第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「誰が見ても敗戦は明らかだしこれ以上の戦いは全て無駄に見えた。だが上官達は常に戦えと怒鳴るし降伏や投降を選んでも命はない。故郷にだってもはや居場所はないだろう。だが私が幸いなのはこの地獄を自分で選んだというところだ。これだけが唯一後悔のない満足のいく事だ。明日にでも私は死ぬだろうが少なくとも満足感は薄れないはずだ」
-元惑星防衛軍所属、新共和国宇宙軍中佐の日記より抜粋-


連合の滅亡/前編

「何が起こっているんだ!?」

 

ジェルマンの驚きの言葉を他所にジョーレンは操縦桿を右に捻りペダルを思いっきり踏み込んだ。

 

物凄い衝撃が真正面から全身を襲い身構えていなかったその体を思いっきり座席に叩き付けた。

 

幸い座席の材質が柔らかかった為それ程痛みはないがそれでも衝撃の痛みは未だ和らいでいない。

 

ジョーレンは無言で険しい表情のまま機体を変態飛行と言って良いほど不規則に無茶苦茶に操縦している。

 

最大加速度でシールドを全開にしたまま戦場を回避しようとしている。

 

「ジェルマン!多少荒っぽい運転になるが少し耐え抜いてくれ!この場を押し通る!」

 

「あっああ!だっだが戦ってるのは…味方だぞ!助けないと!!」

 

周囲を見渡すと明らかに不利な状況のまま戦うXウィングやAウィングなどの新共和国軍機の姿が目撃された。

 

帝国軍のスターファイター部隊は明らかに新共和国軍機よりも2倍3倍近くが戦っており到底勝ち目はないように見えた。

 

何せ帝国軍の空母が二隻、護衛の軽クルーザーが六隻もおり一方の新共和国側はCR90二隻で応戦していた。

 

このままでは帝国軍の物量に押し潰され全滅すらあり得るだろう。

 

しかしジョーレンは何処か躊躇しているようだった。

 

そんなジョーレンにジェルマンは迫った。

 

「ジョーレン…?どうしたんだよ…?早く救援に向かわないと…」

 

「ああ…だがこの状態じゃ最悪俺達もやられる…そうなったら全ておしまいだ…」

 

「…確かにそうだがせめて退却させる時間くらいは稼げるだろう!」

 

ジェルマンはあくまで共に戦う事を訴えた。

 

仲間を見殺しに出来るほど兵士に染まっていない。

 

若過ぎるが故の弱さとも言えよう。

 

「俺達の行動は新共和国の復活に直結する!こんな所で少しでも危険を犯せば新共和国の復活自体が危険になる!」

 

かなり強めの口調でジョーレンはジェルマンの申し出を断った。

 

自分たちは特別ではない。

 

ただ与えられた任務が特別なのだ。

 

その為には任務を完遂するまで自分達の命を最優先に考えねばならない。

 

そう思っての行動だった。

 

だがジェルマンは引き下がらない。

 

「だがやられる確率は100%じゃないしむしろ共闘した方が助かる確率が上がる!」

 

「危険が1%もある以上はダメなんだ!彼らが自力で助かるのを祈るしかない…」

 

「そんな…!敵が来る!」

 

落ち込むジェルマンはUウィングのセンサーを見て一瞬で判断した。

 

前方からTIEブルートが2機向かってくる。

 

それはコックピットからの黙示確認でもわかった。

 

TIEブルートがこちらにレーザーを向けながら向かってくる。

 

「チッ!仕方ない…ここで敵をやれば確実に敵に報告される、こうなったら近くの友軍に守ってもらうしかない!」

 

「ああ…!コルベットとファイター隊の隊長に通信を繋ぐ」

 

「そうしてくれ…!ああもうやるとなったら全力でやるしかない!」

 

仕方なさそうな表情でジョーレンはレーザーにもエネルギーを回し始めた。

 

TIEの攻撃はシールドが防ぎ逆に2機のTIEブルートをUウィングの強力なレーザー砲が敵機を2機とも撃破した。

 

特徴のあるエンジンを鳴らしながら敵機は爆散した。

 

その間に友軍部隊の指揮官と通信が繋がった。

 

『こちら第四補給隊…!Uウィング輸送船応答せよ…!』

 

ホログラムが浮き出てCR90コルベットの艦長が姿を表した。

 

「我々は軍最高司令部と元老院議員より特命を受けた特務部隊です」

 

『元老院議員だと…』

 

艦長は少し驚いている。

 

それもそのはず、帝国公式の記録では元老院議員は皆処刑されたか死亡したはずだ。

 

多少の誤りがあるとはいえ未だ元老院議員が誰一人として応答がない事から粗方真実として扱われていた。

 

すると時間がなさそうにジェルマンの代わりにジョーレンが返答をした。

 

「時間がないから手短に命令を出す。敵艦のエンジンかブリッジを潰して急いで退却だ、我々の命令は新共和国の存亡に関わる。どんな手段を使ってでも退却することを第一に考えるんだ」

 

口下手な感じはあるが命令は至極簡単なものであった。

 

全戦力を持って敵艦隊の足を止める、そして足が止まったうちに全戦力で退却する。

 

本当に簡素な命令だがこれで十分だった。

 

現状の戦力でも十分退却する確率の高い方法だ。

 

それに部隊の指揮官達が皆物分かりがいいのかすぐ命令に従ってくれた。

 

『了解Uウィング!レコード中隊全機攻撃隊形だ!』

 

「支援する、護衛機をよこしてくれ」

 

『今行きます!』

 

すると2機のXウィングがピッタリUウィングの背後にくっ付いた。

 

ひとまず背中は安心だ。

 

「最も危険な役回りだが…スターファイター隊の注意をこっちで引きつけるぞ、無茶な操縦になるが耐えろよ」

 

「ちょっと待ってくれ、自動攻撃タレットを立ち上げる!」

 

ジェルマンは機体にタブレットを接続し何かを打ち込み始めた。

 

さすがはというべきかかなり手際がいい。

 

しかし相棒のジョーレンにとってはなんのことやらさっぱりだった。

 

「そんな武装はUウィングには搭載されてないぞ!」

 

「内戦末期にスターホークプロジェクトに関わったスターファイター中隊がテストで使っていた自動タレットだよ。ヤヴィンに放置されていたそれを少し改良した。固定式で射出しなくても攻撃できる」

 

「そんな事してたのか…まあいい、とにかくソイツで敵を蹴散らせ。使える武器が増えるのはいい事だ」

 

そう言いながらジョーレンは迫るTIEブルートを1機撃墜して旗艦の砲撃を避けた。

 

最初のブルートの撃墜で敵はこちらに気づき部隊を優先して展開している。

 

きっとこんな場所にガンシップがジャンプアウトするなど何か不審に思ったのだろう。

 

本当はただたまたまジャンプアウトしただけの話なのだが。

 

「よし起動した!」

 

ジェルマンが報告するより先にタレットは敵機を攻撃した。

 

背後を取ろうとするTIEブルート1機を捕捉しXウィングよりも早くブラスター弾を連射し数を持ってTIEのパネルを打ち破り撃破した。

 

僚機のXウィングは完全に獲物を取られた形となった。

 

だが獲物を横取りされたとかそんな事を言っている場合ではない。

 

編隊を組みスターファイターの部隊が敵艦のエンジンを破壊しようと攻撃を仕掛けている。

 

その間残念な事に1機のXウィングがアークワイテンズ級の対空砲火にやられ旋回出来ずブリッジに激突した。

 

だがパイロットの犠牲は決して無駄ではなかった。

 

アークワイテンズ級のブリッジはXウィングの衝突を受け中破、艦長や多くの乗組員が重傷を負い指揮能力は完全に低下した。

 

CR90も敵艦の砲撃を引き付けながら反撃を喰らわせていた。

 

微々たる砲撃でほとんどダメージを与えられていないがそれでも引きつけ役と考えれば十分だ。

 

攻撃の主役は相変わらずスターファイターにあるのだから。

 

TIEブルートがCR90に取り付こうと攻撃を敢行しているが駆け付けたジェルマン達のUウィングや対空砲火に撃破されてしまった。

 

2機のXウィングが見事な連携でTIEブルートを1機撃墜する。

 

「チッ!このぉ!」

 

急旋回からの流れるような攻撃は流石の帝国軍パイロットすらも翻弄しまた1機のTIEを破壊した。

 

ジェルマンは少しフラフラになっているがこの際気にしてはいられない。

 

第一助けようと言ったのはジェルマンだ、これくらい覚悟の上だろう。

 

艦の上空から1機のAウィングがアークウィアテンズ級の右舷側のエンジンに震盪ミサイルを食らわせる。

 

偏向シールドと装甲を易々と貫通したミサイルはエンジンの内側で炸裂し若干の損傷を受けていたエンジンを完全に吹き飛ばした。

 

大爆発が起こり破片が僚艦のクエーサー・ファイア級に直撃する。

 

『敵艦隊撤収を始めていきます!』

 

中隊のパイロットの1人がそう全体に報告した。

 

ジェルマンもジョーレンも目線を帝国艦隊の方へ向ける。

 

ブリッジを中破したアークワイテンズ級とエンジンの片翼をやられたアークワイテンズ級をクエーサー・ファイア級が引っ張りTIEブルート各機が護衛しようと周囲に群がっている。

 

予想以上の攻撃にこれ以上戦闘を繰り返すことはできないと判断したんだろう。

 

退却が目的のジェルマン達にして見ればこの上ない好都合だ。

 

すかさずジョーレンが命令を出す。

 

「今のうちだ!全隊退却だ急げよ!」

 

無事とは到底言えない状態のまま両軍は背を向け引き返し始めた。

 

この宙域の新共和国軍にとっては久しぶりの痛み分けであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

-アウター・リム・テリトリー フェルーシア星系 惑星フェルーシア-

帝国軍の主力はついぞ連合領のタイオン・ヘゲモニーへと侵攻し各戦線で勝利を重ねていた。

 

これも蘇った帝国軍の物量による人海戦術と先遣隊のエールリンク大将が行った防衛線への精神的圧迫が要因だろう。

 

何はともあれ各戦線では新共和国軍と連合軍は負け続け逆に第三帝国は勝ち続けていた。

 

後詰の部隊もタイオン・ヘゲモニーに限りなく近いフェルーシアまで進軍し備えを整えていた。

 

旧共和国のクローン戦争時代も共和国軍がラクサスを攻撃しようとこの惑星で覇権を争ったものだ。

 

今ではこんなにも簡単に大部隊を布陣出来る。

 

歴史は本当に大きく変わってしまった。

 

無論その善悪は誰も知ることはないが。

 

ジークハルトもステーションと共にフェルーシアに来ていた。

 

明後日彼らの第六連隊はタイオン・ヘゲモニーへと進軍する。

 

あくまで予備の穴埋めという感じだがそれでも前線に赴くことには変わりない。

 

多少緊張もするし身が引き締まる。

 

ウェイランドでの戦闘以来の前線だ。

 

「聞いたか?アミダ元宰相の部下が一斉に粛清されたんだとよ…」

 

「しかもエイリアン種族限定だってよ…代理総統はハイ=ヒューマン主義に相当ご熱心なようで」

 

「全く…コア・ワールド受けが良いからって少し限度を考えて欲しいものだな…」

 

2人の将校が雑談を交わしながらジークハルトの前を通り過ぎた。

 

話に夢中で恐らくこちらに気づいていない。

 

不用心な将校達だ、親衛隊の目の前でそんな話をするなんて。

 

この話を上官の誰かしらに密告すれば彼らはやがて何らかの処罰が下されるだろう。

 

あんな将校すぐ特定出来るだろうし。

 

親衛隊に対する総統の信頼度は正規軍のものより何倍も高い。

 

逆に総統に対する親衛隊の忠誠度は国家よりも高いものであった。

 

ちょっとした雑談や皮肉でも身を危険に晒す。

 

第一代理総統のハイ=ヒューマン主義に対する熱心さは異常なほどだ。

 

人気取りとかそう言ったものではまるで違う。

 

親衛隊のジークハルトでさえ恐怖に感じるくらいだ。

 

狂ってると言っても過言ではない。

 

一体何が総統をあそこまで作り上げたのか。

 

ひょっとして自分と同じなのではないのだろうか。

 

何らかの恐怖でエイリアン種族を憎むようになったとか。

 

それも考えられなくはない。

 

人間がエイリアン種族を攻撃するのと同じくエイリアン種族も人間を殺している。

 

どちらも悪い面がある。

 

ただその悪い面が強く浮き出るか浮き出ないかなのだろう。

 

「なあ、あんた」

 

ふと誰かに声をかけられた。

 

聞き馴染みのまるでない声だ。

 

ふと振り返るとベンチに1人の正規軍将校が座っていた。

 

服装は保安局の白い軍服で片目には義眼を、胸には中尉の階級章を付けている。

 

「どうしたんだ?」

 

ジークハルトはまずは疑問系で尋ねてみる。

 

もしかしたら具合でも悪いのだろうか。

 

例えば義眼の調子が悪いとか。

 

そういえば正規軍の保安局長官のアレシア・ベックも義眼だったはずだ。

 

いやそんな事は今はどうでもいい。

 

その保安局の中尉はジークハルトにまた声をかけた。

 

「とりあえず隣へ」

 

導かれるようにジークハルトは隣に座った。

 

何者なのだろうか。

 

若干紫色に近い黒髪が後ろで束ねられている。

 

「ジークハルト・シュタンデリス大佐だ」

 

「ヴァン・ブリーズ中尉…」

 

「どうしたんだ?具合でも悪いのか?」

 

ひとまず名前を聞くと容態を伺った。

 

「いやその点は大丈夫だ…ただ少し聞きたい事があってな」

 

「なんだ?」

 

保安局員とはいえ中尉なのにやけに馴れ馴れしい。

 

馴れ馴れしい割には声が低く何処か暗いので掴みどころがない。

 

「何であんたは親衛隊に入ったんだ?あんたほどの人物なら今からでも正規軍に戻って普通の将校としてやっていけるだろう」

 

「私を知っているのか?」

 

まあ知っていても何ら困ることはない。

 

むしろ多少軍部では有名な方だと一応自覚はしている。

 

コルサント戦、ホズニアン・プライム戦とこれまで重要な戦いにほとんど参加してきた。

 

武勲も名が通るには十分なものだ。

 

「ああ…昔帝国軍にいたこともな…あんたは出世したいからとか総統に媚を売りたいから親衛隊にいるわけじゃないはずだ。今からでも正規軍に戻れる」

 

「よく知ってるな…じゃあ逆に聞くがどうしてそこまで正規軍に戻って欲しいんだ?」

 

「これ以上親衛隊で汚れた仕事をして欲しくない。あんただって親衛隊の評価や噂は知ってるはずだ。それに隠れ蓑だったこの組織にもう長居する必要もないだろう」

 

もしかして忠誠心を試されているのだろうか。

 

保安局将校という点もあってかその線が濃くなってきた。

 

簡単な甘言に騙されて親衛隊を捨てるような者は総統も信用が置けないだろうし。

 

ならばそれを悟らせず最適の回答を導き出さなければいけない。

 

「私は既に総統に忠誠を誓った身だし連隊員の多くの部下がいる。今更全部捨てて正規軍には戻れないさ…もう遅すぎる」

 

「嘘じゃないが本心は違うはずだ…どうしてもう遅すぎるんだ?」

 

「何故だか君には本心がすぐ見破られてしまうな……遅すぎるんだよ、私の両手はとうの昔に血に染まってる…背後には多すぎる仲間の亡霊が縋ってる…全て私のせいで死んだも同然の者達だ」

 

「なら彼らの為にも正規軍に戻るべきなんじゃないのか?」

 

「いや逆だよ、そんな大罪人が神聖な神聖な軍隊(帝国軍)に戻って良い訳がない。だが償う必要がある…その為に私はここで戦い続ける。拾ってくれた総統には悪いが…」

 

そういうとジークハルトは立ち上がった。

 

精気のない空に近い片目でブリーズ中尉はこちらを見つめていた。

 

彼はまたジークハルトに尋ねる。

 

「市民を守るのが軍人の務めじゃないのか?」

 

ジークハルトは悲しく微笑を浮かべた。

 

そうだ、それが正しい。

 

それが本来の軍人だ。

 

でもそれじゃあ…

 

「それじゃあもう…戦う理由にならないんだ…その理由じゃ戦えない、戦意をもう保てない…昔はそんな理由で戦えたが今はそんなに純粋じゃない…贖罪でしか武器を手に取れないんだ…」

 

彼が忠誠心を調査していようともはや関係ない。

 

自分は自分の責務と罪を全うするだけだ。

 

既に自分は軍人ではないかもしれない。

 

ただの罪人の、ただの亡霊だ。

 

だがそれでもやらなければならなかった。

 

「私は進み続ける…二度と私のような人物を作らない為に、愛するあの子がこちらの世界に来ない為にも私は親衛隊に居続ける」

 

「それがあんたの自分で選んだ地獄か?」

 

「多分そうなんだろう…だが私は選んでなくとも地獄で構わない。それが私の罰だろうからな」

 

ジークハルトは微笑を浮かべると軍帽を深く被りその場を去っていった。

 

もう彼に伝える事も話す事も全部零した。

 

密告するならそれでいい。

 

自分の本心はこれ以上隠しきれない。

 

それでも戦い続ける、ただそれだけだ。

 

だからジークハルトは振り返らなかった。

 

彼がじっと見つめている事も気付かずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「陣形を維持しトルーパー隊とAT-ST隊を突撃させろ、全AT-ATは砲撃支援だ!」

 

アイガー准将の命令によりAT-ATから一斉に重レーザー砲とミサイルの一斉射撃が放たれ塹壕や退却する兵士を吹き飛ばす。

 

友軍の退却を支援しようといくつかの砲塔が砲撃を繰り出してくるがAT-ATの重厚な装甲には全く意味をなさなかった。

 

されど今回の戦いには多少の脅威がまだ存在していた。

 

それは僚機のテンペスト6の報告からであった。

 

『准将、敵のドロイド歩兵部隊です。数は三個中隊ほど』

 

備え付けのエレクトロバイノキュラーで周辺の様子を目視で確認すると確かにドロイドの姿があった。

 

クローン戦争期に活躍したB1、B2タイプのバトル・ドロイド、そしてドロイデカと呼ばれる強力な偏向シールドを備えたバトル・ドロイドの隊列があった。

 

B1、B2のバトル・ドロイド部隊は報告通り三個中隊で間違いなかったがドロイデカは目視で二個分隊ほどであった。

 

このままではまずいとアイガー准将は考えていた。

 

このまま歩兵部隊を突撃させればドロイドの壁に阻まれてかなりの損害を出してしまう。

 

見かけの100倍は危険な軍団だ、最悪AT-STにも被害が及ぶだろう。

 

無意味な損失は避けるべきだ。

 

それにこの程度の旧式部隊ならAT-ATの火力で簡単に粉砕出来るし事前に対処する手はいくらでもある。

 

「テンペスト9、イオンミサイルを装填し待機しろ。全ウォーカーは敵中隊に集中攻撃、歩兵部隊は重火器を使用し弾幕射撃!」

 

准将の素早い命令とともにウォーカー隊が一時停止し一斉に砲撃を始める。

 

十二台のAT-ATと二十四台のAT-STの一斉射撃がドロイド軍を襲う。

 

偏向シールドも持たず手持ちの武装で反撃しようとするバトル・ドロイドは次々と砲火の巻き添えとなり吹き飛ばされた。

 

足や胴体が空中に撒き散らされドロイドが放つブラスターの光弾はウォーカーにかすり傷一つ付けなかった。

 

部隊の数が少ない故か将又時代の流れかドロイド軍はすでに壊滅状態だった。

 

だがドロイデカ隊は違った。

 

高速で回転するドロイデカの分隊はAT-ATやAT-STの砲撃を軽々とかわし歩兵部隊に近づきつつあった。

 

通常のドロイド部隊もそうだがドロイデカの火力と防御力は歩兵部隊に対し多大なる脅威となる。

 

しかもそれが二個分隊、十分に歩兵部隊を蹴散らせる。

 

だがアイガー准将はこれにも手を打っていた。

 

すでに歩兵部隊には弾幕射撃の命令を出している。

 

ドロイデカが回転し移動中では偏向シールドは展開できず攻撃は立ち止まるか避け切るかしかない。

 

ならば避けられない八日力をばら撒いてやればいいだけの事。

 

すでに歩兵部隊はEウェブを組み立てDTL-19などの重火器で火力を固め終え攻撃を開始している。

 

平面上にブラスターの火力を展開していた。

 

まだ武装が射程外のドロイデカは攻撃の火力を全て避け切り突っ込むしかない。

 

自ら火力の網に掛かってくれた。

 

回転する胴体に何発もの弾丸がめり込み火花を散らし始めた。

 

やがて被弾箇所が広がり火花だけでなく爆発を起こし破裂するように爆散した。

 

他のドロイデカも同じような有様だった。

 

「全ドロイド部隊、95%が掃討完了」

 

「十分だ、再びAT-ST隊と歩兵部隊を突撃させろ。両翼のウォーカー部隊を前進させ我々の中央のAT-AT隊は一旦停車だ」

 

「了解」

 

パイロットがウォーカーを停車させゆっくりと機体全体を地上に着ける。

 

その間にストームトルーパーやAT-STの部隊は前進し始めた。

 

「スピーダーバイクの偵察隊を前線に展開し索敵させろ、車長達を集めておくれ」

 

「わかりました」

 

AT-ATの格納庫から数台の74-Zスピーダー・バイクに跨ったスカウト・トルーパーが発進し偵察に出た。

 

同じようにストームトルーパーが数名姿を表し周囲を警戒している。

 

伏兵がこの機を狙って攻撃してくるかも知れない。

 

戦場でのトルーパー達はいつ如何なる時であろうと警戒心を張っていなければならなかった。

 

各ウォーカーから指揮官がトルーパー達に守られ降りてくる。

 

皆アーマーを着込んで腰のベルトにはブラスター・ピストルの入ったホルスターをぶら下げている。

 

ウォーカーの中でも身を守る武装はしっかりしておかねばならない。

 

いつ自機が破壊されて白兵戦になってもおかしくないからだ。

 

「司令官」

 

車長達が敬礼しアイガー准将を出迎える。

 

トルーパーの1人が野外用のホロプロジェクターを起動し周辺地図を出した。

 

「敵の戦線は完全に崩壊しました。ここは師団を結集させ一点突破を図りましょう」

 

「そうだな…ティルゲン少佐とホーヴィ少佐の砲兵大隊を左右に配置して敵司令部まで一気に突撃する。ヘンドラー大佐の連隊に退路を塞ぐよう命令を」

 

「はい准将」

 

ストームトルーパーの中尉が命令を受けてウォーカーに戻った。

 

このままテンペスト・フォースの機甲戦力を真正面にぶつけつつ左右両方の砲撃による支援突撃で司令部を制圧する。

 

しかも後方はヘンドラー大佐の連隊が、上空にはケルク准将の機動部隊が控えており退路は存在しない。

 

勝利はもう目前だ。

 

だが一つ気掛かりな事が目に付いた。

 

「あれは…親衛隊か?」

 

アイガー准将の目線の先には親衛隊保安局と思われる数名の兵士がスピーダーに乗り込み何処かへ移動しようとしていた。

 

彼らに索敵命令は出していないはずだ。

 

不審に思った准将は将校達の場を離れ保安局部隊に声を掛けた。

 

「待て、どこへ行くつもりだ」

 

発進しようとしていた部隊はスピーダーを止め部隊長と思われる若い新任の少尉がアイガー准将の前に現れた。

 

敬礼し少尉は説明を始めた。

 

「親衛隊保安局のハイドレーヒ大将からの特務命令です。周辺地区の敵性分子掃討を命じられました」

 

「具体的にはどのような勢力だ?ゲリラか?それとも敗残兵の掃討か?」

 

ゲリラ戦、敗残兵掃討にしては兵員数と武装が貧弱すぎる。

 

だが少尉は口を閉ざした。

 

「お答えできません、これは保安局の最高機密です。いくら将官と言えどお答えする訳にはいきません」

 

それを聞いていた1人の将校が少尉に詰め寄った。

 

「貴様!少尉の分際で!」

 

言い方は悪いが言葉そのものは尤もだ。

 

「それでは、出発だ!」

 

少尉は敬礼しスピーダーに乗り込んだ。

 

ああまで言われたら一介の准将でしかないアイガー准将では引き止める事など出来なかった。

 

尤も彼らの部隊などいなくとも戦闘は続行出来るし親衛隊保安局の命令を止める事など出来ないのだが。

 

「准将、どうかされましたか?」

 

去りゆく親衛隊を見つめるアイガー准将を将校の1人が名を呼んだ。

 

何か引っ掛かる点がある。

 

「いや…何でもない」

 

 

 

 

 

 

 

-惑星ラクサス 首都ラクサロン-

「重傷だ!早く手当を!」

 

「もう病床が残り少ない!少し待ってくれ!」

 

「待ってたら死んでしまう!!とにかく運ばないと!」

 

「おいおい待て待てソイツはもう死んでいる!」

 

「いや待ってくださいよ…!まだ生きてるでしょう!!」

 

「惑星に着いた途端これだ!相変わらずこの星は俺と全く合わない」

 

ジョーレンはUウィングの整備と補給を発着場の整備士たちに任せた後ジェルマンと共に上級将校に挨拶に向かっている。

 

ただどこかジョーレンの感情が不安定で怒りっぽくなっていた。

 

しかもこのラクサスの事を何か知っているようだった。

 

「ラクサスに住んでたのか?」

 

「ああかなり昔な…だがクローン戦争が始まる前に共和国派だった俺達は迫害されて父親はここの連中に殺された」

 

「…すまない」

 

ジェルマンは思わず謝罪してしまった。

 

ジェルマンがジョーレンのことを全て知らないようにジェルマンも相棒であるジョーレンの過去をまだ知らなかった。

 

クローン戦争は僅か数年の出来事ではあったが十分に銀河市民を傷つけ疲弊させるものであった。

 

ジョーレンのような迫害され親を国に殺された子供は数多くいるしそれは何も共和国派一方のものではなかった。

 

「いいんだ、誰が悪いわけでもないのが戦争だ。ただ…どうしても感情では理解できない部分がある…」

 

この時のジョーレンは言葉では言い表せないほど複雑な表情を浮かべていた。

 

悲しみ、あるいは憎悪、諦めと言ったいくつもの表情が折り重なっている。

 

こんなジョーレンは見たことがなかった。

 

すると1人の新共和国軍の士官がジョーレン達の前に現れた。

 

階級章は少佐を表しておりジョーレンやジェルマン達よりも階級は上だ。

 

「参謀将校のジェタック少佐だ」

 

「ジョーレン・バスチル大尉でこっちがジェルマン・ジルディール中尉。さっき説明した通り我々はとても忙しい。早くそちらの司令官と国家主席に合わせてほしい。これは新共和国の非常事態だ」

 

「それは出来ない」

 

「何故です?もう一度言いますが我々は非常に忙しい。ここの次はモン・カラへと旅立つ予定だ、早くして欲しい」

 

ジョーレンは苛立ちを隠さずジェタック少佐に詰め寄った。

 

彼の言う通り時間がない。

 

ヤヴィン4やこの惑星もいつ陥落するか分からないしディカーだっていつ帝国軍に発見されるか分からない。

 

現にディカー方面にも帝国軍の手は伸び始めている。

 

機動艦隊以下の戦力しかないディカーが奇襲されれば一時間と持たず陥落してしまうだろう。

 

そうなれば今度こそ新共和国は終わりに近づく。

 

その為には一秒でも早く残った新共和国軍との連携を気付きたかった。

 

「ジャステン中将ら軍司令部は今も各戦線を維持しようと司令室に篭り指揮をとっておいでだ。貴官らに割く時間などない」

 

はっきりとした物言いをするがその分苛立ちを煽る将校だ。

 

他の兵達と違い少し余裕そうな表情を浮かべているのがまた気に食わない。

 

だがジョーレンだって引き下がらない。

 

「それを組んで申し上げているのだ。ここの戦線も重要だが我々は新共和国全ての戦線を左右する重要な任務を背負っている。その重要さが分からないではないはずだ」

 

「我々の任務が達成されれば新共和国は再び組織的な反抗を行う事が出来、あなた方の戦いもかなり楽になるはずです」

 

ジェルマンはジョーレンの言葉をさらに付け加えた。

 

だが目の前の少佐はいくらメリットを並べ立てても通用せず聞く耳持たんと言った表情だ。

 

返される言葉も提携文のような決まったものだった。

 

「何度も言うが今は今は無理だ呼びがかかるまで待機していろ。それでは」

 

そう言うとジェタック少佐は二人に背を向けスタスタと歩き始めてしまった。

 

ここで彼を返すわけにはいかないとジェルマンとジョーレンは急いで彼の元へ走り出し説得を続けた。

 

「おい待ってくれ!少しでいいんだ!」

 

「離れろ!第一お前達の任務が達成されたところでこの戦線が変化する事はない…!我々はもうおしまいだ!」

 

突然悲観的なことを言うジェタック少佐にジョーレンは思わず溜め込んだ苛立ちを全てぶつけてしまった。

 

「おしまいだと?諦めるのか?せっかくここまで来たのに?冗談じゃない!それじゃあ死んでいった者達はどうなるんだ!」

 

特殊部隊として第一戦で戦い続けてきたジョーレンの言葉の重みは他の誰よりも重たかった。

 

だが彼の言葉は逆にジェタック少佐の怒りを煽った。

 

「諦めるだと?この様子を見てみろ!これでどう勝てるって言うんだ!既にラクサロンの病院は負傷者だらけだ。こんな状態でどう希望を持てと言うのだ!」

 

怒りをまるで隠さず小声で周りを見渡すよう指示するジェタック少佐。

 

痛みを叫ぶ兵士や死体を泣きながら運ぶ若い兵士。

 

絶望的と言っても過言ではないだろう。

 

ジェタック少佐の意見も尤もなものだった。

 

だがここまできて両者とも引き下がるわけにはいかない。

 

ジェタック少佐はさらに続けた。

 

「あと数週間もしないうちに戦線は完全に崩壊し首都に帝国軍が雪崩れ込んでくる。上だって薄々敗北を悟ってるはずだ。既に戦線の崩壊は目に見えている」

 

「だからって諦めるわけにはいかないでしょう!我々は新共和国の軍人ですよ!?」

 

「それこそ手遅れだ……新共和国は既に滅んだ!我々がいくら戦おうとその事実は拭いきれない。我々もこのまま負ける…近いうちに我々は皆死ぬ…もう無駄なんだ」

 

ジェルマンの返答すら全てを諦めていたジェタック少佐には通用しなかった。

 

「じゃあお前はどうするんだ。このままむざむざ死んでいくのか?」

 

「当たり前だ、それが上官の命令なら…死ぬしかない。部下も何もかも道連れにしてこの星を死守するしかあるまい…」

 

「ストームトルーパーとなんら変わらんな」

 

「兵として優秀な分ストームトルーパーの方がマシだ。とにかくお前達は待機だ。何を言おうと無駄だ、いいな?」

 

ジョーレンの皮肉を躱したジェタック少佐は指を差し二人を釘付けた。

 

これ以上は何を言っても無駄だと。

 

ジェタック少佐はそのまま唖然とするジェルマン達を背に去っていった。

 

「新共和国は…終わりか…」

 

「ほっておけ、最後まで諦めなかった奴が生き残れる。そう言うもんだ」

 

 

 

 

 

 

 

議論が紛糾…と言うより息詰まっていたのはジェルマン達だけではなかった。

 

連合の議会も帝国に対する対応に追われていた。

 

ジェタック少佐の言った事は間違いではなく既に防衛線は崩壊、帝国軍の侵攻を食い止めるのは不可能となっていた。

 

敗北は拭い切れない事実としてすぐそこまで迫っていた。

 

「第四軍、第五軍が既に壊滅し敗走…第十四分艦隊は戦闘不能の痛手を受け第十防衛線まで後退しました…」

 

「残す戦線は最終防衛線とこのラクサスだけか…どの道第九防衛線は長く持つまい…全戦力を最終防衛線まで後退させろ」

 

「それは出来ません…第九防衛線を後退させれば未だ第八線で戦う多くの兵士を見捨てる事となります…」

 

リストロング司令官の命令を新共和国の幕僚の1人であるペンディス大佐は反論し理由を述べた。

 

司令官は頭を悩ませながら彼に尋ねた。

 

「…具体的な兵員数は?何個師団が残っている」

 

「大体二個師団と一個連隊ほどが…しかし戦列の崩壊によりほとんどが小隊、中隊規模で回収は困難です…」

 

「ならば見捨てるしかあるまい…もはや手遅れだ…最終防衛線まで後退させろ、手遅れになる前にだ」

 

「承知しました…」

 

非情な決断だったが仕方ない。

 

少しでも時間を稼がねばならないのだから。

 

「おい!ジャステン中将らはどうした!」

 

議員の1人であるハルターン議員がペンディス大佐に怒鳴り散らすように尋ねた。

 

新共和国側総司令官のジャステン中将やエンベル准将、地上軍のタイダル少将らの姿が全く見えなかった。

 

こんな非常事態の会議の場にいないとは何事かと一部議員たちからの野次は止む事はなかった。

 

おどおどしたままペンディス大佐は答えた。

 

「中将達は司令室に…今も各戦線に指示を飛ばしており…」

 

「今すぐ連れてこい!!こうなったのは彼らの作戦ミスだ!この場で責任と次の手を進言する義務があるだろう!!」

 

議員はそのまま怒鳴った。

 

ペンディス大佐は怯えながら「わかりました!」と言い遅いで司令室に向かった。

 

彼の副官や部下達も同じようにその場を後にした。

 

「…寄生虫は消えたか…」

 

この部屋の警備を担当するグラット大尉は辺りを見渡しそう呟いた。

 

とても小さな声だったがそれでもその場の全員がその言葉を聞き安堵の息を漏らした。

 

()()()”は消えこの場にいるのは信頼に値する連合の者のみ。

 

「ああは言ったものの本当に大丈夫なのかリストロング…?いくら最終線を篤くしたとて持って…」

 

「十分です議員、既に脱出の用意は出来ている」

 

先程とは違い不安な表情を浮かべるハルターン議員をリストロング司令官は安心するよう宥めた。

 

他の同年代の議員からも「名演技だったぞ」とか「よく言った」など小声で褒められていた。

 

敗北は決まった。

 

だが希望はまだある。

 

それに敗北など慣れたものだ。

 

そして生き延びればまだ希望があると言うことも議員達は知っていた。

 

「主席、折角この地に戻ったと言うのに再び逃げるのはさぞかし無念だと言うことは重々承知です…しかし希望はあります。逃げましょう、逃げれば必ずまたここに戻って来れるでしょうから」

 

リストロング司令官はアヴィ主席をしっかりと見つめ言葉を述べた。

 

辛い、悔しいのは皆同じだ。

 

二度もこの地を背にして逃げなければならないのだから。

 

だが生き延びれば希望はある。

 

連合は、あの大戦で潰えたかに見えた夢はまだ残っている。

 

「ああ…もちろんだ。かつてこの地を抜け出した時は愉快なクローンの分隊に助けられた…今度はリストロング、君に託したぞ」

 

「はい!!」

 

諦めなければ希望はある。

 

それを頑なに信じ戦い続けていたのは新共和国だけでない。

 

彼らもまたその1人なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ジェルマンとジョーレンはそれでも客としてしっかり持てなされた。

 

いつ帝国軍の爆撃が来てもいいように彼らの部屋は地下壕に割り当てられた。

 

まあインペリアル級の軌道上爆撃なら普通に地下を容易に掘り起こしそうだが。

 

流石にずっと地下にいるのは退屈なので二人は地表の旧分離主義元老院ビルの庭園にいた。

 

本来は美しい草木や庭があるはずなのだが戦時中な為かデカデカと大砲が置かれ風情も何もなかった。

 

周りには数名の新共和国兵がいる。

 

だがその表情はどこか暗く活力があるようには見えなかった。

 

「なんかすまないジョーレン…僕が助けようと言ったせいでこんな所に巻き込んでしまって」

 

「いいんだ、お前のやった事は普通に見れば正しい。俺が少し焦り過ぎただけってのもある…一人生き残るのは辛いもんだからな」

 

そうやって励ましてくれるジョーレンにジェルマンは思わず申し訳なさを含んだ微笑を浮かべた。

 

彼の大人な対応に少なからず救われてきた。

 

軍人としても人としても頼りがいのある尊敬できる人物だ。

 

「ラクサスは相変わらず嫌な場所だが前よかマシだ。やっぱりお前みたいな愉快な奴がいると気分が楽だ」

 

「なんだよその反応に困る言い方は!」

 

「ハハすまんすまん、ほんと面白い奴だなって…っ……!」

 

急にジョーレンの言葉と足取りが途切れた。

 

それに気付くのが遅れたジェルマンはジョーレンを少し通り過ぎてしまった。

 

だが気づいた途端彼の様子のおかしさが目に見えて分かった。

 

慟哭は開き手が少し震えている。

 

どことなくラクサスに足を踏み入れた時と同じ感じだった。

 

「ジョーレン?どうしたんだ?ジョーレン?」

 

彼は一点を見つめたまま動かない。

 

ジェルマンがその先を見つめるとそこには歩兵の一隊があった。

 

歩兵といっても人間ではない。

 

ドロイド、バトル・ドロイドの歩兵隊だった。

 

ブラスター・ライフルを両手に持ち一糸乱れぬ行進で哨戒任務に出ているように見えた。

 

「……やっぱり戦争はまだ……」

 

「ジョーレン?おいジョーレン!」

 

彼の体を揺さぶると意識はこちらに戻ってきた。

 

本当に気が動転していたようだ。

 

ジェルマンは思い切ってとある事を尋ねた。

 

「なあジョーレン、無理にとは言わないし僕が何かできるわけでもない。だが話してくれないか、昔の事を。やっぱりラクサスに来てから…あのドロイド達を見てから少しおかしいよ」

 

ジョーレンの表情が少し曇った。

 

この事を話していいのかと言う顔だ。

 

だが決意を固めたジョーレンはジェルマンに話し始めた。

 

「…父が死に俺はなんとか親戚のいるアナクセスに逃げた。当然ラクサスから来た奴なんていい顔はされないだろう…ずっとスパイだと疑われ続けてきた。父が死んだのも嘘だとなじられた事がある」

 

ここまで来たらジョーレンの話はもはや止められない。

 

彼は全てを打ち明けるつもりでいた。

 

「親戚は俺の事を信じてくれたが周りはそうじゃない…親戚の立場すら次第に危うくなり始めた。スパイ一家だなんだと。だから証明する必要があったんだ。『スパイではなく共和国に忠誠を誓う市民』だと」

 

「つまり…」

 

「俺は当時設立されつつあった共和国軍…いやジュディシアル・フォースの情報部の特殊部門に入隊した。当然親戚達は反対したさ、そんな無茶する必要はないと。だがこれ以外道はなかった」

 

ただの歴史の授業では習わないクローン戦争のある一面の真実だ。

 

隠された歴史そのものだった。

 

「まだ15歳くらいだった。それでも俺は同い年の仲間達と共にクローンにも勝るとも劣らない情報部員の兵士に仕立て上げられた。俺の技術の殆どは同盟の特殊部隊よりもこっちで習ったやつが基礎だ」

 

「15歳って…そんな…!」

 

若すぎる。

 

いくらなんでもまだ幼すぎるだろう。

 

「クローンだって大半の連中は10歳くらいだった。俺達は情報部員として共和国の為によく戦った。だがある日…作戦に失敗した俺の部隊は俺を除いて全滅した…みんなあのバトル・ドロイドに捕まり容赦無く殺された。見かけはアレだが十分に脅威になる殺戮マシンだ。何十人いた俺の仲間はその日にみんな殺された。分かってる…悪い奴なんていない、ただ運が悪かった…だがやっぱりアイツらへの恨みは消えねぇんだ…!どうしてもこの星もここの連中もあのドロイドも全てが憎く感じちまう……俺の周りで死んだ仲間達がずっと見つめている…俺の戦争は……まだクローン戦争で止まったままなんだ…」

 

ジョーレンは大人だ。

 

行動の節々からそれは解見えていた。

 

だからこそこんなに苦しんでいる。

 

恨みたくとも、、赦したくともそれは許されない。

 

だから憎く感じる。

 

ただ怒りが湧き上がる。

 

どうしようもない苦しすぎるもどかしさが心を蝕む。

 

「結局反乱に加わったのだって単純に上官の命令だっただけだ。上官が反乱軍に加担したから部下の俺もそのまま流れ着いた…少佐にあれだけ言っておいて俺の帝国と戦う理由なんてこんなもんだ。今だって帝国よりも未だに連合の方が憎い…時々思うんだよ、俺の居場所はもしかして“ここここ(新共和国)”じゃなくて“向こう(帝国)”なのかもしれないな…」

 

「それは…」

 

「いや変なこと言ったな忘れてくれ…色々迷惑をかけて悪いが少し一人にしてくれ…じゃあな」

 

そう言いジョーレンは寂しく歩き去っていった。

 

彼だけがこの場に居場所がないかのように。

 

 

 

 

 

 

-コルサント 総統府-

総統府や各行政ビルでは日夜増え続ける帝国領の統治に大忙しであった。

 

わずか数ヶ月足らずで帝国領は何十倍にも膨れ上がった。

 

新共和国崩壊と度重なる勝利での影響で加盟惑星は次々と増加していった。

 

無論未だに中立を決め込む惑星政府や反抗の意志を示す惑星政府もある。

 

だが新共和国亡き今彼らの抵抗は殆ど無意味だ。

 

中立政府にも敵対勢力にも軍を派遣して侵略戦を行い強制的に加盟させるかもしくは直接併合していた。

 

その統治方法と領土拡大方法ははっきり言ってかつての第一銀河帝国より横暴で暴力的だった。

 

まだ大使を派遣したり加盟しない惑星を無視したりする旧帝国の方が良心的だという意見があちらこちらで広がっている。

 

何せ第三帝国は大使の代わりに軍を派遣し無視の代わりにスター・デストロイヤーの砲火を浴びせかけて来るのだから。

 

アウター・リムや余程の軍事力がある惑星でないと中立というのは難しい状態だ。

 

かつて第三帝国がコルサント臨時政府に対して密かに言ったとされている「コルサントか戦争か」という言葉があるが正にその通りだ。

 

-服従か戦争か-

 

これが第三帝国の今のやり方であった。

 

無論これみ全員が全員靡くわけではなかったが。

 

「コルサント本国防衛艦隊、親衛隊に管轄が移るんだってよ」

 

「事実上解体か…司令官は誰が?」

 

「フェルター大将かヴァンケル大将だろう…」

 

男の隣を二人の帝国軍将校が通った。

 

男が勝手に着ている親衛隊の制服とは違い古来から存在する正規軍の軍服だった。

 

軍帽を深く被りどこか早足のこの男は真っ直ぐある場所へ向かっていた。

 

口元しか正確に見えない上に無表情である為何を考えているか全くわからない。

 

元々人が多くそれぞれ他人にかまっている暇などない総統府の役人や将校達は当然男にも声を掛けなかった。

 

その為誰もこの男の正体と目的について知る由もなかった。

 

曲がり角を曲がると数名のトルーパーと将校が控えていた。

 

彼らの先には大型の探知機のようなものがありその先にも数名のトルーパーが待っていた。

 

これが総統府の総統執務室へつながる最後の検問所だ。

 

当然男は検問所の将校に止められた。

 

「待て、この先は総統閣下の執務室だ。要件がなければ入室は許可出来ん」

 

当然の決まり文句だ。

 

だが男は焦りひとつ見せずこう答えた。

 

「総統閣下に宇宙軍参戦報告書を提出しに来た。直に渡せとの命令だ」

 

男の返答に将校は首を傾げた。

 

彼の階級は少佐であろうか、赤二つ、青二つのバッジが段重ねにならず並んでいる。

 

「そんな報告は受けていないが…宇宙軍本部と執務室に問い合わせてみる」

 

そういうと将校は通信士官の近くへ向かった。

 

代わりに二名のストームトルーパーが男の前に出た。

 

両手にはブラスター・ライフルを所持し片方のトルーパーは肩にポールドロンを身に付けていた。

 

「ああ…そうか、わかった」

 

将校は相槌を入れ何かを確認していた。

 

軍帽でよく見えないが男はこの時かなりの汗を垂らしていた。

 

焦っている。

 

男の焦りと緊張はとうの昔に限界に達していた。

 

それはあまりに一瞬の出来事であった。

 

だから誰しもがその事に気づく事が出来なかった。

 

気がつくとストームトルーパー二名は男に突き飛ばされ倒れはしなかったものの男に道を開けてしまった。

 

男は真っ直ぐ検問所のすぐ奥、執務室を目指している。

 

他のトルーパーが銃器を構えようとするがもう間に合わないかに見えた。

 

既に男は検問所の探知機を越えようとしていた。

 

だが男は止められた。

 

「おい待て!止まれ!」

 

先程の将校がポケットからスイッチを取り出し急いで押した。

 

その瞬間検問所のガードシステムが作動し男は起動した装置によって思いっきり通路へ弾き飛ばされてしまった。

 

二回ほどボールのように跳ね転がり窓の側まで飛ばされた男は軍帽が脱げ容姿が見えた。

 

もはやこれまでかと男は何かのスイッチを取り出した。

 

察しの悪いトルーパー達はそれがなんなのか気が付いていなかったがその将校はその存在に気が付いていた。

 

まずいと将校は急いで走り出した。

 

男も同じように走り出している。

 

だが先に付いたのは将校の方であった。

 

将校は思いっきりタックルを繰り出し男を再び突き落とした。

 

だが男は突き飛ばされる瞬間スイッチを押していた。

 

男は窓を突き破り総統府の外へと突き出された。

 

刹那男は“爆発した”。

 

轟音が鳴り響き爆風と破片が辺りに撒き散らされ男自身は爆発に巻き込まれその肉片は一つも残らなかった。

 

爆発に巻き込まれた建物の部分が大きく抉れあちこちから動揺の声と叫び声、警報が響いた。

 

「…ぬぅ……隔壁を閉鎖しろ……早く…!」

 

「少佐!!」

 

ストームトルーパーが将校の元に駆け寄りすぐに検問所の隔壁が完全に閉鎖された。

 

後に代理総統暗殺未遂事件の“()()”となったこの爆破事件はこうして一瞬のうちに幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようやく来たかジャステン中将、それで此処から巻き返しの策はあるのか」

 

議員の一人が彼に威圧感を持って訊ねた。

 

それもそのはず、ここまで戦線が壊滅したのは彼らの作戦ミスでもあるし何より戦乱を持ち込んだのは彼らだ。

 

答える責任がある。

 

リストロング司令官はハルターン議員の隣でジャステン中将を一瞥した。

 

以前の少々傲慢な自信過剰な面影は一切なく目の下にはクマが出来、髪も少し乱れ肌艶も悪かった。

 

だが彼の声音だけは以前変化がなかった。

 

むしろ少し増強されたように思える。

 

「ええありますとも…ですがその為にはもう少し戦線を維持する必要がある」

 

声音だけでなく態度も全然変化がなかった。

 

悪い意味で安心出来る。

 

奴の態度が崩れればそれこそ終わりだろう。

 

まあもう手遅れなのだが。

 

議員達もこれからジャステン中将が話す事は詭弁にしか過ぎないと知っているはずだ。

 

彼も我らも本当に運が悪い。

 

「具体的にはどのような方法で反撃するのだ」

 

ハルターン議員がジャステン中将を問い詰めた。

 

不健康そうな顔で彼はニヤリと気味が悪く感じる笑みを浮かべ答え始めた。

 

「戦線を維持し帝国軍の足を止める…そして」

 

彼は息を吸い再び答えを始めた。

 

「数時間程前に到着したUウィングの特務部隊…彼らを使い各地に潜む新共和国軍に援軍を要請する。各宙域から結集した新共和国軍の力で帝国軍を包囲殲滅するのです…!」

 

「そんな事可能なのか?」

 

「そうだ!援軍に駆けつける確率も、それで勝てる勝率も不明ではないか!!」

 

議員達は憤慨し始めた。

 

それもそうだろう、いくらなんでも現実性がない。

 

大体新共和国の結束力がこれほどまでに高ければこんな事にはなっていないはずだ。

 

「もし援軍が来なかったら?」

 

リストロング司令官は彼に訊ねた。

 

すると彼は猟奇的な笑みを浮かべ何かの合図を出した。

 

すると彼の副官や部下達は一斉にブラスター・ピストルを構え扉からは重武装の新共和国兵士達が一斉に飛び出してきた。

 

皆ブラスター・ライフルの銃口をこちらに向けている。

 

この人数では反撃など出来ない。

 

「無礼だぞ!!何をするか!!」

 

ハルターン議員がジャステン中将に怒りをぶつけた。

 

しかし中将はそれには答えずリストロング司令官への返答を始めた。

 

「来なければ我々はこのままラクサスを枕に皆戦死するだけです。貴方達も道連れだ…あのUウィングパイロット達も全て…!」

 

狂気を孕んだ表情のままジャステン中将はその場を去った。

 

今のリストロング司令官にそれを止める力はない。

 

あるのはただ一つの希望だけだった。

 

 

 

つづく






酒が飲めるようになりたい、下戸は困る
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