第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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ラクサスは陥落し新共和国と自由の砦はまた一つ潰えたかに見えた。

されど戦いは終わらない。

誰かが託し命を賭けて遺した希望は新たなる抵抗軍となり戦いを繰り広げる。

かつて反乱同盟と呼ばれる勢力がそうでだったように。

かつて銀河帝国と呼ばれる勢力がそうであったように。

歴史は繰り返し終わりはない。

永遠のようで有限の時の狭間で輝く新たない内戦はまだ終わらない。


英雄達の登場/抵抗の夜明け
北西戦線


-ハット・クラン支配領域 ハット・スペース-

アウター・リムは少し前、いや今もなお暴力の頂点に立つ者が支配者なのだ。

 

それはこのハット・スペースの領域を知れば分かるだろう。

 

ここは名の通り銀河系で最も強力な犯罪一家の一つであるハット・クランの支配領域だ。

 

その力は強大でありあの旧銀河共和国も彼らを鎮めることはできず同盟を結ぶ事でようやくハット・スペース内の航行権を手に入れられる次第だ。

 

帝国が誕生してから彼らは半ば子分的な立ち位置となり勢力的には若干衰えたがその代わり安定を手に入れ犯罪王としての地位を維持していた。

 

しかしそんな犯罪一家の栄光にも若干の影が見え始める。

 

安定を提供した第一銀河帝国は崩壊し当時のボスであったジャバ・デシリジク・ティウレは壮絶な死を遂げ徐々に衰退し始めていた。

 

それでもなお彼らの勢力はいまだ強力であり敵でなくとも警戒すべき者達であった。

 

今日、この日までは。

 

ハイパースペースを親衛隊の艦隊が航行している。

 

目指す先はナル・ハッタを含めたハット・スペースの全領域。

 

百隻以上のスター・デストロイヤーや軍艦がフューリナー上級大将の旗艦であるアセーター級スター・ドレッドノート“ピュリフィケーション”に導かれ目的地へと征く。

 

以前は現在の副旗艦であるインペリアルⅡ級“エリミネーション”が乗艦であったが大粛清とクワット社の提供によりアセーター級に移ることができた。

 

主力は多くはインペリアル級やヴィクトリー級だったが中にはオナガー級のような特殊艦船もあり異様な艦隊編成を組まれていた。

 

アークワイテンズ級のような護衛艦が単独で艦隊を編成していたり殆どが重武装の対地表攻撃であったりと。

 

それに一体何の為に態々ハット・スペースまで向かっているのかも不明だ。

 

知っているのはこの親衛隊艦隊の将兵のみでさらに深く知っているのは艦隊を指揮しているフューリナー上級大将だけだった。

 

そしていよいよ彼らは目的に到達した。

 

代理総統の理想と過去との訣別とのために。

 

「全艦ハイパースペースからジャンプアウトしました」

 

「各艦直ちに浄化作戦を開始せよ、ハットの汚れた地を徹底的に浄化してやれ。封鎖部隊は警戒を怠るなよ。バレたら…大問題だ」

 

士官の報告を受けとったフューリナー上級大将は艦隊に命令を出し自重気味に笑った。

 

隠さなければいけないような作戦など最初からやるなという話だがもう遅い。

 

いつまでも諦め切れなかった我々だ、ここまで来ても引き返すことなどない。

 

ピュリフィケーション”を先頭に五、六隻のインペリアル級と数十隻のヴィクトリー級などが続き艦列を組んだままハット・クランの総本山であるナル・ハッタへと進んだ。

 

親衛隊艦隊が続々と標的惑星の軌道上に陣取り命令を待った。

 

その間にアークワイテンズ級艦隊やレイダー級の部隊が周辺領域に散らばり見張りと目撃者の排除の役割を担った。

 

既に何隻かのたまたまそこを航行していた艦船が無慈悲に破壊されている。

 

「上級大将、全艦攻撃配置完了しました」

 

士官の一人が上級大将に報告し判断を仰いだ。

 

フューリナー上級大将は何を言う訳でもなく無言のままブリッジのビューポートから眼前に広がる惑星ナル・ハッタを見下ろした。

 

この惑星に有象無象のゴミどもが詰まっていると思うと悍ましく感じる。

 

差別主義者の思考を全開にしたまま絶対的な笑みを浮かべ腕を振り下ろし命令を出した。

 

「全艦軌道上爆撃開始!ハット・スペースに潜むエイリアンどもを一掃し根絶やしにしろ!また屍の山を作り消し飛ばせ!」

 

ブリッジの砲術長が頷き各部署に指示を出す。

 

フューリナー上級大将の命令から三十秒も掛からず彼の麾下艦隊のスター・デストロイヤーが一斉に軌道上からの艦砲射撃を開始した。

 

ピュリフィケーション”や各スター・デストロイヤーの周辺一帯の惑星内が黄緑色の雨により大地が焼かれ橙色に紅く爛れている。

 

他の惑星でも同様に何隻かのインペリアル級やヴィクトリー級が次々と軌道上爆撃を敢行し惑星内をそこに住まう人々ごと赤色の大地へと変えていった。

 

正しく地獄、いや地獄など生ぬるく見えるほどの光景だ。

 

たった一発の砲弾が地を焼き人の悲鳴も命も何もかもを消し去った。

 

TIEボマーも何十、何百もの中隊が出撃し艦隊が取りこぼした地区に向けプロトン魚雷やプロトン爆弾などの爆撃を展開していた。

 

何より凄まじいのはオナガー級の砲撃だ。

 

流石は軌道上爆撃が専門というべきかたった一撃で大都市を崩落の廃墟へと変え惑星をしの星へと再生していた。

 

アキシャル砲の影響で新共和国戦ではあまり目立たなかったオナガー級だがこうして新たな活躍の場があるとまたその評価は大きく変貌していくものだ。

 

「作戦範囲内の約42%の浄化を達成しましたがそれでもまだ時間は掛かりそうです」

 

士官の報告を受け取りマントのようにコートを羽織るフューリナー上級大将は制帽の唾を人差し指で弾きそれに対する指示を下した。

 

「全支援艦に伝達、核弾頭を惑星に向けて放て。なんなら惑星のコアに向けて放ちそのまま崩壊させても構わん。我々が用があるのは“()()()”が取れる星のみだ」

 

その命令に士官達は閉口し少し動揺していた。

 

そして一人の将校が口を開く。

 

「上級大将…流石に核は…」

 

「何がまずい?我々は既に星を焼いて殺している。今更そこに何発か核弾頭を撃ち込んだところで火力が増強されるだけだ。別に大したことではない。それに核だけ余らせて帰って代理総統に気まずい顔をされても困るからな」

 

フューリナー上級大将は自重気味に笑みを浮かべ将校の反論をねじ伏せた。

 

「はっはあ…」

 

将校はそれ以上返す言葉が見当たらずとぼとぼと各艦隊に命令を下し始めた。

 

核弾頭は次々と各惑星に放たれ地表に大きな爆発が降りかかり大地が大きく抉れ焼け爛れていた。

 

それを見てフューリナー上級大将が頷く。

 

「そう、使えるものはなんでも使わないと。この大浄化は終わりそうにないからな。全く我々は見事に苦労を一手に引き受けている」

 

再び自重気味に笑い目線を軌道上爆撃により変わり果てたナル・ハッタへと向けた。

 

「ハットの時代は終わりこれで物語は終幕……十分よく書かれたシナリオだよ…シュメルケ」

 

命令を下したシュメルケ上級大将の顔を思い出し再び笑みを浮かべた。

 

夢物語に等しい話だが我々が帰ってくるのにはちょうどいい程度だ。

 

地の底から蘇った者は他人か将又己の夥しいほどの流血を糧にしなければいけない。

 

少なくとも上級大将はかの大戦でそう学び今こうしてここに立っているつもりだった。

 

「上級大将、大隊と研究隊の上陸編成が整いました。既に先程の核攻撃により目標率の約66%が達成されました」

 

別のFF(親衛隊)将校が敬礼し彼に報告した。

 

その報告を何よりも待っていたかのようにフューリナー上級大将は飛びつき振り返った。

 

「それは素晴らしい報告だ上級大尉。さて余興は後に任せて私は早速例の計画に立ち合おうとしよう。副司令官」

 

フューリナー上級大将は部隊の副司令官である“アイフィト・ボルフェルト”大将の肩書きの名を呼んだ。

 

大将は大将という階級に似合わず少し驚き気味に敬礼し一歩前に出た。

 

「部隊の指揮は頼んだぞ。私が戻る頃には浄化の八割か九割は終わらせてもらえると助かる」

 

「はっ…ハッ!」

 

「よろしい。では行ってくるぞ」

 

そういいフューリナー上級大将はブリッジを離れた。

 

彼を乗せたラムダ級シャトルと一隻のセキューター級がそのまま領域内を航行し同じくハット・スペース内のドラン星系のある惑星へと向かっていった。

 

かつて帝国軍の秘密研究施設がありとある研究を行っていた。

 

人が望む幻想の研究。

 

人の業とエゴを押し込んだ狂気と正気の研究。

 

それがこの星、惑星ダンドランの小さな歴史だった。

 

一隻のセキューター級から降り立った数万名の制圧部隊がこの惑星に潜む蜜業者達を叩き出しフューリナー上級大将達への道を作った。

 

ラムダ級や幾つかのシャトルが地表に降り立ち大勢のストームトルーパーやパージ・トルーパーの部隊が出現した。

 

当然フューリナー上級大将の一派もだ。

 

副官のヴァルヘル中佐らを引き連れボロボロに荒廃した施設の前に立っていた。

 

「さて、物好きな総統と親友の為に我々も再び狂気と正気の研究を行おう。今度はより、操りやすくそして…」

 

そうそして。

 

「化け物による化け物どもの軍団(カンプグルッペ)を生み出そう。我々がもう一度真の姿で立ち上がる為に」

 

背後に狂った笑みを浮かべる親衛隊士官や研究者達を従えながらフューリナー上級大将はそう誓った。

 

「上級大将!」

 

「なんだ。新共和国の残党でも発見したのか」

 

若い士官の一人が彼に報告した為フューリナー上級大将はそう聞き返した。

 

「いえ発見したのは“()()()()()()()”です!ケッセル星系付近にかなりの数の所属不明のインペリアル級が封鎖線を展開しています!」

 

「…なるほど、全艦隊とボルフェルト大将に伝達。ケッセルには手を出すな、今やりやっても無意味だ。攻撃を仕掛けられた以外手を出さず、浄化作戦に専念せよとな」

 

「よろしいのですか…?」

 

「構わん」

 

「はい!」

 

若い士官は急いでシャトルの方へ戻り伝達を行なった。

 

その様子をよそにヴァルヘル中佐はフューリナー上級大将に問いかけた。

 

「よろしいのですか上級大将。彼らは我々のスパイにいち早く気付き殺害しました。早いうちに殲滅した方がいいのでは?」

 

そんな中佐の進言を彼は片手で止めた。

 

「今戦っても我々は間違い無く勝つだろう。浄化作戦の不完遂と艦隊の半分を失ってな。中佐、ケッセルを甘く見るな。エンドア後あそこに残った我々より狂気の代弁者である彼らを甘く見るな」

 

上級大将は振り返りヴァルヘル中佐に忠告した。

 

一種の語り掛けと言っても良いだろう。

 

「敵の指導者であるクラリッサ・ヤルバは見かけによらず狂気を秘めた強敵だぞ。現にケッセルの帝国軍は我々の侵入にいち早く気付き既に目に見えるほどの防衛線を築いている。あれだけ隠密だったのにも関わらずだ」

 

フューリナー上級大将の一言一言を一言一句逃さず聞きヴァルヘル中佐は思わず固唾を飲んだ。

 

彼の説得力は想像を絶するものだ。

 

「彼女は正に異常者の化身でり正気を失った者の代弁者、模範者と言ってもいい。人間でありながら化け物になった真の異常者だ。法秩序崩壊の擬人化にして帝国最恐の“総督(governor)”だ」

 

「帝国最恐の…」

 

「そして彼女の下に付き従う連中もまた、すでにスパイスに全身を浸し正気を失った異常者の集まりだろう。だからこそ、正気を失ったが故に手強くそして恐ろしい。だが我々の力は全体で考えれば遥かに上回っている。焦る事なく確実に戦えば勝てる相手だ、今無理に手を出す必要はない。それに我々の目的は戦闘ではなく浄化と軍団の建設だ。薬物狂いの異常者など放っておけばいい」

 

「…わかりました」

 

「うむ。さあ我々は我々で狂気を育み“()()”に備えようじゃないか。我々は皆、正気をとうの昔に失い狂った狂気の成れの果てなのだからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-帝国占領地 アウター・リム・テリトリー タイオン・ヘゲモニー ラクサス星系 惑星ラクサス-

ラクサスを攻撃する帝国軍の作戦は“()()”成功を収めた。

 

帝国軍は親衛隊共々僅かな損害でラクサスを陥落させ新共和国残党軍に大打撃を与えた。

 

しかしホズニアン・プライムの時のような完全なる大成功とは言い切れなかった。

 

何せ包囲戦の最終攻勢で親衛隊の艦隊が敵の脱出部隊の突破を許しラクサス内に存在していた半数近くの敵部隊を取り逃がしてしまった。

 

だがそれを除けば帝国軍は十分な成功を収めたと言えるだろう。

 

この年末と新年のめでたい日にちの間に飾る勝利としては十分だった。

 

そして彼らの旅団の誕生としても。

 

シャトルが一台地表に着陸し何名かの将校と共にジークハルトが降り立った。

 

連隊の部下達に出迎えられ互いに親衛隊式の敬礼を行った。

 

「ご苦労。問題はなかったか」

 

「ああ、負傷者すら出ていない」

 

「楽な仕事でしたよ」

 

アデルハイン中佐とヴァリンヘルト上級中尉はコルサントにいたジークハルトに軽く説明した。

 

部隊を後方に回し信頼できる指揮官達に任せて行ったのでジークハルトもあまり心配はなかったがこれほどとは。

 

よほど全軍の侵攻が上手く行っていたのだろう。

 

「それでコルサントはどうだった。ユーリアとマインの坊主は元気だったか?」

 

ハイネクロイツ中佐がそう問いかけた。

 

ジークハルトは少しため息を吐いて返答した。

 

「総統府の爆破と重なっちゃって中々にひどいもんだったよ。家族とは元気で安心したが」

 

「そりゃ災難だったな」

 

「それでコルサントへはなんで召喚されたんですか?」

 

ヴァリンヘルト上級中尉の問いにジークハルトは首や顎を撫でながら答えた。

 

こうして無事に帰ってきているのだから悪いことではないだろう。

 

ただジークハルトが放った一言はかなり諸将に驚きを呼び起こした。

 

「我々の第六親衛連隊は事実上解体され新たに新設される第三機甲旅団に生まれ変わる。無論私が指揮官でアデルハインはそのまま副旅団長、ハイネクロイツも旅団配備のスターファイター大隊長だ」

 

「戦力的にはどれくらい巨大化するんだ?」

 

アデルハイン中佐の問いに頷きジークハルトは軽く言葉だけで説明した。

 

「人員は6,000名以上、一個連隊と二個大隊、三個中隊が加わる予定だ。恐らくは更に彼の保安中隊も加わってより増大するだろう」

 

「彼…?」

 

「紹介が遅れた。第三機甲旅団の憲兵総監であるリデルト・ヒャールゲン中佐だ」

 

ヒャールゲン中佐は敬礼し一歩前に出た。

 

軍用コートを着ているがその下には白い保安局員の制服が見えており手につけられているサポーターも合わせてかなりの威圧感を誇った。

 

アデルハイン中佐らも敬礼を返し軽く握手を交わした。

 

「部隊編成はこのままラクサスで行い我々は銀河系の北西部に潜む新共和国軍と未だ敵対する勢力の討伐部隊として向かう」

 

「久方ぶりの大規模戦ってわけか」

 

「ああ、まだ当分先の話にはなるがみんな頼んだぞ」

 

「了解」

 

「任せてください!」

 

「ああ」

 

三人の返答に安堵の笑みを浮かべジークハルトは用があると彼らに断りを入れてヒャールゲン中佐と共にラクサス占領司令部の方へ歩いて行った。

 

その道中ジークハルトの後ろを歩くヒャールゲン中佐に一言入れられた。

 

「よろしいのですか?本当の目的を話さなくても」

 

ジークハルトの目線が重くなり彼は少し息を吐いた。

 

アデルハイン中佐達はまだこの新旅団が北西領域へ向かう本当の目的をまだ知らない。

 

知っているのはジークハルトとこのヒャールゲン中佐だけだ。

 

他の将兵は指揮官も含めてほとんど知らされていない。

 

それはこれからジークハルトの口から発表しなければならないからだ。

 

「ああ、まだその時じゃない。旅団の編成が落ち着いたらだ。無駄なことを知って作業効率が落ちてもらっても困る」

 

「なるほど、失礼しました」

 

「いやいい中佐…所詮はこんなのも建前だ。それでも必ず伝えるよ」

 

「はい」

 

あまり浮かない表情のままジークハルトは彼に約束した。

 

あの仲間達に同じ同胞を殺せというのは中々にキツいものがある。

 

仮にコルサントの奪還で既に手を染めていたとしてもだ。

 

だから話すのは当分先、旅団の基盤が安定してからだ。

 

未だやりきれない優しさがジークハルトに滲み出ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ミッド・リム 旧帝国領 惑星アンシオン周辺域 第十衛星-

アンシオンには元々帝国軍の基地があり今も旧帝国軍の支配が色濃く残っている惑星だった。

 

惑星を統治する政府はほとんどが元帝国軍人であり惑星防衛軍の装備や戦力もほぼ帝国軍と同じと言っていいだろう。

 

インペリアル級数十隻とアークワイテンズ級やヴィクトリー級のような艦船が数十隻。

 

地方の惑星や星系国家としては軍事力としてはかなり強大であった為彼らは度々新共和国でも小さな議題になっていた。

 

何せすぐ隣には新共和国加盟国の星系政府が存在しており同時に新共和国も駐留している為時折小競り合いが発生していた。

 

その為比較的多くの新共和国軍の部隊が配備され新共和国陥落後もこの地に逃げ延びていた部隊が数多く存在している。

 

ジェルマンとジョーレンが協力体制を構築した惑星の一つもここだ。

 

だが今この地の新共和国の残党軍は窮地に立たされていた。

 

新共和国という後ろ盾を失った星系政府はこれを好機と見たアンシオンを支配する元帝国の傀儡政府により大規模な侵略ヶ行われこれの防衛に当たっていた。

 

だが勢い付いたアンシオン軍の侵攻は中々食い止められず新共和国軍は厳しい戦いを強いられていた。

 

砲弾が飛び交い爆音が戦闘中の衛星の山に響いている。

 

「あぁクソ!」

 

偵察用スピーダーに乗り込んだ運転手が悪態を付き降り注ぐ砲弾を避けながら近くの前哨司令部までたどり着いた。

 

帝国艦隊はなんとか友軍の防衛艦隊が抑えているとはいえアンシオン軍は多くの火砲をこちらに向けてきた。

 

運転手はスピーダーを近くに留めもう一人の偵察兵と共に急いで降りた。

 

後ろには輸送用のスピーダーが何台か砲撃の中、前線へと進もうとしており深刻な様子を現した。

 

運転手と偵察兵は急いで前哨司令部の中へと入り報告を行った。

 

「前線の歩兵小隊は壊滅!砲兵中隊の物資も残り僅かで撤退はほぼ不可能です!」

 

「敵軍の一個大隊ほどが既に10キロ先まで近づいています!ここももう危険です!」

 

砲撃で揺れる司令部の中で二人の報告はとても簡潔だった。

 

長々と話していられる余裕も時間もない。

 

司令官は通信機に耳を当て別部署からも報告を受け取っているようだった。

 

だが彼は素早く二人に命令を出した。

 

「輸送スピーダーを向かわせている!お前達はもう一度索敵を頼む、今度は西方だ!」

 

「了解!」

 

二人はそのままスピーダーに向かい司令官は再び通信機を耳に当てた。

 

情報と指示を求める声が飛び交っておりとても忙しかった。

 

「既に敵が10キロ先にいる!あと数分もしないうちにここはウォーカーの射程範囲内だ!」

 

度重なる近くへの砲撃のせいで通信が聞き取り辛かった。

 

すると彼の副官の中尉がやってきて司令官に報告した。

 

「右翼側の第八中隊が全滅したそうです」

 

その報告は司令官を十分動揺させるものだった。

 

彼は通信機を捨てるように置き第八中隊がいる報告を向いた。

 

「バカな…!右翼側までアンシオン軍は来ていないはずだ…」

 

「別の索敵隊も消息を経っています。もしかしてですが…」

 

「第三帝国軍だと…いや、だが奴らは北東進撃中でこちらへ部隊を展開する余裕など…」

 

「司令官!砲撃来ます!右からです!」

 

「なんだと!?」

 

直後一発のターボレーザー砲弾が司令部の隣のテントを突き抜け爆発を引き起こした。

 

その爆風や破片は司令官達がいるテントの方にも押し寄せとても立ってはいられない状況に陥った。

 

司令官は近くにいた中尉が急いで伏せさせたからよかったものの他はそうではなかった。

 

あちこちから悲鳴や嗚咽が聞こえ砂煙が待っていた。

 

司令官は急いで立ち上がり周囲を見渡す。

 

「しまった…!」

 

彼が惨状を表したのはこの一言だった。

 

テントが崩壊し通信機器やレーダーなどがテーブルごと倒れ傷を負い倒れた兵士たちがあちこちに散らばっている。

 

なんとか立ち上がった兵達ももう何をしていいのか分からずただ唖然としていた。

 

近くにいた中尉も立ち上がりこの惨状を目にし絶句している。

 

当然だ、こんなもの言葉では言い表しようがない。

 

「隣のテントは全滅です!!生存者は誰一人いません!!」

 

様子を見てきた下士官の一人が司令官にそう報告した。

 

その報告を聞き司令官は唖然としながら口を開いた。

 

「この角度…間違いない…艦砲射撃だ…それもターボレーザークラスの…」

 

彼の状況把握は素早かった。

 

これだけの砲撃を、しかもあの角度から放てるのは軌道上や空中からの艦船の砲撃以外不可能だ。

 

たった一発の流れ弾のような砲撃だったがその一発で彼らの存在は露わになった。

 

第三帝国軍の存在を。

 

この戦いに介入する新政府の存在を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-未知領域 ファースト・オーダー首都艦及びファースト・オーダー宇宙軍総旗艦 エグゼクター級スター・ドレッドノート エクリプス-

エグゼクター級最後の生き残りとされていた“エクリプス”は現在とある星系を航行していた。

 

後続にはインペリアル級やクエーサー・ファイア級のような艦船が続き艦隊を成している。

 

多くの者の協力と亡命してくるかつての同胞達のおかげでようやくかつてジャクーに勢力を構えていた頃の戦力より何十倍以上も増加した。

 

それに“()()()()()()”達のおかげで勢力はまだまだ増加しそうだ。

 

今スローネ大提督の目の前に座っている彼女を筆頭に。

 

ケッセル帝国残存勢力(Kessel Imperial remnant)

 

彼女達は表向きには“ケッセル星系王国”と名乗っているが内実はほぼ元帝国軍、帝国の役人による支配である。

 

彼女、クラリッサ・ヤルバ・パイク総督による半ば摂政政治的な支配であった。

 

スローネ大提督も彼女と以前面識があった。

 

とは言ってもパーティーなどで見かけた頃だったが。

 

あれはまだスローネ大提督が准将だった頃でオルデラン難民の事件を担当していた頃の話だ。

 

その当時のクラリッサはまだ幼い少女でとあるアカデミーで統治や政治などを学んでいた。

 

かなりのエリートアカデミーであったがこんな短期間で惑星や星系の総督とは。

 

エリートというよりは天才の域だろう。

 

まあその評価から察するに“()()”というよりは“()()”の方かもしれないが。

 

「それで件の補給物資というのは?」

 

スローネ大提督はふと後ろに控えているファースト・オーダー型の帝国軍の軍服を着た少年に目を合わせた。

 

大提督が送り込んでいたスパイ兼交渉役の将校、マルス・ヒルデンロード。

 

深いことは分からないがおそらく彼のおかげでケッセル勢力は我々の側についてくれたのだろう。

 

見たところマルスも特に何かされたわけではないようだ。

 

「ええ、そちらの一個艦隊が少なくとも十年は持つほどの燃料資源を贈呈しますわ」

 

オロ・ティーの入ったカップを皿に置くとクラリッサはそう微笑みを交えて美しい声音とその顔で言った。

 

まさしく美女、お嬢様と言った言葉がぴったりでどこをとっても美しいの一言で済んでしまう。

 

丁寧な言葉遣いや他人への接し方によって内面すらそう見えてしまうだろう。

 

実際はスローネ大提督すら絶句するような性格なのだが一部の人間だけの秘密であれば問題はない。

 

人間誰しも弱点や欠点があるように天才であり奇才であるクラリッサでは仕方ないのかもしれない。

 

ただその欠点が大きすぎるだけで。

 

「我々とてあなた方とは争いたくないし同じ元帝国同士同盟を結びたいのは願ってもないことだ」

 

そう言いスローネ大提督は手を差し出した。

 

クラリッサも薄い手袋を脱ぎ丁寧に両手で大提督の手を握った。

 

「こちらこそ感謝の至りですわ。お父様もお母様も領内の皆様もきっと喜ばれるでしょう」

 

二人の握手は固くファースト・オーダーとケッセルの今後を思わせるほどだった。

 

スローネ大提督の背後の控える将兵達もマルスも安堵の微笑を浮かべている。

 

そこでクラリッサはスローネ大提督に一つ提案をした。

 

「実は一つ小さなお願いをしてもよろしいですか?」

 

「我々が叶えられる範囲であればどうぞ」

 

するとクラリッサはニコッと笑い大提督に願いを言った。

 

「アンシオン軍と周辺の新共和国残党軍の戦いご存知でしょう?」

 

「ああ、我が軍も既にアンシオン側に部隊を派遣している。新共和国軍には間違いなく勝利するだろう。“()()()()()”にはどうか分からないがある程度役には立ってくれるはずだ」

 

「その戦い、私達もその場で少し見て行きたいのですがよろしいでしょうか?」

 

意外な願いにスローネ大提督は少し口を閉じた。

 

別にダメな理由はない。

 

行かれて困る理由もこちら側としてはないし断りを入れる必要性は皆無だった。

 

しかしあまりに唐突すぎたので流石の彼女も少々困惑してしまった。

 

少しその時間が長引いた為クラリッサは微笑姿のまま少し言葉を付け足した。

 

「ああ、いえ『護衛をつけろ』だとか『我が軍も参戦させろ』とかは申しておりませんの。ただの見学、見学ですわ」

 

「別に問題はないが…そんなことして何になるのだ?」

 

スローネ大提督の問いにクラリッサは笑みを深め答えた。

 

若干見え隠れする狂気を言の葉にのせて。

 

「別に理由なんてありませんわ。それこそただの見学です、そう遠くない将来にも備えて…ね?」

 

「なるほど…ケッセル王室には恐ろしい御令嬢がいるらしい。いいだろう、許可する」

 

「ありがとうございますわ!それでは大提督、またいつかごきげんよう」

 

パーっと幼なげな笑みを浮かべクラリッサは“エクリプス”の部屋を退出した。

 

スローネ大提督達も「またいつか」と返答し敬礼し見送っていた。

 

少し通路を歩き部屋から離れたところでマルスは彼女に囁いた。

 

「理由がないなんて随分なこと言いますね」

 

「あら、理由なんてほんの些細なことでしかなくってよ?」

 

彼の頬を色っぽく撫でるとお返しと言わんばかりにマルスの耳元で囁いた。

 

「己自らを犠牲にしながら戦い続ける世界ほど刺激的なものはありませんわ」

 

「あなたは本当に悪い人だ」

 

「知っていますとも。可愛らしい少年を食べちゃうほどにね」

 

小悪魔的な笑みを浮かべクラリッサはそう微笑んだ。

 

その澄み切り過ぎた瞳からは不思議なことに一切の狂気を感じなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一機のXウィングが衛星の上空を飛んでいる。

 

大気を掻き切る翼が何本かの線を描きその姿を露わにした。

 

何度か機体を回転させ雲間から見える線を交差させている。

 

しかしこの線は突如としてプツリと消えてなくなった。

 

燻んだオレンジ色と灰色の煙がXウィングを包みその機体の存在を一瞬で消し去った。

 

小さな破片が地に落ち煙幕の中から今度は帝国軍のTIEファイターが姿を表した。

 

更に後ろから二機のTIEファイターが編隊を組んで参上し雲の中で行われているファイター戦に参戦した。

 

編隊を全くと言っていいほど崩さずXウィングやより高速機のAウィングを何なく撃破していった。

 

炎上しかた翼が捥がれたXウィングが編隊の右側を掠めるが器用に回避し逆にもう一機の敵機を撃破した。

 

だがそんな編隊を狙おうとする機体も現れる。

 

TIEファイター編隊を上空から狙い撃ちしようとするYウィングのパイロットがコックピットの中で照準を絞っていた。

 

焦らず正確に、あの編隊を一機でも撃破すればいいのだ。

 

幸い敵機のTIEファイターは脆くたった一撃で撃破する事が可能だ。

 

あと少し、あと少し!と操縦桿のトリガーを握るYウィングパイロットは突如機体が爆炎と火花に突かれコックピットの機器が火花を上げ出した。

 

火花から顔を抑えた瞬間強い衝撃が襲いパイロットは断末魔を挙げる事なく機体の崩壊に巻き込まれ死んだ。

 

元Yウィングの残骸の中から四機の機体が出現し更に多くの敵機を火だるまに変えて行く。

 

そんな帝国軍の機体同士の通信が若干聞こえる。

 

『敵機一機撃墜、このまま大隊の支援に回るぞ』

 

『了解!歯応えのない雑魚どもばかりだがな!』

 

『ヴォンレグ、油断するなよ。追い詰められた敵は何をするか分からん』

 

『だがこの様子じゃそんな気概がないようにも思える』

 

TIEを操りながらパイロット達はそれぞれ戦意を昂らせていた。

 

そんな中、一人のパイロットがこう口を開いた。

 

『こんな連中が相手じゃ“()()()”が出る幕もないな』

 

『ああ、だが今頃地上で一人寂しそうに空戦を見つめているだろう』

 

『大提督閣下も悪い人だ。“()”を空戦から離れさせる職に就かせるなんてな』

 

そう言いながらまた敵機を撃破し友軍の危機を救っていく。

 

もはや戦いの勝敗は決しており新共和国軍は完全に劣勢であった。

 

その様子は地上からエレクトロバイノキュラーで覗いても分かる程だった。

 

一人のパイロットがエレクトロバイノキュラーを下ろしため息を吐く。

 

パイロットスーツには赤いラインが入っておりその功績を思わせた。

 

「“()()()()”!我々のスターファイター隊が敵スターファイター隊を撃破しました!」

 

彼の下に同じくパイロットスーツ姿の若い士官が駆け寄り報告した。

 

エレクトロバイノキュラーをベルトのハンガーラックに掛けると草っぱらに置いておいた自分のヘルメットを持ち上げた。

 

「見ればわかる。第一あんな雑魚ども相手に教え子と戦友達が負けるわけないんだ」

 

「はっはあ…」

 

報告に来たはいいがそう言われ若いパイロット士官の少尉は困惑し面目を失った。

 

そんなパイロット士官の肩を彼は軽く叩いた。

 

「そんな事よりあけましておめでとう少尉。新年おめでただ」

 

「えっもう…ですか?」

 

少尉は問い返してくる。

 

「コルサントの時間じゃ既に新年だ。パイロット達に酒と菓子でも用意してやれ。折角だしお祝いしよう」

 

「はい!それはそうと随分早く方が着きましたね」

 

少尉は空を見上げながらそう呟いた。

 

彼もまた同じように空を見上げる。

 

「なあんなの序の口さ。本当の敵はまた別にいる、その時ようやく真価が分かるはずだ」

 

「本当の敵…とは一体誰のことですか…?」

 

そんな少尉の問いかけに彼は指を刺して答えた。

 

彼の指の先の方角にはコルサントがあり感が良ければ彼の言う敵が説明なしですぐ分かるだろう。

 

「この銀河の中心。我々はかつての同胞と殺し合いをせねばならない」

 

その言葉を聞いてもなお若く感の鈍い少尉は気づかなかった。

 

無論今無理に気づく必要はない。

 

だがいずれ、必ず対峙することになる。

 

彼の地を抑える知られざる同胞と。

 

忘れ去られた我々が対峙する。

 

「その時は一体、どんな結果になるんだろうな」

 

8ABY。

 

ラクサスの反対方向に位置するアンソン周辺を舞台に新たな戦いが幕を開ける。

 

新共和国と第三帝国、そして新たな勢力が。

 

かつて“タイタン3”と呼ばれた今は名もなき少佐と、上級大佐として新たな旅団を率いるジークハルトがこの地で戦いを繰り広げる。

 

年が明けてもなお彼の銀河の戦いに終わりはなかった。

 

 

 

つづく




新年あけましておめでとうございます!

今年もナチやヴァントやとやっていきたいですね〜

エルト「ほ〜ら〜早く続き描け〜」
フリューゲル「出番増やせ〜」
ゼファント「出番来てもろくな運命じゃないしいいかな…」
マイン「お父さん出番あってよかったね」
ジークハルト「うん…」


???「 新 年 も ス パ イ ス パ ク パ ク で す わ ! ! 」
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