第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「戦争が始まったのはまだ19の時で軍隊に入ってまだ十ヶ月も経っていない頃だった。最初は民主主義の為に、国の為にとやる気に満ちていた。でもホズニアン・プライムが陥落して実際に帝国軍と戦ってから考えは変わってしまった。この日記を書いてる今も僕は前線の塹壕の中にいる。この戦争になんの意味があるのだろうか。新共和国とは一体なんだったんだろうか。戦う理由とはなんなのだろうか。」
-新共和国地上軍兵士の日記より一部抜粋-


亡国の旗は悲しく漂う

-ヤヴィン4 マサッシ神殿発着場-

XウィングやYウィング、Aウィングと様々な機体が並びそれぞれ担当の整備士達が異常がないかチェックしていた。

 

以前に比べればこの発着場に留まるスターファイターもだいぶ減ってしまった。

 

毎回の激戦の末帰ってくるのは半数、半数以下といった状態だ。

 

そんな中でもパイロット達は戦意を失わず帝国との戦いに命を賭け続けていた。

 

そんな発着場を1機の機体が離れようとしていた。

 

XウィングやAウィングなどよりも大型のガンシップだ。

 

このUウィングにも多くの整備士が集まりパーツなどを交換し異常がないか破損箇所はないかと慎重にチェックを重ねていた。

 

もし航行中に少しでも異常が発生して爆発四散でもしたら大変だ。

 

この機体とこれに乗り込む2人は新共和国最後の希望なのだから。

 

希望は如何なる時でも失われてはならなかった。

 

「その弾薬は向こうに、予備パーツは奥の収納庫に入れてくれ。食料はなるべく飲料剤にして少しでも積み込めるようにするんだ」

 

ジョーレンは多くの整備士や手の空いた兵士達に頼んで次の旅の用意をしていた。

 

ジェルマンも隣でせっせと荷物を積み込んでいる。

 

「機体の整備完了です、積み込みが終われば今すぐにでも飛び立てる状態ですよ」

 

発着場の整備主任であるバルエッタ准尉がジョーレンに報告した。

 

積み込みもこれだけの人出があれば後5分も掛からずに終わるだろう。

 

そうなると出発は長くても10分後か。

 

「ありがとう准尉、いい整備士達に整備されるのは安心感が大きい」

 

「お褒めいただき光栄です。それでは」

 

准尉は敬礼し駆け足で他の機体の整備へと向かった。

 

整備士達も大忙しだ。

 

パーツも人手も以前より少ない中本当によくやってくれている。

 

彼らの為にもこの旅路は成功させなければいけないなとジョーレンは思っていた。

 

「なあ、デトネーターだがあと何ケース積めばいい?」

 

ジェルマンがサーマルデトネーターの箱をしっかりと固定を完了させ聞いてきた。

 

ジョーレンは少し考え彼に言った。

 

「多くて後1ケース…いや十分だ。それで他の積み込みは?」

 

「半ば終わったよ。後は予備のブラスターを」

 

ジェルマンは誰かが見えたのか機体から降りて敬礼した。

 

向こうに見える将校も同じように敬礼していた。

 

「ストライン中佐、どうされたんですか?」

 

ブラスター・ライフルを二丁ほど持っているラクティスにジェルマンはどうしたのか尋ねた。

 

「いや、武器がもっと必要だろうと思ってな。新型のA280を許可を取ってくすねてきたんだ」

 

細部に違いが見受けられる新型のA280ブラスター・ライフルをラクティスは手の空いているジョーレンに二丁とも渡した。

 

ジョーレンは若干の笑みを浮かべ二丁とも両手に取った。

 

そして少し揶揄うように尋ねた。

 

「いいんですか?こんな貴重品俺たちみたいなのに渡しちゃって」

 

「構わないさ。ひよっこの部下には毎回言ってる事だが仮に機体が撃墜されたとしても助けが来るまで生き延びる義務がある。それはあんた達も一緒だ」

 

ジョーレンは近くにブラスター・ライフルを立て掛けると彼の言葉に耳を傾けた。

 

「…それに叔父貴の形見みたいなあんたらには是非とも生き延びてほしいんだよ。ちょっとした私情さ」

 

「中佐…」

 

「気にすんな、何はともあれ新共和国の未来はお前達にかかってるんだ。頼んだぞ」

 

勇気と想いを託された2人の敬礼は先程のものより力強かった。

 

「さて、武器も物資も全て揃った。とっとと出立しようぜ」

 

「ああ!」

 

2人は勇気に満ち溢れた笑みでUウィングに戻っていった。

 

そんな様子をラクティスは静かに見守っていた。

 

機体のハッチを閉め名残惜しくはあるがこの場所を離れる準備をする。

 

スイッチをいくつか押し機体のシステムを起動させた。

 

最後に管制塔と連絡を取る為に通信機を起動した。

 

「こちらUウィング輸送船、管制室聞こえるか」

 

『こちら管制室、発進許可は既に最高司令部より出ている。いつでもどうぞ』

 

ライカン将軍やディクス・ストライン准将の働きだろうか。

 

ありがたい気遣いだなとジョーレンは思った。

 

「では発進する。短い間だが世話になった」

 

『Uウィングどうぞ、こちらこそ銀河系を頼みました』

 

相手には見えはしないがジョーレンは力強く頷いた。

 

直後ペダルを含み込み操縦桿をしっかりと握りUウィングを浮上させた。

 

ジェルマンもいつの間にかしっかりシートベルトを締め準備万端といった感じだった。

 

そのままジョーレンは操縦桿をぐっと押しUウィングを空の彼方、その先へと旅立った。

 

この時もまた2人は気づかなかったが発着場のラクティスやバルエッタ准尉ら多くの整備士やパイロット達が手を振りUウィングを見送っていた。

 

ディカーの基地と同じように。

 

彼らはどこにいても新共和国の新な希望となっていた。

 

 

 

 

 

-タイオン・ヘゲモニー サテライト・オブ・タンバー 新共和国連合軍絶対防衛線-

前防衛線を一旦放棄し連合の幹部の名がついた衛星まで退却した連合軍と新共和国軍は再び防衛線を展開していた。

 

マジノ線とホズニアンの悲劇がまだ鮮明に残る新共和国軍の戦意は並々ならぬ物で今度こそ鉄壁の守りをと連合軍の兵力より士気は高いはずだった。

 

だが帝国軍の柔軟で抜かりない戦術は防衛線の兵士達の不安を十分に刺激した。

 

そのせいで本来高いはずの士気は徐々に減少傾向にあった。

 

各戦線で抜かりは全くなく新共和国宇宙軍と連合宇宙軍は迫り来る帝国艦隊と各地で激戦を繰り広げていた。

 

ただこれに際して帝国軍は不思議な戦術を執っていた。

 

防衛線がここまで後退したのは帝国軍の大攻勢があったからだ。

 

最初はオッサス周辺で防衛線を展開していたが帝国軍親衛隊のエールリンク大将は全戦力を持って敵左翼を急襲し一点突破に成功。

 

そのまま大部隊を回避しつつ敵の補給部隊を攻撃しとにかく前進したエールリンク隊は戦力の再編が追いつかない防衛部隊を翻弄し防衛線を大きく翻弄させた。

 

補給部隊がいくつか壊滅した事により前線での不安は高まり新共和国軍と連合軍はオッサスの戦線を破棄し後退せざる追えなくなった。

 

流石のジャステン中将もこれには後退を許可せざる終えず防衛線をこの衛星まで引き下げざる終えなかった。

 

エールリンク大将も一旦全部隊を撤収させ本隊の到着を待った。

 

このまま進み続けても防衛線全体の戦力は未だエールリンク隊を大きく上回っている為後退してきた敵と前方の敵に挟み撃ちされ全滅してしまう危険性があった。

 

オッサスから防衛部隊を追い出し戦線を自治領のタイオン・ヘゲモニーまで後退させた事が一番の戦果だった。

 

これで大規模な主力部隊がタイオン・ヘゲモニーまで侵攻するルートが切り開けた。

 

しかしエールリンク大将はこの程度の戦果で満足するほど野心は浅くなかった。

 

「はぁ…こんな塹壕の中に篭ったってウォーカーがくればみんな殺されるんだ…」

 

1人の新共和国兵士がタバコを蒸せながら大きくため息を吐いた。

 

彼は元々地方の防衛軍兵士であった。

 

帝国にも比較的好意的でその後の新共和国にも媚を売り平穏を手にした彼の故郷は戦争とは程遠い場所だった。

 

彼自身兵士をやっていてもどうせ自分が戦争に駆り出される事はないだろうと括っていた。

 

そんな彼に転機が訪れたのは新共和国が完全に銀河の覇権を取った時だった。

 

大量の軍への支援金の代わりに地方防衛軍は優秀な兵士達を新共和国防衛軍の兵士として差し出したのだ。

 

一種の交換兵士だろう。

 

彼はそれなりに良い働きをしていた為その交換兵に選ばれた。

 

新共和国軍の方がはるかに給料や待遇がいいので彼は喜んで新共和国軍の兵士となった。

 

運命が彼を戦争に誘ったのはこの選択のせいだった。

 

彼が移籍したほぼ一ヶ月後第三帝国は新共和国に宣戦布告し彼の配属になった部隊はマジノ線の防衛部隊として回された。

 

そして敗北。

 

彼と彼の部隊は撤退時に少数だがウォーカーの偵察隊と戦闘し辛うじて退けたものの戦力の半分を失う大損害を被った。

 

なんとか生き延びてこの地で再び帝国軍を待ち構えている彼だがもう悟ってしまった。

 

自分たちじゃ帝国軍に勝てないことを。

 

どうして新共和国は帝国に勝てたんだろうか。

 

それこそ奇跡のような話だ。

 

長く新共和国にいる兵士はみんな「これでも以前より帝国は弱くなった」だの「新共和国の地上部隊ははるかに強くなった」だの話している。

 

今でさえ絶望的な状況なのにまだマシとはどういうことだ。

 

さては頭がもうおかしいんじゃないか。

 

そんな気分の悪くなるようなことを考えながらヘルメットを被り直しまたタバコに口をつけた。

 

こういう趣向品を使ってないと気がおかしくなる。

 

「よお…状況はどうだ?」

 

同僚の一等兵が隣に腰掛けた。

 

彼も同じように防衛軍から移籍した兵士らしい。

 

俺もこいつも本当に大馬鹿者だ。

 

現実を知ってたらこんな場所に来ていない。

 

「問題なし…敵さんだって馬鹿じゃないんだ。ウォンプ・プラットだってそこまで無茶に突っ込んでこないよ」

 

適当なことを言ってひとまず敵が来ていないことを教えタバコを欲しそうな顔をしていたので一本くれてやった。

 

ソイツは「サンキュ」と一言言うと何かで火を付け同じようにタバコを吸い始めた。

 

他の兵士も一応警戒はしているがなるべく体を休めようと努力していた。

 

ちゃんと睡眠は取れているはずなんだがそれでも体から疲れが取れていない気がした。

 

「この戦いいつ終わるんだろうな」

 

ふと独り言を漏らしてしまった。

 

それを聞いていた隣の一等兵が同じように呟いた。

 

「さあな…だがもうどうせ勝てるわけないだろう…この戦争俺たちの負けだ…もう何したって無駄だよ」

 

「…お前も…そう思うか…」

 

「お前だってそうなんだろう?出来る事なら故郷の防衛軍に戻りたいよ…」

 

そうだ、どうせ何やったって帝国に勝てるわけないんだ。

 

俺もコイツの言う通り防衛軍に戻りたい。

 

故郷に帰りたいんだ。

 

別に田舎臭くもかと言って都会チックでもないあの故郷に帰りたい。

 

どうして種族の母星の事をホームワールドって呼ぶかわかってきた気がした。

 

文字通り家だからだ。

 

星が我が家そのもので誰しも我が家には帰りたい。

 

だから遠くへ旅立った者達は母星をホームワールドって呼んだんだろう。

 

俺も彼らのノスタルジアと同じで故郷に帰りたい。

 

こんなくだらない戦争やめて故郷のどっかでメイルーラン・フルーツのパイを食べたい。

 

急に自分の選択を後悔し始めた。

 

「故郷に戻って軍隊を辞めたい…こんな仕事選ぶんじゃなかった。適当ないい女の子捕まえてとっとと結婚したい」

 

コイツも同じ考えだったらしい。

 

2人とも似た者同士だ。

 

馬鹿らしいことやめて早く星に帰りたかった。

 

こんな異国で死ぬ必要なんてない。

 

「俺もだよ…甘いパイが食べたい。気分が悪くなるほどの…果物が乗り切らないほど乗ったクリームだらけのパイが…」

 

「全くだ…隣見てみろよ。旧型だがクローン戦争時代のドロイドだぜ?あんなのが戦ってくれるなら俺たちの必要性ってなんだよ」

 

タバコを口から離しながら見ると確かにそこにはドロイドがいた。

 

細々としたドロイドが。

 

とても強そうには見えないが役には立つんだろうな。

 

ドロイドが勝手に戦争してくれれば俺たちがここにいる必要なんてないのに。

 

ほんと無意味な事をしている。

 

馬鹿げた戦争だしもうこれは戦争じゃない。

 

仕えてる国はとうの昔に滅んで今じゃ俺たちが反逆者のテロリストだ。

 

もうこんなの戦争じゃない。

 

ただ現実を認められない奴がもがいてるだけの殺戮ゲームだ。

 

そんな理由で俺たちは戦場に放り出されている。

 

「どうせ上は理由をつけてあいつらに戦いを任せたくないんだよ。その為に俺たちはこれから死ぬかもしれない」

 

「おい冗談キツいぜ。こんなクソみたいな戦争の為に死んでやる理由なんて…」

 

「敵襲!!敵襲だ!!ハイパースペースから敵艦が来るぞ!!全員戦闘配置につけ!!」

 

上官の大声が聞こえて俺たちはタバコを吐き捨て足で乱暴に火を消した。

 

ブラスター・ライフルを構えヘルメットを被りなおす。

 

大勢の兵士が塹壕に集まり同じようにブラスター・ライフルを構えていた。

 

「シールドを起動しろ!軌道上爆撃を防ぐんだ!」

 

上官の大声がまた聞こえた。

 

ほんとよくやってるよ。

 

一番大変そうなのはあんたなのに。

 

だが次に返ってきたのは技術士官の悲鳴だった。

 

「ダメです!シールドジェネレーターが妨害電波を受けて機能しません!」

 

「なっ馬鹿な……全員頭を下げろ!爆撃がくるぞ!!」

 

俺は、いや俺たちみんな絶望した。

 

冗談じゃない。

 

シールドもないのにどうやって軌道上爆撃を防げって言うんだ。

 

頭を下げろだ?

 

下げでどうする。

 

死ぬことには変わりないじゃないか。

 

どうしようもなかった俺はふと空を見上げた。

 

…出てきやがった。

 

1,600メートルの怪物…インペリアル級スター・デストロイヤーが…。

 

もう既に黄緑色の光弾を何発も放ってやがる。

 

爆撃の数々は真っ直ぐこちらに向かって突き進んできた。

 

ああ…死ぬんだな…。

 

こんなに呆気なく死ぬ事を理解して受け入れるなんてほんとどうかしてる。

 

もう叫ぶ心の余裕すらなかった。

 

不思議と全身が楽になった。

 

死ぬことに安堵でもしてるのかな。

 

ほんとは怖いはずなのにな。

 

やっぱりおかしいや。

 

「爆撃来ます!!」

 

降り頻るターボレーザーの音も、悲鳴も、爆発の轟音も耳を塞いでいないのに不思議と何も聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

「大将閣下、各戦線への奇襲攻撃完了しました」

 

若手の通信士官がエールリンク大将に報告した。

 

士官の報告を皮切りに次々といい報告が堰を切った後の濁流のように聞こえてきた。

 

「陽動部隊の展開は成功です」

 

「リーゼル中佐の機動部隊が補給艦隊の殲滅に成功しました」

 

「第一、第二、第三、機甲中隊は全隊地上網の制圧に成功。まもなく退却します」

 

「各戦線は奇襲攻撃により予測より10%以上の混乱を見せています」

 

「それは良かった、全部隊を撤収させ再度奇襲の準備だ」

 

エールリンク大将は旗艦のブリッジで報告を聞き安堵したように次の命令を出した。

 

ハイパースペースからの防衛線奇襲はとても効果的だった。

 

前もって備えていたジャマーの効力もあって軌道上爆撃はほとんどが成功し機動艦隊や補給部隊も多くが壊滅。

 

地上部隊も迅速な機動戦術により多くの敵軍を打ち破った。

 

これで新共和国とあの小さな連合軍にいつ敵が来るか分からないという恐怖を植えつけたのだ。

 

この恐怖は絶大な効力を発揮するとエールリンク大将は考えていた。

 

「連続して何度も奇襲攻撃をする事により徐々に敵の戦意を削ぎ弱体化させる。これもスター・デストロイヤーのような打撃力あってこそですね」

 

部下の1人が彼に話しかけてきた。

 

エールリンク大将は笑みを浮かべ小さく頷いた。

 

「その通りだ少佐、よく分かっていて嬉しいよ。とはいえやってる事はゲリラに等しい…こんな戦術を取らざる負えないのは屈辱的だがね」

 

以前は純粋な典型的な帝国軍人であったエールリンク大将はこの戦い方に苛立ちを覚えていた。

 

圧倒的な力をこんな小細工の為に使わなければいけないとは本当に恥だ。

 

「尤もこれも真の力を突き通すための布石にしか過ぎないが」

 

帝国の部隊はエールリンク大将だけではない。

 

本格的な侵攻は後続の本隊に任せればいい。

 

どんな強固な盾であろうと摩耗した状態で強力な矛の一撃を食らえば簡単に貫かれてしまうだろう。

 

防衛線だって前線の兵士が極限状態ならば帝国の力を持ってすればあっという間に突破する事が出来る。

 

先遣隊はその状況下を作ってやれば良いのだ。

 

その為に艦隊や地上部隊のゲリラ的な奇襲攻撃はとても効果的だった。

 

「年末年始までには堕とせるかな…せいぜい短い独立の期間を楽しむといいさ。永遠の敗北者め」

 

本隊の到着を待つエールリンク大将の心の淵はサディスティックな感情に満ち溢れていた。

 

 

 

 

 

 

-帝国領 大セスウェナ セスウェナ宙域 惑星エリアドゥ セスウェナ最高司令部-

大セスウェナ内の帝国化は他のどの領域よりも順調に進んでいた。

 

元々帝国が存在することで大きな恩恵が領域だ、その恩恵が再び戻ってくるとなれば帝国の占領政策は順調だろう。

 

それにヘルムートが第一次内戦末期に多くの帝国軍人や技術士や役人などを匿っていた為最初から帝国への支持率は高かった。

 

内戦末期でも軍将化の傾向が見られず残存帝国などとの接触もなかった為新共和国は大セスウェナを脅威とは考えず一つの中立国として放置した。

 

ロマイト産業など重要な産業を有していた面もあってか下手に手を出し辛かったのであろう。

 

それに新共和国としては本気になればセスウェナ程度ならば軽く制圧できる為仮に反旗を翻しても脅威とはなり得なかった。

 

油断と言えばそれまでだが軍備縮小法を導入した状態でもそれは事実だった。

 

大セスウェナ一個の軍事力では新共和国全体に立ち向かうのはかなり厳しい戦いになる。

 

それにこの機に乗じて媚を売ろうと各地の防衛軍も戦力を回してくる為勝ち目は薄かった。

 

結果エリアドゥ含めた大セスウェナは新共和国が崩壊するまでこれと言った大きな動きを見せなかった。

 

その為新共和国がセスウェナ内に軍を駐留させるのも甘んじて受け入れていた。

 

そう、新共和国崩壊までは。

 

新共和国が崩壊し生き残った残党軍ではこの大セスウェナが、エリアドゥが最大の脅威として君臨していた。

 

大セスウェナの新共和国軍はほとんど一掃され完全に帝国領となった。

 

セスウェナの資源や軍事力が丸ごと第三帝国のものになっただけには留まらない脅威が現れ始めた。

 

セスウェナ宙域に位置するエリアドゥは重要なハイパースペース・ルートの一つであるハイディアン・ウェイとリマ・トレード・ルートを繋ぐ惑星の一つだ。

 

アウター・リムまで勢力を伸ばしたい帝国にとってはこの地点はとても重要であった。

 

更には帝国領で同じくハイディアン・ウェイに位置するデノンのおかげで帝国はデノンからエリアドゥまでのハイディアン・ウェイを完全に確保したのだ。

 

同じくリマ・トレード・ルートもヘルムートの采配により半ば帝国によって制圧された。

 

この影響は周辺惑星に大きな影響をもたらした。

 

当初は中立を決め込む惑星政府も2つのハイパースペース・レーンが帝国の手に渡った事によりいよいよ第三帝国を残党ではなく再編された真の帝国だと思い始めた。

 

帝国には敵わないと嫌でも分かっている惑星政府達は皆揃って帝国に帰属した。

 

これにより各領域で帝国の影響力が広がっていった。

 

こうして新共和国の残党軍は徐々に居場所を失っていった。

 

更にはヘルムートやザーラ司令官の采配により残党軍に対するハイパースペース・レーンを中心とした包囲網が展開され今や残党軍は死の淵に立たされていた。

 

帝国軍の鉄壁の檻に愚かな残党は入れられてしまったのだ。

 

「グランドモフ、ヘイルダーン少将の偵察隊が残党軍の小基地を発見しました」

 

ヘルムートよりも8歳年上の士官が彼に敬語で報告してきた。

 

権威は常に年齢の上下関係を覆す。

 

どんなに年上の人物だろうとグランドモフという強大な階級を持つ者には基本敬語を使わなくてはならない。

 

特に軍人ならば尚更だ。

 

「少将の麾下部隊にそのまま奇襲させろ。軌道上爆撃を徹底して行い一兵たりとも生かすな。捕虜すら取る必要はない」

 

「捕虜も取らなくてよろしいのですか…?」

 

士官は彼に聞き直した。

 

大方「捕虜を取り次の残党を炙り出さなくて良いのか」という考えからだろう。

 

だがそんな事していてはいつかは背後から刺されるかもしれない。

 

大伯父が時にそうして小さな失敗をしたように。

 

「必要はない、徹底的に殲滅しろ。絶対的な力と死を奴らに思い知らせるのだ」

 

「りょっ了解しました。直ちにヘイルダーン少将に通達いたします」

 

士官は敬礼し恐る恐る地上司令部のブリッジを後にした。

 

確かにヘルムートはまだ若いが若いからという理由で舐めてもらっては困る。

 

むしろ彼は10歳年上の指揮官達よりも冷酷で的確な判断を下す。

 

そうしなければ生き残れないからだ。

 

この過酷なアウター・リムの地では。

 

彼にとってすれば敵に情けをかける理由など思い当たることすらなかった。

 

殺さなければこちらが死ぬだけ。

 

しかも愛する家族や人々すら守る事が出来ない。

 

冷徹になる事が自らと大勢を守る唯一の手段だった。

 

幼い彼は徹底してそれを家族から、そして大伯父のウィルハフから教えられた。

 

自らも何度も悟ったものだ。

 

だからこそ非道で冷徹だと言われようと成し遂げるしかなかった。

 

「失礼します。ターキン総督、親衛隊保安局より逮捕履歴の報告書が届いております」

 

「逮捕履歴?そんなもの届ける必要があるのか?」

 

ヘルムートはまた別の士官からデータタブレットを受け取り大まかに目を通し始めた。

 

士官も困惑したように説明し始めた。

 

「…先程親衛隊保安局の執行部から手渡されたものでして…なんでも大セスウェナで治安妨害罪に該当する人物を強制逮捕するとか…」

 

親衛隊保安局のみというのがどうも不可解だ。

 

こう言った類のものは親衛隊保安局だけでなく通常の帝国保安局や現地警察とも協力すべきだろうに。

 

それに親衛隊保安局はあまり良い噂を聞かない。

 

ついこないだ未だ帝国に帰属しようとしない軍将ら数十名を虐殺したと言う噂も流れていた。

 

「見たところエイリアン種族ばかりだな…リストの人物達に今まで逮捕歴は?警官や保安局から注意を受けたとか些細な事でもいい」

 

聞き慣れない罪状とあまりに多すぎる人物の数を不審に思ったヘルムートは士官に尋ねた。

 

当然士官は知るはずもなく険しい表情を浮かべながら謝罪した。

 

「いえ…わかりません…すいません」

 

ヘルムートは特に怒る事なく命令を出した。

 

「正規軍の情報部と保安局に調査を命じる。調査結果が出るまで逮捕は一旦中断しろと親衛隊保安局に通達しろ、これはグランドモフの命令だ」

 

「わかりました、直ちに伝えてきます」

 

士官は敬礼し駆け足で命令を伝えにいった。

 

その様子を見つめヘルムートは再びリストに目を戻した。

 

彼は、彼らはまだ知らなかった。

 

このリストの真の意味を。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろハイパースペースを抜けるぞ」

 

ジョーレンは機体の各種系統に目を通しながらジェルマンに伝えた。

 

ジェルマンは助手席を離れブラスター類の武器のチェックをしていた。

 

時々ジョーレンも同じように手入れをするのだが基本は機体を見ていなければならない為下手に移動出来なかった。

 

ジェルマンはしっかりブラスター・ライフルを元の場所に戻し器具を仕舞うと助手席に戻ってきた。

 

ジャンプアウトした瞬間何かあると大変だ。

 

それこそ小惑星にぶつかって機体が大きく揺れたり異常な状況に巻き込まれたりと。

 

そう言った危険を回避する為にもしっかり助手席のシートベルトを閉めてジャンプアウトを待つのは重要な事だ。

 

「このままだとジャンプアウト地点は…ラクサス……か…」

 

ジョーレンが独り言を呟いた。

 

ため息レベルの小さな独り言だったがジェルマンは聞き逃さなかった。

 

「ラクサス?ラクサスってあの連合の首都の?」

 

旧独立星系連合の首都惑星でありエンドア後誕生したラクサス自治連合の首都惑星。

 

大まかな歴史的知識しかないジェルマンだったがひとまず名前だけは知っていた。

 

「…あっああ…そうだ…クローン戦争後は帝国軍の占領下になっていたはずだが…」

 

「今じゃラクサス自治連合って国家がここを仕切ってるはずだよ。それにヤヴィン4で聞いた話だとこの地に逃げ込んだ新共和国の部隊もいるらしい」

 

長らく隔絶された生活を送っていたジョーレンにジェルマンは端的に説明した。

 

彼が得られる外からの情報はほんの僅かなものでこれから日々の生活に苦労するだろうなとジェルマンはふと思った。

 

「自治連合ね…まさか連合が蘇るなんて夢にも思わなかったよ…」

 

「まあ確かに、せっかくだし給油や友軍の確認も含めてラクサスに行かないか?一応連合と新共和国の関係性は良好だったはずだし」

 

その瞬間あのジョーレンの目が泳ぎ動揺した気がした。

 

操縦桿を握る手もどこか震え唖然とした表情を浮かべていた。

 

「ジョーレン…?」

 

ジェルマンはあまりのおかしさにジョーレンの名前を呼んだ。

 

耳はちゃんと聞こえていたようでジョーレンは自分の異変に気づいたのか一瞬で意識が戻った。

 

「あっああ…だな…!ラクサスか…となるとモン・カラへは少し遅れそうだな」

 

「ああ、でもモン・カラにも必ず行くさ。僕達が残された希望なんだから」

 

ジョーレンの表情はいつも通りに戻り軽く冗談も交わしてきた。

 

「まあ希望にしては少し頼り甲斐がないがな」

 

「なんだとぉ」

 

ジェルマンはむっとしジョーレンはケラケラ笑っていた。

 

「ほらそろそろだぞ」

 

ジョーレンは目線を前に向け意識を操縦の方に集中し始めた。

 

そろそろジャンプアウトするのだろう。

 

ラクサスか。

 

どんな場所か分からないが楽しみだ。

 

また新共和国の仲間達と会えるといいなと軽い期待を含んで。

 

…だがあの時ジョーレンの表情が曇ったのは気のせいなのだろうか。

 

少し複雑な考えを持ちながらジェルマンは目線を前に向けたその瞬間Uウィングはハイパースペースからジャンプアウトした。

 

刹那目の前に広がる景色は青白いトンネルから戦場に変わった。

 

突如Uウィングは旋回し機体の横を黄緑色のレーザーが通り過ぎた。

 

若干の余波がシールドに衝突し一瞬だけシールドが可視化された。

 

ジョーレンはさっきよりも険しい表情を浮かべていた。

 

当たり前だ。

 

一発でもこの機体に被弾させる訳にはいかないのだから。

 

「なっ何が起こってるんだ!?」

 

ジェルマンは思わず大声で叫んだ。

 

当然彼らはこの状況を知る由もなかった。

 

遂に帝国軍の本隊が到着した事も。

 

本隊の猛攻により各戦線が崩壊しかかってる事も。

 

もはやラクサス自治連合は崩壊寸前だと言う事も。

 

ジェルマンとジョーレンはこの一瞬の戦場で理解する事は出来なかった。

 

 

 

つづく




わ た し だ

そういや世間一般ではビジョンズは半ば成功した?みたいっすね

僕はあのゾルタン・アッカネンみたいな保安局のオッサンがどうなったか気になりますぞ
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