-コルサント 親衛隊本部-
親衛隊の本部はかつてのCOMPNORアーコロージーの隣に位置付けられた。
アーコロージーには以前のように保安局、情報部、親衛隊上層部、親衛隊保安局、親衛隊情報部が入っていた。
ジークハルトと彼の麾下連隊の1/3はこの本部に移動した。
「それにしてもコルサントにお引越しとは…うちの連隊も連隊長のご家族もびっくりだ」
彼の親友であり第六親衛連隊の副隊長であるフリーツ・アデルハイン少佐はカフェテリアでカフを飲みながらふと漏らした。
ジークハルトの方はブラック・スパイア・ブリューを飲んでいた。
「ああ…そろそろだな…」
「ちゃんと休暇は取ってありますよね中佐」
「当たり前だ中尉、戦勝休暇という事でまあいいだろう」
「仕事は任せといてくれ」
「助かるよ」
2人の信頼の大きさをヴァリンヘルト中尉はソーダをちびちび飲みながら見つめていた。
すると誰かが中尉の肩を掴んだ。
「よお連隊の皆さん、ティータイムか?」
「ハイネクロイツ…パイロットスーツの方がキマって見えるよ」
「褒め言葉として受け取っておきますよ」
見るからに大きいこの男はランドルフ・ハイネクロイツ少佐。
第二十一飛行大隊の副隊長でありシュワルツ中隊の中隊長でもあった。
アカデミーを少尉で卒業した彼はスカリフ軌道上のシールドゲートに配属になった。
そこで彼はスカリフの戦いという歴史上重要な意味を持つ戦闘が初戦となった。
孤立無援の中ハイネクロイツは己の機体を操り3機のXウィングと1機のYウィングを撃破した。
その後母艦であるシールドゲートが破壊されてしまい彼は4時間ほど寒く孤独なTIEファイターの中で過ごした。
救援は来たがほとんどが反乱軍を追う為に去って行ってしまい結局救出されたのは戦闘が勃発してから4時間後になってしまった。
だがここでの熾烈な戦いが後のハイネクロイツにとって重要な意味を成した。
その後マコ=タ戦、ホス戦後の追撃戦、エンドア戦、フォンドア戦、ガリタン戦などを戦い抜いた。
結果彼は少佐となり撃墜スコア33機という戦果を残した。
そして親衛隊に移籍し親衛隊のTIEパイロットという職を手にれたのだ。
「…そろそろだな」
「何だ連隊長閣下は用事でもあるのか」
「知らないのか?ほらユーリアが…」
「あぁ…ふーん…久しぶりの時間楽しめよ連隊長」
理由を察するとハイネクロイツ少佐はニヤニヤ笑っていた。
ヴァリンヘルト中尉も何を思ったのか同じように笑みを浮かべていた。
アデルハインは苦笑を浮かべていたが。
「それじゃあ行って来る」
-コルサント宇宙港-
一隻のテイランダー・シャトルが宇宙港のドックに入った。
乗客のほとんどはコルサントへの移住者だった。
以前は移住者よりも旅行客が多かったのだが銀河内戦、帝国の敗北後は減少傾向にあった。
治安の悪化や惑星内で勃発した内戦が主な理由だろう。
実際の所あのまま臨時政府に任せていたら今頃コルサントは見る影もなかったはずだ。
ある種復活した新たな帝国に救われた事となる。
『間も無く本船はドックに入船します、お荷物のお忘れなきようお願い致します』
ドロイドの声が船内に響き乗客たちはそれぞれ荷物を持ちシートベルトを外し始めた。
「お母さん、今日から僕たちここに住むんだよね?」
「そうよ、きっとコルサントはいい所よ」
背が高く美しい顔の母親はそう息子を宥めた。
少年はワクワクしながらずっと窓の外を眺めていた。
そんな時間も瞬く間に過ぎシャトルはドックに入船した。
「さあ行きましょう」
母親は手を繋ぐとシャトルを降りた。
他にも多くの乗客が一斉にシャトルから降りた。
その中で母親と少年はキョロキョロ誰かを探していた。
「あっお父さんだ!」
探していた相手はすぐに見つかったようだ。
何せ親衛隊の軍服を着ており誰よりも目立っていたからだ。
「マイン!元気にしていたか?」
「うん!」
少年マインラート・シュタンデリスはシャトル内では見せなかった眩しい笑顔を父ジークハルトに向けた。
そんな様子を彼女の妻でありマインラートの母親であるユーリア・フリズベン・シュタンデリスは微笑ましい気持ちで見つめていた。
「お元気そうで何よりですわ貴方」
「必死ぶりだユーリア、君とマインこそなんともなさそうで嬉しいよ」
「今日からお父さんと一緒に暮らせるんだよね?」
「そうだよ、明日も明後日も休暇を取っているから一緒だ」
「やったー!」
マインラートは無邪気な笑みを浮かべた。
この笑みほど親が嬉しいものはないあろう。
「でもいいの?そんなに休暇を取って」
「連隊には他のメンバーもいるし当分戦いもないだろうし大丈夫さ」
妻を安心させる為にジークハルトは微笑んだ。
「それより早くお家に行こうよ!」
「ああ…そうだね」
久しぶりにジークハルトは家族3人で手を繋いで歩く事が出来た。
-ジャプレイル宙域 帝国軍事境界線-
コルサント戦、クワット、コレリア、フォンドアの声明発表後各地の境界線には大きな緊張が走った。
さらに関係が悪化し戦闘状態に陥るかもしれないからだ。
それに緊張状態の中では両軍の艦が1cmでも境界線を破ったら大変な事になる。
その為にも両軍は巡回艇を回し両国を監視していた。
帝国軍は主にレイダー級コルベットやアークワイテンズ級司令クルーザー、グラディエイター級スター・デストロイヤーなどが巡回任務に回されていた。
以前のようにインペリアル級を回せる程帝国宇宙軍は豊かではない。
それでも主要な造船所地帯が帝国に味方してくれたおかげで時期に艦船不足も解消されそうだ。
「こちら帝国軍レイダー級“ハウンド”、新共和国所属の前方コルベットに次ぐ」
レイダー級コルベットのハウンドは徐々に前進してくる目の前のCR90に通告した。
このままでは後3分もしない内に境界線を飛び越え帝国領に侵入されてしまう。
その為にもまずは警告からだ。
「このままでは軍事境界線に突入する、反転し引き返せ」
警告はハウンドの艦長が直接行っていた。
言葉はあまり乱暴ではなかったが内心とっとと失せてくれと言った心情だった。
しかしコルベットは減速も反転もせず巡航速度を維持したまま真っ直ぐ進んでいた。
流石に艦長も腹が立ってきた。
「聞こえているかコルベット!このままでは軍事境界線に侵入する、侵入した場合こちらは相応の処置を取るぞ」
遠回しにコルベットを脅したがコルベットは引き返そうとしなかった。
そこで艦長は威嚇射撃としてターボレーザーを放つよう命じようとした。
しかし予想外の出来事が起こった。
「艦長、コルベット艦から爆発を確認!これは…新共和国のXウィングに追われています!」
「馬鹿な!?となると亡命か…?」
コルベットは小爆発を起こしそのすぐ近くを3機のT-65 Xウイング・スターファイターが通り過ぎた。
Xウィングは何度もコルベットを攻撃する。
辛うじて偏向シールドで防いでいるようだが時々ダメージを負っている。
後方にはCR90とブラハトック級ガンシップがコルベットを追っている。
「どうしましょう艦長…」
副長の中尉が心配そうな表情を浮かべている。
後もう少しで境界線に入れそうなのだがこのままでは攻撃を受け沈んでしまう。
「言った通り威嚇射撃だ…」
「えっですが…」
艦長は今にも吐き出しそうな表情をしていた。
威嚇射撃とは言え一発でもXウィングに当てては大変な事になる。
だが一番有効な策である事は間違いない。
「全砲門を使って威嚇射撃だ急げ!」
「はっはい!」
“ハウンド”の艦内が一様に慌ただしくなる。
これは乗組員達にとっての一世一代の大博打だ。
「全砲門用意完了!」
「よし…」
艦長は頷き自分を落ち着かせる。
「撃てー!!」
レイダー級の最大火力が発揮された。
全ての砲弾が無事威嚇射撃として効力を発揮した。
一発も当てずXウィングを追い払ったのだ。
お陰でコルベットは無事境界線内に入れた。
「トラクター・ビームを!コルベットを引っ張れ!」
“ハウンド”のトラクター・ビームが起動しゆっくりと引き寄せた。
しかし追っ手のCR90の砲撃がハウンドに直撃した。
幸い偏向シールドで防いだが微弱な衝撃が艦内を襲った。
だが何をしようにもコルベットはもう帝国領に完全に入っていた。
新共和国の追撃部隊は仕方なく撤退していった。
直後“ハウンド”とコルベットは近くの駐留ステーションまで撤退した。
このコルベットの亡命は帝国、新共和国において大きな波乱を呼んだ。
帝国は亡命して来た者達をどう扱うか考え新共和国は今後の亡命対策を考える緊急会議を開いた。
帝国としてはまず疑いや懸念を持った。
「新共和国が非常時に備えてスパイを潜り込ませているのでは」とか「何かの陰謀ではないか」など様々だ。
実際は本当に亡命されていてそれらの懸念や疑いはまるで意味などなかったのだが。
亡命に対する衝撃は新共和国の方が大きかった。
誰がどのくらい亡命したのか、一体何が持ち逃げされたのか、亡命理由は何だったのか、どうして発見が遅れたのか。
軍部でも官僚の間でも元老院でも同じような議題が持ち出されていた。
当然両国の境界線には今まで以上の緊張が走った。
それだけには留まらず他の惑星政府も戦争になるのではという不安が過っていた。
特に新共和国軍の駐留地がある惑星では重苦しい中会議が開かれていた。
最悪戦闘に巻き込まれ基地のみならず市街地や公共施設にも被害が及ぶ危険があるからだ。
基地がない惑星もほとんど同じ状態だった。
戦果に巻き込まれなくても経済面などでは被害を被るだろう。
民衆もそうだ。
ある者は街中で危機を訴え、またある者は酒場で陰謀論を唱え、ある者は有識者ぶって持論を酒の匂いと共に展開したりした。
だが誰も亡命による真の影響に気付いていなかった。
逃亡の一連劇でどんな影響が出るか。
そして亡命者たちは恐ろしい物を持ち逃げしたのだ。
特に宇宙軍にとっては選曲を一気に覆せる程の物だった。
-コルサント 旧連邦管区 帝国評議会ビル-
既に評議員たちに召集がかかっており全体の9割近くの評議員が議会ビルに集まっていた。
残りの1割の評議員達は忙しさ故かホログラムでの参加や到着の遅れが主な理由だった。
「どいてくれ、すまない、おいブロンズベルク!」
評議会の大臣席に向かう外務大臣マティアス・ゼールベリックは一向とともに席に着くと防衛大臣の名を呼んだ。
耳のいいブロンズベルク大臣はすぐ振り返った。
「どうしたマティアス、亡命の件については私も知らん」
「ああやるなら少なくとも大臣メンバーと帝国軍全体にある程度の通達を出すだろうからな」
ブロンズベルク大臣はあまり秘密主義を由としないタイプであった。
秘密主義を貫いた結果何処かで混乱が生じたり自身に対する信頼や信用が落ちてしまう事を知っているからだ。
また亡命の手引きなどは軍部というよりは情報部の仕事である為大臣のブロンズベルクが計画するなどあり得ない。
「じゃあ誰がやったんだ…?こっちは各惑星政府や新共和国からの対応に忙しすぎる」
「外交関連に関しては今の帝国で右に出る者はいないだろう、これも一つの試練だ」
「そう思うとする…その為にも軍の情報が欲しい、対応に当たったコルベット艦を今すぐ」
「もう召還を掛けている、一連の報告書は既に送ったさ」
2人が頷いていると総統府長官ハインレーヒ・ルイトベルンと総統が議会に現れた。
全員が拍手で出迎える。
形式的な物だが中には本当に感極まった表情をしている評議員もいた。
2人がそれぞれの席に座ると早速議会は始まった。
「今回の緊急事態に際して議会を招集した、まず亡命者だが…」
帝国の役人が数名出て来た。
「軍部の協力により現在はクワット経由でコルサントに護送中です」
「亡命者は元老院議員アルセン・バレム、保安評議会ルイズビット・チェコスタ、セフ・コンドレクス・ホウブレン」
役人の1人がファイルを読み始める。
どれも重役ばかりだ。
「元老院情報委員会ルーズ・イルセ、艦隊司令部クリティス・ジュノール、そしてコルベットの艦長ダリック・ネイツと乗組員46名、その他50名です」
どれも重要な部門の役人だ。
しかも元老院議員まで亡命しているとは。
評議員達が騒然となった。
「他にも新共和国の内部資料などを奪取し亡命しました」
議員や官僚の汚職や新共和国の密約など公には出来ない資料が大半だが中には新共和国軍の新型スターファイターや兵器の設計図も存在していた。
どちらにせよ帝国にとっては有益な物ばかりだ。
ハインレーヒが合図を出し役人達を下がらせる。
「総統閣下や我々としては彼らの勇気と決断力を称賛し亡命者を向かい入れる事を提案する、賛成者は投票を」
大臣や評議員達が賛成の立場を露にする。
結果は満員一致だった。
「では満員一致という事で次の議題に移行する」
-新共和国首都 ホズニアン・プライム 元老院評議会ビル-
同刻、新共和国元老院でも議会が開かれていた。
しかしこちらはよく言えば活発な意見交換、悪く言えばヤジの応酬で全く進展を見せていなかった。
「ですから亡命者を取り締まる為にも警備を活発にすべきです!現在の防衛艦隊や警備隊の規模では足りません」
「軍拡しろと言うのか!」
「この軍国主義者め!」
さっきからこの有様だ。
批判ばかりで互いの意見には耳も貸そうとしない。
「静粛に」
遂には議長の静止すら聞かなくなった。
現在の議長はモン・モスマから別の最高議長になっておりそのせいなのか議長の権威や威厳は損なわれていた。
元老院は2つに分かれ始めた。
モン・モスマの思想や政策を引き継ぎ守ろうとする勢力。
情勢下を心配し軍備の増強を求める勢力。
どちらの信念立派なものだがそれに準じる元老院議員達は殆どがお世辞にも有能だとは言えなかった。
おかげで亡命者や帝国の再興なども放置され今のような状態に陥ってしまったのだ。
当然まともな元老院議員も何人かはいる。
しかしそうじゃない議員によってその言葉は圧殺され何も活かされていなかった。
「帝国軍は日に日に勢力を拡大しつつある!親衛隊だって存在している!連中は再び脅威となったのです!」
「そうだ!」
「何もせずに殺されるぞ!」
「では偉大なモスマ前議長の政策を破棄しろと言うのか!」
「帝国の二の舞だぞ!」
「辞めちまえクソ野郎!」
「帝国の二の舞?
それぞれ品のないヤジと共に理論を展開していた。
そんな様子を新共和国の元老院議員で前内戦の英雄的存在であるレイア・オーガナ議員は呆れて頭を抱えながらため息を吐いた。
新共和国の誕生以前から関わって来た者からすればため息の一つや二つくらい出るだろう。
「ひどいもんですな…相変わらず」
「ええ、批判ばっかり…どちらの主張も現実的じゃない」
レイアの発言に同じく元老院議員のタイ=リン・ガーは苦々しい表情で頷いた。
新共和国創設当時から元老院議員となっていたレイアとガー議員の親交は深かった。
互いに主義や主張が似ていると言った理由もあるだろう。
そしてお互いに現在の新共和国の有様を見てため息を吐いていた。
「あなたはどう思う、帝国がいて元老院はバラバラ、こんな状態でもし戦争でも起きたら」
「クローン戦争の再来になるかそれとも新共和国は何も出来ず滅びるかのどちらかでしょうね、少なくとも前者は奇跡が起きない限りあり得ない」
「今の防衛軍では防ぎきれないとお思いで?」
「防ぎきれはするでしょう、でもいつかはきっと守れなくなる」
レイアは悲観的な表情を浮かべていた。
その気持ちがわからないガー議員ではない。
どうしようもない思いを抱えながら2人は元老院議員としての職務を果たす他なかった。
昔はコルサントに、特にコルサントのギャラクティック・シティに住むという事はそれだけで大きなステータスになった。
当然新共和国時代の到来によってそれはもう過去の物となった。
再び変革を遂げたコルサントがどんな未来を辿るのか期待される所だ。
「ほんといいマンションを見つけましたわね貴方」
「コルサントにしてはいい家賃の家だしね、設備もいいし」
「新しいうちは広いね」
マインラートは家の中をキョロキョロしながら感想を述べた。
「キッチンも広くて腕が捗ります、マインご飯出来たわよ」
「はーい」
マインラートが席に着く頃には豪勢な料理がずらりと並んでいた。
彼女の作る手料理はどれも美味しいと評判だ。
昔は料理人だった事もあった。
「あなたもお酒飲むでしょう?何にします?」
「君が決めていいよ、なるべくウォッカとウイスキーは勘弁で」
ジークハルトは酒を嗜める程度には飲めるのだがウォッカやウイスキーなどは流石に酔い潰れてしまう。
一方のユーリアはかなりの耐性がありウイスキーだろうとウォッカだろうと平気で飲んでいた。
「じゃあメレイゼン・ゴールドにしましょうか」
そう言うと彼女はメレイゼン・ゴールドのボトルを2本持ってきた。
「おいおい流石に一本はきついぞ?」
「まあいいじゃないですか、それじゃあいただきます」
「いただきまーす」
「いただきます」
ユーリアにメレイゼン・ゴールドを注いでもらうと主食のパンと主菜の肉料理を食べた。
味も見た目も何もかも素晴らしいの一言に限る。
そしてメレイゼン・ゴールドを一杯口に含む。
酒とも合う。
「君の手料理は本当に美味しいよ」
「あらお世辞でも嬉しいですわ」
「お母さんのご飯は美味しいよ?」
「ありがと」
「そうだよなぁマイン」
3人は幸せそうにニコニコ笑っている。
久しぶりの家族の時間だらだろうか。
でも理由なんてどうでも良かった。
人並みの幸せが死と隣り合わせの職業においては最高の幸せだった。
特に家族と共にいる時は。
軍人である事を忘れてこのままこの幸せな時が一生続けばいいのにと思うほどに。
夢を見た。
寂しく悲しい夢だ。
ジークハルトは何故か親衛隊ではなく昔の、
そして何もない荒野をただひたすらに歩いていた。
なんの為かはよくわからない。
だが雑草しか生えておらず自然の美しさなどまるでない荒れた大地をひたすら歩いていた。
すると彼の足が突然止まった。
右足を出したジークハルトはまるでその場面だけ切り取ったかのようにピタリと動かなくなった。
彼は見てしまったからだ。
それを一部だけでも見た瞬間ジークハルトの目には涙の光が映っていた。
嗚咽慟哭の唸り声が響き彼はその場に座り込む。
もうこんな光景は見させないと誓ったはずなのに。
言葉ではなく動物のような唸り声だけが荒野に響き渡った。
悲しみと恐怖の入り混じった声は誰に聞こえるわけでもなくただ静かな荒野に響いた。
目の前のあたり一面は死体だらけだ。
それも敵ではなく味方の死体でいっぱいだった。
ストームトルーパーから将校まで、若者から上官まで死体と成り果て転がっていた。
綺麗な顔のまま死んでいった者もいれば悲痛な顔をして惨死した者もいた。
腕がない者もいれば足がない者もいた。
奥先にはそれらが集まり山のように高く積み重ねられていた。
昔見た光景だ。
それも遠くの昔に。
ジークハルトにずっと残り続けているトラウマというべき瞬間だ。
彼の大きな心の傷であり同時に弱点でもあった。
目が覚めた。
まだ真夜中だった。
ベットの隣では息子のマインラートが気持ちよさそうに眠っている。
その様子を見るとほんの一瞬だけ穏やかな気分になれた。
ジークハルトは顔中についている汗を拭い取った。
あの夢か…
長らく見ていないからてっきりもう見る事はないのだろうと思っていたが…
気持ちをもっと落ち着かせる為にも彼はベランダに出た。
コルサントの夜景と共に微風が靡いてとても気持ちがいい。
でも脳裏にはずっとあの光景が映っていた。
「はぁ…」
情けなさと疲れにジークハルトはため息を吐いた。
「あなた…?」
窓の方からユーリアの声が聞こえた。
彼は振り返り罰の悪そうな表情を浮かべた。
「ユーリア…すまない起こしてしまって」
「いいんです、またあの夢を見ましたの?」
彼女はすぐにジークハルトのことを察した。
本当に彼女には頭が下がりっぱなしだ。
「ああ…こんな日に見るなんてな…」
「疲れているんでしょう、こないだだって戦いがあったのでしょう?」
「でも私がいなければ彼らは…」
「そうやって自分を追い詰めないで、貴方もあの人達もきっと大丈夫ですから」
そういうとユーリアはジークハルトの顔を引き寄せ優しくだが力強くキスをした。
妻の温もりを感じたのかジークハルトは少し心が落ち着いた。
銀河が緊張状態に陥り揺れ動く中この2人の夫婦だけは変わらずにいた。
きっとこの先もずっと。
つづく
実に実に馴染むぞぉフハハハハハ
このままどんどん書き進めていざ飽きた時のための保険をとっておかねば(小並感)