第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「銀河帝国というのは崩壊後、単なる概念に過ぎなくなった。」
-銀河帝国史4 崩壊する帝国より抜粋ー


同盟の再起

-ディープ・コア ソス・ビーコン 第三帝国軌道上ステーション-

三隻のインペリアルⅡ級スター・デストロイヤーと数十隻のゴザンティ級がハイパースペースから出現した。

 

ソス・ビーコンの軌道上には他にもインペリアル級やヴィクトリー級といった大量の帝国の軍艦がステーションを取り囲んでいた。

 

同じ帝国の軍艦ではあるが彼らは皆仲間ではなかった。

 

むしろ間柄は険悪といった方がよさそうだ。

 

出現したインペリアルⅡ級から1機のラムダ級と2機のTIEブルートが発艦しステーションに向かった。

 

他の軍艦からも同じようにシャトルが発艦しステーションを目指している。

 

また互いを牽制し合うようにスターファイターを発進させ艦隊の周囲を哨戒させた。

 

意味のない行為と言われればそれまでだが彼らには十分価値ある行為だと認識されていた。

 

シャトルはステーションのハンガーベイに着陸し機体のウィングを畳んだ。

 

コックピットのハッチが開き将校の一団がぞろぞろと姿を表した。

 

全員親衛隊の軍服を見に纏っており色は白、つまり保安局の将校達だった。

 

「パージチーム、作戦を開始せよ。なるべく悟られるなよ」

 

将校の1人がコムリンクに向かって命令した。

 

他の将校達は無言で会場に進んでいく。

 

戦闘を歩くのはディールス長官の懐刀であるフリシュタイン大佐であった。

 

彼の副官であるミシュトライン中尉とリッツァー中尉を従え無表情で通路を歩いていた。

 

「参加を拒否…または音信不通の勢力は?」

 

「モフギデオンの勢力は完全に沈黙、ケッセル勢力とアデルハード総督の勢力は参加を拒否し残りの13人の軍将は全員参加です」

 

ミシュトライン中尉はフリシュタイン大佐に報告した。

 

「シュメルケ上級大将は既に両勢力に対し武力行使に移ると」

 

「わかった…3つの勢力の事は箝口令を出しておけ」

 

「わかりました」

 

命令と返答の作業的な会話を幾つか繰り返した後彼らは会場へと辿り着いた。

 

ステーションの会議室だ。

 

2人のインペリアル・ショック・トルーパーがドアを守っており一行が到着すると2人はコードを要求した。

 

フリシュタイン大佐はコードシリンダーを一本彼らに手渡した。

 

コードシリンダーに入っていったコードは異常なく読み込まれドアが開いた。

 

「どうぞ大佐、そちらの方々は?」

 

ショック・トルーパーの1人が尋ねてきた。

 

「私と2人、それと警備を担当する6人を中に入れろ。その他は待機だ」

 

将校達は頷きフリシュタイン大佐に率いられた8人が会議室に入室した。

 

全員がそれぞれの位置につきフリシュタイン大佐はテーブルの一番はじに座った。

 

既に集められた13人の軍将達はそれぞれの席についた。

 

「まさか我らの席に佐官の者が居座るとはな」

 

軍将の1人がフリシュタイン大佐の階級を見つめて皮肉った。

 

「あいにく、シュメルケ上級大将もヴィアーズ大将軍もオイカン元帥もローリング大将軍も大忙しなので。暇なあなた方と違って」

 

余裕の笑みを浮かべたままフリシュタイン大佐は彼らに皮肉を言った。

 

この場にいる13人の軍将たちをこうして席につかせるのは至難の業だった。

 

そもそも第三銀河帝国を快く思っていない彼らが第三帝国の呼びかけに応じること自体以上なのだ。

 

これにはスパイ達もかなり苦戦したと聞く。

 

しかし彼らの助言と兵達の賛同も集まってようやくこの13人の軍将達を会議の席に呼び出すことが叶った。

 

無論嫌々参加というのが大きいらしく苛立ちながらもまた別の軍将が彼に尋ねた。

 

「それで我々を態々呼び出した理由はなんだ、第三帝国」

 

かなり悪態をついた様子だ。

 

その様子をものともせずフリシュタイン大佐はかなり太々しく答えた。

 

「当然今までと変わらず帝国に帰属していただくことにあります。我々とてあなた方と戦う事は決して望んではいない」

 

彼は要求を述べたがすぐ拒否の言葉が飛び交った。

 

「拒否する!貴様ら第三帝国と同盟を組む気なの毛頭ない!」

 

最初に言葉を開いたのはマルクフラ・ワイズ提督だった。

 

彼はディープ・コア第十五艦隊の指揮官を務めておりディープ・コアの領有権を巡って他の軍将達と争っていた。

 

次に拒否を述べたのはブリッツァー・ハースク提督だった。

 

彼は上位軍将という今までにない階級を名乗っており他の軍将達よりもかなり傲慢であった。

 

自惚れが強く権力の誇示や古い儀式などを好み自らが皇帝の後継者に相応しいとさえ考えていた。

 

その為第三帝国と代理総統に対する逆恨みは人一倍強い。

 

「何が第三帝国だ偉そうに。貴様ら紛い物の帝国に従属すると本気で思っているのか」

 

口調も荒々しくかなり暴言も混じっていた。

 

第三帝国のメンツを守る為にもフリシュタイン大佐は反論した。

 

「ですがその紛い物の帝国が新共和国すら下し、今では銀河系のほとんどを支配している」

 

「黙れ!保安局の大佐でしかない小僧が偉そうに!真に正しいのは我々の帝国だ!貴様らなんぞに従えるか!」

 

素早く反論したのはトルーテン・テラドク自称高位提督。

 

マルドルード宙域で活動している軍将の1人であり彼の率いられた勢力はグレーター・マルドルードと呼ばれていた。

 

テラドク提督は見るからに肥満体型でありしばしば赤ら顔で汗まみれになることが多かった。

 

特にヴィクトリー級のような小型で用途の広い艦で艦隊を編成する事を戦術哲学としていた。

 

しかしその艦隊を彼自身が直接指揮する勇気はなくテラドク提督は常に安全な要塞で指揮を執ることが多かった。

 

無論これは他の軍将達も同じ事だ。

 

ハースク提督も迅速な反撃や不意打ちといった残忍性はあったものの艦隊の安全な後方で指揮を執ることが多かった。

 

そのせいか彼らの残存勢力に使える将兵のほとんどは彼らを信用していなかった。

 

「新共和国を倒した功績はあったとしても仕える理由にはならん。代理総統など所詮は陛下を騙った下賤な指導者だ」

 

自称上位将軍であるサンダー・デルヴァードス将軍はフリシュタイン大佐を鼻で笑い第三帝国を貶した。

 

自らの自信を示す多くの勲章が胸に並べられている。

 

骸骨のように肌色が悪い彼はあのターキン家から嫁を貰っており実質的にターキン家の親族であった。

 

しかし彼の女癖は悪く妻がいるのにも関わらず「どこの宇宙港で彼を見かけてもそばには別の女がいた」と言われるほどだった。

 

それもそのはず、将軍の真の愛情は妻ではなく愛人の方にあったからだ。

 

同じ妻帯持ちであったヴィアーズ大将軍と比べてもえらい差だ。

 

「貴様らが若きターキンを唆したせいで私はセスウェナとエリアドゥを手に入れる事が出来なかった。本来ならあの場所は私の領土だ」

 

「デルヴァードス将軍、聡明なグランドモフヘルムート・ターキンは自ら我々に忠義を尽くして下さった。貴方がどうこういう立場にはないと考えます」

 

「なんだと小僧?私は彼の親族だぞ!あんな年少の者にエリアドゥを任せておくなどあり得ぬ話だ!」

 

「汚い小鼠がグランドモフターキンの遺産に集ろうとする姿は滑稽だなデルヴァードス将軍。どうせ領有権が欲しいだけのくせに」

 

ワイズ提督はデルヴァードス将軍を小馬鹿にした。

 

堪忍袋が切れかかっていたデルヴァードス将軍にとっては痛烈な一撃だ。

 

彼の怒りの堤防は一瞬にして断ち切れた。

 

「無礼だぞ!大した勢力も持たぬ艦隊指揮官が偉そうに!」

 

「ふん、帝国の名を借りた小鼠どもが何を偉そうに。所詮は同じ穴の狢だ」

 

「テラドク提督こそ、ご自身の愚かさを知っての言葉かな。亡き陛下もお前達のような愚かな配下を持って嘆いておいでだろう」

 

誰かが相手を貶めようとすればまた誰かがその者を貶めようとする。

 

愚かで醜い言い争いが始まってしまった。

 

フリシュタイン大佐から見れば皆平等に愚かな小鼠で同じ穴の狢だ。

 

結局彼らは自分の権威を守ることしかしていない。

 

「モラックの残存勢力の司令官とヴァリン・ヘス将軍は帝国への帰属を認めた。彼らは今不毛な言い争いを始めようとするあなた方より何十倍も時間を浪費せず懸命な判断をしていると思いませんか?」

 

皮肉まじりに大佐は真実を一つ付け加えた。

 

するとワイズ提督が鼻で笑った。

 

「バーニン・コンの愚か者も堕ちたものだな」

 

「ああ、言っておくぞ大佐。私は貴様らのような連中と手を組む事はないし栄光を分け合うつもりもない」

 

「どこかの誰かさんのように不意打ちでしか新共和国を滅ぼせない奴が我々と対等であるはずがない」

 

「帝座につくに相応しいのは私だ。お前達のような者に分け与える分はない」

 

ワイズ提督もデルヴァードス将軍もテラドク提督もハースク提督もこの意見に関しては同じようだ。

 

第三帝国に服属するつもりはない。

 

自分の小さな王国と権力が崩れなくなってしまうから。

 

無意味な傲慢さが彼らの仇となった。

 

フリシュタイン大佐はため息をついた。

 

するとリッツァー中尉が大佐に耳打ちをした。

 

フリシュタイン大佐は小さく頷くと手を二回叩き将校達に命令を出した。

 

その様子を逃さず問い詰めたのはテラドク提督だった。

 

「貴様、何を命令した?それはなんだ!」

 

テラドク提督の大声を無視しフリシュタイン大佐はテーブルの下からマスクのようなものを取り出していた。

 

軍将を除いた他の将校達も同じマスクを付けている。

 

軍将達はその様子に気付き慌て始めた。

 

「何をするつもりだ貴様ら!!」

 

怒鳴り声をたてハースク提督は立ち上がった。

 

ワイズ提督も冷や汗を流し深刻な表情を浮かべ床を見つめた。

 

すると彼は違和感に気づいた。

 

「なっなんだこの空気の色は!これは毒ガスではないのか!!」

 

その声に驚いた軍将達からどよめきの声が上がった。

 

フリシュタイン大佐はマスクの上から帽子を被り直すとニヤリと笑った。

 

「ええ、その通りですとも。それが何か問題でも?あなた方は我々の最後の慈悲を断った。ならば方法は一つです」

 

その意味を察したデルヴァードス将軍は急いで扉の方へ向かいドアを叩いた。

 

「おい!!衛兵!!開けろ!!今すぐ開けるんだ!!聞いているのかトルーパー!!開けろ!!」

 

しかしドアは開く事なく外にいるショック・トルーパー達からも応答はなかった。

 

密封された部屋に立ち込める毒ガス。

 

しかも武器は全て置いてきた為反撃は出来ない。

 

彼らはゆっくりと死を待つだけだった。

 

軍将達から恐怖に怯える悲鳴が聞こえた。

 

徐々に毒ガスは充満し防ぐ事の出来ない彼らを襲った。

 

「うっ!グァガア!かっ…!クソッ!苦しい…!」

 

「貴様っ…!よくも…!」

 

「ふざけるな小僧…殺す…!貴様を赦してなるものか…!」

 

「俺の部下が…時期にグっ…!駆けつけて…!お前達は死刑だっ…!銃殺され…無様に殺されるっ…!」

 

「その前にあなた方の方が先に死にそうですがね。それも私たちよりもっと無様に」

 

大佐は席を立ち苦しむ軍将達をじっと見つめていた。

 

全員もがき苦しみ喉を抑えていた。

 

手や顔に血管が浮き上がり苦しみの度合いを想像させた。

 

まあこんな連中に同情してやるつもりは一瞬たりともないのだが。

 

「悪いが我々は内戦を起こしている場合ではないのです。これから始まる北東戦線や平和への計画の為にも」

 

「計画だとっ…!ふざけるなっ!帝座の簒奪者がっ!」

 

「帝座帝座とうるさいですね…ハースク提督、貴方も十分皇帝であったではないですか。鳥籠のように小さい、愚者にふさわしい帝国のね」

 

「貴様っ…!青二歳の分際で!!」

 

フリシュタイン大佐を睨みつけるハースク提督だったがついに限界が来たのか倒れ込み瞳孔を開いたまま苦しそうに隣にいたテラドク提督の軍服を掴んだ。

 

テラドク提督はもう睨みつける力すら残っておらず喉を抑え大きく目を見開いたまま叫び声を上げていた。

 

ワイズ提督は既に床に倒れ込んでおりもう死にそうだった。

 

使われている毒ガスは通常の神経ガスの何倍も効力の強いものだ。

 

ここまでガスが充満してしまえばもう手立てはない。

 

しかも武器がなくガスマスクを被った将校達は皆ブラスター・ピストルを装備している為奪い取ることなど不可能だ。

 

それに彼らの戦闘力など高が知れている。

 

「デルヴァードス将軍、ワイズ提督、ハースク提督、テラドク提督、あなた方の帝国は全て頂く。無論この場にいる全員の帝国もだ」

 

「させるか……!我が帝国も…栄光も…誰とも分け合うつもりはない!」

 

デルヴァードス将軍は己の勲章を引きちぎり鋭い先端をまるでナイフか何かのようにフリシュタイン大佐に向けた。

 

なんとか大佐を勲章で刺し殺し一矢報いようとしているのだろう。

 

全く呆れるほど見事な強い意志だ。

 

ここにいる軍将達全員がそうだ。

 

ただ苦しみもがくだけで誰も命乞いをしない。

 

ここまで鋼の意志を持っているのならもっと別の方向で活かしてほしかった。

 

無論彼らにそんな知能があるとはこれまでの言動を鑑みてもあり得ないのだが。

 

とはいえここで放置しておくと面倒なことになるので始末しておこうとフリシュタイン大佐はブラスター・ピストルをテーブルの下から取り出した。

 

彼の右手に一発ためらうことなくブラスター弾を撃ち込んだ。

 

勲章は流血と共に床に落ち将軍は痛みを乗せた絶叫を放ちさらに毒ガスによって苦しめられた。

 

このまま撃ち殺してしまっても良かったのだがそれでは風情がないというものだ。

 

無論フリシュタイン大佐にそんな雄悦は持ち合わせてない。

 

こういうので喜ぶのはディールス長官あたりだろう。

 

「大佐、攻撃チームが到着しました。制圧を開始します」

 

「我々はしばらくここにいる。全員の死が確認されるまで誰1人室内に入れるな」

 

「了解」

 

ふとフリシュタイン大佐が窓の外を見つめると数十機のTIEリーパーがハイパースペースから出現した。

 

周囲を警戒していた第三帝国のTIE部隊が直様TIEリーパーの護衛に就く。

 

一方他の残存勢力の機体は状況が分からずただ右往左往していた。

 

TIEリーパー隊は真っ直ぐステーションの方へ向かっていった。

 

ステーションのターボレーザーは全く機能せず逆にTIEリーパー隊を出迎えるようにハンガーベイのシールドを解除した。

 

1機も撃墜されることなくTIEリーパー隊はステーション内に侵入した。

 

機体のハッチが開き一斉に黒いアーマーに灰色のラインの入ったカーマーとヘルメットを身につけたトルーパー達が機体から降り立った。

 

全員がDTL-19D重ブラスター・ライフルを装備しており何人かは背中にエレクトロスタッフを背負っていた。

 

彼らはフューラー・パージ・トルーパー。

 

本来パージ・トルーパーは大抵の場合元クローン・トルーパーで構成され旧ジェダイ・オーダーの反乱分子を掃討するのが役目だった。

 

そしてこれは親衛隊が運用するパージ・トルーパーの一種でり親衛隊保安局の突撃精鋭部隊として扱われていた。

 

選りすぐりのエリートトルーパーでありクローン兵のパージ・トルーパーと同等まではいかないものの高い練度を誇る無慈悲な粛清者達だ。

 

TIEリーパーを降りステーション内に侵入する。

 

目標は当然残存勢力の高官達だ。

 

歩兵や下士官、尉官以下の士官は放っておけば勝手に第三帝国側に着くだろう。

 

だが将官や佐官クラスの士官は放っておく事は出来ない。

 

急いで抹殺する必要があった。

 

「なっ何者だ貴様ら!」

 

当然武器を向けてくる相手も。

 

2人の残存勢力の士官がパージ・トルーパーにブラスター・ピストルを向けてきた。

 

反撃される前にパージ・トルーパー達はDTL-19Dの銃口を向け一瞬たりとも躊躇いを見せず引き金を引いた。

 

放たれる無数の光弾が2人の士官を貫き無慈悲に葬った。

 

抹殺を確認するとパージ・トルーパー達は止まる事なくさらに進んだ。

 

彼らが本当に抹殺すべき人物達は別にいるからだ。

 

ほとんどのストームトルーパーや将校達はパージ・トルーパーたちの一団を見て唖然とする他なかった。

 

またある者達はついに作戦が始まったのだと緊張感を持ち始めた。

 

このステーション自体は第三帝国の所有物であり他の勢力から送り込まれた将校たちを除いたほとんどが親衛隊や正規軍所属だった。

 

その為彼らの到着が何を意味するかよくわかっているのだ。

 

黒いトルーパーたちがステーションの通路を通り過ぎかなり大きいドアの前で停止しドアが開いたと同時に内部に入った。

 

各残存勢力の将官以上の将校が室内に集まっていた。

 

ここがちょうど待機室だ。

 

必要なのは戦力であって邪魔な老害思考の指揮官達は必要ない。

 

「なっなんだ貴様らは!!」

 

少将の階級章を持つ将校の1人がパージ・トルーパーに向かって怒鳴りつけた。

 

しかしパージ・トルーパー達は少将の言葉を無視し銃口を彼らに向けた。

 

「なっ何を……」

 

狼狽える将校達に向けられた銃口は容赦なく火を吹いた。

 

放たれる何十発ものブラスター弾が将校達の足や腕、胴体に頭を貫き流れ出る血飛沫と断末魔の叫びと共に床へと撃ち倒した。

 

粛清(purge)の名に恥じぬ行動によりあっという間に残存勢力の上級指揮官達に死が齎された。

 

パージ・トルーパーの部隊長はヘルメットのコムリンクを起動するとフリシュタイン大佐に作戦の成功を報告した。

 

「こちら第一分隊、待機室を制圧完了。生存者はなし」

 

コムリンクの先では他にも司令室を占拠した部隊や兵器コントロール室を占拠した部隊、ハンガーベイを制圧した部隊からも連絡が入っていた。

 

もうこのステーションは完全に第三帝国によって占拠された。

 

残りは残存勢力の部隊だ。

 

だがそちらも問題はないだろう。

 

なんて言ったって無数のスパイが既に残存勢力内に存在しているのだから。

 

「会談が始まってまだそう時間は経っていない…良い結果で終わるといいのだがな…」

 

ハースク提督の残存勢力に仕えるインペリアル級の艦長はブリッジで独り言をふと漏らした。

 

彼とて第三帝国と戦いたいわけではない。

 

かつては同じ帝国という家で同じ窯の飯を食い同じ軍の下で戦った。

 

仮に名前を知らなくとも彼らは仲間なのだ。

 

仲間と戦うのは心苦しい。

 

それにきっと指導者であるハースク提督は我々に戦わせるだけで自らは手を汚さないのだろう。

 

そんなことをふと思っているとブリッジの奥から銃声が響いた。

 

「なんだ!?」

 

隣にいた副長や士官達と共に後ろを振り返るとよろよろと1人腕を押さえながら倒れ込む士官が目撃された。

 

大丈夫かと声を掛ける間も無く彼を撃ったであろう士官や下士官達の集団がブリッジに上がってきた。

 

全員ブラスター・ライフルやブラスター・ピストルを所持ししっかり武装している。

 

当然艦長は彼らに声をかけた。

 

「貴様ら…何者だ…?」

 

しかし返答は返されず代わりに副長からもブラスター・ピストルを向けられた。

 

他の下士官や士官達も同僚に銃口を向けられ困惑したまま抵抗する意思はないというポーズを取っていた。

 

「…艦長、我々の仕えるべき方は……本当にあの方なんでしょうか…」

 

副長は弱々しい表情で尋ねてきた。

 

それでも銃口はしっかりと艦長の方に向いている。

 

「仇を…新共和国を討ち倒した第三帝国にこそ…我々は仕えるべきなのではないでしょうか…」

 

副長の言い分は館長もよくわかった。

 

このままハースク提督に仕え続けても未来はない。

 

せいぜい派手に無駄死にするだけであろう。

 

されど、されどここで第三帝国側につけば少なからず意味のある行動につながるのではないか。

 

大きな希望と無意味な死が彼の目の前に広がっていた。

 

人は当然のように希望を掴む。

 

それは艦長もそうだった。

 

「わかった…本艦はこれより第三銀河帝国に服属する!ハースクとはもうお別れだ!」

 

艦長の決意は艦内とステーション中に響いた。

 

既に多くの艦が半ば強制的に親衛隊の制圧化に置かれていた。

 

さっきのインペリアル級のブリッジを襲ったのもスパイに扇動されて立ち上がった残存勢力のクーデター派だった。

 

指導者達に不満を持つ彼らは帝国に帰属した時のメリットを聞いただけですぐ第三帝国側に寝返った。

 

彼らの懐柔の方が比較的簡単だったと言える。

 

「勢力のほぼ100%が制圧されました。艦隊の艦長達のほとんどは無条件で帰属に従ったようです」

 

「手に入った戦力はどれくらいだ?」

 

ガスマスク越しからフリシュタイン大佐は状況を尋ねた。

 

ミシュトライン中尉端的に彼に報告する。

 

「インペリアル級四十八隻、ヴィクトリー級百十四隻、アセーター級一隻です」

 

「アセーター級は大収穫だがインペリアル級が少し少ないな…まあいい、シュメルケ上級大将に報告しろ」

 

「了解」

 

それでも軍将達が持っているには多すぎる代物だ。

 

これは我々が有効活用させてもらう。

 

毒ガスにより息が途絶えた軍将達を眺めながらフリシュタイン大佐はそう思った。

 

「ずいぶん早く死んだな…本当なら彼女の仕事か…」

 

大佐はふと独り言のように彼らを眺め言った。

 

「彼女?どうされました大佐?」

 

たまたま独り言を聞き逃さなかったリッツァー中尉が彼に尋ねた。

 

フリシュタイン大佐はふと考え今自分が言った言葉を思い起こし自分でも理解不能に陥った。

 

「…わからない…誰の記憶だろう…いや……“()()()()”だろう…」

 

「大佐?」

 

「いや…変なことを言ったな中尉、すまない」

 

謎の疑問を浮かべながらフリシュタイン大佐は窓の外に浮かぶ無数の帝国艦隊と銀河を見つめた。

 

 

 

 

-残存新共和国領 ゴーディアン・リーチ ヤヴィン星系-

時は後に「帝国再編の大粛清」と呼ばれる軍将達の大粛清よりもかなり前に遡る。

 

ウェイランドの戦いよりも前、ちょうどホズニアン・プライムが陥落した直後あたりだろうか。

 

ヤヴィン4で行われたあの大規模な戦闘から僅か1日後の事だった。

 

Uウィングに乗り込み旅に出た彼らがようやくゴーディアン・リーチに辿り着いたのだ。

 

帝国軍に見つからぬようなるべく遠回りした結果給油など含めてかなりの時間が掛かってしまった。

 

ただその分得るものもあった。

 

帝国軍のパトロールに遭わず安全に進めたし何より確認されていない大勢の新共和国軍の残党を発見出来た。

 

そしてようやく目的地ヤヴィン4のあるゴーディアン・リーチに辿り着いたのだ。

 

「だいぶ長い旅になったな」

 

「まだ数日しかたってねぇだろ。これからもっと長くなるはずだ」

 

座席に座るジェルマンの言葉を聞きながらジョーレンは操縦桿を握り機体を操った。

 

機体の各系統は全て正常を示しており周囲に帝国軍がいない事を確認させた。

 

「ヤヴィン4の駐留艦隊があれば少しはマシな戦いが出来そうだ。クルーザーが一隻、フリゲートが一隻、コルベットが二隻じゃ話にならんからな」

 

「これでも初期反乱運動の頃よりはマシなんだろう?」

 

「まあな…状況はもっと酷かったしもっと酷い戦いばかりだったよ」

 

新共和国の、曳いては同盟の先輩からこういう話を聞くのは貴重だ。

 

特に打倒帝国を成し遂げる為の裏の戦いというのは。

 

誰も話そうとしないし話してはいけないのが暗黙の了解だからだ。

 

テロリズムにも似た戦い方は新共和国のクリーンなイメージを大きく損なう。

 

今更と言われればそれまでだが政府としてはそう言った意向があった。

 

そこに何百人、何千人といった人々の犠牲と想いがあったとしても語ることは許されなかった。

 

「友軍の哨戒機に信号を出しておきたい。そこのスイッチを押してくれ」

 

「これか?」

 

「違う」

 

「じゃあこれ?」

 

「違う」

 

流石にジェルマンはムッとした。

 

「じゃあどれだよ」

 

「その緑のスイッチだ、そう、それ」

 

不機嫌そうにジェルマンはスイッチを押した。

 

態とらしく悪態をつくように思いっきり背もたれに寄りかかった。

 

Uウィングの航行音だけが静かに聞こえる。

 

すると前方のキャノピーの前から何かが見えた。

 

先に気づいたのはジェルマンだった。

 

指を向けジョーレンに尋ねた。

 

「なあ、あれは友軍機か?Xウィングの羽のようなものが見えるぞ」

 

ジョーレンは操縦桿を握ったままジェルマンの指先を凝視した。

 

確かに小さいがXウィングのSフォイルに酷似していた。

 

だが不思議な事に機体のセンサーにはなんの反応もない。

 

まるで目の前にいるXウィングは幻想か将又亡霊のような扱いだ。

 

「センサーは反応していない…妙だな」

 

「ヤヴィン4で最新の…例えばステルス性の高いXウィングが開発されたとか?」

 

「じゃあ聞くがそういう噂を聞いたことあるのか?俺はともかくお前は中央に勤められるほどのエリート情報部員だ。そう言った類の噂は大なり小なり聞いた事あるだろう」

 

ジェルマンは記憶を必死に記憶を探ったが特にそう言った話は思い出せなかった。

 

彼はゆっくりと首を振った。

 

「だろうな…となると前方の機体は…おい待て…」

 

突然ジョーレンがUウィングのキャノピーにへばりつくように凝視した。

 

彼が邪魔で全く何も見えないが何があの先にあるのだろうか。

 

ジョーレンの感想を待つばかりだ。

 

「どうした?何があったんだ?」

 

「おかしい…急に機体が増えたぞ…ほらあれ」

 

今度はジェルマンがジョーレンが指す指の先を見つめた。

 

確かにYウィングのコックピットのようなものが見えるしAウィングのエンジンのようなものも見えた。

 

「…少し飛ばすぞ」

 

ジェルマンがしっかり座席に着くのを確認すると操縦桿を一気に前に倒しペダルを踏み込んだ。

 

機体のコントロールをシールドとエンジンに全て振り分け更に加速させる。

 

おかげで衝撃の実態とかなり早くご対面出来た。

 

確かに“亡霊”というのはあながち間違いではないのだろう。

 

Uウィングの目の前には戦いで散ったスターファイターの亡霊が散らばっていた。

 

2人ともあまりの光景に絶句した。

 

TIEファイターのパネルやポッドももちろん存在するがそれ以上に新共和国軍機と思われる破片が多く散らばっていた。

 

「一体ここで何が起こったんだよ…」

 

ジェルマンはかつてスターファイターの一部だった成れの果てを危機迫る表情で見つめながら独り言のように呟いた。

 

ジョーレンは機体に破片が当たらぬよう最大限の注意を払いながら破壊されたスターファイターのデブリ帯を通り抜けようとしていた。

 

所々艦船らしきものが混ざっているがそれ以上に新共和国軍のスターファイターの破片の方が多い。

 

TIEのパネルよりボロボロに焦げたXウィングの破片の方を多く見るなど奇妙な光景だ。

 

「大規模…出なくともかなりの大きな戦闘があったはずだ…そして新共和国側は大損害を被った」

 

「相討ちの可能性は?」

 

「…多分惨敗か辛うじて撤退した感じだろうな…相討ちにしては帝国軍の機体や艦船が少なすぎる」

 

悲しい推測だがこれだけの惨状を見るに確かにこの地の新共和国軍は大損害を被ったのだろう。

 

それだけ破壊された友軍機が戦いの苛烈さを物語っていた。

 

「こんな有様じゃヤヴィン4に残ってる部隊ももうガタガタかもな…」

 

「ヤヴィン4の航空戦力があれば以前のように奇襲攻撃がかけられると思ったのに…」

 

悲観的になるジェルマンにジョーレンは今考えた持論を投げかけた。

 

「多分だが…その奇襲攻撃をしたせいでこうなったんじゃないかな」

 

ジェルマンは唖然とした表情でジョーレンの方へ顔を向けた。

 

ジョーレンは機体を操縦しなければいけない為まっすぐ前を向いたままだった。

 

「なぜそう思うんだ?」

 

ジェルマンは下手に考えずジョーレンの意見をまずはしっかりと聞く事にした。

 

「ひどい有様ではあるがよく見れば新共和国軍の艦船は少ないように見える。船の破片が少ないからな」

 

確かに彼のいう通りスターファイターの破片や多くあっても船の破片は少ない。

 

むしろ一隻もないように見える。

 

「多分セオリー通りに艦隊が支援しつつスターファイターを展開して戦列を崩した後艦隊で仕留めようとして返り討ちにあったんだろうな」

 

「そう思う理由は」

 

「お前もホズニアンで見ただろ、あの帝国軍のTIEインターセプターやTIEブルートの大軍を。少なくとも俺がパスファインダーにいる頃はあんなものが大量に飛んでいなかった」

 

確かに第三帝国になってから帝国はスターファイター類にも力を入れている。

 

今じゃ本来主力であるはずのTIEファイターはすっかり見かけなくなりTIEインターセプターやTIEブルートといったより性能の良い機体がスターファイター隊を構成している。

 

ホズニアン・プライムの時も新共和国スターファイター隊は新しいTIE部隊に次々と返り討ちにあっていた。

 

「俺の頃は…まあまともな戦力がスターファイターしかなかったからあの部隊は地上であろうと宇宙であろうと何処にでも展開された。おかげで今程では無くても毎度損害は大きかった」

 

新共和国が反乱同盟だった頃、艦隊と呼ぶには見窄らしい部隊と僅かな歩兵部隊しか当時の同盟軍にはなかった。

 

その為唯一真っ向から帝国軍に対抗出来る戦力といえばスターファイターしかなく多くの機体が自由の尖兵として最前線で戦った。

 

結果同盟の英雄は比較的パイロットから多く選出されるようになった。

 

デス・スターを破壊したルーク・スカイウォーカーや彼の中退を引き継いだウェッジ・アンティリーズ、己の命すら捧げたアーヴェル・クライニッド。

 

新共和国市民は特に英雄的な働きをしたXウィングとそのパイロット達を愛し尊敬の眼差しで見つめていた。

 

だがここに多くの犠牲があった事はあまり知られていないだろう。

 

同盟時代に偉大な働きをしスカリフで散ったアントック・メリック将軍やレッド中隊を率い戦死したガーヴェン・ドレイスや同じくゴールド中隊を率いたジョン・ヴァンダー。

 

他にも数え切れないほどの多くのパイロットが戦場に散っていった。

 

「特殊部隊よりもアイツらの死亡率は高かったと思えるほどだ。だがその分戦術はずば抜けて効果的だった。連中の要塞を二つも吹き飛ばすほどな」

 

第一も第二もデス・スターはスターファイターの攻撃が致命的な一撃となった。

 

「連中は屈辱に思ってるはずだ。対抗策は多く生み出されただろう。それに反して…これは偏見だが…今の新共和国はそれに対して進歩が少ないように見える」

 

言い逃れできない。

 

新共和国がありとあらゆる点で進歩をやめてしまったのは拭い切れない事実だ。

 

ジェルマンもそれを痛感していたし亡きストライン中将もそれを時々嘆いていた。

 

政治だけではなく軍事の面でも新共和国は進歩というより大きく後退したように感じる。

 

それに対して帝国は一歩どころか百歩近く進歩を遂げたように感じた。

 

ずっと新共和国との関係が閉ざされていたジョーレンだからこそより客観的に見えたのだろう。

 

「多分このまま戦っても今の帝国には勝てない。むしろ敗北を重ねる一方だ…今の軍は艦隊もスターファイターも歩兵も特殊部隊も恐らく全て帝国に遅れをとっているだろう」

 

「つまり…従来の戦術ではもう帝国に太刀打ち出来ないという事か…?」

 

認めたくはない。

 

だが連戦連敗の状況を見るに避け難い真実なのだろう。

 

「あいつらはきっと俺たちを倒す為に俺たちをずっと研究してきたんだ。兵器だけじゃなくて戦術やら何やらもな」

 

確かにジョーレンの言う通りかも知れない。

 

新共和国は油断し過ぎた。

 

帝国を背に平和に浸かり過ぎたのだ。

 

聞いた話によれば帝国軍は新共和国艦対最大級の主力艦であるスターホーク級の特殊兵装である強力なトラクター・ビームを打ち消す方法を見つけたらしい。

 

新共和国軍のスターファイターを遥かに上回るTIEシリーズが戦場で多く見かけられたとか。

 

それだけではなくかのデス・スターを彷彿とさせる超兵器を保持したインペリアル級も戦場に出てきたそうだ。

 

元より帝国軍に劣っていた新共和国地上軍なんかは更にひどい有様だったそうだ。

 

ありとあらゆる兵器をそして戦術を帝国軍は研究し全てを乗り越えた。

 

そしてその集大成を新共和国は大敗と崩壊という代償で完成させてしまった。

 

「…なあジョーレン、僕達は…勝てるかな…」

 

ジョーレンは目線を落とし不安な表情を浮かべるジェルマンをチラリと見つめた。

 

無理もないだろう。

 

彼は本来平和な時代を生きていくはずだったのだから。

 

ましてやこの目で祖国が滅びる様など見るとは思いもよらないだろう。

 

この若さにして彼はこの過酷な世界で敗者側として生きている。

 

不安にならない方がおかしいだろう。

 

「確かにこのままじゃ勝てんだろうな。でも負けてもなお立ち上がり続けるのは俺たちの専売特許だろ?連中を上回る工夫をしてやればいいのさ」

 

「…そうか…そうだよな!」

 

彼の表情は段々元に戻ってきた。

 

ジェルマンの良さはこういった立ち直るスピードの速さだろう。

 

決して冷徹ではなく敗北や人の死を悼みそれをバネとして立ち上がる。

 

今まで心を押し殺して冷徹な兵士として戦ってきたジョーレンにはない取り柄だ。

 

「ほら、そうこうしてるとお出迎えだぞ」

 

Uウィングのセンサーが何かを検知しピーピー音を鳴らしている。

 

友軍を発見したときの音声だ。

 

前を見つめると哨戒機と思われるXウィングが2機前方にいた。

 

「彼らに英雄の地を案内してもらおうじゃないか」

 

 

 

 

ヤヴィン4の軌道上には思った以上の大艦隊が駐留しておりジェルマンたちを軽く驚かせた。

 

2人は地上のマサッシ族が創り上げた神殿とはまた別の司令本部に案内された。

 

司令部には現在最高司令官であるライカン将軍、駐留艦隊の司令官であるゼロヴァー准将、地上軍の師団長であるブレン・ダーリン准将などが揃っていた。

 

「つまりホズニアンの攻撃を無事に生き延びた者達がディカーに集結しているのだね」

 

「はい、オーガナ議員やガー議員、ディゴール准将など含めた僅かな生存者ですが…」

 

辛い表情を浮かべるジェルマンにライカン将軍は気持ちを察しそれ以上言わなくていいと無言で静止した。

 

他の将校や高官達は後ろでひそひそと話を始めていた。

 

小さなざわめきが司令室に響く。

 

「こちらもマジノ線から何とか脱出した新共和国艦隊がある。まあ無傷とは言えんが…」

 

「ですがディカーの戦力と比べればかなり強力で頼もしい味方です」

 

「ジェルマン、通信機のセットが完了した。ディカーとの通信を繋ぎます将軍、盗聴や傍受の危険性は?」

 

「ない、こればかりは断言できる」

 

助かりますと一言添えてジョーレンはホロテーブルに繋いだ通信回線を起動した。

 

見る見るうちにレイアの姿が映し出され英雄の無事に将校達から喜びの歓声が湧き上がった。

 

レイアも同じく彼らの無事を安堵したようで優しい柔和な表情で見つめている。

 

『ライカン将軍、それにみんな無事で何よりです』

 

「いえ、姫…いや議員こそご無事で本当に良かった。ホズニアンの陥落と元老院議員達の処刑を聞いた時に死んでしまったのではないかと心を痛めました」

 

レイアとライカン将軍は同じオルデラン出身でありその親交はとても深かった。

 

『亡くなった多くの同胞達に哀悼の意を評します…マジノ線で命を散らした大勢の将兵達も』

 

「同じ思いです議員、ですが泣いてばかりではいられません。帝国軍は既にヤヴィン4にも何度も艦隊を展開しています」

 

ヤヴィン4も危機的状況にあることは変わりなかった。

 

むしろ帝国軍に発見されていないディカーの方がまだ安全と言えるだろう。

 

既に帝国軍は北東戦線の一環としてゴーディアン・リーチへの大規模な侵攻計画を考えていた。

 

「ストライン中佐や、ストライン准将含めた優秀な指揮官やパイロット達が大きな犠牲を払い何とか防いでいる状態です」

 

『ストライン…?』

 

その言葉にレイアとジョーレンとジェルマンは反応した。

 

レイアはジェルマンとジョーレンがその名前を口にしているのを何度か小耳に挟んでおり名前を覚えていたのだ。

 

そしてレイアよりも反応の大きかったのは当然ジェルマントジョーレンだった。

 

仮に別人だとしても反応してしまう。

 

「えっとディクス・ストライン中将と甥っ子のラクティス・ストラインです…」

 

2人は困惑した様子でレイアに敬礼していた。

 

レイアも2人を戸惑わせてしまったという失敗の念が表情に現れていた。

 

だが間違いない。

 

あの2人こそストライン中将から遺言を託されたディクス・ストラインとラクティス・ストラインだ。

 

「2人とも、市民の受け入れや帝国への防衛戦で多大なる戦果を挙げてくれています」

 

ライカン将軍はそう補足を入れて2人のストラインを評価した。

 

ジョーレンはただ驚いた表情で見つめていたがジェルマンは思わず声が出てしまった。

 

「あんた今…ストラインって…」

 

2人は更に稀有怪訝な表情を浮かべジェルマンに近づいてきた。

 

ジェルマンはあまりの衝撃に今自分がしてることが正確に認識できていなかった。

 

「2人ともストラインだが…何か?」

 

「ああ事情は後で話す、あんたらの親戚から託された事情をな。今はダメだジェルマン」

 

「あっああ…すいません…」

 

ラクティスもディクスも困惑したまま元に戻っていった。

 

中断されてしまった話が再び再開された。

 

『あなた方のように今、新共和国の仲間達はかつてないほど危機に晒されています。だからこそかつてのような同盟が必要なのです』

 

「ですが軍は既に分裂し連携を取れる状態ではありません。辛うじてアクバー元帥の艦隊とは連絡を取れるほど我々はバラバラになってしまった…」

 

将校達は俯き状況の最悪さを感じ取らせた。

 

だがレイアだけは真っ直ぐ彼らを見つめ強い意志を灯した眼光で彼らに訴えかけた。

 

希望はまだ死んではいないと。

 

『ですが我々の希望は…先の戦いから繋がれてきた希望はまだ潰えてはいません。私も、ライカン将軍も、みんなもまだ死んではいない。希望を繋げる明日があるのです』

 

レイアは1人1人に伝えるようゆっくりと、それでいてはっきり彼らに言葉を伝えていった。

 

将校達の顔が上がりレイアを見上げている。

 

そこに希望があるかのように。

 

『我々はまだ戦える、だからこそ1人ではなく仲間が必要です。幸いにも我々は多くの仲間が未だ各地で戦い続けてる。私はジルディール中尉とバスチル大尉に同盟を構築する使いを頼みました』

 

2人は力強く頷く。

 

壮絶な旅になろうとも彼らはそれをやり遂げる義務があった。

 

『反乱同盟…新共和国…そして新たな自由のための組織を作るのです。三番目の“()()()()”を』

 

希望の灯火が息を吹き返した瞬間であった。

 

 

 

 

-旧新共和国首首都 ホズニアン・プライム 帝国総督府-

かつて元老院複合施設と呼ばれた民主主義の会場は今では帝国が統治する海上に成り果てていた。

 

ホズニアンのモフフィリン・ラヴァンタインは順調に占領を進めていた。

 

市民達は当初の予測よりも帝国の統治に抵抗せず逮捕者数も予測された数値より48%も低かった。

 

ホズニアン・プライム攻略作戦は大成功したと言えよう。

 

総督府の庭園には逮捕された新共和国のホロネット・ニュースで活動していた者達が集められていた。

 

彼らは再び中央政府となった第三帝国にとって不都合な存在でしかなかった。

 

下手なプロパガンダを彼らの放送技術で流されたら面倒な事になるし生き残った各地の残党新共和国軍に合流されたら諜報員としてプロパガンダ以上の効力を上げてしまうかもしれない。

 

それに一部のホロネット・ニュースの記者やキャスター達は帝国に対してかなり反対的だった。

 

やれ「報道の自由を守れ」だの「帝国には屈しない」だの「我々は最後まで戦う」だの使いもしない権利や自由を並べたて反発した。

 

当然帝国は親衛隊保安局や帝国保安局を動員しホロネットのニュース局を制圧。

 

ただ反発するだけで何かが変わるのは新共和国までだ。

 

時代はもう再び帝国の時代となった。

 

死ぬまでせいぜい見せ物として反発してくれば良いとフューリナー上級大将は庭園に集まる愚か者どもを見つめてそう思った。

 

彼は統治の視察も含めてホズニアン・プライムに訪れていた。

 

それと同時にとある秘密の命令も下そうとしていた。

 

「ホズニアンの統治は上々…未だ亡国の姫は見つからず、英雄達は散り散り…そして滅びた騎士の末裔は…」

 

この騎士を見つけるのに一体どれほどの時間が掛かったのか。

 

いつの時代においてもあの騎士は帝国の手を煩わせる。

 

この時代に現れた新たな最後の騎士にして、暗黒卿の息子。

 

皇帝の仇でもあるその人物は。

 

「最後の騎士は寺院を巡り時代を逆行させようとしている…だがそうはさせん」

 

通路の影から誰かが1人出てきた。

 

相変わらず驚くほど音がなく気配も感じない。

 

並の兵士では不可能な技量だ。

 

「既にパージ・トルーパーとデス・トルーパーの隊を派遣している。お前もあのダーク・トルーパー隊を率いて陛下の仇討ちだ。場所は…“伝令(センチネル)”が導いてくれる」

 

声すら発さない彼女は静かに頷き暗闇へと消えた。

 

全く少しは言葉を交わして欲しいものだ。

 

これでも私は彼女の上官なのだ。

 

これからは総統の手の者として役立ってもらうのだから。

 

まずはその最初の任務として時代の反逆者を討ってもらう。

 

あの騎士達を葬るのはいつの時代だって皇帝の名を受け継ぐ者だ。

 

そしてそれは今の時代において皇帝の手の者が最も相応しい。

 

「ルーク・スカイウォーカーを殺すのはお前だ、“マラ・ジェイド”」

 

皇帝の敵討ちだ、面白いことになってきた。

 

同じ特別な力を使う者同士が殺し合う。

 

せいぜい両方潰れてしまえばいい。

 

新世界にフォースなど不要だ。

 

悪魔に似た笑いが復讐の剣を最後のジェダイへ差し向けた。

 

 

 

 

 

 

「そうか…なんとなく嫌な予感はしてたんだがな…」

 

ストライン中将の弟であるディクス・ストライン准将は寂しそうに空を見上げた。

 

先程まで話を聞いていた彼の甥っ子ラクティス・ストライン中佐は途中で少し席を外すと言い残し去っていった。

 

彼も男で立派な戦士だ、涙はあまり見せたくないのだろう。

 

ジェルマンだってそれは同じで話している最中も必死に涙を堪えていた。

 

「たくよ…どいつこもこいつも勝手に逝きやがって…末っ子を1人にしちゃいけねぇって言われてたはずなのによ…」

 

涙ぐんだディクス准将の声が悲しく通路に響いた。

 

幸いここには彼らしかおらず彼の声は誰にも聞かれてはいなかった。

 

「…ありがとうな中尉、それと大尉。その事を伝えてくれなきゃ俺達は家族の死に気づけなかった。本当に感謝している」

 

准将は2人に深々と頭を下げた。

 

ジェルマンは黙って頷きジョーレンは軍帽を深く被った。

 

「で、兄貴はノヴァンを保護して欲しいと言ったんだな?」

 

「はい…レンディリのアカデミーにいると言っていましたが…」

 

ディクス准将は苦悶の表情を浮かべ顎に手を当てた。

 

「レンディリか…」

 

「何か問題でも?」

 

ジョーレンは俯くディクス准将に率直に尋ねた。

 

准将は「いや」ということわりを入れてから話し始めた。

 

「レンディリ・アカデミーは帝国軍の奇襲を避ける為に全生徒を連れてキャッシーク方面へと疎開したと報告が入っていた。既にレンディリは陥落済みだしそちらの方が可能性は高いかもしれん」

 

「なるほど…ありがとうございます准将」

 

「いや当然の事をしたまでだ。それでお前達は次どこへ行くつもりなんだ?」

 

ディクス准将はふと冗談半分に2人に尋ねた。

 

彼らの旅はまだここでは終わらない。

 

たとえ滅びたとしても新共和国のかつての仲間達は大勢いる。

 

バラバラになったとしてもそれを再び繋ぎ止めるのが彼らの役目だ。

 

危険で大変な役回りになるだろう。

 

それと同時に彼らの努力は全く見えないものとなる。

 

それでも彼らには使命が託され、彼らはそれを了承した。

 

今のディクス准将に出来る事は限られている。

 

それでも旅の行き先を聞いておきたかった。

 

宇宙を見つめた時に彼らの旅路を祈って置けるように。

 

「一応モン・カラに向かうつもりです。ですがラクサス方面へも向かうかもしれません」

 

「そうか…気をつけてな、頼んだぞ」

 

「はい!」

 

2人とも敬礼しディクス准将も同じく敬礼で返した。

 

すると1人の士官がジェルマン達に声をかけた。

 

「ジルディール中尉、バスチル大尉、ライカン将軍がお呼びです。第一作戦室までお越し下さい」

 

ジェルマンはディクス准将を見つめ軽い別れの挨拶を告げた。

 

ジョーレンも同じように軽い敬礼で別れを告げた。

 

一方の准将はただ静かに手を振るだけだった。

 

「全く…兄貴はいい部下を持ったな…」

 

残された者は託して逝った者達の遺志を更に未来へと繋げなくてはならない。

 

それはとても重過ぎるバトンだ。

 

だけれど決して離す事は出来ない。

 

ゴールに辿り着くまで、将又同じようにバトンを引き継がせるまでつかみ続けなくてはならない。

 

それはたった1人が受け継ぐだけかもしれないし大勢がその遺志を引き継ぐかもしれない。

 

ストライン中将が遺した遺志は後者にあった。

 

彼の残された家族と部下達がバトンを引き継いでいくだろう。

 

その為にジェルマン達の旅路はあるのだから。

 

ストライン中将の意志は死してなお勝利に向かって突き進んでいた。

 

 

 

つづく




ちょりーす

寿司屋っす(嘘つくなよ)

えぇついに20話らしいですが実感はないですねはい


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