第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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旗を高く掲げよ!
懐かしき日を思い出し
我らは再びは旗を掲げる
人目を気にする必要はない
我らの帝国は再び蘇ったのだから!
我が軍隊を迎えよ!
総統の指揮の元
皇帝陛下の帝国軍は再び旗を掲げる
銀河を取り戻すその日まで!
-第三銀河帝国 国歌 “忌まわしき日に別れを告げて”-


連合の滅亡/後編

-惑星ラクサス 緊急地下監房室-

数名の新共和国兵士がA280を構えキルモードのまま迫り来る侵入者に対して発砲する。

 

既にこの監房警備に割り当てられた半数以上の兵士が打ち倒されてしまった。

 

必死に防戦し増援を要請しているが通信妨害と侵入者の練度に圧倒されたった二名の敵に対して未だに不利な状況であった。

 

しかも侵入者はブラスターをショックモードで使用しており殺傷能力は明らかにこちらより低い。

 

最大出力とはいえ確実に相手の息の根を止められるわけではなく当たりどころによっては敵を戦闘不能にする事すら難しい。

 

それでも彼らは確実にブラスター弾をこちらに当て兵の数を減らしていた。

 

おかげで兵士達にも動揺が障じ精神的な面で圧迫され始めていた。

 

「敵はたった二人だ!早く打ち倒せ!」

 

分隊長がそう言い放ちブラスター・ライフルを向けるも彼の弾丸は当たらない。

 

それどころか部下の弾丸も当たらず侵入者は軽快な動きのまま確実に弾丸をこちらに撃ち当てた。

 

直撃を喰らった二名の兵士が潰れた声を上げ地面に倒れ込んだ。

 

もう分隊員の半分が撃ち倒され残された兵力はもう一つの分隊と合わせても残り八名程度だった。

 

攻撃される前は二十四名の兵士が警備についていた。

 

しかしあっという間に1/3程度の兵力まで削られてしまった。

 

「隊長!もうダメです隊長!」

 

「ひっ怯むな!撃ち続けろ!兵士の数ではまだ…っ!」

 

そう言ったもう一人の分隊長が弾丸の直撃を受け気絶してしまった。

 

これで七名。

 

このままのペースで行けばあっという間に警備隊は全滅だ。

 

一旦体制を立て直す必要があると考えた分隊長は焦りながらも兵士たちに命令を出した。

 

「後退!一旦後退だ!第三隔壁まで後退しろ!」

 

ブラスター・ライフルを撃ちながら兵士達が後へ後へと下がる。

 

その間にもショックブラスターの餌食となった一人の兵士が隔壁の中に入れず外で倒れ込んでしまった。

 

「もう諦めろ!」

 

分隊長が助けようとする兵士を引っ張り乱暴に隔壁閉鎖のスイッチを叩く。

 

ゆっくりとだが頑丈なブラスト・ドアが閉まりなんとかあの恐ろしい侵入者からひとまずの安全を手に入れた。

 

兵士達は荒い呼吸のままゆっくりと銃器を構えながらブラスト・ドアから離れようとする。

 

もしかしたら爆薬で吹っ飛ばされてしまうかもしれないからだ。

 

尤もそうなった場合もう手遅れな気もするが。

 

「なっなんなんだあいつら…!?…なんて強さなんだ……!!」

 

ヘルメットの下から流れる汗を拭いながら怯えた目のまま苛立ちを吐き捨てる。

 

他の兵士達も顔中びっしょりと冷や汗が流れていた。

 

「新共和国の兵士と同じ武装だった…味方なのか…?あいつは…!」

 

「そんなわけあるもんか!クソっ!!なんなんだよクソ!」

 

彼らが恐怖を感じていると突然ガコンという音が隔壁の中に響いた。

 

今の兵士達には僅かな音でも心臓が止まりかけた。

 

「なっなんだ……?」

 

ブラスター・ライフルを構えたまま互いの背中を囲みあった兵士達が周囲を見渡した。

 

侵入者が何か仕掛けたのか、それとも施設に何か異常があるのか、ただの錯覚か幻聴か。

 

兵士達の心臓の鼓動は早まり緊張と不安は極限まで昂った。

 

そんな中一人の兵士が何かを発見した。

 

「分隊長!あれを!」

 

「なっ!!」

 

直後ショックモードのブラスター砲が隔壁の中に閉じ込められた密室に響き戦闘能力を保持していた兵士達も皆気絶し戦闘不能に陥ってしまった。

 

収監された囚人達の暴動用に取り付けられたブラスター砲が支援対象である警備兵達に襲い掛かったのだ。

 

もはやどうする事も出来ず部隊は全滅した。

 

死んではいないが全員行動不能だ。

 

数十秒経った後頑丈なブラスト・ドアが爆薬も何も使わず閉じた時と同じように開いた。

 

侵入者達はそれをさも当たり前かのように通り抜けていく。

 

「さて、早速解錠頼むぞ」

 

「ああ、任せてくれ」

 

侵入者達の会話のすぐ後に監房の全てのドアが開いた。

 

ジョーレンとジェルマンは選び抜いた道を進み抜けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「憎いあんた達を脱出させる為に駆けつけました」

 

そう言って新共和国兵、ジョーレン・バスチル大尉は手を差し伸べた。

 

色々腑に落ちない面はあるが助けが来たというのは絶好のチャンスだ。

 

なんとかして抜け出し連合首脳達を助け出さねばならない。

 

「ありがとう…だがここで悠長にしている場合ではない。この国の…連合元老院議員や国家主席を早く助け出さねば!」

 

リストロング司令官は少し声を荒げて二人に忠告した。

 

だがジョーレンも隣のジェルマン・ジルディール中尉も顔を見合わせ微笑を浮かべていた。

 

「生憎、我々は仕事が早いもので」

 

ジェルマンがそう呟くと彼の後ろからぞろぞろと人影が見え始めた。

 

リストロング司令官にとってはかなり見覚えのある人物達だった。

 

「撃ち合いなんて何年振りか…ほとんど弾が当たらなかったぞ」

 

「ハルターン議員!ヘイヴィー議員!」

 

ハルターン議員や他の議員があの捕縛された時の格好のまま出てきた。

 

しかも何人かは警備兵から拾ったであろうブラスター・ライフルを若干慣れない手つきで握っていた。

 

司令官も驚きを隠せぬままゆっくり檻の中から姿を表した。

 

「無事で何よりだリストロング司令官。会えて嬉しいぞ」

 

そう言って議員達の中からアヴィ主席が姿を表した。

 

顔にやつれが少し見えるものの元気そうだった。

 

白い大きな髭も健在だ。

 

「主席や議員方こそご無事で…」

 

握手を交わしリストロング司令官は目尻に浮かびかけた涙を必死で抑えた。

 

これほど奇跡に近い喜びはないだろう。

 

「せっかくの機会で悪いのですが…早く脱出しないと…」

 

「ああ、ほらもうそこに…敵が来てる」

 

ジェルマンの忠告にジョーレンが言葉を付け加えた。

 

しかも通路の奥から現れた「動くな!」と言いブラスター・ライフルを構える二名の警備兵をブラスター・ライフルで戦闘不能にしてからだ。

 

銃声が響き二人の警備兵が地面に倒れ込む。

 

それでようやく議員やリストロング司令官達は現実に戻ってきた。

 

「だがどうやって脱出する?もはやラクサスは君たちを除いて新共和国だらけ、つまり敵だらけだ。こんな状況じゃ脱出など…」

 

リストロング司令官は呻き声を上げながら倒れている警備兵からブラスター・ライフルを無理やりもぎ取り状態をチェックするとそう不安を漏らした。

 

「ご安心を、我々も完全に敵ばかりではない。幸い味方してくれる者もいる。そいつらがこの監房室を出た外に輸送船を手配してあります。それに乗って帝国の封鎖を突破し脱出してください」

 

「だがラクサスの民はどうなる?今更だが彼らを二度も置いていくことは…」

 

「それについてもご安心下さい。既に宇宙港の閉鎖は解かれ市民の脱出は始まりつつあります。新共和国の司令部は現在帝国軍の攻撃を防ぐのに手一杯でこちらに見向きもしていない」

 

「なるべく正規の国防軍がいるとされている封鎖線を通るよう指示しています。清廉潔白な国防軍なら親衛隊のような過激なことはしないでしょう」

 

「なるほど…」

 

ジョーレンとジェルマンは説明を重ね議員達を安心させた。

 

不安と市民を残したままただ一人母星を逃れるのはさぞかし辛いだろう。

 

仮にまた戻ってくるとしてもだ。

 

「こうなってはここでもたもたしている方が危ないのだな…よし!行こうみんな!脱出だ!」

 

ハルターン議員が他の議員達に促し彼らもまた頷く。

 

他人からの彼の信頼はとても大きいのだろう、ジェルマンが見ていてもわかるくらいだ。

 

「私とバスチル大尉、それとリストロング司令官を先頭について来て下さい。いつ敵が来てもいいように」

 

「わかった…!」

 

「よし、こっちだ」

 

ジョーレンがブラスター・ライフルを構え先頭を行った。

 

その後にジェルマン、リストロング司令官と続き、議員や主席も彼らの後ろに続いた。

 

ぞろぞろと若干大きな行列だがもはや敵のほとんどはジェルマンのハッキング技術とジョーレンの腕前により打ち倒してしまった為かなり安全だ。

 

それに今頃自動的に警備兵達を攻撃するよう仕向けた暴動鎮圧用のブラスター砲や防衛システムに攻撃され脱走騒ぎではないだろう。

 

脱出の最大の好機であった。

 

「脱走者だ!撃て!」

 

「っ!」

 

曲がり角で出会ってしまった警備兵三名がこちらにブラスターを向ける。

 

しかし先に攻撃を仕掛けたのはジョーレンの方だった。

 

彼はA300ブラスター・ライフルを発砲すると見せかけてホルスターから抜き出したA280-CFEのブラスター・ピストルモードで警備兵を撃った。

 

ショックモードの二発の弾丸が警備兵二名を気絶させた。

 

残りの一人はあまりの手速さに唖然とし震えたまま棒立ちになっていた。

 

その隙を見逃す特殊部隊員ではない。

 

即座に相手の手を捻り地面に組み伏せる。

 

そのまま力強く手刀を繰り出し警備兵を気絶させた。

 

「行くぞ!」

 

警備兵達がが来た曲がり角を曲がるとまた二名の警備兵が姿を表した。

 

「何者!」

 

「くたばれ!」

 

リストロング司令官はブラスターがショックモードなのを確認すると引き金を引き警備兵が反撃する前に沈黙させた。

 

誰しもがその見事な射撃に感嘆の声を上げたかったが今は脱出しなければならない。

 

ブラスター・ライフルを構えたままジョーレン達は走り始めた。

 

再び曲がり角を曲がるとジェルマンがタブレットを見つめて声を上げた。

 

「このまままっすぐ行けば友軍との合流ポイントです!」

 

「ジェルマン!もうドアを解錠しろ!手間を省く!」

 

ジョーレンの命を受けてジェルマンはタブレットを操作した。

 

しかし走りながらグローブをつけての操作の為こんな時に限ってタブレットのスイッチを押し間違えてしまった。

 

すると別のコマンドが発動し何故か今進んできた後ろのブラスト・ドアが閉じた。

 

「おい何やってんだこんな時に!閉めるんじゃなくて開けるんだぞ!」

 

「わかってるわかってる!押し間違えだよ!」

 

「なら早くしろよ!」

 

「走りながらだし指が太くて打ちづらいんだよ!」

 

「なら小指で打てばいいだろう!」

 

「それは無理!」

 

「こらこらこんな所でグダグダ喧嘩するんじゃないの…」

 

先頭を走る三人がグダグダ話しているとようやくジェルマンが正しいスイッチを押して通路のドアが開いた。

 

外の透き通った風と青く輝く空がドアの向こうから見え始めた。

 

ドアの奥には輸送船が見え数名の武装した新共和国兵が内部に突入してきた。

 

「こっちです!早く!」

 

味方の新共和国兵達はジョーレン達を手招きし導いた。

 

兵士達に守られジョーレン一行はようやくこの臨時の監房室を抜け出し戦闘の花が咲きわたるこのラクサスの外へと抜け出した。

 

「早くどんどん走って!」

 

ジェルマンに導かれ議員や司令官達が次々と輸送船の中へ入っていった。

 

ジョーレン達を護衛していた新共和国兵も安全を確認すると監房室を抜けジョーレンとジェルマンの元へと駆けて来た。

 

「護衛完了です!」

 

「急いで出発させろ!護衛のコルベットと中隊だけが当分は頼りだが恐らく親衛隊所属のデストロイヤー艦隊が見えたなら増援が来るはずだ」

 

「了解です!」

 

「絶対生き延びろよ」

 

兵士達は頷き力強い敬礼と共に輸送船の中へ入っていった。

 

するとジェルマンはまだ輸送船に入らずこちらに近づいてくるリストロング司令官の姿を見つけた。

 

「早く輸送船へ、ここもそう長くはありません」

 

「ありがとう、だが最後に君達と少し話がしたかった」

 

「残念だが俺はラクサス生まれの連合嫌いでね。話すことなんてありませんよ。それより早く逃げて」

 

あえて本音を隠さず早く逃げるように言った。

 

ここで話すことなど何もない。

 

「じゃあ逆に聞くが、なんで君は私達を助けてくれたんだ?連合を嫌う君が」

 

「それは…」

 

ジョーレンは天を見つめこめかみを弄りながら少し考え始めた。

 

彼らを助けた理由。

 

それは。

 

()()()()()()()()()()()。俺はあんた達が嫌いだが何もこんな戦争に巻き込まれて死ぬ必要はない…そう思えるようになっただけさ」

 

「そうか…ありがとう。さようならだな大尉」

 

「ああ…そうだな…」

 

リストロング司令官は手を差し伸べた。

 

ジョーレンはそれに応え彼の手を強く握りしめた。

 

二人は友達ではないが心がどこか通じ合っているというのは確かだ。

 

そしてジェルマンにもリストロング司令官は手を差し伸べた。

 

「お元気で」

 

「君もな」

 

二人の救出者の手を握るとリストロング司令官は敬礼し輸送船へと乗り込んだ。

 

彼を最後に輸送船のハッチは締まりエンジンが火を吹き始めた。

 

徐々に地面から浮き上がり輸送船は空へと浮き上がった。

 

二機のXウィングが輸送船の護衛に就き主席や司令官達を乗せたあの船は発進した。

 

ジョーレンとジェルマンに敬礼で見送られて。

 

「ご無事で」

 

「生き延びろよ、()()

 

輸送船の姿が見えなくなるとジェルマン達は近くに停泊していた彼らのUウィングに乗り込んだ。

 

あの少佐が手配してくれたパイロットが機体を操縦していた。

 

「新共和国最高司令部と第六司令部の元へ。我々も脱出する準備だ。出来れば……“()()”もな。それとライカン将軍に連絡だ。少し話し合いをせねばならん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TIEブルートが、TIEボマーがセキューター級やクエーサー・ファイア級から出撃し新共和国軍機と激突する。

 

既に練度も低い新共和国軍のスターファイター隊は物量や機体性能、練度によって打ち破られ爆撃機の侵入許してしまった。

 

砲撃により主力艦のモン・カラマリ・クルーザーやスターホーク級が、爆撃によりCR90やネビュロンBのようなコルベットやフリゲートが次々と損害を受けた。

 

「このまま扇陣形を維持し敵戦列を崩壊させる。エグゼクター級の火力を全面に押し出すんだ」

 

オイカン上級元帥の命令を受け取った各艦が“リーパー”の射線を開けるために左右にずれ若干の散開隊形を作り出した。

 

その間にもインペリアル級数十隻の砲撃の嵐は鳴り止まない。

 

「友軍のスターファイター隊、爆撃に成功し現在艦隊に退却しました」

 

「わかった、こちらも射線軸整いました上級元帥。全砲塔いつでも砲撃できます」

 

砲術長や士官から報告を受け取ったザーツリング少将がオイカン上級元帥に進言する。

 

上級元帥は静かに頷くと右手を振り命令を出した。

 

「撃て!」

 

刹那“リーパー”に搭載された五千基以上のターボレーザーやイオン砲などが烈火の如く火力を敵艦隊に叩き込んだ。

 

一撃一撃が敵艦の偏向シールドを破り次に撃ち込まれた砲弾が装甲を溶解し更に撃ち込まれた砲弾が艦の深くまでを大きく破壊した。

 

新共和国艦隊を爆発の光が取り囲み瞬きするかのようにその僅かな閃光は消えていった。

 

この間にも残された新共和国艦は数を減らしつつある。

 

比較的防御力の低いネビュロンBは船体が真っ二つとなり轟沈しその両脇を取り囲んでいたブラハットク級ガンシップやCR90コルベットも爆散した。

 

損害が酷いのは主力艦とて例外ではない。

 

エグゼクター級一隻の最大火力だけなら耐えられた艦もいるだろうが僚艦のインペリアル級やヴィクトリー級、そしてより装甲と火砲を強化されたテクター級の砲撃により厚みを増した帝国艦隊の集中砲火を食らえばどんな艦とてひとたまりもないだろう。

 

何千という火砲の前に既に戦列を傷つけられていた新共和国艦隊はひとたまりもなかった。

 

MC80やMC75は形を保ったま大爆発を起こしどんどん下へ下へと沈んでいった。

 

スターホーク級も流石の重装甲もこれほどの火力の前にはなす術なく何隻もが撃沈していった。

 

既に新共和国艦隊の防衛線には素人が見てもわかるほどの大穴が生じておりもはや防衛部隊としての機能を果たしていなかった。

 

「このまま惑星ごと敵艦隊を包囲しつつ地上軍の上陸戦闘に移る。全艦上陸部隊の発艦準備を!」

 

帝国艦隊は前進しながら艦列の幅を広げ既に圧迫されつつある新共和国艦隊をほぼ完全に包囲した。

 

中には惑星内での決戦に臨もうと軌道上から大気圏の中に後退する部隊もあった。

 

「降下部隊の砲撃支援に移る。“リーパー”の下船部中央の砲塔群は地上への砲撃支援、目標敵対空砲網及び敵基地だ」

 

何十門下のターボレーザー砲が地上の目標に狙いを定めた。

 

「市街地はあまり砲撃するなよ、撃て」

 

砲塔は黄緑色の光弾を発射しこちらに赤色の光弾を放つ新共和国軍の対空砲を次々と破壊した。

 

それだけではなく未だシールドの下にいない新共和国部隊や連合部隊に砲撃を加え次々と壊滅に追いやった。

 

他の地区でもインペリアル級やテクター級が軌道上や大気圏内からターボレーザー砲の軌道上爆撃を加え新共和国軍へ深刻なダメージを与えていった。

 

シールドが展開されている場所には多少危険性はあるもののTIEボマーやTIEブルートのスターファイター隊が突撃し魚雷や爆弾による攻撃で損害を食らわせていた。

 

まだ新共和国艦隊やスターファイター隊が必死の抵抗を見せてはいるもののほぼ無意味に等しかった。

 

「地上の対空迎撃能力の39%がダウン。十分降下部隊を突撃出来るほどです」

 

「親衛隊第十二機動部隊。部隊を降下し始めました」

 

「我々も上陸部隊を展開する。地上指揮はジェイル将軍に任せ我々は支援だ」

 

「はい閣下」

 

インペリアル級やエグゼクター級のハンガーベイからAT-ATやAT-ST、AT-MPと言ったウォーカーを乗せた何十隻ものゴザンティ級クルーザーがTIEの護衛と共に飛び立っていく。

 

目線を変えればセキューター級やヴィクトリーⅠ級のようなより上陸能力があるスター・デストロイヤーはそのまま降下を開始してた。

 

多くの地上部隊がラクサスへと送られていく。

 

もはや勝利は決まったも同然であった。

 

ありえない事だが地上部隊が最悪の大敗を重ね全滅したとしてもこのまま軌道上から爆撃を降り注ぎ続ければ勝利する事は可能だ。

 

ここまで来て新共和国軍が巻き返すことも奇跡的な逆転を果たすことも不可能だった。

 

されどオイカン上級元帥は未だ険しい面持ちのままであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-第二首都 惑星ベアルーリン ニーダ州 ハンヴァー市-

時間は少し前に遡りゼールベリック大臣がシュメルケ上級大将と会話をしていた時より二、三時間ほど後の事だった。

 

ゼールベリック大臣にはこの地に来たならば少し会って行きたい人物がいた。

 

彼は珍しく護衛も付けず一人でスピーダーを運転しこのニーダ州の州都であるハンヴァー市まで訪れていた。

 

駐車場にスピーダーを停めるとその後は歩きでその人物の家まで向かった。

 

ちょうど彼は軍務を終え家に帰っているだろう。

 

もうこのベアルーリンはすっかり夜だ。

 

月が輝き星が瞬いている。

 

美しい夜空はコルサントでもここでも同じようだ。

 

だが星の支配者がそれに見合っているかはまた別の話だが。

 

「いるといいんだがな…」

 

そう独り言を呟きながらゼールベリック大臣は一軒の平家のインターフォンを押した。

 

夜中でもわかる程整った庭が家の周りを取り囲んでいる。

 

『はい、どちらでしょうか』

 

すると奥から青年の声が聞こえた。

 

ゼールベリック大臣が会いたかった人物の声だ。

 

「私だよ“オスカル”」

 

『大臣閣下!』

 

若干の喜びの声と共にその家のドアは開いた。

 

まだ軍服姿の青年が姿を表した。

 

「久しぶりだなオスカル。首都がコルサントの方に戻った時以来だ」

 

彼の名前は“オスカル・ヒルデンロード”。

 

帝国地上軍の少将でありこのベアルーリン防衛部隊の一つである第二十歩兵兵団の兵団長を務めている。

 

ゼールベリック大臣とオスカルは旧知の仲であり他の大臣たちともとても良い関係性を保っていた。

 

「大臣閣下こそ元気そうで何よりです」

 

「元気なものか。今が一番忙しい、あちこちから同盟やら服属の声明が来る」

 

「帝国の方は順調そうで何よりです。どうぞ中にお入りください、なんなら泊まっていっても構いませんよ」

 

「そこまではいいさ、君の奥さんや息子達に迷惑が掛かるだろう」

 

「実は今日は出かけていましてね。さあどうぞどうぞ」

 

「まあ泊まっては行かんが少しゆっくりさせてもらうよ」

 

彼はそのままヒルデンロード少将の家に上がり彼の家のリビングのソファーに座った。

 

リビングの棚には彼の祖父や父、彼自身が得たいくつかの勲章やメダルが並んでいる。

 

そしてその側には家族やアカデミーの友人達、戦友達と取った写真も置かれていた。

 

「カフでいいですか?」

 

「ああ、ありがとう。出来ればミルクと砂糖を入れてもらえるとありがたい、だがブルーミルクはやめろよ?色的に合わん」

 

「わかってます、すぐお持ちしますね」

 

キッチンの方からカフがカップに注がれる音が聞こえた。

 

ヒルデンロード少将は言われた通り砂糖とミルクを入れ二つのカップをトレイに乗せ運んできた。

 

まずはゼールベリック大臣の前にコースターを敷きカップを乗せた。

 

トレイをまず自身の隣に置くとヒルデンロード少将は大臣の反対側の椅子に座り自身のカップを前に置いた。

 

「コルサントの様子はどうですか?まあ今日に限ってはあまり良くないらしいですが」

 

「今日の事件を除けば外から見れば順調そのものだ。もっとも政府機関はどこも忙しくてたまらんがね」

 

コルサントの統治と再首都化もほぼ成功に終わり直接手に入れた新共和国領の統治もある程度順調だった。

 

未だ中立を決め込む国は多くともこちら側に味方する惑星政府や国家は後を絶たず軍事の面でも各戦線では滞りなく勝利を手にしていた。

 

現在の政府機構や人員、財政に伸し掛かるオーバーワークを除けば第三帝国は今や旧第一帝国に限りなく近い姿を取り戻した。

 

あの無意味な犯罪級の殺戮行為を除けばだが。

 

「ベアルーリンの方は適度な仕事量でとても快適ですよ。コルサントと違って規模的に見たら小さいですがそれでも本来一惑星に伸し掛かる人口数を考えたら丁度良いくらいだ」

 

「コルサントは確かに人が多すぎる。総統閣下や親衛隊の保安局は思想犯罪者やエイリアン種族の逮捕や強制移住で人口を減らそうとしているが」

 

「それじゃあまるで旧共和国時代の黄金期ですね。捨てられた人口はどこへ?まさかまたアウター・リムですか」

 

ヒルデンロード少将は苦笑と皮肉を浮かべた。

 

元々現在の代理総統にあまり良い感情を持たず総統就任には反対の念を浮かべた彼だ、多少不満はあるのだろう。

 

本当はこんな閑職めいた部署にいる家柄でも人物でもないのだが。

 

「それは知らん方がいい」

 

カフに口を付けながら答えを濁した。

 

「なるほど…?まあ新共和国に勝利したと言うのは誰にとっても悲願ですよ。今の各戦線も順調だと聞きますし」

 

「随分と人ごとのようだな。君も一応帝国軍人だろう。別に部下に嫌われているわけでもないし前線に配置される可能性もあるのだぞ?」

 

そう言うとヒルデンロード少将は口をつけようとしていたカップをコースターに置き戻し苦笑に近い笑みを浮かべた。

 

そして彼は自身の今後を彼に話し始めた。

 

「実を言うと私…来年にはもう退役するつもりなんです」

 

その言葉を聞きゼールベリック大臣の目つきが変わり若干の動揺を浮かべた。

 

彼はヒルデンロード少将の言葉を問い直した。

 

「退役する…?何故だね、年齢的にもまだ早すぎるし軍人としての能力も惜しい」

 

「元々あの時に私は退役する予定でした。総統やブロンズベルク大臣に引き止められたから残っていましたが今の軍なら私がいなくてもなんら問題ないでしょう」

 

「だがな…」

 

「それに軍を引退すれば妻にも楽をさせられるでしょうし何より子供達を寂しがらせなくて済む」

 

彼は完全に退役するつもりだ。

 

しっかりとした硬い決意が浮かび上がっていた。

 

「そうか…なら止められんな。退役した後はどうするつもりだ?君の兵団は?」

 

「しばらくは家族と過ごしながら隠棲しますよ。兵団の方は少将に昇進したシュライヤーの弟に任せるつもりです。兵団の幕僚や参謀達とも折り合い済みですよ」

 

「仕事が早すぎる…まあ君は辛い事や悲しみに耐えよく頑張ってくれた。今後はゆっくりしたまえ」

 

知人の退役は若干悲しくはあるが快く送り出してやろうとゼールベリック大臣は言葉を送った。

 

ヒルデンロード少将も若干照れ臭そうな表情を浮かべながら「ありがとうございます」と軽く頭を下げた。

 

「しかし…私は悲しみに耐えられたのでしょうかね……出来ればシュライヤーの弟のそばに“()”を置いてやりたかったのですが」

 

ヒルデンロード少将は勲章の側に送られていた写真を悲しそうにじっと見つめていた。

 

まだ彼の制服の階級章が中尉だった頃のことを。

 

まだ十年も前のことを。

 

あの物静かな幼き子供が我が家に来た時の事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラクサスでは熾烈な地上戦が繰り広げられていた。

 

殆どの部隊が地上に降下し大規模な地上戦闘、市街地線が繰り広げられていた。

 

だがもはやラクサスの兵力は乏しく地上軍の進軍力を阻む事はほぼ不可能だった。

 

「第二師団及び第五十六連隊が南方側のドロイド二個旅団を撃滅!現在も進軍中!」

 

「第八親衛兵団と第三親衛旅団も同じく中央の敵軍団を突破しました!」

 

地上に簡易的な司令基地を設置中の第六連隊はあちこちから状況報告が飛び交っていた。

 

後方でしかも偏向シールドに守られている為比較的安全地帯ではあるがそれでも時々砲弾がシールドに直撃し大きな振動に見舞われている。

 

「参謀将校が来るまでに情報をまとめておけ。上級中尉、設営の方はどうなっている」

 

ジークハルトがコルサントに召還されて連隊長不在の為アデルハイン中佐が現在副連隊長として連隊の指揮を取っていた。

 

ヴァリンヘルト上級中尉がタブレットを持って彼に報告に来る。

 

「司令部、対空砲網、偏向シールドの設置は完了し残りは飛行場設置とウォーカー駐留プラットフォームです」

 

「わかった、余った人員を飛行場とウォーカーの方へ回せ!兵員は武装して戦闘配置だ!」

 

各部隊に命令を出しアデルハイン中佐はヴァリンヘルト上級中尉やハストフルク中尉らと共に飛行場の方へ向かった。

 

上空では今でも砲弾やミサイルが爆散しTIEインターセプターやTIEブルートが戦場へと向かっている。

 

ストームトルーパーの分隊が彼らを横切り連隊の将校がアデルハイン中佐に時々親衛隊式の敬礼を送った。

 

「ランドルフ、状況はどうだ」

 

前から向かってきたパイロットスーツ姿のハイネクロイツ中佐に対しアデルハイン中佐が様子を尋ねた。

 

「設置にもう少し人員が必要だ、後予備の弾薬をなるべく寄越してくれ。空母だけじゃなくてここにも補給地点を作りたい」

 

「わかった。ディター、TIE用の弾薬や予備のパーツを急いで仮の飛行場に持ってきてくれ。そうだ、出来れば弾薬の方を多めに頼む」

 

アデルハイン中佐はコムリンクで連絡を取り弾薬を要求した。

 

その間にもTIEインターセプターが発進しセンチネル級やゴザンティ級が次々と着陸し兵員や物資を下ろしていく。

 

あっという間に地上の基地が完成していた。

 

「地上の戦況は?空じゃ圧倒的にこっちが優位で爆撃機が引っ張りだこだが」

 

「南じゃ国防軍がドロイド旅団を蹴散らして進撃中、中央も一個軍団を打ち破って進撃中だ」

 

「それと左翼の敵機甲基地も陥落し現在第七機甲軍団がこちらに向けて進軍中です」

 

「こりゃ勝ったな」

 

ハイネクロイツ中佐の意見はその言葉の軽みに反して尤もな言い分だった。

 

既に敵の防衛部隊は次々と蹴散らされ首都ラクサロンに向けて全軍が進撃中であった。

 

「もう間も無くセキューター級の“ペネトレーション”が二個師団を運んで来ます。再び戦線は一気に変化するでしょう」

 

「念の為師団の進撃と共にスターファイターの護衛を。ランドルフ、部隊の選出を頼む」

 

「わかった、ニーヴァ、ブリュート、ファイパー、来い!」

 

ハイネクロイツ中佐は早速各中隊長を呼び出し部隊の準備をし始めた。

 

アデルハイン中佐もその様子を目で見送りながら中尉二人に「我々も戻ろう」と言おうとした瞬間コムリンクから部下の声が響いた。

 

『中佐!反対側の簡易司令部の観測班からの連絡です!ラクサスの半球から旧独立星系連合のものと見られる艦隊が出撃したとの事!』

 

「何?数はどのくらいだ、まだ戦力が残っているとは思えんが…」

 

中佐は不安を抱き怪訝な表情を浮かべながら部下に問いかけた。

 

すると部下は驚くべき報告を伝えた。

 

『大型モデルのプロヴィデンス級合わせて三十隻の軍艦が惑星を脱出しました!』

 

「何!?そんなバカな!」

 

コムリンクの通信に聞き耳を立てていたヴァリンヘルト上級中尉は驚愕の声を上げた。

 

ハストフルク中尉も声には出さないが驚いているのが顔を見るだけで分った。

 

アデルハイン中佐も表情をさらに険しくし一言呟いた。

 

「まずいことになった…」

 

彼の目線の先には爆発掛かる大空を進むいくつかの米粒のような光が見えていた。

 

恐らくきっとラクサスを脱出した連合艦隊の姿がしっかりと見えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラクサスの戦闘は新共和国にとって明らかに不利そのものだった。

 

もはや勝利など夢のまた夢。

 

もはや誰しもが敗北と死の文字を頭に浮かべていた。

 

されどもう退く事は出来ない。

 

逃げ道もない。

 

誰も彼もがもはや逃げ道などないのだ。

 

特にジャステン中将には。

 

「第六宇宙港に市民が殺到!警備部隊もサボタージュし多くの市民が惑星外へ脱出しています!」

 

「第十師団、第二十三志願大隊、志願混合旅団壊滅!タムウィズ・ベイの地上兵団が包囲されました!」

 

「上空の第四十八、五十一、五十三機動部隊が壊滅です!第三小艦隊命令を無視し退却しもはや艦隊としての機能が保てていません!」

 

飛び交う報告はどれも最悪なものばかり。

 

前線で部隊が壊滅するか勝手に戦闘を放棄し退却し始めるかのどれかだ。

 

地上の大隊が一つ壊滅すればもう一つの大隊が勝手に撤退し始める。

 

「ラクサロンの防衛体制だけでも確立しろ!憲兵隊と憲兵将兵に連絡だ、逃亡する者は銃殺しろ!どんな理由があろうとこの星を離れる事は許さん!」

 

「分析官の報告によれば友軍の退却はどうやら組織的行動と指揮官がいる可能性が高いそうです」

 

「ならばその裏切り者をただちに見つけ出して処刑しろ!これ以上部隊を減らすわけには…」

 

「そう、これ以上あんたの自殺行為で部隊を減らすわけにはいかない。無駄な戦死なんてみんな真っ平御免だ」

 

ドアの奥から声が聞こえ二発の銃声が響く。

 

ショックブラスターにやられドア付近の二名の衛兵がばたりと倒れた。

 

残された将校や衛兵たちはブラスター・ライフルやブラスター・ピストルを司令室に入ってきた彼に向ける。

 

「まだ殺してはいない」

 

「早く脱出を、ここもそう長くはありません」

 

アーマー姿の招かれざる来客にジャステン中将は荒げた声のまま返答した。

 

「友軍すら呼べなかった無能どもめ!この戦犯が!よくもまあ抜け抜けと姿を表せたものだな!!」

 

「我々も最大限の努力をしました。それに新共和国軍の上級将校達は我々に速やかに惑星を脱出するように命じ、それはこちらのジルディール中尉が伝えたはずだが」

 

「これ以上撤退を重ねた所でなんになる!むしろ今この時こそが帝国に反撃の一撃を加えられるチャンスだったのだ!!」

 

「ですがもう手遅れです。それに生きていれば再びチャンスは巡ってくる。その為にも早く脱出を」

 

「するわけがないだろう!もはや出来るわけがない!ならば私一人でもこの場に残って戦ってやる!この星を地獄にしようと何しようと私はここを離れん!」

 

ジョーレンからは重いため息が吐き出てジェルマンは悔しそうに拳を握っていた。

 

他の将校達は俯く者もいれば生気のない瞳で淡々と作戦に従事する者と様々だった。

 

そんな中再びジャステン中将は怒鳴り散らしジョーレンにブラスター・ピストルの銃口を突きつけた。

 

「お前達は勝手に部隊を退却させた反逆者だ!もはや裁判など必要ない!!この場で銃殺してやる!!」

 

将校や兵士達の間に動揺が走りジャステン中将とジョーレンに目線が集まった。

 

ジャステン中将に同調した何人かの兵士達も同じようにジョーレンに銃口を突きつけている。

 

だがここまで来て誰しもがジャステン中将に味方するわけではなかった。

 

「やめてください中将!これ以上仲間や守るべき市民を撃ってどうするのですか!」

 

引き攣った声ながらも中将を諌めようとするのは彼の幕僚のペンディス大佐だった。

 

彼はジェタック少佐と同じで比較的最近彼の直轄部隊に組み込まれた将校だ。

 

少し前までは中佐としてキルスタ・アガト准将、戦死後名誉中将の配下だったが何度か組み替えになり今のジャステン中将の配下についた。

 

だからこそこの中ではジャステン中将の派閥に染まらず比較的まともな対応が取れていた。

 

とはいえ臆病者の彼はジェタック少佐のように真っ向から反論する事は出来ず今日まで恐怖と共に彼に黙って続いていた。

 

「エンベル准将のスターホーク級は撃沈しタイダル少将の軍団も打ち破られ彼の手持ちの兵団や師団ももはや攻撃能力はありません!まだ兵が生きているうちにラクサスから脱出すべきです!」

 

「既に連合の首脳部もこの星を脱出しました。残されているのは我々だけだ」

 

「貴様らよくもそんな勝手を…!!」

 

「勝手を敷いているのはあなたの方です!既に新共和国の司令部はラクサス市民含めて撤退命令と脱出命令を下し私はあなたに伝えたはず、だけどそれを無視するならば…」

 

「黙れ!!」

 

険しい剣幕で今度はジェルマンの方へ銃口を向けた。

 

もはや彼の耳に届く言葉は全て彼自身の否定へと変換されていた。

 

「命令を無視するんですね…」

 

「何が新共和国の司令部だ!そんなものはもうない!とっくの昔に滅びた!ペテンなお前達の命令を今更聞くものか!反逆者はお前達だ!!」

 

「既にライカン将軍含めた五名の高級将校から命令が下されています。『これ以上撤退命令を無視するようであれば逮捕または銃殺せよ』と」

 

「何…?」

 

ジョーレンは逆にホルスターからブラスター・ピストルを引き抜きジャステン中将に突きつけた。

 

ジェルマンもブラスター・ライフルを構え未だこちらに銃を突きつけてくる衛兵達を威嚇した。

 

「確かに…命令にただ従うだけではそれは意味がない。だが…だが我々は軍人だ、あなたは軍人としてやってはいけないことをやった!当然その罰はあなたが受けるべきだ」

 

ジョーレンの鋭い目つきとその一言と共にどこからか銃声が聞こえた。

 

たった一発だけだったが司令室によく響いた。

 

ジャステン中将が引き金を引いたのでもなくかと言ってジョーレンが銃殺の一発を放ったわけでもない。

 

それでも銃声は響き瞳孔が大きく見開いたままジャステン中将はピストルを落とし彼もまた斃れた。

 

一体誰が放ったのかと将校達は驚きながら辺りを見渡し誰が撃ったのか必死に調べ始めた。

 

当然この狭い室内で発砲した人間の特定など用意だ。

 

一人の若い通信士官が震えながらも両手でブラスター・ピストルを持ちジャステン中将が元いた場所にその銃口を向けていた。

 

士官の震えは止まらず斃れた中将を見ると彼はヘナヘナと自身の席へ崩れ落ちるように座り込んでしまった。

 

「ダメだったか…」

 

血を垂れ流し二度と動くことのなくなったジャステン中将を見下ろしジョーレンはそう呟いた。

 

出来れば彼も含めて一人でも多くの兵を逃したかった。

 

中将とて同じ新共和国軍人であり仲間なのだ。

 

いくら無理難題を吹っかけヒステリックであるとはいえ敵ではなかった。

 

そんなジャステン中将に向けてジェルマンとジョーレンは二人で敬礼を捧げていた。

 

短く静かな間だったがそれで十分だった。

 

いつまでも敬意を捧げているわけにはいかない。

 

一人でも多くの聖者を助け出さなければならなかった。

 

「ジャステン中将は戦死しここの最高司令官はもういない。我々の敗北は決まっている、だがだからと言ってそれに殉じる必要はない。総員撤退準備だ」

 

「司令部のハンガーベイにまだ多くの輸送船とスターファイターが残っています。護衛部隊を編成し急いで脱出してください。連合軍の緊急編成艦隊が今ごろ退路を作っているはずです」

 

士官や兵士達は頷きぞろぞろと司令室を後にし始めた。

 

中には中将の遺体を運び出そうとする者達もいた。

 

人望はなく慕われている雰囲気ではなかったがそれでも情はあったのだろう。

 

そんな中唯一ジャステン中将に真っ向から刃向かったペンディス大佐が二人に近づいてきた。

 

「ありがとう…我々など見捨ててさっさと撤退すればよかったのに。そうすれば司令部の守りは少し硬くなって他の部隊がもっと撤退できたかもしれんぞ?」

 

大佐は少しブラックジョークじみた問いを彼らに投げかけた。

 

無論感謝を込めてだ。

 

そんな問いにジェルマンは軽く答えた。

 

「我々新共和国は昔から仲間を見捨てられない主義なので。救える者は全部救いたいんですよ、たとえそれが無理だと分かっていても」

 

「そうか…そうだったな…ありがとう。それじゃあ、フォースと共にあらんことを」

 

ペンディス大佐はそう祈りのように彼らに言葉を送った。

 

彼を見送る二人も同じように言葉を返した。

 

フォースと共にあらんことを”と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝国艦隊はラクサスに大きく侵入しているせいで脱出した連合首脳部の輸送船や連合艦隊を追撃する事が出来ず後は封鎖部隊に任せざる追えなくなっていた。

 

尤もこれは代理総統が総攻撃を命じたのが原因でありもう少し長期的な戦術を取るよう支持していたら選局も変わっていただろう。

 

打撃は十分与えているものの結果的に急を要しすぎた為かなり取り残す結果となっていた。

 

一方の脱出した艦隊は三十隻の連合艦と一隻の輸送船、二隻のCR90コルベットが加わり少し戦力が増大していた。

 

総旗艦である“プロヴィデンス級キャリアー/デストロイヤー”、“プロヴィデンス”を先頭に多くの軍艦が続いていく。

 

さらに後方にはラクサスから撤退してきた新共和国軍の軍艦も増えており戦力は増加傾向にあった。

 

艦隊の司令官であるスーパー・タクティカル・ドロイドの“カラーニ”将軍が全艦に命令を通達した。

 

「各艦、防御陣を展開しスターファイター隊の展開準備。敵艦隊を突破する」

 

無機質なドロイド将軍の命令は端的なもので分かり易くもあった。

 

新共和国の艦船もある者はこのスーパー・タクティカル・ドロイドの声に驚いていたが命令に従いスターファイター隊を準備していた。

 

分離主義の遺産というのは各地に残されていてあのバーチ・テラーの反乱時にもトレンチ提督の“インヴィンシブル”などを合わせた改造艦が戦線に投入されていた。

 

だがこれほどまでの艦隊を設立するのは並々ならぬ苦労が必要だ。

 

それをこのドロイド将軍が自治連合発足時からおよそ一年半かけて作り出した。

 

本当はルクレハルク級バトル・シップなども存在していたのだがほとんどが初戦の防衛戦に回され不在であった。

 

移動しながら艦隊が陣形を作り出していると早速前方から封鎖部隊のスター・デストロイヤー艦隊が現れた。

 

艦船の塗装や様子から察するに敵は親衛隊の艦隊だった。

 

インペリアル級四隻、アークワイテンズ級六隻、ヴィクトリー級二隻、グラディエーター級一隻。

 

機動部隊、小艦隊ほどの戦力でありまだ物量面では勝っていても旧式の連合軍の艦船ばかりのカラーニ艦隊にとっては若干不利な状況だ。

 

それに後方からは少し規模は小さいもののインペリアル級一、二隻と付属艦の機動部隊が三つほど続いてきておりかなり厳しい状況だった。

 

敵艦隊は包囲陣形を展開し圧倒的な火力で艦隊を封じ込めようとしていた。

 

「こちらは第四小艦隊、ヴィザッツ中将だ。敵連合艦隊に通達する、直ちに降伏せよ。さもなければお前達の艦隊を殲滅する!」

 

されど連合艦隊からの返答はなく旗艦“プロヴィデンス”ではカラーニ将軍が「返答する必要はない」とはっきり断っていた。

 

四隻のプロヴィデンス級や後方のレキューザント級やミュニファスント級から大量のドロイド・トライ=ファイターやヴァルチャー級スター・ファイターが出撃した。

 

その様子は親衛隊艦隊の方でもしっかり確認されていた。

 

「敵艦隊、降伏には応じずスターファイター隊を展開しこちらに向かってきています」

 

「古臭い旧世代のガラクタ艦隊め、ならば引導を渡してやる!こちらもスターファイター隊を発進させ全火力で敵艦隊を叩け!」

 

インペリアル級のハンガーベイからTIEブルートやTIEインターセプターが発艦しドロイドのスターファイター隊と対峙しようとしていた。

 

対する連合側はハイネナ級ボマーも加わっている。

 

物量では若干ドロイド軍の方が優勢ではあるが性能差ではTIEラインの部隊の方がはるかに優秀だ。

 

総合的な戦力ではドロイド軍の方が不利であった。

 

されどカラーニ将軍の的確でより経験を重ねた戦術プログラムであればこの不利を一気に覆せる。

 

トライ=ファイターの何十機かが一発ミサイルを発射した。

 

親衛隊機はそれを機銃のレーザーで撃破したがこの判断は最悪の間違いではった。

 

破壊されたミサイルの中から大量のバズ・ドロイドが放出され帝国軍のTIEインターセプターやTIEブルートに取り付いた。

 

よちよちと小さな足で歩くバズ・ドロイドは若干愛らしさもあるが危険度の方が高い。

 

コックピットや機体に取り付きボディのメカニカル・アームや切削器具で機体に傷をつけ始めた。

 

とても小さなドロイドな為並みの操縦では追い払えずアームはどんどん機体を傷付け破壊していった。

 

こうして多くのバズ・ドロイドが親衛隊機を傷つけ混乱させていった。

 

中には無事な機体もいたが既に編隊が乱されドロイド軍の物量によって撃墜される機体の方が多かった。

 

それにバズ・ドロイドは機体をある程度破壊し終えると次の機体になんとか飛び移り再び破壊活動を始めた。

 

小さく致命的なダメージがこうして広がっていくのだ。

 

親衛隊のスターファイター隊は完全に麻痺してその役割をなしていなかった。

 

その間にハイエナ級と護衛機の編隊が戦闘を潜り抜け帝国艦隊へと向かっていく。

 

アークワイテンズ級やグラディエーター級の対空砲火が吹き荒れ何機か撃墜されるが全体から見たら些細な数だ。

 

ドロイド軍のスターファイターの利点は圧倒的な物量にある。

 

対空砲火をすり抜けたドロイドの編隊は真っ直ぐ主力艦のインペリアル級を目指し艦の船体やターボレーザー砲塔に魚雷や爆弾を投下していく。

 

偏向シールドの中に入ってしまえばスターファイターの方が優位であり爆撃によるダメージを偏向シールドに阻まれず直接与えられる。

 

現に爆撃を喰らった三隻のインペリアル級は強力な偏向シールドがあるのにも関わらずかなりの被害を被っていた。

 

「前衛スター・デストロイヤー三隻の被害甚大!攻撃力が45%ほど低下しています」

 

「アークワイテンズ級一隻撃沈!」

 

「ええいTIE部隊は何をやっている!!」

 

「敵の破壊工作ドロイドとスターファイター部隊に足止めされ身動きが取れない状態です」

 

「チィッ!後方の機動部隊に命令!直ちにスターファイター隊を展開し我が艦隊の支援に回れ!あんな旧型の軍隊に負けられるか!我々も直ちに砲撃開始だ!撃って撃って撃ちまくれ!」

 

インペリアル級が残されたターボレーザーや魚雷発射管による対艦攻撃が始まった。

 

無論これをただ黙って見ているカラーニ将軍達ではない。

 

プロヴィデンス”や小型モデルの“スキズマクティス”や“アドミラル・トレンチ”、“ジェネラル・グリーヴァス”がクワッド・ターボレーザー砲やプロトン魚雷発射管を向け反撃した。

 

赤色のターボレーザー砲弾と緑色のターボレーザー砲弾が交差し互いの艦に直撃する。

 

 

【挿絵表示】

 

 

両者とも偏向シールドで阻んでいたが左翼のインペリアル級はハイエナ級により偏向シールドを一つ破壊されてしまった為出力が弱く既にダメージを喰らっていた。

 

無論連合艦隊とて無事ではない。

 

敵艦の火力はかなり減衰したとはいえそれでも最新鋭のスター・デストロイヤーを四隻も相手にしている。

 

しかも後方からは五隻以上のインペリアル級が救援に駆けつけ艦隊の陣形が組まれており戦力差は未だ如何ともし難い状態だった。

 

それでも連合の希望を紡ぐ為、生き延びる為多少の損傷は覚悟の上だった。

 

だが暫くすると彼らに救いの手が差し伸べられた。

 

それに最初に気づいたのは親衛隊の艦隊の方だった。

 

「中将!ハイパースペースより艦影多数接近!敵です!」

 

「なんだと…」

 

見えるはずもない後ろをヴィザッツ中将は振り返った。

 

直後ハイパースペースからMC80スター・クルーザー一隻とスターホーク級が一隻、数十機のスターファイターが一度に現れた。

 

親衛隊艦隊の後方から。

 

「全火力を敵の中央に向けろ!少しの間でも突破口を切り開くんだ!」

 

そう命令を下したのはヤヴィン星系の現在総司令官であるライカン将軍だった。

 

彼は自ら旗艦“ストライキング・ディスタンス”に乗り込みヤヴィン星系を秘密裏に抜けられる最低限の戦力で救援に駆けつけた。

 

やはり彼も元反乱同盟軍というべきかどんなに危険な状況で一度無理だと冷静に判断を下してもチャンスが僅かでもあるならばそれに飛び込む人物だ。

 

そしてそれは彼も一緒だった。

 

Xウィングを先頭に新共和国のスターファイター隊が空を進んでいく。

 

あの男のXウィングが。

 

「ウィング・リーダーより全機!スターホークがデストロイヤーのケツを掘ってる間に俺たちは周りの小型艦を撃破する!デストロイヤー相手よか百倍楽だな!行くぞ!」

 

Sフォイルを開いたXウィングやAウィング、Bウィングの編隊が高速で敵艦隊へ向かっていく。

 

その間にも二隻のヤヴィン艦隊が親衛隊艦隊に狙いを定めていた。

 

「まずエンジンとブリッジを狙う。全砲門開け、撃て!」

 

ストライキング・ディスタンス”とスターホーク級がターボレーザー砲を放ち背後から親衛隊艦隊を攻撃する。

 

インペリアル級も八連ターボレーザー砲やターボレーザー砲を後方に回転させ反撃するが前方への砲門数が少ない為焼け石に水状態だった。

 

一方ヤヴィン艦隊の火砲はインペリアル級艦隊の最大砲火までとは行かないものの目標を一点に絞っている為十分効力があった。

 

偏向シールドを打ち破りあまり守りの弱いエンジンやブリッジにダメージを与えていく。

 

エンジンに一発ターボレーザー砲が直撃し大爆発を起こした。

 

優秀な砲手は次々と砲弾をインペリアル級に直撃させダメージを与えていった。

 

なんとか反撃しようと護衛のアークワイテンズ級やレイダー級、グラディエーター級が90°反転し攻撃に出る。

 

だがそれは迫り来るスターファイター相手では愚策でしかなかった。

 

「早速喰らえよコンチクショー!」

 

ラクティスが魚雷のトリガーを引きプロトン魚雷を一発、アークワイテンズ級のブリッジに直撃させた。

 

大爆発を引き起こし一撃でアークワイテンズ級は行動不能になった。

 

その背後を数十機のスターファイターがそれぞれ敵艦を攻撃し始めた。

 

三機のBウィングが対空砲火を繰り出すグラディエーター級にギリギリまで接近する。

 

偏向シールドと機動力により強力なグラディエーター級の対空砲網を掻い潜りプロトン魚雷やイオン砲を船の上空から食らわせた。

 

魚雷を受けた部分が大きく破壊され当たりどころが悪かったのか魚雷を六発喰らっただけで大破してしまった。

 

「タラソフ!いつものあれだ!」

 

『了解!』

 

二機のXウィングがグルグルと回転しレイダー級の対空砲網を回避する。

 

そして二機は交差しクロスを作り出すように飛び回りやがてはレイダー級の偏向シールド内に取り付きスター・デストロイヤーに比べれば貧相な装甲にレーザー砲の雨を浴びせかけた。

 

出力を高め一発一発をより強力なものへ変えレイダー級へのダメージを増やしていった。

 

そしてレイダー級のターボレーザーやレーザー砲を破壊し二機のXウィングは急速に退避した。

 

次の一撃を入れる為に。

 

損耗したレイダー級に今度は高速のAウィングが取り付き震盪ミサイルを撃ち込んだ。

 

無論それだけではない。

 

高速の迎撃機(インターセプター)であるAウィングは即座に旋回し今度はレーザー砲を浴びせ小さく大量のダメージを与えていった。

 

三機のAウィングは編隊を組んだまま右へ左へと敵艦の対空砲火を避けながら攻撃を敢行する。

 

その見事なまでの腕前はやがてレイダー級を行動不能にするどころか撃沈させた。

 

他でもBウィングがアークワイテンズ級を撃沈し別のAウィングやXウィングが迎撃に来たTIEインターセプターを撃墜していた。

 

艦隊の方も攻撃を成功させついにインペリアル級を一隻撃沈させた。

 

「このまま火力を集中させ敵艦隊を撃破する!」

 

まさかの増援と徹底的な背後からの奇襲攻撃、艦隊やスターファイター隊含めた練度の高さによりヴィザッツ中将は完全に混乱していた。

 

前衛では旧型の艦隊に押し負けている。

 

「艦隊を反転させろ!二正面戦闘だ!」

 

「ですが艦隊が反転すれば敵艦に狙い撃ちにされます!」

 

「なら爆撃機を展開して少しでも敵艦隊に打撃を…」

 

「前衛インペリアル級二隻撃沈!!旧連合艦隊真っ直ぐこちらに向かってきます!!」

 

士官が引き攣った声で報告しヴィザッツ中将も顔面蒼白という言葉が似合う程青褪めた。

 

そして恐怖心と命の保身に負けたヴィザッツ中将焦って命令を出した。

 

「退避!退避だ!直ちに現戦闘域から退避せよ!」

 

「ですが!」

 

「一旦体勢を立て直す!ともかく退避だ!早く!」

 

ヴィザッツ中将の命令により親衛隊艦隊は敵を目の前にして急いで退避という名の撤退を始めた。

 

これにより退路が切り開けた為輸送船はCR90コルベットが次々とハイパースペースに入って行く。

 

こうして小さな希望の光が未来へと紡がれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令部も撤退した、我々も潮時だ」

 

砲撃や爆撃による振動が響き砂埃が室内に舞っていた。

 

既にほとんどの部隊が全滅するか撤退しておりその為帝国軍の侵攻も波のように早く既にラクサロンの防衛部隊を突破しすぐそこまで迫っていた。

 

助けられなかった部隊も多くあったがそれ以上に本来ここで無駄死にに近い死を遂げるはずだった兵達が大勢助かった。

 

「ああ…既に部下もヴァンクス中佐も殆どが脱出した。お前ももういい、早く行け」

 

「はい…!」

 

今の今まで新共和国や市民達の撤退を指揮していたジェタック少佐はまた一人の部下を輸送船へ送った。

 

既にこの司令室にいるのも今入ってきたジョーレンとジェルマン、ジェタック少佐と部下の士官が三、四人程度だ。

 

後は帝国軍の侵入に備えて僅かに残っている警備部隊だけでそれ以外はせいぜい命令に従うことを拒否した部隊だけだった。

 

「…ジャステン中将はどうだった」

 

神妙な面持ちでジェタック少佐は上官のことを尋ねた。

 

自身を牢屋に入れかけた人物であるし上官でもあったのだから気になるだろう。

 

ジョーレンは静かにその問いに応えた。

 

「取り乱した士官に撃たれて即死だった。だが本当なら俺が撃ってただろう」

 

「そうか…やっぱりか…」

 

ジェタック少佐は少し悲しそうに俯いた。

 

やはりなんらかの情はあったのだ。

 

「我々も急ごう。もう十分だ」

 

「早くしないと制空権が失われます」

 

二人はジェタック少佐に急ぐよう迫った。

 

だがジェタック少佐はこの時何故か首を振った。

 

「私は…私はいけない」

 

「どうして!」

 

ジェルマンがかなり強めに問い詰めた。

 

「まだ部隊が残っている、それに帝国軍のストームトルーパーがもうすぐそこまで迫ってきている。誰かがここに残って足止めをしなければならない」

 

「ならドロイドに任せて…」

 

「それは出来ない。恐らくそんな事をすれば情報部や工兵隊によってハッキングされ足止めは失敗するだろう。我々がここまで技術を進歩させてしまった所以だろうがな」

 

「だからお前が残るというのか?」

 

「ああ、私は指揮官だ。どこかでどんなに弱音を吐いて諦めていても私は新共和国軍の少佐であり指揮官だ。課せられた義と務めを果たさねばならない」

 

まだコンソールを操作していた残りの士官達もジェタック少佐により合図され悔しそうな表情で司令室を後にした。

 

この瞬間も敵の攻撃による振動で軋む司令室の中でジェタック少佐は窓の方へ近づいた。

 

「私は元より死ぬつもりだった。それも絶望して諦めて死ぬつもりだった。ストームトルーパーと同じというのもその通りだと思える……だが今は違う」

 

少佐はこちらに目を向け二人を見つめた。

 

ジェルマンとジョーレン。

 

二人はこの星に来た時からまるで変わっていない。

 

諦めず常に希望を持ち続けている。

 

二人のその僅かな小さい希望は今見ると恒星のように光り輝いている。

 

だからこそ今は違うのだ。

 

「我々は…新共和国はおしまいなんかじゃない。我々はまだ終わっていない、むしろ今から始まり…“()()()()()()()()()”だ。絶望ではなく希望を持って諦めずに兵達を見送れる」

 

ジェタック少佐は二人に近づき軽く肩を叩いた。

 

「この北東戦線は我々の負けだ。だが我々はここから始まるのだ。抵抗の始まりが、新たな希望がここから幕を開ける。さあ行け!希望を繋げ!諦めずに進み続けろ!」

 

二人は変わらなかったがジェタック少佐は大きく変わった。

 

彼を包んでいた絶望は希望に変わり諦めは期待へと繋がれた。

 

だからこそ彼は最初と同じ選択を選んだのだ。

 

それでもその心情は大きく変わっている。

 

もう彼の決意を揺らぐことはできない。

 

「フォースと共にあれ、少佐殿」

 

「君達もな、大尉、中尉。フォースと共にあらんことを

 

「はい…フォースと共にあらんことを

 

言葉を交わし互いに敬礼を送り合うと振動で揺れる司令室をジェルマンとジョーレンは振り返ることなく駆け抜けた。

 

ジェタック少佐の敬礼で見送られて。

 

「さようならだ…永遠に…さようなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジェルマンとジョーレンは走った。

 

Uウィングへと。

 

託された希望を次の場所へ届ける為に。

 

砲撃や爆撃が降り注ぐこの司令部の中をひたすらに走った。

 

あちこちで銃声が聞こえる。

 

少佐の言う通り帝国軍が侵入し始めているのだろう。

 

既に最後の輸送船は旅立ち残りはジェルマンとジョーレンだけとなった。

 

「あそこに敵がいるぞ!撃て!」

 

遠くから誰かの声が聞こえ二人の元にブラスター・ライフルの弾丸が放たれた。

 

後ろを振り返れば二人に気づいたストームトルーパーが三人ほどこちらに銃口を向けている。

 

「チッ!!」

 

ジョーレンは止まらずにA300ブラスター・ライフルで三人のストームトルーパーを撃ち殺した。

 

そして再び走った。

 

Uウィングへの停泊場へと。

 

彼らはひたすらに走りついにUウィングの中に乗り込んだ。

 

先程彼らを運んでくれたパイロットは別の機体に乗せている為もういない。

 

再びUウィングの中には二人だけとなってしまった。

 

急いでシステムとエンジンを起動し機体を浮上させる。

 

「さようならだ……大嫌いな“故郷(ホームワールド)”」

 

そう言うとジョーレンは思いっきりペダルを踏み込みUウィングを加速させた。

 

Uウィングは大空へと駆け上がり爆発や煙の影響で濁った空を進んだ。

 

当然その船体は帝国軍に発見され攻撃される。

 

二機のTIEインターセプターがUウィングに目をつけレーザー砲を放ってくる。

 

しかしジェルマンが即座に後部のタレットを起動し直撃を喰らう前に二機のTIEインターセプターを撃墜した。

 

ジョーレンも前方から迫り来るTIEブルートとTIEボマーをそれぞれ一機ずつ撃墜し進路を切り開いた。

 

ここでやられるわけにはいかない。

 

撃墜されるわけにはいかないのだ。

 

どんな無茶をしてでも希望は絶やしてはならない。

 

「このままハイパースペースに突入する!!」

 

まだ大気圏内で本来ハイパースペースに突入するには速すぎたがジェルマンは頷きコックピットのレバーが倒された。

 

Uウィングはハイパースペースへと突入しこのラクサスを後にした。

 

様々な出会いと変化があったこのクローン戦争の名残りの星を。

 

第六司令部がたった一人の将校と共に自爆し帝国軍に最後の打撃を与えたのはUウィングがハイパースペースに入った僅か後だった。

 

 

 

つづく




おいーっす!!

私 だ


多分これが今年最後の第二次銀河内戦投稿になるんじゃないかなと思います
いやまさか半年ちょっとでここまでやるとは思わんかったぜ…ほぼ一年やってたfleet admiralシリーズと大体同じ和数じゃんか…
一応これで「北東戦線〜」は区切りですね
みなさんメリークリスマスってことで



マインラート「そういえばお父さん今回出番言及だけだったね」
ジークハルト「主人公なのにねー」


???「ス パ イ ス で す わ !」
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