-親衛隊青年将校の日記より抜粋-
幼さというのは時に残酷なものだ。
良いも悪いも判断が付かない。
過程を楽しむだけでその結果がどうなるか想像がつかない。
だからこそ危険なのだ。
人はみんな幼さを忘れ純粋無垢ではいられなくなる。
これは仕方のないことだ。
悲しい運命にして己を更なる高みに進める為の多大な犠牲、
だからこそ幼さを持ち合わせる子供は危険なのだ。
純粋さを忘れた人々に利用される可能性がある。
特にそれが大きな力となれば。
「マイン、少し買い物に……マイン…?」
ユーリアはバックを持ってリビングに戻るなり幼い自分の子に驚愕した。
何もマインラート自体に異常はない。
あるとすれば彼のやっている行動とその状態だ。
「お母さんどうしたの?」
マインラートは純粋な瞳でユーリアを見つめた。
どうやらマインラートは自分のしている事の重大さがわかっていないらしい。
彼はさも当然のようにその現象を引き起こしていた。
もし仮にユーリアが軍や過去に詳しくなければ反応はもっと大きなものになっていただろう。
ユーリアは愕然とした様子でゆっくりとマインラートに近づいた。
彼はじっと母親の方を見つめている。
ユーリアは今にも泣き出しそうな様子だった。
「お母さん悲しいの?どうしたの…?」
その状態を作り出したままマインラートは母親の方へと歩み寄った。
ユーリアに恐怖はなかった。
ただひたすらに悲しかった。
自分の子に迫る悲しい運命が。
母親ですら計り知れない運命が。
ユーリアはぎゅっとマインラートを抱きしめた。
そこで集中が途切れたのか“
「大丈夫…?」
自分の子供の声がユーリアの悲しさをさらに誘った。
彼女ではどうしようもない。
軍人である彼の夫、ジークハルトですらどうしようもない事だ。
人は運命と“力”には逆らえない。
非力さと悲しさと無力感が僅か一瞬でユーリアの心を包んだ。
「ごめんね…ごめんね…」
彼女は泣きながら謝った。
誰が悪いわけでもない。
ユーリアもジークハルトもマインラートも。
ただ悪いのはこの世界とその力だけだった。
だがフォースの意思はその様子を嘲笑うかのように幼いマインラートに力を与えそれを目覚めさせてしまった。
-ヤヴィン4 残存新共和国軍総司令部-
司令室では重苦しい雰囲気でディカーにいるレイアやディゴール准将を含め会議の間を開いていた。
議題はとても深刻なものだった。
「ですがあのような連中信用できるはずがありません。きっと何か企んでるに違いない」
「しかし戦力は必要だ…特に防衛戦での損失は埋めておきたい…」
将校達はそれぞれ意見を口にし議論を重ねていた。
ある種彼らの命運を左右する議題だ。
1日前“ベトレイアル・エンジニアリング社”を名乗る惑星企業が彼らに商談を持ちかけてきた。
それはクワット・ドライブ・ヤード社から譲り受けた艦船数十隻と今後生産される艦船やスターファイターを分け与えるというのだ。
敗戦続きでまるで助けるメリットのない自分達に手を差し伸べるなど俄には信じがたい話だ。
だが戦力は少しでも欲しいのは事実だ。
帝国軍相手に今の戦力ではまともに太刀打ちする事など不可能に近い。
それでも旧反乱同盟時代よりはだいぶマシな状況なのだが。
「ベトレイアル社には旧同盟時代からの信頼のおける人物が何人もいます」
「だが警戒はすべきだ、特に裏切り者には慎重にならんと…」
ダーリン准将は危険を促し慎重になるべきだと唱えた。
「亡命者の件もある。信頼のおける人物だとは言えダーリン准将の言う通り慎重になるべきだ」
ファール・マクォーリー将軍はダーリン准将の意見に賛同した。
確かにあの亡命者の件はさまざまな情報や人手を引き抜かれ手痛い打撃となった。
報告によればスターホーク級最大のトラクター・ビームも設計図を盗み出され妨害装置を作られてしまったらしい。
まだ帝国艦隊全隻に配備されてるわけではないとはいえかなりの打撃だ。
「ですが艦船もスターファイターも欲しいところです。ただでさえ先日の防衛戦であれだけのファイターを失ったと言うのに…」
ゼロヴァー准将が口を開いた。
彼はダーリン准将やマクォーリー将軍とは違い純粋な宇宙軍の艦隊司令官であり他の将校達よりも艦隊やスターファイター戦力の悲惨な状況を理解していた。
「敵のスターファイター戦力は以前よりも強大でもはや既存の戦力で圧倒することは難しいでしょう。その為にも艦隊戦力を強化し一部ではなく全体で敵を制するべきです」
「私も危険だとは思うが一応賛成だ…安定して艦艇やファイターの供給が受けられるのはありがたい」
ストライン准将はゼロヴァー准将の方に賛同した。
2人の旧共和国時代の付き合いもあるがそれ以上に艦隊の損耗率を知っての事だった。
『現状の戦力は重々理解している。私も出来れば彼らの恩恵に縋りたいところだ』
『ひとまず彼らを頼りましょう。今は疑心暗鬼になっている場合ではありません』
これで賛成派の勢力の方が大きくなった。
今のところ純粋な文官のレイアの賛成は大きいだろう。
「では念には念を入れて調査隊を派遣しましょう、なるべく手は打っておかないと」
ライカン将軍は慎重派の意見も含めてそう提言した。
彼もかつて故郷に訪れた惨劇以来より慎重に、新共和国では珍しい冒険的危険性を常に破棄した作戦を考えをする指揮官だった。
同盟時代の英雄達とは全く対照的な人物だろう。
『それがいいだろう、あのジルディール中尉とバスチル大尉も任務が終わり次第そちらに回すのはどうでしょうか?優秀な人材を今はフル活用しなければ』
ディゴール准将は隣にいるレイアに判断を仰いだ。
彼女は静かに了承の頷きを見せ他の将校達も納得した。
『そういえばあの2人はどうしていますか?』
レイアがふとライカン将軍尋ねた。
「間も無く次の地点へ、モン・カラへ向かう準備をしています」
モン・カラ。
水の星で反乱同盟勝利の一因となった立役者の惑星。
戦死された名将ラダス提督や今も戦い続けているアクバー元帥の生まれ故郷。
ジェルマンとジョーレンの到来をモン・カラマリの元帥は首を長くして待っていた。
-帝国領 エクスパンション・リージョン 惑星アウシュ 中央収容所-
閑散としたこの辺境の惑星に珍しく何百、何千の船が行き来していた。
宇宙港は常に大勢の人々で満員、船が一隻飛び立てば別のもう一隻が降り立つ。
人の流れは濁流のように外へと放出され新しい我が家の場所を探して無機質な街に放り出される。
その様子を武装した親衛隊保安局の将校や親衛隊のストームトルーパーが見張っているのはあまりに当たり前の光景すぎて誰も気にはしなかった。
ただ下手をすれば即座に銃殺される、それだけだ。
その証拠に時々怒声や喧騒が聞こえその度銃声が鳴り響いた。
銃声の後、怒声も喧騒も命と共に掻き消される。
武器も勇気もない彼らはそれに対し反旗を翻すこともできない。
せいぜい今日を生きられるように怯えて命令に従うだけだ。
その様子を人間というよりはドロイドに近い保安局員とトルーパー達は黙って監視していた。
銃声も死体も流血も気にしようとしない。
その間にも空を埋め尽くすほどの船が綺麗な艦列を生み出しながら行き交いしていた。
そのほとんどは帝国軍のものにしては珍しく輸送船ばかりだった。
時々軌道上や上空にインペリアル級やアークワイテンズ級が留まっているだけで行き来している艦の全てが輸送船や監獄船ばかりだった。
それもそのはず、この場所に運び込まれるのは兵器や兵員ではない。
ただの民間人なのだから。
いや、彼らに言わせればただの民間人ではないのだろう。
“
ここに運び込まれる市民達が何も全員犯罪者な訳ではない。
むしろ善良でなんの罪も犯したことのない者が大半だ。
だが彼らはこの血塗られこれから塗り直される悲劇の地に強制的に移住させられた。
理由はなぜか。
“
それが代理総統からの理由だった。
とぼとぼと暗い表情で移動する人々を見れば全員が人間ではないエイリアン種族だった。
クオレンやモン・カラマリ、ザラブク、デュロス、クリーヴァー、ニモーディアンなどなど。
人間の種族など軍人以外誰1人おらず監獄のような街を徘徊する人らしきものは全てエイリアン種族だ。
「ついに…ですね」
保安局員の中尉が収容所の司令センターから市街地を見つめて感動したように独り言を漏らした。
側から見ればこれのどこに感動する要素があるんだと言わんばかりの狂気の光景だが中尉の目は完全に染まりきっており見えてはいても盲目になっていた。
「総統閣下の理想郷を叶えるための第一歩がようやく始まる…尊い永遠の平和への第一歩だ」
ヘイス中佐が中尉の言葉に続いた。
彼らは本気でこのホロコースト計画が正しいと、平和をもたらせると信じている。
自分達がこれから彼らに何をするかも含めて信じているのだ。
「皇帝陛下は聡明で賢明であられたが…勇気と覚悟が足りておられなかった…自らの手をどれだけ血で染め上げても良いという覚悟が」
それは幻想で言い訳だ。
だがこの言葉を伝え反論しようとする者はこの場に誰1人としていなかった。
「中佐、フレインヘス総督がお呼びです」
「今いく」
ヘイス中佐は白い軍服の襟を正し軍靴の足音を立てながらその場を後にした。
血塗れの平和を生み出す惑星収容所は完全に稼働中であった。
-エグゼクター級スター・ドレッドノート 臨時会議室-
正規軍の数十個艦隊を引き連れ宇宙軍の総旗艦リーパーは前線を目指して航行していた。
大勢の高官たちを乗せて。
軍の会議の為多くの高官達がホログラムを返さず直接リーパーの会議室に集まっていた。
地上軍、宇宙軍、スターファイター隊、保安局、情報部問わず多くの高官がいた。
ただし親衛隊の軍服を着た非正規の兵は1人たりともいなかった。
「我々は総統の命令通り北東に群がるヤヴィン4、ラクサス、モン・カラの新共和国残党を殲滅する」
高官達のテーブルの前に北東の星図が映し出され前線の様子が露わになる。
まだ全部隊敵とは衝突していないようだ。
「恐らくこれが想定されているうちの最後の大規模戦になるだろう」
「長いようで短い戦いだったな」
「だがこれで新共和国や敵が全て滅びる訳ではない。戦いはまだまだ続く」
将校達は頷き長きに亘る新共和国や反乱分子との戦いの日々を思い出し感慨深く天井を見上げていた。
正規軍シウォード・キャス参謀長は報告を続けた。
彼はたまたま放棄されたダントゥーインの調査に戻っていた為ヤヴィン4での悲劇で命を落とさずに済んだ。
亡きカシオ・タッグ大将軍や現在も地上軍副長官として活動中のトレック・モロック上級将軍と並んで貴重な生存者となっていた。
「我々は主に南側の残党軍討伐及び捜索、そしてヤヴィン4の完全攻略にある。8年前の雪辱を果たし新たな時代への礎とせよ…と総統は仰られていた」
洒落た言い回しだが正規軍の将校達を煽るには十分だった。
将校達頷き予想通り戦意を昂らせていた。
と、同時に気になる点もいくつかあった。
それを口に出したのは宇宙軍司令部参謀のトーリウス・カイント提督だった。
「…しかし戦力が戦力が一曲点に集中しすぎている。現状の戦力ならもっと広範囲に展開してもまだ余力がある状態ですが」
大半の戦力がヤヴィン4に集中しており本来向けるべきであろう南側の戦力は北東側よりも半分以下となっていた。
これでも帝国軍の戦力は以前よりも豊かではない為展開できる部分も限りがあるのだが。
「絶対的な力を見せつける事為にはこれくらい必要でしょう。一兵たりとも逃さないほどの戦力で敵を絶望の淵に叩き落としてやるのです」
地上軍次席参謀のプライズ・デイツワインズ中将が持論を展開し推察しようとした。
確かに圧倒的な力からなる恐怖と絶望は一つの戦場には留まらないほどの効力を持っている。
しかし疑問点は別のところにもあった。
「では何故我々よりも親衛隊の方が主力なのですか。あんな私兵軍隊が国防を担うなど到底解せるものではない!」
スターファイター隊第四軍団長とスターファイター隊幕僚を兼任するカーゼル・シュタウント将軍は直属の上官のローリング大将軍や他の将校を見つめて苛立ちを吐き捨てた。
彼は他の正規軍人と同じく親衛隊を快く思っていない。
国家を守る使命は現在は正規軍と呼ばれ続けている帝国軍が全てを担うものだと考えているからだ。
それを他の存在に、ましてや私立組織に僅かでも担わせるのが我慢ならなかった。
「将軍の言う通りです、本来親衛隊の存在意義は軍の流出を防ぎ戦力を維持し続ける為の隠れ蓑の組織だったはず。それが何故今は本来母体となるべき我が軍より権威を拡大しているのですか」
ファイター隊次席幕僚スカイング・ストラナー少将はシュタウント将軍に続いた。
ローリング大将軍もそうだが特にスターファイター隊では親衛隊に対する不満が大きくなり表面化していた。
「今すぐにあの組織を解体すべきです!このままでは邪な考えを持つ私立軍に国防を完全に乗っ取られてしまう!」
不満を持つのはスターファイター隊だけではなかった。
宇宙軍作戦副部長のハイエス・ヘルステント中将が全員に向かって考えを述べた。
彼の憤怒を込めた発言は全員に響き渡り地上軍スターファイター隊問わず頷く将校が現れた。
宇宙軍長官オイカン上級元帥が無言で静止するまでヘルステント中将は怒りを露わにした表情を浮かべていた。
「この会議は今後の戦略、戦術を話し合う為の会議であり親衛隊や軍内部の事でくだらない口論を重ねる為のものではない」
第一方面軍司令官のエルゲナント・マーゼルシュタイン地上軍元帥は苛立ち本来の議論とは離れた事を言う将校達を諌めた。
彼はヴィアーズ大将軍と共に新共和国侵攻作戦で重要な役割を果たしたディープ・コアからの奇襲を考えた帝国勝利の立役者であり代理総統や市民達からの評価も高かった。
上級将軍から元帥に昇進した彼は方面軍司令官として様々な指揮権を得た。
また実直な帝国軍人としても知られており軍からの信頼も篤かった。
「マーゼルシュタイン元帥の言う通りだ。確かに親衛隊は我々としても忌々しくはあるが決して敵ではない。今行うべきは敵を如何に倒すかの議論だ」
ローリング大将軍は親衛隊嫌いの将校達の意見も汲み取りつつ脱線した議題を元に戻そうとした。
こう言う面が彼を大将軍へと押し上げた理由だろう。
他の将校みたくいっときの感情に押し流されてしまえば精々中将、将軍で止まっていた。
「宇宙軍としては長期的な包囲戦術を取るべきだと思います。これだけの艦隊を動員出来るなら物量を活かすべきだ」
オイカン元帥は先行して戦術を述べた。
それに続いたのはヴィアーズ大将軍だった。
「機甲兵力を使って電撃的に敵部隊を突破し戦線を崩壊させる。その間に宇宙軍が包囲網を完成させ撤退させる事なく崩壊した戦線を攻撃し続ける」
「機甲戦力だけでなくスターファイター隊との連携も必要になってくるだろう」
マーゼルシュタイン元帥はチラリとローリング大将軍らの方を見つめた。
ローリング大将軍は自慢げに微笑を浮かべ軽く頷いた。
ようやく会議は沈静化し元通りになり始めた。
彼ら実直な上級将校らのおかげで正規軍はひとまず我を忘れることはないだろう。
この場にいるほとんどがそう思っていた。
帝国の更なる勝利は小さな不満と共に近づきつつあった。
「そうだとも、大変だったんだぞ?偽造も何もかも。少しは苦労を労って欲しいものだよ」
暗く明かりのない一室でヴァティオンは誰かに向かって話していた。
クワットの一室ではあるのだが彼がいつもいるオフィスではなかった。
とにかく明かりの少ないくらい場所だ。
手元から足元はライトで照らされている為よく見えるのだがその先は全く光のない完全な暗闇だった。
「だがまあこれでパイプラインは完全に繋げた…後は流し込むだけだ」
彼が話している人物は文章体でしか返答を示さなかった。
原理としては発した言語を読み取りオーラベッシュでヴァティオンの方へ送っている。
用心深さの現れかそれとも風情を出すためか。
どっちにしろ連絡が取れればどうでもよかった。
「…分かっている、微量な毒だがいっとき弱らせ隙を作るには十分だろう。少なくともお前達が入れ込む毒よりは致命的にはならない」
本当、微笑を浮かべているが冗談ではない。
あれを自分たちも食らったらと思うと思わずゾッとする。
これと言った良い対処法も思いつかないしもうお手上げだ。
「第三帝国の方は相変わらずだ。このままだと誰もが銀河に戻る前に銀河を支柱に収めてしまう」
モニターに文章が打ち込まれる。
-ならばそれを真に返すまで-
「返すってどうやって?軍はどうにかできてもあの代理総統と側近達は手強く、そして用心深い。きっと苦労する」
政策や軍事面ではまだ評価を断定するには厳しい面もあるが単純なカリスマ性だけなら無類の強さを発揮する。
本当にこの世に蘇った銀河皇帝みたいだ。
一瞬のうちにあの帝国をまとめ上げここまで引っ張って登ってきた。
ただの商売相手だがあの能力には単純に尊敬してしまう。
まあ多分これからあの総統がやる事は尊敬など到底できない事だろうが。
「その時はお前達が造り上げた力を解放するのみ…か。それは恐ろしいな。躊躇いなんてない君達にはお似合いの代物だ」
ジェダイにライトセーバー…ではないがとんでもない奴にとんでもない物をとんでもない場所で作って与えてしまった。
無論これも商売でその本来の役割は重々承知している。
でも恐ろしいものは恐ろしい。
ヴァティオンは自分じゃその引き金は引きたくないと心底思っていた。
「ファースト・オーダーも動きを見せ始めている。より一層信用できる軍将達を取り込むつもりだ。そうなれば質的には無視できない存在になるぞ」
スローネの技量もなかなかだ。
さすがは癖しかない大提督のうちの1人といったところか。
元帥すら殺し命を受け継いだだけの事はある。
彼女の行動一つ一つは仮に空回りに終わろうとも構わないという執念と覚悟が毎回感じられた。
だからこそ商売だけではない支援と感情を送りたくなってしまうのだが。
「既にケッセルは完全にあの勢力側だ。他の軍将がどうなるかは不明だが近いうちに衝突するかもしれない」
-もう手遅れに近しい状態だろう-
確かにそうだな。
ここまで帝国が分裂してしまった時点で側から見ても手遅れだ。
それでもなお大まかな原型は整っているのだからすごい事だ。
「…そう言えば第三帝国も最初から第三帝国ではなかったな」
ふと何かを思い出し語り始めた。
「コルサントの籠城戦…銀河協定…第二残存帝国の誕生…そう言えばあの
一気に文字が打ち込まれ表示された。
なんだ、ちゃんと“
迂闊な発言は出来ないなと恐怖を背にヴァティオンは苦笑を浮かべた。
「悲しき最後の宰相よ、アミダから任を譲り受け厳しい状況下でスタートを切ったと思ったら彼含めた一家全員が不運にも事故に遭い死亡…」
そして副宰相のヤツがその穴を埋め今に至る。
まだ1年、2年前の話だと言うのに遠い過去のように思えた。
「…そう言えばその頃だな、スローネは亡きラックスに倣い優秀な…」
おっと話が逸れてしまったな。
向こうも完全に聞く気がなく要求を述べ始めた。
近直の歴史の話はまた今度秘書にでもしてやるとするか。
「パーツの横流しを増やせか…全く無茶を要求する…いいだろう、例の業者に頼んでおくとする」
文章はただ一言助かるとだけ書かれていた。
無愛想なモフだ。
「さて、銀河を制するのは第三帝国か、ファースト・オーダーか、新共和国か、いや…」
“
常人で計り知れない揺れ動く壮絶な未来は人が命を賭けるには十分なギャンブルだった。
人は残酷だ。
残酷に嘆き残酷に怒り残酷に悲しみ残酷を喜び残酷を愉しみ残酷に翻弄される。
全てひっくるめて人は残酷な生き物なのだ。
もしその残酷さが己を蝕むならどうすればいいだろうか。
何もかも失い自分すらも壊しそれでも生きる為に。
生すら残酷だ。
これに抗う術はないだろう。
ではどうすればいいのか。
どうしようもないのか。
それは誰にもわからない。
抗い続けた者にしか。
昔とある軍人がこう言っていた。
「全ては仕方なかった」と。
世界は残酷で人は残酷なのも仕方のない事だったと。
祖国が破壊されそれでもなお祖国の象徴が死んだ民を裏切り続けたのも仕方のない事だと彼は思っているらしい。
友を失いもう何もないのに彼はただ一言言っていた。
「それでも、進み続ける」と。
僕も進み続ければ良いのだろうか。
どこまで?
誰のために?
なんのために?
復讐のため?
目の前で全てが奪われたことに対する復讐のために?
いや、理由なんてどうでもいいや。
もう残されたものは戦いしかない。
でも戦いでよかった。
悔しいまま同じ運命の道を辿らなくて済みそうだ。
見ててよその道の先で。
僕が別の道を辿るところを。
「ハァ…ハァ…」
久しぶりに悪夢を見た。
あの時の光景だ。
返り血を浴びたまま走り命からがら逃げた日々。
ふと横を見ると彼女が寝ていた。
マルスには愛情が分からない。
彼は冷徹な保安局員に変えられてしまったからだ。
ましてやまだ来年で15歳の彼はその愛がどう言うものかよく分かっていなかった。
彼は今日人生の初めてをこの
話に聞いていたよりもおかしくて異常な変人だった。
それでも彼女の能力は本物で洞察力や軍の指揮能力、内政はどれも文句のつけようがなかった。
こんな目にはあったがここに来てよかったと思える。
少なくとも予想以上に好意的に迎えられた。
彼女、クラリッサのとち狂った異常な行動や狂愛には多少困惑したがそれでももう慣れたようなものだ。
マルスはふと寝ているクラリッサの方を見た。
彼女は何を選んで今に繋がったのだろうか。
そして僕は何を選べばいいのか。
人々を導く
決めるのはこればかりはマルス自身だ。
ただ片方の命運はよく知っていた。
だから彼は道の方を選んだ。
何せ人々を導くlordはもう隣にいるのだから。
「銀河を制するのは…僕達だ」
すると隣から声が聞こえた。
暴君の目覚めだ。
「どうしたんですのマルス、まさかまだ足りなかったとでも?」
「いえ…少し…夢から覚めただけですよ…」
悲しく微笑を浮かべマルスは倒れるようにベットにダイブした。
そんな彼にクラリッサはどこかいい香りのする唇で口づけをした。
「ならもう一回夢を見させてあげますわ」
「…どうして僕なんでしょうかね」
「難しく考えないで、私は貴方を気に入り好きになった。それで十分ではありませんこと?」
本当に不思議な、変人だ。
端的にヤバい奴とも言える。
倫理観や考え方が常人とは大きく異なっている。
「ちゃんと愛のスパイスで貴方を漬け込んで差し上げますわ」
性格とかを考えなければ本当にただの美少女だったのに。
残念と言うべきか。
「ならそうなる前に僕は使命を果たします。クラリッサ、僕達ファースト・オーダーと手を組んでください。出なければ貴女は間違いなく死ぬ」
「あら、最初からそのつもりでしたわよ?第三帝国なんかと組んでもどうせつまらないですもの。それにファースト・オーダーには貴方がいますから」
結果は即答、マルスの使命は幕を閉じた。
ケッセルの帝国残存勢力はファースト・オーダーの側についた。
寝室の中で銀河系の勢力図が変わってしまった。
「なら…好きにしてください」
どこか何かを諦めた感じがした。
年の瀬に近づく銀河系。
戦いの神はこの少年に血の道を歩く事を望んでいた。
誰かが埋もれていった流血の道を。
求められているのは彼だけではない。
ジークハルトにも、ジェルマンにも、マルスにも、この銀河系の人々全てにも、そして歴史にも。
誰もが知らないだけで皆覚悟を決めなければならない時が来た。
流れ出る流血は既に足元まで浸りつつあった。
つづく
ウィーーーーーーーーース!どうもーーーsyamuでーーーーす!
はい(平常運転)
最後のところ「こいつらスパイスキメたんだ!」ってシーンがありますが気にしないで下さい。
…これがお嬢様クオリティなので…(1人だけ世界線が明らかに違う)