第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「我々、親衛隊とは所詮銀河協定の抜け道でしかない組織だ。それはチェンセラー・フォースという名前だった時から変わらず親衛隊となった今でも変わらないだろう。だがこれだけは忘れてはならない。我々は皆、親衛隊員である前に1人の“帝国軍人”だ。我々は帝国軍人として祖国の敵を打ち倒しこの銀河に秩序と平和を齎す存在でなくてはならない。そうでないのなら私は帝国軍人の私として正しい選択を行うであろう。全ては帝国の為に、銀河の平和と秩序の為に、親衛隊員であるプライドはこの義務と使命の二の次でしかない」
-ゴットバルト・バエルンテーゼ上級大将-


サラストの戦い

-惑星ナブー 大草原奥地-

時間は少しばかり前に遡る。

 

スピーダーを乗っ取り首都シードを脱出した3人はひとまず大草原でスピーダーを乗り捨て逃走経路の足を消そうとした。

 

徒歩で少し距離を稼ぎ近くに停泊している王室海軍の軽偵察艇で再び地下の秘密基地へ離脱する予定だ。

 

シードでは激戦に巻き込まれかなり酷い目に遭ったがそれでも得るものはあった。

 

「このまま行きましょう、後少しです。どうかしましたかしょう…」

 

今後の逃走経路を2人に伝えるメンジス三佐の声はジョーレンが「静かに」という合図で途切れた。

 

それ以降特に何も話すことはなく3人は森林の中を歩いた。

 

森林の中の静かな空間が3人にも憑り徐々に何処かピリリと張り詰めた空気に変わった。

 

ジョーレンが1人だけ2人から少し離れた瞬間その空気感ははち切れた。

 

2発の銃声が森林の中に響きバタバタと2回何かが倒れる音が聞こえた。

 

ジェルマンとメンジス三佐が振り返るとジョーレンの目線の下に装備の整った2人の兵士らしき人物が斃れていた。

 

「間違いなくシードにいる時から誰かに見張られていた。その正体がコイツなのかは分からないが。それでコイツらはなんだ?」

 

2人の兵士は手に新共和国用のA280Cブラスター・ライフルとE-11s“長射程ブラスター(long-range blaster)”が握られておりいつでも戦える状態だった事がわかる。

 

幸い彼らの銃口から弾丸が発せられる前にジョーレンの放った2発のブラスター弾により即死していた為攻撃される事はなかったが。

 

2人の装備を見るなりメンジス三佐は口を開いた。

 

「これは……恐らく宇宙部門が独自に設立しようとしていた特殊部隊員ですね…これを見てください、このヘルメットはかつて惑星防衛軍支援の一環で新共和国から頂いたヘルメットです」

 

メンジス三佐は指を差してそう説明した。

 

新共和国艦隊情報部員であり方や元特殊部隊員のジェルマンとジョーレンは見るだけですぐに分かった。

 

微妙に改造は施されているが細部は新共和国軍が、今でもレジスタンス軍が使用していたヘルメットで間違いなかった。

 

メンジス三佐は更に説明を行った。

 

「新共和国軍からの一部最新装備を身につけ今では帝国から受け取ったアーマーやブラスター・ピストルすらも装備しています」

 

よく見ると肩のアーマーや足のアーマーはストームトルーパー用のもので胴体部は地上軍トルーパーが使用しているアーマーそのものだ。

 

様々な装備が入り組んだ奇妙な姿だったがそれでも練度は保安軍から見れば十分だろう。

 

最精鋭の兵士であったジョーレンには遠く及ばなかったが。

 

「恐らく斥候として我々を付けて来たのでしょう。早くここを離れないと」

 

メンジス三佐は早急にこの場を離れようとしていたがジョーレンは首を振った。

 

「恐らくは我々の行き先が色々と報告されている。ここをで偽装工作を行い本当の秘密施設の存在を隠さないと」

 

「先に帰還していざという時に備えておいてください。もしかするとそちらの部隊が必要になる可能性もある」

 

「お2人だけで大丈夫ですか?」

 

三佐の問いにジェルマンとジョーレンは顔を見合わせ小さく微笑んだ。

 

それからすぐ力強く頷き「行ってください」と後押しする。

 

2人の様子を見ていたメンジス三佐も頷き「ご武運を」と祈りを込めて小さく呟き走り去っていった。

 

メンジス三佐の姿が見えなくなるまで見送った後2人は立ち上がり兵士からブラスターを取り上げた。

 

彼らにはもはや不必要な代物だ。

 

「やはり使い慣れたブラスターがいいな。お前はスナイパー・ライフルなんて使えるのか?」

 

「んまあいざとなったら普通に貰い物の方を使うよ。それよりも特殊部隊員からブラスターを取り上げていいの?それこそ僕達の存在がバレそうだけど」

 

「いいんだよ、ひとまず三佐から引き離せればそれで十分だ。むしろ今回ばかりは我々に注目させる勢いでやるぞ」

 

ジェルマンは頷きブラスター・ライフルを構える。

 

既に森の中に追手は放たれ2人はそれを迎え討とうとしていた。

 

今度は2対何人の戦いになるのか検討もつかない。

 

だが2人とも負ける気がしなかった。

 

余裕の笑みと共に2人は森の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

「急げ!早く!シールドを起動させるんだ!」

 

コンソールを操作しパネルが偏向シールドの起動を確認した。

 

先程まで急かしていたレジスタンス軍の中尉は「よくやった!」と技術兵達を褒め自らも他の歩兵達と共にブラスターを持って室内を飛び出した。

 

ソロスーブ社内の地下通路では既に多くの将兵が武装を固め重火器やバリケードなどを持ち出していた。

 

帝国軍の突然の奇襲の警報が鳴り響き歩兵達にはどこか緊張して張り詰めた雰囲気が漂っていた。

 

フル装備の歩兵が数名通路から外へ飛び出し各自持ち場に着こうとしていた。

 

「対ウォーカー装備と歩兵用バリケードを急げ!AT-ATどもを迎え撃つぞ!」

 

前線の中隊長が大声を出して部下の兵士達に命令を出し準備を急がせた。

 

軌道上では既に戦闘が始まっており地上に帝国軍が雪崩れ込むのも時間の問題だ。

 

このサラストを放棄するにしても撤退の時間を稼ぐ必要があった。

 

「戦車両は全てソロスーブ社内に配置しろ!前線はなんとか我々だけで防ぐぞ!」

 

「了解!」

 

中隊長も他の歩兵達と同じように震える声を抑えながら声を上げている。

 

いよいよ帝国軍が総力を上げてサラストの攻撃に乗り出したのだ。

 

同じようにソロスーブ社の地下通路に繋がる出口の前でも歩兵たちが防御陣を張り帝国軍を迎え撃つ準備をしていた。

 

「バリケード、ブラスター砲、シールド発生装置、予備の火器弾薬類全て配備完了しました!」

 

歩兵の1人が部隊長の曹長に伝達し曹長も「よくやった!」と一言誉めた。

 

「急いで持ち場に戻るぞ、敵がいつ来るか分からん」

 

「了解!」

 

2人はそのままバリケードの方へ向かった。

 

バリケードの外ではまだ数名の歩兵達が地雷を巻いたり自動攻撃タレットを配置したりとまだ作業をしていた。

 

そんな中である1人の歩兵が微妙な変化に気づいた。

 

「おい、あそこのとこだけなんかぼやけて見えるのは気のせいか?」

 

隣の歩兵にふと疑問を投げかけその歩兵は「ん?」と指を差された方向を見つめた。

 

そこには特にないもない、ただの風景が写っていた。

 

「何もないぞ」とその歩兵は違和感に気づいた歩兵に感想を述べた。

 

されどその歩兵は「いやそんな事はない」とまだ自分の意見を曲げる事はなかった。

 

何度も指を差し「絶対に何かある」と囃し立てた。

 

「もっと良く見てみろ!明らかにへん…」

 

「どうし…た…?」

 

面倒臭そうにもう1人の歩兵がまた振り返ると今度は明らかに異常な光景を目にしていた。

 

空中に赤黒い液体が撒き散り指を差していた歩兵がそのままサラストの硬い地面に瞳孔を大きく開いたまま斃れた。

 

その液体は額から流れておりそれ以上何も喋る事はなく完全に絶命していた。

 

「おい…!」

 

声をかけようとしたもう1人の歩兵もその瞬間に指を差した歩兵と同じ末路を辿った。

 

少し違うのは斃れ方だけで仰向けで地面に斃れた歩兵とは違い彼はうつ伏せになって地面に斃れた。

 

どの道2人とも音を立てる事なく絶命し残りの歩兵達を大きく動揺させた。

 

特にその後の指を差した先から見る見るうちに姿を表していく黒色の装甲兵の姿と共に。

 

「あれは…!」

 

「敵襲っ!!」

 

他の歩兵達が声を上げる前に曹長がいち早く奇襲の報告とブラスター・ライフルの発砲音を上げた。

 

それに呼応して他の歩兵達も手に持っていたブラスター・ライフルやブラスター砲の引き金を引いた。

 

銃声の擬音と共に赤いブラスター弾が幾度も発射されるが全ての弾丸が黒色の装甲兵達に当たる事なく再び彼らは無色に消えて行った。

 

「どっどこへ行った!?」

 

「消えたぞ!!」

 

「狼狽えるなクローキング装置だ!!弾幕射撃を繰り出せばっ!!」

 

部下を宥めようとした曹長はその後すぐ赤いブラスターの光弾に被弾し即死した。

 

曹長の死は動揺する歩兵達を混乱の先へと導いた。

 

バリケードの外で作業していた歩兵達は皆慌てて逃げるようにバリケードの中へと入ろうと走った。

 

しかし背中を見せて情けなく走る彼らの姿は黒色の装甲兵、シャドウ・トルーパー達にとってはただの的でしかなかった。

 

彼らの手に持つE-11Dブラスター・カービンやDTL-19D重ブラスター・ライフルの餌食となり次々と屍を重ねていった。

 

バリケードの中にいるからといってそこにいる歩兵達が正気を持ち合わせているわけではない。

 

次々と目の前で倒される仲間を見た彼らの方こそ錯乱し射撃が余計ブレて全く当たらなくなっていた。

 

そんなバリケードの中に1人のシャドウ・トルーパーがサーマル・デトネーターを投げつけ一気に歩兵達を殲滅する。

 

こうして出口の守備隊は全滅し屍となった彼らの上をシャドウ・トルーパー達はゆっくりと歩いていった。

 

今回の彼らの装備はアーマーはともかくそのブラスターや追加のポールドロン付きジャケットはデス・トルーパーの装備そのものだった。

 

重武装の彼らは親衛隊の特殊部隊の一つであり通常のシャドウ・トルーパー同様クローキングを駆使して破壊工作を実行する超精鋭部隊であった。

 

シャドウ・トルーパー分隊は通常のストームトルーパー分隊同様9名の兵士と1名の狙撃兵で構成されているのだが今回は内部への侵入ということで全員が中距離、近距離の装備を身につけていた。

 

E-11DやDTL-19Dを構えながら出口の隔壁封鎖を解除したシャドウ・トルーパー達はゆっくりと中へ入っていった。

 

「しっ侵入者だ!」

 

「チッ!」

 

シャドウ・トルーパーに気づいた2人のレジスタンス歩兵がブラスター・ライフルを向けシャドウ・トルーパー達を攻撃する。

 

既にフォーメーションを組んだシャドウ・トルーパー達はそれぞれの火力を投射し敵兵を一発二発程度で撃ち殺していった。

 

アイサインを出し再びシャドウ・トルーパー達はクローキング装置を起動する。

 

9人のシャドウ・トルーパーが一斉に姿を消し亡霊となった彼らは静かにソロスーブ社の地下通路を進んだ。

 

シャドウ・トルーパー達は先行して投入したシーカー・ドロイドの索敵成果通りに動き最短ルートで目標まで接近していった。

 

そんな中先頭を走る部隊長が特殊通信を開いて本隊へ連絡を取った。

 

「中佐、間も無く偏向シールド発生装置を破壊します」

 

『こちらも間も無く上陸する。頼んだぞ』

 

「了解」

 

通信を切りシャドウ・トルーパー分隊は最後の通路の前で止まった。

 

移動距離と時間から考えて恐らくここの防御は既に固められているというのが作戦立案時の予測だった。

 

隊長は一行を止めて部下にブラスト・ドアの解除を命じる。

 

ポーチから工具を取り出したシャドウ・トルーパーがブラスト・ドアのシステムに介入し始めた。

 

その間に残りの全員はクローキング装置を停止し弾薬やブラスターの調子を確かめた。

 

素早くブラスターを構えドアの開錠を待った。

 

トルーパー達が逆に敵を待ち伏せる中ブラスト・ドアの開錠が成功し全員が一斉にブラスター・ライフルを構えた。

 

ドアが徐々に開きレジスタンス歩兵の姿が見える。

 

中には真面に装備を身につけていない兵士の姿もあった。

 

しかし連中は全て敵だ。

 

相手がブラスター・ライフルを持っていようと工具で戦っていようと全て敵なのだ。

 

レジスタンスの歩兵達よりも一歩早くシャドウ・トルーパー達からブラスター弾による一斉射撃が放たれ傍に固まっていた兵士達が被弾し何人か倒れた。

 

レジスタンス兵達も急いで反撃するが突如煙幕が放たれ視界が遮られてしまった。

 

「みっ見えない!」

 

「敵兵はどこだ!!」

 

「クローキングを使われたら姿が…!」

 

「おい!」

 

シャドウ・トルーパー達は再び姿を消し煙幕の中を静かに1人ずつ始末していった。

 

レジスタンス兵達は一体どこに敵がいるのか分からず互いに肩を合わせながらひたすらに警戒していた。

 

だが気づけば背中を預けていた味方の兵士もどこかへ消え煙幕が薄れる頃には誰もいなくなっていた。

 

地面にはレジスタンス歩兵の死体が並びそこにまだシャドウ・トルーパー達がいるのかすら分からない。

 

ただ一つ分かるのは守備に回っていたレジスタンスの兵士が全滅したということだ。

 

その様子はソロスーブ社を覆う偏向シールド発生装置の制御室でも確認されていた。

 

「守備隊全滅!最終通路が突破されました!!」

 

「応援の部隊はどうなっている!?」

 

「急いで向かっていますが間に合いません!」

 

コンソールの前に座る技術兵達は臨時の制御室司令官となった新任少尉に報告していた。

 

急いで自動防衛システムやダメージコンロールシステムを起動しようとしているが襲撃者達がどこへ消失したか分からない今もはや無意味に等しい。

 

「最悪予備の装置を起動させろ!それか今すぐ本隊からシールド発生装置の受け渡しを…!」

 

少尉の焦る声と共に制御室のビューポートがオレンジ色の眩い光に大荒れゴゴゴと大きな音を立てて周囲を振動させた。

 

「なんだ!?」と慌ててビューポートの方を見ると先ほどまで健在であった偏向シールド発生装置が爆炎を上げて沈黙し始めていた。

 

先程の光も轟音も振動も全て爆発する偏向シールド発生装置の影響だったのだ。

 

「ダメージコントロールをっ…!」

 

刹那、クローキングを解除した1人のシャドウ・トルーパーが少尉の頭を真横から撃ち抜いた。

 

血を流して倒れる少尉を見つめ次は自分達の番だということを嫌々ながら自覚した。

 

ソロスーブ社全体を覆う偏向シールドが消失したのはそのすぐ後でアデルハイン中佐達の攻撃が始まる合図となった。

 

 

 

 

 

 

-アウター・リム・テリトリー サラスト宙域 サラスト星系 惑星サラスト -

数隻のゴザンティ級とセキューター級“ライアビリティ”から発艦した多数のTIEインターセプターとTIEボマー、そしてインペリアル・ドロップシップ・トランスポートがサラストの空を覆い尽くした。

 

爆撃隊と降下部隊の露払いとして出撃したTIEインターセプター隊はその役目を果たし完全に周辺の制空権を抑えた。

 

既にシールド発生装置は停止しておりTIEが降りようと降下しようとなんの問題もなかった。

 

制空権確保を確認した第四十二降下猟兵大隊の大隊長、フライマー少佐は全部隊に命令を出す。

 

「全隊降下開始、先行して敵対空砲網及びターボレーザー砲塔を全て破壊するぞ」

 

この降下猟兵大隊、元は第六親衛連隊時代からのジャンプ・トルーパー中隊がベースとなっており旅団結成時に更に三個中隊が追加された遂には大隊へ昇格した。

 

元々ベテランのジャンプ部隊指揮官だったフライマー少佐が大隊長となり中隊長のハンネル大尉は副大隊長の上級大尉へと昇進した。

 

『了解』

 

『ご武運を、フライマー少佐』

 

「ああ…」

 

通信機を切るとフライマー少佐はジャンプ・トルーパーのヘルメットを被り先陣を切ってインペリアル・ドロップシップから飛び降りた。

 

薄い雲間を掻い潜りながら自由降下に身を任せ地上へと向かった。

 

他のゴザンティ級やドロップシップからも同じようにジャンプ・トルーパーが落下していた。

 

ヘルメットの中で警告音が流れジェットパックの点火を呼び掛けた。

 

頃合いだとフライマー少佐もジェットパックを点火し他のトルーパー同様一気に加速した。

 

片手にE-11、片手にスマートロケットを装備したフライマー少佐少佐は他のジャンプ・トルーパー達にハンドサインを出し簡易的な命令を出した。

 

命令に従ったトルーパー達はそれぞれ散開し地上から放たれる対空砲を軽々と避けた。

 

「全隊、攻撃開始!」

 

通信機から攻撃命令を下し降下猟兵大隊のジャンプ・トルーパー達は一斉に攻撃を開始した。

 

スマートロケットを放ち、サーマル・デトネーターを投げつけて近場の砲塔を破壊していく。

 

爆散した砲塔の火花や火の中を飛び抜け姿を表した敵兵をブラスター・ライフルで撃ち殺した。

 

対空砲やターボレーザー砲も必死にジャンプ・トルーパーを攻撃しようと回転するがスターファイターよりも遥かに小さいこの兵士達を狙い撃つことは不可能であった。

 

「優先して対空砲を潰せ!ターボレーザーは最悪突撃隊に任せておけばいい!」

 

フライマー少佐は的確に指示を出し自らもE-11で砲塔の近くにいた敵兵を2人撃ち殺した。

 

元は惑星防衛軍の空挺兵だったフライマー少佐の歩兵としての腕は精鋭のトルーパー達にも負ける事はない。

 

部下を攻撃しようとする敵兵を素早く撃ち、ジェットパックを点火して再び宙へと舞い上がった。

 

スマートロケットの引き金を引き、近くの局所防衛砲台を一撃で破壊する。

 

塹壕やトーチカからレジスタンス軍の敵兵がブラスター砲やブラスター・ライフルを使って砲塔を守ろうとするがフライマー少佐の支援に駆け付けたジャンプ・トルーパーがサーマル・デトネーターを投げつけ敵兵を爆破した。

 

「少佐!砲塔撃破率が36%まで到達しました!」

 

駆けつけたジャンプ・トルーパーがブラスター・ライフルを放ちながら空中でフライマー少佐に報告する。

 

この短時間の攻撃でここまでの損失を与えられたのは十分な作戦成功率だ。

 

「このまま降下予定地点周辺の砲塔を優先的に撃破しろ!装甲部隊を降ろすぞ!」

 

フライマー少佐は器用に空中で方向を転換しジャンプ・トルーパー達を引き連れて命令した場所に向かった。

 

出てくる兵士を片っ端から撃ち倒し見える砲塔を片っ端からスマートロケットやサーマル・デトネーターで破壊した。

 

悠々自適に空中を駆け回るフライマー少佐と他のジャンプ・トルーパー達だが彼らでもあのハイネクロイツ中佐には遠く及ばなかった。

 

所詮はパイロットの指揮官であるはずの中佐は何故か専門職のフライマー少佐達よりもジェットパックを使った空戦の腕が上だった。

 

一体どんな経歴があるのかは知らないが少佐達にとっては少し悔しかった。

 

だからこそこの戦いで戦功を挙げて我々の底力を見せなければならない。

 

各地で爆散する砲塔や敵のトーチカの中で少佐はそう考えていた。

 

「さあ行くぞ!アデルハイン中佐が来る前に“()()()()()()()()()”の旗を立てる勢いで戦え!」

 

フライマー少佐の雄弁と共に多くのジャンプ・トルーパーが彼の後に続く。

 

このサラストを舞台にした親衛隊によるレジスタンス掃討作戦、いよいよスタートする。

 

 

 

 

 

 

-惑星コルサント 親衛隊本部 親衛隊情報部区画-

『レジスタンスのテロリストどもはかつてと同じく我々の帝国に牙を剥こうとしている!我々の帝国を再び引き裂こうとしているのだ!』

 

親衛隊本部の情報部区画のホロネット・ニュースから宣伝大臣ヨーペゼフ・ゲルバルスの演説が響いていた。

 

プロパガンダの発信としてCOMPNORから独自に誕生した国民啓蒙・宣伝省はこうしたプロパガンダを常に放ち第三帝国の臣民に正しい意識を目覚めさせていた。

 

特にゲルバルス大臣の演説は代理総統の演説と並んで効果的であり第三帝国の支持基盤を確立していた。

 

しかしこの親衛隊本部においては慣れすぎてしまったのかさほど熱狂する様子はなくむしろ一種のBGMのように演説を聞き流し職務を続けていた。

 

特に情報部では保安局員も交えて情報交換が行われ休憩フロアもロビーも将校達の報告会や小会議で埋め尽くされていた。

 

そんな中を数名の将校を引き連れてヒェムナー長官が情報部区画を訪れた。

 

誰が通り過ぎようと話を続けていた情報将校や保安局将校達も長官を見るなりすぐに敬礼し一行を出迎えた。

 

突然の到来に職員達は皆騒めき「一体何の用だろう」などと軽口を述べヒェムナー長官一行を奇異な目で見送った。

 

だが雑談を交わす将校達も最終的には「決まっている、あの方に会いに来たに違いない」と結論付けてそれ以上は詮索しなかった。

 

何処に盗聴器が付けられているか分からないしあまり話したくもない。

 

とにかく会いに来たという事実さえわかれば良かった。

 

ヒェムナー長官は情報部長官室まで向かい衛兵のストームトルーパーに自身の姿を見せるなり長官室に入れるよう求めた。

 

トルーパー2人もすぐ頷きドアを開錠し一行を長官室へ入れた。

 

「…フリシュタイン大佐、なんだハイドレーヒのやつはいないのか」

 

ヒェムナー長官は室内を見渡すなり長官室で数人の将校とやり取りをしていたフリシュタイン大佐に声を掛けた。

 

いつもは保安局長官室か情報部長官室にフリシュタイン大佐と共にいるのだが今回ばかりは違うらしい。

 

ここにはいないハイドレーヒ大将に変わってフリシュタイン大佐が説明した。

 

「ハイドレーヒ大将は現在総統府で総統閣下と面会中です。なんでも“()()()()”の進捗を聞かせてほしいとかで」

 

「なるほど、ならば仕方ない。ディープ・コアの収容所建設計画と“()()()()”の話がしたかったのだが」

 

ヒェムナー長官は仕方ないと長官室を後にしようとしたがフリシュタイン大佐はヒェムナー長官を引き留めた。

 

「もう少しお待ちになられては如何でしょうか。ハイドレーヒ長官は時間的に間も無く帰還するでしょうし最悪、私が長官へ伝達致します」

 

「そうか」とヒェムナー長官はフリシュタイン大佐の提案通り長官室に残った。

 

近くの来賓用のソファーに座り軍帽をテーブルに置き「まずは君に話すとしよう」と口を開いた。

 

大佐は近くの将校にメモの準備を取らせ小さく頷き反対側のソファーに座った。

 

「ディープ・コアの件についてだが調査隊の報告から私は可能だと判断した。問題点はまだ幾つかあるが少なくとも建設可能な惑星はビィスまでの航路に少なくとも十五ヶ所は存在していた」

 

「問題点とはなんでしょうか」

 

フリシュタイン大佐はヒェムナー長官に尋ねた。

 

細かな点も全て聞いて報告しなければハイドレーヒ大将はきっと喜ばないだろう。

 

今の大佐は彼の気持ちになってヒェムナー長官の報告を聞いていた。

 

長官は問題点について端的に話し始める。

 

「まず正確な航路が今の所コルサントを経由したビィス・ランの一つしかない。これでは従来通りアウター・リムやエクスパンション・リージョンの外縁に収容所を作った方が効率的だ」

 

「確かに、他にはありますか?」

 

「一部の国防軍将校から『貴重なディープ・コア領域をそのような事に使うな』との発言が出た。これに関してはこの計画を“()()()()()()”としか言いようがないのだが」

 

フリシュタイン大佐は大きく頷いた。

 

「前線で戦うしか脳がない彼らでは仕方のない事です」と罵倒し粛清してやろうかとまで考えた。

 

この計画がなければこの銀河が平和へ向かう事も、私たちのような悲劇の世代を銀河からなくす事も不可能なのだ。

 

発言者は事の重大さが分かっていない先見の功がない愚か者なのだろう。

 

「特に前者の理由で建設議論が必要となっている。またビィス周辺で興味深い物が見つかった為暫くは調査が優先される為建設はその後になる」

 

「分かりました、伝えておきましょう」

 

メモを取り終えたのを見届けフリシュタイン大佐は次の話に移った。

 

「それで例の工作の件ですが」

 

「ああ、君の上官のハイドレーヒ大将の仕込んだ通りになった。アンシオン戦で入手した機動部隊、アセンダンシー領へ侵入したそうだ」

 

アンシオンの戦い以前に確認されていた暴徒化した帝国軍の機動部隊、小艦隊は後々の調査で実はファースト・オーダーの傀儡であった事が分かった。

 

元よりあの勢力はファースト・オーダーが第三帝国へ接近する為の媒介の役割を果たす予定だったのだろう。

 

しかしアンシオンの陥落とファースト・オーダーの早期接近によってその計画は実質的に消失してしまった。

 

その為実質的にはファースト・オーダー配下でも半ば独立した状態で切り捨てられようとしていた彼らを“()”の一つとしてハイドレーヒ大将が情報部などを駆使し主権を頂いた。

 

利己的な思考でファースト・オーダーに付いていた彼らはハイドレーヒ大将の介入ですぐ第三帝国、親衛隊側に従属し裏の部隊として組み込まれた。

 

傀儡にする事に成功したハイドレーヒ大将は現在同盟交渉協議中のチス・アセンダンシーの領土へ威力偵察と代理攻撃も兼ねて彼らを派遣した。

 

元より近人間のみのチス・アセンダンシーとの同盟締結はハイドレーヒ大将は猛反対していた。

 

暴徒の振りを装った彼らの勢力は親衛隊の差金だとは気付かれずに無事アセンダンシー領へ侵入したようだ。

 

「それは長官も喜ばれるでしょうが……本当に攻撃に成功するでしょうか。彼らはお世辞にも有能とは言い難いですが」

 

フリシュタイン大佐は怪訝な表情を浮かべヒェムナー長官に伺った。

 

実際駒としての価値はともかく能力値は低い方にある。

 

それでも裏で自由に動かせる為重宝するだろうと思っていたのだが。

 

「それは分からんが…動向はしっかり見守らせてもらおう。失敗すれば記録から抹消し成功すればチスの底が知れる。所詮は彼らも劣等人種という事が証明されるのだ」

 

「だといいのですがね、どの道チス・アセンダンシーとの同盟は私個人としてもあまり歓迎しませんし連中に少しでもダメージを与えられるなら万々歳ですが」

 

チス族は近人間の種族であっても完璧な人間種ではない。

 

彼らはヒェムナー長官らから見れば“()()()()”でありハイ=ヒューマン主義の実現においても非常に邪魔な存在だ。

 

それ故に現在の第三帝国では彼らと同盟を結ぶのか結ばないのかが大論戦となっており第三帝国建国史上初めて意見が割れていた。

 

「報告を待とう、今の所主導権は我々にある」

 

陰謀詐術を銀河に巡らせヒェムナー長官は冷静に狂った思いを実行に移していた。

 

 

 

 

 

 

親衛隊による大規模な奇襲はまず第一段階が成功した。

 

サラストに駐留するレジスタンス艦隊は艦隊の戦列に大穴を開けられ分断し状態で惑星内部に親衛隊の地上部隊の上陸を許してしまった。

 

第十二親衛艦隊司令官のエーリヒ・ヴァルフェンドルフ大将の巧みな火力投射と中型艦による浸透戦術のおかげだろう。

 

スター・デストロイヤーの大火力に押され防御態勢を展開するとその隙にレイダー級やアークワイテンズ級のような機動力に優れた艦が雷撃を行い戦列を突破する。

 

その隙に帝国貨物船やセキューター級などの揚陸艦の侵入を行い既にサラスト内部のあちこちで戦闘が勃発していた。

 

親衛隊を迎え討とうと対マグマ装備のレジスタンス兵やサラスタン民兵らが火砲を向け応戦した。

 

当然親衛隊もただ悪戯にやられるわけもなく、セキューター級の重ターボレーザーやTIE部隊の攻撃により進路を切り開く。

 

頑強な防衛網であったがバエルンテーゼ上級大将らの指揮の下殆どの部隊が無傷で上陸に成功した。

 

「閣下!第四十六突撃連隊が敵機甲師団の分断に成功しました!」

 

「予備の第八軍団と第二十六連隊を回して直接攻撃に移れ。ここで機甲師団を押さえればかなりスムーズに進む」

 

「了解!」

 

報告に来た士官はすぐに敬礼し指令を伝達しに走った。

 

その間にもバエルンテーゼ上級大将は簡易司令部で部下達に状況を尋ねる。

 

彼は通常の地上軍トルーパーや将校たちが着るアーマーの上からトレンチコートを被りいつもの軍帽を被っていた。

 

ホルスターには念の為のブラスター・ピストルが入っておりマイクロバイノキュラーがベルトに取り付けられている。

 

生真面目な顔で部下から報告を受け取り地図を見つめ正確な情報を要求していた。

 

「ヴィーキング師団はどうなっている?」

 

「予定通りフリーツェ少将の機甲師団と合流し敵中央の軍集団と会敵したそうです」

 

「よし、支援を出そう。直轄の第二砲兵大隊と第十八砲兵大隊に命令、敵中央軍集団に砲撃を開始せよ」

 

「了解」

 

先陣を切って上陸した第五機甲師団、通称ヴィーキング師団は予定通りの戦果を挙げている。

 

配下の特殊部隊や直轄の精鋭師団の突撃能力は自分より何倍もの戦力を保持する敵軍団を容易に打ち破りレジスタンス軍に甚大な被害を与えていた。

 

彼の絶え間ない努力と隊員達の血の滲むような訓練がヴィーキング師団と特殊部隊に絶対的な突撃力を与えたのだ。

 

更にスタイナー少将の師団に現地の精鋭部隊やバエルンテーゼ上級大将の直轄部隊が加わる事で更に突撃力が増してレジスタンス軍の部隊を次々と平らげている。

 

それに加えて指示を受けた二つの砲兵大隊が重砲やSPMA-T、AT-AAからミサイルや砲弾を放ちスタイナー少将達を支援した。

 

砲撃と機甲師団の集中攻撃により最前線のレジスタンス軍は今頃かなりの大損害を被っているだろう。

 

「ブラウフィッツの兵団を迂回させてソロスーブへ進撃中の敵軍団を背後から攻撃しろ。司令部構築と同時に我々も前線へ向かうぞ!」

 

「砲兵大隊の砲撃支援、成功しました。各師団、予定通り敵軍集団の突破に成功しています」

 

通信兵の報告を受けバエルンテーゼ上級大将は満足気に頷いた。

 

今の所作戦は順調そのものだ。

 

惑星内の退路封鎖はまだだが敵部隊の撃破に成功し部隊の上陸と展開もスムーズに進んでいる。

 

即座に編入された南方地域の親衛隊の戦力も当初の想定より遥かに機能していた。

 

奇襲とAT-ATやAT-STの機甲部隊を使った電撃的な突破戦は防戦一方のレジスタンス軍を蹂躙し都市部の包囲に成功している部隊もあった。

 

軌道上では艦隊戦が続き空中ではXウィングやAウィングとTIEインターセプターやTIEブルートの熾烈な空戦が続いている。

 

特に艦隊戦は惑星内への突破こそ成功したものの両軍、敵艦隊へ向けて致命的な打撃を与えられずにいた。

 

惑星内部で防戦する事を決め込んだレジスタンス艦隊は戦術を再構築して態勢を立て直し親衛隊艦隊と激突した。

 

強固に固まったレジスタンス艦隊は親衛隊艦隊の完全な突破を防ぎ反撃の機会を窺おうと持久戦に持ち込もうとしていた。

 

いくら南方方面全ての親衛隊艦隊を持ってきたとはいえこの強固な守りを完全に撃滅するのは難しい。

 

そこでバエルンテーゼ上級大将は予定されていた攻撃方法を実行に移す為部下のエルフェンバイン少将に尋ねた。

 

「突撃砲兵隊の布陣は完了したか」

 

少将は「はい」と頷きながら答えた。

 

「新型の自走砲塔及び、AT-AAマークⅡは全機攻撃配置に付いています」

 

「軌道上のポイント33-4に全火力を投射し軌道上艦隊を攻撃しろ。その隙に揚陸隊の突撃準備を」

 

「はい閣下」

 

エルフェンバイン少将は敬礼し耳のコムリンクで部隊に連絡を取った。

 

後ろで腕を組み小さく独り言を呟く。

 

「さて…新型の対艦兵器が役立ってくれるといいのだが…」

 

バエルンテーゼ上級大将のその発言は何処か不安も込められていたがそれ以上に期待が大きかった。

 

地上軍出身のバエルンテーゼ上級大将からすればこの攻撃が成功すれば惑星内から敵艦隊を今まで以上に攻撃出来る。

 

「対艦砲撃開始まで、5秒前!4、3、2、1、開始します!」

 

士官の報告の後、簡易司令部からでも見えるほどはっきりした光弾が何発も地表から放たれ天高く突き進んだ。

 

彼らが口にした新型の自走砲塔、通称SPMA-T マークⅡは今も戦闘を続行しているSPMA-Tの後継機にあたる兵器だ。

 

元々共和国グランド・アーミーのSPHA-Tから発展したこの機種は以前のSPMA-Tよりも射程距離が長く大火力の砲弾を放つ事が出来る。

 

その火力はフリゲート艦や軽クルーザーにダメージを与える程度のものではない。

 

インペリアルⅠ級の主砲と同等レベルの火力を撃ち出し1,000メートル以上の重クルーザーにもダメージを与える事が可能だ。

 

更にAT-AAマークⅡは名前の通りAT-AAの後継機でこちらも前型よりも射程距離が長くより多くのプロトン魚雷と対空ミサイルを装備していた。

 

SPMA-Tの重ターボレーザー弾に続いてAT-AAマークⅡの放ったプロトン魚雷が空を駆け軌道上のレジスタンス艦隊へ直撃した。

 

特に重ターボレーザー砲弾の威力は凄まじくMC80スター・クルーザーの偏向シールドを打ち破り直撃させていた。

 

被弾箇所には主力のエンジンも含まれており推進力を失ったMC80はサラストの重力に引かれ徐々に墜落し始めた。

 

背後からの突然の奇襲により主力艦を一隻喪失したレジスタンス艦隊は大いに動揺し親衛隊艦隊に突破の隙を与えた。

 

再び二、三隻のセキューター級と帝国貨物船、ゴザンティ級などがサラストの地上に降り立つ。

 

大地には何千、何万のストームトルーパーと将校が溢れ轟音と共に巨大な足跡を残すウォーカーがその前を進んだ。

 

親衛隊地上軍の大軍が溶岩の河を軽々と渡河し黒灰色の岩石の大地を覆い尽くした。

 

「第十三兵団降下完了、これで直轄の兵団と軍は全て上陸に成功しましたね」

 

「ああ…後はソロスーブ周辺を占拠しレジスタンス全軍に総攻撃を仕掛けるのみ…頼んだぞアデルハイン中佐」

 

 

 

 

 

 

ゴザンティ級から数十台のAT-ATとAT-STが降ろされ素早く戦闘態勢に移る。

 

AT-ATのハッチから出撃した数台のスピーダー・バイクが先行し兵員輸送機と共に素早く部隊を展開した。

 

先頭のエリートAT-AT、インパルス1に乗り込むアデルハイン中佐から全部隊に指示が届いた。

 

「各機予定通りヴィアーズ隊形で前進。スカウト・ウォーカー隊は対歩兵攻撃に専念しろ、ソロスーブまでの道を切り開く」

 

『インパルス4、了解』

 

『インパルス7了解!』

 

インパルス1を除いた11台のAT-ATから報告が届きコックピットの中でアデルハイン中佐は小さく頷いた。

 

既に先行させた降下猟兵大隊のお陰で装甲部隊は殆ど無事に展開する事が出来た。

 

ジャンプ・トルーパー達が今もなお執拗にレジスタンス軍を攻撃しているがまだその大多数が存続しウォーカー部隊を待ち伏せし襲撃しようと画策しているだろう。

 

未だジャガーノートやホバー・タンクといった機甲戦力の姿も見えずソロスーブ防衛部隊が戦力を温存しているのは明らかだ。

 

既にバエルンテーゼ上級大将麾下の本隊は攻撃を開始しスタイナー少将の師団が中央の攻撃に成功したとも報告を受けている。

 

激戦区では順調に優勢を保っているようだがその一方で支援の一個軍団がこちらに接近中との報告も受けていた。

 

早めにソロスーブ社を陥落させ逆に敵の一個軍団を迎え撃たねば。

 

「中佐、敵装甲部隊が出撃しました。ポイント22-3からです」

 

「分かった。ブラウ中隊、ポイント22-3に絨毯爆撃を実行しろ。もし近くにスターファイターの飛行場があるならそこも重点的に叩け」

 

インパルス・フォースの上空を飛行するTIEボマー部隊が飛行機雲を作りながら命令された地点へ爆撃を開始した。

 

装甲部隊は撃滅出来なくとも残りの拠点を破壊出来るはずだ。

 

既にAT-ATも周囲の砲塔や敵歩兵を蹴散らしながら順調に前進している。

 

後方に配備した通常の歩兵部隊も間も無く輸送機やジャガーノートらと共に前線へ到着し制圧を開始するだろう。

 

思いの外敵の防衛網は既に崩されておりウォーカーによる攻撃はただの決定打に過ぎなかった。

 

先行したシャドウ・トルーパー分隊とジャンプ・トルーパーの降下猟兵大隊のおかげだ。

 

特に空中から今もなお大胆な攻撃を仕掛ける降下猟兵大隊の遊撃はレジスタンス軍に大きな負担を与えていた。

 

「ブラウ中隊、敵装甲部隊への爆撃に成功、予測通り飛行場を発見した為優先攻撃中です」

 

パイロットが報告しアデルハイン中佐はコックピットのペリコープ・ディスプレイで状況を確認した。

 

既に敵の装甲部隊は進軍が停止し対空戦闘を行っている。

 

丁度いい、ここで暫く黙っていてもらおう。

 

「前線にジャガーノートが来ていると言ったな?あれは改造式だから震盪ミサイルが発射出来るはずだ」

 

「はい、射程距離も問題ありません」

 

アデルハイン中佐の提案にパイロットが更に付け加えた。

 

中佐は小さく頷き命令を出す。

 

「インパルス12、私の合図と同時にこのウォーカーの震盪ミサイルを発射しろ。後方のジャガーノート隊も同様にだ」

 

『はい中佐、お任せ下さい』

 

今回のインパルス12の車長であるヴァリンヘルト上級中尉は元気の良い声で命令を受け取った。

 

彼は今回の作戦に際して再びジークハルトから部下として与えられた。

 

その為負傷した本来のインパルス12の車長に代わってこのAT-ATの指揮を取っていた。

 

順調に顎の重レーザー砲で敵砲塔やトーチカを破壊しながら攻撃ポイントを指定する。

 

「目標は敵装甲部隊、ここで確実に仕留める」

 

アデルハイン中佐自身もディスプレイで正確なロックオンを行いミサイルの行き先を正確にした。

 

ミサイルを装填し他の機のロックオン完了報告を受け取る。

 

攻撃命令を出した全ての機体がロックオンを完了した瞬間、アデルハイン中佐は命令を下した。

 

「全機、撃て」

 

二台のAT-ATと数台のジャガーノート・ターボ・タンクから大量の震盪ミサイルが発射され装甲部隊に牙を剥いた。

 

風を切る音と共に周囲に一斉に着弾しレジスタンス軍のタンクやジャガーノートを破壊した。

 

対空射撃で何発かは防がれてしまったが攻撃自体は成功し敵装甲部隊は壊滅した。

 

「これでひとまず…か。突撃大隊を前進させ防衛網に打撃を与える。一気に本社内まで突破口を切り開くぞ!」

 

クローン戦争の共和国グランド・アーミー時代からの伝統を受け継ぐトルーパーの突撃大隊は何の歩兵部隊よりも練度は高い。

 

分厚い防衛網も突撃大隊は安易と突破して味方の歩兵部隊の導き手となる精鋭部隊だ。

 

インパルス・フォースの突撃に合わせてアデルハイン中佐は攻撃の一手を繰り出した。

 

これでチェックメイトに差し掛かる。

 

先行させて突撃させていた偵察兼工作員のスカウト・トルーパーとプローブ・ドロイド達も十分任務を果たしてくれている。

 

すると早速そのスカウト・トルーパーの1人から通信が届いた。

 

「どうした」と一言尋ねる。

 

『中佐、新たな装甲部隊です』

 

「規模はどのくらいだ」

 

対応策を考えながらアデルハイン中佐はスカウト・トルーパーに尋ねた。

 

すると中佐にとっては意外な答えが帰ってきた。

 

『ウォーカーがいます。旧共和国グランド・アーミーのAT-TEウォーカーです』

 

アデルハイン中佐は瞳孔を開き身体を小さく振るわせた。

 

遠い昔、過去の出来事を思い出しながら。

 

 

 

 

 

 

 

「誰か倒れているぞ」

 

大草原から少し離れた森林の中で王室保安軍の保安隊員は2人の倒れているのを発見した。

 

それぞれCR-2ブラスター・ピストルを構えゆっくり前に進む。

 

先行して向かった2人の保安隊員が倒れている2人を見るなり部隊の隊長に報告した。

 

「二尉、消息不明のコマンドー隊員を発見しました」

 

装備品や遺体の衣服のマークから断定し一等保安士の階級章を持つ保安隊員はそう報告した。

 

保安隊の二等陸尉が指揮するこの一個小隊は特務捜索に出ていた宇宙部門コマンドー隊の隊員が突如通信を途絶した為隊員達を捜索する為にここまで出撃していた。

 

本来この隊長は一個中隊ほどの指揮官なのだが先日の襲撃も相待って捜索にそこまで人員が裂けず仕方なく一個小隊で任務を実行していた。

 

遺体を表替えし傷や様子を見つめる。

 

「脳天に弾痕がある…これはきっと即死だろうな…」

 

一等保安士は遺体の様子を見ながらそう呟いた。

 

「装備のブラスター類がないようですが」と隣の若い二等保安士は先輩に伺った。

 

背後からは他の隊員や隊長達も集まっており全員で様子を確認した。

 

「恐らく奪われたのだろう」、隊長はそう断定したが副長の一等保安長は首を傾げた。

 

「ですが他のアーマー類は手を付けていません。何故でしょうか」

 

「確かに…」

 

隊長は首を傾げ怪訝な表情で遺体を再度見つめた。

 

彼らはどういう経緯で死に、どうしてブラスターだけないのか。

 

練度の高く装備も保安軍の中ではトップクラスに入る彼らがこんな呆気なく死んだ理由はなんなのか。

 

「恐らく追跡に気づかれ返り討ちにされたのだろう。コマンドー隊員とはいえ前線で常日頃から戦っている“()()()()()()()”精鋭ではまだ勝てない」

 

「グリアフ一等宙佐!!」

 

二尉や他の保安隊員達は一斉に敬礼し整列した。

 

一等宙佐は敬礼を返す事なく遺体に近づく。

 

「一体いつナブーに侵入した?以前の襲撃でも内部への侵入は確認されていなかったはずだが…」

 

グリアフ一等宙佐は以前から王室保安軍の情報将校を勤めておりクリース宙将の懐刀的存在だった。

 

秘密裏に総統時代の第二帝国に接近したグリアフ一佐は帝国との協力関係を結びつけ素早い帝国の支援を提携した。

 

彼こそがクーデター成功の立役者の1人であり近々宙将補への昇進が決定されていた。

 

情報将校である彼はこの手の捜査は手慣れている。

 

他の保安隊員や保安将校などよりも素早く情報を整理し犯人を推定出来るグリアフ一佐は捜索の後続部隊として二、三個の精鋭分隊と共に捜索隊に加わった。

 

まず受け取った状況を隊員に投げかける。

 

「隊員を殺害した襲撃者はブラスターとパワーセル類を持ち去ったと」

 

「はい、アーマーや通信機類には全く手を付けていません。何故でしょうか」

 

保安隊員がグリアフ一佐に疑問を投げかける。

 

一佐は立ち上がり独り言を唱えるかのように疑問に答えた。

 

「手慣れた武器を取っていったのかあるいは単なる揺動…」

 

だがそこまで言った途端彼の声は遠くから聞こえる銃声に掻き消された。

 

どこからともなく飛んできた光弾が隣の保安隊員の頭を貫通し死の世界へと誘ったのだ。

 

彼が撃たれる瞬間をグリアフ一佐は確実に視認していた。

 

彼は誰よりも早く木の影に隠れ部隊全員に「狙撃されているぞ!」と伝えた。

 

他の保安隊員達も慌てて木の影に隠れたが逃げ遅れた後方の1人が再び狙撃され撃ち倒された。

 

「隊員から奪い取ったスナイパー・ライフルか…!」

 

倒れてる2人の遺体の装備をしっかり確認していたグリアフ一佐は敵が使用する武装を把握した。

 

帝国軍から借りていたE-11s長射程ライフルだろう。

 

「重ブラスターで応戦しろ!」

 

「了解!」

 

DTL-19重ブラスター・ライフルを持った保安隊員が木の影から身を出した途端すぐに狙撃され隊員は地面に倒れた。

 

「出るな!一歩でも体を出せば撃たれるぞ!」と他の隊員が制止し部隊は完全にこう着状態となってしまった。

 

S-5重ブラスター・ピストルをホルスターから引き抜き弾丸が放たれた方向へ牽制射撃を繰り出したが殆ど効力はなく、逆に狙撃されあわや頭を吹き飛ばされる所だった。

 

数では恐らく優勢なのだろうがこのままでは埒が開かない。

 

グリアフ一佐は隊長と隊員達に命令を出す。

 

「左右両方から同時に牽制射撃を行いつつ前進、狙撃の手が間に合わないうちに中央からの突撃しろ!」

 

「りょっ了解!第三、第四分隊は左右から前進!第一と第二で中央で待つぞ!」

 

ほぼグリアフ一佐の命令を反復するように指示を出した隊長は汗を垂らしながら状況を見つめた。

 

一佐が連れてきた分隊もそれぞれ左右に展開し兵力を均等に割り振った。

 

敵の狙撃手は左右両方に威嚇射撃を繰り出したがそれでも右を撃っている間に左の分隊が前進し真面に効力を出していなかった。

 

「参ったな」、狙撃手のジェルマンはポンチョのフードの奥から再びスコープを除いた。

 

このE-11sはスナイパー・ライフルでありながらとても扱い易い代物だった。

 

帝国軍の武器とはいえE-11系列のブラスター・ライフルはどれも扱い易く基本的な性能が高い。

 

このE-11s長射程ライフルもその類に漏れず基本的には狙撃素人のジェルマンを一流の狙撃手に押し上げていた。

 

とはいえ全てがこのスナイパー・ライフルのおかげという訳ではない。

 

ジェルマンは元々アカデミーの狙撃訓練でも比較的上位に入る腕前だった。

 

ストライン中将も「情報部員も出来るがスナイパーもやれそうだな」と言わしめるほどだ。

 

だがジェルマンがブラスター・ライフルで狙撃する機会など殆どなかったし彼が情報将校となった時にはもう既に銀河内戦は終結していた。

 

この一連の戦争も殆どが潜入や破壊工作と言った任務なので狙撃といった攻撃はあまり行わなかった。

 

「左右は取り敢えず任せて中央の敵に集中するか」

 

威嚇射撃として雑に飛び交う保安隊員の弾丸を無視しながら再びE-11sのスコープを見つめ引き金に指を掛ける。

 

弾丸が飛んでくる事はあっても相手の一般歩兵が持つCR-2やS-5重ブラスター・ピストルではこのライフルほどの精密射撃は出来ない。

 

なんなら弾丸もほぼ90%以上がこちらに届く事なく崖や木々に当たり残りが少し1〜2メートルくらい離れたジェルマンの近くを掠める程度だった。

 

相手の射撃はジェルマンの威嚇射撃以上に役に立っていない。

 

そして今からジェルマンが行おうとするのは威嚇射撃ではなく狙撃だ。

 

そろそろ頃合いだと敵の指揮官達は中央に残った部隊も前進し始めた。

 

これを待っていたのだ。

 

まず先頭から少し離れて前進する保安隊員の胸部に照準を合わせ引き金を引いた。

 

冷たく放たれたブラスター弾は狙い通り保安隊員を撃ち抜き地面に倒した。

 

すぐに狙いを変えその隣を進んでいた保安隊員に狙いを定める。

 

再び引き金に力を掛け敵を撃ち抜いた。

 

更にもっと後方の保安隊員、その左隣の保安隊員、更に更にと狙いを定め素早く撃ち抜いていった。

 

この無慈悲な集中攻撃に恐れを成した敵部隊は徐々に後退し始め再び近くの木々に隠れようとした。

 

当然逃げ惑う敵兵もジェルマンは容赦無く狙撃していく。

 

一番先頭にいた保安隊員や敢えて撃たなかった真ん中の保安隊員らを撃っていく。

 

これでひとまず先程の射撃も併せて10人は撃ち倒しただろうか。

 

かなり十分な損害を与えられたはずだ。

 

後は両翼の敵兵ののみとなる。

 

「ジョーレンが張った罠が上手く行くと良いのだが…」

 

ジェルマンは何処か祈るように呟きブラスターの弾薬をチェックした。

 

その頃前進が停滞した中央では不安そうな表情で隊長がグリアフ一佐の顔色を伺っていた。

 

まだ左右の部隊は前進を続けているが中央の部隊は大損害を喰らい前進が停滞している。

 

ある一面ではグリアフ一佐の作戦は失敗に終わってしまった。

 

「中央にだけ一点的に集中攻撃……最悪左右から包囲され殲滅される。なのに何故…」

 

「隊長、一佐、シード本部より特務連絡です」

 

「なんだと?」

 

一佐は報告に来た副官の三等宙尉に聞き返した。

 

「グリアフ一佐と捜索隊は直ちに捜索を切り上げ首都シードへ帰還せよと」

 

「何?」

 

その意外な返答にグリアフ一佐は思わず首を傾げた。

 

三尉は更に付け加えた。

 

「クリース宙将の命令です、なんでも…」

 

三尉はグリアフ一佐のみに耳打ちした。

 

隊長や他の隊員はずっとその様子を見ている事しか出来ず三尉の情報は聞けなかった。

 

だが彼からクリース宙将の伝言を受け取ったグリアフ一佐は顔色を変えすぐ隊長に命令を出した。

 

「二尉、撤退だ。直ちに全ての分隊を集結させシードへ帰還するぞ」

 

「しかし一佐、まだ敵が…」

 

「私の命令は絶対だ、それに狙撃兵だけでは我々を追撃する事はしないだろう。私は先行してシードへ帰還する、後は頼んだぞ」

 

「一佐殿!お待ちを!」

 

グリアフ一佐はそのまま三尉と共にその場を後にしスピーダーの方へ向かった。

 

彼の直轄の分隊も素早く退却し始め隊長もこの状況では撤退命令を出す他なかった。

 

徐々に左右両方の部隊も撤退し始めジェルマンはその様子を黙って見つめていた。

 

通信機を起動し近くに隠れているジョーレンに状況を伝達する。

 

「ジョーレン、敵が撤退していく」

 

『こっちでも見えている。一体何故だ…?まだ罠を張った区画まで来ていないのに…』

 

「でもこれは好都合だ。僕たちも脱出しよう」

 

ジェルマンはブラスターやエレクトロバイノキュラーを手に持ちその場から離れようとする。

 

しかしジョーレンは通信機から『ああ…そうだな』と答え通信機を切った。

 

敵兵と背中を合わせながらジェルマンは引き帰った。

 

多少の疑問と不安を抱えながら。

 

その後2人はディカーの司令部から掛かってきた緊急の情報を耳にする事になる。

 

惑星サラストが攻撃を受けていることを。

 

そして既に陥落寸前だと言うことを。

 

 

 

 

 

 

-チス・アセンダンシー領 未知領域 惑星シーラ軌道上 ヴェンセナー飛行アカデミー-

惑星シーラの軌道上で今日も第一銀河帝国の最盛期から続く名門パイロット育成校、ヴェンセナー飛行アカデミーでパイロット候補生達が訓練を行なっていた。

 

このヴェンセナー飛行アカデミーはクローン戦争にも参戦したヴェネター級スター・デストロイヤー“ヴェンセナー”を飛行アカデミーとして改修したものだ。

 

とうの昔に退役するはずだった“()()()()()()”はパイロット育成の飛行アカデミーとして生まれ変わり校長のバイセン・フォーラル司令官の下多くの優秀な将校とパイロットを育成してきた。

 

退役したヴェネター級で受ける講義や実技に加えクローン戦争を戦い抜いたエースパイロットが校長という環境は候補生達の精神的なやる気を大きく促進させるだろう。

 

現に度々「あのヴェネター級で訓練を受けたかったから」という候補生の声を時々耳にする。

 

そんな“ヴェンセナー”もたまたまエンドア戦中にアケニス宙域からへサンクト宙域移動し訓練を行なっていた為ヴィルヘルムに続きチス・アセンダンシーのある未知領域へ亡命した。

 

ヴェンセナー”とフォーラル司令官は委任されたチス・アセンダンシー軍の強化において特に重要な役割を果たした。

 

チスのスターファイター隊を設立する際にどうしても亡命したサンクト宙域の帝国軍と連携する為にはTIEシリーズの機体を操縦する必要があった。

 

その為多くのパイロットがここでTIEシリーズの操縦に慣れようと訓練を受けていた。

 

フォーラル司令官も他の教官と共に自らチスの候補生達を先導しかつての帝国時代と同じように多くのパイロットや将校を育成した。

 

短期集中型の教育方法だったがフォーラル司令官と“ヴェンセナー”のスタッフ達は難なくこなしチスのスターファイター隊を完成させたのだ。

 

そんな“ヴェンセナー”に1機のラムダ級シャトルが接近する。

 

【挿絵表示】

 

「司令官、あっいえキャプテン!定刻通りラムダ級が本艦に接近しております。このまま一番ハンガーベイに着艦させましょうか?」

 

ヴェンセナー”のブリッジで1人の乗組員が幾人かの幕僚と話し合うフォーラル司令官に報告した。

 

フォーラル司令官は司令官という立場にありながら“()()()()()”と呼ばれる事を好んだ。

 

別に呼ばなければいけないと言う規則はないがそれでもキャプテンと呼ばないと微妙に機嫌が悪くなる。

 

「そうしてくれ、私は元帥閣下達を迎える準備がある。さて行くぞクリス」

 

「はいはい、キャプテン殿」

 

スターファイター隊のクリスフリート・ヴァント将軍はそう軽く呟きフォーラル司令官の後に続いた。

 

ヴァントと言っても以前から特務大使としてチス・アセンダンシーにいるイーライ・ヴァント中佐全く別だ。

 

クリスフリートは惑星ハンバリン生まれで地元ではかなり有名な軍族一家であった。

 

彼自身はまだ幼年の特務アカデミーに入っており直接の参戦はないが彼の父も兄も他の親族も殆ど皆がクローン戦争に参加した。

 

まだパイロット候補生だったヴァント将軍と共和国軍のエースパイロットとして活躍していたフォーラル司令官との出会いもここだ。

 

一時期は教官と候補生と言う形で共に同じスターファイターに乗り込んだこともあった。

 

銀河系にも多くの分家を残し今でもあちこちの軍にその命脈を残している。

 

2人はブリッジを降りてエレベーターに乗り“()()()()()()”の中の応接室へと向かった。

 

「そういえば新しい候補生、遂に完全新規の通常アカデミーと同じ年数教育するそうですね。どうです、順調ですか?」

 

ふと思い出したようにクリスフリートはフォーラル司令官に尋ねた。

 

ようやく部隊編成が追いついた亡命軍とチス軍は遂に通常通りのアカデミー教育を実行する事にした。

 

ヴェンセナー飛行アカデミーでも帝国時代と同じ年数で教育を施し育成する方針に戻り始めていた。

 

「素質たっぷりのしごきがいがある候補生ばかりだよ。昔のお前のようにな」

 

フォーラル司令官のジョークに苦笑いを浮かべ2人はそのまま応接室に向かった。

 

衛兵のストームトルーパーが2人敬礼し「参謀総長がお待ちです」と報告した。

 

「ご苦労」と返しフォーラル司令官とクリスフリートは応接室の中へと入った。

 

椅子に座れる元帥を見かけ2人は敬礼する。

 

「ようこそヴェンセナー飛行アカデミーへ。お待ちしていましたよ、シャポシニコフ元帥」

 

ソファーに座っていたシャポシニコフ元帥と部下のヴァシレフスキー少将も立ち上がり敬礼を返した。

 

どうぞそのままと合図を出し、フォーラル司令官とクリスフリートも席に座った。

 

「アカデミーの方は順調です。新規候補生は予定通り通常コースで育成します」

 

軽く報告を行い、軍帽をテーブルに置いた。

 

「それは良かった」とシャポシニコフ元帥は相槌を打って安堵した声を上げた。

 

同じアカデミーに携わる者としてその報告はとても喜ばしいものだ。

 

「それでチスTIEファイターの配備についてですが、現状操作性が同じなら現状のTIEファイターで十分だと思います」

 

チスTIEファイター、正式名称ヌシス級クロークラフトは新型のTIEシリーズの一種に当たる機体だ。

 

別名でチス・クロークラフトなどとも呼ばれている通りこのヌシス級にはチス側の技術がふんだんに盛り込まれている。

 

元々設計されていた機体に帝国軍のTIEシリーズの技術を組み込むことで更なる性能の向上に繋がった。

 

通常のTIEファイターよりは少し鈍足だがハイパードライブや偏向シールドを装備しより頑強な機体に仕上がっている。

 

更にはオプションで震盪ミサイル、プロトン魚雷などを装備出来る為爆撃能力にも優れていた。

 

現在通常のTIEシリーズと同様に生産中ではあるがそれでも全域への配備はまだ整っていない。

 

故に優先されるのは正規の軍隊と前線や辺境域の主戦部隊だとフォーラル司令官は思っていた。

 

現状訓練を行うだけなら今のTIEファイターでも十分だった。

 

操縦の素性が大きく変貌しないのがTIEシリーズの強みだ。

 

「だが君用に1機手配してもいいのだぞ?」

 

「いえ、私はもう一戦を退いた身ですので。それよりもヴァント将軍の隊にでも配備してやったらどうです?」

 

隣の現役指揮官に目を向け話を振った。

 

クリスフリートは微笑を浮かべ「お気遣いどうも」と答えた。

 

「ヴァント将軍の部隊には直ぐに新型のTIEシリーズを配備する。使い慣れた通常のTIEの発展系の方がいいだろう」

 

TIEディフェンダーのみで構成された麾下中隊のシルバー中隊など様々な精鋭部隊を保有していた。

 

「それで、本題ですが…」

 

「ああ、我々が第三帝国から来る視察団を迎え入れるのは承知しているはずだ」

 

シャポシニコフ元帥の問いに2人は小さく頷いた。

 

同盟こそなされなかったものの第三帝国との関係は少なくとも敵対はしないと明確化された。

 

帝国同士の激戦を少なからず経験してきた彼らにとってはとても良い知らせだ。

 

「視察団の訪問先としてここを加えたい。ヴェンセナー飛行アカデミーでの様子は第三帝国に対して何らかの効力を与えるはずだ」

 

「…分かりました、日程に組み込んでおきましょう」

 

「引き受けてくれるか?」

 

「はい、お任せください」

 

フォーラル司令官の快諾にシャポシニコフ元帥とヴァシレフスキー少将は顔を見合わせ安堵の笑みを浮かべていた。

 

2人は席を立ちフォーラル司令官は「もう行かれるのですか?」と尋ねた。

 

「参謀本部の方が忙しくてな。本当なら長居してアカデミーの様子を私も視察したいのだが…そうはいかん。すまんな」

 

「いえ、元帥こそお疲れ様です」

 

クリスフリートの労わりにシャポシニコフ元帥は「いいんだ」と微笑を浮かべた。

 

「シャトルまでお見送りします」とフォーラル司令官とクリスフリートは2人についていった。

 

応接室を経ち軍帽を被り直す。

 

だが応接室から離れ少し歩いたところで2人はアカデミーのスタッフに呼び止められてしまった。

 

「キャプテン、将軍、ライコフ教官が2人を探しておいででした」

 

「何?」

 

「行きなさい、気持ちだけ受けて取っておくよ」

 

フォーラル司令官とクリスフリートは申し訳なさそうな表情を浮かべながらシャポシニコフ元帥に敬礼した。

 

2人はその場を後にして駆け足で呼ばれた方へ向かった。

 

「アカデミーは順調そうだ。これで少なくともスターファイター戦力は問題ない」

 

「はい、ですが実戦となると違う可能性もあります」

 

ヴァシレフスキー少将はそう付け加えた。

 

シャポシニコフ元帥も小さく頷き軍帽の鍔を持って深く被った。

 

「その事に関しては次の前線での戦闘で直接確認するしかない。少将、色々と頼んだぞ」

 

「必ず防衛戦を完遂して見せます!」

 

シャポシニコフ元帥は満足げに頷き2人はラムダ級シャトルへと向かった。

 

サラストだけでなく遠く離れた未知領域でも次なる大戦に向けた前哨戦が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が初めて物心ついた時にいた場所は、戦場だった。

 

まだ3歳の時か4歳の時、将又5歳の時か。

 

もう正確な年齢など忘れてしまったがそれほど遠い過去から私は戦場にいた。

 

いや、巻き込まれた。

 

あの頃は銀河の社会情勢どころか自分の住んでいる星の名前も真面に言えなかったが今ならよく分かる。

 

当時はまだクローン戦争を生き残った多数の分離主義抵抗勢力が存在しその規模もとても大きかった。

 

敗北を受け入れられない彼らは当然のように各地で抵抗を続けテロリスト紛いの事も行っていた。

 

私はそれに巻き込まれた。

 

ある日突如分離主義者達の残存艦隊に襲撃され街は廃墟と化した。

 

両親は死に轟音の中で顔中煤だらけになりながら廃墟の中をずっと走っていた。

 

降り注ぐ弾丸やミサイルの恐怖から逃れる為に、まだ小さい私には恐ろしく怖い思いだった。

 

何度も転び何度も傷を負ったか当時でさえ覚えていない。

 

ただ怖かった、ただ混沌に包まれていた。

 

街中悲鳴が響きそこら中に死体が転がっていた。

 

死にたくなくても死は私に鎌をかけて喉元を引き裂こうと狙っていた。

 

あの人が来るまでは。

 

廃墟の中に隠れていた私を探し出しその人は「大丈夫か!」と声を掛けた。

 

何人かの白い装甲服を着た人達と共に私を戦場の地獄から救い出した。

 

外に出てみれば六足歩行の装甲車両や何十機のスターファイターが分離主義者達を完全に撃破し街中に平穏を取り戻していた。

 

もう破壊された街や死んでしまった父や母は戻ってこないだろうが彼らは残された者を全て守っていた。

 

そして私の手を引いて安全地帯まで駆け抜けた。

 

ふと顔を上げて彼の横顔を見つめれば必死に走り時々私に「大丈夫だ」と微笑を見せた。

 

軍帽から見える金髪に金色の瞳。

 

まだ旧共和国軍の制服を着ており軍用の外套を身に纏っていた。

 

その時は名前は聞けなかった。

 

そんな余裕など何処にもなくただ恐怖からの解放と安堵ですぐ意識を失ってしまった。

 

彼の名前が分かったのはその後だ。

 

しばらくして私を心配していたあの人は避難所にいた私に再び声をかけた。

 

その時彼は自らこう名乗った。

 

()()()()()()()()()()()()()()”と。

 

今同じ戦場にいるバエルンテーゼ上級大将その人だ。

 

当時大佐だったバエルンテーゼ上級大将は指揮していた部隊と共に私の故郷を解放し私も救ってくれた。

 

希望も何もない灰色の世界で唯一バエルンテーゼ上級大将への憧れが世界を彩った。

 

その後とある育成機関を経て帝国ロイヤル・アカデミーに入学した先で私はバエルンテーゼ上級大将の戦歴を知り益々憧れを募らせた。

 

ジュディシアル上がりの指揮官でクローン戦争では多くのクローン・トルーパーを率いて各地を転戦。

 

ヒルデンロード元帥とリーデンドルフ元帥のターネンベルグの戦いなどにも参戦し祖国の為に戦った。

 

やはり私を救ってくれた人はすごい人だった。

 

ますます憧れは膨らんだ。

 

新たに出会った“()()”への憧れと共に。

 

あの頃から私にとってジークハルト、君は憧れだった。

 

バエルンテーゼ上級大将の戦友としてラスティ・シュタンデリス准将の名前は当然知っている。

 

突如姿を消した名将として多くの人と同じように記憶していた。

 

その消失の名将の息子が父親の跡を辿りここ(アカデミー)にいた。

 

同室だった私はすぐにジークハルトと仲良くなったし彼の事情も聞いた。

 

自分の父親に、父が歩んだ道のりは間違いじゃなかったと証明する為にひたむきに努力していた。

 

バエルンテーゼ上級大将同様に彼にも憧れた。

 

同じいつかはああなりたいと、ああなって見せると。

 

空虚な私に憧れの情景は二色も彩りを与えた。

 

だが運命はそんな憧れを砕こうとする。

 

それは銀河内戦中の私たちの“()()”の“()”であった。

 

彼の戦死はジークハルトを絶望させ私たちに深い傷を遺した。

 

彼はあの時完全に折れそうだった。

 

絶望は彼を包み憧れを飲み込もうとしていた。

 

そうはさせない。

 

私にとっての憧れを消させやしない。

 

彼が折れそうになったら“()()()”までだ。

 

ずっと、そうしてきたようにこれからもそうする。

 

ジーク、私の勝手な願いなのは分かっている。

 

だがどうか、ずっと憧れでいて欲しい。

 

皆を導き続けるそんな憧れでいて欲しい。

 

今後生まれる私のような子ども達に微かな“()()”を与え希望となるように。

 

その為に私は、いつまでもついていくさ。

 

君の後ろを、君を支えながらずっと。

 

フリーツ・アデルハインという副将が常に隣にいる。

 

ずっと“()()”を支え続ける為に。

 

「旧式の改造品か」

 

「前衛の六台は強力なレーザー砲を装備したエリート機です。後方からも旧型機ですが数十台近くのAT-TEウォーカーが接近中」

 

パイロットの報告を受けてアデルハイン中佐は戦略を練った。

 

敵機は旧共和国グランド・アーミーが使用していた全地形対応戦術攻撃兵器、AT-TEだった。

 

この機体は初期型のウォーカーとしてクローン戦争各地で戦いグランド・アーミーに数々の勝利を贈った。

 

その後帝国地上軍でも初期の僅かな間に使用されその後は初期型AT-AT、現在のAT-ATのようなアサルト・ウォーカーの基礎となった。

 

今ではすっかり主力を離れ旧式扱いとなっている。

 

恐らく解体、または警備隊や地方に配備されるはずだったAT-TEを現地のレジスタンス軍が何らかの経緯で入手したのだろう。

 

機体の一部がグレードアップされたエリートAT-TEというエリート・ウォーカー機の存在も見える。

 

いくら旧式とはいえ普通にぶつかってはAT-ATといえどエリートAT-TEの火力では被弾箇所によっては致命傷になる。

 

だが少なくとも性能と数ではこちらの方が上だ。

 

「インパルス4からインパルス7までは全機防御隊形、その間に残った機は二手に分かれて左右の側面から攻撃する」

 

『了解中佐!』

 

「それとヘルクス大尉、聞こえているか?」

 

後方でAT-AAなどの指揮を取るヘルクス大尉に通信を取った。

 

連中には限りなく不利になって貰う。

 

『はい中佐、何の御用でしょうか』

 

大尉は素早く返信しアデルハイン中佐も手短に命令を伝える。

 

「妨害粒子の煙幕弾を敵装甲部隊周辺に投擲しろ」

 

『ですがそれではウォーカー部隊も射撃が困難になりますが』

 

ヘルクス大尉はそう忠告した。

 

ウォーカー系の兵器であれば大半がスモーク弾を使用されても熱源探知なので精密射撃が可能になる。

 

しかしヘルクス大尉に命じた砲弾は熱源探知すら妨害する完全なスモーク弾だ。

 

だがそれは味方のAT-AT類の熱源探知すらも妨害してしまう。

 

「問題ない、連中には“()()()()()”。私の機体がポイントS-11まで前進した時に一斉に撃て」

 

『了解しました!』

 

ヘルクス大尉との通信を切り敵を蹴散らしながら再びディスプレイを覗いて距離と周囲の状態を測る。

 

インパルス・フォースの付属機とは違うAT-STの部隊が先行し歩兵部隊を粗方蹴散らしていた。

 

追随する突撃大隊のストームトルーパー達も効力的な戦果を与えていた。

 

彼らは勇敢にもトーチカにサーマル・デトネーターを近距離で擲弾したりバリケードを打ち破り防衛網に飛び込んで近接戦闘を行なったりしている。

 

ある者など敵の軽装甲車両にギリギリまで近づき近接反応爆弾を取り付け爆破していたりした。

 

効力的なウォーカーと歩兵の突撃によりAT-AT部隊の脅威はほぼ存在しなくなっていた。

 

ならば彼らの脅威になるであろう敵のウォーカー部隊を我々で撃滅するだけだ。

 

防御に回った中央のインパルス4、インパルス5、インパルス6、インパルス7が重レーザー砲をAT-TE部隊に浴びせかける。

 

敵部隊も負けじとマス=ドライバー砲を一斉に放ってきたが全てAT-ATに着弾しても大した損傷にはならなかった。

 

しかしエリートAT-TEの攻撃はそうは行かない。

 

強力なレーザー砲が左に寄り砲撃を続けるインパルス6の一部分に着弾し被弾箇所を大きく抉った。

 

大きな振動がインパルス6全体を襲いスパークが発生する。

 

「大丈夫かインパルス6」

 

前進しながらアデルハイン中佐はインパルス6に連絡を取る。

 

小破とはいえかなり酷くやられた。

 

回避が間に合わず直撃を受けていたら恐らく中破、大破していただろう。

 

『問題ありません…!パイロットも小官も兵員も無事です…!』

 

実はスパークにより額に傷を負っていたインパルス6の車長であったが無理矢理大丈夫だとアデルハイン中佐に進言した。

 

今更支援に向かうのはもう無理なのでこのまま彼らに中央を任せて前進するしかない。

 

「ポイントS-11に到達、AT-AAスモーク擲弾投射開始されました」

 

何発かのミサイルがアデルハイン中佐らを横切り敵AT-TEの前で爆散して白い煙幕を噴き出す。

 

妨害粒子入りのスモーク弾はその効力を発揮しAT-TE部隊の攻撃を一時的に鈍らせた。

 

正確な狙いが付けられず恐らく攻撃を一時中断したのだろう。

 

煙幕の内部から三、四台の全地形対応索敵トランスポート、AT-RTが姿を現す。

 

恐らく煙幕外の状況を素早く索敵する為だろう。

 

数人の護衛の兵士と共に出てきたAT-RT隊だったが中央のAT-ATと両翼のAT-ATによる中型ブラスター砲の集中砲撃を受け悉く破壊されてしまった。

 

後継機のAT-STとは違いオープンタイプのAT-RTは中型ブラスターを喰らった瞬間、パイロットが吹っ飛びコックピットが抉れるように壊された。

 

“脚”に被弾したAT-RTはそのまま地面へと倒れ近くを走っていた護衛の兵士をそのまま押し潰し別の兵士は中型ブラスターをモロに喰らい抉れた大地に抱かれ土まみれの姿となった。

 

「中央隊はそのまま敵索敵機の撃破に専念しろ。両翼の隊はシーカー・スカウトシステムを起動し主力のAT-TEを叩くぞ!」

 

アデルハイン中佐の命令と共にパイロットがコックピットのパネルを操作し言われたシステムを起動した。

 

中佐はそのままディスプレイを引き下げ覗き込む。

 

「シーカー・ドロイドのセンサー反応率100%」

 

「各機起動完了した模様です」

 

シーカー・スカウトシステムとはジークハルトや索敵部隊の下士官兵や将校達と共に考案した索敵システムだ。

 

AT-AAの放ったスモーク弾のように周囲の状況が完全に判断出来なくなる場合に備えた索敵方法で、AT-ATやスカウト・トルーパーのスピーダー・バイクから放たれたシーカー・ドロイドやプローブ・ドロイドが煙幕内、または煙幕外を索敵し信号を発して敵の位置を明確化するというものだ。

 

特にウォーカーやジャガーノートクラスの大型車両には効果的で視覚やセンサー類が奪われていてもドロイドによる索敵によりどんなに距離が離れていても完全に敵の位置が把握出来る画期的なシステムで全ての位置情報はAT-ATなどのウォーカーに共有される。

 

つまり敵はこちらを認識出来なくてもインパルス・フォースの部隊は確実に敵機を攻撃出来るということだ。

 

その理論通りエリートAT-ATのインパルス1から最大出力の重レーザー砲が放たれ煙幕を突き破り敵のAT-TEに着弾する。

 

煙幕の中で大きな爆発が響き渡り直撃を喰らったAT-TEは一撃で大破した。

 

立て続けに僚機のインパルス2やインパルス3も同じように重レーザー砲を最大火力で放ち敵ウォーカーを撃破した。

 

反対側のヴァリンヘルト上級中尉らのAT-ATも攻撃を続行し敵部隊へ確実な損害を与えていた。

 

特にヴァリンヘルト上級中尉のインパルス12はインパルス6にダメージを与えたエリートAT-TEを一台撃破し敵の脅威を大きく削ぎ落とした。

 

砲撃は敵を殲滅するまで止む事はなく重レーザー砲の轟音がソロスーブ内に響き続けた。

 

時々少しでも反撃しようと煙幕の中からマス=ドライバー砲の青い光弾が放たれたが弾丸は明後日の方向へ飛んでいき、的を大きく外れ一発も当たらなかった。

 

しかしAT-ATは確実に敵機を殲滅し煙幕が晴れる頃にはそこには破壊されたAT-TEの残骸と死体かどうかすらわからない物体の残りが転がっていた。

 

残骸となった旧時代の遺物を目の前にして彼らは冷酷に通り過ぎ更に当たりの敵兵を蹴散らし遺物の手向とした。

 

「間も無くソロスーブ社のハンガーベイ前です」

 

パイロットの報告は攻撃に集中していたアデルハイン中佐の意識を上陸へと向けた。

 

「インパルス2、インパルス3はこのまま前進し続けろ。私の機体で取り敢えず部隊を突入させる」

 

『了解中佐!』

 

『ご武運を!』

 

「ウォーカーを上陸モードへ、全乗員はこのままソロスーブ内へ突撃準備」

 

エリートAT-ATの前進速度を下げてウォーカーを徐々に停止させる。

 

護衛のAT-STやオキュパイア・タンクに囲まれながらエリートAT-ATはゆっくりと停車し部隊の上陸態勢に入った。

 

AT-ATには約40名の兵員が搭載可能でこのエリートAT-ATにも40人近くのストームトルーパーが乗員していた。

 

後方から二、三台の兵員輸送機やジャガーノート輸送車が到着し更に多くのトルーパーが展開された。

 

エリートAT-ATも完全に上陸への態勢を整えハッチが開いた。

 

「突撃開始だ!!」

 

ストームトルーパーの隊長に先導され多くのフューラー・ストームトルーパーがブラスターを放ちながらAT-ATを飛び降りて突撃する。

 

E-11だけでなくDTL-19、T-21軽連射式ブラスターやRT-97C重ブラスター・ライフルも装備し突撃の効力を上げていた。

 

ライフルの連射音がドラムのように打ち鳴らされ対処しきれなかった敵兵は次々と倒れていった。

 

1人のストームトルーパーがバラディウム・コア・サーマル・デトネーターを投げつけ、その間に2人のトルーパーがEウェブ重連射式ブラスター砲を運んでいく。

 

本来は台座の四脚が必要なのだが今回の戦いではそれを付けている余裕はなくそのまま少し高い岩場に貼り付け砲手のトルーパーが引き金を引いた。

 

どのブラスターよりも素早く大火力を連射するEウェブは次々と敵兵を薙ぎ倒し味方の進軍経路を切り開いた。

 

正確な冷却管理により高い火力と連射力を維持したままの戦闘が可能だ。

 

同じように何箇所からEウェブの援護射撃が放たれトルーパー達はかなり余裕でソロスーブ社内にまで突撃出来た。

 

ソロスーブ社内に籠るレジスタンス兵も重火器などを効率よく使用し蹴散らしていく。

 

既にあちこちの通路でDTL-19やRT-97Cのような重ブラスター・ライフルを持ったストームトルーパーが先頭で敵の防衛網へ高火力を叩き込んでいた。

 

他のトルーパー達もE-11やSE-14Cで援護し何人かの敵兵を撃ち倒した。

 

「やれ」と分隊長のストームトルーパーが命令し部下がバックから取り出したサーマル・インプローダーを敵陣地へ投げつける。

 

独特の圧縮音と爆発音が通路に爆発ごと響き、バリケードや敵兵をまとめて吹っ飛ばした。

 

爆風が去るのを待ってから分隊長は突撃命令を出す。

 

再び重ブラスター持ちのトルーパーを先頭に部隊は突撃した。

 

後方から到着したD-72wオプレッサー火炎放射器を装備するインシネーター・トルーパーも戦線へ加わった。

 

重ブラスター装備のトルーパーより先頭を行ったインシネーター・トルーパーは早速火炎放射器を起動し炎をあちこちへ撒き散らした。

 

超高温の火炎が逃げ惑うレジスタンス兵や戦うレジスタンス兵に燃え移り彼らを焼死させた。

 

地面が焦げ黒く煤に塗れるがトルーパーたちはそんな事を気にせずどんどん前へ進む。

 

やがて数十分が経過し戦いは決した。

 

地上では装甲部隊がほぼ全域を支配し援軍の敵軍団をブラウフィッツ中将の一個兵団と共に迎撃しこれを撃破した。

 

施設内では殆どの制圧が完了しレジスタンス兵の守備隊は半ば全滅に近い形で撃退された。

 

そして遂にソロスーブ社の一角から二つの旗が翻った。

 

まず一つは第三銀河帝国の国旗だ。

 

【挿絵表示】

 

赤い旗の色に白と黒の十字線、そして銀河帝国の紋章。

 

この旗こそが第三帝国の象徴でありこの国の姿を表すものだ。

 

もう一つ、もう一つは同じく黒旗に白と黒の十字の上に黒い盾章が置かれている。

 

これこそが第三機甲旅団の軍旗でありこの戦いの勝利の印だった。

 

【挿絵表示】

 

白と黒のみで描かれるこの鮮やかさのかけらもない軍旗がソロスーブから翻りアデルハイン中佐の勝利を決定付けた。

 

サラストの戦いの勝利を。

 

ソロスーブ社は陥落した。

 

 

 

 

 

 

ソロスーブ社の陥落を聞いた時バエルンテーゼ上級大将は自ら指揮するエリートAT-ATの中にいた。

 

いつでも自ら戦闘出来るようにAT-AT部隊を率いて前線近くに待機していた。

 

報告は機体内に控えている幕僚の1人からだった。

 

本来ストームトルーパーが籠るスペースもバエルンテーゼ機は指揮官達の司令室となっていた。

 

「そうか!やってくれたか!」とバエルンテーゼ上級大将はまず喜びを露わにした。

 

ソロスーブ社が陥落し一大拠点を一つ堕とせた。

 

各地の戦闘も順調で次々と敵軍の突破と包囲殲滅の報告が雪崩れ込んでくる。

 

軌道上でも敵旗艦の撃破に成功したとの報告が入り艦隊戦も徐々に勝利と終結の兆しが見えてきた。

 

「我々もこのまま包囲と確固撃破を狭め、一気に敵軍を殲滅するぞ。勝利はすぐそこだ!」

 

「了解!」

 

バエルンテーゼ上級大将はあえて昂揚を抑えずそのまま感情を表面に出していた。

 

アデルハイン中佐達がやってくれたのだ。

 

これで大きな手土産が手に入りレジスタンス軍も大きく弱体化するだろう。

 

戦争の終焉も近づき銀河系は再び元の姿を取り戻すきっかけとなるはずだ。

 

長かった、長い道のりに小さな区切りがようやく付けられるのだ。

 

我々が誓い、私1人となってしまった約束がようやく果たせそうだ。

 

「予備の航空戦力も動員し更に敵軍へ打撃を与えろ、我々は一気に畳み掛ける。サラスト陥落の報告を早めてやれ」

 

更にチェックメイトへ向けた指示を出しレジスタンスに対する攻勢を強める。

 

ここで確実に叩き、シュメルケやフューリナー達にも文句を言わせない結果を出してやろう。

 

我々は親衛隊だが帝国軍人の意地は捨てていない。

 

帝国の為に命を賭けて戦うのが我々の使命だ。

 

ならばこれは親衛隊の勝利ではなく帝国軍人の“意志の勝利”となるだろう。

 

平和の為に戦い続けるその意志が報われる為に。

 

遠い昔にシュタンデリスとフリズベンと交わした誓いを叶える為に。

 

バエルンテーゼ上級大将はサラスト陥落へ事を進めた。

 

 

 

 

 

 

-レジスタンス総司令部 イリーニウム星系 惑星ディカー-

「…サラストは……後どのくらい持ちそうなんだ…?」

 

セルヴェント外務大臣は深刻な面持ちで報告を受け取ったディゴール大臣へ尋ねた。

 

既にサラストへは緊急撤退命令を出しているのだがそれでもこのディカーへ来る艦がいないという事は未だサラストで帝国軍から逃れられないということだ。

 

かなりの大部隊を派遣し何重にも包囲網を展開しているのだろう。

 

もしかするとインターディクター級のような重力井戸搭載艦が脱出を妨害している可能性もある。

 

とにかくサラストでは多くのレジスタンス兵が殺され相当の損害を被っているのはまず間違いがなかった。

 

「長く持つと希望を賭けるなら後4時間あるかないかだろう…既にソロスーブ社は陥落しているとの報告も受け取っている」

 

「サラストの戦力は南アウター・リムでの攻勢に使われる予定だったのに…これでは大規模反抗作戦が…!」

 

セルヴェント大臣はらしくもない焦りを見せた。

 

彼のいう通りディカーの戦力とサラストの戦力を合わせて南アウター・リムで大規模な反抗作戦を行い周辺一帯を確保する予定だった。

 

領域が広がれば再び真っ向からの勝負も可能になる。

 

そうなれば考え直す惑星政府や星系政府も増えてセルヴェント大臣らによる外交で味方に引き入れ戦局を打開出来る可能性もあった。

 

だがサラストの戦力が潰れたとなれば反抗作戦は不可能だろう。

 

未だに戦力を多く持つモン・カラなどに任せる他なくなる。

 

「まあ落ち着け」とハンはセルヴェント大臣を宥めた。

 

「俺とチューイと幾人かの部隊でなんとか敵の包囲網を撹乱する。一兵でも多くいれば後はレイアと大臣達がなんとかしてくれるだろう」

 

ハンはそう言いレイアやディゴール大臣の方に目線を送った。

 

2人とも申し訳なさそうな表情を浮かべディゴール大臣は「頼めますか」と彼に尋ねた。

 

「もちろん、ここで黙っているのは流石に癪だ。それにまだランドの連中もいる、あんたの娘はうまく繋いでくれるさ」

 

セルヴェント大臣の肩を優しく叩き大丈夫だと宥めた。

 

今ヘルヴィはアノート宙域にいる新共和国軍と現地の将軍の下に向かっている。

 

確実な情報網を繋ぐ為には今の段階だとどうしても人を送る必要があった。

 

「脱出した将兵は全て私の元で再編して各部隊に組み込む。また辛い作業になるだろうがやるしかない……ジルディール上級中尉とバスチル少佐にも苦労をかけるだろうが」

 

「今や彼らのナブー解放がこの南アウター・リムでレジスタンスの今後を決めるという訳だな…」

 

「解放に成功すればレジスタンスの象徴ともなるし帝国軍も大きく撹乱出来る。皇帝の誕生惑星を失うという事を彼らにとっても大きいはずだ」

 

ナブーでの勝利はとても小さなものに感じられるだろうが実際はそうではなかった。

 

特にこうなってしまった以上レジスタンスという組織の輝きを失わせない為には彼らの勝利に期待を込めるしかない。

 

「俺はそろそろ出撃する、なるべく早い方がいい」

 

ハンはチューバッカと共にディカーの司令室を出ようとした。

 

だがそれは勢いよく司令室に入室した1人の将校によって阻まれてしまった。

 

「どうしたんだ」とハンは声を掛けるが息の荒く冷や汗を垂らすその将校は中々答えなかった。

 

汗を拭い息を整えた所でその将校は顔を上げ大きな声で全員に聞こえるよう報告した。

 

最悪の状況に更に最悪を重ねる報告を。

 

「“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”」

 

 

つづく




すっごい足痛いね

ちなみにこないだナチ帝国を投稿した時には我らが親衛隊騎士団領ブルグントの夢を見ました

ヒムヒムがひたすらイカれた思想を説いてて頭がどうにかなるかと思いました(体験談)

ちなみにきょうもげんきです


キャナディ「それはそうと我々の出番少ないっすね」
ピーヴィー「まあ多くなっても困る」
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