第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「大提督とは後々に昇格したレイ・スローネ、バロー・オイカンも含めて恐らく14人いたとされている。しかし第二次銀河内戦の開戦初期には銀河系の表舞台に立っていたのはオイカン大提督1人のみである。他の大提督達がどうなったのかは帝国の動乱期の闇の中だ。しかし彼ら大提督が皇帝の信任を受けた優秀な提督達であることは間違いない。それ故におとぎ話のような伝説がいくつも語り継がれ、幾人もの帝国の軍将達が大提督の称号を名乗ろうとしたのである。自らがより正当な後継者と見せる為に」
-銀河帝国史4 崩壊する帝国より抜粋-


女王救出劇/後編

ナブー王室宇宙艦隊。

 

元は新共和国の惑星防衛軍強化の一環として設立されたナブー王室保安軍の宇宙艦隊部門であり当初はネビュロンBやCR90などの艦船を使用していた。

 

だが今では支援先が第三帝国に代わった為アークワイテンズ級やヴィクトリー級のような帝国軍艦も艦列に加わっていた。

 

特に三隻のプロカーセイター級は艦隊の旗艦として威厳のある姿を醸し出していた。

 

そんなプロカーセイター級の一隻、王室艦隊総旗艦“キング・オブ・ヴェルーナ”のブリッジの中で1人の通信士官が上官達に報告する。

 

「宮殿格納庫から強制発艦したTIEボーディング・クラフト、大気圏を突破しました」

 

「恐らく艦隊に突撃するつもりです」

 

艦隊の幕僚や“キング・オブ・ヴェルーナ”の艦長達はその報告により動揺したが陣頭指揮を取るクリース宙将とグリアフ一佐は予定通りと言わんばかりの的確で冷静な指示を出した。

 

「スターファイター隊を発艦させ防戦に当たらせろ。目標は間違いなくこの艦のあの方だ」

 

「りょっ了解!」

 

プロカーセイター級やヴィクトリー級からN-1スターファイターや貸し出されたTIEファイターが発艦し惑星から出たTIEボーディング・クラフトを迎え撃った。

 

圧倒的な物量で敵機にレーザー弾を撒き散らす。

 

しかし寸前で回避したTIEボーディング・クラフトは反転しようとする後列のN-1スターファイターを1機レーザー弾で破壊した。

 

TIEボーディング・クラフトの背後を取ろうとした2機のTIEファイターも逆に背後に回った重レーザー砲により撃破された。

 

「敵機、前衛スターファイター隊を突破。真っ直ぐこちらを目指しています」

 

「敵は相当の手練れのようですね」

 

グリアフ一佐はTIEボーディング・クラフトの動きを観察しそう評した。

 

クリース宙将も「ああ、そのようだ」と苦笑を浮かべながら賛同する。

 

「全艦、対空戦闘用意!CR90とアークワイテンズ級を対空陣形通りに配置し残りは全て上陸戦闘に備えろ。連中は恐らく真っ直ぐこの艦に来る」

 

宙将の命令通りCR90やアークワイテンズ級、ネビュロンBが艦列を組み防衛体制を構築する。

 

後方のスターファイター隊に追われる中TIEボーディング・クラフトは真っ直ぐ艦隊へ突っ込んだ。

 

CR90やネビュロンB、アークワイテンズ級は一斉にレーザー砲を撃ち出しレーザーの防壁を生み出す。

 

本来スターファイター1機などどれだへ偏向シールドを分厚くしようとこの圧倒的な防壁に押し潰されて撃破されるのだが今回は違った。

 

TIEボーディング・クラフトは寸前でCR90コルベットへ向けて全速力で急降下した。

 

その瞬間他の艦の乗組員やパイロット達は「血迷ったか」と思ったが機体は一気に上昇して高速でコルベットの船体スレスレを飛行した。

 

本来なら船体に激突しそのまま爆散する勢いだったがパイロットの腕がいいのか衝突することなく飛び切った。

 

そのまま別の艦、また別の艦と敵の攻撃を最小限で抑えながら全速力でプロカーセイター級らへ突入しようと前進する。

 

対空砲のほぼ無効化と同士討ちと衝突被害を避ける為にスターファイター隊による追撃がほぼ不可能である為、TIEボーディング・クラフトは敵陣のど真ん中にいるのにも関わらず最小限の危険の中を進めていた。

 

「第四対空群、第七打撃群突破されました!第八主力群に接近!」

 

「どっどうしましょう!宙将!このままでは本艦に間違いなく突入してきます!」

 

キング・オブ・ヴェルーナ”の艦長は慌ててクリース宙将に無意味な進言を告げた。

 

そんなもの見ればわかるし防ぎようもない。

 

だが宙将は艦長を宥めるように「分かっている」と返した。

 

「もはや迎撃は不可能だ。艦内戦闘の準備は?」

 

「大方整っております。全艦に配備した帝国軍のセキュリティ・ドロイドと精鋭のデア・フルス・ソルー軍団の配備しております」

 

グリアフ一佐は簡潔に対策を説明した。

 

解放軍の襲撃を予期した首脳部は本来市街地に配備するはずのデア・フルス・ソルー軍団を宇宙艦隊のプロカーセイター級とシード宮殿に分散して配置した。

 

こうすれば例え連中が襲おうとも精鋭部隊による制圧が可能だ。

 

「十分だ」とクリース宙将は意向を全員に通達した。

 

「これより敵を艦内で迎え撃つ。総員、連中を墓標をこの艦に立ててやれ」

 

 

 

 

TIEボーディング・クラフトが敵機や対空砲火の全てを掻い潜りながらプロカーセイター級のハンガーベイに突っ込んだ。

 

火花を散らしながら周りのカーゴを押し出し強制着艦する。

 

「全く酷い着艦方法だ……」

 

「うん…しかも敵が……!」

 

ジェルマンに指を差されジョーレンは険しい表情を浮かべた。

 

急いで引き金に指をかけレーザー砲を迫る敵兵に対し放った。

 

だがその前にスマートロケットを担いだ敵兵によりレーザー砲塔が破壊され攻撃が出来なくなった。

 

弾頭が直撃した余波の振動が機体全体に触れ渡る。

 

「チィッ!この機体にこれ以上はとどまれん!」

 

2人は急いでブラスターを手にしTIEボーディング・クラフトの裏のハッチから抜け出た。

 

ハッチから出る瞬間にもうジョーレンのすぐ側をブラスター弾が横切り近くの破壊された弾薬カーゴの外装に被弾した。

 

すぐにA300で敵兵を撃ち殺し後から降りて来たジェルマンと共に前に進む。

 

敵の保安隊員は装備も練度も高く今まで戦ってきた相手とは格段に違うようだ。

 

だが今まで修羅場ばかりくぐり抜けてきた2人の敵ではない。

 

互いにX字を描くように入れ替わりながら銃撃し敵の射線を躱しながら1人づつ始末する。

 

ロケット弾が何発も飛んでこようと彼らは全く動じなかった。

 

逆にスマート・ロケットや重火器を持つ隊員を含めた3人を撃ち倒し残りの敵兵に近づく。

 

ある1人の保安隊員を超至近距離からブラスター・ピストルを持って射殺しそのまま隊員の遺体を立て代わりにしながらA280-CFEで他の敵兵を撃つ。

 

他の保安隊員もジョーレンの投げたインパクト・グレネードにより2人が負傷し負傷兵を抱えながら残りの隊員は皆撤退を始めた。

 

「連中退却していく…?」

 

「いいや違うな……この動きは…恐らく“()()”の方だ」

 

ジョーレンの予測通り保安隊員の代わりにCR-2ブラスターピストルを持った帝国軍仕様のKXシリーズ・セキュリティ・ドロイドが5、6体姿を表した。

 

ブラスターを乱射しながらゆっくり、冷たく進み続ける。

 

ジェルマンとジョーレンはある1体に集中砲火を浴びせようやく破壊したが残りのセキュリティ・ドロイドは破壊された同型機の残骸を踏み潰してまで攻撃と前進を続けた。

 

流石は戦闘用のドロイドだ、冷酷というか人間的な感情がない。

 

むしろそれこそが強みであり対峙する生身の敵兵に対し恐怖と嫌悪感を煽り心の弱みに漬け込むのだ。

 

ジョーレンは近くに落ちていた保安隊員のスマート・ロケットを拾い一旦後ろへ退いた。

 

「ソイツの残弾は?」

 

ジェルマンはスマート・ロケットの残弾数を聞いた。

 

これだけの火力ならセキュリティ・ドロイドを一撃で破壊どころか2、3体巻き込んで撃破出来る。

 

しかし残念ながら残弾数は1発のみ、到底敵を全部撃ち倒せる火力はない。

 

「1発だけだ。だが俺に考えがあるんでね」

 

そう言いジョーレンはスマート・ロケットを担ぎハンガーベイの天井にぶら下がっている1機のTIEファイターに狙いを定めた。

 

照準が定まりセキュリティ・ドロイドの一団がある程度の場所まで来たところでジョーレンは最後の弾頭を発射した。

 

TIEファイターを固定するアームロックを破壊し機体が高速で地面に墜落する。

 

真下にいたセキュリティ・ドロイド達を巻き込みながらTIEファイターはパネル付きの両翼が大きくひしゃげコックピットも潰れた。

 

無論下敷きのセキュリティ・ドロイドは殆どが破壊され辛うじてドロイド脳を維持しシステムを保っている機もジェルマンとジョーレンにより残らず始末された。

 

「行くぞ」

 

全ての敵兵を退けようやくハンガーベイから脱した。

 

だがむしろハンガーベイから外が真の関門だ。

 

まず2人はEウェブ重連射式ブラスター砲を一斉射をお見舞いされた。

 

1発も喰らうことはなかったが危うく死ぬところだったし通路をEウェブで固められてはこれ以上前進出来ない。

 

敵を牽制しながらジョーレンはハンドサインを出しジェルマンは敵防衛陣地へ敵兵から拾ったN-20バラディウム=コア・サーマル・デトネーターを投げ付けた。

 

投擲からしばらくしてサーマル・デトネーターは爆散しEウェブや敵兵ごと陣地を吹き飛ばした。

 

2人は沈黙を確認してから前進した。

 

インペリアル級よりは遥かに小さいがそれでも艦内はとてつもなく広い。

 

しかも様々な箇所のドアから突然1人2人の保安隊員が現れジェルマントジョーレンを襲う。

 

「この!」

 

ブラスターを持つ手を押さえて至近距離からブラスター・ピストルで相手を撃ち抜く。

 

ジェルマンも相手を殴り付け足払いしてブラスターを奪い取ってから確実に相手を打ち倒した。

 

敵兵のCR-2ブラスター・ピストルを乱暴に地面に投げ捨てながら「これで何回目だ」と呟く。

 

「分からん、もう五、六回以上はやられてる気がする。連中完全に我々を罠に嵌めるつもりらしい」

 

「早く進まないと、もしかすると増援も来てるかもしれない」

 

ジェルマンはブラスター・ライフルを構え歩き始めるがジョーレンに突然「待て」と止められた。

 

「どうしたんだ?」

 

敵兵の遺体からヘルメット奪い取ったジョーレンはジェルマンを背後に下がらせそのヘルメットを向こう側の通路に向かって投げた。

 

ヘルメットは一回地面に落ちてバウンドしそのまま転がるようにほんの少し前に進み動きを止めた。

 

ここまではなんの変哲もないただのヘルメットの動きだ。

 

しかし問題はその後だった。

 

突如ヘルメットの転がった近くで左右天井の三方向から爆発が起きた。

 

黒煙と赤い光に包まれ一瞬爆発の向こう側が見えなくなったがわずかな隙間からヘルメットが粉微塵に吹き飛ぶ姿が見えた。

 

「これは……」

 

「恐らく近接反応爆弾の類…いやレーザー・トリップ・マイン辺りの機雷だろう。小さなレーザーが引かれ、それに反応すると爆発する仕組みだ」

 

「じゃあ、あのまま真っ直ぐ進んでたら…」

 

「もしかすると吹っ飛んでた。思ってた以上にこの艦は、罠だらけだ」

 

司令官達にとってこの2人がプロカーセイター級まで突っ込んでくる事は既に予定された事であった。

 

ならば万全の兵力を投入し罠を仕掛け待つのみ。

 

彼らは来た、いや来ざるを得なかったのだ。

 

そしてそんな状況を作り出したのもこのプロカーセイター級“キング・オブ・ヴェルーナ”のブリッジで状況を冷静に見続ける司令官達だ。

 

もはやこの戦いは双方の力量のぶつかり合いとなっていた。

 

 

 

 

 

 

-第三帝国国家弁務官区領 ハット・スペース 北ハット国家弁務官区(Reichskommissariat Nordhutt)

犯罪者達の楽園であった無法地帯ハット・スペースは今や第三帝国の楽園たる絶対秩序地帯ハット国家弁務官区に変えられていた。

 

国家弁務官区(Reichskommissariat)とは第三帝国が占領した無秩序領域、未知領域付近、ワイルド・スペースなどの比較的“()()()()”の統治の為に帝国の権限が届きやすいよう作られた特務総督領の事だ。

 

代理総統によって任命された新たな国家弁務官区総督達が各地に派遣され統治や惑星の改革を行なっていた。

 

また国家弁務官区は第三帝国が優先して経済的、軍事的開発を行いたい地域にも設定される事がありその例がヒェムナー長官指導による宙域改革が進められているエストラン宙域に建設予定の国家弁務官区がそうだ。

 

第三帝国が“()()()()()()”を全銀河に広める為、狂気を加速させる為の領域が各地に広がりつつあった。

 

国家弁務官区の弁務官総督は基本モフかCOMPNOR委員か親衛隊から選出される。

 

その為このノルトハット(北ハット)国家弁務官区の総督も名目上親衛隊所属であった。

 

ハット・スペースは領域が広すぎる為北と南で分割し、北をモフカーリヒ・ビュレンケルが、南をモフラコート・ゼンスラインが統治していた。

 

2人とも親衛隊の名誉大将の肩書きも保持し実質的にハット・スペースは親衛隊領となる。

 

各地にハットやエイリアン種族、犯罪者の絶滅収容所を建設しハット・スペース内の改革と並行して彼らの“()()”を担っていた。

 

親衛隊にとってここは自らの征服地であると同時に資源や広い国土を持つ第二の本拠地となるだろう。

 

それにこの銀河史数万年の中で長らく無法地帯であったハット・スペースを遂にハット・クランとならず者達から取り上げ銀河系の中央政府に組み込むことが叶ったのだ。

 

親衛隊の教育上これを喜ばない者は殆どいないだろう。

 

その後の顛末がどうであれある意味で彼らは偉業を成し遂げたのだ。

 

「国家弁務官区内での資源輸出率、並びに開拓率は上昇傾向にあります。先月発見された資源衛星の資源抽出率も14%上昇しました」

 

「素晴らしい報告だ。今後も開拓の現状維持を続けろ。この国家弁務官区が先鋒となりて総統閣下のご想像される“()()()”の形成に役立てるのだ」

 

官僚からの報告を受けたモフビュレンケルは満足げに呟いた。

 

彼は元々アダリィ宙域のモフだったのだが銀河内戦末期に新共和国軍の攻撃を受けて惑星ハンバリンのオイカン艦隊へと逃げ込むしかなかった。

 

彼もあのカイゼルシュラハト作戦に参加しその時に現在の代理総統と知り合ったとされている。

 

それ以降モフビュレンケルは総統に忠誠を誓い信奉するかの如く敬意を表しているそうだ。

 

代理総統が語る“()()()”にも理解がありそれらの信頼もあってこのノルトハット国家弁務官区のモフに任命された。

 

「私からも一つ。総督が以前から頼んでいた国家弁務官区駐留の宙域軍の増援が到着しました。一個小艦隊と地上戦力一個兵団、二個師団です」

 

ノルトハットの駐留軍の司令官、シレスク・バルフェルチュ親衛隊大将の報告にモフビュレンケルは再び顔を上げた。

 

「そうか…!それで、配置は?」

 

「以前提案したように地上軍をケルドゥインの駐留基地に配置し小艦隊はパトロール群に回しました」

 

簡易的なホロプロジェクターでノルトハットの星図を映し出した。

 

しばらく星図を見つめモフビュレンケルは「とてもいい…」と呟いた。

 

「このハット国家弁務官区は、北も南も本国との繋がりが脆い。特にゼンスラインのズーデンハット(南ハット)は」

 

ハット・スペースを制圧した第三帝国であったが周辺までの確保は現在の軍事力では不可能だった。

 

その為二、三本ハイパースペース・ルート付近の惑星の確保が精一杯で安定度は非常に脆かった。

 

しかもそのうちの一本にはレジスタンス軍が占領する惑星キャッシークとミタラノア宙域が存在し実質的には途切れいるようなものだ。

 

故に国家弁務官区には更なる戦力が必要で防衛体制を整え必要であれば周辺領域への侵攻が可能になる状態でなければならなかった。

 

「最近ではまたボサウイで不穏な動きが報告されている。我々も非常時に備えなければならない」

 

「そして国家弁務官区内での治安悪化の対処……ですな」

 

バルフェルライチュ大将の言葉に「うむ」とモフビュレンケルは重たく頷いた。

 

ハット・スペースの駐留軍増加は単なる外敵からの防衛体制の強化だけではなかった。

 

この二つの国家弁務官区は所詮無法地帯の惑星群に対して一方的な軌道上爆撃と核弾頭の雨を降らせ犯罪者達の王やボスを皆殺しにして奪い取った領域だ。

 

殺し切れなかったのもいるしそれ以上に未だに国家弁務官区内に多くの密輸業者や海賊、ギャングや犯罪シンジ・ゲートの船団が彷徨いていた。

 

駐留艦隊も多くのパトロール隊を出撃させ見つけ次第捕まえる事なく殲滅しているのだがまるで数が減らない。

 

この汚れ多い地を完全に浄化する為にも数と兵力が必要だった。

 

「連中をのさばらせていては帝国の臣民や総統閣下方に対して申し訳が立たない。徹底的に殲滅して奴等を一掃せねば」

 

「弁務官区内の開拓と資源輸送を更に安定化させる為にも是非とも頼みます」

 

他の官僚からもそう進言があった。

 

海賊や犯罪者の船団がその辺をのさばっていては第三帝国本国に送る為の物資を運ぶ輸送船団も危険に晒される。

 

現に何百、何千件も輸送船団が海賊、または犯罪者船団の襲撃に遭ったとの報告がなされていた。

 

「ですが総督、艦隊も外部防衛に充てるべきです。ケッセル周辺でケッセル艦隊の不穏な動きが確認されています」

 

バルフェルライチュ大将の幕僚の1人であるアルペート・ヘルターニッシュ少将は思い切ってモフビュレンケルに進言した。

 

バルフェルライチュ大将は「おい!」と静止するが当のモフがその話題に興味を持ってしまった。

 

「それは本当か?」

 

モフビュレンケルにとってキャッシークやボサウイ以上に警戒しているのがケッセルの帝国軍残存勢力だ。

 

彼ら、いや“()()()”の規模は侮れずまた統率も取れている。

 

未だ我々と接触もせずまた紛争を起こすような行為も全くしてこないがだからこそ危険だ。

 

銀河内戦で経験を積んだ将兵を未だ無傷のまま有し艦隊と軍隊を築いているのは間違いなくこの周辺で言えばケッセルのみだ。

 

防戦しても相当苦戦するだろう。

 

彼女らには資源もある、長期戦となれば厄介だ。

 

敵対せずとも警戒を怠らないのがケッセルとの向き合い方だった。

 

「インペリアル級で構成された機動部隊程度の戦力がいくつかランダ周辺で航行しているのをパトロール隊が観測しました」

 

「ランダ周辺……か。確かにかなり近いが向こうも恐らくいつもの牽制であろう。境界警備隊に警備強化を要請しろ、逆にこちらが兵力を回しては相手を刺激する事になる」

 

「ですがモフ…!」

 

「現段階でケッセルと軍事衝突をした場合、我々は少なくともこのスレイヘロンを放棄しズーデンハットのオロンディアまで後退せざるを得なくなる…」

 

相手のクラリッサ・ヤルバは裏社会の巨大犯罪シンジ・ゲートの一つ、パイク・シンジ・ゲートを手中に収めているとの噂もある。

 

強力な艦隊の侵攻とパイクによる裏社会からの攻撃を一手に受けたら戦線や兵站を維持出来る補償が現段階ではなかった。

 

それに弁務官区内の海賊らとも協力して意図的に兵站への攻撃、後方の撹乱などを行われる可能性がある。

 

今ケッセルとことを構えるのは是が非でも避けたかった。

 

「それにフューリナー上級大将からもケッセルには手を出すなと言われている。本国からの命令が来るまで我々は何もしないのが最善手だ」

 

「その通り、私と我が艦隊がいれば少なくとも連中をオバ・ダイアまで後退させられるだろうがまだ早い。東方でも西方でも南方でも北方でも事を起こされれば手一杯だ」

 

ドアが開き数名の将校と共に入ってきたフューリナー上級大将は自信有りげに会話に割り込んだ。

 

「上級大将殿…!」とモフビュレンケルは立ち上がり他の全将校が敬礼した。

 

フューリナー上級大将らも敬礼を返し「座れ、モフ」と立ち上がったモフビュレンケルを席に着かせた。

 

「ミンバンのでの収容率の確認とアウシュの収容所視察のついでに寄ったまでだ。“例の研究”の成果を見たら帰るつもりだ」

 

「そうでしたか。やはり“ピュリフィケーション”でお越しになられたのですか?」

 

「ああ、流石に全艦は無理なので僅かな共周りの艦と共にな。良い艦だ、やはりドレッドノートはいい。クローン戦争の頃シュメルケと共に乗っていたマンデイター・ラインのドレッドノートを思い出す」

 

思い出に耽るような素振りを見せながらフューリナー上級大将はそう呟いた。

 

モフビュレンケルも「そうですか」と頷いた。

 

ビュレンケル自身も一応クローン戦争を生き抜いているのだがあの頃はまだしがない下級役人だった。

 

「それとノルトハットとズーデンハットにそれぞれ一隻づつ宙域艦隊旗艦級のベラトール級ドレッドノートを配備する予定だ。シュメルケが提案し総統閣下が承認して下さった」

 

「本当ですか?」

 

「ああ、少なくとも三、四ヶ月は先だがな。大将、指揮は任せたぞ」

 

名を上げられたバルフェルライチュ大将は「はい!」と敬礼した。

 

「これで対ケッセルの準備は万全だな、少将」

 

途中まで話を少し聞いていたフューリナー上級大将はわざとらしくヘルターニッシュ少将に告げた。

 

ズーデンハット国家弁務官区は惑星ボサウイ周辺のレジスタンス軍への攻勢を強めておりこのノルトハット国家弁務官区は未だこれといった戦闘は行なっていない。

 

強いて言えば海賊退治などの治安維持活動のみだ。

 

少将はともかく大きな戦闘で手柄を立てないという将兵は大勢いるだろう。

 

こんな僻地まで来たのだからせめて軍功は上げて帰りたい。

 

だが今ケッセルに攻め込むのは流石にまずい。

 

「ならば今こそケッセルを攻撃すべきです。ケッセルを手にすれば大きな資源惑星を入手出来ます」

 

「少将…!」

 

「いいんだ、確かにケッセルを手にすれば燃料とスパイスが手に入る。どちらも軍を動かすのに重要な代物だ。だが敵の数は多く、衛も堅く、地の利も向こうのものだ。これでは勝てない」

 

コルサントから引き抜かれた者もあの地に根付いて早3年、4年が過ぎる頃だろう。

 

ケッセル内、宙域内の特色と惑星の位置などを読み取り防衛戦術にフィードバックされ防衛体制が確立するにはもう十分過ぎるほどの時が過ぎている。

 

それにあの地には元々の帝国軍の駐留部隊がおり更に精強な軍が控えていることになる。

 

数も十分な上に地の利も相手のもの、これでは勝てない。

 

そして何より勝てないのが敵の“()()()()”だ。

 

「彼女、クラリッサはもちろんのことだ。彼女と麾下の近衛兵は常軌を逸している。常道から全く外れた戦い方を行い、我々を翻弄し幻覚のような地獄を見せるだろう」

 

「上級大将が仰るクラリッサとは本当にそのような人物なのですか?」

 

彼女と面識が一切ないバルフェルライチュ大将はフューリナー上級大将に尋ねた。

 

所詮はケッセル王室ヤルバ家の御令嬢、これだけ聞けば人畜無害なむしろ評価とは真逆の人相を思い浮かべるだろう。

 

実際姿はそうだ。

 

彼女は麗しく絶世の美女と言っても過言ではなく、品行方正で慈愛に溢れたような見た目だ。

 

だが内面はそれと全く同じかと言われれば違う。

 

「ああ、そうだとも。彼女は人か化け物かで言ったら化け物のような人だ。一度だけ、まだ私が統合本部にいた頃に彼女と出会った。タイプではなかったがまるで絵に描いたような麗しの令嬢だった。だが彼女が纏っているオーラ、会話を交わす度に出てくる常軌を逸した内面。常人のような振る舞いを見せながら中身は全くの狂人だ。彼女には恐らく常識というものが通用しない。いや、常識を知っていてもあえて道を外すのだ。故に恐ろしく危険で脅威に値する我々の“()()()()となる」

 

フューリナー上級大将はバルフェルライチュ大将とヘルターニッシュ少将らを脅かすように話した。

 

フューリナー上級大将だって十分恐ろしく化け物みたいな人だ。

 

この親衛隊という魔の巣窟の設立者の1人であり暗部と特殊部隊を一手に引き受けている。

 

そんな上級大将がとにかく危険だと言うのだから余程なのだろう。

 

「もし仮に戦う時になったら気をつけろ大将、少将。こちらが『こうするだろう』、『ああするだろう』と言った予測は全て無駄になる。彼女は我々が一つの戦の為に積み上げてきた計画を全てスパイスで溶かし文字通りの大博打に無理やり引き摺り込むような相手だ。十分に気をつけろよ」

 

「はっはあ……」

 

「そんな人物がケッセル王室にいたとは…彼女が女王にでもなったらいよいよ大変ですね」

 

バルフェルライチュ大将はそう引き攣った笑みと共に呟いた。

 

クラリッサもこのような戦乱の時代に生まれなければもう少しただの美しい令嬢で終わっていただろう。

 

まあ彼女の手腕によってケッセルがかなり豊かになりケッセル本星が“()()()()()()()()”と呼ばれる程度はやるだろうが。

 

「女王?彼女はケッセル一つの女王で収まる器じゃあない。もっと広大な範囲の指導者となるよ、我々が敗れなければの話だがな」

 

この国家弁務官区は“()()()”となるだけでなく第三帝国の“()”となってもらわなければ困る。

 

そしてついでに“()()()()”も成功してもらわなければ。

 

新生ハット・スペースに期待する事は山ほどあった。

 

 

 

 

 

-惑星ケッセル軌道上 ベラトール級ドレッドノート“キング・ケッセル”-

この艦も随分と賑やかになったものだ。

 

ケッセル軍の乗組員が大勢搭乗している“キング・ケッセル”はケッセル艦隊の旗艦として、ドレッドノートとしての力を最大限に発揮していた。

 

今の“キング・ケッセル”の艦内ではあちこちから将兵の雑談が聞こえてくる。

 

やれ「牽制の機動部隊はうまく行ったか」とか「ハット・スペースの動きはどうだ」とか殆ど業務上の話ばかりだったが。

 

そんな中を1人の宇宙軍の制服を着た将校が艦内の通路を歩く。

 

階級は中尉で左右両方のポケットに一本ずつ、計二本のコードシリンダーを差している。

 

彼は真っ直ぐブリッジの方を目指していた。

 

すると通路の脇から別の将校が彼と肩を並べて歩いていく。

 

こっちは大尉の階級章でありコードシリンダーは三本持っていた。

 

大尉は表情を一切変えず中尉に告げる。

 

「詳細な情報が手に入った。ケッセルの燃料資源輸送記録、これは超重要だ」

 

「こちらもこのドレッドノートの情報を今からブリッジ経由で送るつもりだ。とんでもない事になる……」

 

「スパイとして数週間も前からここに潜入してるがまさかここまで得るものが多いとは……」

 

2人は帝国情報部から送り込まれたスパイである。

 

ケッセルの内情を探る為、また燃料資源がどこかへ輸出されていないかの調査の為に数週間も前からここに潜入していた。

 

そしていくつかの成果を短期間で手に入れた。

 

一つはこのベラトール級ドレッドノートの存在だ。

 

第三帝国はケッセルの残存勢力について5,000メートル以上のドレッドノート艦は保有していないだろうと断定していた。

 

だが実際には旗艦としてベラトール級ドレッドノートを配備ししかも多くの地上兵器や武器弾薬、TIEシリーズらと共にあのクワット・ドライブ・ヤード社から秘密裏に提供されていたのだ。

 

これは第三帝国とクワット・ドライブ・ヤード社含めたクワット全体の関係を大きく変えかねない。

 

何せ仮想敵国に対して密かにドレッドノートを売り渡していたのだ。

 

今後何らかの戦闘になった際に帝国軍を支えるクワットの信用が危ぶまれる。

 

そしてもう一つの燃料資源の輸出も大きな成果を手にした。

 

ケッセルは自勢力で資源を貯めているだけでなく他の組織にも提供していた。

 

一つはあのファースト・オーダーだ。

 

ファースト・オーダーに燃料を特別な輸送経由で送っていた。

 

これもまた第三帝国とファースト・オーダーの関係を大きく変える可能性がある。

 

また別の組織はつい先日、親衛隊の大部隊が陥落させたアンシオンの帝国残存勢力だった。

 

彼らにも燃料を販売していたデータが残っている。

 

第三帝国の敵対者に協力していた、これはケッセルへの侵攻を行うかもしれない重大な情報だった。

 

絶対に伝えなければ大きな問題になる。

 

そんな情報を持って2人は“キング・ケッセル”のブリッジに入った。

 

ブリッジには数十人の上級将校に加え艦やブリッジの機能を維持する士官達が大勢入っていた。

 

スタンダードな帝国軍の慣れ親しんだブリッジ、しかしこの情報を持ったまま入るとまた違った感触がある。

 

「交代の時間だ、変わってくれ」

 

「ああ、了解」

 

コンソールとモニターの前に座っていた士官を退かせ中尉を偽造したスパイが席に着く。

 

大尉の方は中尉の教育官のふりをしながらデータの入ったチップを手渡した。

 

二つのチップをディスクに挿入し情報の送信の準備を始めた。

 

「どこに送る?やはりハットの国家弁務官区か?」

 

「ああ、この近くの帝国領はそれしかない。急ぐぞ」

 

コンソールをタップし情報の送信先を偽装を繰り返しながら行う。

 

周りの士官や下士官兵にバレたら絶対に終わりだ。

 

緊張が2人を包み胃を締め上げた。

 

するとブリッジに数人の将校が入ってきたらしく手の空いている上級将校や士官たちが敬礼した。

 

「お嬢様、ヒルデンロード。どうされましたか?」

 

ペリオル大佐は2人に軽く尋ねた。

 

後者の苗字を聞いた中尉は「ヒルデンロード…?」とその名を口ずさんだ。

 

第三帝国の臣民であれば誰であろうと聞いたことがあり見たことがある人物の苗字だ。

 

「気にするな……どうせ同じ名前なだけだ……こんな所にヒルデンロード元帥の親族がいるわけがない……」

 

2人は軍帽を深く被り直しながらデータの転送を急いだ。

 

「実は私の使っていた髪飾りがどこかへ行ってしまいまして…」

 

「はあ……この艦にはないと思うんですが…」

 

ペリオル大佐は辺りをキョロキョロ見つめながら困惑した。

 

その間にも2人はデータの転送準備を進めている。

 

側から見れば職務に熱心な将校2名、特段と怪しまれる姿ではなかった。

 

「とっても大切な髪飾りなんですの……そう」

 

彼女が放った一言がなければの話だが。

 

「とおっても大切な“()()()()()()()”髪飾り…」

 

2人の心拍数はこの時大きく跳ね上がりすうっと血の気が引いていくような感触に包まれた。

 

それから1秒も経たないうちに2人が占拠するモニターからブリッジ全体に聞こえるほどの警報が聞こえた。

 

「なっ!?」

 

警報と共に周りの士官や下士官兵が一斉にホルスターのブラスター・ピストルを引き抜き2人に向けた。

 

ブリッジの奥からストームトルーパーと保安局員も現れ両手を上げる2人を取り押さえクラリッサ達の前に引き摺り出した。

 

彼らが座っていたモニターには情報処理担当の保安局員が座りロックされたモニターを専用のコードシリンダーを使って解除し転送状況を確認した。

 

「転送先はハット・スペースの帝国領域のようです。内容はこれより確認します」

 

保安局員の説明にスパイの2人は顔を硬らせ歯を噛み締めた。

 

ガッチリ腕と頭と足を抑えられている為どんなに頑張っても抵抗のしようがない。

 

「お下がりを」

 

ペリオル大佐や他の将校たちがクラリッサを守るように前に出たが彼らを押し退けスパイ2人の前に出た。

 

そしていつも通りの天使のような笑みを浮かべ2人に話しかける。

 

「ようこそ、ケッセルへ。いえ、違いますわね。いかがでしたかケッセルは?」

 

言葉遣いも口調もそのままなのだがどこか冷たさを含んでいた。

 

天使か悪魔か、スパイの2人にとっては感じることは後者だった。

 

勇気を振り絞って大尉の方が口を開く。

 

「……最悪だよ…!この星も領域も狂ってる…!」

 

「そうでしたか……それは残念でしたわ。でもすぐに“()()()()()()()”!」

 

「どういう…」

 

彼女の言葉を聞いた途端ペリオル大佐らは皆目を背けた。

 

ある者は祈りのようなものも唱え始める始末だ。

 

中尉の方はどうやらクラリッサがやることに気づいたようだ。

 

「…我々は拷問や尋問にも屈したりしないぞ…!」

 

どこまで耐えられるかは分からないが祖国の為耐え続けなければならない。

 

しかしクラリッサは笑みを絶やさずそれを否定した。

 

「いいえ、違いますわよ。ちょっと“()()()()()()()()()()()()”をお召し上がりになってもらうだけですわ」

 

「なっ!そんな非人道な真似!許されると思ってるのか!?」

 

大尉がそう大声を上げて抜け出そうとするがトルーパー達に強く押さえつけられており動けなかった。

 

「非人道だなんてひどいですわ。それを仰ったらあなた方の“()()()”とやらの方がよっぽど非人道ではなくて?」

 

「なっなんのことだ!?」

 

「知らないのですか?まあいいですわ。連れて行ってくださいまし」

 

ストームトルーパーと保安局員らは頷き2人を持ち上げ拘束しながら“キング・ケッセル”の監房室へと連れて行った。

 

2人は最後まで「やめろ!離せ!」と大声を上げ手足を動かして逃げようと抵抗していたがもはやそれは不可能だった。

 

2人が連れられどうなってしまうのかはこの場にいる全員が知っている。

 

「あの2人は収容所のことを知らないと言っていたが…」

 

幕僚の1人であるジャインス中佐はそう呟いた。

 

だがすぐペリオル大佐に「情報部は宇宙軍以外全てハイドレーヒの手下だ。知らない訳がない」と否定した。

 

今やハイドレーヒという冷酷な見事なまでの野獣の管轄外にいるのはカーレリス提督の宇宙軍情報部のみとなる。

 

しかしカーレリス提督とハイドレーヒ大将は関係が良い為彼の毒素が少し移っている可能性もあった。

 

「とにかく、情報漏洩が防げたことを良しとしましょう」

 

「そうだな…防げなかったら今頃大惨事だ。“()()()殿()”の、お陰であるな」

 

ペリオル大佐はそう“()”のことを評価したまでだ。

 

評価を受けた男はゆっくりと重々しく部下と共にブリッジに上がってくる。

 

身体の75%が機械で構成されるサイボーグの彼は一瞬その姿を見れば不気味に思えるかもしれない。

 

だが憐れみと親切の心を取り戻した彼は外見に見合わずとても心優しく暖かみのある人物となっていた。

 

心と体の傷も長い時間をかけて癒されることだろう。

 

「こんなに早くスパイの存在に気づけたのは貴方のおかげですわ、“テシック大提督”」

 

数多くいる大提督のうちの1人、サイボーグの大提督にしてこのケッセルの客将、オスヴァルド・テシック

 

銀河系の多くの軍人や彼の元同僚達は彼が生きているということをまだ知らない。

 

新共和国、今のレジスタンスも第三帝国もファースト・オーダーもチス・アセンダンシーも亡命帝国も誰も生存を知らない。

 

彼は死んでいると思われている。

 

それもエンドアの戦いで。

 

4年も前から死亡扱いとなっているテシック大提督だがそれは間違いであった。

 

崩壊する第二デス・スターである作業員に助けられたテシック大提督はその作業員を当時中将のスローネ大提督の艦に向かわせて助けた。

 

今でもテシック大提督を助けた作業員はファースト・オーダーの一員として戦っているのだがその事をテシック大提督は知らない。

 

彼はその後自らの旗艦“エリーモシナリー”に向かい反乱同盟艦隊と対決するつもりだった。

 

状況的に圧倒的劣勢なのは重々承知だ。

 

むしろそれで構わない、いつだって大提督の戦場は劣勢の中だった。

 

自らの身体がこうなった時だってそうだ。

 

死ぬる覚悟でテシック大提督は反乱同盟軍と対決しようとした。

 

だからこそ自分を助けてくれた命の恩人はスローネ大提督の方に乗せたのだが。

 

しかし“()()”はそれを許さなかった。

 

彼の“エリーモシナリー”は突如ハイパードライブが異常行動を起こし何隻かの僚艦と共にエンドアから強制的にハイパースペース・ジャンプに巻き込まれた。

 

その為エンドアでは残存艦隊が抵抗していたがその中にテシック大提督の姿は含まれていなかった。

 

彼がいたら彼の命と引き換えにもう少し残存艦隊は粘っていただろう。

 

エリーモシナリー”のハイパードライブは航路が定まっていない為何処へ行くかも知らず多くの乗組員は戦わずにこのまま死ぬのだと悲観していた。

 

このまま訳も分からない場所に飛ばされて死ぬ、或いは超新星か何かに巻き込まれて死ぬ、全員がそう思っていた時に奇跡は起きた。

 

飛ばされたテシック艦隊は突如ジャンプアウトしある場所に流れ着いた。

 

そう、この“()()()()”だ。

 

どういう航路を辿りどういう経緯でここまで辿り着いたのかは分からない。

 

後でクラリッサ達から話を聞くと既にエンドアの戦いからはもう1年が経過しており帝国軍はジャクーの戦いで敗北、片割れが辛うじてカイゼルシュラハト作戦を成功させ“()()()()”を築き上げたらしい。

 

明らかに燃料が足りないのにも関わらずテシック大提督達は1年もハイパースペースの中を彷徨っていたのだ。

 

しかも乗組員やテシック大提督の体感で言えばハイパースペースの中を航行している時は1年も経った覚えがない。

 

長くても数ヶ月、数週間程度だったはずだ。

 

1年もずっと航行していたのは明らかにおかしかった。

 

様々な謎を孕みながらテシック大提督はこう思った。

 

()()()()()()()()()”と。

 

あのエンドアで戦い死んでいたはずだ。

 

自らも軍将となって無益に争い死んでいたはずだ。

 

ジャクーの戦いで“ラヴェジャー”と並んで共に戦い華々しく死んでいたはずだ。

 

カイゼルシュラハト作戦で帝国の未来に希望を寄せながら死んでいたはずだ。

 

全ての戦場と死に場所を見失った。

 

もうコア・ワールドでは銀河協定が結ばれ戦争は終わった。

 

今更戦おうともしても無駄である。

 

他の大提督達はどうなっただろうか。

 

サヴィットは数年も前に捕まりスローンは何処かへ消えた。

 

デクランはエンドアで死んだし他の連中も軍将として戦って死んだかラックス辺りに暗殺されたのだろう。

 

そして私は、生き残ったらしい。

 

死に損なったとも言えようが。

 

こんな見た目になったのにも関わらず今も生きている。

 

何故なのだ。

 

私は昔ヴィジョンを見た。

 

あの死と生の界で未来の出来事を見たはずだ。

 

戦いは続いていた、戦いは終わらなかった。

 

私もその中で死ぬと思っていた。

 

しかし違った。

 

死に損なった。

 

だが彼女は、クラリッサは私に向かってこう言った。

 

我々はまだ諦めていない、やがて帝国を再建し新共和国を打倒出来る”と。

 

そして彼女は私を客将として迎え入れた。

 

彼女はなんでも迎え入れてしまう。

 

あのマルス・ヒルデンロードだってそうだ。

 

全てを取り入れ本当に戦いを続けるつもりだ。

 

彼女の姿を見ていると失った何かを思い出す。

 

そうだ、ヴィジョンはまだ完成していない。

 

この銀河はまだまだ戦乱に満ちている。

 

我々にはまだまだ道が残されている、死に場所も祖国も、何もかもが残されている。

 

帝国との戦いの終わりには程遠い。

 

私にも今生きている理由がまだあるはずだ。

 

「第三帝国の限界は近い。君のヴィジョンが成される日も近いだろう。それで、捕らえた2人はどうするつもりだ?」

 

「全て御二人に話した通りですわ」

 

「あまりいじめてやるな。彼らは恐らく本当に知らない。所詮は使い捨ての末端の連中だ」

 

テシック大提督は他の将校達も宥めるようにそう呟いた。

 

許してやれ、でなければ恐らく他の誰もが彼らを許さないだろうから。

 

「しかし大提督殿、お嬢様。スパイからの連絡がなくなれば連中我々への警戒と圧力を一層強めるのでは?」

 

ジャインス中佐は二人に尋ねた。

 

「そうだろうが全面戦争にはならないだろう。今の連中はレジスタンスの討伐と西方の未知領域との関係整理に夢中になっている。ハットを駆逐してこの東方では満足だ」

 

「最も近いハット領域だけ見ても元いた犯罪者と海賊の征伐に忙しくてこちらに兵力を向ける余力はありませんわ。そして南方にはボサウイ、到底私達を攻撃する余裕なんてはなからありませんのよ、彼ら」

 

「大義名分もない、余裕もない、そもそも本国は眼中にない、別の敵がすぐ近くにいる。これだけ揃っていれば名目上中立の仮想敵への侵攻など足枷だらけで出来たものではない」

 

「なるほど…」

 

制約だらけの中で仮に侵攻してきたとしても敵ではない。

 

内側まで入れるどころか門前で簡単に防げる。

 

それにどうもハット・スペースの様子を見るに領域の指導者達はかなり本国の命令に従順だ。

 

あの代理総統というちょび髭のカリスマなのか単純に元から忠誠心が高いのか。

 

どちらにせよ連中が勝手に戦闘を起こす可能性も低い。

 

我々にとっては好都合だ。

 

「…あの2人、“()()()()()()()”の名を聞いて随分驚いていたな」

 

ずっと顔を落とし続けるマルスに対してテシック大提督はそう呟いた。

 

マルスは顔を上げ「ええ…」と弱々しく呟いた。

 

「彼らにとってはきっと、“()()()()()()()()()”はまだ英雄のままですから」

 

「所詮末端のスパイで、2年前の出来事に関係はないだろうからな。だがそれでもやるせない、そうなんだろう」

 

マルスは小さく頷いた。

 

彼の拳はずっと握り締められておりまるで怒りを抑えているようだ。

 

当たり前だ、何せ彼の父親は“()()()()()()()()()()()()()”。

 

テシック大提督も一度だけ彼の父であるモフ、パウルス・ヒルデンロード元帥に会ったことがある。

 

ベアルーリン宙域のモフを務め、癖の強い多くの部下を纏めていた。

 

父親としても良い人物だったのだろう。

 

「許してやれとは言わない。むしろ仇は取るべきだ。その機会も必ずやってくる」

 

「本当にそうでしょうか……このまま第三帝国の勝利に終わりそうですが」

 

「それは違うさ、私は“()()()()()()()()”。だからこそ言える、我々は」

 

第三帝国と必ず対決するだろう”。

 

 

 

 

 

 

-チス・アセンダンシー領 未知領域 惑星キャルヒーコル-

キャルヒーコルでは地上に墜落したインペリアル級の引き上げが始まっており、チス・アセンダンシーの軍艦や帝国軍の軍艦がトラクター・ビームを使ってインペリアル級を引き上げていた。

 

地上基地では戦場の後処理を行っていた。

 

情報を持った連絡将校が司令室に入り後の事を協議するプライド中将らに敬礼する。

 

「捕虜の輸送、最終便が発進しました」

 

「そうか、シーラの客人らには悟られていないな?」

 

「はい、問題ありません。このままキノス、オヨカルに移送する予定ですが」

 

「それでいい。報告ご苦労」

 

再び敬礼し連絡将校は司令室を後にした。

 

「旗艦の陥落が決定打となり、かなり多くの捕虜を手に入れられた」

 

「ああ、敵将が戦死したのは残念だがお陰で勝利を早めることが出来た。これは素晴らしい戦果だ」

 

ロコソフスキー少将の分析にプライド中将はそう付け加えた。

 

「それに情報部なら敵艦内の記録を復元し解析出来るでしょう」

 

「ええ、他の生き残った上級将校にも話を聞いてみるつもりです」

 

チス・アセンダンシー軍のジャミルハギスワン准将は悲観することないよう意見を述べた。

 

グリス准将もそう付け加えた。

 

大きな可能性は失ったがまだ手がかりは沢山ある。

 

今後の安全保障の為にも今回の襲撃者達の分析は最重要課題と認識されていた。

 

既にシャポシニコフ元帥らにも今回の報告書は転送済みであり追って指示が出るだろう。

 

「鹵獲装備の数と運搬状況はどうだ?」

 

「陸上兵器はともかく、スターファイターと艦隊の方はかなり大量だ。特にインペリアル級七隻を一気に入手出来たのは大きい」

 

ヴァシレフスキー少将は微笑を浮かべ鹵獲品の数を高評したが「ただ…」と一つ付け加えた。

 

「間も無く第三帝国の視察団が帰還するらしい。そうなるとこれだけの装備をハイパースペースで輸送するのは隠密性の観点から難しくなる。暫くはキャルヒーコルに置いておく他ないと思う」

 

「だがこの基地も無理だし損傷具合から見ても軌道上に放置しておくのは無理だ」

 

ロコソフスキー少将の言う通り七隻のインペリアル級は地上に墜落した影響で少なからず船体の下船部が全艦多かれ少なかれ損傷している。

 

旗艦“アドミラル・キリアン”も乗船部隊がなんとか不時着を成功させたのだが損傷は免れなかった。

 

このまま宇宙空間に野ざらしにしておくのは更に船体が傷つくしかと言ってキャルヒーコルの地上基地にはインペリアル級七隻を停泊させる余裕はない。

 

「…ヤシュブーの近くに衛星を改造した軍港があったはずだ。あそこならインペリアル級も受け入れられるだろう」

 

「確かに主要ハイパースペース・ルートを通らずに済むが時間はかなり掛かるぞ?」

 

「それでも構わん。あの小艦隊は今すぐに運用したい代物じゃない。ひとまずドックにさえ置ければいい」

 

「分かった。輸送隊には衛星軍港に運搬するよう命令を出しておく」

 

ヴァシレフスキー少将は伝達する命令を確認する。

 

「そして我々防衛の最前線部隊が警戒すべきことであるが…」

 

前置きを含めてプライド中将は議題を諸将らに提示する。

 

「襲撃者撃退による“()()()”の存在、つまり我々が撃退したのと同じような部隊がまた来る可能性だ。今の所我々そのような存在の報告は受けていないが」

 

プライド中将が連れてきた星系艦隊は現在レイダー級やアークワイテンズ級などの小型艦がパトロール隊を編成して周辺を哨戒している。

 

今の所目立った緊急の報告は受けていないがもしかすると次の敵がすぐにやってくるかもしれない。

 

そのような可能性は拭い切れなかった。

 

「小艦隊クラスに加えて二、三個兵団クラスの地上戦力を撃滅したのですから流石にこれ以上の戦力は送り込んでこないと思いますが…」

 

グリス准将は相手の戦力から予測を出したがロコソフスキー少将はまた別の予測を出した。

 

「いや、むしろ“()()()()()”の可能性も捨て切れない。二、三倍の敵が攻め寄せてくる可能性もあるしそうなれば作戦を変える必要がある」

 

「しかしそれほどの大部隊一体どこから送り込まれてくるんだ?第三帝国も今はアセンダンシーの領内に視察団を送っている。彼らの事もあるから下手に手は出してこないと思うが」

 

ヴァシレフスキー少将の言い分にも一理ある。

 

今現在、帝国軍の編成上の小艦隊を二、三個纏めて送り込める勢力は限られていた。

 

一つは第三銀河帝国、一つは大セスウェナ、一つはファースト・オーダー、そして一つはこのチス・アセンダンシーの亡命帝国だ。

 

大セスウェナは侵攻してきた距離的に合わないしファースト・オーダーがそのようなことをするとは思えない。

 

となると残りは第三帝国しかなくなるのだが彼らもヴァシレフスキー少将の言う通り今は視察団をチス・アセンダンシーの中枢たる首都シーラに送っている。

 

しかも視察の中には国防軍の最上級将校たるヴィアーズ大将軍、オイカン大提督、ローリング大将軍がいるのだ。

 

国民的英雄であり名称として知られた国防軍の中枢を危険に晒すとは思えない。

 

「やはり結局のところはこの襲撃者を送ってきたのは誰かという問題に帰結するわけか…」

 

そう、この小艦隊を送ってきた黒幕を突き止めなければ新たな襲撃者を送ってくるのか、それとも送ってくるのが不可能な規模の勢力なのか分からない。

 

相手の謎を暴かない限りはさらなる対策が不可能であった。

 

「プライド、お前はどう見る?」

 

ロコソフスキー少将はプライド中将に尋ねた。

 

「私もグリス同様、大規模な第二の襲撃はないと見ている。どの陣営もこれ以上の攻撃は不可能だ」

 

「なるほど」

 

「しかし連中が作戦を変え大規模な部隊侵攻ではなく小競り合い程度の紛争に移行するかもしれない。だから現状の警戒体制を維持し状況を見極める必要がある」

 

敵の予測が読めない以上警戒を続けざるを得ない。

 

「我々はもう暫く、ここに留まることになりそうだ」

 

 

 

 

 

 

 

「敵が来たぞ!撃て!」

 

「もうここまで来たのか!クソッ!」

 

保安隊員達がブラスター・ライフルを持って応戦するが直後、放たれた光弾に倒れ一撃で絶命した。

 

彼らの屍の上を息の荒いジェルマンとジョーレンは進み更にブラスター弾の嵐を撒き散らした。

 

ここまで来るのに相当の苦労があった。

 

何度も罠が待ち受け、どこからともなく保安隊員の伏兵が現れ、分隊が通路を塞ぎ2人を苦しめた。

 

このプロカーセイター級はインペリアル級よりも確かに小型のスター・デストロイヤーだ。

 

しかし乗船している兵士達の展開力と動きにより並みの帝国軍の艦よりも突破が容易ならざるものに変化していた。

 

ここに来るまでに特にジェルマンは今まで体験したことのない疲労に苛まれた。

 

倒しても倒しても敵兵の突然の奇襲は降り止まず心的にも肉体的にも2人を苦しめる。

 

それでもここまで無理やり突破してきたのは単に2人の練度が彼らを上回っているからだろう。

 

確実に襲撃を潜り抜け敵兵の息の根を止める。

 

集団の敵には2人の連携からなる銃撃と投擲で蹴散らされ爆煙の中を彼らは進んだ。

 

クワットからこのナブーに至るまで、共に戦い積み重ねてきた戦場での連携と経験が彼らを守りプロカーセイター級の監房ブロックまで辿り着いたのだ。

 

だがそろそろ限界が来ていた。

 

後一歩のところで重火器を所持した保安隊員の分隊に足止めされ2人は一旦物陰に隠れた。

 

体力を少し回復し息を整えて再び攻撃を続けるつもりだった。

 

2()()()()()()()()()()()()()()”の話だが。

 

突如彼らを遮ろうと監房ブロックのブラスト・ドアが閉鎖し始めた。

 

「ジェルマン!」

 

急いで向こう側に渡ろうとしたが一歩遅くドアは完全に塞がれてしまった。

 

「なっ!?」

 

「今だ!一気に押し潰せ!」

 

ブラスト・ドアにより1人隔離されてしまったジェルマンに分隊の保安隊員達が一斉射撃を浴びせる。

 

身を隠しながら応戦するが圧倒的な数の差がありまともな戦いにはならなかった。

 

ブラスター弾がアーマーを掠めジェルマンは危うく被弾しかける。

 

「チッ!確固撃破するつもりか!」

 

ホルスターのブラスター・ピストルを引き抜き二丁銃の体勢で敵を撃ちようやく1人撃ち殺すがそれでも全然数が減らなかった。

 

しかも最悪なことがジェルマンの身に降りかかる。

 

「背後を取ったぞ!撃て!」

 

応戦するジェルマンの背後から保安隊員が現れ他の隊員と同じようにジェルマンに狙いを定めて引き金を引いた。

 

緑色の光弾を寸前で避けたジェルマンはすぐに反撃し1人の保安隊員を撃ち殺す。

 

だが隊員が倒れる瞬間もう1人の保安隊員が大声を上げ捨て身の突進を仕掛けた。

 

「うおおおおおお!!」

 

「なんだと!?」

 

勢いと急襲に押されて受身が取れなかったジェルマンはそのまま監房ブロックの床に押し倒された。

 

反撃しようとするが保安隊員は素早くジェルマンの腕を組み伏せそのまま体重を掛けて彼を地面に押し付けた。

 

我が身がどうなろうと敵兵を抑えるという捨て身に意表を突かれてしまった。

 

味方の保安隊員達もブラスター・ライフルを構えながら急いで近づいてくる。

 

この状況では味方の隊員にも誤射しかねない。

 

近距離から確実に致命傷を負わせるのが常套手段だ。

 

「よくやった!今すぐそいつの頭をぶち抜いてやる!」

 

分隊の分隊長は威勢の良い声で仲間の行動を褒め称えジェルマンの頭にブラスター・ライフルの銃口を突きつけようと走る。

 

しかしその数秒の時間が仇となった。

 

「捨て身の捕縛術か…!ならこっちも…!」

 

「なに!?全員離れろ!!」

 

ジェルマンを抑えていた保安隊員は大声で味方に警告した。

 

だがもう遅い。

 

バッグの秘密のポケットからインパクト・グレネードを取り出したジェルマンはスローボールを投げるように保安隊員達の集団へ投擲した。

 

隊員の警告虚しく突然の事により保安隊員達は誰も受け身を取っていない。

 

インパクト・グレネードは一番先頭を走る分隊長に当たった。

 

分隊長の「えっ」っという拍子の抜けた声と共にインパクト・グレネードは衝撃を受け起爆した。

 

サーマル・デトネーターより爆発範囲が狭いと言ってもこれほどの近距離なら誰も無事では済まない。

 

事実爆発により分隊全員が吹き飛ばされた。

 

破片が爆風に乗せて飛び散り更なるダメージを与える。

 

「ぐあああッ!!」

 

誰かの苦痛に満ちた叫び声が狭い監房ブロックに木霊する。

 

ジェルマンを抑えていた保安隊員の声だ。

 

「…いってーっ……全く酷いもんだ…」

 

ジェルマンは苦痛を上げて疼くまる保安隊員を退けて腕を押さえながら立ち上がった。

 

起爆する瞬間、分隊に警告した隊員の隙をついて形成逆転しその保安隊員を盾代わりにして爆発と爆風の破片を防いだのだ。

 

とはいえ不完全な防御であった為腕に少しばかり傷を負った。

 

傷口から血が垂れ流されている為ジェルマンはバクタを染み込ませたガーゼを傷口に当て、布で縛り応急処置を施した。

 

辺りを見てみれば殆どの敵兵が倒れ蹲り呻き声を上げている。

 

幸いにもブラスター・ライフルとブラスター・ピストルの損傷はなくまだ戦闘で十分使える状態だった。

 

ブラスター・ライフルを持って立ち上がろうとする保安隊員を冷たく撃ち殺しブラスト・ドアに近づく。

 

「この艦のプログラムは恐らくまだ通常の帝国軍の仕様となんら変わらないだろう。となれば解析して作ったこれを使えば…」

 

ジェルマンはバッグから帝国軍の士官などがよく使っているコードシリンダーを取り出しブラスト・ドア近くの端末ソケットに差し込む。

 

端末ソケットの表面が何回か動き最終的に電子音を鳴らしてブラスト・ドアの開錠を告げた。

 

「よし!」

 

ゆっくりとブラスター弾も弾くブラスト・ドアが開き閉ざされた向こう側の姿を映し出す。

 

通路には多くの保安隊員達が倒れておりその中で1人、息の荒いジョーレンがブラスター・ライフルを下げ立っていた。

 

先程のジェルマンと同じく手から血を垂れ流し身体中にかすり傷があった。

 

「ジョーレン!」

 

すぐにジョーレンの下へ駆け寄り倒れそうな彼を支える。

 

「かなりの敵兵を始末してやった…これでしばらくは敵は来ないだろう…」

 

「手当しないと…」

 

「それよりも、だ。早く女王達を救出する。監房ブロックのコンソールさえあれば良いんだろう?」

 

「あっああ」

 

ジェルマンは相槌を打ちながら簡易端末を取り出した。

 

「早く行け」

 

ジョーレンにそう諭されジェルマンは急いでコンソールの近くに向かった。

 

さっきと同じくソケットにコードを差し込み、事前に作ったプログラムを転送し監房ブロックのシステムをハッキングする。

 

コードの転送が終了し一斉に監房のドアが開く。

 

今まで聞こえていなかった監房の中の声も聴こえるようになった。

 

突然の出来事に動揺している囚人達を1人ずつ確認しジェルマンとジョーレンはようやく目当ての人物を見つけた。

 

「あなた方は…誰ですか?」

 

彼女は顔を出したジェルマンとジョーレンに向かってそう尋ねた。

 

一眼で目的の人物だということが分かった。

 

キリッとした何者にも屈しないその瞳が間違いなく救出対象だということを教えていた。

 

ジェルマンは代表して彼女に名前を告げる。

 

「我々はレジスタンス。新共和国再建の為の抵抗組織でありナブー王室解放軍の同志達の為にあなたを解放しに来ました。“()()()()()()()()”」

 

囚われのナブーの君主、ソーシャ・ソルーナ女王は2人の手を取りクーデター軍の檻から脱した。

 

 

 

 

 

 

 

「敵救出チーム、監房ブロックを制圧。女王含め全要人を解放しました」

 

士官の報告により幕僚達から動揺の声が湧いた。

 

相手は所詮、たった2人の兵士なのだ。

 

それに対してこちらは数千人近くの保安隊員に加え、何重もの罠を仕掛け、帝国軍から提供されたセキュリティ・ドロイドまで使っている。

 

作戦としては完璧なはずなのにここまで突破されてしまった。

 

動揺するなという方が難しいだろう。

 

「ちゅっ宙将!連中は女王を解放してしまいました!このままでは…!」

 

艦長は顔を真っ青にしながらクリース宙将に判断を仰いだがすぐに「狼狽えるな」と一蹴されてしまった。

 

「連中があそこまでやるとは我々も予想外だ」

 

「もしかすると、彼らが以前ハイドレーヒ大将殿から報告にあったイセノで通信ステーションを占拠した実行部隊の一部なのでは?」

 

グリアフ一佐はそう予測を立てた。

 

確かにモニターに映る彼らの装備は新共和国軍、現在のレジスタンス軍の再精鋭部隊の装備と殆ど合致している。

 

A280-CFEもA300も反乱同盟時代から同盟軍の特殊部隊が使用していたブラスターだ。

 

「もし相手が例の実行部隊の一部ならば、現状の我が軍団では勝ち目がありません。数的優位も無に帰すでしょう」

 

「だとしても連中は今や我が身を気にせず突撃出来る状態ではない。女王らを救出した事によりその十数人を全員守る義務が生じる。これでは連中2人が幾ら強かろうと全力を発揮出来ない。そこを一気に叩くのだ」

 

「しかし宙将、それでは女王陛下らにも危険が…!」

 

艦長は危険を提示した。

 

だが冷酷な目を向けクリース宙将はそんな事なんとも思わない様相で言葉を返した。

 

「連中にとって我々はクーデター軍だぞ?生易しい配慮をした所で無駄だ。そして我々にとって“()()()()()()”を理解しない女王などもはや“不必要”だ。既に政府機能を維持出来るメンツは揃っている。旧時代の、愚かな平和主義を掲げてナブーの栄光に泥を浴びせ忘却の彼方へ落とそうとする者どもなど、不要である」

 

艦長はそのまま黙ってしまった。

 

他の、以前からクリース宙将についてきた幕僚達は特に何も思わなかったようだが。

 

間を置いてクリース宙将は命令を下す。

 

「予備隊を動員せよ。セキュリティ・ドロイドも何もかも全部だ。この君主“ヴェルーナ”の名を持つ艦が彼らの墓標となるだろう」

 

「了解」

 

幕僚達は予備隊に指令を出し始める。

 

「精鋭と“()()()”で高水準だった者達を予備に回したのはそう言う事だったのですね」とグリアフ一左は耳打ちするように告げた。

 

「ああ、自らの手で君主を撃ち殺してもそれは祖国にとって正しい事だと理解出来る者でなければダメだ。我々にとってこれからが“本番”となる」

 

邪悪な笑みを浮かべモニターに目を向ける。

 

これから打ち倒される者達の姿を拝む為に。

 

2人の兵士に守られ囚人達がゾロゾロと牢の中から出てきた。

 

「取れるだけの武器を取れ。我々も女王を守るぞ」

 

王室保安軍の元キャプテン、コォロは斃れた保安隊員から軍帽やアーマー、ブラスター・ピストルを取りながら他の将校達にも武器を取るよう告げた。

 

文民の囚人はともかくここにはかなり多くのクーデターに参加しなかった保安将校が収監されていた。

 

キャプテンコォロに加え、以前の王室海軍の作戦部長や儀仗兵、近衛兵の将校達も大勢いた。

 

そしてその中に1人、かの侵攻でもN-1スターファイターに乗り込みナブーの為に戦った歴戦の猛者がいた。

 

「あなたは…もしかしてブラボーリーダーの“()()()()()()()()”……ですか?」

 

ジェルマンはブラスターを拾い立ち上がろうとする1人の男にそう尋ねた。

 

男は振り返り大きく頷いた。

 

「ああ、そうだとも。私が元ブラボーリーダーのリック・オーリー一等空将だ」

 

男の姿は確かにジェルマンが情報部の授業で写真として映し出されたナブーのスターファイターパイロットの姿そのものだった。

 

ナブー宇宙戦闘機隊の精鋭部隊、ブラボー小隊。

 

このオーリー空将はブラボー小隊と戦闘機隊の隊長であり故クァーシュ・パナカと同じくナブー侵攻当時の王室保安軍の指揮官だった。

 

彼は救出に来たジェダイと共に国外に脱出し共和国の支援が望めないとなると当時の君主であるパドメ・アミダラ女王と共にナブーへ帰還した。

 

グンガンの支援を取り付けたアミダラ女王は少数精鋭の保安軍を率いてシード宮殿に突入しオーリー空将らは宮殿格納庫のスターファイターを奪還し軌道上の通商連合艦隊に急襲を仕掛けた。

 

オーリー空将や精鋭部隊の働きもあり彼らはドロイド軍の司令船を撃破した。

 

ナブーに展開された全てのバトル・ドロイドは機能が停止し王室保安軍とグンガン達は無事に勝利を収めたのだ。

 

「オーリー空将はとある事件により負傷し暫く軍務を退いていましたが宇宙艦隊設立によるクリース宙将の移籍により復帰していただきました」

 

ソルーナ女王は彼の近年の話を2人に告げた。

 

「お陰で陛下と同じ牢に放り込まれたのだがな。だがなんとか助かった、ありがとう」

 

オーリー空将は手を差し伸べジェルマンとジョーレンはそれに応えて固い握手を交わした。

 

「それよりこの艦にN-1スターファイターはあるか?いや、最悪N-1出なくてもいい、ポリス・クルーザーでもなんでも」

 

オーリー空将の問いにジョーレンは「ありますよ」とまず一言答えた。

 

「N-1どころかN-1Tアドバンスト・スターファイターが。ブラボーリーダーの腕前、見せてもらいましょう」

 

「ああ」

 

オーリー空将はニヒルな笑みを浮かべて相槌を打った。

 

武器を持ったソルーナ女王らに告げた。

 

「私がこの艦の格納庫からスターファイターを分取って時間を稼ぎます。その間に陛下は彼らと共に離脱して下さい」

 

「オーリー空将も、我々の離脱を確認したらすぐに脱出してください」

 

ソルーナ女王は殿を務めようとするオーリー空将に言葉を投げかけたが空将はどこか悲しい笑みを浮かべるだけで返答しなかった。

 

キャプテンコォロも何かを悟ったのか口を紡いでいる。

 

しばらくしてオーリー空将は天を仰ぐように呟いた。

 

「私は……アミダラ女王と“()()()()”を守り切れなかった…ですが今度こそはソルーナ女王陛下らを絶対にお守りします。どうか私を信じてください」

 

空将の決意は重く、余所者であるジェルマンとジョーレンにすらその意志が伝わるほどだった。

 

2人は周囲を警戒しながらオーリー空将の決意を無駄にせぬよう全力を尽くすことを誓った。

 

すると突然ジョーレンのコムリンクが音を鳴らした。

 

「通信……?一体どころから……」

 

「とにかく開いてみよう」

 

ジェルマンの提案によりジョーレンはコムリンクを開き音声を流した。

 

コムリンクの先からは人の声ではなくアストロメク・ドロイドの電子音声が流れていた。

 

一見すると意味の分からない通信音声だったがアストロメクの言語が分かるジェルマンとジョーレンからすればこれはとんでもない音声だ。

 

2人は顔を見合わせ驚きの顔を浮かべる。

 

しばらくして解放された女王ら全員に告げた。

 

「急いで離脱を!ここから早く脱出しないと大変な事になります!」

 

2人は最短距離の逃走経路の方へ向かい「早く!」と彼女らを手招きした。

 

「一体どうしたのですか?」

 

内情をよく理解出来ないソルーナ女王は2人に尋ねた。

 

女王の問いにジョーレンは手短に答える。

 

「“()()()()()()()()()()()”!我々の“()()”によって!」

 

ジョーレンが口に出した援軍を最も早く感知していたのはジョーレンではなくこの“キング・オブ・ヴェルーナ”のブリッジであった。

 

1人のセンサー士官が大声でクリース宙将とグリアフ一佐らに報告する。

 

「宙将!惑星内よりスターファイターが多数接近!敵の信号です!」

 

「なんだと…?」

 

クリース宙将は怪訝な表情を浮かべセンサー士官の方に詰め寄った。

 

センサー士官は「目視確認!モニターに出します」と報告内容をモニターに映し出した。

 

「なっ!?」

 

グリアフ一佐はモニターの様子を見て驚きクリース宙将は口を閉ざした。

 

センサー士官は状況を言葉にする。

 

「敵です!抵抗勢力のN-1スターファイター隊です!20機近くのスターファイターが真っ直ぐ我が艦隊目指して接近しています!」

 

士官の報告が終わる頃には既に敵機は攻撃に移っていた。

 

最前衛を担うN-1Tアドバンスト・スターファイター5機が側面に展開していたCR90コルベットとゴザンティ級にレーザー砲と魚雷を浴びせかける。

 

防御と対空が間に合わなかった数隻が被弾し爆炎を上げていた。

 

さらに後方から来るN-1スターファイターとNB-1ロイヤル・ボマーの攻撃も攻撃を開始する。

 

「こちらもスターファイター隊を出せ。ひとまず抑えつけろ」

 

「前方のアドバンスト・スターファイターは以前宮殿格納庫から奪取された機体と識別が一致します」

 

ブリッジの士官の1人がクリース宙将らに報告する。

 

「となれば残りの機体は……前衛対空群に打電!急いで対ミサイル用の防御を開始しろ!」

 

「宙将!地上から弾道ミサイル接近!我が艦隊を目指しています!」

 

「遅かったか…」

 

地表から放たれたミサイル数発が艦隊のCR90とアークワイテンズ級に被弾し二隻とも轟沈した。

 

更に弾道ミサイルは接近し何発かは対空防御の前に破壊されたがその結果、周囲に妨害粒子付きの煙幕を散布し艦隊の視界を大きく遮った。

 

「地上からのミサイル攻撃です!位置は特定中!」

 

「いいや、間違いなく我が軍の海軍基地だ。あのミサイルは海軍の駆逐艦搭載ミサイルです。今すぐ捜索し海軍基地に対して攻撃を」

 

グリアフ一佐の提案を受け入れクリース宙将は直ちに地上部隊に捜索と迎撃を命じた。

 

「連中、まさか海軍基地を丸々ひとつ制圧するとは」

 

「ああ、もはや王立海軍は抵抗勢力の巣窟だ。あのN-1スターファイターだって間違いなく海軍機だろう。敵機を叩き落とせ!それから我が艦隊も海軍基地に対して攻撃を行う」

 

想定外の攻撃ではあるがまだ立て直すことは出来る。

 

特に連中のスターファイター隊は所詮20機しかおらず艦隊の艦載機の総数には遠く及ばない。

 

既に哨戒機と発艦した艦載機部隊が戦闘を開始している。

 

物量とパイロットの練度差によって容易に殲滅出来るだろう、クリース宙将はそう踏んでいた。

 

だが実際は違った。

 

N-1Tアドバンスト・スターファイター5機が友軍の編隊を崩し乱れた所を後方の海軍用N-1スターファイターが確実に敵機を撃破していた。

 

5機は明らかに他の全ての機体とは全く違う動きをしている。

 

それは当然と言えば当然だろう。

 

この5機のN-1Tアドバンスト・スターファイターに乗り込むパイロット達は皆、かつてのナブーの戦いで通商連合艦隊に突撃したスターファイター隊のパイロット達なのだ。

 

特に隊長のポロー・ドルフィはオーリー空将に次ぐブラボー2の肩書きを持つパイロットで宇宙戦闘機隊でも二等空将の地位についていた。

 

他のディニエ・エルバーガー、ギャヴィン・サイキス、アーヴン・ウェンディック、ルティン・ホリスもナブーの戦いを勝ち抜いたベテランのパイロット達だ。

 

5機は連携しながら敵機の編隊を崩し他のスターファイター隊を導いていく。

 

「各機、シュミレーション通り5つの隊に分かれて対艦攻撃を行う。私とウェンディックの爆撃隊は敵旗艦のセンサーを潰す、エルバーガーとサイキスとホリスは護衛を」

 

『了解!』

 

『了解、さあ行くよ!』

 

ドルフィ空将の命令と共にエルバーガー隊長の隊が先行し“キング・オブ・ヴェルーナ”から迫る敵スターファイター隊を蹴散らす。

 

それぞれ隊長機含めた3機の編隊が編成され護衛と攻撃の二手に分かれて攻撃が開始された。

 

ドルフィ空将とウェンディック隊長の率いる爆撃隊を前方から攻撃しようとするTIEファイター3機をホリス隊長の隊が迎撃し殲滅する。

 

背後から迫ろうとするものはサイキス隊長の隊が難み、遊撃的に動くエルバーガー隊長の隊が全体的に敵機を抑圧した。

 

護衛艦のアークワイテンズ級をすり抜け爆撃隊が“キング・オブ・ヴェルーナ”に接近する。

 

「ウェンディック、先にシールド撃破を」

 

『任せてくれ。全機、片方だけ潰せればそれだけで大戦果だ。欲張らず確実に一基撃破するぞ』

 

ウェンディック隊が先行し対空砲撃を掻い潜りながらブリッジの偏向シールド発生装置へ爆撃を仕掛ける。

 

彼らの爆撃は成功しプロカーセイター級の偏向シールドを一つ破壊した。

 

破壊の振動はプロカーセイター級“キング・オブ・ヴェルーナ”のブリッジだけでなく戦闘中のジェルマンとジョーレン達にまで伝わった。

 

「いよいよ爆撃が始まっちまった!急ぐぞ!」

 

敵から奪ったDTL-19を連射して敵兵を抑えながらジョーレンはそう促した。

 

ウェインディック隊は離脱しドルフィ空将の隊による爆撃が始まる。

 

「ブリッジを一時的にでいい、機能を弱体化させる」

 

ドルフィ空将のN-1Tアドバンスト・スターファイターが放ったイオン魚雷に続き、2機のNB-1ロイヤル・ボマーが魚雷を放つ。

 

魚雷は全弾命中し“キング・オブ・ヴェルーナ”のブリッジの機能は著しく低下した。

 

いい笑顔を見せながらドルフィ空将は「よし!よくやった!」と海軍パイロット達を褒め称えた。

 

3機は離脱し彼らの役割を終える。

 

「さて、後は頼んだぞ“()()()()”」

 

プロカーセイター級の姿を振り返って見つめながらドルフィ空将はそう呟いた。

 

スターファイター隊が一連の攻撃を仕掛け終わった後もプロカーセイター級内での戦闘は続いていた。

 

ブリッジではクリース宙将とグリアフ一佐の下復旧作業が進められていたがイオン魚雷の被弾によりセキュリティ・ドロイド部隊にも一部被害が出てしまった為更なる強大な物量を展開出来ずにいた。

 

それでもジェルマンとジョーレン達にとっては十分相手の物量は凄まじい。

 

どれだけ蹴散らしてもある程度の質を保った保安隊員達が現れて彼らの道を塞いだ。

 

ようやく監房ブロックを突破し通路に出たのだが通路も多くの敵兵により阻まれてしまった。

 

「ちぃ!DTLですら火力が足りねぇ!」

 

「任せろ!」

 

ジェルマンはバッグからサーマル・インプローダーを取り出し敵に投げつけた。

 

全員が離れさせられ女王らの安全が確保される。

 

直後サーマル・インプローダーは大爆発を起こしたが事前に敵兵が退避し防御部隊が防御を成功させたことにより最小限の損害しか与えられなかった。

 

ジェルマンとジョーレンとキャプテンコォロがその隙にブラスターによる一斉射撃を行なったがイマイチ効力は表面化されていなかった。

 

「連中、足止めさえに注力してやがる!」

 

「どうせクリースのことだ、既に増援部隊を展開しているに違いない」

 

キャプテンコォロはS-5重ブラスター・ピストルをもう一丁引き抜いて構えながらそう呟き、ジョーレンも「挟み撃ちにして皆殺しにする気か…!」と歯噛みした。

 

「奴なら陛下と我々ごと殺しにかかってもおかしくない…!」

 

「とんでもない奴なんですね!クリース宙将ってのは!」

 

A280-CFEで敵兵を1人撃ち倒しながらジェルマンは冗談混じりに吐き捨てた。

 

すると通路を塞ぐ保安隊員の後方から爆発音と火花のようなものが見えた。

 

敵の銃撃が降り止まず殆どその様子は見えなかったが明らかに連立して鳴り響く爆発音が聞こえた。

 

「今の爆発音はなんだ!?」

 

ブラスター・ライフルのティバナ・ガスを交換しながらジョーレンは尋ねた。

 

「分からない…でも明らかに敵の後方から聞こえてる…」

 

「暴発か何かか…?」

 

直後、銃声も聞こえ彼らは明らかに敵部隊の後方で異変が起きていることを認識した。

 

そしてこの機にと彼らは最大火力を持って敵兵に攻撃する。

 

サーマル・デトネーターやインパクト・グレネードを投げつけ、DTL-19やA280-CFE、A300ブラスター・ライフルで敵兵を撃つ。

 

投擲と一斉射撃により数人の保安隊員を撃破し敵部隊は突如撤退を始めた。

 

ジェルマン達を牽制しながら保安隊員達は離脱していく。

 

「何があったのです…?」

 

突然銃撃の音が鳴り止んだ為ソルーナ女王は彼らに尋ねた。

 

「敵部隊が突然撤退を開始しました。しかしまだ危険ですので陛下達は奥へ」

 

キャプテンコォロが説明している間にジェルマンとジョーレンは通路に身を出し周囲を警戒しながら奥底を覗き込む。

 

すると奥の方から足音が聞こえジェルマンとジョーレンは急いでブラスター・ライフルを構えた。

 

キャプテンコォロとソルーナ女王もそれぞれブラスターを構え警戒する。

 

しかし姿を表したのは敵ではなかった。

 

「ご無事でしたか!」

 

2人の安否を確認し喜ばしそうに話すその声をジェルマンとジョーレンはよく知っていた。

 

「メンジス三佐!」

 

2人は声を揃えて数十人の兵士と共に接近する三佐の名前を呼んだ。

 

「メンジス!それにお前達は…!」

 

キャプテンコォロも通路から飛び出しその存在に驚いた。

 

メンジス三佐の背後には多くの特殊部隊員に加え擲弾兵もいた。

 

「お久しぶりですキャプテン、そして女王陛下、オーリー空将。そして助けに来ましたよ、ジルディール上級中尉、バスチル少佐」

 

メンジス三佐は3人の上官と2人の盟友に敬礼する。

 

キャプテンコォロとオーリー空将は敬礼を返し、ソルーナ女王は「今までよくナブーの民の為に戦ってくれました」と労いの言葉を掛けた。

 

「どうしてここに、離脱したんじゃ…」

 

ジョーレンの問いにメンジス三佐は簡潔に答えた。

 

「あの後すぐ状況をフランケ一佐とガイルス二佐に伝えました。彼らはホーリス隊長と協議した結果、特務作戦を実行に移し海軍内の解放軍派を総動員して海軍本部を占拠。そのまま海軍戦闘機隊と我々のスターファイター隊を動員し本部基地からのミサイル攻撃と共に救援に駆けつけました」

 

「だがどうやってこの艦に入ったんだ?」

 

「我々は1機だけ“()()()()()()()()()()()()()()()()()()”をあなた方から借りています」

 

「まさか俺達のUウィングで!?」

 

ジョーレンは驚きメンジス三佐は申し訳なさそうに小さく頷いた。

 

「なるほど…通りで完全な奇襲だったわけだ…」

 

「はい、ですが連中は恐らくすぐに立て直します。早くこの艦からの離脱を」

 

「ああ…!急ぐぞ!」

 

メンジス三佐の増援部隊に連れられ女王達が脱出を開始した。

 

ジェルマンとジョーレンはメンジス三佐と共に殿を担当し部隊を再編成し増援に来るかもしれない敵を警戒した。

 

「おいジェルマン、こいつを拾っていくぞ」

 

ジョーレンはその辺に転がっていたEウェブを指差し砲塔部分を持ち上げた。

 

ジェルマンは「絶対重いよ」と言いつつも律儀に三脚と冷却器を持って走り始めた。

 

彼らがしばらく進むと背後から「敵が逃げるぞ!追え!」と撤退した保安隊員達が姿を表した。

 

素早く敵を察知したジョーレンはニヤリと笑みを浮かべ三脚を立てぬままEウェブを担いで手持ちのブラスター砲のように引き金を引いた。

 

超火力のブラスター砲が火を吹き体を出した敵兵は皆撃たれて倒れた。

 

その姿はクローン戦争中、Z-6回転式ブラスター砲でバトル・ドロイドを薙ぎ払うクローン・トルーパーを想起させる。

 

敵兵はEウェブの火力の前に倒れて生き残った者は身を隠せざるを得なかった。

 

「三脚は!?」

 

ジェルマンがジョーレンに尋ねるが「そんなもんつけなくていい!」と一蹴された。

 

ムッとしているところを軽装備で突っ込んできた保安隊員が現れる。

 

もう既にEウェブの射程外でありジョーレンでは対処出来なかった。

 

しかし三脚を持っていたジェルマンが保安隊員の頭を三脚で殴りつけ地面に倒した。

 

「そろそろ後退してください!」

 

メンジス三佐はサーマル・インプローダーを敵に投げつけ2人に促した。

 

ジョーレンはEウェブを投げ捨て三佐の言う通り急いで走った。

 

大爆発によりさらに追撃は不可能となり急いで全員が後退した。

 

「しかしまさか助けに来てくれるとは…!」

 

ジョーレンは少し嬉しそうにメンジス三佐達のことを語った。

 

「こちらも助けてばかりではいられないのでね!」

 

「でもお陰で命拾いしました!我々だけでは間違いなく死んでいた!」

 

3人は微笑みながら先に離脱した女王達に合流し一気にハンガーベイまで向かった。

 

「我々はUウィングでオーリー空将と共に脱出を援護する!女王達はTIEボーディング・クラフトではなく、あのセンチネル級シャトルで!」

 

ジョーレンは近くのセンチネル級シャトルを指差した。

 

乗ってきたTIEボーディング・クラフトは既に損傷しており人もあまり乗せられない。

 

しかしセンチネル級なら十分な人材を乗せられる上に偏向シールドが搭載され頑丈だ。

 

「分かりました!」

 

メンジス三佐らは全員センチネル級に乗り込みジェルマンとジョーレンは自分達のUウィングに乗り込んだ。

 

オーリー空将も唯一残っていたN-1Tアドバンスト・スターファイターに乗り込み機体を発艦させる。

 

N-1アドバンスト・スターファイターとUウィング、センチネル級がそれぞれプロカーセイター級のハンガーベイから発艦し艦の外へと出る。

 

当然この様子はブリッジが復旧した“キング・オブ・ヴェルーナ”の中でも確認されていた。

 

「あのUウィング…あれは間違いなくナブーに侵入した際に使っていた機体です」

 

グリアフ一佐はそう進言しクリース宙将も小さく頷いた。

 

「直ちに追撃隊を差し向けろ。我々は今後の作戦方針を…見つめ直さなければならないからな」

 

クリース宙将の命令通り他のプロカーセイター級やネビュロンB、ヴィクトリー級からN-1スターファイターやTIEファイターが発艦し彼らを追撃に出る。

 

ジョーレンは通信回線を開き全ての味方機に告げた。

 

「こちらUウィング・シールズ・ワン、今本機と共に敵艦より発艦したN-1アドバンスト・スターファイターとセンチネル級は友軍である。またセンチネル級にはソルーナ女王ら要人が多数乗船している為全力で警護されたし」

 

『シールズ・ワン、こちら戦闘機隊司令官のポロー・ドルフィ二等空将だ。報告の内容了解した、直ちに護衛部隊を展開する』

 

ドルフィ空将の命令通りセンチネル級にN-1スターファイターらの護衛が付き、迫り来るTIEファイターと敵のN-1スターファイターが撤退した。

 

何十機もの敵機が執拗にセンチネル球を追撃するがUウィングとドルフィ空将らが徹底的に敵機を撃墜してその手を阻んだ。

 

しかし精鋭達はともかく海軍機のパイロット達は不慣れな宇宙戦闘で苦戦していた。

 

ある1機のN-1スターファイターが編隊から逸れ2機のN-1スターファイターから集中攻撃を受けていた。

 

なんとか躱そうと必死に機体を動かしていたが対にロックオンされレーザー砲が放たれようとしていた。

 

ドルフィ空将やサイキス隊長は助けに向かおうとしたがもう間に合いそうにない、その時だ。

 

突如両機の横合いから黄緑色のレーザー弾が降り注ぎ、N-1スターファイターを2機とも撃破してしまった。

 

間一髪助かったN-1スターファイターは味方の編隊に戻り敵機を撃墜したN-1Tアドバンスト・スターファイターは更に多くの敵機を屠っていった。

 

「なんだあの機体は!?」

 

ドルフィ空将は思わず圧倒的な機動性を前に大声を上げた。

 

そしてコムリンクから放たれる声と共に彼らは更なる驚きを受けることとなる。

 

『俺の動きをもう忘れちまったか?“()()()()2()”』

 

かつてのコールサインを呼びそのN-1Tアドバンスト・スターファイターはドルフィ空将の前に接近する。

 

ドルフィ空将は思わずその名を呟いた。

 

「オーリー隊長!」

 

『各機、護衛体制を崩さず敵から女王陛下を絶対に守れ。我々“真のブラボー小隊”の力を見せつけろ!』

 

『了解“()()()()()()()()”!』

 

『了解!』

 

『なんだか昔みたいになってきましたね!』

 

スターファイターは散開し、圧倒的な物量を食い破り抑えつけていった。

 

まさしくナブーの戦いでドロイド・スターファイターと対峙した精鋭、ブラボー小隊の復活を見ているようだ。

 

当然あの戦いを生き延びれなかった者もいる。

 

あの戦いで歪んでしまった者もいるだろう。

 

しかしこうして生き残った者達がナブーの為に立ち上がり、今も女王の為に戦っている。

 

ナブーの希望は、ナブーの人民は、まだ完全に暗黒の手に落ちたわけではない。

 

センチネル級の後に21機のN-1スターファイターが続き更に殿としてUウィングが後に続く。

 

女王が救出され、これから始まる。

 

ナブーの解放、新たな時代を司るナブーの解放が。

 

第三次ナブーの戦い、ナブーを解放する為の戦いの勃発である。

 

 

 

 

つづく




私 だ

ナチ帝国もこいで46話、いや〜早いですね〜

ちなみにイノベスキー昨日今日、先週と具合が悪く更新が遅れてしまいました

早くこの作品も終わらせたいですわね
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