばかりではなかった。

 

MC80一隻と数隻のCR90が突如反転する。

 

当然敵の目の前で反転するなど狙ってくださいと言っているようなものだ。

 

既に反転しきれず何隻かのCR90が轟沈している。

 

そして恐らくそれが彼らの狙いだった。

 

反転した艦隊の目的は献身的な護衛。

 

自らを盾として他の友軍艦隊を地上に直行させるつもりだろう。

 

その勇気は賞賛に値するが少しばかり厄介な事になった。

 

このまま反転する敵を攻撃し続ければ地上に向かう艦隊を逃す事になる。

 

かと言って反転する敵を無視すれば完全に反転され逆に反撃される恐れもあった。

 

しかも相手は死を覚悟した連中だ。

 

無理に突撃されたらこちらも陣形や艦列が乱れ大きく損耗するだろう。

 

その事はなるべく避けたい。

 

「待機させてある分艦隊を展開し脇腹を砕いてやれ。ここで敵を殲滅する」

 

アデルハイン中佐達を地上に展開したインペリアル級の艦隊は今頃艦隊を発見しこちらに向かっている頃だ。

 

敵艦隊はほとんどの艦が損傷している為これ以上の戦闘や奇襲には耐えられないはずだ。

 

船の前にきっと船員達の心が折れてしまうだろう。

 

まあどっちにしろ敵艦隊は崩壊する。

 

すると幕僚のミルニスク少佐が進言してきた。

 

「敵艦を拿捕しなくてよろしいのですか?潜伏中の他の新共和国軍を炙り出す可能性がありますが」

 

銀河帝国の士官らしいセリフだ。

 

次の敵に備えて必要もない捕虜を取っておく。

 

実際は必要は必要なのだがどんな場合でもこのセリフを言ってくる為流石に鬱陶しくなる。

 

何せ彼らは常に帝国には余裕がありいつでも敵を倒せると思い込んでいる。

 

その為すぐ捕虜を取り尋問を行いたがる癖があるのだ。

 

正直帝国の悪癖と言ってもいいだろう。

 

その結果敵に付け入る隙を与え肝心の敵を逃してしまう事すらあるのだから。

 

ヴェルゼゲルト中将はその事をよく心得ていた為逆にミルニスク少佐の意見がとても非現実的なものに思えてしまった。

 

敵は殺せるうちに殺す。

 

たとえそれが小さなコルベット一隻だったとしても。

 

その一隻に負ける可能性だって完全にないわけではないのだ。

 

可能性があるうちは油断出来ない。

 

「捕虜を取る必要はない。全艦この場で破壊せよ」

 

「いやしかし…」

 

「これは艦隊を預かる私の判断だ。それに…邪魔な虫がいたんじゃ彼らが財宝とご対面する時厄介だからな」

 

ヴェルゼゲルト中将は皮肉を浮かべ背後に控えている親衛隊保安局員数名を見つめた。

 

一方ミルスニク少佐は意味不明だという感じだった。

 

保安局員を見つめはするもののヴェルゼゲルト中将は決して目を合わせようとしない。

 

何が督戦隊だ。

 

言葉というのは本当に都合がいい。

 

外人部隊を見張るつもりなど一切ない。

 

最初からこの連中の目的は“皇帝の宝物庫”だ。

 

一体何をするつもりかは知らんが薄気味の悪い連中だと中将は思った。

 

あまつさえ帝国の最高指導者たる亡き皇帝陛下の宝物庫を漁ろうとするなどとんでもない連中だ。

 

しかもそれが身内の人間だというのだから余計苛立ちを覚える。

 

まるで敬意というものがないように見えた。

 

だが保安局のやる事などヴェルゼゲルト中将が態々首を突っ込む事ではない。

 

面倒事に巻き込まれるのは大嫌いだ。

 

「中将、分艦隊の攻撃に成功しました。敵艦隊、崩壊していきます」

 

悶々とした表情を浮かべるヴェルゼゲルト中将に再び良いニュースが飛び込んで来た。

 

モニターにもその様子が映され抵抗虚しく撃沈していく新共和国艦隊の姿があった。

 

得意のスターファイター隊も展開出来ず無様に蹂躙されている。

 

これで快感を覚えるほど中将は碌でもない人間ではないが少なからずやり遂げたという安堵感はあった。

 

反転し盾となったMC80とCR90コルベットももう撃沈間近だ。

 

残りの敵艦もインペリアルⅡ級の豊かな八連ターボレーザー砲により半数近くが撃沈している。

 

恐ろしいほど短時間で勝利は確定した。

 

これこそが本来の帝国艦隊の力だ。

 

年月が経とうとも、敗北が降り掛かろうとも、帝国艦隊は決して衰えない。

 

「敵艦隊を包囲し殲滅しろ、最後の一手まで手を抜くなよ!」

 

余裕に満ちた表情で中将は命令を出した。

 

新共和国艦隊が全滅したのはこれからわずか18分後の事であった。

 

 

 

 

-ウェイランド 旧クーデター軍駐屯地-

ペルタ基地での勝利と新共和国艦隊の全滅は陥落した駐屯地にもすぐさま届いた。

 

何せ帝国軍の地上部隊最高司令官は今この駐屯地にいるのだから。

 

あの後司令部が全て爆破され敵は完全に指揮系統を失い混乱状態に陥った。

 

一方でウェイランド軍の包囲は完全とは言えないが効力を発揮しクーデター軍を完全に駐屯地内に押し込めた。

 

結果駐屯地内の兵力の半数が撃破され残りの半数は完全に降伏した。

 

彼らは勝てたのだ。

 

無事ではないにしても勝利を得た。

 

死を無駄にしなかった。

 

駐屯地内は現在、ウェイランド軍と親衛隊の支配下にあり救援に来る可能性のある敵を警戒していた。

 

「そうか…勝ったか…」

 

「ひとまずは安泰…で良いのか?」

 

『ああ、司令部は完全に陥落して脱出しようとした指揮官達も全員死亡した。軌道上の艦隊も全滅だそうだ。もう再起不能もいい所だろう』

 

ホログラム越しからアデルハイン中佐は2人に報告した。

 

ジークハルトとハイネクロイツ中佐は顔を見合わせた。

 

この状況をどう見るかと。

 

ジークハルトは少し意識を集中させイメージを練った。

 

簡易的なものだが答えを導き出すのは十分だった。

 

「地上に残るクーデター軍が壊滅…もしくは降伏するまでは安心出来ない。ヘルデットとミーストファイトの隊を展開し防衛線を確立しろ」

 

『すでに降伏勧告は促してある。降伏するのも時間の問題だと思うぞ?』

 

「だとしても油断は出来ない。この戦いはまだ完全に終わったわけじゃないんだ」

 

アデルハイン中佐とハイネクロイツ中佐は互いに目を合わせ苦笑を浮かべていた。

 

ジークハルトの用心深さや先の先まで読むのは一流だと言っていいだろう。

 

だからこそ今まで敗北が少なかったのだが。

 

しかしここまで来ると苦笑を禁じ得ない。

 

『まあ展開するなら確かにその2人の部隊だな…何?ああ…わかった』

 

アデルハイン中佐は何か報告を受けたのか頷きながら了承した。

 

すると2人に、特にジークハルトに向けドヤ顔のような笑みを浮かべ話し始めた。

 

悪い話なのは間違いなさそうだ。

 

『なんでもクーデター軍は今さっき降伏したそうだ。完全に頼みの綱を失ったんだと。これでもう戦いは完全に終わったな』

 

ちょっとした冗談を含みながら2人に報告された事を話した。

 

「そうらしいな」

 

ジークハルトもこれには苦笑いだ。

 

彼の表情には戦闘が始まって以来久しぶりの笑みが映っていた。

 

 

 

 

-ウェイランド ???-

クーデター軍の降伏から2時間が経過した。

 

各駐屯地にはウェイランド軍や帝国軍が派遣され武装解除の真っ最中だ。

 

捕虜を乗せたゴザンティ級やセンチネル級が艦隊と地上を行ったり来たりしている。

 

その中で1機のラムダ級と2機のセンチネル級が妙な方向へと進んだ。

 

向かうべき駐屯地とは全く別の方向へと護衛機も付けずに最大速度で進んでいったのだ。

 

あの先にはタンティス山と呼ばれる山々しかないはずだ。

 

それなのにラムダ級とセンチネル級は迷うことなくそのタンティス山へ直行した。

 

3機の船は手頃な着陸出来る場所を見つけるとなるべく近くに停泊した。

 

ラムダ級のハッチが開き数名の保安局員が姿を表す。

 

センチネル級からは同じく保安局将校とストームトルーパーが大勢姿を表した。

 

その全員が督戦部隊長のツヴァイク少佐の指揮に従っていた。

 

彼の背後には1人黒いローブのような衣服を身に纏った初老の男が立っていた。

 

「第一小隊は周辺警戒、第二小隊は調査隊の護衛だ」

 

「了解」

 

「それで、本当にこの山に我々が目指す宝物庫はあるんだろうな?」

 

ツヴァイク少佐は大きな疑問を後ろの薄気味の悪い男に尋ねた。

 

男はにたっと笑い答えた。

 

「もちろんだとも、無論あるのは宝物庫だけではない。玉座も、知識の海もそこにある」

 

男は急に興奮気味になった。

 

薄気味悪い男が本格敵に気味が悪くなり出した。

 

表情も笑い方も喋り口調もどれもツヴァイク少佐にとっては好ましくないタイプの人間だ。

 

「なら早く導いてくれ。部下も私も時間がない」

 

「勿論だとも、さあこちらだ」

 

男の導きにより一行は奥へ進んだ。

 

思ったより男が進んでいく道は荒れておらずかなりの大人数で歩いても問題はなかった。

 

距離の方も停泊した船からは離れておらず程よい道のりだった。

 

「ここだ」

 

男は立ち止まり指を差した。

 

指の向こうには草木が全く生えていない広い場所と大きな崖が立ちはだかった。

 

よく見ると崖の真ん中に扉のようなものが隠れている。

 

崖とほとんど同じ配色をしている為遠くからだと見えずらかった。

 

しかもまだ夜間の為余計視界は悪くなっている。

 

「あの先に宝物庫があるのか?」

 

ツヴァイク少佐は男に尋ねた。

 

男の息は荒く興奮した面持ちで祈りの言葉を捧げていた。

 

やっぱり気味が悪い。

 

「おい早く答えてくれ。我々も時間に追われている」

 

流石に苛立ってきたのかツヴァイク少佐は少し強めの言葉で急かした。

 

「この先だ、我々が目指す聖地はこの先にある。早速鍵を開けるとしよう」

 

「だ…そうだ、指示通り突入するのは調査隊と第二小隊だけだ」

 

部下達に指示を出しつつ男の後に続く。

 

男は扉の前に立つと何か特殊な装置を取り出し扉のロックを一瞬のうちに解除した。

 

一瞬だけその扉の解除装置に“()()()()”が浮かび上がったのは気のせいだろうか。

 

ともかく気に掛ける暇もない彼らは中へと進んだ。

 

まず男とツヴァイク少佐を含めた21人の調査隊が中へと足を踏み入れた。

 

ライトを照らしていたが彼らが中に入った途端全ての通路に灯が灯された。

 

更に54人のストームトルーパー達がこの宝物庫の中へ入った。

 

「フューリナー上級大将が求めているものはこの奥にある。さあいくぞ」

 

「わかった…トライスロットとハイントクスは私に続け。他は貴重品を確保しろ」

 

「了解」

 

4人は他の調査隊と別れ奥へ進んだ。

 

道中さまざまな貴重品や見慣れない武具、武器があったせいで男の足が何度も止まった。

 

なんでも此処にあるもの全てが数千年前存在したとされている大戦期の遺品らしい。

 

よくは分からないが男にとっては足を止めてしまうほどの名品なのだろう。

 

その度その度にツヴァイク少佐のため息が響いたのは言うまでもないが。

 

そんな長くも短くもない道のりを歩いていくと遂に彼らは目的地に辿り着いた。

 

「これは…」

 

「そうだ、皇帝陛下の玉座…我らの求める全てだ」

 

目の前にはいくつかのモニターと黄金に輝く骨董品、それらに囲まれた一つの玉座があった。

 

ここがウェイランドの皇帝の玉座の間。

 

此処に皇帝が足を踏み入れたかは定かではないがこの玉座は確かに皇帝の為に創られたものだった。

 

そして彼らの目当ては此処に存在していた。

 

「では早速玉座を操作してくれ。操作すれば我らの求める情報が手に入るんだろう?」

 

「そうなのだが…私がやっていいのか…?光栄だ」

 

「ああお前がやれ、玉座を操作する栄光ある仕事だ」

 

ニパニパ笑いながら男は玉座のスイッチをいくつか操作し全てのモニターを映し出した。

 

モニターに映し出された映像は様々だったがそのほとんどが銀河系の星図やハイパースペース・レーンの地図だった。

 

しかも一般的に流通している星図ではない。

 

どれも未知領域やディープ・コアと言った未だ謎が多い場所の星図だった。

 

特に未知領域の星図の方が多く感じられる。

 

「ようやく見つけた…これで帝国艦隊は生まれ変わる…!」

 

ツヴァイク少佐はある一つのモニターを見つめながら笑みを浮かべた。

 

そのモニターに映っている星図はある一つの惑星への航路が記されていた。

 

惑星の名前はオーラベッシュでこう記されていた。

 

ーイラムー

 

かつて存在した騎士達(ジェダイ・オーダー)の聖地であり第三帝国が求める宝の惑星でもあった。

 

 

つづく




これでウェイランドと外人部隊はひとまず区切りですかね〜

しかし最近暑くてドロドロに溶けちまうよ
ここはタトゥイーンかジャクーかよ
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