第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「所長は人が良すぎる。被験者に対しても職員に対してもだ。せっかく素晴らしい論文や考えを持っていても彼の生ぬるいやり方では成果など出るはずがなない。やはり多少の犠牲を払ってでも我々は結果の果てを見届けなくてはならないのだ」
-ウェイランド研究所の職員の日記-


運命への抵抗

-第三帝国占領地 第十衛星-

衛星の制圧はほぼ成功したが敵師団は完全に取り逃してしまった。

 

ゴザンティ級を何隻か沈め打撃を与えはしたものの艦隊もスターファイター隊も第三旅団もそれどころではなく敵の被害は殆どないに等しいだろう。

 

しかもこちら側は国防軍の一個連隊の半数近くが持っていかれた。

 

まあこれはジークハルトの管轄ではないがそれでも友軍の痛手には変わりない。

 

しかし第十衛星が橋頭堡になった事により敵の防衛線に大規模な攻勢を仕掛けられる事が叶った。

 

周辺各地の帝国軍も新共和国軍や防衛軍を撃破し続々とここに集結中である。

 

既に二個兵団が到着し先遣隊を敵の防衛線に向ける手筈を行なっていた。

 

FFI(親衛隊情報部)将校を呼び出せ。作戦を伝達する」

 

「分かりました」

 

あちらこちらからも次の戦場への準備をする声が聞こえてくる。

 

それは衛星を陥落させたも等しいジークハルト達もそうだった。

 

「部隊の再編成は間も無く完了します」

 

「負傷兵の方は」

 

「ベルトヘルカー少佐からの報告によると後二時間もすれば全員手当て終了するそうです」

 

足早に歩くジークハルトにヴァリンヘルト上級中尉はそう報告した。

 

彼は振り返る事なく命令を伝達する。

 

「なら後四時間後に出立だ。それまでに全兵に準備をさせておけ」

 

「分かりました」

 

ヴァリンヘルト上級中尉は頷いた。

 

目の前にはタブレットや地図を持ち寄って小会議を行う第三機甲旅団の指揮官や幕僚達の姿があった。

 

ほぼ全員がジークハルトに気付き敬礼する。

 

ジークハルトも敬礼を返し彼らに次の命令を伝えた。

 

「四時間後にここを出る。次の目標は敵防衛線の中央付近、最前線に位置するこの衛星に攻撃を仕掛ける」

 

「戦力は?」

 

アデルハイン中佐が質問を投げかけた。

 

「我々の一個旅団と支援の砲撃大隊が二つ、これで撃破する」

 

「衛星を攻撃するにしてはこの戦力だと少なくはありませんか?」

 

第三機甲旅団参謀のケルナー少佐は彼に問いかけた。

 

この衛星を攻略した時だって国防軍の二個連隊がいたはずだ。

 

それが二個大隊に、格段にスケールダウンしている。

 

おそらく上空には艦隊がいるだろうがそれでも地上戦力で当たるには少し少ないように感じた。

 

「我々はあくまで切り込み役だ。初撃を上手く与えられれば後は本隊が徹底的に攻撃してくれる。中佐、兵達の指揮や規律は?」

 

「問題ありません。このまま本格的な大規模戦に入ったとしても十分規律を保ったまま戦えます」

 

ヒャールゲン中佐の報告を聞きジークハルトは安心したように頷いた。

 

「哨戒中のハイネクロイツが戻ってきたら本格的な作戦会議を始める。それまだ各自適宜に休んだり部隊の編成を頼んだ」

 

それぞれの将校から「了解」という声が聞こえ皆バラバラにそれぞれの部隊へ戻っていった。

 

ジークハルトもしばらくホログラム状の地図を見つめてヴァリンヘルト上級中尉と共に艦隊の方へ戻ろうとしていた。

 

珍しくアデルハイン中佐も後に続いた。

 

「ジーク、いくら何でもさっきの戦力は嘘だろ?」

 

「何がだ?」

 

大体分かっているが一応聞き返した。

 

アデルハイン中佐は微笑浮かべ詳しく話す。

 

「次の衛星攻略だよ。そんな本隊があるならもうこの衛星についているだろう?」

 

「相変わらず鋭いな。だが我々は本当にただの先遣隊だ、嘘は付いていない。しっかりと主力の部隊は現れる」

 

「…どういうことだ?」

 

「何も主力が後ろから来るという訳ではないさ。まあボーターの時と大体同じだよ」

 

「ああ…なるほど」

 

何かを納得したようにアデルハイン中佐は苦笑と共に頷いた。

 

長い間共に戦ったからこそ分かる事だ。

 

「無論我々とてただ黙ってる訳ではない。いざという時は機甲戦隊を中心に敵司令部に直接攻撃を加えるつもりだ」

 

「そん時は前線は私に任せろ。お前は全体の指揮を頼む」

 

「ああ」

 

こんな風に前線を頼める友人がいるのは嬉しいことだ。

 

以前はもっといたのだがな。

 

振り返る暇はなくとも心には残っている。

 

「上級大佐」

 

ふと寂しげな表情で空を見上げていたジークハルトに通信士官が1人声をかけ敬礼した。

 

「何かあったのか?」

 

何か敵の通信でも傍受したのだろうか。

 

それとも司令部から別の命令でも届いたのか。

 

様々な可能性が脳内に浮かんだが士官の報告はどれも違った。

 

「コルサントからのご家族、奥様からです。親衛隊の後方部を介して通信を」

 

「ユーリアが?」

 

アデルハイン中佐は首を傾げた。

 

結婚式にも出てもらった彼だ、シュタンデリス家との面識は深いものがある。

 

それに一時期のアデルハイン中佐はユーリアの父であるフリズベン上級将軍の直属の士官だった事もある。

 

「何でも緊急の用事らしく…」

 

戦場にいる佐官以上の将校と家族が通信やホログラムの回線で面会する事は禁止されてはないがジークハルトの事を思ってユーリアはあまり通信をする事はなかった。

 

そんな彼女が珍しく戦場の、しかも最前線にいるジークハルトに連絡をよこしてきたのだ。

 

士官に言われずともその緊急性は十分理解出来る。

 

「分かった、今すぐ向かう。すまないが2人とも、部隊の方は…」

 

「任せとけ」

 

「さあ早く行ってください」

 

「ああ…」

 

少し心配を胸にジークハルトは足早に通信士官の後に続いた。

 

 

 

 

 

 

 

-帝国領 オジョスター宙域 ウェイランド星系 惑星ウェイランド-

ジークハルト達が陥落させたこの惑星は完全に第三帝国の占領地となり次々と新たな施設が建設された。

 

元々皇帝の疑惑付きの惑星だ、何かにあやかりたいという事もあったのだろう。

 

第三銀河帝国が行う、親衛隊主導のとあるプロジェクトの拠点とされた。

 

既に仮拠点ではあるが施設は半ば完成しておりここから更に増築ししっかりとした専門の研究所にする予定だ。

 

上空には施設の開設を祝う為シュメルケ上級大将が乗り込むエグゼクター級“ルサンキア”や元の乗艦である“アークセイバー”らの艦隊が軌道上に佇んでいた。

 

資材と共にシュメルケ上級大将のラムダ級シャトルも地上に降り立った。

 

「Heil!」

 

出迎えの将兵から敬礼を受けシュメルケ上級大将の一向も敬礼で返す。

 

「早速施設を案内させてもらおう」

 

「はい、ヴォーレンハイト少将も首を長くしてお待ちですよ」

 

「そうか、じゃあ行こうか」

 

一行はそのまま施設の中へ入った。

 

様々な特殊な機材や部屋が用意され通常の帝国軍の施設や基地とは一線を画す作りとなっていた。

 

エレベーターで三階まで向かうと司令室があり何人かの幕僚と共にこの研究所の所長である“カスパー・ヴォーレンハイト”少将がいた。

 

元々彼は帝国軍の技術大佐で親衛隊に入隊した時は准将であったのだが今回のプロジェクトと研究所の責任者に任命された為少将に昇進したのだ。

 

シュメルケ上級大将が入室してくると全員が慌てて敬礼を返した。

 

皆親衛隊の軍服の上から白衣を着ている。

 

「遠いところからはるばるお越しくださりありがとうございます」

 

ヴォーレンハイト少将はシュメルケ上級大将にそう形式上の感謝の言葉を述べた。

 

上級大将も敬具はいいと合図を出し早速本題に入った。

 

「施設の稼働率は」

 

「現段階で90%、恐らく明日で完全にフル稼働出来ますよ。少なくともアカデミー機能だけは完全に運用出来ます」

 

「被験者達は?」

 

「リストアップされた生徒は皆集まっています。今はヴィーケル教官と共に散歩中ですよ」

 

ある程度の水準にシュメルケ上級大将は納得したように頷いた。

 

これだけ稼働しているならば後一年、半年と言わずにプロジェクトは上手くいくだろう。

 

フューリナーの方も施設を確保し既に研究を始めたと報告を受けている。

 

所詮はヒェムナーの道楽の延長だがもしこの二つの研究が成功したならば我々はついぞ最強の歩兵を手に入れられる。

 

「ならば良かった。この計画は、ヒェムナー長官だけでなく総統閣下も期待を寄せている。しっかりと頼むぞ」

 

「はい、ですがやはり疑問です…本当に“()()()()()()()()()()()()”しそれを他の人体へ移植する事など出来るのでしょうか…?」

 

ヴォーレンハイト少将は疑問符を浮かべた。

 

長い間このミディ=クロリアンとフォースの研究を行ってきたからこそ出る疑問だ。

 

彼は元々生物学などで高い評価を受け軍に技術士官として入隊した。

 

特に当時は軍や政府が独占していたクローン研究、フォースの根幹とも言える“ミディ=クロリアン”の論文は皇帝シーヴ・パルパティーンすら手放しに高評価する程の代物だった。

 

彼は試作ではあるが通常の人間より遥かに多くのミディ=クロリアンを体内に共生させたクローンを生成する事に成功したのだ。

 

その功績に目をつけたのが親衛隊のヒェムナー長官とシュメルケ上級大将、フューリナー上級大将だった。

 

共生値の高い被験者から培養したミディ=クロリアンを共生値の低い被験者に移植する事で人為的にフォース感受者を生成しようという実験を彼に任せたのだ。

 

当初ヴォーレンハイト少将はあまりの突拍子のなさに反対し様々な理由を並べ立てた。

 

しかし親衛隊の上層部と代理総統に押し切られ泣く泣く引き受ける事になった。

 

しかもミディ=クロリアンの移植実験だけでなく通常のフォース感受者の兵士としての教育も任されてしまったのだ。

 

無論これも断る事など出来ず二つの任務を実行していた。

 

「出来るも何も少将、君がやるのだよ。人為的にフォース感受者を生成出来れば我々の軍隊は最強の兵士を手にする事が出来る」

 

「それは分かっていますが…」

 

「そこでだ、まず彼を実験台に研究を進めろ」

 

シュメルケ上級大将は彼の後ろにいた幼い少年を前に出した。

 

コンプノア・ユーゲントの制服を着たまだ八歳、九歳くらいの幼い少年だった。

 

「彼は?」

 

その少年の事をヴォーレンハイト少将は尋ねた。

 

「君が初めて作った“試作”の子…とでも言えばわかるかな」

 

その事を聞いた瞬間ヴォーレンハイト少将の表情はガラッと変わった。

 

背後に控えている幕僚達も分かる程にだ。

 

まるで何か思い出したくない事を思い出してしまったかのように。

 

「名目上彼はフューリナーの子でね、名前を」

 

「“ブルクハルト・オットー・フューリナー”です」

 

ブルクハルトはか細い冷たさを感じる声で自分の名前を言った。

 

「彼はフォース感受者のカテゴリーに入る。彼を兵士として教育し彼を実験結果として最強の兵士にするのだ。まずは感受者に植え付けていく方が確実だろう」

 

ヴォーレンハイト少将は再びブルクハルトを見つめた。

 

幼い、幼すぎる。

 

この研究所の子供達もそうだが皆幼すぎる。

 

「では頼んだぞ少将、私は北西へ向かわねばならん」

 

そう言ってシュメルケ上級大将は部下と共に施設を後にし始めた。

 

残されたのはブルクハルトと名乗る少年と困惑や疑念だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ミッド・リム 旧新共和国領 ミタラノア宙域 惑星キャッシーク-

Uウィングはキャッシーク内に着陸し地上の新共和国軍の技術兵やウーキー族の技術者達によって整備を受けていた。

 

帝国軍は多角的な攻撃とスターファイター隊の大きな損失を受けて退却しひとまずキャッシークに平穏が舞い戻った。

 

元々ついこないだまでキャッシークは帝国軍の占領下だったのだ。

 

二度と祖国の土を踏ませるかとウーキー族の戦意は強くそれに感化された新共和国軍の将兵も今まで以上に強くなっていた。

 

結果的に今日まで帝国軍の侵略を防いでいたのだ。

 

ジェルマンはドリンクを飲みながらUウィングの近くを見つめた。

 

Uウィングから運び出した物資を受け取ったウーキー達がかなり喜んでいるのが分かる。

 

「本当に大喜びだな」

 

「ああ、俺も正直びっくりだ」

 

「それだけありがたいということだ」

 

遠くから声が聞こえ2人は急いで格好を整え敬礼した。

 

敬礼の先には迷彩服を着込んだ将校と軍服を着た将校がいた。

 

「新共和国情報部のエイレン・クラッケンだ。久しぶりだな大尉」

 

クラッケン将軍はまずジョーレンに手を差し伸べた。

 

ジョーレンも何かを懐かしみながら両手で将軍の手を握った。

 

「クラッケン将軍、まさか生きていたとは。ドレイヴン将軍に続いてあなたもやられたのかと」

 

「彼の分も私が戦わねば同盟の築き上げたスパイ網は完全に途切れてしまうからな。それに大尉はドレイヴンの部下ということで君の事はよく覚えている。会えて嬉しいぞ」

 

ジョーレンの直属の上官であったデイヴィッツ・ドレイヴン将軍は一時期このクラッケン将軍の下で工作員としての技能を学んでいた事がある。

 

その繋がりから彼の部下であったジョーレンもクラッケン将軍と深い面識があった。

 

そしてそれはジェルマンも同じだ。

 

「そして中尉、君も生きていて嬉しいよ。中将のことは残念だったが…」

 

「はい…ですが必ずストライン中将の思いは受け継ぎます」

 

クラッケン将軍はジェルマンのその力強い意志に頷きで敬意を示した。

 

艦隊情報部の幹部であったストライン中将は情報部全体の司令官であるクラッケン将軍の部下であり互いにかなりの信頼関係があった。

 

そしてそのストライン中将の一番の部下であるジェルマンもまたクラッケン将軍と面識があるのだ。

 

「君達のおかげで新共和国の情報網、スパイ網、補給網は復活しつつある。再び帝国に反撃する日は近いぞ」

 

クラッケン将軍はそう2人の活躍を評価すると彼の背後の司令官達を紹介した。

 

「彼が艦隊司令官のラスタル少将と本来のキャッシーク駐留部隊司令官のヘドワイン少将だ」

 

2人は律儀に敬礼しジェルマンとジョーレンも敬礼を返した。

 

「そして最高司令官の…」

 

クラッケン将軍の背後から足音が聞こえ1人の人間とウーキーが現れた。

 

「俺は“ハン・ソロ”、ミレニアム・ファルコンの船長だ。こいつは“チューバッカ”」

 

そのチューバッカと名乗るウーキーはシリウーク語で自己紹介をし大きな手で2人に握手した。

 

その後ハンも彼らと握手した。

 

「あんたらこの銀河を端から端まで飛び回ってるそうじゃないか」

 

「ええまあ」

 

「このキャッシークでようやく任務終了ですよ。随分と長い旅だった」

 

チューバッカも「お疲れ」と話している。

 

シリウーク語だけなら分かるジェルマンは「ありがとうございます」と丁寧に返した。

 

すると彼の後ろから何人かのウーキーが現れた。

 

恐らく族長や何かしらの長達だろう。

 

「全員集まったようだな。それでは大尉、例のものを頼む」

 

「はい将軍」

 

ジョーレンは手のひらサイズのホロプロジェクターを起動しホログラムを映し出した。

 

とある人物が映し出されその姿を見たハンは微妙な表情を浮かべていた。

 

『クラッケン将軍、お久しぶりです』

 

その声を聞き余計にハンは顎に手を当てチューバッカの方に助けを求めるように目を向けた。

 

しかしチューバッカは一声上げ肩をすくめた。

 

相棒に小さく裏切られてしまった。

 

「議員こそご無事で…」

 

『辛うじて助かりました。そして』

 

ホログラムのレイアはハンの方を見つめた。

 

ハンは気まずそうにしながらも第一声をどことなく慎重に放った。

 

「ああ…その…元気そうだな」

 

『あなたも、変わらないジャケットね』

 

「これも新品なんだがな…」

 

ハンはぎこちない雰囲気を捨てて真剣な眼差しを見つめた。

 

「生きててくれて本当によかった」

 

『私も、あなたも“()()()”も生きていてよかった』

 

「離れていても俺たちは家族だ。時々不安にさせる事もあったがそれでもあの子はずっと帰りを待っていた」

 

『もう少し掛かりそうだけど…きっと会えるわ』

 

「俺やお前に似て強い子だ。だがすぐに会える」

 

今までとは違う雰囲気が漂っていた。

 

皆どこか感動的な、涙を浮かべているような気がした。

 

ジェルマンもジョーレンも初めて見るレイアの一面だ。

 

「あの子を連れてすぐお前のいるところに向かうさ。そこのUウィング乗り、案内を頼む」

 

「えっでも…」

 

「ここの指揮とかはどうなさるんです?」

 

「我々にお任せください。むしろ議員の下にソロ将軍がいる方が我々も心強い」

 

ヘドワイン少将はそう進言した。

 

ラスタル少将もクラッケン将軍も頷いている。

 

「だがその前に少し寄って行きたい場所がある。なあにちょっとした近場だ、すぐに終わる」

 

『一体どこへ?』

 

レイアはハンに尋ねた。

 

ハンはニヤリと悪い笑みを浮かべると軽く話した。

 

「最後の、“()()()()()()()”を拾ってくるさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか…養子か…」

 

ジークハルトは少し悩む素振りを見せた。

 

その様子を察したユーリアは即座に謝った。

 

『ごめんなさい…勝手に決めてしまって』

 

「いや良いんだ、その場にいたら私だってきっと約束していたはずだよ。君のやってる事はきっと正しい」

 

悩むと言っても受け入れるかどうかを悩んでいるのではない。

 

ただ自分がその子に何をしてあげられるかという点だ。

 

マインラートならきっとその子とも仲良くやっていけるだろう。

 

だがただでさえマインラートに父親らしい事をしてあげられていないのにそのホリーに一体何が出来るだろうか。

 

だが考えてもどうしようもないだろう。

 

既にその子も今日から我が子なのだ、やれるかどうかではなく全力で育てなければならない。

 

ジークハルトは一瞬のうちに覚悟を決めた。

 

「しかしセレッドか…」

 

ジークハルトはその名前を何処か懐かしそうに口にした。

 

『知っているの?』

 

ユーリアはふと尋ねた。

 

ジークハルトはホログラム越しに頷いた。

 

「多分コルサント戦で一緒に戦ったと思う。とにかく戦いを終えたらすぐに帰るよ」

 

『ええ…でも無理はしないでね』

 

「当然、それじゃあ、愛してるよ」

 

ホログラムが消え通信が切れた。

 

ふと息を吐き背もたれに寄りかかる。

 

早く帰るとは言ったものの当分戦いは終わりそうにないだろう。

 

こう言う時に限ってつくづく「私がもっと優秀であったら」と思ってしまう。

 

そうでなくとも「彼がいてくれたら」とか「優秀な誰かが」と不必要な事を考えて自己嫌悪に陥る。

 

「そう自分を責めるなって。このまま戦線を切り破ってアンシオンに一撃入れればすぐに勝てるさ」

 

”声”を聞いたジークハルトは急いで立ち上がり後ろを見つめた。

 

本来は聞こえるはずのない人物の声が聞こえたからだ。

 

その事を示すように彼の背後には誰もいなかった。

 

「幻聴か…」

 

疲れている、いやそうではない。

 

信じたくないだけだろう。

 

ジークハルトは何処か沈んだ気持ちで部屋を退出した。

 

その後第三機甲旅団は敵の衛星へと向かった。

 

勝利の報告が流れてきたのはこれより僅か8時間後の事であった。

 

 

 

 

 

 

 

時は少しばかり前に戻り退却した第十衛星の駐留師団はそのままアンシオン本土まで後退した。

 

そしてクラリッサとマルスも成すべき事を成した為一旦本国のケッセルへ帰還する事となった。

 

迎えのスター・デストロイヤーに乗り込み名残惜しくはあるがこのアンシオンを、戦場を去って行った。

 

「ようやく本国へ帰っていただけるのですね…」

 

インペリアル級の艦長であるペリオル大佐はため息まじりに安堵の言葉を漏らした。

 

「ええ、どうせならこのまま師団を率いて親衛隊なんて蹴散らしたかったのですがここで下手に名が上がっても困りますし致し方ありませんわ」

 

現状ケッセル勢力は中立であり下手すると第三帝国に宣戦布告されかねない。

 

そうなったらそうなったで面白くはあるのだが今はまだその時ではない。

 

だからアンシオンとはここでお別れだ。

 

「アンシオン軍はこのまま勝てますかね」

 

マルスがふとクラリッサに尋ねた。

 

ペリオル大佐は下手に意見を振られたくないのでスッと身を引きクラリッサは少し考え口に出した。

 

「恐らく無理ですわね…元から戦力差に大きな開きがありますし何よりあの軍には…」

 

ファースト・オーダーなどの存在を知らない以上第三帝国はこの銀河系最強の国家だ。

 

それに付き従えば当然多くの利益や権威が手に入る。

 

ならば当然見限る者も出てくるだろう。

 

「ですがあの堅物の元帥はそう簡単には死にませんわよ。むしろ最後に一花咲かせてあの連中に切り傷をつけてくれるはずですわ」

 

その回答にマルスは頷き自身でも考えを纏めた。

 

「ちなみにペリオル艦長はどうなんですか?」

 

「え”っ”!?」

 

潰れた声を上げペリオル大佐は「やりやがったな」という表情でマルスを見つめた。

 

それに便乗しクラリッサも一言付け加えた。

 

「私も、艦長の意見を少し聞きたいですわね」

 

「そっそんなぁ…」

 

ペリオル大佐は副官や副長、他の将兵に助けを求めるように見つめたが苦笑いを浮かべ離れていった。

 

「聞きたいなぁ」

 

「聞きたいですわぁ」

 

大佐は完全に追い詰められ孤軍奮闘状態となってしまった。

 

「えっその…」

 

ペリオル大佐は完全に狼狽え乗組員達は「お労しや…艦長…」と心で思われていた。

 

「どっどうしてこんな目に…」

 

エンドア後の帝国軍将兵の不幸は何も敗北と皇帝を失ったことだけではなかった。

 

付くべき上官を間違えるとこうなってしまうのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「裏切っただと…ヘドレーがか…?」

 

ドウル元帥は信じられないような口振りで報告してきた士官に尋ね返した。

 

他の幕僚や司令官達も困惑し口を閉ざしていた。

 

士官は小さく頷き報告を続ける。

 

「ヘドレー中将の第二兵団及び一部部隊の裏切りにより中央の防衛線が完全に崩壊!もはや戦線は機能していません!」

 

士官の報告はその口振りよりも深刻なものであった。

 

防衛線の最高司令官に任命したアンシオン軍のヘドレー中将が麾下の部隊と共に第三帝国に寝返ったのだ。

 

その結果衛星を丸々一つ失い一部部隊も壊滅。

 

ヘドレー中将に続くように他の部隊指揮官達も裏切り幾つかの衛星が陥落した。

 

ジークハルト達が向かった衛星も駐留部隊の一個師団が裏切り他の部隊が壊滅、ジークハルト達は戦うことなく僅かな時間で衛星を一つ堕としたのだ。

 

しかも第三帝国軍は必要に中央に謀略と物理的な攻撃を仕掛けた。

 

その結果中央の防衛線は完全に崩壊し大きな穴が空いてしまったのだ。

 

しかもさらに最悪なのがエグゼクター級を旗艦とした敵軍の一個艦隊がこちらに向かっているのだ。

 

セキューター級のような揚陸艦も多数確認されその総兵力は計り知れない。

 

「現在両翼の部隊が辛うじて後退に成功しましたが…」

 

ドウル元帥は震え目線を落としていた。

 

しかし命令は確実だ。

 

「全部隊を最終地点まで後退させろ…もはや前提から崩れた…」

 

「はい…」

 

士官は命令を伝える為に司令室を後にした。

 

士官の退出を確認したドウル元帥は全身にみなぎる怒りを吐き出した。

 

「裏切っただと…ヘドレーめ……ふざけるなッ!!」

 

手に持っていた指揮棒を思いっきりテーブルに叩き付けた。

 

凄まじい音が鳴り響きドウル元帥の声と共に一部の幕僚達ビクついた。

 

そのまま彼はテーブルを思いっきり拳で叩きつけ怒りを吐き捨てる。

 

どうしようもないものばかりだが。

 

「ふざけるな!!薄汚い裏切り者どもめ!!恩を忘れやがって!!私が助けていなければ新共和国によって惨殺刑にされていたのだぞ!!それを奴は!!恩を仇で返してきやがった!!」

 

「気持ちは分かりますがまずは冷静に…」

 

「冷静にだと!?なってどうする!もはや我々は終わりだ!!既に多くの部隊が裏切り者によって引き抜かれ!!壊滅した!!あの防衛線にはほぼ全ての戦力を注ぎ込んだのだ!!そのうちの1/3が一瞬にして蒸発した!!いや実際はそれ以上だ!!しかも敵の一個艦隊が向かってきている!!もはや防衛など不可能だ!!」

 

幕僚の進言を無視しドウル元帥は激昂し怒りを吐き散らした。

 

なまじ他の軍将となった将校達とは違い戦況や状況を認識出来るせいでその絶望的な状況がすぐに分かった。

 

そもそも現在アンシオン軍が保有している艦艇ではエグゼクター級に勝てる代物などない。

 

艦隊戦でのこのままでは敗北は必須だ。

 

それ故に彼に襲う絶望感は計り知れなかった。

 

だからこそ怒りも長く続かずすぐに椅子に座り込んでしまった。

 

「この戦いはもはや負けだ…もう勝てない……私は死ぬ…」

 

他の幕僚や司令官達もかける言葉が見当たらない。

 

長い付き合いのハーウス将軍でさえ言葉を失っていた。

 

「だが…だが私は、諦めるつもりはない…お前達よく聞け」

 

ドウル元帥は幕僚や司令官達を近づけさせた。

 

「残った戦力と市民を全て“()()()()()()()()()()()()()()()”…お前達も皆、ファースト・オーダーへと向かえ。そしていつしかファースト・オーダーと第三帝国が戦う時、全力であの帝国を叩き潰せ…!あの組織は必ず帝国と戦う。その時、我がアンシオンの軍があの第三帝国に復讐の一撃を入れろ。私は最期までここに残り敵を巻き込んで死ぬ。お前達は皆生きてあの帝国が滅びる瞬間を1人でも多く目にするんだ」

 

「元帥閣下…」

 

「これは私の最後の命令、そして約束だ。必ず第三帝国を倒せ!頼まれてくれるか…?」

 

幕僚や司令官達は突然の発言に困惑していたがやがて全員が覚悟を決め頷いた。

 

そして代表として最も信頼の高いハーウス将軍が元帥の前に跪きその手を握り誓った。

 

「必ず…!必ず生きて帝国を倒します…!そして我らの真の帝国を…!」

 

その力強さから信頼が読み取れる。

 

ドウル元帥は小さく頷きハーウス将軍の手を握り返した。

 

「頼んだぞ…!」

 

「はい…!」

 

元帥は立ち上がり外を見つめた。

 

そして呪詛のように独り言を呟いた。

 

「只では死んでやるものか…!一兵でも多くファースト・オーダーへ逃し抵抗してやる…!そしてお前達の雑兵どもを一兵でも多く巻き込み皆地獄へ引き連れていってやる…!」

 

敗北を悟ったとしてもドウル元帥の意志は負けてはいなかった。

 

そして第三帝国へ最後の、新たな一撃を加えようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

-ミッド・リム テラーブ宙域 ルーサン星系 惑星ルーサン-

ミレニアム・ファルコンとUウィングがこのルーサンの大気圏内に突入した。

 

「将軍、一旦離陸地点を探しますか?それとも上空から捜索しますか?」

 

ジェルマンは通信機を口に当てミレニアム・ファルコンに通信を介した。

 

『いや、このまま上空から捜索する。恐らくXウィングに乗ってきているはずだ、すぐに分かる』

 

「了解」

 

通信が途切れジェルマンはセンサーを起動し捜索を始めた。

 

「しかしルーサンか…歴史の通り大規模戦の跡があちこちに垣間見えてる」

 

このルーサンこそが旧共和国の最後の宗教戦争の舞台であるルーサンの戦いの地だ。

 

草木が生い茂っていてもあちこちに瓦礫や破片が並び不自然に草木が生えていない場所がある。

 

逆に都市部を植物が覆い被して隠している場所もあった。

 

もはやここにあったかつての文明は消えてしまったのだろう。

 

戦いの戦火に焼かれ全て灰と化してしまった。

 

この調子で銀河系から争いが無くならねばもしかするとやがて銀河系全てもこうなってしまうのだろうか。

 

そんな一抹の不安を消し去りジェルマンは捜索に専念した。

 

「きっと相当の戦いだったんだろうね」

 

「ああ、それはそうと機体は見つかったか?」

 

「いいや、全然だよ。まあまだ十分も経ってないし仕方ないと言えば仕方ないけど…」

 

「焦らずに探せよ」

 

「分かってる」

 

会話を交わしながらジェルマンはセンサーを確認しながら目視でも捜索を開始する。

 

もしかしたら熱源体を隠すよう施しを加えているのかもしれない。

 

最終的に頼れるのはやはり自身の目だ。

 

だがそれは地上の方でも同じだった。

 

この惑星に入ってくるミレニアム・ファルコンとUウィングを確認している者達がいた。

 

1人は黒っぽい服を着た金髪の青年が洞穴に隠された“X()()()()()”の近くからその2機を見つめていた。

 

そしてファルコン号の方を見つけるなり口を開いた。

 

「R2、どうやら向かえが来たようだ」

 

Xウィングの近くからアストロメク・ドロイドが姿を表し電子音を鳴らした。

 

そのドロイドもファルコン号を見つめまた電子音を鳴らす。

 

「まさか向こうから来るなんて。きっとハンの考えだな、とにかく向こうに合流しよう。ここは危険だ」

 

アストロメクも電子音で賛同しXウィングの方へ戻っていった。

 

青年もXウィングの方に戻り最後に一度だけ振り返り2機を後ろ姿を見つめていた。

 

そして別の者達もまた彼らのことを観測していた。

 

デス・トルーパーやパージ・トルーパーのような特別なトルーパー達を率いているアーマーを着込んだ“()()()()”が。

 

ジェダイとシス、最後の大規模戦の地で彼らは巡り会う。

 

それはフォースを巡る新たな戦いの始まりでもあった。

 

そして出会いの場でもあった。

 

 

つづく




ウィルズ昭和維新を断行すると約束したな



あれは嘘だ




                  (     
                   )    う
                   (    あ
                   )    あ
                  (     ぁ
                        ぁ
                  _/    ・
                  ___|___    ・
                   ё    ・
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