第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「我がクワットの建艦力は銀河一」
-惑星クワットのクワット・ドライブ・ヤード本社のポスターの一文-


我が子が行先

-コルサント ギャラクティック・シティ-

陽も落ちて真夜中に入ろうとするこの時間、既にマインラートとホリーは眠りに付きジークハルト宅の部屋の灯りも少なくなってきた。

 

リビングにはマグカップにカフを入れ談笑するシュタンデリス夫妻2人だけがおりとある人物をゆっくり気長に待っていた。

 

「それでその時のことがあってヴァリンヘルト上級中尉を副官にしたわけさ」

 

「何よそれ、てっきりお兄さんのヴィルアスさんにでも頼まれたのかと」

 

「むしろヴァリンヘルト中将にはなんとかお父上に悟られないよう偽装を手伝って貰ったよ。何気に大変だった」

 

どこか喜ばしい苦笑を浮かべながらジークハルトはそうボヤいた。

 

思えばヴァリンヘルト上級中尉もかなり大変な人生を送っているものだ。

 

父親がクローン戦争時代からの歴戦の軍将校で帝国ではCOMPNOR付のモフ、兄も帝国軍の中将で高い軍歴がある。

 

そんな一家の次男坊として生まれ幼い頃から家族の華々しい歴史に触れて気を重くしたことだってあったはずだ。

 

そして退役した父の反対を押し切り帝国軍に入隊しようとした矢先に銀河内戦が終結し肝心のアカデミーが閉鎖、ヴァリンヘルト上級中尉はいく当てがなくなってしまった。

 

途方もなく彷徨ってる時に親衛隊の応募があり上級中尉は密かに入隊し今に至る。

 

和解が苦労しているなと苦労人がふと思っていた。

 

「彼もそろそろ大尉に昇進するかも知れん。尤もその頃には私も准将だろうが」

 

「また昇進の話が?」

 

ジークハルトは小さく頷いた。

 

「バエルンテーゼ上級大将から少し聞いた。一個軍団の指揮官を任されてその後は師団長少将だそうだ。出来ればコルサント駐在のままがいいのだが…」

 

「まあそう上手くはいかなさそうね…」

 

「そう思うか?」

 

「ええ」とユーリアは相槌を打ち「後何回かは別の惑星に派遣されそう」と呟いた。

 

ジークハルトは唸り声を上げため息を吐いた。

 

「閣下曰く他の上級大将達も私やアデルハインが大将、上級大将クラスの上級将校になる事を期待しているそうだ……出来ればもう准将と言わず退役した…」

 

ジークハルトの愚痴を遮りインターフォンが鳴った。

 

2人は顔を見合わせ「ようやく来たか」と頷いた。

 

ジークハルトが席を立ち家のドアを開ける。

 

「いやぁすまない!遅くなった!」

 

「ようやく来たか、後あんまり大きな声を出すなよ?子供達が起きる」

 

「あぁすまんすまん。スターファイター隊のレールツヴァイアー大将に呼ばれててな」

 

待ち人のハイネクロイツ中佐は遅刻理由と共に静かに中へ入りコートとブーツを脱いだ。

 

軍帽を掛け手袋を脱いでリビングへと上がった。

 

「ハイネクロイツさん、お久しぶりです」

 

「ユーリアさん!こちらこそお久しぶりですね」

 

2人は軽く握手しハグを重ねた。

 

すぐに「どうぞ」と出された椅子に座りユーリアに「飲み物お持ちしますね」ともてなしを受けていた。

 

若干すまなそうにしていたが悪い気分ではなかった。

 

「それで、最初に聞いておくとレールツヴァイアー大将には何を言われてきたんだ?」

 

「ん?ああ、なんでも近々大佐への昇進が内定したとかそんな所だ。もう一個大隊の指揮を任されるとか」

 

「お前もか、まあお疲れせん」

 

「ああ、ありがとうございます」

 

ユーリアがカフを入れたコップをハイネクロイツ中佐の前に置き一礼を述べた。

 

コップを持ち上げカフを一口入れると早速本題に入った。

 

「さて、それでマインくんとホリーちゃんのミディ=クロリアン数値を偽造して“特務クラス”に入れなければいいんだな?」

 

ジークハルトとユーリアは小さく頷いた。

 

「2人は間違いなく世に言う“()()()()()()()”だ。数値が高ければ間違いなく親衛隊の特務機関に送られるだろう」

 

「噂のあれか…だが本当にそんなもの存在するのか?」

 

「恐らくは……崩壊した旧帝国の資料にも噂に似た機関があった事を目にした記憶がある。まあ本物は我々が親衛隊の中枢に入った時見れるだろうが」

 

決まりゆく昇進を皮肉りながら噂を半ば断言した。

 

既に始動しているコンプノア・ユーゲントや帝国アカデミーでも何人かの候補生が“()()()()()”への移動として引き抜きが行われている。

 

一見すれば単なるエリート候補生が引き抜かれたようにも思えるが中にはお世辞にも成績がいいとは言えない候補生がいたり逆に成績最上位の候補生が選ばれなかったりと様々な不可解な点がある。

 

それは全てミディ=クロリアン値が高いか、フォース感受者であるかが対象である為なのだが大半の将校はこの事実を知らず疑問に思う時間すらなかった。

 

急速に発展していく第三帝国はある種身内の目を眩ましていたのだ。

 

「まあどの道やることは一つだ。ミディ=クロリアン値とやらのデータを書き換える、恐らく血液検査だろうから書き換えは簡単だ」

 

「そんな簡単に出来ることなのか?」

 

「当たり前だ、これでも俺は元コマンドー志望だ。潜入も書き換えも余裕さ」

 

ニヒルな笑みを浮かべハイネクロイツ中佐は「大丈夫だ」とグッドサインを出した。

 

そんなハイネクロイツ中佐に「ありがとうございます」とユーリアは心からの礼を述べた。

 

「気にしないでくださいよ。こんなんでも自分なりの恩を返しているだけですから」

 

ハイネクロイツ中佐はジークハルトの方を見つめた。

 

もう8年も前、俺もお前もしっかり帝国軍の軍服を着て2人とも尉官だった。

 

今だって思い出すさ、あのスカリフで拾われた時の事を。

 

多分お前がいなかったら俺は間違いなくTIEファイターと一緒に心中していた。

 

お前がいたから、今の俺がある。

 

恩は返すさ、ジーク。

 

それが“()()()()()()()()()()()()()()”の血を継ぐ俺の忠義だ。

 

 

 

 

 

 

 

「おはよー」

 

眠い目を擦りながらマインラートとホリーは寝室から姿を表した。

 

今日はコンプノア・ユーゲントへの入学式だ。

 

いつもより早く起きたし気合いもバッチリ、絶対にいい一日になると言う確信があった。

 

既に軍服を着た父が「おはよう」と朝食を取っており隣の同じ軍服を着た人も「おはよう〜」と手を振り返していた。

 

この時ホリーもマインラートも思っただろう、「誰?」と。

 

「誰…?」

 

そのままの疑問が口から零れ落ちたのはマインラートの方だった。

 

ホリーは怖がったのかマインラートの後ろに隠れその男は「おっと」とジークハルトと顔を見合わせその男は席を立ちマインラートに近づいた。

 

マインラートやホリーと同じ目線に立ちその男は自己紹介した。

 

「ランドルフ・ハイネクロイツ、君たちのお父さんの部下で友達だよ。よろしくね」

 

手を差し出しハイネクロイツ中佐は優しく微笑んだ。

 

マインラートもホリーもそれぞれ自己紹介し中佐の手を掴んだ。

 

「さあ、朝食食べて準備するわよ」

 

「うん!」

 

2人はそれぞれ席に付き朝食を取り始めた。

 

ジークハルトも微笑みマグカップのカフを飲み干すと戻ってきたハイネクロイツ中佐に声を掛けた。

 

「いつの間に勲章なんて持ってきたんだ?」

 

「昨日ついでにな、俺だって出撃したヴァリンヘルトとアデルハインの代理なんだからこれくらい付けてたっていいだろ」

 

「まあな」

 

ハイネクロイツ中佐の襟元には一等白十字勲章が付けられておりポケットなどにもいくつかの勲章が付けられていた。

 

どれも激戦を生き延び戦果を挙げた証だ。

 

ジークハルトの襟元にもハイネクロイツ中佐よりも上の名誉白十字勲章が付けられている。

 

これは以前のホズニアン・プライム陥落戦での戦功を認められ与えられたものだ。

 

2人とも式典に出るのだからいつもよりちゃんとした格好をしていた。

 

飾りとはいえ勲章がある事で2人ともより威厳ある将校に見える。

 

「ごちそうさま」

 

「よし、早速着替えるか」

 

食事を終えたホリーとマインラートは急いでユーゲントの制服に着替え身支度を整えた。

 

ユーリアもしっかり正装に身を包み準備は万端だ。

 

「さて、行きますか」

 

5人は家を出て近くに停泊しているスピーダーに乗った。

 

「運転は俺がする」

 

「安全に頼むぞ、TIEファイターとは違うんだ」

 

「当たり前だろ」

 

ジークハルトは助手席に座りマインラートとユーリア、ホリーは後部座席に座った。

 

システムを起動しハンドルをしっかり握りペダルを踏み込む。

 

スピーダーは前に進みゆっくりと上昇してコルサントのスカイ・レーンに乗った。

 

このスピーダーはいつも乗ってるTIEアドバンストx2と違い癖がなくとても操縦が楽だ。

 

軍用スターファイターとスピーダーを比べる方がおかしな話だが常にスターファイターに乗っているとそうなってしまう。

 

特に試作型のアドバンストx1は通常のTIEファイターよりも何十倍も性能はいいがその分癖が強く一部のパイロットには扱い辛い機体だ。

 

「行き先は……と言っても決まってるか」

 

ハイネクロイツ中佐は運転席からスカイ・レーンに続くとある施設を見つめた。

 

帝国軍一の名門学校、ジークハルトもここを卒業し多くのエリート軍人がそのキャリアの一歩を歩み出した場所。

 

帝国ロイヤル・アカデミー、この名門校の新施設にマインラートとホリーは足を踏み入れようとしていた。

 

 

 

 

 

 

-惑星ケッセル軌道上 ベラトール級ドレッドノート“キング・ケッセル”-

ケッセル軌道上に佇むある一隻のベラトール級ドレッドノート。

 

新たに旗艦として贈呈された超弩級戦艦であり艦名は司令官のクラリッサらによって直接“キング・ケッセル”と名付けられた。

 

ちなみに“クイーン・ケッセル”という案もあったのだがそれはまた別の時に送られるであろう艦船の艦名に取って置かれた。

 

何はともあれケッセルの王たるドレッドノート艦は前々から配備予定だったのだが満を辞して今日ようやく提供された。

 

そしてこの“キング・ケッセル”を見たクラリッサはというと…。

 

「おおおおおおお!!でっけぇですわ!!無茶苦茶でっけぇですわ!!」

 

その大きさと迫力に興奮して子供みたいにはしゃいでいた。

 

他の幕僚達も「これはすごい」と口を揃えて驚き「これさえあれば第三帝国とも…!」と戦意を昂らせていた。

 

「既にサイナー社からのTIEファイターの艦載機及び我が社のウォーカー兵器類も搭載済みです。どちらもお好きに使っていただいて構いません」

 

プレスタは艦載内容を説明しこれら全てをケッセルへ譲渡した。

 

再び幕僚達から喜びと驚きの入り混じった歓声が響いた。

 

隣で補佐としてついてきたアルタースも小さく頷きプレスタの仕事ぶりを見守っていた。

 

子供の頃から面倒見ていた子がこうして立派に仕事をこなしているのを見るとなんだか感動に似た喜びに包まれてくる。

 

「既にお代はあなた方と同盟者から頂いて頂いておりますので、後はケッセル製の燃料提供の方のみです」

 

「ええ!どんどん持っていってくださいまし!」

 

クラリッサは喜んで了承しプレスタも「ありがとうございます」と一礼を述べた。

 

後ろではアルタースも「いいぞ」とグッドサインを出していた。

 

クラリッサが“キング・ケッセル”に見惚れる中控えていたマルスはプレスタ達に一言掛けた。

 

「これだけの大型艦船を製造し中身ごとこのケッセルまで密かに運搬する……相変わらず流石の手際ですね」

 

「お褒め頂きありがとうございます、ヒルデンロード殿。軍事兵器を作り何があっても主人に届けるのは我々の仕事であり天職ですから、何があろうとやり遂げて見せますよ」

 

プレスタは自らの仕事を誇らしげに豪語した。

 

「第三帝国を相手にしながらファースト・オーダー、そしてケッセルまで。あなた方だけで銀河など軽く制圧出来そうだ」

 

「いえ、我々とてそこまでは出来ませんよ」

 

よく言う、とっくの昔にこの銀河の軍事生産を握っているのは彼ら(クワット)だろうに。

 

もはや銀河系は取ったも同然、意図的に戦争を引き起こす事だって可能だし絶対的な武器生産力とクワット本国の顔の広さで調停し早期解決を図る事も可能だ。

 

この軍事産業をビジネス、銀河系の中央政府や中小規模の惑星政府とのコネクション作りと割り切らず本気で裏から介入しようとすれば容易にこの銀河は彼らの手中に収まる可能性すらある。

 

なんなら実力行使でコア・ワールドからコロニーズ程度なら物理的に占領する事すら可能だろう。

 

彼らの軍事生産力はおとぎ話やフィクションすら度肝を抜かすレベルであり絶対的な実績と力があった。

 

尤も本気で銀河を取ろうとしたら裏工作やコネクションなどの膨大で人員の手が回らず破滅の危険性がある為彼らもそこまでは踏み込まないだろう。

 

いくらクワットでもこの銀河は、この世界はたった一つの惑星政府の手に収めるには広すぎた。

 

それはきっと今の中央政府(第三帝国)も同じだだとは思うが。

 

「今は亡き父も助けられたと言っていた事を幼心ながらに覚えています」

 

「パウルス・ヒルデンロード元帥には我々の方が守られました。彼が周囲の危険を顧みず艦隊を派遣していれば我々の駐留艦隊だけでは敗北しクワットは新共和国の手に堕ちていたでしょう」

 

銀河内戦中に新共和国軍は惑星クワットへの攻撃を行なった。

 

その潤沢な生産力を接収、もしくは破壊する事で帝国の残党軍は大いに疲弊し終戦も近づく。

 

しかもその当時は偶々クワットの造船所に二、三隻のスーパー・スター・デストロイヤーが停泊していた為こちらの奪取も狙っての事だった。

 

だが新共和国軍の攻勢は失敗する。

 

ベアルーリン宙域から派遣された艦隊が現地のクワット宙域艦隊と共に防衛戦を展開し新共和国軍を防いだのだ。

 

その一連の戦いでスーパー・スター・デストロイヤーは失われたがクワット自体の造船所や生産力は守られた。

 

新共和国の属国ではなく独立を確保したクワットは第二帝国の基盤となるベアルーリン宙域、ノートハーゼン宙域、ハンバリン宙域、デノン宙域などに優先的に艦船兵器類を提供した。

 

クワットの造船能力がなければベアルーリン宙域軍によるジュートラド会戦はかなり厳しい戦いになっていただろうとの予測が立てられていた。

 

もしあの戦いでベアルーリン宙域が苦戦すれば恐らく第二帝国の建国すら不可能であったし第三帝国がこれほど早期に宣戦布告を成す事も夢のまた夢であっただろうとされている。

 

「それで今後あなた方はどうされるおつもりですか」

 

ペリオル大佐はプレスタやアルタースに尋ねた。

 

それは偏に「今後も我々に協力してくれるのか」という問いだった。

 

答えようとするプレスタを止めアルタースが自ら答える。

 

「全ては帝国の為にです。あなた方が帝国である以上我々は何があろうとあなた方に協力するでしょう」

 

「つまり我々が帝国でなくなった、もしくはそう判断された時には…?」

 

思わずペリオル大佐は更に尋ねた。

 

ケッセルが帝国でなくなった時クワットは何を思い何をするのか。

 

明日を生き抜く為には知っておきたい事だった。

 

しかしアルタースは答えを濁す。

 

「さあ、それを決めるのはヴァティオン・クワットの仕事ですから」

 

会長の名前を出し答えをはぐらかす。

 

ペリオル大佐はこれ以上問い詰める事は出来ず黙りこくった。

 

しかしクラリッサは「気にする事ではありませんわ」と間に入った。

 

「私達は私達の生き方を続けていくだけのこと。表面的な変化を受け入れはしても内なるものは変わりませんわ」

 

アルタースは小さく相槌を打つように頷いた。

 

そして目の前のベラトール級を見つめ一言呟く。

 

「守って見せますわよ、私達の故郷は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クワットからの恩恵を受けていたのはケッセルだけではなかった。

 

銀河から遠く離れたチス・アセンダンシーでもそれは同様に行われていた。

 

一隻のスター・ドレッドノートが二隻のスター・バトルクルーザーと数十隻のスター・デストロイヤーを引き連れ受け渡し場所に近づいてくる。

 

スター・ドレッドノートは近くの移動方のステーションに船体の一部をドッキングさせ人を招いた。

 

19キロの船体を誇るこのスター・ドレッドノートの前ではステーションなど本当に小さく見える。

 

「このヴェンジェンス級ドレッドノート及びアリージャンス級含めたスター・デストロイヤー数十隻、全てあなた方に譲渡します」

 

クワット側の使者であるランザーはチス側の使者達にそう言い放った。

 

元々チス・アセンダンシーの技術の一部を譲渡する代わりに大型艦船を何隻か贈呈する契約だ。

 

既に技術データの方はクワット側に送られ本星の惑星クワットでは解析が進んでいる頃だろう。

 

「ご提供感謝します」

 

チス・アセンダンシー拡張艦隊のネルキィ司令官は軽く頭を下げ機械音声の入り混じる声で礼を述べた。

 

司令官の耳には翻訳機能を兼ね備えたイヤホンが付けられており相手が話す銀河標準語(ベーシック)をチユーン語に即座に訳し発する言語を銀河標準語にして伝える事が出来る。

 

近年では量産と小型化が進みなるべく多くの将校や下士官兵に配備しようと配給が急がれていた。

 

「ヴェンジェンス級…軍の資料でしか確認していませんでしたが実在するとは……」

 

チス・アセンダンシー亡命帝国軍の作戦第一副部長であるアレクサンドル・ヴァシレフスキー少将は艦内を見つめそう呟いた。

 

彼は元はサンクト宙域の宙域軍司令部の参謀将校でエンドア戦後の動乱や亡命後の活躍により将官に上がった。

 

このチス領域において大規模な銀河内戦を戦い抜いてきた将校は大いに重宝されヴァシレフスキー少将は若いながらも優秀な参謀将校として活動していた。

 

「我々も設計図を目にした事はあるのですが現物自体はディープ・コアの秘密造船所にいたこいつのみでした」

 

「帝国はこのような主力ドレッドノートを他にも保有しているのですか?」

 

拡張艦隊のイェルプ上級大佐はランザーに尋ねた。

 

ランザーも「10キロ越えのドレッドノートは他にもありますが19キロのスター・ドレッドノートとなるとこれ以外にはエグゼクター級のみとなります」と答えた。

 

このヴェンジェンス級ドレッドノートはエグゼクター級スター・ドレッドノートに形状が酷似していた。

 

されどヴェンジェンス級はエグゼクター級よりもよりナイフのような船体が特徴的であり武装についてはエグゼクター級となんら変わりはないだろう。

 

クワット本星に設計図のみ存在していたがこれを一から作るとなると流石のクワットでもかなりの時間が必要であり新造は見送られた。

 

されど造船所で途中まで建造され掛かっていたヴェンジェンス級を作り直しようやく一隻完成させたのだ。

 

「これでひとまず第三帝国のスター・ドレッドノートと太刀打ち出来ますね」

 

ヴァシレフスキー少将は参謀総長のボリス・シャポシニコフ元帥にそう告げた。

 

シャポシニコフ元帥は旧共和国軍からの歴戦の参謀将校だった。

 

クローン戦争を共和国軍大佐として生き延びた彼は戦後のでも実直な職業軍人として働き続け統合本部や最高司令部に務めた。

 

また彼の活躍はそれだけでなく帝国アカデミーでも司令官や校長を務め多くの優秀な次世代の帝国軍人を世に送り出した。

 

ヴァシレフスキー少将との出会いもアカデミーの校長と候補生という関係だった。

 

長らくシャポシニコフ元帥の庇護を受けていた彼は元帥を大変慕っておりシャポシニコフ元帥がサンクト宙域の参謀長として赴任した時は大層喜んだものだ。

 

彼の功績は帝国軍の上層部も認め地上軍元帥(Surface Marshal)へと昇進した。

 

彼は亡命後も帝国軍とチス・アセンダンシー軍の再編や強化に務め隠れた銀河最強の軍隊を作り上げた。

 

とある人物との協力によって。

 

「そうならないといいのだがな。同じ帝国同士で戦うにはもう十分だよ」

 

シャポシニコフ元帥は何処か苦々しそうに語った。

 

銀河内戦の末期は所属宙域の同胞や数千億、数兆の市民を守る為に暴徒と化した帝国の元同胞と戦った。

 

もはや思い出したくもない嫌な過去だ。

 

「アリージャンス級とインペリアル級の方の乗組員は?」

 

シャポシニコフ元帥はネルキィ司令官に人員の問題を尋ねた。

 

ネルキィ司令官は「問題ありません」と笑みを浮かべ答えた。

 

「既に技術班がチスと帝国軍兼用のOSを完成させました。チスの拡張艦隊でも十分運用可能です」

 

「シャポシニコフ元帥やヴァシレフスキー少将のおかげで徴兵された兵員も十分な練度に達しています」

 

流石のクワットといえど艦や兵器の乗組員ごと他者に売り渡す事は不可能だ。

 

ある日突然完成された兵士と軍隊が降ってくる事など基本は“()()()()()()()()()”。

 

尤もそのような事を全て一概に言えないのがこの銀河の恐ろしいところなのだが。

 

「アリージャンス級は予定通り第二艦隊とペスファブリ防衛艦隊に配置する。ヴェンジェンス級はこのままシーラまで持って帰るぞ」

 

「はい元帥、兵員を全艦に分けろ。各艦隊司令基地へ連れ帰るぞ」

 

ネルキィ司令官の指示により彼の配下の幕僚や将校達が忙しなく動き始めた。

 

これでチス・アセンダンシー拡張艦隊はより強化され鉄壁の防壁と化すだろう。

 

元よりチスの軍隊は強いがこれに帝国式の軍事とクワットの高品質の最先端兵器が組み込まれる事により経験ある第三帝国の軍にも負けない存在となるはずだ。

 

これだけのものを作り上げたシャポシニコフ元帥が一線を退いても彼らは十分戦える。

 

ヴァシレフスキー少将やアントーノフ大佐らのような後任も十分育っている。

 

本当はこのような危惧が杞憂に終わってくれればいいのだが。

 

「それでは元帥、我々はそろそろ」

 

ランザーはそう言ってシャポシニコフ元帥に握手を求めた。

 

「はい、お元気で」と一言述べて互いに形式的な握手を交わしクワット側の一団はその場を後にした。

 

一行を目線で見送りながらシャポシニコフ元帥は部下達に一言告げる。

 

「我々もシーラへと帰ろう。我々が銀河へ帰る日はまだ当分先の話だろうが」

 

「元帥、我々が銀河へと戻る日など本当に訪れるのでしょうか…?」

 

ヴァシレフスキー少将は不安げな表情でシャポシニコフ元帥に問いかけた。

 

我々が銀河に戻る日など実はもうないのではないか、このアウター・リムの果て、未知領域で消えていくのではないか。

 

それは確かな不安であり多かれ少なかれ未知領域に生きる全ての帝国の者達が思っている事だ。

 

「確かに我々があの故郷へ戻る日はもうないのかもしれん、だが信じよう。我々がいつの日か銀河へと戻れる事を、今は信じるしかない」

 

シャポシニコフ元帥はヴェンジェンス級のブリッジから広大な宇宙空間を見つめそう呟いた。

 

ヴァシレフスキー少将も小さく頷き他の将校達もどこか覚悟を決めたようだった。

 

今はどこか朧げでかすかな希望でも信じるしかない。

 

ヴェンジェンス級は他の何隻かのスター・デストロイヤーと共にハイパースペースへ入った。

 

目的地はシーラ、19キロのドレッドノートは第二の故郷を目指して航路を進む。

 

やがてこの路が、銀河へと続くものであるよう切に願われて。

 

 

 

 

 

 

-コルサント ギャラクティック・シティ 帝国ロイヤル・アカデミー コンプノア・ユーゲント部門-

数千人、数万人近くの親子が我が子の晴れ舞台の為と帝国ロイヤル・アカデミーに足を運んでいた。

 

何台ものスピーダーがスカイ・レーンを行き交い誘導の将兵達が慌ただしく保護者とユーゲントの生徒達を先導していた。

 

無論ジークハルト達もその例に漏れず列に並びマインラートとホリーをクラスの待機施設まで連れてきた。

 

「それじゃあ式頑張ってきてね」

 

「お父さん達も見ているからな」

 

「うん!」

 

「はい」

 

2人に手を振り保護者であるジークハルトとユーリアは室内を後にした。

 

既にハイネクロイツ中佐とは別行動であり2人はこのまま式場へ向かうのみとなった。

 

「しかし凄い人数だな、流石はコルサント中から選別しただけの事はある」

 

「ええ…この学校の子達はみんな親衛隊へ?」

 

「いやそうでもない。国防軍に入る者もいれば政府の官僚や総督、COMPNOR委員になる者だっている。進路はある程度広いよ」

 

とはいえ結局の所第三帝国の中枢を担う人材として扱われそれ以上はないわけだが。

 

彼らは皆第三帝国に将来を期待されし子供達だ。

 

全員ジークハルトや他の者達の後を担う事はこの場所に入った時点で強制となる。

 

それを不幸と思うのか幸福と感じるのかは個人によるだろうが。

 

それでも大多数の保護者達からしてみればコンプノア・ユーゲントへの入学は名誉なことで誇らしいものであった。

 

「式場はこっち……というかなんだ、いつもの場所か」

 

「知っているの?」

 

ユーリアは地図を見つめて納得するジークハルトに尋ねた。

 

「ああ」と小さく頷き少し昔の話を始めた。

 

「通常のロイヤル・アカデミーでもこの会場を使うんだ。私もここで入学し卒業もここで行った」

 

「そうだったのね」

 

「親子二代で……いや親子“三代”で通った道となるわけか。父のバスティもまだジュディシアルのアカデミーだった頃にここにいたと聞いた事がある」

 

このロイヤル・アカデミーも元を辿ればジュディシアル・アカデミーの一つでありバスティ・シュタンデリスやバエルンテーゼ上級大将もこの校の門を潜って今の姿に至る。

 

それはジークハルトもアデルハイン中佐もそうだったしマインラートとホリーもその後に続く事になった。

 

会場にいる何人かの保護者もそうだろう。

 

時折誘導や案内の将兵とは別に親衛隊や国防軍の軍服を着た人達を見かける。

 

彼ら彼女ら全員が帝国ロイヤル・アカデミー卒、ではないが皆現役や退役した軍人達だ。

 

やがてその子らも父や母の跡を継ぐ事になるのだろうか。

 

マインラートやホリーも…。

 

「シュタンデリス上級大佐ですか?」

 

聞き馴染みのある声がジークハルトの名前を呼んだ。

 

ジークハルトとユーリアが振り返るとそこには親衛隊保安局の制服を着た青年が立っていた。

 

先日共にアンダーワールドの治安維持活動を担当したフリシュタイン大佐だ。

 

彼も今のジークハルトと同じように十字勲章などの様々な勲章を身に付けていた。

 

「フリシュタイン大佐、お久しぶり…ですかね」

 

2人は軽く握手しユーリアも自己紹介と共に形式的な握手を交わした。

 

「フリシュタイン大佐も御子息の入学ですか?」

 

ジークハルトはフリシュタイン大佐に尋ねた。

 

「いいえ」と首を振り実情を話し始めた。

 

「親衛隊保安局のハイドレーヒ大将の代理として来賓に参りました。シュタンデリス上級大佐こそ、お子さんのご入学おめでとうございます」

 

フリシュタイン大佐は軽く祝辞を述べ2人は「ありがとうございます」と返礼を送った。

 

この場にいると言うことはある程度察しが付くと思うがきっと保安局には我々の家庭事情など筒抜けだろう。

 

だが“()()()()()()()()()”もある。

 

それだけは絶対に隠さなければならない。

 

「お子さんのご活躍を期待しておりますよ。出来れば父であるシュタンデリス上級大佐のような親衛隊員か親衛隊保安局員になって欲しいですね」

 

ジークハルトは何処か乾いた愛想笑いを浮かべ「それでは」と去り行くフリシュタイン大佐を見送った。

 

彼が去りゆく間に「誰が入れるか」と一言毒付いて。

 

悪いが我々のような道は歩かせない、たとえその過程で何をしようともだ。

 

彼は自ら軍人ジークハルト・シュタンデリスの経歴に泥を塗ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

-ゴーディアン・リーチ ヤヴィン星系 第二防衛線-

スターファイターや主力艦の爆発が宇宙空間で瞬き機体や船の破片の合間を再び何十機ものスターファイターが駆け抜ける。

 

1機のXウィングがTIEインターセプターの背後を捉えすかさず何発もの赤いレーザー弾を撃ち込んだ。

 

攻撃に耐え切れずTIEインターセプターは爆発四散し宇宙の塵へと消えた。

 

Xウィングは素早く反転し別のTIEブルートの横合いから同じようにレーザー弾を打ち出す。

 

流石のTIEブルートもこれには耐え切れず撃墜され近くのアークワイテンズ級の船体に墜落した。

 

しかし2機のTIEインターセプターが敵を排除しようとXウィングの背後に取り付きレーザー弾を浴びせかけた。

 

「レッド12、そのまま耐え切れるか」

 

すぐに助けに来たアンティリーズ大佐のXウィングが真横を通り過ぎたTIEインターセプターを撃墜しながらレッド12に聞いた。

 

華麗に敵機の攻撃を躱しながらレッド12は「まだ問題ありません」と答えた。

 

友軍のサーベル中隊からも2機のAウィングが増援として回されアンティリーズ大佐と共に編隊を組んだ。

 

『ポイント06-3で反転しその隙に仕留めてください』

 

レッド12はアンティリーズ大佐にそう提案し大佐も「了解した」とスコープを覗き込み確実に敵を仕留める準備を始めた。

 

左右に揺れるようにXウィングを操縦し敵のTIEインターセプターを翻弄する。

 

目標の指定したポイントに差し掛かると同時にレッド12は操縦桿を思いっきり持ち上げペダルを踏み込み機体を急上昇させた。

 

突然の上昇に追い付けず2機のTIEインターセプターはターゲットを見失った。

 

だがそれが仇となり反応の遅れた数秒のうちに背後に潜んでいたアンティリーズ大佐らの集中砲火を浴びて2機とも爆散してしまった。

 

『助かりました大佐』

 

「よく耐え抜いたぞレッド12、ファントム中隊、レッド中隊全機集結して中央に浸透攻撃を仕掛ける。戦列に穴を開けてスターホーク級の火力を通りやすくするんだ」

 

アンティリーズ大佐の背後に数十機のXウィングやAウィング、Yウィング、Bウィングといった機体が結集しそれぞれ疎らだが確実に編隊を組み合わせていた。

 

既に遊撃に出たソークー中佐率いるローグ中隊らが帝国軍のスターファイター隊を大きく翻弄しておりその隊列は随分と脆くなっていた。

 

ラクティスの麾下大隊の防戦と爆撃による対艦攻撃も成功を重ねておりアークワイテンズ級やレイダー級のような小型艦の損耗が高まっていた。

 

精鋭部隊の遊撃行動によりいつもよりも全体の負担が減り爆撃隊もTIE部隊の攻撃に曝される危険性も減りつつある。

 

「全機、攻撃開始」

 

アンティリーズ大佐の命令と共にスターファイターがそれぞれ散開し迫り来るTIEインターセプターやTIEブルートと激突した。

 

あちこちで赤と緑のレーザー弾が飛び交い再び膨大な爆発の光を虚空に生み出す。

 

TIEブルートが3機、XウィングとYウィングの編隊に集中砲火をかけようとした瞬間に別の方向からAウィングの奇襲を受け一気に3機撃墜される。

 

飛び去ろうとするAウィングを逃すまいとTIEブルートとTIEインターセプターの編隊が追撃に出るがまた別の中隊機に妨害され編隊の半数が瞬殺された。

 

レジスタンスの機体が帝国軍の機体を1機撃墜する度に別の帝国軍の機体がレジスタンスの機体に取り付きそれを助けにきたレジスタンス機が全て撃ち落とす。

 

銀河内戦を生き延び気心の知れた仲間達が織り成す確実な連携は物量の群れであるTIEファイター部隊の壁を食い破り穴だらけにしていた。

 

アンティリーズ大佐も再び2機のTIEブルートを撃墜しその合間をレッド2含めた3機のYウィングが目の前のレイダー級やアークワイテンズ級に向け爆撃を仕掛ける。

 

プロトン魚雷やプロトン爆弾、イオン魚雷を投下し敵艦に直接的なダメージを与えた。

 

既に瀕死のレイダー級は爆撃を喰らいあっという間に轟沈しアークワイテンズ級も相当の被害を受けレッド2達が離れると同時に爆沈した。

 

『大佐、敵艦隊の戦列に大穴を開けました。今なら全てのスターファイター隊を送り込んでも問題ありません』

 

レッド2は冷静に状況を判断しアンティリーズ大佐に報告した。

 

「よし、ストライン中佐、攻撃開始だ。全スターファイター隊で敵艦の数と砲塔を減らすぞ」

 

『了解!全機、俺に続いて対艦攻撃を開始する!』

 

ラクティスのXウィングの後に数百機のスターファイターが続き一斉に帝国艦隊へ攻撃を仕掛けた。

 

ターボレーザー砲や対空砲を放ち我が身を守ろうとする帝国艦隊だったが既に防衛網は穴だらけで回避も接近も容易だ。

 

スターファイターのレーザー砲や魚雷やミサイルをインペリアル級やグラディエーター級に浴びせ掛け次々と装甲を傷付け砲塔を破壊していく。

 

あるインペリアル級に至っては搭載された八連ターボレーザー砲が全て破壊され主砲が失われ丸裸の状態となっていた。

 

ラクティスも機体を器用に操り友軍機に攻撃を仕掛ける敵機を排除している。

 

爆撃中隊に取り付こうとしたTIEインターセプターにレーザー砲を浴びせエンジンと機体のパネルに致命的な損傷を与えた。

 

コントロールを失ったTIEインターセプターはそのままインペリアル級のブリッジの偏向シールド発生装置に衝突し装置ごと爆散した。

 

意外な戦果によりインペリアル級の偏向シールドは不安定と化し防御力は著しく低下した。

 

「よし、全機もう十分だ。散開して後退し後は艦隊に任せるぞ」

 

ラクティスはスターファイター隊全てに命令し全機、一斉に帝国艦隊から離脱し始めた。

 

追撃しようとするTIEインターセプターやTIEブルートも防御隊形を維持するレジスタンスのスターファイター隊により阻まれ撃破されていった。

 

友軍部隊の退却を終えると後方に控えていたレジスタンス艦隊が動き出す。

 

「敵艦隊の損耗は激しく反撃能力はほぼありません」

 

パーネメン大佐はブリッジで威厳たっぷりに仁王立ちするディクス少将に報告した。

 

ディクス少将は組んだ腕を外し命令を出す。

 

「全艦砲撃開始、帝国艦隊を蹂躙してやれ!」

 

MCスター・クルーザーやスターホーク級が全砲塔を帝国艦隊に向け一斉に砲声を鳴らしてレーザーの砲弾を撃ち出す。

 

主力艦から放たれたターボレーザー砲が弱ったインペリアル級やヴィクトリー級に着弾し次々と大きな爆発の光を上げていった。

 

偏向シールドの薄れた状態での一斉射は有効性が高く撃沈し始める艦も現れた。

 

特にスターホーク級の十門もの八連ターボレーザー砲の火砲の威力は流石と言った有様で次々と敵艦を仕留めていた。

 

破壊されたインペリアル級や軍艦の破片があちこちに散らばり小さなデブリ帯を形成し始めていた。

 

それでもディクス少将麾下の艦隊の砲撃は止むことがなく更に破片を増やし昔年の恨みとも言うべき火力の嵐を噴き出していた。

 

「敵艦隊損耗率、およそ57%を突破しました!」

 

ある士官がディクス少将に報告し彼もブリッジで「いいぞ…」と小さく高揚感を露わにしていた。

 

既に帝国艦隊は壊滅寸前であり徐々に撤退が始まっている。

 

「ポイント22-3まで追撃する、防衛はシェーリスとヘンニスの機動部隊に任せる。全スターファイター隊は補給を済ませて一旦後退せよ」

 

『了解少将』

 

『頼みましたよ叔父貴!』

 

アンティリーズ大佐とラクティスの声が通信機から響きディクス准将も「ああ」と小さく答えた。

 

この第二防衛線での戦いはレジスタンス軍の優勢に終わった。

 

精鋭部隊による撹乱と大規模なスターファイター隊による強襲、そして大型艦船による砲撃が成功し帝国艦隊を退却に追い込んだのである。

 

瀕死のヤヴィンは再び立ち上がろうとしていた。

 

史上最大のスターファイター戦はまだ続きそうだ。

 

 

 

 

 

 

-知領域 チス・アセンダンシー領 惑星シーラ-

エスファンディアから帰還したベラトール級“デスティネーション”がシーラへ帰還し高官達が首都クサプラーに移動した。

 

この都市もシーラ内の他の都市の例に漏れず大部分が氷の大地よりも遥か下層に殆ど移行していた。

 

数少ない地表の人口密集地といえばこのクサプラーの宇宙港程度であろう。

 

区域の殆どは政府の業務や貿易関連であり大多数の施設はアセンダンシー外の訪問者に実際の首都人口よりも遥かに多く見せる為の艤装を兼ね備えていた。

 

その為地下に住むチスは頻繁に地上と地下を入れ替えしながら発展した首都であるという虚偽の姿を見せていた。

 

なされる艤装は市民の入れ替えだけでなく交通、熱源、都市部の光なども含まれておりこれら全てが公式人口700万人の生活を偽の箱庭に映し出しているのだ。

 

これらの努力はハリボテじみた権威的な誇示ではなく大規模な発展した都市を見せる事で敵対者の目を欺き無人地点に無意味な攻撃を行わせる為の防衛措置も兼ね備えていた。

 

最初シーラに亡命してきた帝国軍の将兵や市民もその実態にはかなり驚かされたものだ。

 

ヴィルヘルムもタッグ元帥もシャポシニコフ元帥も他の将兵達全員が感嘆の声を上げていた。

 

そんな宇宙港から地下に移動したヴィルヘルム一行は閣僚達の集まる会議場へと向かった。

 

シーラはかつてのクローン戦争より約千年近く前にチス・アセンダンシーの大戦争の影響により冷たい氷に閉ざされ地表には住めなくなってしまった。

 

当時のチス族の敵はチス・アセンダンシー軍をこのシーラまで押し戻しシーラへ最終的な攻撃を仕掛けた。

 

敗北したチス軍はこのまま滅亡するかに思われていたのだが彼らはStarflash(スターフラッシュ)と呼ばれる古代エイリアン種族の超兵器を保持していた。

 

後に九つの家の一つとなるミス家の4人含めた20人の戦士達がこの超兵器を起動し自らの命と引き換えに敵対者を全滅させた。

 

こうして脅威は去った。

 

だがその代償は戦士達の命だけでなくシーラへの表面の居住が不可能になってしまう事だった。

 

この星も様々な歴史を歩みここまで辿り着いたのだ。

 

「元帥、先程入った通信でシャポシニコフ元帥らがクワットから譲渡艦隊の受け渡しに成功したと」

 

チャルフ准将がヴィルヘルムに受け取った連絡を報告した。

 

後ろの幕僚や高官達もその報告を聞き互いに顔を見合わせていた。

 

「それは良かった、後の動きはシャポシニコフ元帥に任せろ。彼ならば上手くシーラまで運んで来てくれるはずだ」

 

「了解しました」

 

准将はヴィルヘルムの命令を受けその場を後にした。

 

気づけば彼はヴィルヘルム専任の連絡将校になりつつあった。

 

特に一部の将校達かはら確実にそう見られいるのだがヴィルヘルムはともかくチャルフ准将の方は全く気づいていなかった。

 

ヴィルヘルム達が通路を歩いていくと反対側から中将の階級章を付けた帝国軍の将校が数名の部下を引き連れているのを目撃した。

 

通路脇で部下達と何かを話している様子だ。

 

亡命帝国軍の軍服は第三帝国の国防軍同様かなり軍服に改造が施されていた。

 

まずは国防軍同様肩章を追加したという点だ。

 

第三帝国の肩章と違い幅の広い勲章で通常の地上軍、宇宙軍にはワインレッドの肩章の上に金色の階級を示す肩章が取り付けられ二重構造となっていた。

 

これは元々チス・アセンダンシーの肩章が発展したものであり肩章から垂れるベルト共々チス軍から輸入されたもので帝国軍の伝統には元々ないものであった。

 

されど元よりシンプルなデザインの帝国軍の軍服との相性は良く肩章もベルトも問題なく取り付けられていた。

 

元帝国保安局の保安局員やパイロットなどは青や水色の下肩章が敷かれており通常の部隊との違いを示していた。

 

また軍帽も一新され第三帝国同様制帽が正式に復活し殆どの将校が平時では制帽を被っている。

 

しかしデザインは肩章同様第三帝国とは大きく異なり同じ帝国でも彼らはもう別物である事を暗示させた。

 

「“()()()()”中将、軍事顧問としての働き、しっかり耳にしているぞ」

 

ヴィルヘルムは目の前の将校、エンリク・プライド“()()”に声を掛けた。

 

プライド中将はヴィルヘルム達を見るなり部下と共に敬礼しヴィルヘルム達も敬礼を返した。

 

彼は元々亡命した帝国軍の将校では“()()()()”。

 

しかし今では歴戦の経験を活かしてチス軍への軍事顧問、揚陸隊付星系艦隊司令官、揚陸兵団司令官、シーラ軍管区副司令官を兼任している。

 

先日の新拡張宙域での治安維持戦にも参加し周辺の海賊集団を撃滅した功績はチス側にも認められていた。

 

また元々亡命したサンクト宙域にアカデミーの同期や戦友が多くいた為馴染むのも早かった。

 

特に同じアルサカン・アカデミーの同期だったロコソフスキー少将やバグラミャン准将、“ステッドファスト”の上級将校時代に知り合ったヴァシレフスキー少将らとはとても仲が良かった。

 

「君が顧問を務めた部隊はたちまち屈強な精鋭部隊となり君の指揮下で確実な勝利を得ると。ただ事務処理が少しマイナス点だとも聞いているが」

 

「それはお恥ずかしい限りです。しかしそのような事を言っていただけるとは光栄です、モフフェル」

 

「いやいや、事務処理に関してはその手の作業が得意な友人や部下に頼れば良い。私もクローン戦争でそうして活躍してきた将校を何人も見てきた」

 

ヴィルヘルムは彼の欠点をそうフォローした。

 

何もかもが1人で出来る完璧超人などほんの一握りだ。

 

誰かが誰かの欠点を支えて完全な姿になる、それで十分だとヴィルヘルムは思っていた。

 

それにプライド中将にはもう多くの部下と友がおりその事はすぐに叶いそうだ。

 

「今後もチスと帝国の両方の軍隊を頼んだぞ、プライド中将」

 

「はい!」

 

中将は敬礼しヴィルヘルムは力強く頷いた。

 

一行はそのまま通路を抜けシーラの会議場へと向かった。

 

会場に行くと衛兵が「お待ちしておりました」とコードシリンダーなどを確認しヴィルヘルムらを中に入れた。

 

室内に入ると早速多くの閣僚達が集まっていた。

 

九つのルーリング・ファミリーだけでなく外務省や国防省の大臣や高官達も集まっていた。

 

「ヴィルヘルム、私は先に席に着いてるよ」

 

「ああ」

 

タッグ元帥は副官達を連れて先に席の方へ向かった。

 

ヴィルヘルムはそのまま壇上の方へ近づき今の主人へと挨拶に向かった。

 

向こうもすぐにヴィルヘルムに気づいたようで早速喜びの声を挙げて向かい入れた。

 

「フェル!よくぞ交渉を切り抜けてくれた!」

 

ロード・アリストクラのリヴィリフはヴィルヘルムにそう声を掛けた。

 

ヴィルヘルムの手をしっかり握り「よくやった」と何度も言った。

 

「ですがやはり同盟締結までは叶いませんでした。私の力不足です」

 

「いや、第三帝国の脅威を振り切ったというだけでも十分の戦果だ。アセンダンシーから脅威を除いた事は十分評価に値する。後の事はモロフがなんとかする」

 

「少なくとも卿の予想通りの結果となった。我々はそれで満足だ」

 

ラストーレもそう彼の結果を擁護し評価した。

 

リヴィリフやラストーレもヴィルヘルムと同じ中立条約さえ守られていれば十分という結論にあった。

 

無論それでは納得いかない者達もまだ大勢いるが追々解決していくだろう。

 

第三帝国との国交が初めから消失しないということが一番重要であった。

 

しかしヴィルヘルムは別の不安を述べた。

 

チス領へ亡命してきた部下や守るべき市民達の信頼を大きく損なわれる可能性のある不安だ。

 

「ですが一つだけ帰りに不安な点を目にしました」

 

「それは一体なんだ?」

 

リヴィリフは彼に尋ねた。

 

ヴィルヘルムは2人に告げる。

 

「旧帝国の海賊化した機動部隊、小艦隊程度の戦力がチス・アセンダンシーの領域に迫っています」

 

「どうするつもりだ」

 

「無論我々帝国軍の部隊を派遣します。アセンダンシーの市民も兵も1人も犠牲にはしません。我々のツケは我々で払います」

 

ヴィルヘルムはそう断言した。

 

「だが誰を送るつもりだ?この情勢下では卿自らが出向くのは不可能だぞ」

 

ラストーレはヴィルヘルムに一応の忠告を言った。

 

「心配には及びません」とヴィルヘルムは付け加え話し始める。

 

既に我々には多くの若き将兵がいる。

 

特に“()()()”から送られてきた彼、参謀本部の彼ら、皆十分活躍してくれるだろう。

 

ヴィルヘルムは絶対の信頼を持って2人に部隊の指揮官の名を口に出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

-コルサント 帝国ロイヤル・アカデミー情報管理室-

一連の入学式が終わりコンプノア・ユーゲントの新候補生達は予定にも記載されている血液検査や特殊検査を行なっていた。

 

既にクラス分けは終了し担任の教官達に引き連れられ子供達はそれぞれ会場へと向かった。

 

マインラートとホリーも会場に連れられ検査の順番を待っていた。

 

奥の三番の検査室から同じユーゲントの制服を着た金髪の少年が同じく白衣を着た男と共に出てきた。

 

「こんな検査、意味あるんですか」

 

「一応結果を数値化しないといけないからな。まあ先生は少し仕事があるからアカデミー内で待っていなさい。すぐ終わらせるから一緒にウェイランドへ帰ろう」

 

「はい先生」

 

2人は雑談を交わしながら通路を通り過ぎていった。

 

他の検査室からも続々と検査を終えたユーゲントの候補生達が室内から出てきている。

 

みんな注射をされたのか腕を押さえ元いた場所に戻っていった。

 

そんな中マインラートはホリーに話しかけた。

 

「お父さん、もう帰っちゃったかな」

 

「今日は検査が終わったら待っててくれるって」

 

「マインラート・シュタンデリスくん、五番の検査室へどうぞ」

 

2人がたわいもない話をしているとマインラートの方が先に親衛隊の制服に白衣を纏った男に呼ばれた。

 

「行ってくるね!」とマインラートは席を立ち五番の検査室へと歩いていった。

 

ホリーも手を振り「まだかな」と待合室の椅子の上で足をぶらぶらさせて暇そうに待っている。

 

無論そんな様子が見られているとはホリーもマインラートも思うわけがないだろう。

 

しかしロイヤル・アカデミーの情報管理室からはその鋭い眼光がカメラなどを通じてしっかり張り巡らされていた。

 

コンソールの前に座る下士官の1人が室内の将校達に報告する。

 

「シュタンデリス候補生、検査室に入室。現在血液検査を受けています」

 

すると1人のFFSB(親衛隊保安局)の制服を着た将校が独り言のように口を開いた。

 

「あのシュタンデリス上級大佐の御子息か…入室したのは本人で間違いないな?」

 

将校の問いに下士官は顔を少し向け「はい、間違いありません」と答えた。

 

「養子に迎えられたホリー・シュタンデリス候補生も七番検査室へ入室しました」

 

「どれ、シュタンデリス上級大佐のお子達に“()()”があるかどうか……」

 

将校は目に掛かる髪の毛を退けながら椅子の背もたれに手を掛け表示されるモニターのデータを下士官と共に凝視した。

 

すると2人の背後から魅惑的で何処か恐怖を覚える声が響いた。

 

「相手が親衛隊期待の英雄だからとはいえ贔屓目で見るなよ。むしろ厳しく審査しろ」

 

「フリシュタイン大佐…!」

 

その将校は慌てて制帽を被り直し敬礼した。

 

下士官の方も顔を見合わせるなりすぐモニターの方に目線を移自らの熱心な職務態度を演出した。

 

式典会場から直行した正装姿のフリシュタイン大佐も将校に敬礼を返すと下士官の隣でモニターのデータを見つめた。

 

「審査に立ち会ったあの連中、この2人には何かがあると言っていた。まあ戯言かもしれんが注意しておくのに越したことはない」

 

大佐はついこないだまで尋問していた人物のある発言を思い出した。

 

治安維持行動の際に連行されたあの不可解な組織は皆FFSBの方で尋問が行われた。

 

彼らは尋問にかなり協力的ですぐに色々と話してくれた。

 

その結果彼らはすぐに釈放され今では客人として向かい入れられている。

 

今回のこの式でも彼らは隠れて参加し見所があると思われる候補生を何人か指摘していた。

 

シュタンデリス上級大佐の子供達も一応この中に入っていたのだが果たしてどうなのだか、気になるところだ。

 

「数値出ました」

 

下士官が報告しフリシュタイン大佐と隣の将校はすぐにモニターに目線を移した。

 

下士官が数値を読み上げ最後に結果を述べる。

 

「これは……比較的通常の数値ですね。確かに高くはありますがそれでもずば抜けてとかフォースが使えるとかのものではありません。このまま通常コースに入れておくべきでしょう」

 

下士官は数値を見るなり何処か興味がなくなったように述べた。

 

フリシュタイン大佐も期待をしていただけにこの結果はあまりに拍子抜けだった。

 

しかしすぐに気を取り戻してもう1人の方の結果を尋ねる。

 

「ホリー・シュタンデリス候補生の方はどうだ。こちらの数値も通常なのか?」

 

大佐に聞かれた下士官はすぐにモニターを操作しホリーの情報を映し出した。

 

これも下士官が読み取るなりすぐに落胆した声音で報告してきた。

 

「こちらもマインラート候補生とほぼ変わりませんね。通常数値ということでこのままのコースとクラスのままでいいでしょう」

 

「つまりは2人とも普通…ということでいいんでしょうか?」

 

将校はフリシュタイン大佐に尋ねた。

 

「らしいな」と大佐も軽く返し顎を撫でながら独り言を呟いた。

 

「やはりあの連中の言葉など妄言に過ぎなかったのか…?」

 

その可能性は十分にあり得る。

 

連中の身元は所詮カルト組織の信者だ、適当な事を言っていてもおかしくない。

 

少しでも連中をどこか信じていた自分が馬鹿だったと思ったその時室内の扉が開き1人の保安局将校が急いで入ってきた。

 

フリシュタイン大佐の部下のヘーカー少尉だ。

 

少尉は息を荒げながら顔を上げフリシュタイン大佐に報告した。

 

「大佐!!ロイヤル・アカデミーの中央制御室に侵入者です!!」

 

その一言はその場の全員を凍りつかせた。

 

だがフリシュタイン大佐だけは違っていた。

 

確証した、やはり彼らには何かがあるとそのような雰囲気のまま命令を下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

まず第一の書き換え、検査室で得られた数値を直接書き換える事には成功した。

 

これでひとまず情報管理室に届くデータは書き換えられた偽のものとなっているだろう。

 

マインラートの方は直接俺自身が書き換えられたが流石にホリーまでは手を出せなかった。

 

だが既にその事は織り込み済みだ。

 

少しばかり帝国クレジットを積んで工作するよう親衛隊の検査係の職員に頼んでおいた。

 

親衛隊と言っても所詮元は路頭に迷った者達の集まりに過ぎない。

 

今でも貧困層の将兵は多く見かけるし正規の国防軍とは違い賄賂などでも堕とし易い。

 

取り敢えず1人だけ味方に引き入れておき予めここに配置になるよう指示は出しておいた。

 

ジークハルトが聞いていたクラスの番号などからある程度2人が入る検査室の部屋番号は割り出せる。

 

血液を採取する医療用ドロイドのプログラムも少し変更させてもらい、比較的俺に従順になるよう仕向けた。

 

予想通りマインラートは五番、ホリーは七番の検査室に入り書き換えは成功に終わった。

 

後はバックアップとして直接ロイヤル・アカデミーの中枢であるアカデミー中央制御室にあるバックアップのデータを改竄するだけだ。

 

隠れながら制御室を目指し、あえて人前に出て行き先を聞き目的を撹乱する。

 

教官や何故か通り掛かって毎回教えに来たフェン・ラウ辺りに散々叩き込まれたことだ。

 

撹乱と奇襲、徹底的な打撃が攻撃において最も重要である。

 

マンダロリアン・プロテクター”であり元“インペリアル・スーパー・コマンドー”の端くれであった時からの矜持だ。

 

指導者のフェン・ラウ曰く、俺は元々プロテクターの戦士であったとある夫妻に拾われた子供らしい。

 

昔はずっと直系の子だと思っていたがマンダロリアンには孤児を拾って育て上げる習慣があり俺もその例に漏れずマンダロリアンの教義を受け入れ戦士として育った。

 

尤も俺が物心つく前に親父とお袋はクローン戦争でぶっ飛んで死んじまったが。

 

幼少期から戦士として戦ってきた。

 

俺には戦士やパイロットとしての素質があるらしい。

 

根城であるコンコード・ドーンやコンコード・ドーンの月を守る為にファング・ファイターに乗り込んで戦ったりマンダロリアンのアーマーとジェットパックを着込んで戦ったりもした。

 

そうやって少年期から青年期を過ごしてきた。

 

周りも俺の事を戦士として認めてくれたし俺も仲間が誇らしかった。

 

マンダロリアンとしての魂、教義が誇りだった。

 

だがある日俺のその日々に転機が訪れた。

 

とうの昔に誕生していた銀河帝国はいよいよコンコード・ドーン辺りまで本格的に進出してきた。

 

既にプロテクターが忠誠を誓っていた母星マンダロアは帝国の支配下だったがプロテクターは利益の為反乱には加担せず帝国とひとまず手を結んだ。

 

そこで帝国はプロテクターにある一つのことを要求してきた。

 

若い数人の戦士を帝国軍に入隊させよと。

 

実質的な人質の要求だった。

 

お前達が反乱組織に加担した場合は彼らを殺す、そういう魂胆だろう。

 

また当時創設中のインペリアル・スーパー・コマンドーの隊員を増やす狙いもあったと今では考えられる。

 

ともかくプロテクターが断る事は事実上不可能であり人質の剪定が行われた。

 

俺はその当時はまだ若く、プロテクターの同胞達の為にと自らその候補にと名乗り出た。

 

あいつらはみんな最後まで悩んでいたようだが最終的には俺含めた5〜6人が帝国軍に入隊し人質として送り込まれた。

 

俺たちはみんなインペリアル・スーパー・コマンドーのユニットに別々に投入され新たなアーマーを身に纏った。

 

コマンドー時代の生活はどちらかといえば面白味に欠けるものだった。

 

他のコマンドー隊員にいじられるなどよくある事だったししょっちゅう無茶を吹っ掛けられた。

 

それでも部隊長だけは俺に親身になって接してくれた。

 

今思えばプロテクターの人質という経歴を知っていたのかもしれない。

 

ともかく俺は帝国のマンダロリアン・エリート部隊としてずっと過ごしてきた。

 

そう、ヤヴィンの戦いの2年ほど前までは。

 

マンダロリアン・プロテクターが突如“()()()()”となったのだ。

 

最高指導者のガー・サクソンが直接攻撃を仕掛けプロテクター部隊を殲滅したとも聞いた。

 

俺はその時何を思っていただろうか。

 

人質である俺たちを見捨て反乱組織に加担したプロテクターを憎んだのか。

 

それとも苦楽を共に過ごしたプロテクターの同胞達が彼ら(インペリアル・スーパー・コマンドー)によって皆殺しにされた事を悲しんだのか。

 

あるいはただ単純に絶望していたのか。

 

様々な感情が交差し、入り組み、混ざり合って今では思い出せない。

 

ただ一つ言える事は俺は“()()()()()”になったということだ。

 

帝国保安局の連中は俺たちプロテクターの隊員を連日のように尋問してきた。

 

恐らくその途中で殺されたり逮捕された仲間もいるだろう。

 

俺はずっと耐えていたがある日部隊長が俺を保安局から匿い逃げ道を提示してくれた。

 

なんでも聞いた話によれば部隊長と死んだ俺の両親は戦友でその子である俺をどうしても助けたかったそうだ。

 

俺は苗字を変え名前を変えた。

 

部隊長から名前を貰い“()()()()()”とまず名乗った。

 

そして母の名前である“()()()()()”から、父の苗字である“()()()()”から取り苗字を“()()()()()()()”と名乗った。

 

俺はこの時初めて“ランドルフ・ハイネクロイツ”と名乗ったのだ。

 

部隊長はすぐに俺の隊員名簿と登録を抹消しかつての俺は訓練中に事故死した事になった。

 

その後帝国軍のスターファイター隊専用の短期アカデミーに特別候補生として入学し一年で卒業した。

 

こうして過去のマンダロリアン・プロテクターやインペリアル・スーパー・コマンドーとしての俺はこの世から消えた。

 

恐らく戦死した部隊長も隊員達ももう俺の事を話すこともないだろうし生存したプロテクターの同胞達も俺のことなどもう忘れているだろう。

 

それでいい、もうそれでいいんだ。

 

今この銀河にいるのはもうランドルフ・ハイネクロイツという帝国軍スターファイター隊のパイロットだ。

 

過去の経歴に孤児やマンダロリアン、スーパー・コマンドーといった単語は一切ない平凡な一介のTIEファイターのパイロットに過ぎない。

 

過去は俺を切り離し、俺も過去と別れを告げた。

 

その後俺は惑星スカリフの軌道上シールド・ゲート駐留部隊に配属となった。

 

スカリフの基地は元より退役間近の老人が集まりやすかったり敵対者が攻撃する事の少ない閑職めいた場所だ。

 

指揮官のラムダ将軍やゴーリン提督達もあまり覇気がなく俺もやがてはこの老人達のようにここでただのパイロットとして職務をこなし死んでいくんだろうと考えていた。

 

スカリフの戦いという銀河内戦における重要な激戦が起こるまでは。

 

奇襲を受けた俺達は司令部の命令不足の中でも必死に戦った。

 

俺も反乱軍のスターファイターを4機撃墜した。

 

コルベットやフリゲート、クルーザーにも何度も攻撃を仕掛け何度も死と隣り合わせの戦いを繰り広げた。

 

だがそれだけやっても運命は俺を死に誘い始めた。

 

軌道上の“パーセキュター”と“インティミデイター”は轟沈しその流れで着陸基地のシールド・ゲートは破壊された。

 

我々は一気に帰る場所を失い敵が目の前にいる中苦境に立たされた。

 

次々と仲間のTIEファイターは撃たれ補給も帰投もできないまま友軍機が破壊されていった。

 

必死に抵抗し反乱軍を攻撃したがもはや無意味にすら感じられた。

 

連中が撤退しようとする頃ようやく一隻のインペリアル級と当時の第一デス・スターがスカリフへ救援に駆けつけた。

 

旗艦級のMCスター・クルーザーを撃破したインペリアル級であったが我々を回収する事なくすぐに敵艦への追撃に移った。

 

最重要機密のデス・スターに我々のような部隊が入港させてくれるはずもなく俺や他のパイロット達はみんな四時間近く宇宙空間を彷徨い続けていた。

 

被弾箇所から空気は漏れどこか冷たいものが流れてきた。

 

パイロットスーツ越しでも感じるこの冷たさは正に死の風といったもので俺は初めていよいよ死ぬと死を実感させた。

 

酷く心が痛み、酷く過去を忘れ、酷くつまらないまま死ぬ人生、俺はコックピットの中でそう思い続けていた。

 

死にたくないと感じてももはや死はそこまで近づいてきている。

 

いよいよプロテクターの同胞達の下に還る、そう思ったその時だった。

 

助けは来たのだ。

 

二隻のインペリアル級が到着しスカリフ部隊を回収し始めた。

 

俺もとある将校の通信により目を覚まし機体の最後の力を振り絞って“コンクエスト”と呼ばれるインペリアル級の方へと着艦した。

 

ようやく狭く棺桶と化したコックピットから抜け出た俺がその時初めて目にした光景は回収されたパイロット1人1人を労い助けようとする将校の姿だった。

 

彼は中尉の階級章をつけておりその声は目を覚ました時に聞こえた通信の声と一緒だった。

 

現場で自ら回収の陣頭指揮を取っていたその青年将校は他の部下達から“()()()()()()()”と呼ばれていた。

 

俺はこの時初めて出会ったんだ、“ジークハルト・シュタンデリス”に。

 

ジークハルトは俺と会うなり「よく戦った」とか「よく生きていてくれた」とかたくさん褒め言葉や労いの言葉をかけてきた。

 

それでいてすぐに死にかけの俺に必要なものを渡してきた。

 

「必ず助ける、私は同じ帝国軍人を見捨てたりしない」

 

ジークハルトはその言葉通り俺たちをみんな平等に助けた。

 

俺もなんとかあの激戦を生き延び今に繋がった。

 

あの時の事がなければ俺はつまらないまま死んでいた。

 

つまらない意味のない死からジークハルトが俺を解き放ってくれた。

 

俺はお前に救われたんだ。

 

だから俺は俺の恩を返す。

 

それが今の行動だ。

 

「制御室に直接侵入出来るコンソールシステムは…これだ!」

 

ハイネクロイツ中佐は情報室のソケットにプラグを差し込み端末から直接制御室のネットワークに侵入した。

 

ここを介して書き換える事により発見の可能性が十分薄れる。

 

今回は少しでも可能性を積み上げる事が重要だ。

 

モニターを操作しマインラートとホリーの名前を探し始める。

 

何十回かスライドした後2人の名前はナンバーと共に出てきた。

 

「マインラートとホリー…あった!」

 

2人のバックアップの情報を開き検査の結果に繋げる。

 

正しい情報が記載されているバックアップデータを書き換えた。

 

「これで任務は……ハッキングがバレている…!?」

 

ハイネクロイツ中佐はすぐに気づいた。

 

明らかに制御室に別から介入する何かの存在があった。

 

急いでその存在を検索し特定に入る。

 

数十秒経った後特定された存在は情報管理室の端末だった。

 

「まさかバレたのか…!?いやそんなはずはない…!……違うぞ」

 

ふとハイネクロイツ中佐は冷静になり何かに気がついた。

 

「連中が俺に気づいたのならとっくの昔にここに兵が展開されている……だが端末の動きも併せて推測するにこれは…」

 

中佐の予測は大正解だ。

 

フリシュタイン大佐と先程の情報管理室の将校、そして報告に来たヘーカー少尉らが引き連れる数十名のストームトルーパー達は皆真っ直ぐ情報室ではなく制御室へ向かっていた。

 

ドアの前に立ちフリシュタイン大佐が近くのソケットに自らのコードシリンダーを差し込む。

 

情報が読み取られドアが開きフリシュタイン大佐は怒号に似た指示を飛ばした。

 

「突入!!」

 

一斉にストームトルーパー達が制御室に入り中のコンソールを直接操作する数名の親衛隊将校にE-11の銃口を向けた。

 

将校達は両手を上げ一塊になっている。

 

「まさか上官に頼まれ上官の子供の潜在数値などを書き換えている一団がいたなんて…」

 

フリシュタイン大佐の隣で呆然とする将校を側に大佐は怒りに満ち溢れた表情で宣言する。

 

「全員摘発して逮捕する!手始めにその連中を連れて行け!」

 

「ハッ!」

 

両手を上げる将校達は皆乱暴にストームトルーパーに掴まれ連れて行かれた。

 

だがこの瞬間にハイネクロイツ中佐の任務は終了したのだ。

 

書き換えられたデータが上書きされ証拠も全て消えた。

 

情報室の壁に寄り掛かりふと空を見上げた。

 

「さて、帰りますか」

 

一仕事をやり切り恩を返したという満足げな表情を浮かべている。

 

マインラートとホリーのコンプノア・ユーゲントの生活はいよいよこれから始まる。

 

だがそのスタートはどうやら“()調()()”始まるようだ。

 

コルサントに吹く小さな風がそう暗示させた。

 

 

つづく




クラリッサ「ほわあああああああああああああああ!!!!!!ベラトール級でっけぇですわ!!!!!クワットのドレッドノートは最高ですわ!!!!!!!余計スパイスがキマりますわ!!!!!クワットの建艦能力すごすぎですわ!!!!!!教えはどうなってるんですの教えは!!!!!とにかくキング・ケッセル最高ですわあああああああああああああ!!!!!!」


プレスタ「これ本当に売り渡してよかったんですか…?」
アルタース「気にするな、(頭が)飛ぶぞ」


クラリッサ「スパイスですわああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
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