-元ディカー司令部駐在士官の人物の証言-
ルーク・スカイウォーカーの消失、それは灰色に染まりゆくこの状況を一気に暗雲の中へと叩き込んだ。
会議室にいたある者は気が動転して倒れ、またある者は目を見開き唖然とした“
一介の将校や通信士官、衛兵達の思慮ではただひたすらに困惑し或いは絶望の闇に飲まれるだけである。
「嘘だろ」、「あり得ない」という独り言は信じたくない気持ちをなんとか具現化しようとする現れであり、所詮は無意味なものと皆が知っていた。
動揺しているのは将兵達だけではない。
チューバッカはいつにもなく悲しく唸り声を上げ友達の消失を悲しみ目線を落とした。
本来は大きなウーキーであるはずなのだがこの瞬間ばかりはとても小さく弱々しいものに見えた。
ハンとレイアも「そんな…」と目を見開きあり得ないといった表情だ。
特にハンは報告に来た将校に近寄り問い詰めた。
「おい!その報告、本当によく調べたもんなんだろうな!?」
「はっはい!!このディカー基地含めた各地のレジスタンス施設の諜報能力及びセンサー類に全く反応がありません!」
あまりの形相だった為将校は萎縮したもののきちんと報告の正確さを伝えた。
ディゴール大臣も「よせ、ソロ将軍」とハンを宥める。
時が立ち冷静になったハンは「すまなかったな」と詫び元の位置に戻っていった。
「…セルヴェント大臣、急いでボサウイに飛んでくれるか」
「ボサウイに?」
ディゴール大臣の頼みにセルヴェント大臣は首を傾げた。
ボサウイとはミッド・リムに位置する惑星の一つで比較的親共和国派の惑星だった。
この地はスパイ活動、諜報活動の得意なボサンという種族の
ボサンのスパイ達はあのエンドア戦でも果てしない犠牲を出しながら情報を集め勝利に貢献した。
その後は新共和国に加盟したのだが当の新共和国は第三帝国に敗北し崩壊、ボサウイも再び切り離されてしまった。
しかしボサウイは反帝国の路線を取り続け多くの新共和国軍を匿い独自に民兵軍や防衛軍を結成しスパイ活動を再び実行し第三帝国と戦う決意を固めた。
ディカーとは比較的近場の為、ジェルマンとジョーレン以外の者が経路を築き連携体制を固めた。
レジスタンス宣言後は第三帝国からの攻撃を受ける事もあったが助けに向かったルークと少数の部隊に率いられた防衛軍により阻まれた。
「ボサウイの外交官達と連携を取り親レジスタンス派勢力との協力体制を確立してくれ」
「なるほど、ではオーガナ議長」
「ええ、頼みましたよ」
セルヴェント大臣は何人かの秘書や外交官を引き連れ司令室を後にした。
続け様にディゴール大臣は命令を出す。
「ソロ将軍はサラスト脱出の為の撹乱作戦を実行した後、直ちに中小規模の親レジスタンス勢力へ向かってくれ。“
「分かった、行くぞチューイ」
ハンにチューバッカが続きいよいよ司令室に残ったのはディゴール大臣とレジスタンス自由政府の臨時議長であるレイア、副議長のタイ=リン・ガーのみとなった。
かなり動揺していた将兵達も指導者であるディゴール大臣のしっかりとした態度により少々ではあるが緩和されている。
「議長、こうなってしまった以上議長には閲兵などプロパガンダ的活動も行なっていただくことになりますが…」
ディゴール大臣はレイアに尋ねた。
本来ジェダイ将軍としてルークが果たす分のプロパガンダを代わりに英雄レイア・オーガナに求めざるを得ない。
ただでさえレジスタンスの最高指導者であるのに更に大きな重圧が掛かる。
だがレイアは「問題ありません」と告げて首を振った。
「私は既に多くの人々に“
大臣は小さく頭を下げた。
申し訳なさとありがたさが混じり合った姿だ。
するとその間に割り込むように通信士官の隣にいたC-3POが「あのぉ大臣、姫少しよろしいでしょうか」と口を挟んだ。
2人は少し顔を見合わせレイアが「どうしたの」と尋ねる。
C-3POはそのままレイアの方へ近づき報告した。
「先ほどからルーク様が置いていかれたこちらのオブジェクトが何やら反応を示しているのですが…」
C-3POは手に持っていた立方体の物体をホロテーブルに置いた。
四方それぞれが青く光り点滅している。
「これはなんだ?」
ディゴール大臣はC-3POに何か聞くも当の3POでさえ「さあ…一体なんの装置なのやら」と首を傾げた。
「なんでもセレノーで手に入れたらしいのですが……」
3-CPOは断片的であったがそう入手先のことを話した。
それでもこの物体が何かは見当も付かずあまり役には立たなかった。
「ホロプロジェクターやホロキューブの類に見えるが…」
ディゴール大臣の推察もあまり意味を成さなかったがそれでもレイアだけには何か感じるものがあった。
彼女は意識を集中させその立方体に手を伸ばす。
レイアの手が後数センチまで来たところで「とにかく今はサラストの事を考えましょう」というディゴール大臣の会話によって遮られその手も元の場所へ帰った。
「ええ、我々に今出来る事を成しましょう。いつかルークが帰ってきた時のためにも」
ルーク・スカイウォーカーの消失は親衛隊、特にFFSOU内部では大きく取り上げられた。
だがこちらはルーク・スカイウォーカーの消失というより“
惑星マーカーで再び特殊部隊を率いてルーク・スカイウォーカーを待ち伏せ討伐に出向いた彼女だったが戦闘開始の数時間後に全部隊の通信が途絶した。
それ以降一般の通信回線どころか特殊回線にも応答せず惑星マーカー内で行方不明となった。
今の段階では行方不明扱いだが状況が状況である為戦死という可能性も十分にある。
それ故に今はマーカーに送った捜索隊の報告を待つ他なかった。
特にアセーター級“ピュリフィケーション”のブリッジではFFSOU上級将校達による重苦しい雰囲気が一兵卒にさえ沸々と伝わっていた。
「捜索隊は最短コースでマーカーに向かっている為後一時間ほどで到着すると思われます」
ヴァルヘル中佐はFFSOU司令官のフューリナー上級大将にそう報告した。
フューリナー上級大将はずっと浮かない顔でブリッジから駐留しているホズニアン・プライムを見下ろしていた。
ボルフェルト大将もそんなフューリナー上級大将に触発されてかフューリナー上級大将以上に浮かない顔をしていた。
「まだ…かかりそうですな」
予想される大雑把な感想をボルフェルト大将は述べた。
ヴァルヘル中佐も「このまま捜索隊に予定通り行動させますか?」とフューリナー上級大将に尋ねる。
上級大将は振り返る事なく「ああ」と口を開いた。
「少なくとも時間はまだある。好きにやらせろ」
「了解」
フューリナー上級大将の了承を得てヴァルヘル中佐は敬礼しその場を後にした。
「皇帝の手の消失は我々にとっても痛手だ。だが埋め合わせは……出来なくはない」
「と、言いますと?」
「彼女1人に頼らずとも十分ピースが揃ってきたということだ。“
ボルフェルト大将の問いにフューリナー上級大将はそう答えた。
やがてフォース使いは彼女だけではなくなる。
本来その教育者として彼女に役に立って貰いたかったのだが場合によっては別の何かを付け加える事にしよう。
とにかくウェイランド研究所とヴォーレンハイトの研究は必ず我々にかつてのジェダイを遥かに超える数と練度を手にしたフォース使いの戦士を人為的に作れるようになるだろう。
ある意味で我々の未来は明るい。
「ホズニアンの占領政策もかなり上手くいっている様だな」
振り向く事なくフューリナー上級大将は名を挙げた惑星を見つめ呟いた。
既にこのホズニアン・プライムを陥落させてそろそろ一年経つだろうか。
シャンドリラもホズニアン・プライムもかつての新共和国の首都惑星という姿から第三帝国の属州惑星に成り代わっている。
「統治も順調ですし我が親衛隊が主導するホズニアン現地の市民の志願兵からなるライヒスホズニアン兵団も完成するそうです。同様にシャンドリラも」
ホズニアン・プライム、シャンドリラなど旧新共和国の命脈が色濃く残る惑星では流石にまだ国防軍による志願兵制度や徴兵制度は動員出来ずにいた。
しかし親衛隊ではあえて特定の年齢層に親衛隊への志願兵を募り一個兵団と二、三個師団の編成を行なっていた。
「レジスタンスのスパイを招き入れるかもしれない」との意見もあったがそれ以上にホズニアン・プライムやシャンドリラの忠誠心を試しある種の人質を手にするのはプロパガンダ的な意味合いでも非常に重要であった。
現在は第12FF義勇擲弾兵団、通称
「それはいい、自ら帝国への忠誠を示す行為というのは彼らにとっても良いことだ。だが少々耳の痛い話も入ってきている様だが?」
フューリナー上級大将はどこか棘のある言い方で話を切り開きボルフェルト大将に険しい顔を浮かべさせた。
「はい…」と自分の管轄でないのにも関わらずボルフェルト大将は面目なさそうに答えた。
「レジスタンスの放送に感化された一部市民と地下に落ち延びた元新共和国軍残存将兵によるパルチザンやレジスタンス活動が活発化しており…」
「ならば徹底的に弾圧して殲滅しろ。いっそのことなら新設したライヒスホズニアンやライヒスシャンドリラの兵団を討伐部隊として差し向けるのも良い、彼らの忠誠心を試す良い機会となる」
「上手くやってくれるでしょうか」
ボルフェルト大将はかなり不安げな声音でフューリナー上級大将に問い詰める。
「さあな」と間を置き邪悪を込めた笑みを浮かべた。
「我々の直轄兵力に傷が付かないだけマシと思おうじゃないか。それに彼らが上手くやれば我々もホズニアン、シャンドリラに駐留させている部隊を何個か帰還させる事が出来る。バエルンテーゼの攻勢と合わせて北西部に回せる戦力が大きくなる」
未だ両惑星には国防軍、親衛隊双方十個以上の兵団を駐留させておりそれが展開力を大きく妨げる要因となっていた。
その為ホズニアンやシャンドリラの兵団がこのまま拡大し駐留軍の役割を担ってくれるようになれば少なくとも親衛隊の方は部隊を撤兵させる事が出来る。
その恩恵は対チス戦などの可能性を秘めている親衛隊にとって計り知れないものだ。
仮に戦わないとしてもまだ政情不安のこの銀河系において総統と帝国を守る親衛隊の兵力が一個でも多く展開出来る事に越したことはない。
「まあ全てはハイドレーヒの駒が何を持って帰ってくるかだが…」
どうせ無事に帰ってくることはまずないだろうが少しは打撃を与えて欲しいものだ。
我々が作る“
-未知領域 チス・アセンダンシー国境付近 惑星キャルヒーコル-
六、七隻のインペリアルⅡ級とインペリアルⅠ級の混成小艦隊に数十隻のアークワイテンズ級やグラディエーター級が続く。
典型的な宇宙軍の小艦隊の編成より少し戦力は多いがそれでも通常の艦隊や宙域艦隊を名乗るにはまだ戦力が少なすぎた。
使用している艦艇の通り元帝国宇宙軍という姿は今でも健在でそれなりに精巧で手本通りの艦列を並べている。
とはいえもはやこの小艦隊は軍将や軍閥以下の愚連海賊艦隊と言った姿が一番当てはまるだろう。
小艦隊の艦列は見事であるが彼らが元々持っていた宇宙の治安を守るという帝国宇宙軍の矜持は一ミリも残っていなかった。
何せ彼らはこの領域を荒らし略奪や悪事を働く為にここに来ているのだから。
「通信及びセンサー類徐々に回復、間も無く居住可能惑星に接近します」
航行士官は通信弛緩やセンサー士官から受け取った情報も含め小艦隊の司令官、キールヘル中将に報告した。
「恐らく提供された航路図にある惑星キャルヒーコルでしょう」と幕僚の1人が意見を提示する。
無駄に生えた白髪混じりの髭を撫でながら命令を出す。
「無視して行くぞ、こんな無人の惑星に価値などない。アセンダンシーへの道のりはまだ遠いからな」
中将の決断通り一行は眼前に迫る惑星を素通りする航路を取り始めた。
実際親衛隊から送られた航路や情報でもここにチス・アセンダンシーの人口密集地はないとされている。
休憩や体制を整えるにしてもまだ他にも惑星はごまんとあった。
「しかしハイドレーヒとかいう若造も随分と気前がいい。我々が少しでも戦果を挙げてくれば俺は親衛隊大将に、他の連中も皆親衛隊将校として昇進を約束するなんてな」
「しかし中将、あの様な男本当に信用してよかったのでしょうか」
与えられた報酬代わりの昇進に喜ぶキールヘル中将に彼の乗艦“アドミラル・キリアン”の艦長であるブレリス艦長は不安げに問いかけた。
いくらなんでも虫が良過ぎる、それにハイドレーヒと名乗るFFSBの大将は何処か信用出来ない何かが感じられた。
されどキールヘル中将は「無論全幅の信用を寄せているわけではない」と前置きし彼なりの持論を話した。
「だがな艦長、ファースト・オーダーに見捨てられた我々に他に行く場所があったか?連中は曲がりなりにも我々に役割と居場所をくれた。我々は帝国に戻れた、それでいいじゃないか」
「まあ…確かに」
「昇進なんておまけに過ぎん。ようやく我々ももう一度日の目を見れるということだ」
エンドア戦後独自の軍閥を築くのにも失敗し他の軍閥にも受け入れられなかった彼らにとってこれは唯一銀河系に戻れるチャンスだった。
親衛隊大将となればキールヘル中将自身も安定の生活が確定する。
もうインペリアル級の中で延々とアウター・リムの果てで過ごす日々とはおさらばだ。
小艦隊はキャルヒーコルを通り過ぎチス・アセンダンシー領へ更に深く奥へと進軍を続けた。
いや、続けていただろう。
キャルヒーコルから降り注ぐ無数の青い光弾がなければの話だが。
「後列、ヴィクトリー級“ヴェストフェダル”沈黙!キャルヒーコル内からの攻撃により応答ありません!」
突然の友軍艦の沈黙の報告は“アドミラル・キリアン”のブリッジを大きく凍り付かせた。
しかしキャルヒーコル内からの攻撃は続き、友軍艦の沈黙の報告は止まることはなかった。
「“ベラッサ”、“スカコ”、沈黙!」
「恐らく惑星内からのイオン砲攻撃です!直撃を喰らった友軍艦が惑星の重力圏内に引かれています!」
「ちゅっ中将!」
間違いなくこれは敵の攻撃だ。
既に三隻の軍艦がイオン砲の直撃を喰らい機能停止している。
しかもヴィクトリー級すら二、三発で機能停止に追い込むとは相当強力な戦艦イオン砲クラスの攻撃だ。
下手すればインペリアル級とて無事じゃ済まない。
これに焦ったブレリス艦長はキールヘル中将の名を呼ぶ。
「敵の攻撃地点を割り出し軌道上爆撃を敢行しろ!なんなら惑星ごと焼き払え!」
「中将!ハイパースペースより接近する艦影多数!」
「何…?」
キールヘル中将が出した命令はその報告により一旦延期となった。
小艦隊の真横から次々とジャンプアウトしたインペリアル級は即座に砲塔を全て小艦隊へと向け、一撃を放った。
八連ターボレーザー砲や重ターボレーザー砲の砲弾は何隻かの偏向シールドを打ち破り十分な戦果を上げた。
「“クエン”、“クアグマイア”被弾!“ハーデッサ”小破!」
「敵艦の集中砲火が凄まじく、このまま砲撃を浴び続ければ後後15分後には艦隊損耗率が10%を切ります!」
「敵艦隊、まだまだジャンプアウトしてきます!」
舞い込んでくる報告はどれも最悪なものばかりで嫌でも敵の奇襲攻撃に嵌ってしまった事が分かる。
戦局はキールヘル中将らの劣勢であった。
“アドミラル・キリアン”含めた小艦隊の艦艇もターボレーザー砲などの砲塔で応戦しているが側面の砲塔のみしか使えない小艦隊とは違いほぼ全火力を投射出来る敵艦隊の方が圧倒的に優位に立っている。
今から反転して全面から撃ち合おうにもその間に何隻かの艦艇を損出するだろう。
だが幸いなことに惑星内にインペリアル級の主砲で砲撃したおかげかキャルヒーコルからのイオン砲撃はようやく撃ち止んだ。
「惑星内に一旦後退して立て直すぞ!あの程度の戦力ならば我が小艦隊で打ち破るのも容易い…!」
小艦隊はインペリアル級を前衛に出しながら徐々に惑星内へ撤退を開始した。
だがこれは小艦隊にとっての敵、チス・アセンダンシー軍にとっては作戦通りであった。
旗艦“ノイ・ステッドファスト”のブリッジからアセンダンシー国境防衛司令官を任されたプライド中将はこの状況を冷静に見つめていた。
「敵艦隊、キャルヒーコルへ後退していきます」
「距離を詰めて更に追い込め。連中の陸戦隊をキャルヒーコルの大地まで叩き落とす」
プライド中将の命令により艦隊が更に推力を上げ砲撃を強めた。
五隻のインペリアル級と付属艦のアークワイテンズ級やヴィクトリー級、更にはチス・アセンダンシー拡張艦隊の重クルーザーまでが熾烈な砲撃を加え敵艦隊を追い込んだ。
「上手く誘い込んだな。連中は完全に地上の砲撃を叩き潰したものだと思い込んでいる」
ヴァシレフスキー少将は隣に佇むプライド中将にそう独り言の様に告げた。
彼らの立てた作戦は現段階では殆ど成功しプライド中将もひとまず満足げな笑みを浮かべていた。
「ああ、だがそれは間違いだということを教えてやる。ヴィヴァント、魚雷とミサイルも使って敵艦隊を更に追い込め」
「かしこまりました」
“ノイ・ステッドファスト”の艦長を務めるヴィヴァント艦長はそのまま砲術士官達に命令を出した。
彼も以前は本来の“ステッドファスト”の副艦長であり辛うじてジャクー戦を生き延び今に至る。
最新鋭艦として建造された“ノイ・ステッドファスト”には旧来のインペリアル級には存在しないミサイル発射管や魚雷発射管があり実体弾による追加攻撃が可能になった。
他のインペリアル級と合わせた実弾攻撃は敵小艦隊を完全に惑星内に追い込むのに十分な効力を発揮した。
特に“ノイ・ステッドファスト”と両艦のインペリアル級“イクリヴィアム”が放った魚雷は一隻のヴィクトリー級を撃破し敵艦隊に損失を与えた。
「敵艦隊、完全にキャルヒーコルの中へ入りました!」
「敵艦艇識別確認、インペリアルⅠ級及びインペリアルⅡ級、双方合わせておよそ七隻」
「インペリアル級七隻による艦隊か…小艦隊にしてはかなり肥大化した編成だな」
「ああ、恐らく敵がキャルヒーコルに後退することを決断したのもまだ数的優位が残っているからだろう。奇襲の劣勢を惑星内で立て直し正面から激突するつもりだ」
「通りで想定よりも粘らないわけだ。どうする、更に追撃して数をもう少し減らすか?」
ヴァシレフスキー少将はプライド中将に尋ねる。
少なくとも敵艦隊の戦力は予定から外れてはいないのだが少しでも戦力を削っておけば後の為になるだろう。
「いや、このまま作戦を続行する。全艦、包囲体制を展開し惑星を取り囲め」
「了解」
「中将、少しよろしいですか」
プライド中将とヴァシレフスキー少将が振り返ると報告にに来たフェブリス・グリス准将は2人に敬礼した。
「どうした」とプライド中将が発言を許すとグリス准将は片手に持っていたタブレットを2人に見せた。
「情報収集班が敵旗艦と思われるスター・デストロイヤーをデータベースにある艦と照合した所、敵旗艦は恐らくインペリアル級“アドミラル・キリアン”と99%以上一致する事が判明しました」
プライド中将とヴァシレフスキー少将は顔を見合わせる。
直ぐにプライド中将が「“
グリス准将は小さく頷き更にタブレットを操作して報告を交えた。
「“アドミラル・キリアン”だけでなく他のインペリアル級やヴィクトリー級、アークワイテンズ級もほぼ全てが一致しています」
「“アドミラル・キリアン”………トレスティス宙域に配属されていた機動小艦隊の旗艦との覚えがあるが」
サンクト宙域からチス・アセンダンシーに常にいたヴァシレフスキー少将は内容を深く知らない為帝国時代の記憶を掘り起こした。
確かにそれは間違いではなくまだ帝国の全盛期だった頃の“アドミラル・キリアン”はトレスティス宙域に所属する小艦隊旗艦だった。
しかしエンドア戦で状況は一変していた。
「元はそうだが現在ではギラッターⅧやラゴ周辺で半ば海賊化し周辺を事実上支配していた。ファースト・オーダーの介入で傀儡となったと思ったのだが…」
「ファースト・オーダー本隊の命令を無視してまでこんな事をするとは思えませんが…」
グリス准将は怪訝な表情でプライド中将に進言した。
完全な配下ではないがそれでも態々命令を無視してこのような蛮行に至るとは到底思えない。
しかも今は同時期に第三帝国の視察団が来ている最中だ。
偶然にしては不可解な事が多すぎる。
「ともかくこの戦闘を勝たない事にはその様な疑念も意味がない。私とヴァシレフスキーは地上に降りてロコソフスキーと共に敵の地上部隊を撃滅する。艦隊の指揮は頼んだぞ」
「はい、閣下もお気をつけて」
「ああ」
グリス准将はピシッとした姿勢で敬礼しプライド中将とヴァシレフスキー少将も敬礼を返した。
全ての疑念も敵を打ち倒し何人かを捕縛した時に分かるだろう。
既に敵艦の鹵獲命令は出している。
多かれ少なかれ分かることはあるはずだ。
惑星内に逃げ込んだからと言ってそこがキールヘル中将らの小艦隊にとって安息の地になる筈もない。
むしろ惑星内に潜んでいた敵の攻撃を受けて陸上戦を展開せざるを得なくなった。
「敵基地は、割り出せたのか!?」
一転して焦るキールヘル中将にセンサー士官は「大体ですが」とこちらも焦りを交えて報告した。
地上に何発かターボレーザーによる艦砲射撃を加えたのだがそれでも地上にはまだ敵の兵力が残っていた。
それどころか偏向シールド付きの大規模な基地まで存在しかなりの兵力が駐屯されている事が分かった。
何故そのような基地が小艦隊のセンサーに引っ掛からなかったのか大きな疑問が残るが今は探偵の様に捜査をしている場合ではない。
敵を殲滅しこの地上と宇宙に挟撃される状態を打破しなければならない。
幸いにも小艦隊には9,700名のストームトルーパーがそれぞれ駐屯し展開出来る状態にある。
最悪インペリアル級や各艦の宇宙軍トルーパーも動員すればなんとかなるはずだ。
「全陸戦隊を展開しろ!宇宙軍トルーパーでもなんでも使って敵基地を堕とすんだ!」
小艦隊は陸戦隊展開用の陣形を作りゴザンティ級やシャトルを使ってウォーカーや兵員を地上へと降ろしていく。
降下した兵員は速やかに部隊を編成し敵基地への進撃を開始した。
それと同時にインペリアル級や他の艦艇の艦載機も皆出撃し航空戦力によるスターファイター戦も始まろうとしていた。
500機以上のTIEファイターとTIEインターセプターを要する小艦隊スターファイター隊は地上部隊の上空を護衛しつつ自らも攻撃に出る。
地上の陸戦隊もAT-ATやAT-STが戦線に加わり幾つかの突撃大隊が敵基地を目指して前進する。
「前進せよ!未知領域の青虫どもを駆逐してやれ!」
ストームトルーパーの小隊長は隊員にそう鼓舞し彼らも皆AT-ATや兵員輸送機の後に続いた。
『こちらスカウト1、索敵範囲10キロに敵影なし。繰り返す、索敵範囲10キロに敵影なし』
先行したスカウト・トルーパーから通信が入り敵影の有無が報告される。
少なくともこの先数十キロは敵の姿はないらしい。
AT-ATに乗り込み指揮を取る部隊長はスカウト・トルーパーの報告を受けてコックピットのコムリンクから返答した。
「了解スカウト1、我々も一気に前進してそちらに追いつく」
コムリンクを切り部隊長はニヤリと笑みを浮かべる。
「辺境の果てにいる原始人と逃げ出した帝国の雑兵どもなど我が帝国地上軍の精鋭部隊の前には塵同然だ。一兵残らず蹴散らして前にすす…」
威勢の良い部隊長の声は後方で砲撃を喰らい爆発四散する友軍のAT-AT により掻き消された。
貨物部分が大きく抉れそこから黒灰色の煙を出したまま友軍のAT-ATはゆっくりと斃れまるで屍のように動かなくなった。
「AT-ATがたった一撃でやられたのか!?」
部隊長は驚きコックピットから後ろを覗き込む際に額から流れる冷や汗を撒き散らした。
大きく目を見開き歯噛みし無惨な姿となったAT-ATを凝視する。
「そんな馬鹿な」、部隊長からはそのような言葉しか湧き出なかった。
だがその気持ちも同じ帝国地上軍のウォーカー乗りならば多かれ少なかれ分かることだ。
重装甲のAT-ATをたった一撃で、しかも首回りなどの比較的装甲の薄い箇所ではなく貨物部分の装甲がかなり分厚い箇所に直撃してこの有様だ。
プロトン魚雷や震盪ミサイルを持ってしても中々難しいだろう。
「一体何を撃ち込まれたんだ……いやそれよりも対空砲火を急げ!あんなものをもう一度撃たれては…」
部隊長の願いは虚しく再び彼方から飛来した砲弾は大地へと直撃し轟音と共に今度は歩兵達を吹き飛ばし兵員輸送機すらも破壊した。
生き残ったストームトルーパー達は全員地面に伏せ兵員輸送機やAT-STが弾幕を張る。
AT-ATも砲撃地点に向けて震盪ミサイルを発射し反撃を行った。
しかし砲撃は降り止まず部隊長達は圧倒的劣勢の中にいた。
「砲兵隊!航空隊!直ちに敵の砲撃をやめさせろ!このままでは部隊の前進が不可能だ!」
『了解、砲撃座標を示されたし』
「砲撃座標はX-02-11…」
「少佐!敵の装甲部隊です!」
次から次へと最悪の報告が入ってくるこの状況に部隊長は思わず言葉を失った。
その為コムリンクからは『砲撃地点は?どうした!』と怒鳴りながら聞き返す声が響いたが部隊長にはもう聞こえなかった。
前方からは二、三台のAT-ATと付属機のAT-MPマークⅢ、M-2セイバー級リパルサータンクが接近してきた。
「スカウト1の報告はどうなっている!?敵は10キロ先までいないと言っていたはずだ!」
部隊長は怒りを挙げ辺りを見回した。
既に敵のAT-ATから砲撃が放たれ両者戦闘体制に入っている。
本来ならこのような戦闘状況に入るのはまだ当分先の出来事のはずだった。
何せ偵察に出たスカウト・トルーパーは“
だがそれが“
地上軍のある程度の常道は元帝国軍を多く抱えているチス・アセンダンシーも承知している。
その為先行して索敵に出るスカウト・トルーパーを撃破し偽の情報を敵部隊へ流す為にいくつかの機械化された狙撃部隊を編成した。
索敵兵やドロイドを狙撃しスピーダーやスピーダー・バイクを用いて素早く接近し偽の情報を与える。
その結果このAT-AT部隊は油断し砲兵隊とこの装甲部隊の奇襲を受けてしまった。
重レーザー砲が放たれキールヘル小艦隊側のAT-STが破壊され残された脚部が地面に崩れ落ちた。
相手のAT-ATは背中の部分に大きな大砲のようなものを背負っており今までのAT-ATとも少し顔つきが違う。
より重厚感と恐怖を増したこのアサルト・ウォーカーはゆっくりと眼前の敵に近づいてくる。
『少佐!このままでは大損害を被ってしまいます!一旦後退して隊を再編しましょう!』
別のAT-ATの車長にそう進言されたが「ダメだ!」と部隊長は却下した。
「我々突撃大隊がここで後退など出来るか…!歩兵隊は全て対ウォーカー戦闘用意!刺し違えてでもここで仕留めるぞ!」
錯乱した部隊長は隊に命令を出し自らも敵機に照準を付け重レーザー砲を放った。
錯乱していても狙いは正確で敵部隊のAT-ATの側面装甲に直撃した。
いくらAT-ATの重装甲といえど輸送船すら一撃で破壊出来る重レーザー砲を喰らえばただでは済まない。
はずだった。
着弾し轟音と黒煙が少し溢れるだけでAT-ATは撃破どころか殆ど無傷で止まった足を前へ進め中型ブラスター砲で歩兵を攻撃していた。
重レーザー砲の一撃も相手のAT-ATの動きを止め機体内に少しばかりの振動を与える程度で終わった。
「バカな…」
「敵機の大型砲塔の攻撃来ます!」
パイロットの報告通り中央のAT-ATの背中から赤い光弾が放たれ迫撃砲や備え付けのレーザー砲で迎撃する兵員輸送機を周囲のストームトルーパーごと吹っ飛ばした。
直撃を喰らった兵員輸送機の残骸が反転し機体の底を見せながら倒れた。
明らかに重レーザー砲と同等、もしくはそれ以上だ。
接近しスマートロケットやイオン魚雷の照準を合わせるストームトルーパー達も中型ブラスター砲や本来はあるはずのないブラスター砲により蹴散らされる。
何発か直撃させると流石に敵機にダメージを与えられるがその間にAT-STやAT-MPマークⅢ、M-2セイバー級の接近を許し攻撃を受けてしまう。
かといって敵のスカウト・ウォーカーやリパルサータンクを攻撃すればAT-ATのような大型機の手痛い攻撃を喰らってしまう。
どちらにせよ絶望的な状況だ。
「なんだあれは…AT-ATにあんなものなかったはずだ…!!」
部隊長はこの圧倒的劣勢の中でそう苛立ちの声を上げパイロットの座る後部座席を叩いた。
あまりの事に怒りが抑えられずこの絶望的な状況で感情を噴き出した。
だがそれは部隊長達に限ったことではない。
インペリアル級や他の艦艇から上陸した部隊は殆どが砲撃や装甲部隊の奇襲を受け進撃が停滞していた。
運よく敵の襲撃を退けた部隊も何重にも重なる防衛網やまた別の装甲部隊の攻撃を受けて消耗し思うように前へ進めていない。
本来部隊を援護するはずのTIEファイター部隊も敵基地から出撃したチス・アセンダンシーのヌシス級やTIEストライカーの迎撃を受け苦戦していた。
特にヌシス級の頑強さと実戦と訓練を繰り返したチスのパイロット達はTIEストライカー部隊との連携も相まってインペリアル級の艦載機部隊を悉く打ち破っていった。
キャルヒーコル内部に追いやられた小艦隊は陸戦隊すらも苦戦を強いられている。
最新鋭機を使い奇襲と物量を有した頑強な防衛網を前に進撃は停滞し前線での損耗率も激しいものだ。
しかし彼らにはたった一つだけ抜け道があった。
敵軍の防衛網を突き破り敵基地へ直接攻撃を仕掛けられる道が。
チス・アセンダンシー軍の防衛網には一箇所だけ薄い部分があった。
AT-ATを中心とした装甲部隊を使えば容易に突破が可能で更に進撃すれば基地への直接攻撃も可能になる。
当然これに気づかない小艦隊の陸戦隊指揮官達ではない。
既に攻撃用の部隊編成が始まり前線では一旦後退命令が出され激しい戦闘を繰り広げていた各地の戦線もひとまずは形を収めた。
それはチス・アセンダンシーのキャルヒーコル地上軍司令部でも確認されている。
「少将、敵の陸戦隊が後退を始めています。恐らく例の地点に総攻撃をかけるつもりでしょう」
幕僚からの報告を受けプライド中将、ヴァシレフスキー少将と共に赴任したコンスタンチン・ロコソフスキー少将は「早かったな」と口を開く。
「作戦通り部隊を展開しろ。無論反撃の準備もな、厳しい戦闘になるかもしれんが頼んだぞ」
「はい少将!」
敬礼して幕僚はその場を後にした。
司令室に残ったロコソフスキー少将は「そろそろ私も向かうか…」と独り言を呟き振り返った。
すると司令室のドアが開き2人の見慣れた顔の将校が入ってきた。
プライド中将とヴァシレフスキー少将だ。
プライド中将は会うなり「出撃か」とロコソフスキー少将に尋ねる。
「ああ、地上の連中に大打撃を与えてきてやる」
「任せたぞ」
軽く敬礼し彼らは背中を合わせた。
ここは確かに我らの祖国ではない、それでも第二の故郷であることに間違いはない。
それを土足で踏み荒らし恩人達を血の海に沈めようとする彼らの行いは断じて許さない。
この未知領域の中で迷い子となり消えてもらおう。
-未知領域 チス・アセンダンシー領 惑星シーラ-
第三帝国からの視察団は予定通り首都シーラに到着し軍やシーラのクサプラーなどの視察を始めた。
裏ではキャルヒーコルで戦闘が勃発していたもののそんな事は一切悟らせないよう情報が規制されていた。
そのせいか第三帝国側もキャルヒーコルの戦いは全く知らなかった。
元よりキールヘル中将の小艦隊はハイドレーヒ大将の極秘による調略の結果であり裏の部隊としてキールヘル中将の小艦隊が加わった事も密かにアセンダンシーへ侵攻している事も一切知らされていない。
チスと第三帝国、互いに緊張や警戒が強く最初は険しい雰囲気が漂っていたものの亡命した元帝国関係者達が間に入る事によって関係が取り持たれていた。
視察が始まり特に国防軍の上級将校であるヴィアーズ大将軍、ローリング大将軍、そして軍制変化により大提督の称号を経たオイカン大提督らによる視察がメインに進められた。
チス・アセンダンシー地上軍、チス拡張艦隊、チス・スターファイター隊に合わせ亡命したサンクト宙域軍らを彼らは訓練から日々の勤務などを見て回った。
その中で視察に来た者達は多かれ少なかれサンクト宙域軍にいた仲間や古い知人との再会を果たしていた。
特に今やジア将軍と共に501軍団を率いるヴィアーズ将軍は。
彼は同じ部隊の片割れ、そして同じ場所で同じ上官の下で戦っていた同じ帝国軍人と再会を果たした。
「まさか生きているとは思わなかった。しかも“501”すら再建しているとは」
「お陰で中将にまで出世出来ましたよ。“デヴァステイター”や“エグゼクター”にいた時じゃ到底無理だった」
ヴィアーズ大将軍の隣を歩きどこか感慨深そうに話すのはかつて彼と共に501軍団に配属されていたナードニス・プラージ中将だ。
プラージ中将は現在大セスウェナ領にいるクリフォード・プラージ准将の親戚であり同じくプラージ家の一員だった。
幼い頃から戦史に興味を持っていたプラージ中将は18歳の時、帝国軍に入隊した。
その後はアルマックの征服に参加しインペリアル級“ヴェンジェンス”に配属となった。
そこで当時の指揮官の中将が勝ち目のない戦いを挑み失敗した為代わりにある人物が指揮官となった。
彼こそがプラージ中将の運命を変える帝国の暗黒卿、ダース・ヴェイダーその人である。
ヴェイダーは無能な中将を殺害し作戦の指揮を取った。
プラージ中将はヴェイダーの下で戦い彼はそこでとあるジェダイ将軍が戦争中によく用いていた側面攻撃戦術を使い戦果を挙げた。
それが響いたのか、将又単純な戦果だけなのかプラージ中将はヴェイダー卿の下で昇進し幕僚として仕える事となった。
ヴェイダーの昇進基準は彼の死後も未だによく分かっていない。
優秀である、というのは間違いないのだがそれ以上に不明瞭な点が多くあるのだ。
何はともあれプラージ中将はヴェイダーの配下についた。
しかし配下にいるからといってプラージ中将がその時501軍団のような部隊の直接的な指揮官になれた訳ではなかった。
彼の目の前には常に優秀な指揮官がいた。
“デヴァステイター”の時はデイン・ジア司令官が、“
しかしヴェイダーからの信頼は高くタトゥイーンでデス・スターの設計図を持ったアストロメクを逃してしまった時も彼は“許された”。
それどろこか昇進になんら不都合はなく彼はエンドア戦中には既に大佐、准将であった。
だがそんな彼に転機が訪れる。
エンドア戦で帝国は崩壊し上官であるヴェイダーも死に、“エグゼクター”も“デヴァステイター”も沈み501軍団はバラバラになった。
ある者はジア司令官に続き、ある者はヴィアーズ将軍に続き、そしてある者は、このプラージ中将に続いた。
彼は彼の目の前に常に立っていた指揮官達と同じように501の生き残りを纏め上げ全員をサンクト宙域から未知領域のチス・アセンダンシーまで導いた。
それは他の者達同様険しい道のりだったがプラージ中将のリーダーシップに導かれ生き残った501軍団の将兵は皆無事にシーラまで辿り着いた。
501軍団の将校の1人として恥じない働きだった。
「現在の我が501軍団は現存する兵員に加えチス・アセンダンシーの兵員を併合する事により軍団編成を再構築しました。無論練度も501の名に恥じないものですよ」
「それは見ていれば分かる。実戦となれば相当“
ヴィアーズ大将軍のらしくない皮肉にプラージ中将も苦笑いを浮かべた。
だが第三帝国の一部、というより半数近くはチス・アセンダンシーを快く思っていない。
むしろ危険な勢力と断定し宣戦布告することも厭わないだろう。
今はひとまず対レジスタンス戦がある為中立条約を結んだがやがては解消される危険性もある。
仮に相手に元帝国の勢力がいたとしてもだ。
尤も銀河内戦の末期に多かれ少なかれ暴徒化した元帝国の勢力や軍閥と戦ってきたヴィアーズ大将軍が何か言えるとは本人は思っていなかったが。
「今は視察を報告し戦わない道に進むことを祈る他ないが」
「頼みましたよ、元ヴェイダー卿配下同士で戦うのは私も他の諸将も望んでいませんから」
微笑を浮かべた上での発言だったがプラージ中将のこの言葉には本心とどこか祈りに近いものが込められていた。
ヴィアーズ大将軍はかつての同僚に重く頷いた。
「しかし、サンクト宙域からチス・アセンダンシーへ亡命したヴェイダー卿の配下は501だけではあるまい。他にどんな人物がいる?」
実情を知らないヴィアーズ大将軍は未知領域501軍団の司令官に尋ねた。
エンドア戦ではヴェイダー配下の死の小艦隊も多くの艦が撃破され生き残りすらいないと見られていた。
しかし501軍団とテンペスト・フォースらを纏め上げデノンまで導いたヴィアーズ大将軍とはぐれた501軍団を纏めてサンクト宙域まで導いたプラージ中将らがいるなら死の小艦隊の方も少なからず生存者がいるだろう。
現にプラージ中将はその生き残り達を話し始めた。
「“アヴェンジャー”、“コンクエスト”、“ストーカー”。少なくともこの三隻はエンドア戦を生き延び、我々と共にサンクト宙域まで向かいました。そして残ったヴェイダー配下を、今はあの方が纏めています」
プラージ中将は手を差しその人物の方へ向けた。
そこには見覚えのある人物が複数人立っておりプラージ中将は名前を呼んだ。
「コーシン提督!」
声に反応したその男はこちらに部下と思われる数人の将校と共に近づいてきた。
ああ、間違いなく彼だ。
ヴィアーズ大将軍とプラージ中将は敬礼しその人物も敬礼を返した。
こちらに近づきその男は手を差し出した。
大将軍はなんの憚りもなくしっかりと手を握り固い握手を交わす。
「お久しぶりですね、覚えていますか?」
「はい、まだ貴方が“デヴァステイター”の艦長だった時に一度…いや何度か会った記憶があります」
そうして2人は微笑を浮かべた。
インペリアル級“デヴァステイター”の元艦長にして生き残ったヴェイダー配下の将兵を纏め上げるこの人物、シェイフ・コーシン提督だ。
地上軍と宇宙軍という違いはあれど特にいざこざはなかった。
「最後に会ったのは“デヴァステイター”の艦長交代式の時以来でしょうか」
「そうなりますね、私もエンドア戦での苦労は耳に入れております」
「コーシン提督は生き残った死の小艦隊やヴェイダー卿と関わりのある艦艇を率いています。“アヴェンジャー”の艦長となったネメット大佐やセシウス少佐、ヴェンカ艦長、キャベル艦長も提督の配下です」
プラージ中将は軽く説明した。
コーシン提督も小さく頷き「生きていたらピエット元帥の役目だったでしょうがね」と呟いた。
流石にサイエナ・リー中佐や将校のべリスはいないだろうが。
本当に惜しい仲間達を多く亡くした。
このようなふとした瞬間でもそれは沸々と湧き上がってくる。
ホズニアン・プライムを堕としノルマンディーでレジスタンスを叩いた後でさえもだ。
「まずはお互いに生き残り、さらに生き残った部下達の命を繋ぎ止めたことを良しとしましょう。我々には死んだ仲間達の分まで帝国の為に戦い続ける義務があるでしょうから」
「ええ、やがて我々の帝国が再び蘇る日が来ることを願って」
「ですね、帝国が一つになるにはまだ時間が掛かりそうですが」
第三帝国もチス・アセンダンシーに亡命した帝国もファースト・オーダーも大セスウェナや他の諸将域もそれぞれの事情を抱えている。
以前のように銀河帝国という一つの国家が銀河系にいるという姿に戻すにはまだ時間が掛かるだろう。
だがきっと元の帝国に戻れるはずだ。
「よお、まさかこんな所で強襲装甲師団のエリート様に会えるとはな」
ヴィアーズ大将軍が感慨に耽っているとどこかからかなりぶっきらぼうな言葉遣いで喋る男の声が聞こえた。
昔何度か聞いたことのある声でヴィアーズ大将軍はその過去の経験から若干眉を顰めた。
「ヨハンズ将軍、こんな所で何をしているんですか?」
プラージ中将はこちらに1人近づいてくるインペリアル・ハンマーズ精鋭機甲部隊含めた戦車隊の司令官であるゼル・ヨハンズ将軍に声をかけた。
顔に幾つかの大きな傷を持つ厳つい将軍は“
彼はヴィアーズ大将軍らと同じく帝国地上軍の将校であり卓越した戦術家、また才能のある技術者として高い評価を受けていた。
「ヨハンズ上級大佐…まさか生きているとは…」
「ああ…上級大佐ってのは少し違う。モフフェル閣下の“
ヨハンズ将軍は彼1人でも独自の軍閥を率いて軍将として十分やっていけるだけの状況と才能と戦力があった。
しかし熱心な帝国信奉者であるヨハンズ将軍はそのような蛮行を決して行わずヴィルヘルムの配下に着いた。
その結果未知領域に逃れたヨハンズ将軍はこの称号と多くの戦車隊の指揮権を手に入れたのだ。
尤も将軍という称号すら彼は拒否しようとしていたが。
「今ならあんたの鈍足のウォーカー部隊よりはるかに強力なリパルサータンクとホバータンクの部隊を持っている。やはり陸の花形はウォーカーでなくタンクだな」
ヨハンズ将軍は昔からずっとウォーカーの存在を目の敵にしていた。
特にAT-ATなどは足が遅く弱いと考えておりそれよりもリパルサータンクの方がずっと高速で汎用性が高いと思っていた。
その為彼はインペリアル・ハンマーズ精鋭機甲部隊の指揮官となり戦車類の発展に力を注いだ。
故にウォーカー部隊を率いるヴィアーズ大将軍のことをヨハンズ将軍はライバルと捉えていた。
ヴィアーズ大将軍がなんとなく眉を顰める理由も分かるだろう。
「だがホズニアンとシャンドリラを制圧したのはタンクではなくウォーカーだ。ウォーカーの有用性はタンクの有用性よりもまだ高い」
「そうかい、まあ俺の配下の機甲部隊を前にしても同じことが言えるとは思えないがな」
互いに牽制の笑みを浮かべながらお互いの部隊の自慢を攻撃的に並べあった。
プラージ中将も苦笑を浮かべコーシン提督も「やれやれ」といった表情を浮かべている。
だがどこか“
遠い昔に置いてきてしまったような懐かしさをこの時一瞬だけ彼らは感じていた。
-アウター・リム・テリトリー レジスタンス領 カラマリ宙域 カラマリ星系 惑星モン・カラ-
惑星モン・カラである技術者たちが幾つかの偉業をやってのけた。
それはこの銀河の艦船史の中でとても重要な出来事であり十分に素晴らしい、大偉業と呼べるものだ。
モン・カラの技術者達はこの厳しい時代の中、希望と己の技術と目の前にある資材を組み合わせてレジスタンス宇宙軍に反撃の剣を預けた。
かつて新共和国時代に凍結された設計図や計画をデータバンクから、工廠から引き摺り出し出来かけの
再び民主主義と自由をこの手に取り戻す為に、自らの役目を果たす為に。
本来は蘇ることのなかった者達を形づけ蘇らせたのだ。
新共和国のスター・デストロイヤー、そして新たなモン・カラマリ・スター・クルーザー。
レジスタンスの為に彼らは蘇った。
今アクバー元帥やメイディン将軍の眼前に映る艦船は確かにこの世に存在していた。
「こちらが“MC85スター・クルーザー”。開発が延期されたMC95スター・クルーザーと旧来のモン・カラマリ・クルーザーも設計データを取り入れた最新鋭鑑です」
モン・カラマリの技術者はタブレットを片手に元帥達に自分たちの成果を見せた。
MCスター・クルーザーシリーズはMC80で終わりではなかった。
既にヴァー=シャー造船所を巡る戦いでは最新鋭のMC95スター・クルーザーのプロトタイプが出撃している。
しかしその後の軍縮でMC95はこのMC85とさらに間の艦種と共に開発計画が凍結されそのデータはモン・カラの造船所に封印されていた。
このMC85スター・クルーザーは現状プロトタイプしか竣工していないMC95とは違い本格生産されたモン・カラマリ・クルーザーの最新鋭鑑だ。
特にMC80系の重クルーザーとして技術の最先端を組み込まれており名実共にレジスタンスの先を担う艦となる。
「全長はおよそ3,438.37メートル。重ターボレーザー砲を十八門装備しMC80以上のスターファイターを搭載可能です」
「偏向シールドも最新技術を取り込んだものを使用しており防御力は従来のMCシリーズとは比べ物になりません」
技術者達は次々とこのMC85の利点や能力を説明した。
全長だけで言えばMC80の2倍以上で火力も艦載力も段違いだ。
「重クルーザーやクルーザーというよりもはやバトルクルーザーの域だな…」
メイディン将軍は感慨深そうにMC85の船体を眺めながら呟いた。
実際3,000メートル級艦船はアナクセス式の分類法だとバトルクルーザーに当てがわれる。
火力やその他の技術面でも十分納得のいく枠だろう。
「帝国から入手したオートメーション技術を解読しこちらで更に改修を加える事で大規模な人員削減に成功しました。この大きさで現段階ではなんとかMC80並みの人員で100%運用可能です」
「なるほど、それなら兵員が枯渇していても運用出来る」
アクバー元帥は最新鋭技術に納得を示した。
反乱同盟時代ほどではないが現在のレジスタンスも兵員は比較的枯渇状態にある。
数少ない人員で大型艦船を動かせることはとても助かる。
しかしメイディン将軍は技術元の末路も含めて不安を口にした。
「しかし鹵獲したインペリアル級のようにメインコンピュータに侵入されて丸々一隻ハッキングされるような可能性もあるぞ?」
以前帝国艦隊の襲来時にジェルマンとジョーレンは他の乗船部隊とと共に一隻のインペリアル級に乗り込みシステムをハッキングした。
その結果一隻のインペリアル級をそのまま鹵獲する事に成功しレジスタンスとしては大きな成果を挙げられたのだが同時に不安も残る。
同じ技術を適用すれば同じようにハッキングされる可能性があるのではないかと。
だが技術者達は少し困惑気味に説明した。
「そもそもジルディール上級中尉の行った高速ハッキングは異常です。確かに解析でまだハッキング対策などに不十分な点は見受けられましたがそれでも特殊部隊や技術工兵が少なくとも一個分隊以上はハッキングに注力しなければスター・デストロイヤーを丸々一隻乗っ取るなど不可能です」
メイディン将軍とアクバー元帥は互いに顔を見合わせた。
流石ストライン中将の隠し球というべきなのか。
更に技術者は興奮気味に説明を重ねた。
「それに仮にハッキングしたとしても間違いなく乗員している人員から妨害が行われるはずです。それすらなかったという事は恐らくブリッジのシステムすら潰してしまったのでしょう。短時間でそこまでやるのなんて今まで見たことがありません」
「一応ハッキング対策には念を入れ不十分な点にも改良は入れましたが…」
「いや、ならいいんだ。すまなかった、それで艦名はなんと名付けた?」
メイディン将軍は技術者達に尋ねた。
「初期に生産された艦は“ディファイアンス”、“プロファンディティ”、“ギャラクティック・ヴォイジャー”、“ドーン・オブ・トランクィリティ”、“アルザス”、“ニスタラム”と名付けられました」
「“プロファンディティ”といえば今は亡きラダス元帥の乗艦と同じ艦名だな」
メイディン将軍は顎髭に指を与え記憶を辿って口を開いた。
スカリフの戦いで戦死したラダス提督はその後彼の名誉を重んじ新共和国軍の最高階級である元帥の称号が授与された。
アクバー元帥と並んでもう1人のモン・カラマリ提督が元帥の称号を生きた内に授与出来なかったのは残念ではあるが。
「亡き元帥の名誉を重んじ同名の艦種が付けられました」
「今後生産される艦は順序決めていく予定です」
アクバー元帥はその六隻の名前を聞きふと眼前のMC85に目線を移した。
彼は少しこの艦を見つめ技術者達に「この艦はなんという艦名だ?」と尋ねた。
技術者の1人がタブレットを操作し「“ディファイアンス”です」と答える。
「“ディファイアンス”か……この艦の配属は我々が決めるのだったな?」
「はい、一応このモン・カラに初期艦の三隻を配備する予定ですが」
「ならばこの艦、“ディファイアンス”を私の旗艦としても良いだろうか」
予想外の返答にメイディン将軍は目を見開きアクバー元帥を二度見した。
「では“ホーム・ワン”はどうされます」とメイディン将軍は問い詰める。
「“ホーム・ワン”はモン・カラ本国防衛艦隊の旗艦とする。新たな艦として私にこの“ディファアインス”をくれないだろうか」
「司令部の面々も構わないでしょうが……珍しいですね、元帥がそれほどまでに艦を欲しがるとは。何か理由があるのですか?」
メイディン将軍の問いにアクバー元帥は少しだけ考えたが明確な答えは浮かばなかった。
ただ確固たる第六感的な何かが新たな旗艦として“ディファアインス”を指名していたのだ。
「理由は…分からないが私の中の何かがそう告げている」
「なるほど」とメイディン将軍はそれ以上深くは追求しなかった。
そして彼らはもうひとつの新型艦の方へ目を向けた。
MC85に比べれば1,040メートルと小型に見えるがそれでも超技術を積んだレジスタンスの最新鋭艦だった。
本来この艦の誕生は後7年も後のはずなのだがこの狂気的で予想外の戦争は技術を大きく発展させた。
レジスタンスは、新共和国は遂に“
技術者の1人が艦種を告げる。
「こちらが“ネビュラ級スター・デストロイヤー”。我々の、独自開発したスター・デストロイヤーです」
1人のストームトルーパー、TK-9429のナンバーを与えられた彼はAT-ATの背後にいる兵員輸送機の中にいた。
あちこちで砲撃と銃声の混成音が聞こえ何度もここは戦場であるということを自覚させられる。
TK-9429自身もこの戦いで一度敵と遭遇し最先の悪い事に敵軍の砲撃と物量を受けて一旦後退せざるを得なかった。
彼は最前線で2、3人の敵兵を撃ち殺し同じ分隊のストームトルーパーと共になんとか敵のオキュパイア・タンクを一輌撃破した。
それでも砲撃で別の分隊が兵員輸送機ごと壊滅しウォーカーも何台か破壊された為彼らも後退した。
相手は同じようなアーマーを身に纏ったストームトルーパーとウォーカーだった。
つまり敵は我々と同じ元帝国軍なのだ。
しかも敵の猛攻は激しく撃退しても撃退してもすぐに次の部隊が到着し我々を苦しめた。
同胞同士の殺し合いに今更感じるものなんて何もない。
TK-9429が初陣を飾った戦いも同じストームトルーパー同士による殺し合いだったし彼が帝国軍人として戦っていたのは末期の数年間だけだった。
彼にとって敵とは新共和国だけでなくこちらにブラスターを向ける全ての帝国軍だ。
今回だってそれはなんら変わらない。
司令官のキールヘル中将は一体何の為にこの地までやってきたのか分からないが上官の命令には無条件で従う事をアカデミーで教えられてきた。
それに中将は作戦内容は大まかに伝えてくれたし成功すれば全員が昇進のチャンスを得られるとも言っていた。
再び銀河系の内側で生活出来るとも。
これはアウター・リムの果てに近しい場所を活動拠点としていた我々にとってはこの上ないほど嬉しい約束だった。
栄光も何もなく、銀河系の果ての暗闇で死んでいくのは耐えられない。
『レーザー砲のガンナーがやられた!』
操縦席から通信機で全員に報告される。
この兵員輸送機は上部にブラスター砲とは別にEウェブを改良した簡易砲塔が付けられておりそこには1名ほど砲手が必要だった。
レーザーよりも火力は少ないがそれでも対空や歩兵制圧に役立つ。
どうやらその砲手が狙撃されてしまったようでこの兵員輸送機は耐空力と攻撃力を失ってしまった。
互いに隣のトルーパーの顔を見合わせ分隊長の指示を仰いだ。
分隊長はシートベルトを外しTK-9429の方へと近づいた。
「TK-9429、ついてこい。ガンナーの遺体を確認しお前が次のガンナーとなれ」
「了解」
上官の命令には無条件で従う、次の砲手をやれと言われたらやるまでだ。
TK-9429は分隊長と同じくシートベルトを外し自分のブラスター・ライフルを手に持つとレーザー砲近くに2人で向かった。
オープン部分から2人は顔を出すとそこには頭を撃ち抜かれだらんと倒れるストームトルーパーの姿があった。
白いヘルメットの黒いくすみから狙撃され即死したという事が分かる。
「俺は遺体を下ろす、お前はすぐにガンナーを務めろ」
「了解」
命令通りEウェブの引き金に指を掛けスコープを覗き込む。
本来のEウェブは冷却管理が必要なのだが兵員輸送機に大型の冷却機を持ち込んでおり荒削りだがその問題点は解消していた。
兵員輸送機の中とは違いここからでは戦場の様子がよく見える。
前方にいるAT-ATからは少し離れ前部レーザー・ガンが敵陣に対してレーザー弾を撃ち込む。
AT-ATの重レーザー砲ほどの威力はないにしても効果は絶大で爆風による牽制とダメージを与えた。
前とは違い既に敵の防衛網の突破に成功しており彼らの部隊はひとまずの快進撃を続けている。
最前線では敵の防衛網に嵌り苦戦しているようだが後方のAT-ATの支援攻撃により少しは回復しただろう。
AT-ATは更に遠くの陣地に砲撃を加え他の機体もミサイルやレーザー砲などで支援を続けている。
敵はきっとAT-ATや AT-MPらのミサイル攻撃や重レーザー砲の攻撃を受けてとてつもない被害を被ってるはずだ。
だが敵兵の脅威が完全に消え去ったわけではない。
近くの岩陰から出てきたストームトルーパーが数人、担いだスマートロケットを味方の兵員輸送機に向け引き金を引いた。
放たれたロケット弾数発が兵員輸送機に着弾し輸送機は爆散し破壊された。
TK-9429は急いでEウェブを向け彼らに制圧射撃を展開する。
何十、何百もの弾丸が放たれ次の狙いを探していた敵兵を数人撃ち殺した。
反撃のブラスター弾が近くを通り過ぎEウェブ近くの装甲に直撃したがTK-9429はそれでも射撃の手を止めなかった。
バタバタと倒れ敵兵の遺体の前を通過する頃には1人も生存者は残っていなかった。
『よくやったTK-9429。このまま脅威を排除しろ』
分隊長が混むリンクを開きTK-9429の素早い攻撃を褒め称えた。
「ありがとうございます」と返答し再び意識を敵の警戒へと向ける。
予想外の攻撃を喰らったが恐らく全体からすればまだ損耗は警備だろう。
前方に更に敵を発見し今度はレーザー砲の方が反応を示した。
たった一発の砲弾が敵部隊を吹き飛ばし半数近くの敵兵を撃ち倒した。
残された敵兵もTK-9429がEウェブで掃討していく。
敵は我々の猛攻により散り散りになって確固撃破されている。
このままいけば勝利できる、そう思った矢先再びコムリンクが開き今度はコックピットの方から通信が届いた。
『TK-9429!今すぐ対空砲を展開して敵の砲撃とミサイルを迎撃しろ!このままではまずい!』
ドライバーたちの報告通りTK-9429は砲塔を上に向け対空射撃の準備を始めた。
だが上を肉眼で見た途端、TK-9429は恐ろしい光景を目にした。
上空を覆い尽くすほどの眩い光弾が一面に広がっている。
空気を切り裂きながら飛来する音がヘルメット越しでもよく聞こえた。
TK-9429は混乱と混乱を覚えドライバー達に問い詰めた。
「一体どれを撃ち落とせばいいんだ!!」
狙いをつけようにもこれだけ多くの砲弾やミサイルが放たれては迎撃のしようがない。
ドライバーからは『前部撃ち落とせ!とにかく撃つんだ!』と無茶苦茶な返答を返され苛立ちながら引き金を引く。
ブラスター砲やレーザー砲、AT-ATやAT-STからはミサイルも放たれ対空戦闘が開始された。
何とかミサイルや対空砲がどこからか放たれる砲弾やミサイルを撃破したがそれでも破壊された砲弾やミサイルの爆炎の中を突っ切って次の攻撃が来る。
撃破しても撃破しても砲撃はまるで降り止むことはなかった。
「全然減らない!!」
Eウェブの対空射撃を繰り出しながらTK-9429は憤慨した。
周辺の全ての機体が迎撃しているのにも関わらずそれでも火砲が繰り出す波を打ち消すことは出来ない。
そしていよいよ対空砲の壁は最も簡単に打ち破られた。
砲弾が一発、TK-9429の近くの地面に着弾した。
幸いにもその一発はTK-9429にも味方にも損害を与えることのない流れ弾だったがこの初弾に続く砲撃の粒はそうではない。
初段の爆発を皮切りに他の砲弾やミサイルも次々と目標に着弾した。
今度ばかりは全ての味方が無事であるのは無理だ。
前進するAT-ATやAT-ST、兵員輸送機やオキュパイア・タンクに着弾し爆発する。
しかもそれは一発だけでなく二発、三発、四発と増え続けた。
AT-ATやタンクの背後にいるストームトルーパー達も皆砲撃の餌食となり無事では済まなかった。
肉片となり生き血が霧のように撒布され白いストームトルーパー・アーマーが赤く染まる。
分隊クラスの偏向シールドを展開しようと装置を起動して何とか生き残った者もいたが時々混じる偏向シールド貫通弾により殆ど無効化された。
「くそっ!!どうなってる!?」
『よけろ被弾す…』
ついにTK-9429が乗る兵員輸送機にも一発のミサイルが着弾した。
しかもそれは不幸にもコックピット部分に直撃しミサイルが爆散する前に一足早く兵員輸送機はコントロールを失った。
兵員輸送機は回転しながらミサイルが爆発しその熱が輸送機内のトルーパー達を跡形もなく焼いて吹き飛ばした。
彼らに死の瞬間の痛みというものは微塵もなかっただろうが後に残る兵員輸送機の残骸と燃え盛る爆発の炎が彼らは感じないであろう悲惨さを生み出した。
特に回転する兵員輸送機から振り落とされたTK-9429からすれば同じ分隊の惨劇は自分が感じた痛み以上に刺激を与えた。
何とか受け身を取ったおかげで残りの衝撃はアーマーが吸収し戦闘不能の痛みや重傷を負うことはなかった。
それでも節々は十分痛むしまだ危うい状況が終わったわけではないが。
彼が持っていたEウェブもE-11ブラスター・ライフルも全て仲間を乗せた兵員輸送機と共に吹き飛んでしまった。
特にミサイルが直撃し仲間達が容赦無く吹き飛ばされる衝撃と戦慄の瞬間をTK-9429は目撃していた。
仲間の死は何度か体験したが分隊が一度に全滅することは初めてだ。
余りの出来事に体が震え思考が入り乱れ真っ白になった。
仲間を失った悲しさや死の瞬間が目前まで迫った恐怖、こんな惨状を生み出した敵に対する憎悪。
ただTK-9429が真っ先に行った行動は次の砲撃から身を守る為に地面に頭をしっかり防ぐことだった。
再び、というより今にでも砲撃の嵐が巻き起こってもおかしくない。
辺りでは生存者の悲鳴や軋むウォーカーの歩行音や血や焼け焦げた鉱物やナニカの入り混じった耐え難い匂いで溢れていた。
周囲を目で確認するとあちこちに破壊されたウォーカーや兵員輸送機、タンクの残骸や元は人の形をしていた物質やストームトルーパーと思われるアーマーの破片が転がっていた。
正に視覚、聴覚、嗅覚、全て合わせてもここは地獄といった有様で惑星内に上陸した時からは想像もつかない光景となっていた。
「くっ…!どうしてこんなことに…!」
絶望的な状況に頭を抱えTK-9429は独り言を呟いた。
もうこの独り言も叱責したり同意したりしてくれる上官や仲間はこの辺りには誰もいなかった。
皆肉片になるか燃えカスも残らないほどの衝撃を受けて消し飛んでしまった。
しかし援軍は到来した。
「おい!!大丈夫か!!」
背後から大声と共に足音が聞こえ伏せていたTK-9429に数人のストームトルーパーが掛けより彼の側に寄った。
TK-9429は頭を上げ再び周囲を見渡した。
「無事か!?所属分隊は!?」
トルーパーの1人がTK-9429に尋ねる。
「所属は第四輸送機分隊で取り敢えずは無事だ……それより武器をくれ。乗っていた輸送機ごと失ってしまった」
「分かった、これを使え」
別のストームトルーパーがホルスターからE-11を抜きTK-9429に差し出した。
TK-9429はブラスター・ライフルを受け取ると増援に来たストームトルーパーに続いた。
一行は数十人のストームトルーパーと共に前に進みながら状況の整理を始めた。
「分隊員はどうなった?」
「さっき言った通り輸送機ごと全滅してしまった。敵軍の集中砲撃を受けてこの辺りの部隊は恐らく壊滅だ……」
「やはりか…既に後方の部隊も被害を受けている。我々の部隊も増援に駆けつけた瞬間砲撃を受けた。何とか損害は軽微で済んだが」
「あれを見ろ!」
1人のストームトルーパーが指を差した。
TK-9429達は皆指の方向を見つめて多少の驚きを含めた声を発した。
「AT-AT……まだ生存機があったのか……」
トルーパーが指を差す方向には砲撃により黒灰色に燻んであちこちから煙を出しながら前進するAT-ATの姿があった。
もはや動く屍、機体には砲撃による穴があちこちに空いておりコックピットも中型ブラスターごと一部分が削られ中の様子が少し見えた。
回路にも甚大な損傷を受けているようで時折切れたコードが見え煙と同時にスパークを発していた。
本来は銀灰色の装甲も完全にその色を失いなんで動いているのかすら不思議に思えるほどの損傷度合いだった。
それでもAT-ATはゆっくり、いつもよりも威圧感を増して足を進めている。
流石は帝国のAT-ATなのかそれともただの意地なのか。
他のウォーカーや車両が斃れる死の大地をAT-ATは進んでいた。
「あのAT-ATに続くぞ!」
ストームトルーパーの隊長はTK-9429らを導きそのAT-ATの背後に続くことを決めた。
1人のトルーパーが何とかAT-ATと通信を取ろうとしていたが向こうのシステムが破損しているらしく通信は繋がらなかった。
それでも歩兵部隊の盾としてはまだ役立つ。
数十人のストームトルーパー達がAT-ATに続きしばらく前に進んだ。
だが彼らが見た光景はどれも地獄なような有様に変わりはなかった。
AT-STやAT-ATの残骸だらけで近くに生えていた草木には火が付き燃えている。
小艦隊内の装甲部隊のほぼ全てを動員して敵陣へ突撃させた。
その結果今までにないほどの快進撃を続けたがこの姿を見ればそれはいい面だけとは捉えられない。
もはやこの場に生存者はいないも同然の様子だった。
壊滅してしまった、小艦隊の装甲部隊は皆全て。
一方的な大砲撃を受けて無敵のAT-ATも歩兵の殺戮者たるAT-STもストームトルーパーを展開する兵員輸送機も全てやられてしまった。
そしてTK-9429達が盾代わりとしていたボロボロのAT-ATもついに限界が来たのか倒れ朽ち果てる。
砂煙が巻き上がり一瞬視界を奪う。
数秒した後彼らは目に広がる更なる絶望的な状況を目にすることとなった。
「なっ……!これは……!」
前方には小艦隊が展開した倍以上のウォーカーや装甲車両が接近しつつあった。
あの大砲撃も今までの攻撃も全て防御でしかなかったのだ。
それも狭き罠に嵌めた後で行う攻撃的な防御だが。
彼ら、チス・アセンダンシー軍の反撃はようやく始まろうとしていた。
「装甲部隊壊滅!応答ありません!」
「フィー中隊、デメテル中隊、ケレス中隊からの応答途絶、スターファイター隊の損耗率が間も無く24%を突破します」
「第64歩兵大隊、第67機械化大隊、敵守備隊と激突。詳細は不明ですが最後の報告では敵の戦力はこちらの10倍以上と……」
“アドミラル・キリアン”では変わらず最悪の報告ばかり流れていた。
敵の防衛網の薄い面を装甲部隊の全力で叩いた、それまでは良かったのだ。
容易に防衛網を突破し敵陣への進撃を早めた。
ウォーカーの打撃力とは並みの装甲車両とは比べ物にならないほど強力だ。
仮にスターファイター隊の航空支援がなくとも快進撃を続けられるだろう。
しかし全ては敵の罠であった。
前進した装甲部隊だったがその快進撃は突如停止する。
前方に待ち構えていた何百台のウォーカーと何百門の一斉砲撃を受けて多大なる被害を喰らった。
中にはプロトン魚雷を速射するリパルサーリフトの車両も控えており流石の大火力にウォーカー部隊は足を止めた。
しかも攻撃はそれだけではなかった。
前方に釘付けになった装甲部隊は突破を試みたが叶わず逆にその注力が仇となった。
前方への支援攻撃が左右両方からの一斉大砲撃の隙を与えたのだ。
一体いつからそれだけの砲兵部隊が左右に配置されていたかは分からない。
センサーはずっと妨害状態にあり何度もプローブ・ドロイドとスカウト・トルーパーの索敵部隊を送っているが送られてきた情報は少なかった。
霧の中から現れた砲兵部隊による砲撃は前進中の装甲部隊に甚大な被害を与えた。
プロトン魚雷や震盪ミサイル、シールド貫通ミサイルなどをひたすら撃ち込み仮にAT-ATだろうとただでは済まない程の火力を投射した。
支援攻撃中だった装甲部隊の殆どは対空にまで手が回らず砲撃を直で受け大損害を被った。
出撃した兵員輸送機、タンク、AT-STやAT-MPなどの比較的軽ウォーカーはほぼ全滅でAT-ATでさえ五体満足の機体は一台もなかった。
逆にストームトルーパーのような歩兵なら1人2人単位で生き残っているかもしれないという有様だ。
だが深刻な被害の原因はそれだけではなかった。
砲撃の停止と同時にチス・アセンダンシー軍による総攻撃が始まった。
数十万人のチス兵とストームトルーパー達が一斉に突撃し残された陸戦隊を強襲した。
現在では攻守の立場が逆転し小艦隊の陸戦隊の方が防衛に周り防衛網を悉く突破され撃滅されるという事態に陥っていた。
精強なチス兵と元より戦い慣れた忠誠心の塊のようなストームトルーパーとAT-ATのような帝国式の頑強な兵器の相性は運命の赤い糸で繋がれていると思わせるほど良かった。
敗走する小艦隊兵を、あるいはAT-ATのような装甲部隊を失った小艦隊兵を容赦なく屠り包囲網を形成していく。
兵員不足を補う為に宇宙軍トルーパーまで動員していた小艦隊の陸戦隊はお世辞にも練度で上回っているとは言い難い姿でブルーミルクのバターのように部隊が溶けていった。
更には物量でも指揮でも彼らは負けていた。
祖国の土を踏み荒らし人々を殺戮し犯そうとする侵入者から守るのは自らの務めと言わんばかりの働きをチス・アセンダンシー軍は成し遂げた。
それに対して小艦隊の方は退却と壊滅を重ねて到底元帝国軍とは思えない有様となっていた。
中には勝手に降伏する部隊も出始め小艦隊側は大混乱の様子だ。
更に最悪な事に地上支援と敵基地攻撃に打って出たスターファイター隊が敵の航空隊の猛攻を受けて陸戦隊と同じく多大な損失を被った。
新型のTIEファイターと思われる機体やTIEストライカーは性能以上にパイロットの練度が高く次々と小艦隊のTIEファイターを撃ち落としていった。
気が付けば出撃したスターファイター大隊の半数は甚大な被害を被り中には全滅した中隊もあった。
何隻かアークワイテンズ級やヴィクトリー級、レイダー級を向かわせたのだがこちらもアセンダンシー軍のスターファイター隊により全て撃沈に追い込まれた。
「もうダメです!既に地上部隊とスターファイター隊は壊滅し小艦隊も少なからず被害を被っています!ここは一旦退却し補給と再攻勢を…!」
「未知領域の門前で追い払われておめおめと帰れるか!進撃中の敵部隊をインペリアル級のターボレーザー砲で吹き飛ばせ!船体下部の砲塔でも十分の威力のはずだ!」
ブレリス艦長の進言を却下しキールヘル中将は攻撃を命ずる。
防御陣を作っていたインペリアル級と付属艦達が徐々に陣形を転換し対地攻撃の体制に入った。
砲塔を敵部隊の方へ向け砲撃地点を入力する。
しかしこの陣形転換の隙を突き攻撃に打って出た部隊がいた。
強力な戦艦イオン砲が撃ち込まれ僚艦のインペリアル級“レボリュート”に着弾した。
背後からの一撃によりエンジン部分に直撃した戦艦イオン砲はその効力を十二分に発揮した。
エンジンのシステムを機能停止に追い込み“レボリュート”から推力を奪ったのだ。
更には二発目の戦艦イオン砲が放たれ今度は“レボリュート”のブリッジに直撃した。
エンジンと司令塔がやられた“レボリュート”は浮遊する力を失いゆっくりと地面に滑り落ちるように墜落した。
幸いにも墜落事の方法が良かったおかげで反応炉が爆発する事はなくそれ以上の損傷はなかったが“レボリュート”の戦闘能力が消失した事に変わりはない。
「一体何処からの攻撃だ!?」
キールヘル中将は挙動不審になりながら部下達に尋ねた。
「後方、7時の方角です!インペリアル級三隻、識別不能艦四隻!」
「4時の方角からも敵艦接近!同じくインペリアル級三隻、識別不能艦が五隻確認!」
「上空の艦隊が包囲を解いて襲撃を開始したのでしょうか…?」
ブレリス艦長は弱々しく尋ねる。
しかしすぐに士官の1人から「まだ軌道上には敵艦が確認出来ます」との報告が帰ってきた。
「では一体どころから…」
「密かに動員したというのか……!砲撃の音に紛れて艦隊を動かし進撃させた…」
その間にも出現した機動部隊はイオン砲とターボレーザー砲を服用して砲撃し陣形転換中の小艦隊に被害を与えた。
特に高出力の戦艦イオン砲はインペリアル級のシールドすらも打ち破りシステムを麻痺させる。
アークワイテンズ級やレイダー級が喰らえば一撃で全機能が停止し地面に墜落してしまう。
「残った艦載機も全て出せ!数ではまだこちらが有利だ!」
「中将!前方より敵スターファイターです!」
中将は言葉を失い愕然としながらブリッジのビューポートから外を見た。
数十機のTIE/sk大気圏用戦闘機、TIEストライカーとヌシス級クロークラフトがレーザー砲を放ちながら“アドミラル・キリアン”に肉薄する。
まるで水面を滑るかのように滑らかな動きで対艦攻撃を行い敵艦にダメージを与えていく。
このTIEストライカーは試作機時代から2人乗りように設計されておりパイロット1名と砲手兼爆撃手1名という編成だった。
未知領域で正式採用されたこの機体はSFS社製のH-s1重レーザー砲が回転し後部の攻撃にも対応出来るようになっている。
本来あったプロトン魚雷発発射管もヌシス級同様にオプションで更に増強することが出来、現在対艦攻撃を実行しているTIEストライカーのみで編成されたブラック中隊はイオン魚雷発射管を搭載している。
イオン魚雷とプロトン魚雷の攻撃を集中的に受けあちこちの機能が停止し始めた。
ターボレーザー砲などが対空防御を行うが局所防衛砲台や並みのレーザー砲の攻撃すら軽々と躱すブラック中隊の面々に対しターボレーザー砲の対空防御を回避するなど朝飯前だ。
機体を旋回させ砲撃してきたターボレーザー砲をひとつづつ潰していく。
「ブラック3、ブラック4、敵ブリッジに総攻撃を掛ける。後方の乗船部隊は準備を頼む」
『了解』
『了解!』
ブラックリーダーからの命令で2機のTIEストライカーがブラックリーダーの機体に続く。
爆撃手がイオン魚雷とプロトン魚雷をそれぞれ装填し照準器で狙いを定める。
どれだけの対空砲火を喰らっても軸のブレない避け方で動く3機はすぐにターゲットをロックオンしてギリギリまで接近した。
既に隣のインペリアル級ではスターファイターによる撹乱が成功し乗船部隊がインペリアル級を乗っ取るためにTIEリーパーやTIEボーディング・クラフトがハンガーベイから内部に侵入した。
友軍の機動部隊も次々とイオン攻撃を成功させておりインペリアル級と敵艦隊を地上に叩き落としている。
機動部隊の旗艦の役割を果たしている“アドミラル・ピエット”と“アドミラル・ラックス”の集中砲撃により七隻あるインペリアル級のうち二隻が機能を失い地上に墜落していた。
更にはうち二隻のインペリアル級にはスターファイター隊の攻撃により麻痺した所を先程のようにTIEボーディング・クラフトらが侵入し乗っ取りを開始した。
上手くいけば七隻のインペリアル級を丸々全て入手出来る手筈だ。
『ブラックリーダー、もう十分です。攻撃しましょう』
ブラック4がブラックリーダーに攻撃を促した。
しかしブラックリーダーは「いや…もっと接近する…」と更に機体をブリッジの近くまで接近させた。
そして本当に目と鼻の距離という瞬間にブラックリーダーは命令を出した。
「全機攻撃開始!!」
TIEストライカーのレーザー砲の総火力が放たれ偏向シールド発生装置に牙を剥く。
プロトン魚雷とイオン魚雷も同時に発射され遂に一つの偏向シールド発生装置を破壊した。
3機のTIEストライカーがブリッジを通り過ぎ反転してもう一つも破壊しようと攻撃を開始する。
イオン魚雷が先に3機合わせて四発放たれ“アドミラル・キリアン”の偏向シールド発生装置のシステムに障害を生じさせた。
既に片方の偏向シールド発生装置を失っている為偏向シールドが殆ど展開出来なくなっており丸裸も同然だった。
完全に装置を破壊しようとインペリアル級にプロトン魚雷の攻撃を行おうとしたが艦を守る為に妨害に入ったTIEファイターにより撹乱されそれ以上の攻撃は出来なかった。
「チッ!!邪魔が入った!」
敵機を撃墜しながらブラックリーダーは態度を悪くして歯噛みする。
『ですがブラックリーダー、もう十分敵のシステムにダメージを与えました!乗船部隊を突入させましょう!』
ブラック3の進言は聞き入れられブラック中隊に守られたTIEボーディング・クラフトとTIEリーパーらの編隊が内部に侵入する。
当然“アドミラル・キリアン”のブリッジの中でもその事は報告されていた。
「敵乗船用TIEファイターが本艦に侵入!現在ハンガーベイで戦闘が行われています!」
「警備隊が抵抗していますが地上にも宇宙軍トルーパー隊を動員した為まともな防御はもう出来ません!」
「全隔壁を閉鎖して防備を固めろ!少しでも時間を稼ぐんだ!」
報告する士官達の声音がどこか恐怖を帯びているのがキールヘル中将にはよく分かった。
尤も彼の指揮も以前より大雑把なものばかりになっているとこには気づいていなかったが。
艦は常に敵機の攻撃による振動に襲われ小さく揺れていた。
「偏向シールドの展開率が33%まで低下!もう長く持ちません!」
「“クアグマイア”からの通信途絶!応答ありません!」
「ハンガーベイ内が制圧されました!中将!」
最悪の報告ばかりだ。
こんなに部下から悪い報告を受け取ったのは生まれて初めてかもしれない。
彼らは今初めて死というものに直面していた。
エンドア後海賊となった彼らだがそれでも死というものは遠くかけ離れていた。
食糧も物資も略奪すればものは手に入るし何より彼らの棲家はスター・デストロイヤーだ。
向かう所敵なしの主力艦であり並みの敵も蹴散らせるほどの力と数を兼ね備えていた。
ファースト・オーダーだって第三銀河帝国だって我々の事を殺さずむしろ恩賞の代わりに我々に役目を与えてくれた。
死などずっとと多いものだった。
しかし今では違う、すぐ側まで来ている。
未知領域の暗闇でキールヘル中将達に死神が大鎌をかけ今か今かと喉元を引き裂く準備をしていた。
争うことも逃れることも出来ない大きな鎌にキールヘル中将達は引っかかってしまった。
ある1人の乗組員が小さく独り言を発した。
「このまま死ぬのか」と。
その言葉をキールヘル中将は聞き逃さなかった。
我々が死ぬ、そんなことはあり得ない。
だって我々はずっと生き延びて来たじゃないか。
エンドアも、エンドア戦後も、アウター・リムでも、未知領域でも、ファースト・オーダーでも、第三銀河帝国でも。
ならばチス・アセンダンシーのこんな門前で野垂れ死ぬわけがない。
我々は絶対に死なない、我々は死なないのだ。
絶対に、絶対に。
「中将!!ご命令を!!」
キールヘル中将はブレリス艦長の悲鳴のような声によって現実世界へと引き戻された。
彼がふとブリッジの方を見た瞬間、赤い炎に包まれ崩壊しながらビューポートや機器類を破壊しながら突っ込んでくるTIEファイターが見えた。
他の乗組員達は潰されるかあるいは熱に焼かれるか必死に逃げ惑うかのどれかだった。
悲鳴を上げていたブレリス艦長の姿はもうどこにも見えない。
やがてキールヘル中将の姿すらも見えなくなった。
“アドミラル・キリアン”のブリッジにTIEファイターが激突した。
それはブラック中隊の所属機ではなく“アドミラル・キリアン”所属のTIEファイターだった。
被弾しコントロールを失ったTIEファイターは運悪く母艦のブリッジに突っ込んだのだ。
本来なら偏向シールドによりTIEファイターだけが消失するのだが展開率が30%以下の状態ではTIEファイターの高速衝突で容易に突破出来た。
ブリッジは爆炎に包まれ“アドミラル・キリアン”はコントロールを失った。
爆炎と衝突の衝撃は間違いなくブリッジの乗組員全員の命を奪っただろう。
コントロールを失った“アドミラル・キリアン”はそのまま地面に墜落しようとしていた。
しかし先に乗船していたチス・アセンダンシーと帝国軍の精鋭達がなんとかコントロールを復活させ墜落を回避した。
“アドミラル・キリアン”は艦名の元となった人物とは違い自らの墜落を免れたのだ。
そして“アドミラル・キリアン”の占拠は当然司令部のプライド中将らにも伝えられた。
「ブリッジがやられたか…」
「どうする?恐らく司令官達はこれで生存の確率は大幅に減った」
「ああ、だが偶発的な事故ならば仕方ない。それよりも旗艦を制圧した事をまずはよしとしよう。ひとまず連中の艦隊の主力は押さえられた」
ヴァシレフスキー少将は小さく頷いた。
インペリアル級数十隻の艦隊と地上の圧倒的な機甲部隊と歩兵部隊の手配を成し遂げたヴァシレフスキー少将もこの戦果に満足していた。
敵の地上部隊はほぼ壊滅し上手くいけばインペリアル級が七隻ほど手に入る。
これほどの成果は早々ないだろう。
「ロコソフスキー少将の直轄兵団が敵司令部の撃破に成功しました」
チスの通信士官がプライド中将に報告する。
中将は「そうか、よくやった」と労いの言葉を掛けた。
「これで後は包囲殲滅のみだな」
「ああ、だが油断は出来ん。確実に包囲し敵を叩け、ここで不用意な損害を出す必要はない」
他の幕僚達も頷き各部隊に指示を伝達した。
既に勝利が確定した事は間違いないが予想外の反撃を喰らうこともある。
特に追い詰められた敵は何をするか分からない。
ジャクー戦でプライド中将らがそうだったようにだ。
「なんとか侵入は食い止められたな」
ヴァシレフスキー少将はホッとした表情でそう呟いた。
実際敵は数も質もかなりの高水準の部隊だった。
帝国軍単独で向かっては勝ち目はなかっただろう。
「ああ、お前があれだけの部隊の手配を上手くやってくれたからだ。私やロコソフスキーだけでは恐らくここまでの事は出来てはいない。そして問題は……連中の裏に控えていた存在をどう炙り出すかだ。ファースト・オーダーの従属艦隊が勝手な行動を起こしたとは思えん」
プライド中将は戦友の功績を讃え勝利よりも残された疑念の方に思考を注いだ。
首謀者を炙り出せなければもしかするとこのような事が二度三度起こる可能性だってある。
そうなればこの戦いはいつまでも終わりがない。
「現状、誰が首謀者だと思う?」
ヴァシレフスキー少将はプライド中将に尋ねる。
プライド中将は現状のあらゆる出来事と情報を精査し思考を巡らせた。
彼らを差し向けた本当の首謀者、それは恐らくファースト・オーダーではない。
むしろファースト・オーダーに見せかけようとしている可能性すらある。
そうなると残された組織は…。
「……第三帝国……そしてその背後に控える……“
-アノート宙域 ベスピン星系 惑星ベスピン クラウド・シティ-
エンドア戦後、ベスピンの支配権はユーブリック・アデルハード総督に移っていた。
彼はアノート宙域で“
彼は“
アノートは、ベスピンはアデルハード総督の帝国となった。
しかし他の軍将の勢力同様アデルハードの残存勢力もそう長くは続かなかった。
真実を知る者やこの状況に耐えかねた者達がレジスタンス活動を行い鉄の封鎖に反抗した。
当然アデルハード総督も保有する艦隊やパージ・トルーパーらを使ってレジスタンス勢力を弾圧した。
それでもレジスタンス達はめげずに活動を続けた。
そして遂に勝利の日が訪れた。
ベスピンのチヌーク・ステーションで補給地点ごと三隻のインペリアル級を失い大損害を被った。
更にはジャクーの戦いで新共和国が勝利しコア・ワールドでも帝国の勢力が新共和国と講和し銀河内戦は終結した。
アデルハード総督は取り残されてしまったのだ、このレジスタンスの湧き出るアノート宙域に。
更には銀河協定が結ばれ新共和国はアノート宙域へ介入する手立てを手に入れた。
銀河協定以降、協定に定められた帝国領内に入らない帝国軍は全て戦犯の烙印を押された。
それはアノート宙域という第二帝国から遠く離れた場所にいるアデルハード総督にも適応された。
新共和国軍は戦犯の逮捕という目的でアノート宙域に介入しレジスタンスを支援した。
補給地点を失った上に指揮の低いアデルハード総督の艦隊は悉く敗走、遂にはアノート宙域から追い出されてしまった。
だがそれで諦める男ではなかった。
彼は生き残った艦隊を纏め上げアノート宙域を奪還する為の手筈を整えた。
無論第二帝国、第三帝国を名乗るコア・ワールドの連中に助けは借りない。
彼らはアデルハード総督達を見捨てた張本人だ。
やがてアノート宙域の国境で紛争が勃発しアデルハード総督の残存勢力とアノート宙域に駐留する新共和国軍とで国境紛争が開始された。
しかしアノートの守りは万全であった。
新共和国から送られてきた部隊、そしてその指揮官であるとある将軍の腕が良かったからだ。
その将軍はアデルハード総督以前のベスピンの総督でありギャンブルや密輸業で成り上がったとんでもない人物だ。
ハンやレイア、ルークやチューバッカすらも面識のある新共和国軍の英雄のたる人物の1人であった。
そんな男の元に交渉人としてヘルヴィは送り込まれていた。
彼女は今、ベスピンのクラウド・シティの応接室の中にいる。
白く美しい建物の中でその将軍は派手なマントを旧来の新共和国軍の軍服の上から纏っている。
「なるほど、ハンもレイアもルークもチューイもいるわけか。それは、懐かしい面々ばかりだ」
「はい、ですから我々に何卒ご協力を…」
ヘルヴィは頭を下げようとしたがその将軍は手で「下げなくていい」と止めた。
「無論そのつもりだが少し厄介な連中に絡まれていてな。それを片付けてからでいいか?」
「厄介な連中…ですか?」
ヘルヴィは思わず同じ言葉を繰り返して問いかけてしまった。
将軍は小さく頷きパーマの掛かった頭を掻く。
痒いわけではなさそうだがそれよりも困ったという雰囲気が受け取れた。
「ああ、俺のベスピンをどうしても取り返したい奴らがいるらしい。今もボロボロの艦隊を率いてそいつにちょっかいを仕掛けられて…」
「失礼します!惑星ルトリリア周辺で帝国軍の襲来を確認!現地の駐屯部隊と現在戦闘が始まっています!」
室内に入ってきた部下からの報告を聞いた将軍は小さくため息を付きソファーから立ち上がった。
「すまないセルヴェント女史、少し席を外す。さっき言った厄介な連中がまた来たようだ、すぐに戻る」
マントを靡かせヘルヴィの手の甲に社交的なキスをすると彼は部屋を出ようとした。
「ご武運を」というヘルヴィの声を聞き将軍は小さく微笑を浮かべる。
「さて、アデルハードの連中をまた捻りに行くとしますか」
新共和国の盟友、“ランドーニス・バルサザール・カルリジアン”はニヒルな笑みと共に戦いへと向かった。
他の仲間達と同じように帝国を倒す為に。
彼の求める“
つづく
お久しぶりです
わしです
ちなみにイノベスキーこないだ誕生日を迎えましてね、お年寄りになりました
労ってください
そいではまた〜〜〜
(おいおい待て待て)