第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「我らの想いが紡がれることを切に願おう。先代達の努力が明日を切り開いてくれる事を共に信じよう。祖国は常に素晴らしいという信念を強く持とう。信じよう、我らの帝国は常に勝利すると。」
-ある宇宙軍少佐の最後の手紙より抜粋-


一つの帝国

-コルスカ宙域 惑星コルサント ギャラクティック・シティ-

今日はコルスカ宙域のコンプノア・ユーゲントに選ばれた子供達に制服が配られる日だ。

 

それはマインラートも養子として向かい入れられたホリー・セレッドもそうだった。

 

様々な手続きがあり最終的に正式な養子となったのはあれから数日経った後でホリーはまだあまりこの家に馴染めていない様子だ。

 

常に不安感や寂しさを感じているのが表情で分かる。

 

無論それはマインラートの“()”でもそうだったが。

 

心の苦しさがどことなく分かるのだ。

 

「とっても似合ってるわよ、2人とも」

 

ユーリアは鏡の前にユーゲントの制服姿のまま立つ2人の頭を撫でた。

 

マインラートは少し嬉しそうにしていたがそれでも首周りが王やら苦しいらしい。

 

「この服少し苦しいよ」

 

彼は素直に気持ちを表しホックの所を何度も触っていた。

 

「最初はそんなものよ、すぐに慣れるわ」

 

そうユーリアは宥め不満げな表情を浮かべるマインラートを再び撫でた。

 

「ホリーもとっても似合ってるわ」

 

新しい愛娘にもそう褒めまた頭を撫でた。

 

確かにホリーは養子で血は繋がっていないがもう大切な家族であり娘だ。

 

一方だけ可愛がるなどあり得ない。

 

ただその事がホリーに伝わったかは定かではないが。

 

「ありがとう…ございます…」

 

ホリーは小さな声で謝辞を述べた。

 

余所余所しい感じではあるが仕方ないとユーリアは割り切っていた。

 

実の父親が死んだばかりでまだ慣れない家に引き取られたのだ。

 

むしろ慣れろと言う方が酷ではないか。

 

時間を掛けてゆっくりと心を癒していけばいい。

 

それだけの覚悟はある。

 

「お母さん、“()()()()()()”」

 

直後玄関のインターフォンが鳴りユーリアは振り返った。

 

「じゃあお母さん行ってくるわね」

 

「うん」

 

きっと宅配か何かだろうとユーリアは立ち上がり玄関の方へと歩いて行った。

 

マインラートは襟のホックを取りヘナヘナと鏡の前に座り込んだ。

 

「カッコいいけどこの服やっぱり苦しいよ」

 

首周りを楽にさせながらマインラートはそう呟いた。

 

すると隣でずっと立っていたホリーも同じように座り蹲った。

 

顔を隠し黙り込んでいる彼女をマインラートはおもぐるしそうな表情でじっと見つめた。

 

感じるのだ、ホリーから溢れる悲しく寂しい何かが。

 

マインラートに溢れる力、そう“()()()()”の感情を感受させていた。

 

ホリーの啜り泣く声が聞こえる。

 

「ねえ」

 

マインラートは隠れて涙を流すホリーに声を掛けた。

 

彼女は涙を見せないよう拭いながらマインラートの方をゆっくり見つめた。

 

「どう…かな?綺麗…?」

 

マインラートはそうホリーに尋ねた。

 

マインラートの手のひらで浮いているネクタイ型のスカーフが器用に丸まり花のような形になっていく。

 

まるで赤薔薇のようだ。

 

ホリーはだんだんマインラートの手のひらの上で作られていく花をじっと見つめていた。

 

気がつけば涙は流れ去り驚きの方が強くなっていた。

 

するとホリーも自分の手を首に巻かれたスカーフの近くに寄せ触れる事なく外し始めた。

 

そして宙に浮かせマインラートのての方へ近づける。

 

「実は……私も…」

 

宙に浮いたスカーフはマインラートのスカーフに巻き付いた。

 

今やマインラートの方が驚いた表情を浮かべていた。

 

彼女も自分と同じ“力”、フォース持っていたのだ。

 

「君も僕と同じなの……?」

 

ホリーは小さく頷いた。

 

「でもパパには知らせてなかった…」

 

「僕もお母さんから絶対やっちゃいけないって言われてるんだ…だから2人だけの秘密にしようね」

 

「うん…!」

 

2人は互いに笑い合っていた。

 

ここに来て初めて心を許してもいいと感じた。

 

ホリーに先程のような涙や喪失感はなくただ無邪気な喜びがあるだけだった。

 

ユーリアに陰で見守られながら2人は親しく笑い合っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「同盟を組むだと?我らとか?」

 

シュメルケ上級大将は怪訝な表情でスローネ大提督の提案に対し首を傾げた。

 

疑わしく思えるのも無理はない。

 

何せ今の所脱出したアンシオンの戦力は全て彼女らの下にあると踏んでいるからだ。

 

アンシオン軍と合わせた大、中規模の軍隊で我々と対峙する。

 

その可能性が一番高かったのだがまさか同盟とは。

 

交渉にしてもせいぜい停戦交渉程度だと思われていた。

 

「我々は元は同じ帝国だ。同じ皇帝に忠誠を誓い、同じ祖国を守る為に戦い、別々の姿になった」

 

スローネ大提督は言葉を繋ぎ話し始めた。

 

どうやらファースト・オーダー側は既に同盟を組む事を知っているようだ。

 

同じ組織だからそれは当然だが親衛隊側に比べて動揺の色は薄かった。

 

「倒すべき新共和国は君達が倒し、我々も帝国復興の為の準備が整った。後は我らが一つになるだけだ、これ以上の流血を阻止する為にも」

 

これ以上の流血、間違いなくアンシオンの事だろう。

 

やはりファースト・オーダー側もその事は知っているらしい。

 

ならば少し問い詰めねば。

 

「だからアンシオンの残党軍討伐から手を引けと?連中の戦力は殆どが生存し未だ行方不明だ。ここで戦いを終わらせれば我々の方が危険に晒される上に残党が暴徒化する可能性もある」

 

「彼らにはもう戦闘力はない。それに帝国が一つになったと聞けば指導者のいない彼らは我々に付いてくれるだろう」

 

シュメルケ上級大将の危惧にスローネ大提督はそう返した。

 

彼女らしくない楽観的な考え方だ。

 

どこか怪しい、そうシュメルケ上級大将は感じた。

 

「まるで知ったような口ぶりだな。本当は匿っていたりするのか?」

 

直球でスローネ大提督に投げかける。

 

仮に匿っていたなら最悪の場合侵攻の大義名分として扱うだけだ。

 

しかし大提督はあくまで毅然とした態度でキッパリと断りを入れた。

 

「確かに一部は我々を発見し保護してはいるが全軍ではない。むしろ行方は我々が知りたいくらいだ」

 

「そうか…なら私は深くは聞かないでおこう。それに間も無く代表団が来る、深い事はそちらで話すと良い。尤も、そうすれば我々が話す事はもうなくなってしまうのだがな」

 

取り繕った自然に近い微笑を浮かべ再びカップを持ち上げた。

 

スローネ大提督もその裏だらけの皮肉に笑みを浮かべ自然と一息吐いた。

 

肩の力が抜けより自然と柔らかい表情が滲み出ていた。

 

だが周りの将校はそうではない。

 

未だ張り詰めた緊張に囚われ硬い表情のまま2人を見つめていた。

 

「だが…」

 

シュメルケ上級大将は口を開きあえて言葉を詰まらせるように会話を続ける。

 

「私個人の持論としては……同盟を組んでも良いと思っている。いやむしろ是非ともと言った所だ、君達に下手な虚栄心がなければの話だが」

 

上級大将の最後の一言がファースト・オーダーの将校達を大いに警戒させた。

 

何人かは既に臨時の戦闘体制に入り比較的冷静なベテラン将校達に止められている。

 

彼らの動きは親衛隊将校達も刺激し今までの比ではない緊張を激らせた。

 

互いに近くの相手を睨み合い牽制している。

 

そんな中緊張を破りスローネ大提督が口を開いた。

 

「我々にハースクやテラドクのような虚栄心などはない。我々はただ帝国を再興する、それだけでそちらが同盟を望むなら喜んで手を取ろう。我々は元は一つの存在だ、探り合う事もいがみ合う事も必要ない」

 

「その通りだ、どうやら今回の会談は明るい返答が期待出来そうだ」

 

そう言い放ちどこか安堵したようにシュメルケ上級大将はチラリと横に目線を移した。

 

それに気づいた幾人かの親衛隊将校が少しズレて上級大将が目線を当てていたビューポートの景色が露わになった。

 

暫く外の宇宙空間を眺めシュメルケ上級大将は口を開いた。

 

「“(エクリプス)”、まさか君達が持っていようとは。あれはてっきり戦乱期の炎で焼かれてしまったと思っていたのだが」

 

彼の目の先にはステーションのすぐ近くに佇むエグゼクター級スター・ドレッドノートの姿があった。

 

間反対には親衛隊所属であり同型艦のエグゼクター級“ルサンキア”が同じように構え双方圧倒的な威圧感を放っている。

 

両艦とももしもいざという時に備えているのだ。

 

その為このステーションはある意味で二隻のスーパー・スター・デストロイヤーに狙われていると言うことになる。

 

しかし“エクリプス”はただのエグゼクター級ではない。

 

この艦は今は亡き皇帝シーヴ・パルパティーンの座乗艦としての役割を果たしていた。

 

つまり皇帝の御召艦であったのだ。

 

皇帝は崩御し“エクリプス”自体も沈んだと思われていた。

 

だが生き残っていた。

 

「そして隣に控えているのは……“アルティメイタム”か?あちらもホスで退役したと私は聞いていたのだが」

 

シュメルケ上級大将は“エクリプス”の隣に控えるインペリアル級を指差した。

 

船体からブリッジの上のカラーリングが何処となく違う気がする。

 

隣には以前までスローネ大提督の乗艦だったインペリアルⅡ級“ヴィジランス”が同じように“エクリプス”の側で控えていた。

 

「ああそうだ、私の思い入れの鑑であってな。実は私が初めて艦長を務めたスター・デストロイヤーはあれなのだ」

 

「だから戦力増強も含めて退役しようとしていたあの鑑を引き取った」とスローネ大提督は何処か思い出深そうに話していた。

 

インペリアル級“アルティメイタム”はスローネ大提督の話す通り彼女が最初にスター・デストロイヤーの艦長として指揮を取った艦なのだ。

 

元々は現在ファースト・オーダーの提督を務めているイェール・カールセンの艦であったがゴース紛争時に一時的にだが指揮権がスローネ大提督に譲渡された。

 

その後はカノンハウス艦長が指揮官となりあの死の小艦隊所属となったが同盟軍追撃の際に小惑星帯で不慮の事故に遭いブリッジが大破、そのまま退役したはずだった。

 

だが実際にはエンドア戦などその後の動乱により解体工事が遅れに遅れドック入りしていた他の帝国艦船と共にスローネ大提督らに引き取られた。

 

その為突貫工事で修復された“アルティメイタム”のブリッジは自身の船体や他のインペリアル級のブリッジと比べて微妙に色合いが異なっていた。

 

「カノンハウスの愚か者がもう少しあの艦をうまく使ってくれればそんな事せずに済んだのだがな」

 

後任のカノンハウス艦長を若干罵りながらカップを口に近づけた。

 

シュメルケ上級大将も思わず素の微笑を浮かべている。

 

スローネ大提督はカップを皿に置き今度は彼女の方から口を開いた。

 

「そう言えばそちらの指導者殿は新しい代理総統とやらに変わったそうだが“()()()()()()()()()”はどうした?」

 

シュメルケ上級大将は顔をスローネ大提督の方に向け直した。

 

懐かしい、あまり聞きたくない名前が出てくる。

 

そう言えば彼の息子、オスカル・ヒルデンロードはそろそろ退役する頃か。

 

有能で政治的見当も優れていたと思うが意欲や野心的ではなくて助かった。

 

そんなつまらない事を思い浮かべながらシュメルケ上級大将は返答を口に出した。

 

「首相は……“()()()()()()”。不慮の事故…ではないな、“()()()()()”のだ。何者かによって」

 

大提督の表情が少しだけ曇った。

 

演技かどうかはさて置き首相の死に何かしら思うことがあったのだろう。

 

「首相官邸の爆発事故により首相と首相の家族数名を含めた数十人が亡くなられた。犯人はヒルデンロード首相を快く思わない勢力の差金だったのだろう。結局深く捜査は出来ず今でも無念に思う」

 

「そうか……お悔やみを申し上げる」

 

「どうも」という意味を込めてスローネ大提督に何度か頷きを見せた。

 

「ヒルデンロード首相は立派な方であられた。絶望的な状況の中、我らを導きカイゼルシュラハト作戦を成功させ帝国の存続させた。あの方がいなければ今頃我らは新共和国を倒す事すら出来なかっただろう」

 

第三銀河帝国前任の暫定政権である、“第二銀河帝国”。

 

第三帝国と同じく皇帝はおらず代理首相という形で最高指導者を立てていた。

 

その第二帝国の首相であったのが“パウルス・ヒルデンロード”その人である。

 

彼はジュディシアル・フォース、共和国軍と帝国が誕生する前から中央政府に支えクローン戦争では盟友と共に“()()()()()()()()()()”で旧独立星系連合軍を打ち破った。

 

圧倒的な大勝利により連合軍はターネンベルグ周辺の支配権を完全に失いその後も取り戻す事はなかったほどの痛手を被った。

 

()()()()()()()()()()”と彼は讃えられ銀河帝国で彼は地上軍元帥に昇進し今までの功績と政治的手腕を認められベアルーリン宙域のモフとなった。

 

エンドア後は周辺の帝国勢力と同調を図りながらも宙域を守る為にひたすら防戦に徹し勢力を拡大し続けた。

 

後に第二帝国最初の奇跡と言われるジュートラド会戦では数隻以上のベラトール級を主軸とした連合艦隊と共に新共和国防衛艦隊を撃破し支配を確固たるものにした。

 

そしてジャクー戦の混乱に乗じてヒルデンロードは秘密裏に帝国の同盟者達に召集をかけカイゼルシュラハト作戦を実行に移した。

 

彼の“()()()()()()()()”と共に帝国軍は作戦を成功させ第二帝国の基盤を確立した。

 

首相となった彼は対軍縮政策として帝国の国防正規軍だけでなく保安軍を作り軍縮を逃れたり親衛隊の原型であるチェンセラー・フォースを設立し帝国の勢力維持に努めた。

 

しかし悲運が彼を襲う。

 

志半ばでヒルデンロード首相は暗殺され斃れた。

 

その後首相の後は現在の代理総統らが引き継ぎ第三帝国が誕生する事となる。

 

「暗殺した犯人がどの勢力からの差金かは分からない。首相を快く思わないワイズ提督やハースク提督、デルヴァードス将軍らのような勢力は大勢いるからな」

 

「なるほど……しかしいずれ見つかるといいな。その犯人が」

 

「ああ、あの方の意志を継いでここまでやってきた姿、是非見せたいものだ」

 

 

 

 

 

 

-アウター・リム・テリトリー ケッセル宙域 ケッセル星系 惑星ケッセル-

「帝国との交渉、うまく言ってるといいですわね」

 

「…あんまり楽しそうじゃないですね」

 

退屈そうにケッセル産のスパイスで作られた煙草を吸うクラリッサにマルスはそう尋ねた。

 

言葉だけ見ればただの会話だがその口調にはいつものような謎の元気さや透き通った狂気さは感じられなかった。

 

本当に、とにかくどうでもいいと言った雰囲気だ。

 

一方マルスの方は椅子に座って足をぶらつかせ浮かない表情に見える。

 

「第三帝国側の返答も分かりきっていますし面白みや刺激に欠けますわ」

 

「でも、ここで交渉決裂なんて起きたら両者の未来は破滅ですよ」

 

冷静に状況を読み取るマルスにクラリッサはむすっとした表情で立ち上がり彼に近づいた。

 

本当にこの一面だけ切り取ればただの美少女で済むだろうに。

 

恐らくこのケッセルの勢力の配下となった全ての将兵がそう思っているだろう。

 

クラリッサはそのままよく分からなそうに唖然と彼女を見上げるマルスを掴みハグを交わした。

 

益々マルスの理解不能の表情が広がっていく。

 

「もう!あなたはそれで良いんですの?あなたはあの国に思う所があるんじゃないですの?」

 

マルスは一瞬だけ年相応の幼い悲壮感を感じる苦々しい思いを浮かべた顔付きになり目線を落とした。

 

思わないわけがない。

 

あの国に対して。

 

抱くのは恨みばかり、憎しみばかりだ。

 

それでも、堪えなければ、耐えて守らなければならないものがある。

 

今度こそ何も失わない為だ。

 

「私は貴方が離れて行く事と私以外を愛す事以外は許しますわ。それに貴方がずっと浮かない顔をされていては私も気分が落ちてしまいますもの」

 

さらに強く抱かれクラリッサの体温と少し刺激物の混じった花のような香りが漂ってくる。

 

彼女はマルスの耳元で宥めるように言った。

 

「大切なのは貴方自身が決める事でしてよ」

 

その言葉はクラリッサにとっては単なる一言であった。

 

しかしマルスにとってのその言葉はずっと遠い昔に聞いた大切な人の大切な言葉だった。

 

掛けられた言葉は脳内から蘇り耳に聞こえてくる。

 

クラリッサとは違う歳を取った低い男の声が。

 

『マルス、大切なのはお前自身が決める事だ。お前ならきっと未来を切り開ける』

 

あの時は頭を撫で垂れた覚えがある。

 

誰も死ななかった頃、まだ動乱が始まる前のベアルーリンで。

 

自然と涙が溢れ小さく言葉が漏れた。

 

「“()()()()()”……」

 

血は繋がる事はなくても彼は確かに父と慕い息子と慕われていた。

 

()()()()”パウルス・ヒルデンロード元帥の息子、アルスヒルデンロードはケッセルで小さく新たな決意を下した。

 

 

 

 

 

-惑星ディカー ディカー基地訓練施設-

3機編隊を組んだXウィングやAウィング、Bウィング、Yウィングが澄んだ青空を飛び交い飛行訓練をしていた。

 

その中にはヴィレジコフ中尉のAウィングも存在しており新たに設置されたソード中隊の副中隊長を上級中尉の役職と共に任命されいつにも増して訓練に集中している。

 

地上では射撃訓練や実戦を交えた訓練、単純な体力作りや規律の訓練などが行われていた。

 

あちこちで一個小隊並みの歩兵が軍旗を持って大声を上げながら走っていた。

 

その中には当然ジョーレン・バスチル少佐率いる特殊部隊も含まれていた。

 

彼らだけは常に装備品を全て付けたフル装備のままどの部隊よりも大きな声でランニングを行なっていた。

 

先頭を走るジョーレンの後に隊員達は歌を続ける。

 

各地の惑星防衛軍が歌い継ぎ、帝国軍や新共和国軍など多数の替え歌が存在するちょっとした軍歌だ。

 

今回は彼ら特殊部隊の仕様になっている。

 

「俺たちゃ無敵の特殊部隊〜♪」

 

『俺たちゃ無敵の特殊部隊〜♪』

 

「バケツ頭をぶち殺せ〜♪」

 

『バケツ頭をぶち殺せ〜♪』

 

「ブリキ野郎の首も折れ〜♪」

 

『ブリキ野郎の首も折れ〜♪』

 

「敵艦基地をぶっ壊せ〜♪」

 

『敵艦基地をぶっ壊せ〜♪』

 

「ウォーカー・タンクをぶっ倒し〜♪」

 

『ウォーカー・タンクをぶっ倒し〜♪』

 

「生かして返すな帝国軍〜♪」

 

『生かして返すな帝国軍〜♪』

 

「よーし!この一周で切り上げる!総員三分の休憩を取った後に各分隊事に訓練開始!」

 

『了解!!』

 

隊員達の威勢の良い声が聞こえジョーレンは目線をジェルマンの方に向けた。

 

彼は今ジョーレンが考案した特殊部隊用の大量のトラップと仮想敵が仕掛けられた専門の訓練器具を使って訓練を行なっていた。

 

隣には一時期ジョーレンの部下でもあったヘンディー曹長がいる。

 

遠くから曹長のジェルマンを励ます声と絶叫に似た奇声を上げるジェルマンが確認出来た。

 

「後少しです上級中尉!頑張って!頑張って!」

 

爆弾を飛び越え泥に塗れ匍匐前進しつつブラスターで仮想敵の鹵獲したプローブ・ドロイドや訓練用のセキュリティ・ドロイドを撃破していた。

 

ブラスターをピストルに持ち換え素早く二発放ち二体のセキュリティ・ドロイドの機能を停止させる。

 

訓練である為放たれる弾丸もショック・モードだ。

 

歯を食いしばり今にも死にそうな顔を浮かべながらジェルマンは立ち上がり敵の弾丸を掻い潜りながら配布されたA280Cブラスター・ライフルで残りのドロイドを全て機能停止にした。

 

そのまま滑り込むように目的地に飛び込みブラスター・ライフルを構えながら周囲を確認する。

 

敵の存在がなくなり周囲がクリーンになった事を確認したジェルマンは急いで腕のアーマー・ブレスレットから優先コードを抜き目的地の端末に差し込んだ。

 

ブレスレットからホログラム状のモニターとキーボードが出現した。

 

息が切れそうな中、そこに情報書き換えと制圧を行う為のプログラムを打ち込みわずか数秒でシステムを占拠し訓練は終了した。

 

「終了です!筋がいいですね上級中尉!これなら特殊部隊としてもやっていけますよ!」

 

「ハァ…ハァ…ハァ……そりゃどうも……嬉しく……ハァ……嬉しくないですが……」

 

ジェルマンはコードが刺さったままジェルマンはA280Cブラスター・ライフルを抱き沈み込むように地べたに寝転んだ。

 

汗が垂れ流れ衣服越しでもコンクリートのひんやりとした冷たさが感じられる。

 

「あ”ぁ”……死ぬ。こんなキツい訓練初めてです……」

 

朦朧とする意識の中ジェルマンはそう愚痴を漏らした。

 

訓練が始まって以来毎日がスパルタそのものだ。

 

朝起きて朝食を摂ったら早速ランニングを行い専門の特別トレーニング訓練と部隊と合同で行う訓練を行いそれを何度も繰り返していた。

 

その間にもジェルマンは何度も同じように「いよいよ死ぬ」と愚痴を溢し毎日しっかり訓練をやり遂げ生き延びていた。

 

「上級中尉は体力なくても根性があるんだから大丈夫っすよ。さあ立って下さい!休憩挟んでうちの分隊と合同で訓練開始です!」

 

「そうそう、根性だけはあるからな〜」

 

奥から聞き馴染みのある声が聞こえた。

 

フル装備のジョーレンだ。

 

ヘンディー曹長の言葉に同調しジェルマンを見下ろしていた。

 

「さっ流石に……キツい…!アカデミーの何倍も……!」

 

「そんなにか?」

 

ジョーレンは首を傾げた。

 

確かに特別に組んではいるが容量的には通常の特殊部隊の訓練の要領と大体同じだ。

 

しかし訓練を監督しているヘンディー曹長はジョーレンに言い放った。

 

「まあ普通の訓練の二、三倍要領あると思いますが…」

 

「やっぱり……」

 

「えっちょ…」

 

一気に味方を失ったジョーレンは言葉を失い急におどおどし始めた。

 

2人の圧に押され気まずくなったジョーレンは咳払いで流れと話を変えた。

 

「まっまあお前は間違いなく短期間で並みの隊員より強くなってる。しかも情報部員としな。この作戦の成功率がどんどん上がってるって事だ」

 

「それは何となく感じるけど…」

 

「なら後やる事はひとつだ。ひたすら訓練して体力付けて兵士として研ぎ澄まして行くしかない」

 

「ああ…そうだってなんかやりこめられたんだけど!?」

 

怒り出すジェルマンを放置しジョーレンはヘンディー曹長に次の予定を伝える。

 

「さー休憩挟んで全体で訓練だ。しっかり休んどけよ」

 

「おい待てこら!……はぁ……」

 

ジェルマンの怒り虚しくジョーレンは部隊の方へ戻っていった。

 

ジェルマンはため息を吐き再び地面に倒れ込んだ。

 

青空に薄らと雲が掛かりその合間を何度もスターファイターが通って行った。

 

ふと目線を横に移せば何台も輸送用スピーダーが忙しなく物資を運搬し下士官兵達だけでなく将校達も落ち着かない様子だった。

 

歩きながら資料を見せ合い言葉を交わす将校やコンテナに積み込まれた武器を降ろす兵卒の姿が見える。

 

訓練を終えたスターファイターが指定の発着場に着陸し今し方訓練を終えてきたと思われるパイロット達が次々と歩いてきた。

 

ジェルマンはそんな様子を眺め一言呟く。

 

「いよいよ…か…」

 

いよいよ戦いが始まる、張り詰めた緊張がその一言と共に吐き出された。

 

不安や緊張がないどころか不安と緊張だらけだ。

 

この作戦は本当に失敗出来ないし成功した後の事も分からない。

 

それでも作戦を実行し成功させる事が帝国打倒への一歩である事は疑いようがない。

 

その期待感は僅かなものだったが間違いなくジェルマンの中にある不安や緊張を緩和してくれていた。

 

手のひらを空へ突き上げぎゅっと握りしめる。

 

「待ってろよ帝国軍、今までの借りは必ず返してやる」

 

ジェルマンの誓いは発着場から再び空へ飛んだスターファイターに運ばれていった。

 

 

 

 

 

 

-帝国領 インナー・リム ゼル星系 惑星ゼルトロス周辺域 第四司令ステーション-

ステーションの内部構造はインペリアル級やアークワイテンズ級のような標準的な帝国宇宙軍の艦船と同じ造りであり司令室も内側から見ればスター・デストロイヤーのブリッジそのものだ。

 

無機質な暖かみのない灰色の床や壁に白く冷たい照明。

 

通路をストームトルーパーの一個分隊や警備の宇宙軍トルーパーが足音を立てながら通り過ぎていく。

 

時折将校や下士官が別部署へ報告に向かう為に通路を歩いたり勤務を終えた兵器技術者達が自室やシャワー室に戻る程度で後は静寂が残されていった。

 

アストロメク・ドロイドや清掃中のマウス・ドロイドの電子音が通路にはよく響いている。

 

ステーションのスター・デストロイヤークラスが入港出来るドックには未だ一隻も入っておらず空の状態だった。

 

度々哨戒用のTIEファイターがステーションから発進し任務に向かっている。

 

この手のタイプの基地は未だ性能的には一回り劣る通常のTIE/ln制宙スターファイターが使われていた。

 

新型の主力機が優先的に回されるのは常に宇宙空間を航行し敵を討伐しに向かう宇宙艦隊だ。

 

ステーションは二の次、どうしてもそうなってしまう。

 

それも国防宇宙軍の管轄でこんな重要度の低いステーションなら尚更だ。

 

「それでようやくゼルトロスから移動か」

 

「はい、マンダロア宙域に移動しローリング大将軍の支援に当たれと」

 

基地司令官のヴァインズ大佐が副官のラヴィー中尉から報告を受けていた。

 

ヴァインズ大佐は四十歳後半の男性で黒い髪と口元の髭には徐々に白髪が混じり始めていた。

 

随分とくたびれた軍帽を被り階級章は若干曲がっている。

 

正に覇気というものがまるでない人物だ。

 

彼は長らくステーション司令官を続け配属された領域の警備に努めた。

 

と言ってもそれほど熱心なものではなく銀河系の内戦や新共和国、軍将との戦いにも命令されない限り突っ込むことはなかった。

 

だからこそステーションは銀河内戦を通じて常に無傷であり第二帝国に合流出来たのだが。

 

本来ヴァインズ大佐ほどの年齢であれば早ければ既に宇宙軍の提督、遅くとも准将、少将くらいは言っていてもおかしくないはずである。

 

されど未だステーション司令官の大佐というのは辺境域出身で功績が少ないだけでなく彼自身の問題だろう。

 

一方のラヴィー中尉は二年前に国防学校という名の帝国アカデミーを卒業したばかりの若手の士官だ。

 

アカデミーを中尉で卒業出来る程のエリートではなかったが功績を重ね去年中尉に昇進した。

 

典型的な野心的な士官であるラヴィー中尉は今すぐにでも艦隊勤務となり戦功を重ねたいと切に願っている。

 

「ローリング大将軍か…あまりいい顔をされなさそうだ」

 

「ですがこれは武勲を立てるチャンスです」

 

「旧型のTIEファイターしかない我らで何が出来るか」

 

中尉の意見を横に流しヴァインズ大佐は司令室に入った。

 

司令室の護衛の宇宙軍トルーパー2人に敬礼されドアが開く。

 

司令室の何人かの将校や下士官からも敬礼を受けヴァインズ大佐もラヴィー中尉も敬礼を返した。

 

「司令官、ハイパースペースに妙な物体反応を検知しました」

 

センサー士官のブリフィア伍長が司令室に入ってきたばかりのヴァインズ大佐に報告する。

 

大佐はため息を吐きながら伍長の下に近づいた。

 

「我が軍の艦船ではないのか?」

 

「いえ、スター・デストロイヤーにしては質量が小さ過ぎます。それに先程出港した“トラベル・アウト”と“フラッグ・ソーティ”が帰還するには早過ぎます」

 

ブリフィア伍長はヴァインズ大佐に返答した。

 

二隻とも親衛隊宇宙軍所属のインペリアルⅡ級スター・デストロイヤーで同じ階級だがヴァインズ大佐よりも十歳ほど若い将校が艦長をやっていた。

 

親衛隊の艦長や乗組員達は皆何処か傲慢で気に触る部分があったが別にヴァインズ大佐はさほど気にはならなかった。

 

尤もラヴィー中尉の方はかなり苛立っていたが。

 

「この辺りの領域を民間船が通るとは思えません」

 

「そうだな、一応予備のファイター中隊を集めておけ。それと砲塔の準備とシールドの展開もだ」

 

中尉の進言を受け入れヴァインズ大佐は対策を取った。

 

「了解」

 

他の士官達もそれに従い作業を始める。

 

「杞憂に終わるといいのだがな」というヴァインズ大佐の予想はこの後すぐ裏切られる。

 

大佐がビューポートに目線を向けた瞬間彼らは現れた。

 

ハイパースペースから新共和国軍が現れたのだ。

 

二隻のネビュロンBがジャンプアウトしフリゲート艦を取り囲む様にXウィングやAウィングがジャンプアウトする。

 

3機の編隊を組みスターファイター隊がステーションに攻撃を仕掛け始めた。

 

赤いレーザー弾が飛び散り偏向シールドと装甲を破ってステーションにダメージを与える。

 

攻撃の振動が司令室まで届きヴァインズ大佐達は一瞬揺れた。

 

「敵スターファイターの攻撃です!」

 

「見れば分かる!対空砲及びターボレーザー用意!敵部隊を撃破しろ!偏向シールドとファイター部隊の展開も急げよ!」

 

「はっはい!」

 

ステーションに警報が鳴り響き一様に慌ただしくなった。

 

司令室では各部署へ命令を送り出し通路には何十人以上の兵器技術者やファイター・パイロット達が通路を走っている。

 

XウィングやAウィングの攻撃が時々ステーション内を激しく振動させ被害を与えるが偏向シールドの展開が強化された事によってその被害も少なくなっていた。

 

何基かのステーション局所防衛砲台が起動し黄緑色のレーザー弾をスターファイターに浴びせ掛ける。

 

敵機は器用に攻撃を躱し肉薄してステーション内に攻撃を与えようと取り憑き始めている。

 

それを支援する為ネビュロンBもターボレーザー砲やプロトン魚雷を発射しステーションに攻撃を開始していた。

 

「敵艦隊の艦砲射撃です!スターファイターもシールド内に侵入し直接攻撃を仕掛けています!」

 

伍長の報告を聞いたラヴィー中尉が意気揚々を意見を提出する。

 

「連中の火力で我がステーションの偏向シールドと装甲が破れるものか!TIEファイターを一気に出して押し潰しましょう!」

 

「ああ…だが練度と性能では向こうが上……我々単体で撃破するのは難しい。ターボレーザーとイオン砲で敵艦を抑えろ。トバイス大尉」

 

命令を付け加えヴァインズ大佐はステーションの航行管理士官の名前を呼んだ。

 

大尉は速やかに敬礼し「なんでしょうか」とヴァインズ大佐に顔を向けた。

 

「スター・デストロイヤークラスの救援を呼びたいのだが当てはあるか?」

 

「先程駐留していた“トラベル・アウト”と“フラッグ・ソーティ”はもう呼び出す事は出来ません。他のインペリアル級も同様です」

 

「ならヴェネター級でもヴィクトリー級でも構わん!救援を呼び出せ!」

 

ヴァインズ大佐は苛立ちながらトバイス大尉に言いつけた。

 

横に控えているラヴィー中尉は少し不満げな表情のまま大佐に進言した。

 

「お言葉ですが大佐、我がステーションの戦力ならあの程度の戦闘船団など撃破可能です」

 

「だがな中尉、無茶して敵を殲滅するより圧倒的な力を持って抑えるのが常策ではないか。無茶する必要はない」

 

「しかし大佐…!」

 

「パトロール艦の“サンダーハード”なら一分以内に到着可能です」

 

2人の会話の間に割り込みトバイス大尉がヴァインズ大佐に進言する。

 

「級種はなんだ」と素早くヴァインズ大佐が尋ね返す。

 

「ヴィクトリーⅡ級です、それとヴィクトリーⅠ級の“へヴィーレイン”も間も無く到着すると!」

 

「そうか!よし、攻勢はヴィクトリー級二隻に任せて任せて我々はひたすら防備に徹しろ!敵部隊を押さえ込むんだ!」

 

不満げな中尉を無視しヴァインズ大佐は命令を出した。

 

既にTIEファイターの三個中隊ほどがスクランブル発進し敵のXウィングやAウィングの迎撃を始めている。

 

ネビュロンB二隻もステーションのターボレーザー攻撃を回避しつつ体制を立て直そうとしている為以前よりも攻撃は薄かった。

 

「敵スターファイターの45%がステーションから離脱していきます!」

 

「間も無くヴィクトリー級が到着します!」

 

「おお!その調子で防衛を続けろ!いいぞ!こちらの勝利はすぐ目前だ!」

 

次々と飛び交う良い報告にヴァインズ大佐は今までにないほど高揚の表情を浮かべていた。

 

勝利は目前、その言葉の前にどう高揚を抑えられようか。

 

そしてその勝利(Victory)を模り艦名に宿したスター・デストロイヤーは報告通り姿を表した。

 

「ヴィクトリー級“サンダーハード”、“へヴィーレイン”!到着しました!」

 

「よし!」

 

ステーションの上空に二隻のヴィクトリー級スター・デストロイヤーが出現した。

 

両艦ともネビュロンBにターボレーザー砲を放ちヴィクトリーⅠ級の“へヴィーレイン”は震盪ミサイル発射管から次々とミサイルを撃ち出し二隻のネビュロンBに殲滅の一撃を与える。

 

一隻のネビュロンBのエンジン部にミサイルが被弾し速力を失い更にヴィクトリー級の攻撃を受け続けていた。

 

偏向シールドが剥がれ既に船体は限界間近まで攻撃を受け続けている。

 

しかし敢えてなのか不幸中の幸いなのかエンジン部が大破したネビュロンBが盾となったおかげで残りのスターファイターとネビュロンBがハイパースペースに突入し離脱する事が叶った。

 

爆炎を上げ崩れるように沈みゆくネビュロンBの姿を見て司令室は悦びに包まれていた。

 

「敵を追い払ったぞ!よし、今のうちに哨戒機を出してパトロールを行え。それとステーション内の応急修復も急がせろ!」

 

「了解!」

 

勝利の昂揚に包まれるヴァインズ大佐とは裏腹にヴィクトリーⅡ級“サンダーハード”の艦長、ヘルガー中佐は浮かない険しい標榜をブリッジで浮かべていた。

 

「ようやく一隻か…!追撃準備、ジャンプの用意だ!まだ燃料と弾薬は足りるな?」

 

敵艦撃破を喜ぶ事すらなく航行士官にハイパースペースへのジャンプと追撃を命じ戦備士官や補給士官らに弾薬と燃料を確認した。

 

他の乗組員も皆余裕のなさそうな表情で作業を進めていた。

 

それもそのはず、この手の襲撃は一度や二度ではないのだから。

 

先程まで“サンダーハード”はゼルトロス周辺の別のステーションの救援に駆け付けていた。

 

それも一度目ではなく三度目の出撃だった。

 

本来“サンダーハード”が配属されているのは隣の宙域で惑星セレジアのパトロール艦隊所属であった。

 

しかし所属宙域でも二度同じような新共和国軍の襲撃があり追撃を重ねた結果このゼルトロスまで到着したのだ。

 

「はい!ハイパードライブも後五、六回までなら連続ジャンプ可能です!」

 

「弾薬物資の面から言ってもまだ戦闘可能です」

 

「よし!周辺領域全ての報告に意識を向けろ、襲撃の報告があればすぐにジャンプするぞ!」

 

「ハッ!」

 

再び戦闘用意を開始しブリッジの慌しさが増した。

 

報告や戦闘要員の転換指令をヴィクトリー級のあちこちに出し出撃体制を整えている。

 

中佐もようやく一息付けるという段階にいた瞬間通信士官から報告が舞い込んできた。

 

「艦長!惑星ヴィルジャンシの駐留ステーションが新共和国軍の奇襲を受けたと報告が入りました!」

 

ヘルガー中佐の目がガラリと変わりすかさず命令を出す。

 

「よし!直ちにジャンプの用意だ!今度こそ敵を…」

 

「艦長!アンブリアでも同様に襲撃の報告が!」

 

「何…!?」

 

「ゴースでも新共和国軍の攻撃を受けた報告が入ってます」

 

次々と入る襲撃報告にヘルガー中佐は困惑の表情を浮かべる他なかった。

 

「惑星ヴェナも同様に…」

 

「そんなに一片になんとか出来ん!ああ……とにかく、ヴェナは遠すぎるしゴースは現地の飛地軍に任せておけばいい…!我々と“へヴィーレイン”でヴィルジャンシとアンブリアに向かうぞ!」

 

「了解…!」

 

苛立ちと困惑の混じり合った表情でヘルガー中佐は命令を出す。

 

敵の読めない行動に翻弄されているに等しいこの状況では仕方ないだろう。

 

それも、真の目的ではないと知れば余計にその苛立ちは加速するだろうが。

 

 

 

 

 

-ディカー基地 臨時国防本部 大臣室-

「各地での陽動の攻撃は成功しています」

 

ディゴール大臣の連絡担当士官であるドーン少佐は端的にホログラムを眺める大臣に告げた。

 

周りには数名の幕僚将校と大臣の補佐役として各地の新共和国の残党軍から集められた政治補佐官や官僚が少佐の報告に耳を傾けている。

 

「帝国軍は撹乱され親衛隊、国防軍含めた艦隊がイセノ周辺を出立しました。我々が攻撃に打って出る予定の期間には既にイセノ本星は空に等しいでしょう」

 

ドーン少佐の報告を証明するようにホログラムの艦隊が新共和国軍が奇襲を掛けた惑星周辺に集まり始めていた。

 

その様子を見つめディゴール大臣は唸りを上げる。

 

幕僚将校のハントラスト中佐はディゴール大臣に進言する。

 

「帝国軍、特に親衛隊はここ最近戦力を西側に回しています。こないだもハット・スペースから一個小艦隊ほどが西に向かったとか」

 

「帝国が西側に集中しているのは明白です。その為いくらイセノとは言え現段階では守りは薄いはず」

 

別の幕僚将校がそう進言しそれに政治補佐のハレスト補佐官が付け加えた。

 

「ガー議員、オーガナ議員ら暫定議会も作戦は承認済みです。このまま予定通り結構しましょう」

 

「ああ、特殊部隊の訓練はどうなっている?」

 

「バスチル少佐のおかげでみるみる内に強くなっていますよ。成功間違いなしの精強な部隊に育っています」

 

「そうか…一番の要の部隊だがやはり彼に任せて正解だったな」

 

さも当然のようにディゴール大臣は返答しホログラムを操作した。

 

他の将校達はいまいち納得いかない中ディゴール大臣は「後は艦隊編成だな…」と独り言を呟いていた。

 

大臣にとっては当然であっても他の将校達にとっては当然ではない事が一つだけあった。

 

その事を問う為にハントラスト中佐が勇気を持ってディゴール大臣に尋ねる。

 

「大臣、一つだけ宜しいでしょうか?」

 

中佐の声を聞きディゴール大臣は顔を向けた。

 

「なんだ?」

 

「特殊部隊の部隊長の事です。何故バスチル少佐に一任したのですか?」

 

「彼の功績は見れば分かる事だと思うのだが?それに同盟軍時代は部隊長を務めた経験もある」

 

「それは分かります。ですが少佐は本人も言っていたように八年以上のブランクがあります」

 

「ああ、だが彼にはそのブランクすら覆すだけの変え難い経験がある」

 

「何ですか?」

 

ハントラスト中佐は尋ねた。

 

それに対しディゴール大臣は頭を上げ彼の方を向いた。

 

「銀河共和国、予備役青年部隊。最終的にCOMPNOR(共和国保護委員会)のSAグループの前身の組織。彼はそこの出身だ」

 

「あの“()()()()()()()()”と呼ばれた組織ですか?」

 

「そうだ、だが実際には付け焼き刃などではない。青年部隊は確かに役に立っていた。帝国が全ての公式記録を抹消したが私は知っている。あの組織は秘密裏に優秀な生徒を割り出し少年兵として育てていた」

 

「いや……まさかそんな…」

 

ハントラスト中佐は微笑を浮かべ「そんなはずありませんよ」と大臣に言った。

 

まるで陰謀論でも聞かされているような雰囲気だ。

 

だが大臣は顔色ひとつ変えず中佐に話し続ける。

 

「現に私がこの目で見たのだ。まだグランド・アーミーの少尉をしていた若い頃、私は確かに5、6人の青年部隊の卒業バッジを付けた少年兵達を見た。だ幼い15歳程の少年達が戦果報告を聞かされ勲章を貰っていた。私より5歳も年下の子供がだ」

 

大臣は鮮明にあの時の事を思い出した。

 

確か乗っていたスター・デストロイヤーは“インフィディテイター”という艦名だったろうか。

 

戦闘していた地上から回収されてそのまま味方の惑星に向かっている頃だった。

 

あの日は確かやたらと作戦が上手くいった覚えがある。

 

連隊の進撃は今までの日ではなくすぐ分離主義者達を打ち倒せた。

 

惑星防衛軍から引き抜かれたディゴール大臣は少尉のままある連隊長長の補佐官に当てられ最終的には大尉まで昇進した。

 

その後帝国があまり雰囲気的には好きではなく元いた惑星防衛軍の少佐の称号のまま帰化したがそんな事はどうでもいい。

 

問題はその後だ。

 

スター・デストロイヤーの艦内で通路を歩いていると作戦室から声が聞こえた。

 

誰かいるのかとふと目を向けてみればそこには軍の制服を着た少年達が上官と思われる軍曹と大尉から表彰を受けていた。

 

15歳程度の少年達ばかりでその目は濁った水よりも深く、暗く光が失われ濁っていた。

 

表情からも喜びなどといった感情はあまり感じられなかった。

 

ディゴール大臣はあの光景が未だに忘れられない。

 

あの子供達のこの世の終わりのような希望のない、絶望感に包まれた表情が今でも脳裏に焼き付いている。

 

「彼ら少年兵は記録には残らないが多大な成果を上げた。だからこそバスチル少佐は同盟軍の特殊部隊員としてもトップクラスのエリートだった。そしてそれは今も同様だ。舞い戻ってきた彼は凄まじい戦果を挙げ今も特殊部隊をより強化してくれている。だから私は彼に安心して部隊を任せられる。今回の作戦も必ず成功させてくれるさ」

 

そう、彼らは失敗しない。

 

失敗しないように育てられてきた。

 

だからこそ信頼出来る、それは嘘ではない。

 

だがそれは形容せざる過程を踏んで出来た産物だ。

 

本来生まれてきていいものではない。

 

あの目をした子供達が生まれてはいけないのだ。

 

そんな未来な作れるとしたら是非とも自ら作り上げたいものだ。

 

私の手で必ず。

 

 

 

 

 

 

-惑星アンシオン 第三帝国臨時総督府-

第三帝国とファースト・オーダーの同盟の締結は当初の緊張からは考えられない程スムーズに進み両者は正式に手を組んだ、

 

双方手を取り合う利も、敵対する害もすぐに見極められたからだろう。

 

何よりファースト・オーダーの第三帝国に対する態度が交渉を一番スムーズにしただろう。

 

()()()()()()()()()()”、そのスローネ大提督の言葉が証明されたに等しい。

 

そして彼らは細かな同盟内容を決定する為に会場をラゴのステーションからアンシオンの総督府へと移した。

 

アンシオンの軌道上には二隻のエグゼクター級と一隻のアセーター級含めた計三隻のスター・ドレッドノートがインペリアル級数十隻の艦隊を並べて空を埋め尽くしていた。

 

スローネ大提督やヒェムナー長官、シュメルケ上級大将やフューリナー上級大将達の主要人物が到着しているにも関わらず空中には何百機程のスターファイターやシャトルが飛び交っている。

 

「凄い数のお偉い方々ですね」

 

通路脇で将校達の到来を見送るヒャールゲン中佐はそう感想を呟いた。

 

ジークハルトも小さく頷き口を開く。

 

「彼らの護衛任務の一つが我々にも託されている。私は旅団を非常事体制にして周辺に展開しておくから君は麾下部隊を率いて直接警護を頼む」

 

「了解、そういえばアデルハイン中佐とハイネクロイツ中佐は?」

 

「2人は既に前準備に移って貰っている。ハイネクロイツは先行してパトロールしてると思う」

 

「なるほど、ヴァリンヘルト上級中尉は何処に?」

 

「トイレ」

 

「ええ…」

 

「謎の緊張で腹を壊したらしい。しかし一時期はどうなる事かと思ったがどうやらこれでひとまず戦闘は終結しそうだ」

 

ジークハルトはそう会話のついでにボヤいた。

 

本来ならこのままラゴまで進撃し周辺の服属しない旧帝国勢力を殲滅する予定だったがファースト・オーダーとの同盟締結のお陰でこれ以上の戦闘はなさそうだ。

 

晴れてコルサントに帰還……とまではいかないかも知れないが少なくとも束の間の休息は取れるだろう。

 

本当なら今すぐにでも家族の下に帰りたいところだが。

 

「そうですね…となると私は臨時の憲兵総監の職もこれまでとなりそうです」

 

何処か寂しそうな表情を浮かべるヒャールゲン中佐の発言を聞きジークハルトはふと思い出した。

 

そうだ、彼はあくまで臨時でありこの戦いで一旦旅団からは離れるのだ。

 

「再び総統府警護か?」

 

ジークハルトの問いにヒャールゲン中佐は「うーん」と小さな軽い唸り声を上げ答えた。

 

「まだ分かりませんが…総統が命ずるのなら何だって致しますよ」

 

「そうか…」

 

ジークハルトは小さく相槌を入れ納得したような表情を作り出す。

 

中佐はしっかりとジークハルトの方を向き手袋を脱いだ素手の状態で手を差し伸べた。

 

「この旅団で私もしっかり果たすべき義務とノルマをこなせました。ありがとうございます、旅団長」

 

微笑を浮かべ素直に謝辞を述べられた為少し照れ臭い感じがする。

 

ジークハルトも手袋を脱ぎ照れ臭さを微小に変えてヒャールゲン中佐の手を力強く握った。

 

「ああ、君が総監であったおかげで旅団の規律も整っていた。ありがとう中佐」

 

2人は暫し想いを込め力強く握手を交わした。

 

恐らくこの後正式に総監職が変わるだろうがそれでもいい。

 

しかし2人の握手は遠くからの士官の声によって遮られてしまった。

 

「ファースト・オーダー、指導教育長官閣下のご到着です!」

 

一斉に通路に屯していた将校や下士官達がずらっと綺麗に整列し静かに出迎える体制を作った。

 

ジークハルトとヒャールゲン中佐も同じように整列しピシッと斜め45度の天井に目線を合わせた。

 

親衛隊将兵の間を数人の軍人達が歩く。

 

所々改造された帝国軍の軍服を着た一団、彼らがファースト・オーダーなのだろう。

 

皆階級章はそれぞれ佐官や将官の上級将校ばかりだがその中で1人だけ旧帝国軍と同じ将軍の階級章を持つ者がいた。

 

その男はやたらと隣に控えている恐らく宇宙軍所属と思われる艦長に話を振っていた。

 

「彼ら…親衛隊と言ったか?中々にいい軍服だな、エドリソン」

 

「ああ」

 

「ファースト・オーダーも同じような意匠を取り入れるべきだと思うか?エドリソン」

 

「さあ、専門じゃないから。それは君の役割だろう?」

 

若干嫌そうな表情を浮かべるファースト・オーダー宇宙軍のエドリソン・ピーヴィー艦長は小さくため息を吐いた。

 

あまりこの将軍を好いていないのだろう。

 

ジークハルトはあの髭の生えた赤毛の将軍を知っている。

 

彼の名前はブレンドル・ハックス、以前は将軍などではなく惑星アケニスのアケニス・アカデミーの司令官であったはずだ。

 

あれはもう十年以上前の事だ。

 

帝国ロイヤル・ジュニア・アカデミーを卒業し上のアカデミーに進学する時期にジークハルトはあのハックス司令官に声を掛けられた。

 

何でもアケニス・アカデミーで新たな学科コースが設立しそこに進学しないかと言われた。

 

教育内容や権威はこのジュニア・アカデミーの直系の上位アカデミーである帝国ロイヤル・アカデミーと同じで中尉での昇進が約束されていた。

 

ジークハルトは一瞬だけこのアカデミーへ進学する事も考え教官やフリズベン上級将軍とも相談した結果このままロイヤル・アカデミーに進学する事になった。

 

当時のハックス司令官、ハックス将軍はかなり残念がっていたが帝国ロイヤル・アカデミーを卒業した後はもはや関係のない過去の話となっていた。

 

恐らく向こうも覚えていないだろう、何せその後はヤヴィン戦、エンドア戦、帝国の内戦期ととてもではないがそんな少年を一々覚えていられる状況ではなかったからだ。

 

それにハックス将軍も新共和国軍の攻撃を受けて戦死したものだと思っていた。

 

「ん?」

 

件のハックス将軍が何かに気づいた表情を浮かべていた。

 

一瞬こちらを見たような気がするが気のせいだろうか。

 

すると突然ハックス将軍が動き出した。

 

こちらに近づいている気がするが気のせいだろうか。

 

いや、気のせいだろう。

 

何故かヒャールゲン中佐含めた周囲の目線がこちらに集まってる気がするが気のせいだろう。

 

そうであって欲しい、そうであってくれ、本当に。

 

それとも自分の格好がおかしいのだろうかと全身をくまなく見つめたが特に何もない。

 

気がつけばハックス将軍は何故かジークハルトの前に来ていた。

 

「何か…?」

 

ジークハルトは恐る恐るハックス将軍に尋ねた。

 

ハックス将軍は顎髭を触りながら口を開く。

 

「君は……もしかしてジークハルト・シュタンデリス候補生か…?」

 

「はい、ジークハルト・シュタンデリス上級大佐です。今は親衛隊の第三機甲旅団の旅団長を務めています」

 

驚いた、向こうもこちらの名前と存在を覚えていた。

 

周囲の視線が集まる中ハックス将軍はジークハルトの挨拶を聞きどこか満足と納得を浮かべた表情で話し始めた。

 

「そこまで昇進しているとは…!やはり私の見立てに、いや“教育”に間違いはなかったようだな!」

 

少し腹の出た巨体を踊らせハックス将軍は喜びの念を上げていた。

 

「以前アケニスでの特別コースの提案をしただろう?」

 

「はい、辞退させて頂きましたが…」

 

「だが今こうしてその若さで上級大佐をやっている。それは君の才能だけでなくジュニア・アカデミーでの経験の賜物だろう」

 

確かに帝国ロイヤル・ジュニア・アカデミーでは通常のアカデミーよりもより多くの技術や経験を積んだ。

 

それが今の昇進に直接的な関係があるのだろうか。

 

ハックス将軍はジークハルトに口を開く間も与えず喋り続けた。

 

「私は幼少からの教育こそが真の忠誠心を持った最強の兵士を生み出すと考えている。どうやら君は私の理論の証明者の1人のようだな」

 

「はっはあ…」

 

「是非ファースト・オーダーに居て欲しかったよ。私の頼もしい補佐官としてな!」

 

「ハックス、そろそろ行くぞ」

 

彼の背後に控えていたピーヴィー艦長は興奮気味に持論を展開するハックス将軍を呼び止めた。

 

「おっと」と気を取り直したようにジークハルトの肩を2回ほどポンポンと叩きハックス将軍は一団の中に戻って行った。

 

会場へ向かうハックス将軍の姿をジークハルトはただ黙って見るだけしかなかった。

 

「知り合いですか?」

 

ヒャールゲン中佐はジークハルトに尋ねた。

 

「ああ……だが、何だったんだ?あれ」

 

余りの事にジークハルトはまるで状況やハックス将軍の言葉が飲み込めていなかった。

 

 

 

 

 

 

ディカーの新共和国軍総司令部には各地に点在する新共和国軍全ての上級将校が集まっていた。

 

殆どがホログラムでの出席で司令部にいるのはディゴール大臣やハン、ルーク、レイアと言ったほんの少人数だったが。

 

「作戦の準備は全て整った。決行は明日、行う予定だ」

 

ディゴール大臣の発言にその場の全員が一瞬だけ鋭い緊張感に襲われた。

 

新共和国の再起を掛けた作戦がついに実行に移されるのだ。

 

『合流する艦隊は既に予定のポイントに待機している。いつでも君の麾下部隊に入れるぞ』

 

アクバー元帥はディゴール大臣に報告し大臣も「助かります」と一言礼を述べた。

 

『ヤヴィンの艦隊も帰還が成功しました。後はひたすら敵の主力を引きつけ防衛に徹するのみです』

 

ヤヴィン星系周辺が包囲されている事で釘付けになっている帝国軍の戦力はバカにならないものだ。

 

もしあの艦隊が今にでも封鎖を解きインナー・リムやコア・ワールド、コロニーズに戻ればこの作戦は成功しないだろう。

 

明日陥落してもおかしくない最大の危機を迎えているヤヴィンの部隊が小さく大きなチャンスを生み出しているのだ。

 

『スターファイター中隊もいつでも援護に向かえる状態です』

 

スターファイター隊の上級指揮官であるヘラ・シンドゥーラ将軍はそう報告した。

 

今回は彼女のゴースト号と新設されたフェニックス中隊も戦いに加わってくれる。

 

ロザルを解放した不死鳥達が再び銀河を解放する為に立ち上がるのだ。

 

「こっちの戦力も準備が完了している。とりあえず俺とルークが指揮を取る予定だがどっちか特殊部隊の支援に向かうかもしれん。そん時は頼むぞ」

 

ホログラムの先でシンドゥーラ将軍とルークの戦友でもあるウェッジ・アンティリーズ中佐は頷いた。

 

向こうにはレッド中隊やファントム中隊といった精鋭部隊がいる。

 

「それとこれは私からの提案なのだが新共和国に1人、将軍を増やしたい」

 

将校達の目線がディゴール大臣に集まった。

 

大臣はそのまま「議員達の了承は既に受けている」と続ける。

 

その事を表すようにガー議員とレイア、セルヴェント外相が頷いた。

 

しかしレイアは何処か乗り気ではない様子だ。

 

『誰が将軍に?まさかバスチル少佐ですか?』

 

ホログラムの上でブロックウェイ中将はディゴール大臣に尋ねた。

 

しかし大臣は首を振る。

 

「少佐ではない、もっと別の人物だ」

 

『では誰にするのだね?』

 

アクバー元帥はディゴール大臣に尋ねた。

 

他の上級将校達の期待が高まる中ディゴール大臣はその人物の方をむき遂に口を開いた。

 

「スカイウォーカー中佐、今こそ君の力を借りたい。名誉将軍という形ではあるがどうかこの称号を受け取ってはくれないだろうか」

 

ハン含めたその場の全員がルークの方を向いた。

 

ルーク自身驚いている様子だったしそれとは別に少し困惑し不安な表情を浮かべていた。

 

「古来よりジェダイとは人々を救う将軍であり、君自身デス・スターを破壊し大きな功績を我らに齎してくれた。どうか再び我らを導く一つの希望であって欲しい」

 

「他の方々はどうお考えですか?」

 

セルヴェント外相はアクバー元帥らに尋ねた。

 

何人かは沈黙し唸りを上げる中ルークの隣から賛成の声が上がった。

 

「俺はいいと思うぜ。この基地に将軍がもう俺1人ってのは少し寂しかったんでな。お前ならみんな付いてくる」

 

「ハン…」

 

親友でもあり“()()”でもあるハンは賛成を示した。

 

彼に続き他の将校達も賛成する。

 

『私も、スカイウォーカー中佐なら任せても良いと思っている』

 

『この状況では致し方ないだろう』

 

ライカン将軍は頷きアクバー元帥もそれに同調した。

 

シンドゥーラ将軍も何も言わず微笑を浮かべながら黙って頷き戦友のウェッジ・アンティリーズ中佐も「おめでとう」と少し早すぎる祝辞を述べていた。

 

ある程度全員の賛同を得た上でディゴール大臣は再びルークに声を掛けた。

 

「後はスカイウォーカー中佐本人のみだ」

 

「僕は……」

 

ルークは俯き考えた。

 

名誉将軍、ディゴール大臣は恐らく再びこの銀河に“ジェダイ将軍”を蘇らせようとしているのだろう。

 

共和国を導く象徴として、ジェダイ将軍とは絶対的な希望となる。

 

だがそれでいいのか。

 

それが本当に進むべき道なのだろうか。

 

それがジェダイのあるべき姿なのだろうか。

 

過去と同じように本来行うべきではない事を行うのが正しいのか。

 

悩んだ、彼はこの時計り知れない程悩んだ。

 

ルーク・スカイウォーカーはジェダイだ、だがジェダイとは兵士ではない。

 

本来は平穏が続くなら軍隊を退役し再び新たなジェダイ・オーダーを作るつもりだった。

 

以前とは違い政府や軍隊から離れた光明面(ライトサイド)の道をフォースの子供達と行く本来のジェダイ・オーダーを。

 

だが第三帝国の存在は無視出来ない。

 

彼らもやがてフォースの子供達を利用し再び暗黒面(ダークサイド)の戦士を作り上げるだろう。

 

それこそ“父”のような。

 

彼らは倒さなければならない、だがその為には過去のジェダイと同じく少し道を逸れなければならない。

 

何が正しいのか、それが本当の行くべき道なのか。

 

だが、だがもし自分の代で道に逸れる事を終えられるのなら。

 

それ以降のフォースの子供達が戦う事のない未来を得られるのなら。

 

この道も正しいのかもしれない。

 

「分かりました、その称号を受け取りましょう」

 

ルークの決断は重たく絶対的なものだった。

 

その決断を皆は拍手で認めていた。

 

「ありがとう、“()()()()()()()()()()”。そしてこれからもどうか頼むぞ、“()()()()()()()()()()”」

 

この銀河系に再び“()()()()()()”とその名を宿した名将“()()()()()()()()()()”が蘇った瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

-ディープ・コア 特別造船所-

コツコツと、数人の足音が聞こえ灯りの薄い暗がりを進んで行く。

 

ブラスター・ライフルを持った護衛は皆帝国軍の将校や下士官、地上軍トルーパーが身に着けるアーマーを着ているが帝国軍の兵士ではなかった。

 

この造船所の周辺にはEE-730輸送船やアークワイテンズ級、ヴィクトリー級やそれらの艦隊を束ねるプロキュレーター級スター・バトルクルーザーやマークⅡタイプのプリーター級スター・バトルクルーザーが停泊しており兵士達同様どれも帝国軍や親衛隊のものではない。

 

「なあヴァティオン、ほんとにここになんかあんだろうな?」

 

コートを着たヴァティオンの隣を歩く口髭の生えた恰幅のいい男性はそう親しげに言葉を返した。

 

先程から落ち着かない雰囲気で帽子を脱いだり被ったりしている。

 

「安心しろオルトルフ、心配しなくても間違いなくある。だから帽子はしっかり被っとけ、気になる」

 

「アッハッハ、すまねぇ。だが心配でな」

 

帽子を被り直しクワット・ドライブ・ヤード本社の重役であるオルトルフ・パーキスは笑って彼に軽く謝った。

 

オルトルフは惑星クワットを未開の惑星から開拓した十個の貴族家のうちの一つ、パーキス家の嫡男だった。

 

この十家は仲が悪かったりスパイ合戦をし合ったりなど色々大変な時期もあったが少なくともヴァティオンとオルトルフの時代は皆仲が良かった。

 

全員が共和国、その後の帝国に忠誠を誓いクワットは銀河系の治安と共に安定を築いたのだ。

 

オルトルフはその中でもヴァティオンの親友で本社の重役でなく惑星クワット内の市長も務めている。

 

他の十家もクワット・ドライブ・ヤード社の重役やその子会社の社長、クワットが保有する植民地の管理者や惑星クワット内の統治者の職を担っていた。

 

プレスタのような責任総督をになっている者も以前はいた。

 

「ほら、ついたぞ」

 

ヴァティオンが指を差し目の前のドアが開いた。

 

一行は恐る事なくドアに入りそこに広がる光景を2人は眺めた。

 

「これは……!」

 

「ああそうだとも…!言った通りあったんだよここに…!俗物の手に渡るには惜しい一隻が…!」

 

一瞬にしてオルトルフとヴァティオンは興奮状態に入りキラキラ目を輝かせ見入った。

 

まるで大きな子供そのものだ。

 

「軍将デルヴァードスは恐ろしいものを遺していった。それも見事に未完成で第三帝国はこの存在を知らない。全く最高だよ」

 

「いやはやこいつはすげえや、船体が全部“()”で覆われてるぜ。そのデルなんちゃら将軍は面白いやつだな」

 

オルトルフは隅から隅まで姿を見渡し帽子を押さえた。

 

興奮で今からでも踊り出したくなる気分だ。

 

「さしずめ“夜の槌(Night Hammer)”と言ったところだな。連中が持っていた軍艦類は全て第三帝国に押収されたが“()()()”は違う。見事に残っている」

 

「まあ軍将如きがコイツを完成させられるわけがねぇ。頑張っても後四年くらいは掛かるが俺達の技術力と資源なら?」

 

「一年、半年、いやこれだけ既に出来ていれば三ヶ月で完成する」

 

その瞬間2人は突然高らかにハイタッチした。

 

満面の笑みも相まって本当にデカい子供達だ。

 

「誰か監督者としていい人材はいないか?」

 

ヴァティオンは突然冷静になり隣のオルトルフに尋ねた。

 

オルトルフは少し考え彼に答えた。

 

「うちの奴にワイファンっていう甥っ子がいてな、そいつなら適任だ。要領があるし頭もいいし何よりにお上にバレた時の逃げ足が早い。こないだもトワイレックのスパから飛んで逃げてきたのを見て」

 

「ああもう十分だ、彼に任せる」

 

「で、造ったらどうするんだ?あんなの置いておく倉庫も寝床もないぞ?」

 

オルトルフはヴァティオンに尋ねた。

 

この巨体、造ったとしても隠しておく場所がない。

 

しかしヴァティオンはチッチッチと指をやり答えた。

 

「当然売ってやるさ、その相手ももう決まっている。第三帝国よりは小さいが人としてはいい連中だ」

 

「へえそうかい。じゃあ早速呼んでおくぜ」

 

「ああ、任せた。だが“()()()”か……夜の槌というよりは“()()()()”と言った感じだな」

 

ふとしたヴァティオンの独り言にオルトロフは口を挟んだ。

 

「じゃあ変えちまえばいいじゃねぇか。最初に作ってたデルなんとかさんはもういねぇんだ、お前が新しい名付け親になっちまえ」

 

「なるほど、それもいいな」

 

オルトロフの提案を採用しヴァティオンはジッとそれを見つめ口を開いた。

 

「“()()()()”……なんてのはどうだ?」

 

「なんだよそれ、あんま変わんねぇじゃん。まあでもカッコいいな」

 

「だろ?よし決まりだ」

 

ヴァティオンは再びそれに目を向けた。

 

夜を征く黒き騎士の槌。

 

その鉄槌が何を意味するのか、誰に対して振り下ろすのか。

 

まだ誰も知らない。

 

だが期待と希望は託された。

 

黒色の“騎士の槌(Knight Hammer)”に。

 

「頼んだぞ、“ナイト・ハンマー”」

 

 

 

つづく




わ し じ ゃ よ

ちなみにスパイスお嬢様にバブみを覚えた人は頭がおかしいと思うのでEitoku Inobeと一緒にミンバンへ行きましょう


そいではいつの日かまた〜
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