第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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ホズニアンとシャンドリラが斃れ新共和国軍はバラバラに朽ち果てた今でも戦いは終わりを告げることはなかった。

ヤヴィン4、ウェイランドといった各地で新共和国は戦い続けていた。

なんの為に戦うのか、そんな目的などなく。

しかし帝国は彼らに容赦無く牙を剥いた。

ホロコースト。

裏で蠢く暗黒とまだ見ぬ別の何かを背に忠実な総統の僕達は敵を駆逐する。

それが進むべき道だと信じて。

ジェルマンとジョーレンが旅を続けるように。

ジークハルトもまた連隊と共に戦いを続けるのだった。


北東戦線と抵抗の始まり
年末戦線


-帝国領 惑星タナブ 帝国軍軍事用ステーション-

惑星タナブも元は新共和国領だった。

 

かつてここでは同盟軍の将軍の1人が大胆な作戦で海賊を打ち負かした事で知られている。

 

だが残念な事に新共和国はこの惑星にいくつかのパトロール艦隊しか配備しておらずしかもほとんど他宙域の方までパトロールに向かっていた為タナブに置かれた戦力はないに等しかった。

 

おかげでタナブは再び海賊の被害を受ける事となってしまった。

 

当然パトロール艦隊しか持たないブレンタールⅣの新共和国軍は帝国軍に蹴散らされ帝国の実効支配に置かれた。

 

それはホズニアン・プライム陥落から僅か二日後の出来事であった。

 

僅か数日で帝国軍はタナブまで手を伸ばしたのだ。

 

それから数週間、この惑星はパーレミアン・トレード・ルートと繋がっておりヤヴィンⅣ攻撃の前線司令部として使われていた。

 

ヤヴィンⅣではあの後も一進一退の光芒が繰り広げられていた。

 

実際は帝国軍が優勢で毎回戦力や今後のことも考えて戦略的撤退を繰り返しているだけであって新共和国残党軍は毎回大損害を負いながら追い払っていた。

 

追い払ったかどうかすらも怪しいものだが。

 

それだけ銀河の主権を失った新共和国と勢いを取り戻した帝国とでは差が広がっていた。

 

士気の面でも兵器や艦船の面でも新共和国は劣勢だった。

 

ありとあらゆる新兵器が無効化され、あるいは破壊され逆に帝国軍の新兵器により味方が容赦なく消し炭にされていく。

 

そんな不条理な戦場が長い間続いていた。

 

当然帝国軍にとってはこれほど素晴らしい状況はないだろう。

 

味方の損害を少なく敵の兵力を大幅に削れるのだから願ったり叶ったりだ。

 

だが戦いはもう決着させなければいけない。

 

平和に突き進む為にも。

 

第一次アウター・リム討伐作戦、別名北東戦線の開幕であった。

 

新共和国残党軍の一大拠点であるヤヴィンⅣ、モン・カラそして旧独立星系連合出身の新共和国軍が半ば占領する形で集結したラクサス。

 

奇しくも新共和国軍のほとんどはこの3つの惑星に集まっていた。

 

無論それは単なる奇跡ではない。

 

帝国軍があえてこの惑星に逃げ込むよう仕込んだのだ。

 

新共和国の残党軍が生きていれば軍拡の口実にもなるし場所が分かっていれば敵を探す必要がなくなる。

 

ケルク宙域で新共和国艦隊を逃したのもそのためだった。

 

いつでも殺せるなら今殺す必要はない。

 

弱らせて、極限まで衰退させた所で殲滅すればいい。

 

かつてクローン戦争直後の帝国も同じように分離主義の抵抗勢力と対峙しそれを口実に軍備を拡大していった。

 

結果帝国軍はわずか数年で格段に進歩した。

 

敵まで利用し利益を得る。

 

帝国の、と言うより皇帝パルパティーンの十八番だろう。

 

そして現在の第三帝国は強者の余裕か、はたまた油断なのかは分からないが同じ事が出来るという確固たる自信があった。

 

既にクワット社やサイナー社、ブラスティック・インダストリーズ社やコレリアン・エンジニアリング社などに大量の兵器や艦船を発注している。

 

僅か数ヶ月で戦力は45%も増加するという予測だった。

 

親衛隊も徴兵制の制度を緩め多くの帝国市民を兵として教育していた。

 

当然作戦の方も抜かりはなかった。

 

帝国軍の艦隊や地上軍部隊がタナブに集結し徐々に新共和国領を包囲する準備をしていた。

 

作戦参加者の中にはジークハルトと彼の第六親衛連隊の姿もあった。

 

ウェイランドから大急ぎで向かった彼らは束の間の休息を取っていた。

 

特に連隊の幹部達はステーションのカフェテリアで珍しくスイーツを口にしていた。

 

大の大人が、しかも親衛隊の軍服を着た英雄とも呼ばれている男達がだ。

 

側から見れば随分可愛らしい光景だ。

 

「そういえばハイネクロイツ中佐は?」

 

口にクリームをつけたヴァリンヘルト上級中尉が他の将校に尋ねた。

 

ここにはジークハルトとアデルハイン中佐、ヴァリンヘルト中尉に連隊所属の大隊長であるギルク・ゼルフェルト少佐がいた。

 

「あいつは『疲れたから寝る』だって。どっかの連隊長が酷使し過ぎたせいだろうな」

 

アデルハイン中佐は皮肉混じりにジークハルトの方に目を寄せた。

 

彼はカフを飲みながら苦笑を浮かべていた。

 

実際かなり無茶をさせたと彼自身にも自覚はあった。

 

後で何か埋め合わせをしてやらんとなとカフの匂いを楽しみながら考えていた。

 

「まあなんか奢ってやるさ、遠からず軍の方からも勲章くらいはくるだろうし」

 

「宇宙軍のパイロットが地上軍から勲章をもらうんですか?変な感じっすね」

 

「まあ、そうなるな」

 

ヴァリンヘルト中尉の腑抜けた声を出しながらケーキを一口入れた。

 

他のメンバーもケーキやパフェを食べながらカシウス・ティーやカフを飲んでいた。

 

気苦労や肉体的疲労の多い指揮官たち至福の時だ。

 

ジークハルトもケーキを口に含むと隣の席の話し声が聞こえた。

 

恐らく正規軍の宇宙軍将校達だ。

 

「デノンの方でも攻撃艦隊の編成が終わったらしい。指揮官はデゴート提督とプリティック提督、カーメン提督だと」

 

するともう1人の将校が口を開いた。

 

「第二帝国時代の司令官ばかりだな。まるで左遷みたいだ」

 

「みたいじゃなくてほぼ左遷だろうな…ほとんどの新共和国軍は北東側にいるんだから」

 

名前が挙げられたプリティック提督とカーメン提督は第二帝国、エンドア後から代理総統が出現するまでの帝国であくまで中央の指示に従い続けた者達だった。

 

その為、銀河協定後の帝国でも艦隊司令官や宇宙軍長官などの座についていた。

 

代理総統が出現するまでは。

 

3人とも不満には思っていないにしても少なからずしこりは残っているだろう。

 

「ローリング大将軍とヴィアーズ大将軍は?」

 

「ヴィアーズ大将軍はこっちに来るらしい…ローリング大将軍もそうだ。流石に大将軍クラスの高官を辺境には置んだろ」

 

「主戦力もほとんどが親衛隊だし正規軍の不満は高まりそうだ」

 

「当たり前だ、俺の部下だって大勢親衛隊をよく思わない連中はいる」

 

少し苛立ちを含んだ声質で将校の1人は話した。

 

親衛隊と正規軍と呼ばれる本来の帝国軍の溝は少なからず存在していた。

 

同じ構造の組織がもう一つ存在しているのが気に食わないだとか親衛隊はあくまで“総統の私兵”である為活躍の機会が多いとか理由は様々だが溝は誰しもが少なからず持っていた。

 

今はまだ表面化していないがいずれ面倒な事になるだろう。

 

帝国とて完全に問題がない訳ではなかった。

 

むしろ敗戦からの問題は未だに多く残っている。

 

それに加えて度重なる勝利により新たな領土や反乱分子などの問題は増える一方だった。

 

それでも今日まで勝利を重ねてこれたのは間違いなく代理総統のカリスマ性と軍や政府機関の優秀さだろう。

 

「新共和国もいなくなったし残りの連中も倒せば親衛隊はお役御免で解散だろうよ。元々協定の抜け道だったんだからな」

 

「そうだな…そう言い聞かせておくか」

 

将校達は席を立ちトレイを両手に雑談を交わしながら去っていった。

 

ジークハルト以外の3人はその様子に気づいていないようだ。

 

ジークハルトはカップの中を覗きながら考え込んだ。

 

帝国の問題は多分このまま帝国が勝利を重ね敵を排除し続けたところで解決の見込みはない。

 

むしろ問題は増える一方だろう。

 

この先の未来帝国はどうなるのだろうか。

 

以前の姿に戻れるのだろうか。

 

将又このカフの色と同じように真っ黒のまま進み続けるのか。

 

唐突に垣間見えた不安がジークハルト気を重たくさせた。

 

 

 

 

-コルサント 親衛隊本部 地下会議室-

地下会議室が使われることは滅多にない。

 

現在存在している12人の上級大将全員がその場に集結し明確な議題がない限りこの会議室の扉が開くことはない。

 

当然警備や防備は並の会議室とは比較にならず仮に軌道上爆撃を2回食らったとしてもびくともしない作りになっている。

 

これは総統府に建設中の緊急地下司令室も同様だ。

 

今日はそんな地下会議室が開放され重要な会議が開かれていた。

 

「全員も知っての通り我々はウェイランドに存在する陛下の宝物庫を開放した」

 

12人の上級大将に見守られテーブルにウェイランドと宝物庫の様子がホログラムとして映し出された。

 

続け様にフューリナー上級大将が12人に資料をホログラムで配り説明を始めた。

 

「惑星イラム、ようやく我々はこの惑星を発見した。ありとあらゆる帝国のデータベースから削除された宝の星だ」

 

「本当に資源は存在しているのか?やはりもう採り尽くしてしまったのでは」

 

宇宙軍のフェリー・シュテッツ上級大将が不安を口にした。

 

彼らが言う宝というのはあのデス・スターのスーパー・レーザーの原材料ともなったカイバー・クリスタルの事だった。

 

帝国が誕生する何千年も前からこの惑星は旧ジェダイ・オーダーの特別な通過儀礼の会場となっていた。

 

だが守り人のジェダイは愚かにも反乱を起こし全滅、帝国の手に渡った。

 

当然貴重な資源を帝国が見逃すはずもない。

 

帝国は大規模な採掘を行いイラムのカイバー・クリスタルを採り尽くした。

 

はずだった。

 

なんと実際には帝国が採掘したカイバー・クリスタルは本当に一部だけに過ぎずまだ倍以上のカイバー・クリスタルが埋蔵されていたのだ。

 

この情報が発覚したのは第三帝国が誕生してから僅か三ヶ月後の事であり親衛隊は長い間イラムの所在地を探っていた。

 

不思議な事にイラムの所在地は帝国軍の有りとあらゆる星図や公文書から抹消されていた。

 

その為苦労を重ねようやく親衛隊はこの惑星を発見したのだ。

 

「いいや、宝物庫のデータバンクにも確かに埋蔵されていると記されていた。何故そのまま放置していたか不明だが…」

 

結局彼らもイラムやカイバー・クリスタルの事全てを知り尽くしているわけではなかった。

 

まだまだ謎も多い。

 

「重要なのはそこにあるかどうかで謎など今はどうでもいい。あの惑星を、カイバー・クリスタルを手に入れた後調べようじゃないか…それよりも」

 

シュメルケ上級大将は上級大将達を宥め次の議題に移った。

 

若干穏やかな表情も一瞬で低い声質と共に変化しいつもの生真面目な表情に変わった。

 

上級大将達の意識と目線がシュメルケ上級大将に集められる。

 

「未だ各地に蔓延る帝国の残存勢力だ。今のところ我々は彼らをまだ同じ帝国の一員として見ており再び帝国に迎え入れるつもりでいる…が」

 

最後の一言で不満を浮かべる者も賛成だと頷く者も表情が変わった。

 

シュメルケ上級大将は腕を組み鋭い眼光で言葉を続かせた。

 

「それではいたずらに労力と時間を費やし結局得るものに対して釣り合わない。我々は少し冷酷になるべきだ」

 

そう言うと上級大将達のテーブルに別の資料が配られた。

 

現在確認されている帝国軍残存勢力と存在している可能性のある帝国軍残存勢力の資料だ。

 

指導者や関係者の名前が連なりその下に大まかな規模と予想図が記されている。

 

どれもこれもコルサントや帝国の情報施設で新たに発見されたものだ。

 

抱え込まれたエンドア後の闇が再び姿を表したと言うところだろう。

 

「既に総統閣下は我が第三銀河帝国への集結命令を無視する幾つかの勢力を“粛清”するおつもりだ。真の帝国が誰か分からない愚か者どもをな」

 

上級大将達に緊張が走った。

 

つまり総統は第三帝国の軍門に下らないかつての仲間達を切り捨てるつもりだ。

 

粛清と言葉を濁したが少なからず帝国同士の戦いになるだろう。

 

「だが我々は既に新共和国の残党、地方防衛軍の反抗勢力といった厄介な敵を抱えている…これ以上敵を作るのは望ましくない」

 

そう発言したのは宇宙軍のゲイリス・フリューデンベルク上級大将だった。

 

彼は親衛隊宇宙軍の副長官と親衛第三艦隊司令官を務めていた。

 

周囲を敵に囲まれる事を戦略上好ましくないと知っている彼は慎重意見を口にした。

 

しかしシュメルケ上級大将はそれをわかった上で言葉を返した。

 

「何も全面対決に臨もうと言う訳ではない。むしろ戦力は回収したいところだ。連中は未だにスター・デストロイヤーや兵器を大量に保持しているからな」

 

「ではどうやって対処するのだ」

 

フリューデンベルク上級大将の問い掛けにシュメルケ上級大将はフューリナー上級大将に促す形で答えた。

 

「既に残存勢力内に放ったスパイが抹殺するよう行動を開始している」

 

「本当に成功するのか…?」

 

「保安局と情報部から選んだ選りすぐりのエリート達だ。失敗するはずがないだろう」

 

そう断言するのは情報部実行隊長官のフリツハルト・ヴィスターリッヒ上級大将だった。

 

彼の反対側に座る保安局実行隊長官のハイスリート・ミューレンリーベ上級大将も静かに頷いている。

 

「成功しなければ力尽くでねじ伏せるまでだ」

 

シュメルケ上級大将は当然のように仲間の圧殺を口にした。

 

フリューデンベルク上級大将のような将校達は眉を細めた。

 

流石に過激すぎるしまだ交渉の余地があると思ったからだ。

 

だが彼らが反対意見を口に出せないようシュメルケ上級大将は圧倒的な圧を加えた。

 

不用意な議論は結束を大きく乱すからだ。

 

それに彼らは残存勢力の傲慢さをまだ知らないだけでいずれ落胆するはずだ。

 

でなければシュメルケ上級大将とてこんな方法はとったりしない。

 

「真の平和を勝ち取る為、我々は我々も血を流さねばならんのだ」

 

詭弁に似た彼の考えは上級大将達をひとまずは納得させた。

 

と同時にある者達の死も同時に決定してしまったのだ。

 

 

 

 

-アウター・リム 残存新共和国領 惑星ラクサス-

ラクサスの軌道上には数百隻の新共和国艦とクローン戦争で戦い滅んだ亡霊の艦隊が集まっていた。

 

名は独立星系連合。

 

大いなる自由と夢を抱き共和国と戦いそして誰も知らぬ最期を遂げた悲運の亡国。

 

強大な軍事力と工業力を誇り共和国相手に何度も勝利を収め名勝負を演じてきた。

 

後にクローン戦争と呼ばれる銀河系を一変した大規模な戦争だった。

 

連合を指揮したセレノーの伯爵やサイボーグの将軍、無敵を誇る恐怖の提督にニモーディアンの戦術家と言った多くの名将や英雄達もこの時に名を馳せた。

 

しかしそんな彼らの勇戦も虚しく連合は目的を達成する事なく滅び去った。

 

多くの指導者は皆ムスタファーで“()()”され残された連合は帝国にすり替わった銀河共和国に敗北の烙印を押され解体された。

 

当然反旗を翻したものもいた。

 

だがそういった連中の最期は大抵何一つ報われず残酷に死を迎えるだけだ。

 

このラクサスも帝国の手により陥落し制圧化に入った。

 

ウエスタン・リーチで必死の抵抗を見せた分離主義者達も再編された帝国軍によりほとんどが討ち果たされた。

 

特に衛星アンター4では最も悲惨な出来事が起こった。

 

後にアンターの虐殺と呼ばれる帝国の報復攻撃だ。

 

アンター4にはまだ多くの共和国忠誠派がいたのにも関わらずだ。

 

多くの分離主義者達が血を流し斃れていった。

 

生き残った者達は当然のように初期の反乱運動に加わった。

 

反乱軍の理念は受け入れられないものも多かったがともに戦う他なかった。

 

特に過激な彼らはドロイド技術を生かし工兵や工作員として活動した。

 

中には独自の戦力を率いて活動する者もいた。

 

やがてエンドアで勝利を収め新共和国が誕生した。

 

当然共和国を倒す為立ち上がった彼らはその結果に納得する事はなかった。

 

だが新共和国に反旗を翻すほどの力も同時に存在していなかった。

 

結果彼らは新共和国を離反しせめてかつての首都惑星ラクサスだけでも取り戻す戦いを始めた。

 

戦いは苦戦を強いられたがかっらはやがて首都ラクサスを取り戻し自治権を獲得した。

 

ラクサスや周辺の衛星や惑星といった僅かな領土だが連合の遺児達は最低限の独立を確保し彼らは自らを“ラクサス自治連合”と名乗った。

 

25年ぶりに連合は甦ったのだ。

 

儚き栄光と多大なる犠牲の上に。

 

しかし僅か二年でその平穏は崩れ去った。

 

第三帝国の勃興と新共和国の崩壊はラクサス自治連合も無関係ではいられなかった。

 

敗戦した新共和国軍の一部は彼らの下にもなだれ込んできた。

 

かつての反乱同盟時代の伝を辿って。

 

連合側はこれを受け入れる他なかった。

 

何せ現在の自治連合の戦力は微々たるものであり新共和国の残党にすら勝てぬ有様だ。

 

彼らを受け入れ従う他なかった。

 

当然新共和国の残党を受け入れたということは帝国と敵対するということだ。

 

現在帝国軍はラクサスやその他の星系に向け大規模な進軍計画を推し進めており再び危機がこのラクサスに迫っていた。

 

「帝国軍は現在、斥候のインペリアル級を三隻このラクサス星系の付近まで展開しています。いずれ我が軍の防衛艦隊と衝突するでしょう」

 

新共和国艦隊のジャステン中将はラクサス自治連合の国家主席アヴィ・シンに説明した。

 

元新共和国軍工兵隊大佐で連合の名目上の最高司令官であるスタル・リストロング司令官がジャステン中将に迫った。

 

「このままでは帝国軍の侵攻を受けてしまう!どうしてくれるんだ!」

 

「当然応戦します、既に防衛線の構築は完了しました。ヤヴィン4やモン・カラとの連携も万全であります」

 

「仮に防衛に成功したとしても我が領土は戦火の被害を受ける事となる。これに対する責任はどうとるつもりだ!」

 

リストロング司令官はかなり強めに彼らを非難した。

 

司令官は特に新共和国の受け入れを反対していた。

 

彼らを受け入れてしまえば再び帝国軍に侵攻される危険性があったからだ。

 

せっかくこの手で掴み取った平和を赤の他人達に踏み荒らされたくはない。

 

「よせリストロング司令官。客人に失礼であるぞ」

 

「しかし主席…」

 

アヴィ・シン国家主席に止められたリストロング司令官であったが彼はまだ食い下がった。

 

そんな司令官を国家主席は優しく諭す。

 

「彼らがいなくとも恐らく帝国軍は侵攻を決意したであろう。奴らはそう言った輩だ…」

 

過去を思い出しアヴィ主席は痛々しい表情を浮かべた。

 

リストロング司令官はこれ以上何も言えなかった。

 

新共和国軍が来ようとどのみち帝国軍が理由をこじ付けて侵略に来るのは目に見えている。

 

主席に咎められ言い返す事の出来ないリストロング司令官を見ながらジャステン中将はリストロング司令官を軽く鼻で笑った。

 

その様子に気づいたリストロング司令官は歯噛みしながら怒りを抑えた。

 

するとジャステン中将はアヴィ主席に進言した。

 

「どうでしょう主席、あなた方連合軍と我々新共和国軍が共同戦線を展開するというのは」

 

「断れば当然…」

 

「よせ、エンベル准将。あなた方も帝国に対して恨みを抱いているはずだ。それを晴らすチャンスは今だと私は考えます」

 

「貴様…図に乗るなよ…」

 

リストロング司令官が彼らに釘を刺した。

 

これは失礼にも程がある。

 

彼らからは敬意というものが全く感じられなかった。

 

しかも公然と脅しまでかけてくる。

 

だがそれを諌める力すらも連合側にはなかった。

 

「検討しておこう…ラクサスの民を守る為ならばな」

 

アヴィ主席は新共和国側の将校達に僅かながら睨みを聞かせた。

 

老練な主席の睨みにより新共和国将校達は少し目を逸らした。

 

その間にリストロング司令官の背後にいた幕僚の1人彼に耳打ちした。

 

数回小声で相槌を打つと同じく小声で「直ぐに向かう」とだけ伝えた。

 

「急用が入りました。席を外させていただきます首席」

 

アヴィ首席に頭を下げると司令官はその場を後にし数名の幕僚と共に急足で呼ばれた場所へ向かった。

 

無言の移動はそう長くは続かなかった。

 

待っていた相手は既に通路脇で数名の新共和国士官と共に佇んでいた。

 

あの面構えから察するに彼らは我々に味方する者であろう。

 

軽く手を振り敵意が無いことと待たせた事を謝罪した。

 

「緊急の命令だ将軍…なるべく新共和国の連中には悟られるな」

 

司令官は将軍の顔に値する部分を見つめて命令した。

 

彼は一言も発することなく命令を聞いた。

 

「アヴィ主席や連合の指導者を全て逃がせ、ラクサスはどの道陥落する…艦隊戦力と共に希望の光を僅かにでも残しておくのだ」

 

悲痛な表情でリストロング司令官は将軍に命令した。

 

後ろの将校達も悔しそうな表情を浮かべていた。

 

「再び…再びラクサスに帰ってくるためだ…頼んだぞ将軍!」

 

将軍の肩に手を乗せ強く訴えた。

 

すると将軍はようやく返答の言葉を返した。

 

「了解、必ず任務を遂行する」

 

冷徹なドロイドの声が響いた。

 

タクティカル・ドロイドのカラーニ将軍に新たな任務が下された。

 

 

 

上級大将達の階段から5日後、遂に帝国軍のアウター・リム討伐作戦が開始された。

 

投入される戦力はホズニアン・プライムを襲撃した時の1/3にも満たなかったがそれでも十分大規模な戦力だ。

 

既に銀河系は年末に差し掛かっており市民からは「来年で戦争が終わりますように」という細やかな願いが薄らと広まっていた。

 

それでも帝国は今まで勝利を収めてきた為人々の戦争協力度や士気はかなり高かった。

 

この戦いも帝国の大勝利になるだろうと多くの惑星で囁かれている。

 

当然帝国軍も同じ気持ちだ。

 

先方部隊として親衛隊のフーデル・エールリンク大将ら率いる三個師団と二個艦隊が展開された。

 

多くのスターファイター部隊が配備されている為大規模な爆撃による攻撃があるだろうと囁かれていた。

 

それに対して新共和国残党軍は惑星オッサスに艦隊と地上部隊を集結させ防衛線を展開。

 

主戦場はオッサス周辺になるだろうと誰しもが予想した。

 

帝国軍の主力はユーゲン・シュトームヘルゼン大将と正規軍のパリス・ジェイル将軍が前線で指揮を取り、司令部が後方で指示を出す事となった。

 

多くのウォーカーが配備され新共和国側は厳しい地上戦を強いられる事となるだろう。

 

非常時に備えた後詰めや遊撃部隊の後方部隊は正規軍のハネス・ドリヴァン提督が指揮下に置かれた。

 

そしてジークハルトの第六親衛連隊はこの後方部隊に組み込まれた。

 

最精鋭である彼らが何故後方部隊に配属になったか明確な理由は不明だった。

 

しかし連戦続きの彼らを休ませてやろうという心遣いが主な理由だろう。

 

これ以上彼らが損耗する事も望まれてはいない。

 

少しでも休養を与えてやる事が重要だった。

 

そして帝国軍の先行部隊は今日出立した。

 

惑星タナブの軌道上を数十隻のインペリアル級が次々と飛び立っていく。

 

他にも護衛のアークワイテンズ級や師団を運搬するセキューター級の艦隊がインペリアル級に続いていった。

 

その様子を軌道上のステーションで多くの兵士や職員達が見送っていた。

 

当然その中にはジークハルト達もいた。

 

後方部隊で出撃は当分先である為少しばかり暇になっていた。

 

「これで新共和国との戦いも終わるんだろうな」

 

ハイネクロイツ中佐が独り言のように呟いた。

 

「分からん…が、戦いが終わるまで少なくとも私達は戦い続けなければならん。どんなに長かろうとな」

 

アデルハイン中佐は腕を組みながら答えた。

 

新共和国のほとんどはラクサス、モン・カラ、ヤヴィン4に集中しているとはいえ全部ではない。

 

あそこの新共和国軍を殲滅しても戦争は続くだろう。

 

まだまだ帝国の敵は多い、きっと戦いは長くなる。

 

それでも中佐の言う通り自分達は平和になる日まで戦わなくてはならない。

 

仮に自分が死んだとしても、信じる者の為に。

 

だがそれも自分の代で終わりにしたいものだ。

 

あの子を、マインラートが戦う事がないように。

 

「戦いが長かろうと我々は進み続けなければならない…未来の子供達が地獄を見ずに済むように」

 

2人の中佐は頷いた。

 

深く彼の事情を知っている2人だからこそ伝わるものがあるのだろう。

 

北東戦線の開幕と共に彼らの切なる願いは儚い争いの宇宙に散っていった。

 

 

 

 

 

 

-アウター・リム・テリトリー 残存帝国領 惑星ケッセル-

ケッセルは間違いなく銀河系で最悪の労働環境であろう。

 

しかも誰もがその事について関わろうとしなかった。

 

結果ケッセルでの労役は帝国時代、銀河最悪の刑罰として知れ渡った。

 

送り込まれれば一年も持たないとの噂だ。

 

尤も送り込まれた者達が無事に帰ってきたかどうかは不明だが。

 

当然ここにも帝国軍は展開されていた。

 

ケッセルで採掘されていたケッセルストーンには艦隊の燃料となるコアクシウムも存在している為当然抑えておきたかった。

 

もう一つ、かなり昔からケッセルと手を組んでいた者達がいた。

 

それはパイク。

 

あの悪名高い犯罪組織のパイク・シンジゲートだ。

 

帝国が来る以前から彼らはケッセル王室と契約しこの地で採取される惑星半球側のスパイスを独占していた。

 

そしてそれは帝国が訪れてからも対して変化はなかった。

 

むしろ帝国はこういった組織を潰すのではなく見逃し傀儡としていた。

 

第一帝国が滅んだ今その選択が正しかったのかは不明だが少なくとも彼女らには多大な恩恵を与えていた。

 

ケッセルを防衛していた帝国軍残存勢力に多大な恩恵を齎した。

 

犯罪シンジゲートとの繋がりは辺境のこの惑星において間違いなく唯一と言っていい情報のパイプラインだろう。

 

彼女達は銀河から孤立する事なく、それと同時に誰にも気づかれる事なく力を蓄えていった。

 

ケッセルの資源をバックに、帝国の軍事力とパイク・シンジゲートの情報網を手にして。

 

「総督、哨戒艦隊が戻ってきました。なんでも第三帝国の特使を連れて来たと…」

 

報告に来た中尉は旗艦ディヴィエイトのブリッジに佇む総督に声を掛けた。

 

とてもケッセルの総督(この場合はGovernorでモフではない)とは思えない年齢と美しい容姿に澄み通った美しい金髪を靡かせ彼の方へ振り返った。

 

まるで宝石のように美しい金色の瞳を持った美少女が彼の方に近づいてきた。

 

目を細めまるで何かを疑うように。

 

彼女は小動物のように注意の匂いを嗅いだ。

 

普通にしてれば十分可愛らしくまた同時に美人で魅力的なのだが。

 

彼女は口を開き中尉は戦慄した。

 

「貴方、匂いませんわね。スパイスの匂いが全然しませんわ」

 

全く何言ってるか分からないと思うがこれでも十分中尉は理解していた。

 

大きく動揺してしまい余計疑いが強くなった。

 

「総督…何をおっしゃっているのやらさっぱり…」

 

笑って誤魔化そうとしたが完全に手遅れだ。

 

彼女は大きくため息を吐き、やれやれと言った表情を浮かべた。

 

「ホントに…どうしようもない人ね」

 

「意味がわかりま…っ…!」

 

中尉の頭にはブラスター・ピストルの銃口が突きつけられていた。

 

ピストルの引き金はすぐ引かれ流血と共に裏切り者の中尉は倒れた。

 

「第三帝国の連中でしょう、彼らは貴女のようなレムナントの指導者を一掃するつもりだ」

 

彼を撃ち殺した若き保安局員は何やら知った口調で中尉だった遺体に近づいた。

 

話し方もよそよそしく何かを伝えている感じだった。

 

しかもこの保安局員は中尉と同じく彼女風に言わせればスパイスの匂いが全くしかなった。

 

「貴方は…誰?もしかしてそこの彼が言ってた第三帝国の特使ってのも嘘なの?」

 

保安局員はその通りだと頷きこのケッセルの実質的な支配者であるクラリッサ・ヤルバ・パイクに自己紹介した。

 

「私の名はマルス・ヒルデンロード。大提督の命を受けファースト・オーダーの使者として参りました」

 

 

つづく




お久しぶりでございやす

一応新章?ですかねはい

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