第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

32 / 84
「市民も政府関係者も皆『銀河の再征服を!領土を取り戻せ!』と息巻いている。だが、再侵略も統治もあまり上手くいっていないのが実情だ。帝国軍も親衛隊も破竹の勢いで勝ち進んでいるもののそう遠くない時期にやがて進撃はストップするだろう。何より得た領土の統治が殆ど上手く行っていない。人員が足りず服属惑星に大使を派遣することすらままならないのだ。我々はこんな状況でいつまで戦い続けられるのだろうか、我々が戦い納めようとしている物は我々の手に余る代物なのではないだろうか」
-帝国国防軍のとある提督の回想録より抜粋-


Advanced Battle

-帝国領 コア・ワールド 惑星コルサント-

「と、いうわけです」

 

ユーリアの前に座る親衛隊の大尉は彼女に説明を終え資料を渡した。

 

セレッド大尉を名乗る親衛隊将校の隣には彼よりもかなり若い新任の少尉が座っており若干緊張した面持ちでユーリアを見つめていた。

 

彼女はこれでも親衛隊内ではかなり有名な旅団長の妻なのだ。

 

緊張もするし何より優しい美人に微笑み掛けられれば若者なんてすぐ上がってしまうだろう。

 

「わざわざありがとうございます」

 

ユーリアは丁寧に頭を下げ親衛隊将校達も「いえいえ」と軽く頭を下げた。

 

「むしろ余計な事ではないかと心配しましたよ。シュタンデリス大佐ならお伝えしてそうですし」

 

セレッド大尉そう冗談めかして呟いた。

 

彼らは選ばれた帝国市民の少年少女達が入隊を義務付けられている“コンプノア・ユーゲント(COMPNOR Jugend)”の説明を行なっていた。

 

コンプノア・ユーゲントは第三帝国のCOMPNOR(ニューオーダー保護委員会)が行う政策の一つで第三帝国のイデオロギーや帝国の将来を担う為の教育を受けていた。

 

主な教育内容は体力作り兵士や技術者としての基本的知識や技能、ハイ=ヒューマン主義やエイリアン種族に対する憎悪などでより忠実で優秀な兵士の基礎を作り出していた。

 

コンプノア・ユーゲントは将来的に全員がアカデミーへ進学し国防軍、親衛隊、COMPNOR委員、政府関係者などになっていく。

 

ある種セレッド大尉達のような広報部員がこの資料を持って家に訪問すればそれは第三帝国市民にとって我が子の将来が約束された事を意味する。

 

当然親衛隊員であり優秀な指揮官の息子であるマインラートの下にも入隊義務が訪れたのだ。

 

「いえいえ、仮に教えられたとしても選ばれるとは限りませんし」

 

「シュタンデリス大佐のお子さんでしたら必ず選ばれますよ」

 

ジークハルトの階級は大佐(厳密に言えば上級大佐なのだがまだ全体に知れ渡ってはいない)でセレッド大尉よりも4〜5階級上である。

 

当然下手な事は言えないしお世辞に近い事も言うだろう。

 

そんなセレッド大尉と少尉にユーリアは優しく微笑んだ。

 

「さて、あまり長居してはいけない。我々はこの辺でお暇させて頂きますね」

 

セレッド大尉は資料以外のものを片付け始めると制帽を手に取り深く被った。

 

少尉の方もバッグを持ちテーブルに置かれた制帽を手に取った。

 

「もうですか?」

 

「ええ、シュタンデリス夫人のおもてなしはとても嬉しいのですが我々も次のご家庭に向かわねばなりませんので」

 

そう名残惜しそうにセレッド大尉は微笑み自身のバッグを持った。

 

本当に名残惜しそうな顔をしていたのは少尉の方だったが。

 

「それは大変ですね、ご苦労様です」

 

「いえいえ、我々の…私が唯一出来る大切な仕事ですから。それでは」

 

ユーリアの労いの言葉にセレッド大尉は一瞬だけ悲壮を浮かべた表情を浮かべすぐいつもの優しい顔に戻った。

 

「玄関先まで送りますね」とユーリアは2人に声を掛け別の部屋にいたマインラートを呼んだ。

 

元気のいいマインラートはすぐに走ってきた。

 

「彼がマインラート君ですか?」

 

セレッド大尉はユーリアに尋ね「はい」と答えた。

 

「こんにちわ!」

 

「ああ、こんにちわ。それじゃあおじさん達はこれで帰るからね」

 

「玄関までお見送りしましょ?」

 

「はーい」

 

マインラートの幼さが残る返事と挨拶に親衛隊2人も元気を貰い微笑ましい気持ちになっていた。

 

そんなマインラーとは廊下を歩く親衛隊の2人にふと尋ねた。

 

「おじさん達、お父さんと同じ格好をしているけどお父さんの友達なの?」

 

「お友達ってほど偉くはないけど…まあ同じお仕事をしているね。私もこっちのお兄さんも君のお父さんと同じ仕事をしていてとっても誇りに思うよ」

 

突然話を振られた少尉はうまく返せずぎこちない笑みを浮かべていた。

 

セレッド大尉はそれなりに軍歴が長いのかこう言う対応にもかなりスムーズだった。

 

「君もいつかお父さんやおじさんと同じ仕事につくかもしれないね。その時は親衛隊なんて消えてるといいけども」

 

セレッド大尉はそう微笑みマインラートの頭を撫でた。

 

マインラートは嬉しそうに笑いユーリアはそんなマインラートの笑みに反してどこか悲しそうな表情を浮かべていた。

 

玄関を出た一向はちょっとした雑談を行なった後大尉が話を切り出した。

 

「それではシュタンデリス夫人」

 

「どうせならアパートの外までお見送りしましょうか?マインは先に戻ってなさい」

 

「はーい!」

 

マインラートはユーリアにそう言われセレッド大尉達にペコリと頭を下げて家の中に戻っていった。

 

セレッド大尉達は軽く手を振りながら話を戻した。

 

「申し訳ない、ではお願いしますね」

 

「ええ」

 

ユーリアとせレッド大尉達は玄関先での雑談を続けた。

 

ただ話の内容は若干切り替わっている。

 

「それにしてもマインラート君はとてもいい子ですね。優しくて私も年甲斐もなく嬉しくなりましたよ」

 

「優しいのもあの子の取り柄だと思っているので」

 

「実は私にも娘がいるのですがちょうどマインラート君と同い年でしてもしかしたら同じユーゲントクラスに入るかもしれません」

 

「マインラート君が同じクラスだととても嬉しいのですがね」と大尉は嘘偽りなく笑顔で応えた。

 

ユーリアも微笑を浮かべて「そうだといいですね」と同じく本心で話した。

 

「娘の幼い頃に私の妻が反乱軍のテロで亡くなってしまいましてね。それ以来人見知りが激しいのですがマインラート君と一緒ならとても頼もしそうでして」

 

「そうでしたか…あの子もきっと貴方の娘さんと仲良くなりたがってると思いますよ」

 

「ハハ、そうだといいのですがね。ただマインラート君は誰とでも仲良くできそうですが」

 

そんな話をしていると既にアパートの外まで出ていた。

 

「それじゃあセレッド大尉、少尉さんもお体にお気をつけて頑張ってくださいね」

 

ユーリアは2人に頭を下げるとセレッド大尉と少尉も敬礼した。

 

しかし悲劇はここで起きた。

 

突如アパートの路地裏から物音が聞こえ幾つかのゴミと共に汚らしい格好をした浮浪者の男が現れた。

 

片手には酒を入れた瓶を持っており目の焦点は全くと言っていいほどあっておらず足元もおぼつかずふらついていた。

 

そんな男は瓶から酒を煽るように飲むと突然ユーリア達に向かって叫んだ。

 

「FFのクソ野郎だ!!よくも俺のダチと彼女を!!許さねぇ!!」

 

叫び声に掠れて若干聞こえ辛かったが男が現れた路地裏の奥の方からは「いたぞ!あそこだ!」と人の声が聞こえた。

 

セレッド大尉は険しい表情を浮かべブラスター・ピストルのホルスターに手を掛けた。

 

少尉の方は顔を引き攣らせ震える手でブラスター・ピストルを引き抜こうとしたが大尉に「まだ早い」と静止されていた。

 

ユーリアはどうする事も出来ない為恐怖で青ざめるしかなかった。

 

男は空になった瓶を乱暴に地面に投げ捨てた。

 

瓶の割れる音と共に破片が飛び散りその隙を見てか男はポケットから何かを取り出した。

 

「ぶっ殺してやる!!テメェらぶっ殺してやる!!」

 

ブラスター・ピストルとナイフだ。

 

路地裏からは誰かが走る足音が聞こえるがおそらく間に合いそうにない。

 

大尉と少尉は急いでブラスター・ピストルを引き抜き男に向けた。

 

「奥さん下がっててください!」

 

「まずはそこの女から道連れだァ!!」

 

そう言い男はブラスターの銃口をユーリアの方へ向けた。

 

その危機をいち早く察知したのはユーリアではなくセレッド大尉の方だった。

 

「危ない!!」

 

セレッド大尉は身を挺してユーリアを跳ね除けた。

 

だが悲惨な事に既に男のブラスター・ピストルは弾丸が発射されておりユーリアを庇ったセレッド大尉の右胸を大きく貫通していた。

 

「グァハッ!!」

 

口から血を吐き出し胸からも血が出ている。

 

「大尉殿!!」

 

「クソFFめ!!じゃますんじゃねぇ!!」

 

直後男はブラスター・ピストルを捨てナイフを構えセレッド大尉に突進した。

 

鋭いナイフがセレッド大尉の腹部に突き刺さりまた苦悶の表情を浮かべる。

 

だがこれが男の命取りとなった。

 

セレッド大尉は力を振り絞りブラスター・ピストルの引き金を放つ。

 

腕や足、胸に弾丸が当たりセレッド大尉と同じように血を出して倒れた。

 

「ガアアアアアア!!」

 

「よくも大尉を!!」

 

激昂した少尉が倒れる男に向けブラスター・ピストルの弾丸を何発も撃ち込む。

 

四発目を喰らった辺りから男はぐったりと倒れ痛みに気絶してしまった。

 

「いたぞ!」

 

「大丈夫ですか!」

 

路地裏から聞こえる声の主達が現れ男を取り押さえた。

 

どうやら親衛隊保安局の警察隊のようで男を追っていたらしい。

 

「セレッドさん!!しっかりしてください!!早く止血を!!」

 

ユーリアは急いでセレッド大尉に近づき周りの将校や警官にそう叫んだ。

 

「今持ってきます!」

 

親衛隊警官の1人が走り去った。

 

ブラスター・ピストルを持ったまま少尉も近づいてくる。

 

「大尉殿しっかりしてください!大尉殿!」

 

「……くっ……あっ……」

 

セレッド大尉の傷は深くユーリアがハンカチを使っても血が止まらない。

 

「早く救急隊を!」

 

「今呼んでいます!」

 

「セレッドさん…!そんな…!」

 

午前の昼前、コルサントの一角にサイレンの音と叫び声がこだました。

 

 

 

 

 

 

-ミッド・リム 惑星アンシオン-

次々と基地を飛び立つTIEファイターの中隊やゴザンティ級を側にクラリッサは出された茶に自前の砂糖を二杯くらい入れていた。

 

目の前にはこの惑星アンシオン政府の星系議長であるマベルス・ドウル元帥が勲章や飾緒をぶら下げ座っていた。

 

彼は元々アンシオン周辺の将軍であったがエンドア後の混乱期に乗じて当時険悪だったアンシオン星系の総督を謀殺。

 

その後傀儡の総督を擁立し新共和国が中央政府となった後はアンシオンの人民と駐留していた帝国軍を再編し現在の姿となった。

 

元帥に勝手に昇進したのもその時だ。

 

エンドア後は各地の軍将や上級将校が勝手に通常よりも上位の階級を名乗ることが多々あった。

 

「感謝するヤルバ総督、ファースト・オーダーに、ケッセルの無限に近い燃料資源があれば我々は無敵だ。これであの第三帝国とも戦える」

 

「それはどうも。ですが我々が出来る支援はほんの少しですわ」

 

「それでも構わんさ。戦いの方は我々がどうにか自分達でどうにかする」

 

元帥は自身に満ちた笑みを浮かべ握り拳を掲げた。

 

クラリッサは出そうになるため息を抑えカップをさらにおいた。

 

ドウル元帥、彼はとても退屈な匂いがする。

 

スパイスのような刺激的な匂いでもなければマルスのように堪らなく魅力的でいつでも手元に置いておきたいような匂いもしない。

 

かと言ってスローネ大提督やファースト・オーダーのボラム大将軍のような気概ある有能な匂いもしなかった。

 

とにかく退屈な、典型的な、ありきたりな感じだ。

 

帝国軍によくいるタイプのステレオタイプといったところだろう。

 

権力闘争に明け暮れ帝国を弱らせるタイプのアレだ。

 

「なら一つ言っておきますわ。あの新共和国と惑星防衛軍から奪い取った衛星、早めに捨てておいた方が身のためですわよ」

 

「第十衛星にはまだ第三帝国の二個連隊程度の戦力しかいないはずだ。確かにあの連中に真っ向から勝てるとは思えんが戦略的勝利程度なら…」

 

「だから言ってますのよ?今頃は親衛隊とかいう連中が現れて衛星制圧を目指してる頃でしょうし。勝ちたいなら余計な領土は捨てて防備を固めるべきですわ」

 

言葉を読み取るのは早いが相手を知らなさすぎる。

 

いくら方面軍的戦力しか送って来られないとはいえ第三帝国はそのような道理を無理で突破するような連中だ。

 

その第一報が、ほらきた。

 

士官が1人慌ただしくノックもせずドウル元帥とクラリッサのいる部屋に入ってきた。

 

「元帥!第十衛星が…」

 

その先は聞こえなくても分かる。

 

ドウル元帥は士官と小さな声で話し命令を送った。

 

士官は小さく頷き急いで退出した。

 

ドウル元帥は大きく息を吐きクラリッサを軽く睨んだ。

 

恨みは感じられないが何か怪訝なものを見るような感じだった。

 

「君は預言者か何かか?言われた通り第三帝国の親衛隊が一個旅団と一個艦隊ほどやって来た」

 

「予言も何も当然の結論ですわ。第三帝国がこの地に侵略を仕掛けて来た時点で彼らは本気ですもの」

 

「だがな総督、私はあの衛星を手放すつもりはないぞ。既に三個師団を配備してある、親衛隊を防ぐには十分のはずだ。それにファースト・オーダーから与えられた“切り札”もある」

 

「ええ、私はこれ以上あなた方にいうことはありませんわ。宣告通りちょっと見学してすぐ帰らせていただきます」

 

ドウル元帥は余裕そうな交戦的な笑みを浮かべ「好きにしてくれ、邪魔だけせねばな」と言い放った。

 

クラリッサも「言われなくとも、あなた方の采配楽しみにしてますわ」と言い席を立った。

 

「楽しみにしてくれ。コルサントの伍長など、軽く一捻りよ。なあに君の仇もな…」

 

元帥はふと彼を見て不敵に微笑んだ。

 

「じゃあ行きましょうかマルス」

 

「はい、お嬢様。それでは元帥」

 

マルスは礼儀正しく敬礼しドウル元帥も軽く敬礼を返した。

 

クラリッサも丁寧に頭を下げ部屋を後にした。

 

元帥は2人を目で見送ると衛兵と副官のみになった部屋で1人心地に口を開いた。

 

「スパイスお嬢様…か。世間知らずより幾分マシか、それとも…」

 

ソファーから仰々しく立ち上がり窓の外を見つめた。

 

彼配下のアンシオン軍が続々と戦場へと向かっていく。

 

かつての帝国軍には及ばないが自身が帝国時代に持っていた軍事力よりは高い。

 

それは領土も権力も同じだった。

 

「ここまでなれたのだ、我が権威を貫いてみせるさ」

 

第三帝国を相手にしてドウル元帥はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「機体の修復は完了してますが応急修理なので無茶はしないでくださいね!」

 

整備士が急いでUウィングに乗り込もうとするジェルマンとジョーレンに忠告した。

 

だが2人とも適当な生返事で済ませすぐに機体のハッチが閉まってしまった。

 

彼らはいざという時の為に武装を固めほぼフル装備だった。

 

「偏向シールドと武装が使えればそれでいい。確かアンヴィル中隊に少し改良されたんだな?」

 

「イオン・ブラスターを外付けにしてコックピットから遠隔操作出来るようにしただけだ。とどのつまり…」

 

「武装が増えた、最高だな」

 

「ああ!」

 

不敵に笑いジョーレンは各システムを起動させUウィングを発進体制に持ち込んだ。

 

既にUウィングの隣を何機かのXウィングやAウィングが飛び立ち戦場へと飛び立っていった。

 

「こちらUウィング、敵機迎撃の為緊急発進する」

 

『Uウィングの発艦を許可する。頼みましたよ…!』

 

「分かってる。Uウィング出るぞ」

 

通信士の声援を受けジェルマンとジョーレンのUウィングが“ホーム・ワン”を発艦した。

 

既に他のMC80やスターホーク級などからも多くのスターファイターが発艦しつつあった。

 

前を見れば新共和国艦隊の先に楔形の無機質な破壊者(デストロイヤー)が艦列を並べこちらを待ち構えている。

 

敵艦はおおよそ数十隻ほど。

 

まだ続々とハイパースペースから出現しており後続と小型艦を含めば数百隻は超えるだろう。

 

「敵機の発艦を確認。インペリアル級それぞれからざっと三個中隊以上、ボマーもいる」

 

ジェルマンは簡易的に敵の状態を報告した。

 

まず彼らの一番の敵はスターファイターだ。

 

それさえ分れば後は命令に従うのみ。

 

『アンヴィル中隊、全機準備よし』

 

『エコー中隊、準備よし』

 

『ヴァンガード中隊、いつでも行ける』

 

『ブルー中隊、準備よし』

 

『イエロー中隊準備よし』

 

『グレイ中隊、全機準備よし』

 

『ゴールド中隊、準備よし』

 

名高いスターファイター中隊が翼を並べ合図を出した。

 

艦隊も防衛陣形の編成が完了し敵を待ち構えている。

 

全部隊に最高司令官のアクバー元帥の声が響いた。

 

『全スターファイター隊は敵機を押さえつつ敵艦の局所に集中攻撃せよ。全艦隊で支援し敵艦を撃破する』

 

『了解元帥。ゴールド中隊全機、先行して敵艦の偏向シールドを叩く』

 

何十機かのYウィングやBウィングが先行しその後を多くのスターファイターが続いた。

 

当然Uウィングもだ。

 

「僕達はどうする?」

 

「編隊を支援しつつ前方の小型空母に攻撃を仕掛ける」

 

「僕達だけでやれるか?」

 

「よく見ろ敵は空母だ。インファイトに持ち込めば勝てる」

 

「本当に?」

 

「…1機じゃ難しいが少なくとも行動不能くらいはやれるはずだ」

 

自信を若干無くしつつもジョーレンは前方の敵機を睨んだ。

 

既に戦闘が始まり敵味方含め何機かのスターファイターが撃破されその無惨な姿を曝け出している。

 

レーザーが飛び交う戦場をSフォイルを持つ青いUウィングが飛び回る。

 

Uウィングからレーザーが放たれ1機のTIEブルートが撃破された。

 

そのまま大きく円を描きながら機体を回転させレーザー砲を連射した。

 

攻撃を交わし切れず何機かのTIEインターセプターやTIEブルートが撃破された。

 

「このまま空母に突っ込むぞ!掴まれ!」

 

最高速度のままジョーレンは機体を真っ逆さまにクエーサー・ファイア級に突っ込ませた。

 

ジョーレンはそのままスコープを起動しクエーサー・ファイア級から発艦しようとするTIEボマーを狙撃する。

 

かなり距離があるが見事に命中させ1機のTIEボマーのエンジンを破壊しそのまま機体を暴走させ別のTIEボマーと衝突させた。

 

破片が散らばり一時的にだがTIEボマー隊の発艦を邪魔したように思える。

 

「対空砲火が来てる!」

 

「回避するさ!」

 

操縦桿を握り次々と放たれるレーザー砲の火砲を回避する。

 

幸いにも護衛艦のアークワイテンズ級などは他の友軍艦に引き付けられておりクエーサー・ファイア級一隻の対空砲火を躱すだけだ。

 

敵艦との高度を測る計測計の数字がどんどん小さくなっていく。

 

「今だ!」

 

そう言いジョーレンは突然機体を水平に保ちその勢いのまま敵艦のシールド内部に侵入した。

 

突然の機体の急変により防衛レーザー砲がUウィングを完全に捉え切れなくなった。

 

その隙を突いたジェルマンは外付けになったイオン・ブラスターと自動攻撃タレットでレーザー砲を何基か破壊し無力化する。

 

ジョーレンもレーザー砲でクエーサー・ファイア級の船体を直接攻撃するがやはりダメージはほんの少しで致命的なものにはならない。

 

仕方なく近くのレーザー砲を破壊すると一旦クエーサー・ファイア級の船体から離脱した。

 

「クソッ!このレーザー砲じゃどうやったって船の装甲をぶち破れるわけねぇんだ!」

 

「インファイトに持ち込めば勝てるんじゃないのか?」

 

「まあそうだけど…かなり時間が掛かる…魚雷でも一発撃てればいいんだがな…予定通り艦の機能を停止させる、まずはエンジンかブリッジだ」

 

ジェルマンは頷き機体の武装の操作に集中した。

 

UウィングのSフォイルを展開し再びクエーサー・ファイア級の側を通る。

 

「このまま全火力をぶつけてブリッジを付け根ごとぶち破る」

 

「かなり無茶だぞ!」

 

「やるしかない!」

 

ジェルマンは武装全て前方に向け火力を集めた。

 

既に船体の半分以上を横切っておりそろそろだった。

 

相変わらず対空砲火は激しいがジョーレンの操縦技術により当たることはなかった。

 

そして再び機体の角度を大きく変え狙いを定めた。

 

「これでも喰らえ!」

 

「っ!」

 

イオン・ブラスターやタレット、レーザー砲が放たれブリッジやブリッジの付け根を狙った。

 

次第に火力に耐えられなくなり装甲が融解し始める。

 

やがては完全に崩れ落ちそこにレーザー砲が一発放たれ爆発を起こした。

 

その中をSフォイルを閉じたUウィングが突っ切った。

 

「エンジンも同時にと思ったがもう十分だ!後はあのフリゲートがなんとかしてくれる!」

 

ジェルマンがコックピットから急いで覗き込むと爆煙を上げるクエーサー・ファイア級を反対から来たネビュロンBが攻撃していた。

 

司令部をやられた上に何基かのレーザー砲が使用不能なクエーサー・ファイア級は反撃が出来ずなす術もなく破壊されていった。

 

『Uウィング、助かった』

 

ネビュロンBから感謝の言葉が届いた。

 

フリゲートの後方から何隻かのCR90とブラハトック級がスターファイター隊と共に現れクエーサー・ファイア級の残骸を横切り敵のレイダー級やアークワイテンズ級を数で打ち破っていた。

 

「いいってことよ、再び先行し突撃を支援する」

 

『頼んだぞ!』

 

ネビュロンBからの通信が切れジョーレンはペダルを踏みUウィングをさらに前線へと押し進んだ。

 

時々迫り来るTIEを撃破し友軍艦隊に被害が及ばないようにする。

 

帝国艦隊は新共和国艦隊の鉄壁の守りに阻まれながら時々繰り出される小艦隊、機動部隊、小機動部隊の震盪攻撃により戦列を乱され不利な状況に陥っていた。

 

Uウィングは前方の中破したゴザンティ級にレーザー砲を浴びせ一気に撃沈に追い込んだ。

 

そんなUウィングのの背後を2機のTIEインターセプターが背後を取ろうとするが即座に起動した攻撃タレットにより2機とも撃破されてしまった。

 

「流石はアクバー提督か…これだけの帝国艦隊相手にここまで優位に立っていられるなんて」

 

戦況を眺めながらジョーレンはそう呟いた。

 

ブルー中隊、ゴールド中隊、グレイ中隊、ヴァンガード中隊のような優秀なスターファイター中隊が友軍艦と共にスター・デストロイヤーを撃沈していた。

 

特にヴァンガード中隊所属のテンペランス戦闘群の戦果は絶大で迫り来る敵艦隊や敵機を次々と蹴散らしている。

 

『バスチル大尉、ジルディール中隊、こちらメイディン将軍だ』

 

コックピットの通信機が響き新共和国軍のメイディン将軍の声が聞こえた。

 

メイディン将軍は自身も戦闘中である為手短に説明を始めた。

 

『指定したポイントの敵艦に今乗船部隊が突入している。君達もこのスター・デストロイヤーに乗り込み乗船部隊を支援して欲しい』

 

センサーに移る敵艦の一隻が違う色に変化した。

 

ジョーレンは一つの問いを投げかけた。

 

「敵艦を拿捕すればいいのですか?」

 

『その通りだ、だが、不可能と確信したなら艦内システムを出来る限り破壊し脱出しろ』

 

「任せて下さい!」

 

「任務受け取りました。直ちに向かいます」

 

『頼んだぞ』

 

メイディン将軍の期待と共に通信が途切れた。

 

2人は頷き合いジョーレンは操縦桿を倒し指定された敵艦へと向かった。

 

敵艦はインペリアルⅡ級スター・デストロイヤーで親衛隊のマーキングカラーが施されている。

 

周囲をTIEではなくXウィングやAウィングが取り囲んでおり明らかに別の雰囲気を醸し出していた。

 

「あれだな」

 

「ああ…!僕はないけど敵艦への乗船の経験は?」

 

「ある、まああの頃はぶっ壊して帰ってくるだけだったがな」

 

昔を思い越しながらジョーレンはUウィングをスター・デストロイヤーへと近づけた。

 

インペリアルⅡ級は砲撃する素振りすら見せず沈黙を貫き通していた。

 

『Uウィング!乗船部隊を頼んだ!』

 

「了解、任せとけ」

 

インペリアル級の裏側に回り込み敵艦のハンガーベイへと無理やり押し入った。

 

隣を見つめればGR-75輸送船がハンガーベイに停泊しておりその周辺は大きく抉れていた。

 

敵の攻撃はほぼなくGR-75輸送船とは違いUウィングは安全に、普通に停泊する事が叶った。

 

「よし行くぞ!」

 

急いでベルトを外しジェルマンとジョーレンはブラスター・ライフルを手に取り自動的に開閉されたハッチから飛び出た。

 

まだ近くで銃声が聞こえる。

 

「さあて、仕事だ」

 

ブラスターを構え勇敢な2人はブリッジ目指して進み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

-ミッド・リム アンシオン周辺域 第十衛星-

国防軍と親衛隊の襲来、特に親衛隊の来週は衛星に駐留していたアンシオン軍を大いに動揺させた。

 

国防軍の部隊がこの衛星に侵略した時はまだ新共和国軍の残党と戦闘中であった時だ。

 

既に衛星の半分は支配していたがここであの連中に戦果を横取りされてしまっては敵わない。

 

しかも敵はあの第三帝国の国防軍だ。

 

どれ程の戦力があるかも分からない。

 

だが最終的に新共和国軍を押し出し衛星の八割を支配した時偵察部隊の報告が入った。

 

敵は二個連隊程度の戦力でアンシオン軍が展開した戦力には遠く及ばなかった。

 

その為衛星に駐留するアンシオン軍は司令部の命令に従い敵を抑えつつ時々小競り合いを行う程度だった。

 

しかし彼らが現れた。

 

親衛隊の到来により攻撃に出た三個歩兵中隊と二個歩兵大隊が予想外の損害を受けた。

 

敵は一個旅団程で兵の練度も、指揮官達の能力も高かった。

 

その為司令部は遂に総攻撃を命じてきたのだ。

 

現在アンシオンに設置されたプレハブ式司令基地では作戦が練られていた。

 

「偵察隊の報告によれば敵軍は何隻かのクルーザーを地上に降着させ司令部を設置しているようです」

 

「既に機甲部隊がポイントH-1の山岳地点から密かに前哨補給基地に向け前進中であるとも報告を受けています」

 

各師団の参謀将校が師団長やスターファイター隊の司令官達に報告する。

 

ホロテーブルには周辺の地形図と敵の様子が精細に表されていた。

 

「敵は恐らくこちらの発見に気づいていません。今からでも攻撃を仕掛けて足を止めるべきです」

 

将校の1人がそう進言した。

 

「確かに…このままでは補給基地が攻撃されてしまう。“()()”とコーノス少佐のスターファイター大隊で奇襲攻撃を仕掛ければいけるのではないか?」

 

第十師団の師団長ヴァルギー大佐はタイタン3と大隊長(ウィングリーダー)のコーノス少佐に提案した。

 

第十一師団の師団長バースク大佐も第八師団の師団長であり衛星攻撃軍司令官のファルコフ准将も小さくだが頷き賛同している。

 

そこでタイタン3は司令官達に進言した。

 

「出来ないことはありませんが恐らく敵も相当の対空機を用意しているでしょう。かなり厳しい戦いになると予測出来ますが」

 

「やるしかあるまい…ここで敵の機甲戦力を叩けば一気に攻撃力を奪える」

 

「確認された敵軍の機甲戦力はほぼ全軍だそうです。殲滅までは行かなくとも半分でも撃破出来れば大きな損失を与えられるでしょう」

 

「それに別働隊がいた場合、我々はこれ以上対処が出来ませんが」

 

「男爵と私で部隊を二つに分けましょう。そうすれば別働隊にも対処出来るはずです」

 

タイタン3は頷きホロテーブルに自軍のスターファイター隊を表した。

 

「なら私が教導した四個中隊を率いて攻撃を、少佐はタイタン中隊含めた我々の中隊を含めた五個中隊を率いて待機をでよろしいですね」

 

「ならばタイタン中隊も貴方の部隊に入れて…」

 

「いや、いざ敵部隊が現れた時タイタン中隊がいれば敵が倍以上いても退却までは持ち込めるはずです。私も教導したあのパイロット達の最終的な腕も見ておきたいですし」

 

「わかりました…」

 

コーノス少佐は渋々だが納得し軍帽を被り直した。

 

全員の表情を見てファルコフ准将が決断を下す。

 

「よし、では男爵、少佐、敵の機甲部隊に対し奇襲攻撃を命じる。徹底的に打撃を与えろ」

 

「了解!」

 

タイタン3とコーノス少佐は敬礼し容易に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

-アウター・リム・テリトリー 帝国領 惑星エリアドゥ-

エグゼクター級スター・ドレッドノート“アナイアレイター”の艦内でグランドモフと大将軍(Grand General)は顔を合わせた。

 

グランドモフヘルムート・ターキンの入室と共にブリッジの下士官兵を含めた全ての将兵が敬礼し彼を出迎えた。

 

それは艦長もヴィアーズ大将軍も一緒だった。

 

アナイアレイター”の隣にはインペリアルⅡ級に改修された“エグゼキュートリクス”と“ターキンズ・ウィル”が同じように航行している。

 

しかし船の大きさが全く違い同じ旗艦クラスの艦船とは到底見受けられなかった。

 

「まさか直接南方戦線の指揮まで取るとは…」

 

「前線の指揮官がやはり私の性分なので」

 

ヘルムートの驚きにヴィアーズ大将軍はそう答えた。

 

若干冗談を含めたつもりなのだが彼の表出る生真面目さが災いして伝わりにくかった。

 

「流石です。この旗艦だって立派なものだ」

 

ヘルムートは“アナイアレイター”のブリッジを見渡しながらそう呟いた。

 

実際にはインペリアル級や他のスター・デストロイヤーとほとんど同じ作りだがやはり船体の大きさや艦種が変わってくると違って見えるだろう。

 

事実インペリアル級や他の艦船よりもエグゼクター級のブリッジは初期から艦隊の旗艦をイメージして作られているので一部機能が強化されている。

 

「私の大伯父はスター・ドレッドノートよりもバトル・ステーションの方に執着していた。時折大伯父が描いていた理想を『無意味だ』と貶される事もあるが」

 

ヘルムートは自重気味に笑い数名の部下と共にブリッジの奥へと歩いた。

 

既にブリッジの士官や下士官兵達は通常の任務に戻っており無言の雰囲気が醸し出されている。

 

ヴィアーズ大将軍もヘルムートの背後に付いた。

 

彼は悲しげにブリッジのビューボートを見つめた。

 

「大伯父は自らの夢と共に潰えてしまったが大伯父には確かな理想があったのだ。単なる力の誇示だけではなく確かな理想が。死んでしまった今では見当もつかないが」

 

ヘルムートはそう物悲しそうに大伯父のことを考えた。

 

親族であっても見抜けないウィルハフ・ターキンという人物の一面が分かるだろう。

 

そしてその一族の頭領を十代で担わざる負えないヘルムートの心労もまた垣間見える。

 

彼にとってウィルハフ・ターキンは偉大で大き過ぎた。

 

あの動乱の中でエリアドゥと大セスウェナの領土を守り発展させただけでも十分大きな功績だ。

 

だがどこかで“()()()()()()()()()()”の名と自身を比べてしまっていた。

 

普段は包み隠していてもどこかで出てしまいそうになる。

 

「それでエリアドゥへは何の用だ?」

 

ヘルムートは話を変えヴィアーズ大将軍に尋ねた。

 

態々グランドモフに謁見する為にスター・ドレッドノートとスター・デストロイヤーの艦隊を率いてきたわけではないだろう。

 

特にヴィアーズ大将軍のような将校が見栄を張る為にそんな事をするはずがない。

 

「総統閣下と帝国軍統合本部、地上軍参謀本部の命令でこのエリアドゥを第一司令部とすることが決定しました」

 

「なるほど…分かった、こちらにも用意がある。少し協力願おう。地上に戻るぞ」

 

「はい」

 

ヴィアーズ大将軍に敬礼を送りヘルムートは部下と共に“アナイアレイター”のブリッジを後にした。

 

大将軍は一向を敬礼で見送ると振り返りブリッジの方を見つめた。

 

本来はここにピエット元帥やモントフェラット提督が隣にいてくれたら嬉しいのだが。

 

やはり我々は失いすぎたのだ。

 

どこへ行っても、何を得ても取り戻せないものを。

 

「我々はこの先どこへ向かうのだろうか…」

 

ブリッジの先には広大な宇宙が広がっている。

 

かつては我々の領土だった場所もあるのだろう。

 

我々は今のままそれら全てを取り返そうと戦い続けるのだろうか。

 

それともさらにその先に進むのだろうか。

 

我々は永久に迷い続ける迷路に入ってしまったのではないだろうか。

 

だが、それでも戦うしかない。

 

それが我々が出来る唯一の弔いで未来を作る方法だろうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「各機、周辺の警戒を怠るな。敵はいつきてもおかしくない」

 

ハイネクロイツ中佐の声が中隊全ての機体に聞こえた。

 

彼が与えられた“TIE/INアドバンストx2インターセプター”は部隊の先頭を行き敵を見張り続ける。

 

もともと実験機系列のアドバンスト機は偏向シールドやハイパードライブが設置され通常期よりも遥かに性能が良かった。

 

この機体もTIEインターセプターをベースにかつて開発されたTIEアドバンストx2スターファイターのデータを組み込んだ強力な機体だ。

 

通常インターセプターの火力と機動力に加え偏向シールド、ハイパードライブと言ったものが取り付けられており従来機より遥かに性能がいい。

 

元々はもっと早くに彼に贈呈されるはずだったのだがウェイランド戦や、ラクサス戦で遅れに遅れ今ようやくハイネクロイツ中佐の手に渡った。

 

下を見つめればウォーカーやホバータンクが列を組んで敵陣へと密かに進軍中である。

 

非常時に備え護衛のスターファイター隊が展開され隊列の中にもAT-AAやAT-MPが等間隔で配置されている。

 

この狭い場所でスターフィアターの奇襲にあったら逃げ場もなく大損害を喰らうことになる。

 

『中佐……本当に敵は来るのでしょうか…』

 

部下の1人が不安そうな声音でハイネクロイツ中佐に尋ねた。

 

ジークハルトもアデルハイン中佐も、国防軍の将校達も敵の攻撃があると予測してこの作戦を立てた。

 

「それは祈るしかないな。だが逆に敵を阻む方法はいくらでもある、精一杯を尽くせ」

 

『はい…』

 

部下の不安はまだ取り除けていないようだったがそれでも仕方ない。

 

しかし運命は残酷な事に彼の不安を煽るような警報音と報告が響いた。

 

『中佐、敵機を発見しました!右前方よりTIEと思われるスターファイターが多数接近!』

 

別のTIEパイロットが報告し直後ハイネクロイツ中佐の機体のレーダーも警報音を鳴らし始めた。

 

物体の接近を示す点が一つだけでなく大量に現れ始めた。

 

いよいよ敵のお出ましだ。

 

「各機戦闘開始だ!地上部隊も戦闘準備を…!」

 

『やられた!』

 

『そんなバカな!』

 

2名のパイロットの絶叫が通信機越しに響き直後二つの爆発音が空に広がった。

 

全てのパイロットが、その爆発を見た兵士達が唖然としていた。

 

一体何が起こったのだと。

 

その原因を正確に認識していたのは部隊朝のハイネクロイツ中佐だけだった。

 

だからこそ彼の驚きは並のものではなかった。

 

「バカな…レーダーに入ったとはいえまだ射程圏内では……っ!攻撃来るぞ!対空防御急げ!」

 

中佐は急いで叫び地上部隊に防御を行うよう促した。

 

しかし一歩遅かった。

 

刹那、風を切る音と共に物体が高速で進み二門のレーザー砲を何発か連射した。

 

レーザーの砲弾は大きく地面を爆発で抉り進軍中の二台のAT-STを一撃で撃破した。

 

急いでAT-MPマークⅢが対空ミサイルを放つがひらりと躱され逆に反転したその物体が再びレーザー砲でAT-MTマークⅢを返り討ちにした。

 

あまりに鮮やかな攻撃で地上の対空部隊もTIE部隊も反撃が出来なかった。

 

「チッ!やってくれたなこの!!」

 

ハイネクロイツ中佐が機体のペダルを踏み込み操縦桿のトリガーを引く。

 

何発かのレーザー弾と共に彼のTIEアドバンストx2は急進した敵機を攻撃した。

 

回避されはしたがこれ以上敵機を自由に攻撃させることはなかった。

 

「“v()1()”なんて物珍しい機体に乗りやがって!性能差と腕前で堕としてやるよ!」

 

ハイネクロイツ中佐は目の前にドンと佇んでいるように見える敵の機体、“TIEアドバンストv1”を睨んでそう当たり散らした。

 

TIEアドバンストv1はハイネクロイツ中佐が乗り込むTIEアドバンストx2と同種の系統で別名TIEアドバンスト・プロトタイプとも呼ばれるアドバンストシリーズのプロトタイプ機であった。

 

ハイパードライブやシールドが搭載され火器も通常きよりも性能のいいものを取り付けられている。

 

だがこれに乗り込むパイロット、タイタン3はこの機体をあまり好いてはいなかった。

 

この機体を見ると嫌な人物と出来事を思い出してしまう。

 

まだ彼がタイタン3ではなくヘリックス中隊と呼ばれる中隊に属していた時の事を。

 

この機体に乗り込みそして裏切ったこの手自ら打ち倒したその中隊長を。

 

機体に恨みはないがどうしても払拭出来ない過去がある。

 

それはこの手自らで払い除けねばならないのだろうか。

 

ならばここで戦いで少しでも晴らすべきだ。

 

「全隊、戦闘開始だ!」

 

号令と共に後続のの中隊が出現した。

 

戦闘の始まりだ。

 

何機かのTIEボマーが颯爽とプロトン魚雷をAT-ATに直撃させ二台のAT-ATを破壊した。

 

すでに親衛隊と国防軍側はかなりの損害を喰らっている。

 

「チッ!やらせるかよ!」

 

ハイネクロイツ中佐は急いで機体を反転させ再びウォーカー部隊を狙うTIEボマーを2機撃墜し逆にハイネクロイツ中佐のTIEアドバンストx3を攻撃しようとしたTIEファイターをすぐさま返り討ちにする。

 

その勢いのまま迫り来る敵軍に単機で突っ込み放火を掻い潜って3機ほどのTIEインターセプターやTIEファイターを撃破した。

 

だが彼はその一瞬の隙を突いて来た。

 

突如悲鳴のようなエンジン音が聞こえ独特のレーザー掃射音がハイネクロイツ中佐のTIEアドバンストx2の背後から聞こえた。

 

中佐が「まずい!」とコックピットで叫び急いで旋回するよりも前に二、三発のレーザー弾が直撃し機体に大きな振動が響いた。

 

幸い偏向シールドで全てが防がれ旋回しなんとか反撃の一撃を掠った程度だが与えられた。

 

しかし偏向シールドがなければ確実に撃墜されていただろう。

 

「チッ!全隊!出来る限りの敵機を抑えろ!俺はこの手練れとその辺の2、3機を抑えておく!」

 

『了解!』

 

既に友軍のスターファイター隊と敵軍のスターファイター隊が衝突し戦闘が始まっている。

 

しかし物量的にはこちらの方が多いのにも関わらず時軍のスターファイター隊は大きく苦戦していた。

 

特に敵の編隊による連携攻撃や多種多様なスターファイターの配備による多角的な攻撃は親衛隊のTIE部隊を大きく苦しめている。

 

「こいつら…!練度がその辺のパイロットの比じゃねぇ…!新共和国どころか並のTIEパイロットよりもだ!まさかこんな連中がいるなんて…!」

 

敵の認識の甘さに後悔を示しつつも敵の攻撃を避けるハイネクロイツ中佐の前に2機のTIEブルートが現れた。

 

親衛隊のマーキングが施されておらず敵機という事が分かる。

 

2機のTIEブルートは全火力をTIEアドバンストx3にぶつけて来た。

 

しかもこれを狙ってか背後を取り続けるTIEアドバンストv1も同じようにレーザー砲を発射する。

 

ハイネクロイツ中佐はヘルメットの中で顔を顰めつつ操縦桿を横に倒し機体を回転させレーザー弾を回避した。

 

回転しながらトリガーを引きTIEブルート2機を撃破する。

 

「全対空兵器で対空防御を!俺たちに釘付けで流石に対空ミサイルまでは……っ!」

 

そこでハイネクロイツ中佐はとんでもない光景を目にした。

 

AT-MPマークⅢから放たれた対空ミサイルが敵機に直撃する事なくふにゃふにゃと妙な軌道を描きその辺に墜落してしまったではないか。

 

「ドラウス連隊長!対空攻撃が全然意味を成してないぞ!ミサイルが一発も当たってない!」

 

ハイネクロイツ中佐は国防軍のドラウス中佐を呼びつけた。

 

しかしドラウス中佐は焦った声音でハイネクロイツ中佐に返してきた。

 

『妨害されているのだ!強力なジャマーが広範囲に展開されていてミサイルの軌道が妨害される!レーザー兵器で応戦する!』

 

「妨害ジャマーだと…一体どこから……そうかあれか!」

 

ハイネクロイツ中佐は戦闘に混じって支援行動を行う敵のTIEリーパーを睨んだ。

 

あの機体からきっと強力なジャマーが張り巡らされているのだろう。

 

なんと巧妙な敵だ、早く倒さねばと照準器をTIEリーパーに向ける。

 

しかし先程の仲間のお返しと言わんばかりかハイネクロイツ中佐よりも早くTIEアドバンストv1が彼の友軍機を狙う親衛隊のTIEインターセプターの編隊を僅かな時間で殲滅した。

 

あまりの瞬殺ぶりにハイネクロイツ中佐はあの敵機に、タイタン3に絶句した。

 

だが怯えて恐れ慄くだけが彼ではない。

 

むしろ自然と口角が上がり奴を“()()()”だと血が認識してしまう。

 

本来なら敵機に背後を取られたまま友軍を指揮しなるべく多くの敵機を屠りたかったがもはや手遅れだ。

 

せいぜい最後の命令を出して自分はただのパイロットに成り下がるとしよう。

 

「全機、TIEリーパーからミサイルの妨害ジャマーが展開されている。出来る限り破壊して地上部隊の攻撃を通すようにしろ。俺はコイツを抑えて潰す!」

 

それ以降この戦闘でハイネクロイツ中佐が主だった命令を出すことはほとんどなかった。

 

タイタン3は再び敵機に一撃を入れようとTIEアドバンストx2に狙いを定める。

 

だが狙った敵機は忽然と姿を消した。

 

「一体どこに…っ!!」

 

微かにレーザーの音が聞こえタイタン3はギリギリのところで操縦桿を左に曲げギリギリのところで回避しようとした。

 

しかし最後の二発が回避しきれず、一発は擦り一発は偏向シールドの展開部分に直撃した。

 

こちらもシールドがなければパネルの付いた羽根が無理やりレーザー砲によってもがれていただろう。

 

危ういところだった。

 

されどタイタン3が一息つく間も無く敵機のTIEアドバンストx2は間髪入れずに攻撃を打ち込んでくる。

 

左右と攻撃を回避し旋回して反撃の緒を掴もうとするが敵機がピッタリ背後にくっ付き離れられない。

 

先程まで追う側だったタイタン3が一気に追われる側となってしまった。

 

感じるはずのないプレッシャーが背後に付くTIEアドバンストx2から感じる。

 

まるで鬼、将又は軍神と言ったところだろうか。

 

それほどの威圧感がレーザーの攻撃と共に醸し出されていた。

 

だが、だから散って怯んで怖気ずくタイタン3ではない。

 

むしろこうでなくてはと内心思っていた。

 

自ら教導した部隊の成果を見たいがもはやそれどころではない。

 

この相手と戦い倒さねば。

 

突如TIEアドバンストv1が反転しレーザー砲を放った。

 

ハイネクロイツ中佐は急いで機体を回転し回避させ一旦距離を取って両者は真正面からの攻撃となった。

 

互いにレーザー砲を撃ち合い、回避し真っ直ぐ前に進む。

 

やがて両機は一発も相手に攻撃を与える事なく回避し反転した。

 

そして再びファイター同士による撃ち合いを始める。

 

彼らの戦いは当分終わりそうになかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠く離れたモン・カラの地では今もなお戦いが繰り広げられている。

 

主力艦が撃ち合い、スターファイターが飛び交い命を散らす。

 

僅かな爆発の輝きが一つ消え一つ増える。

 

この地においては命の重さなどブラスター・ピストル一丁より下回るだろう。

 

銃口から放たれる弾丸に人は皆無力だ。

 

「敵兵が侵入してきたぞ!」

 

「応援を要請しろ!兵員がっ……!」

 

1人のトルーパーの首が突然折られ床にそのままばたりと斃れ込んだ。

 

もう1人のトルーパーも急いでブラスター・ライフルをこちらに向けるがナイフを投擲されアーマーのない首元に直撃し苦しみながら倒れる。

 

「助けに来たぞ」

 

もう1人のトルーパーの亡骸を引きずりながらジョーレンが通路から現れた。

 

ブラスター・ライフルを構えながらジェルマンの奥の方から姿を表す。

 

「助かりました」

 

防戦していた新共和国軍の兵士達がぞろぞろと姿を現す。

 

「我々はこのままブリッジとサブブリッジとドロイドやオートシステムのメイン室に向かいます」

 

「ならブリッジとサブは頼む。俺たちはメイン室に向かう」

 

「上手くいけばシステムを一部でも制御して支援する事が出来るかも知れません」

 

「わかりました。では一個分隊を」

 

「いや、貴重な乗船部隊の戦力を分ける訳にはいかない。我々は2人で行く」

 

「ですが…!」

 

「大丈夫だ中尉、我々を信じてくれ。お前達も、しっかりやれよ」

 

部隊長の中尉を宥めジョーレンはA300ブラスター・ライフルを構えジェルマンと共に歩き始めた。

 

中尉もまだ不満げな表情を浮かべていたが2人の様子を見て渋々納得した。

 

それにあまり兵員を割きたくないという理由もあったのだろう。

 

「メイン室はこのまま行ったところです。大尉、お気をつけてくださいね」

 

「ああ、任せとけ。行くぞジェルマン」

 

「ああ…!」

 

ジェルマンは中尉に軽く敬礼を送り2人は駆け足で中尉に言われた通りの場所に向かった。

 

敵艦の中だというのにあまり敵兵が出てこない。

 

それどころか非戦闘員の姿もほとんど見なかった。

 

その代わり度々自動防衛システムが攻撃してきた。

 

「伏せろ!」

 

ジョーレンに頭を下げられ地面に伏せられた。

 

直後ブラスター弾が何発か放たれ危うく直撃する所だった。

 

ジョーレンは急いでA300で反撃し自動防衛タレットを破壊した。

 

「急ぐぞ!」

 

「ああ!」

 

ジョーレンの手に捕まりジェルマンは立ち上がった。

 

2人は走り出し通路の路地を曲がろうとする。

 

しかしブラスターの弾丸がジョーレンを掠めかけた。

 

なんとか彼は反対側に渡りA300で応戦する。

 

ジェルマンもA180のブラスター・ライフルモードで敵を攻撃した。

 

「これ以上侵入を許すな!撃て!」

 

敵兵はE-11やSE-14Cでジェルマンとジョーレンの侵入を防ごうとバリケードを作り防戦する。

 

ストームトルーパーや宇宙軍トルーパー、士官が混じっており不思議な防衛線だった。

 

「ここで足止めを食うわけにはいかん!」

 

「分かってる!」

 

精密な射撃で2人の敵兵を撃ち倒すとジョーレンはインパクトグレネードを起動し敵へ投げつけた。

 

サーマル・デトネーターほどの威力はないが触れてすぐ爆発する為使い勝手が良い。

 

グレネードは敵のバリケードと敵兵を1人巻き込んで爆発し周りに少量の煙幕を巻き起こした。

 

その隙にジェルマンがA180で敵兵をまとめて打ち倒す。

 

すぐにジョーレンも加勢し体制の崩れた敵兵はあったと言う間に倒された。

 

「70点ってところだな。まだ頑張れる」

 

ジェルマンの射撃の腕を冗談まじりに評価し彼の肩を叩いた。

 

「そんな事してないで…行くぞ」

 

「ああ」

 

ブラスター・ライフルを構え直しジェルマンとジョーレンは再び進み始めた。

 

また敵兵やタレット、武装したドロイドが防戦に現れたがすぐに蹴散らされてしまった。

 

「しっかし、的あ思いの外少ないな。もっと雪崩のように現れるはずなんだがな」

 

ジョーレンは再びもう1人の宇宙軍トルーパーを撃ち殺すとそうぼやいた。

 

「艦内が広いから応援が間に合わないんじゃないのか?」

 

ジェルマンはそれらしく答える。

 

インペリアル級は全長1,600メートルの大型主力艦だ。

 

当然その分人員も多く搭載されているのだが一部を集中的に攻撃されれば他の場所から増援部隊が遅れる事もあるだろう。

 

だがジョーレンは首を振った。

 

「だとしてもだ。仮に増援が間に合わないとしても守備兵が少なすぎる。まるで幽霊船みたいだよ」

 

そうぼやきながら背後から現れるストームトルーパー2名を即座に撃ち殺した。

 

あまりの余裕さに全く危機感や瀬徳力を感じられなかった。

 

再び走り出しメイン室を目指す。

 

だがやはり敵兵の数は少なくジョーレン1人でも余裕で蹴散らせる程度の人数しか現れなかった。

 

最も敵の攻撃が激しかったのなんて道中のストームトルーパーと宇宙軍トルーパーのバリケードくらいだろう。

 

「なんだっ!グワッ!!」

 

「隔壁をっ!ヌッ!!」

 

また2人のトルーパーが打ち倒されジョーレンは室内のドアの開閉ボタンを乱暴に叩いた。

 

ドアが開き室内の技術士官や衛兵や将校がブラスター・ピストルの弾丸を発射し攻撃してきた。

 

ドアの扉や遮蔽物を盾としながらジョーレンは反撃を加え素早く敵兵を始末していく。

 

所詮広報要因でしかない室内の敵を掃討するのに特殊部隊のエリートであるジョーレンがかかった時間は一分もなかった。

 

「クリア、急げ」

 

ジェルマンが専門のタブレットを取り出しソケットに繋げる。

 

「艦内システムに…侵入、まずは外の武装よりも…」

 

独り言を放ちながらタブレットをタップし次々とインペリアル級のシステムのセキュリティを突破して行く。

 

この程度ならストライン中将から直接教わった帝国軍のシステムの基本だ。

 

それに恐らくは親衛隊だけなのだろうがハッキングに対する妨害が少なくとんとん拍子に制圧が進んで行った。

 

本来なら彼がソケットに端末を差し込んだ時点で技術士官の1人が気付き妨害してくるのだろうが今回は全くそう言う事がなかった。

 

「隔壁システム、自動防衛システム、艦内監視システム掌握…!防衛システムを一時停止し監視システムも停止…」

 

「凄まじく速いな相変わらず…」

 

次々と艦内システムを制圧化に入れるジェルまんをジョーレンは彼を守りながら感嘆の声を上げた。

 

技術的なことは一応習ってはいるしやって来たがジェルマンには負ける。

 

なんなら今まで見てきた上官や部下たちの中でもジェルマンの右に出るものはいないだろう。

 

「システムの36%を掌握…いいぞ……!このまま行けば…っ!…いや…違う…」

 

「どうしたんだ?」

 

ジョーレンが何かを悟り打ち直すジェルマンに尋ねたが今の彼は言葉を返せる状態ではなかった。

 

「そうだ……!そうだよ…!何かがおかしかったんだ…!」

 

ジェルマンは気づいてしまったのだ。

 

いくらなんでも主力艦クラスのスター・デストロイヤーがこんな短時間で乗っ取れるはずがない。

 

しかも最も重要な艦内のありとあらゆる警備システムがだ。

 

今だってターボレーザー砲などの武装システムや偏向シールドなどのシステムが最も簡単に制圧出来た。

 

それにジョーレンはこの艦の人が少ないとも言っていた。

 

確かにその通りだ。

 

この艦は、この親衛隊のインペリアルⅡ級スター・デストロイヤーはドロイドやオートメーション・システムに依存し過ぎている。

 

かつての帝国軍ではあり得ないほどに。

 

恐らくはもう以前のように大量の人員を一隻の主力艦に詰め込むことなど不可能なのだろう。

 

特に親衛隊のような組織は。

 

だからこそ警備などもなるべくオートメーション・システムやドロイドに任せ数を優先して揃えている。

 

そうでもしないとこの短期間にあれだけの戦力を揃えられないのだろう。

 

第三帝国は、自分達が思っている以上に限界だったのだ。

 

それが表面に見えていないだけで彼らの敗戦の傷と限界の証は確かにまだ残り垣間見えていた。

 

「終わった…」

 

ジェルマンはタブレットから手を離し風と一息付いた。

 

その雰囲気と言葉の意味を勘違いしたのかジョーレンは焦って問い詰めてきた。

 

「終わったって…まさか制圧に失敗したのか!?」

 

「違う違う、終わったんだよ。正真正銘」

 

ジェルマンは立ち上がりふと天井を見つめた。

 

「このスター・デストロイヤーはもう、“()()()()()()”」

 

彼はもう、このインペリアルⅡ級を乗っ取り手中に収めてしまったのだ。

 

ジェルマンにとってこの程度の代物、朝飯前と言ったところだろう。

 

警備も薄く(と言っても殆どジョーレンが蹴散らしてくれたが)、ハッキングも容易いこの艦はすぐに乗っ取れた。

 

それを将校にジェルマンはタブレットに向けて命令する。

 

「メインシステム、全砲塔を周辺の帝国艦に向け砲撃開始」

 

ジェルマンの命令を聞いたメインシステムが強制的に主砲の八連ターボレーザー砲やターボレーザー砲を敵艦に向け砲撃を開始した。

 

これにより帝国艦隊は一時的に混乱に陥り更に新共和国の進撃を推し進めたのだが艦内にいる彼らが知ったことではない。

 

「我々も一杯一杯で限界だったが…彼ら(帝国)の方がもう限界だったんだな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「堕ちろ!」

 

タイタン3がコックピットで叫びトリガーを引くが敵機のTIEアドバンストx2にはまるで当たらない。

 

しがみつくように敵機の背後を取り当たらないとしてもレーザー砲を撃ち続けるのだがやがてその立場は変わった。

 

山岳地帯のギリギリを飛びハイネクロイツ中佐のTIEアドバンストx2が物凄い機動力でタイタン3の背後を奪った。

 

今度は彼がTIEアドバンストv1にレーザー砲を浴びせかける。

 

タイタン3もハイネクロイツ中佐も出来れば早急にこの敵を排除し部隊の方に戻りたいのだがお互いの腕前とプレッシャーが邪魔して不可能になっていた。

 

機体性能的にはTIEアドバンストx2の方が高性能なのだがタイタン3の腕前と経験によりなんとかカバーされている。

 

2人の戦闘は既に異次元に近く並の機体に乗り込んだパイロットでは戦いの合間に入る事が出来ない。

 

「チッ!このアドバンストじゃ決め手に欠ける!」

 

タイタン3はコックピットの中でそう吐き捨てた。

 

敵機に直撃を与えてもTIEアドバンストv1の火力では敵の偏向シールドを打ち破るにはまだ足りなかった。

 

しかしそれは相手側のハイネクロイツ中佐も同じで両者共に機体性能に阻まれ決定的な一撃を挙げられずにいた。

 

それは部隊同士の戦いも同じでアンシオン軍は国防軍と親衛隊の機甲部隊にある程度の損害を与えられてはいるがそれでもまだ許容の範囲内で壊滅的ではない。

 

かといって親衛隊のスターファイター大隊もアンシオン軍のスターファイター隊に大きな被害を与えられずにいた。

 

ある種の拮抗状態が生み出されているのだ。

 

なんとかせねばという危機感がさらに両者の底力を上げ再び拮抗状態となってしまう。

 

「なんとか奴だけでも!」

 

ハイネクロイツ中佐は焦りを見せながら再び敵機に向け攻撃を行った。

 

レーザー砲の掃射は最も簡単に回避されるか偏向シールドで弾かれるかのどちらかだ。

 

戦いに終わりは全く見えず徐々に精神も体力も疲弊し始めている。

 

だがそれでも闘志は煉獄のように燃え滾っており戦いを続行した。

 

既に彼らのドックファイトは最初の一撃から二、三時間は経過している。

 

それでもなお彼らは衰えることのない操縦技術で相手を苦戦させ戦いを長引かせていた。

 

再びTIEアドバンストx2がレーザー砲を掃射し敵機に当てようとするが回避され再び機体の背後を取られてしまった。

 

チャンスを掴んだタイタン3がしっかりと狙いを定めトリガーを引くが躱され一瞬だけ彼の視界から消え去った。

 

「どこだっ!そこかっ!」

 

試験的に導入されたヘルメットのヘッドマウントディスプレイ機能のおかげですぐに敵機を発見出来た。

 

即座に機体を旋回させ再び真正面からの戦闘に挑んだ。

 

両機とも前回の反省を活かしてなるべく一箇所に狙いを定めるようにしていた。

 

照準器のターゲットが定まり電子音が彼らに伝える。

 

だがギリギリまで接近し一撃を叩き込まないとダメージを与えられない。

 

出なければすぐに回避されてしまう。

 

2人とも、操縦技術だけでなく偏向シールドの集積技術も上手い為ただ攻撃を与えるだけでは一箇所にシールドを集中しすぐ防いでしまうのだ。

 

2機のTIEアドバンストの距離は徐々に縮まり冷ややかで鋭い緊張が両者を襲う。

 

軽く息を吐きハイネクロイツ中佐とタイタン3はほぼ同時に引き金を引いた。

 

チャージされた出力の高いレーザー砲が一斉に一箇所を集中的に攻撃する。

 

偏向シールドが耐えきれずに破られ、レーザー砲が装甲の薄いTIEに襲い掛かる。

 

何発かが両機に擦り爆発を起こし炎幕を上げる。

 

限界を悟った両者は悔しがりながら一旦離脱し火花が巻き散るコックピットの操縦計を操作し始めた。

 

ダメージコントロールを行い機体の被害を最小限に抑える。

 

幸いにもコックピット内の火花はすぐに収まりパイロット2人は無事だった。

 

機体の破損箇所はもう直らないがまだ飛べるし戦闘は続行出来る。

 

偏向シールドを即座に回復させ再びTIEアドバンスト同士の決戦に挑もうとした。

 

だが両者ともある通信によりそれは阻まれた。

 

『少佐!友軍の第二前哨基地が敵の奇襲を受け陥落!現在、敵のAT-AT部隊とスターファイター隊が中央司令部に向けて進軍中です!』

 

その報告はタイタン3を大いに驚かせた。

 

「なんだと!?敵の戦力はどうなっている!?」

 

『敵戦力は歩兵二個連隊とAT-AT一個中隊、一個スターファイター大隊です!現在コーノス少佐とグレイ上級大尉が敵部隊を抑えていますが長くは持ちません!どうか救援を!』

 

「ではこれだけの部隊は全て囮なのか……?」

 

スターファイター隊はともかく地上部隊は明らかに前哨基地を陥落させた部隊は現在戦闘している敵の地上部隊より少ないだろう。

 

これだけの機甲部隊を全て囮にするというのか、一体敵の司令官は何者なのだ。

 

だがその結果敵に一つ勝利を許してしまった。

 

「チッ!了解した…!全機!友軍の基地が陥落した!これ以上損害を出さない為に一旦退却し防衛線を展開する!全隊退却だ!!」

 

こんな結果で戦いが終わってしまうとは。

 

戦闘に勝利する以前に最初から負けていたのか。

 

だがまだ確実な勝利ではない。

 

すぐに巻き返せる。

 

この戦いは一つ貸しにしておくぞ。

 

タイタン3は撤退する友軍機を追撃すらしようとしない敵のTIEアドバンストx2を睨み機体を反転させた。

 

敵機が逃げていくのをハイネクロイツ中佐はただ見守っていた。

 

追撃すればきっと死に物狂いのエリートパイロット達によって少なからず損害を食らうだろう。

 

作戦は成功したのだ、これ以上の戦闘は無意味だった。

 

中佐自身がどれだけ戦いたいと願っても。

 

「地上部隊の損害は」

 

ハイネクロイツ中佐はドラウス中佐に聞いた。

 

上空から見下ろしただけでも複数のウォーカーやタンクが破壊され残骸が散らばっている。

 

『手痛い損害だが少なくとも許容範囲内だ。スターファイター隊がいなかったら壊滅していただろう』

 

「シュタンデリス隊は作戦に成功したらしい。我々もこのまま合流地点まで向かいたいのだが行けるか?」

 

『ああ…!部隊を再編成する』

 

通信が途切れ中佐は肩を下ろし大きく息を吐いた。

 

生き残れた、それ以上に逃がしてしまったという戦いの喪失感の方が大きい。

 

出来る事ならもう一度戦いたいがそれは上官のジークハルト次第といったところだろう。

 

「味方なら頼もしかったのだろうな……だが敵だからこそ」

 

心が躍る。

 

 

 

 

 

 

 

「ほんっとうに心が躍りますわね!」

 

近くの山から戦闘を見つめていたクラリッサはそう感想を大きな声で言い放った。

 

遠くと言ってもスターファイターが肉眼でも見れる距離で最悪流れ弾が飛んでくる距離なのだがそんな事お構いなしだ。

 

「しかしあれだけの大部隊を全て囮に使うとは。敵の司令官は相当の人物なのでしょうね」

 

「ええ、でもそうでなくては。我々がいずれ戦うかもしれない相手ですもの、それくらいの人材がいないと楽しみがありませんわ」

 

マルスの独り言にクラリッサはそう喜びを交えて付け加えた。

 

「戦いで果てるつもりも負けるつもりもありませんが、やはりこれくらい強大でなくては。私達が今こうして準備している意味がありませんもの」

 

ハット・スペースにその周辺域の帝国軍全軍を接収し今日も明日もやがてくる敵の為と備え続けてきた。

 

まさかこんな早く現れるとは思わなかったがそれでもいい。

 

戦いの享楽はほんの一瞬で消え後に残るのは残酷な絶望と虚無だけだがその一瞬の刺激を時に人は求めるのだ。

 

クラリッサが、親衛隊の彼らがそうであるように。

 

残党をかき集め、残党を再編成し、残党を指揮し、残党を教導し、残党と戦い、残党と手を組み昔の姿に戻ろうとする。

 

それが今の銀河の、帝国だ。

 

「ですがこうなってはこの衛星、お嬢様の仰った通り放棄するでしょう。我々も帰りの支度をしなければなりませんね」

 

「全く…だから最初から見栄を張らず衛星なんて捨てろと申したのに……まあいいですわ。折角ですし指揮を取らせていただきましょうか」

 

クラリッサは微笑を浮かべたまま近くに停泊していたスピーダーに乗り込んだ。

 

隣には当然のようにマルスが乗り込んでいる。

 

「誰が相手でも、負けませんわよ」

 

スピーダーが動き出し洗浄を後にした。

 

ジークハルト達はまだ知らない。

 

これから彼らが少しの間でも相手をする敵の指揮官は、辺境域で一二を争う程の強敵だという事を。

 

クラリッサ・ヤルバ・パイクのとても刺激的な退却戦が始まろうとしていた。

 

 

 

つづく




私 だ

何気に一週間一回投稿をしちゃってるんですがEitoku Inobeにそんなkん常はなくそう遠くないうちに全く投稿されなくなると思うのでご注意ください()


ローリング「それはそうと私の出番は?このままじゃ原作通り地味な大将軍のままなんだが」
わし「そこになかったらないですね」
ラックス「(無言のドヤ顔)」

ローリング「おい、表出ろや。ヴァレントの敵討ちや」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。