第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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-平和を望む者が大多数とは限らない-


開戦の準備

-惑星クワット首都 クワット・シティ-

クワットの首都にはマンションや住宅街があり彼はそこに潜伏していた。

 

側から見ればただの住宅だが実際は地下室が存在しておりその中には大量の武器や通信機があった。

 

「すごいな…ずっとここに住んでいるようだ…」

 

「ずっとここに住んでるんだよ、多分忘れ去られてる」

 

皮肉混じりにジェルマンを助けたジョーレン・バスチルは答えた。

 

彼は医療箱から包帯のようなものを取り出している。

 

「俺は昔反乱同盟軍の特殊部隊でね、階級は軍曹だった。まあすぐ尉官に上がらされて大尉になったが」

 

ジョーレンは包帯で怪我をしている箇所を優しく手当てした。

 

その中で彼はふと自分の昔話を語り出した。

 

「よく戦ったんだが所属していた部隊が壊滅しちまって1人取り残されちまった」

 

「それは気の毒に…」

 

「戦いだからな、それはしょうがない事だし“()()()()()()()”。俺は情報部の将校に拾われて新たに大尉となった、まあ今も大尉のままだがな」

 

ここで初めて階級が分かった。

 

一応上官だったのか。

 

風貌から察するに先輩だとは思っていたが。

 

「ちょうどこのクワットに同盟軍が攻撃を仕掛けた時俺は潜り込んだ、そこからずっと潜んでいる」

 

「それは長い…どうして誰も君を迎えにこないんだ?」

 

「だから言っただろ?俺は忘れられている。その情報部の将校が死んじまってね、その将校しか知らないもんだから俺含め何人かは行方不明者だ」

 

「そんな事が…」

 

「多分みんな生きてるだろうが今の新共和国にはどうでもいい事だろうよ。何せ俺は特殊部隊にいた時既に死んだ身だ」

 

話は悲しげだったがジョーレンの口調にはその悲しさはなかった。

 

本当に諦めているのだろうか。

 

そんな話をしている内に傷の手当ては終わった。

 

「さて内に帰るのは当分先になりそうだ中尉、どうする?」

 

「とりあえずストライン中将に連絡を、通信傍受の可能性は…」

 

「ないな、あったらとうの昔に俺は捕まっている」

 

ジェルマンは頷きコムリンクを開いた。

 

本当に妨害電波などはなくコムリンクは繋がった。

 

『中尉…無事だったか…!』

 

「クワットの…スパイに助けられました、この状況だとやはりクワットは…」

 

わざとらしくジェルマンはジョーレンを引っ張り顔を見せた。

 

ジョーレンはバツの悪そうな表情を浮かべて敬礼した。

 

ストレイン中将も軽く敬礼していた。

 

『ああそうだ…新共和国の大使館のメンバーは全員拘束されてしまった』

 

「救出の見込みはあるんですか?」

 

『正直なところ無い…クワットは新共和国と完全に断交した、もはや大使館メンバーが解放される事はないだろう』

 

「なら昔みたく腕づくでやるしかありませんね」

 

ジョーレンはジェルマンの肩を叩きながら言った。

 

『まさか…やるならなるべく静かにやれよ…』

 

「さすが情報部だ、任せてください、元同盟軍特殊部隊の実力見せてやりますよ」

 

ジェルマンが何もしないうちに事がとんとん拍子で進んでいた。

 

『新たな任務だ中尉、その隣にいる元特殊部隊の…』

 

「ジョーレン・パスチル大尉」

 

『…大尉と一緒に囚われの大使館メンバーを救出せよ、作戦の方は大尉に一任する、責任は全部私が取る』

 

「わかりました中将」

 

ジョーレンの名前を一発で言えなかったのか中将の言葉は少し詰まっていた。

 

だがストレイン中将は漢気を見せジョーレンとジェルマンに救出任務を命じてくれた。

 

無論最初からそのつもりだ。

 

「では中将」

 

『気をつけてな』

 

そう言うとジェルマンは通信を切った。

 

ジョーレンは早速立ち上がって壁掛けからブラスター・ライフルを取り出していた。

 

「そのパスチル大尉…」

 

「ジョーレンでいい、階級は上官でない限り気にしない」

 

「じゃあジョーレン」

 

「なんだ?」

 

ブラスター・ライフルを首に掛け他の武器も取り出すジョーレンは振り返った。

 

もうやる気が感じられる。

 

「穏便にな…?」

 

一応ジェルマンからの忠告だった。

 

だがジョーレンはお手玉のようにサーマル・デトネーターを弄びながら言った。

 

「ああ、穏便にやるさ」

 

その顔は明らかに穏便とは程遠い顔だった。

 

 

 

-コルサント 親衛隊本部-

世間は新共和国からの亡命者と現在の緊張状態について有る事無い事騒いでいた。

 

ホロネット・ニュースも日夜これを取り上げたニュースばかりやっていた。

 

コメンテーターは適当な事を並べたて、専門家達はそれらしい事を言って誤魔化していた。

 

何が専門家なのか。

 

当事者であるシュメルケ上級大将などからして見れば滑稽な人形劇のように思えた。

 

真実を知っている者は僅かしかいない。

 

彼や代理総統、総統府のハインレーヒなどほんの僅かだ。

 

大臣や長官すらこの事実は知らない。

 

今回の亡命は彼ら親衛隊の一部が手引きしたと言う真実はほとんどの者が知らない。

 

『閣下、親衛隊特殊部隊のフューリナー上級大将が面会を希望しています』

 

「入れてくれ」

 

扉が開き親衛隊特務作戦実行部隊の長官のハンス・オットー・フューリナー上級大将が執務室に入ってきた。

 

シュメルケ上級大将とフューリナー上級大将は古くから親交があった。

 

通称FFSOU(Fuller Force Special Operations Unit)は親衛隊の中でも謎が多い。

 

親衛隊保安局や情報部よりも規模や作戦内容などが不明なままになっている。

 

特殊部隊やコマンドー部隊、ダーク・トルーパーなどはここの管轄だがそれだけなのかまだ他にいるのかすらわからない。

 

その規模は総統やシュメルケ上級大将のような者しか知らないのであろう。

 

「どうしたハンス、最後の大隊( Last battalion)が何か問題を起こしたか」

 

「そうではない、あれは総統閣下の命令しか聞かない恐ろしい連中だ、お前に用があるのはまた別だ」

 

「亡命者の件だな、リデンタール中佐の働きは見事だった」

 

彼はすぐに友の要件を読み取った。

 

特に笑うわけでも何かを言うわけでもなくフューリナー上級大将は話し始めた。

 

「収穫は思いの外大きかった、今や開発部ではスターホークを無力化しようと躍起になっている」

 

「戦いは後三ヶ月…いや二ヶ月もすれば始まるな、それまでに艦隊は完成する」

 

「お前に聞きたいのはその事だ、この戦争勝てるか?」

 

「急にどうした?お前だって既に勝つと決め込んでいるだろうに」

 

フューリナー上級大将は「まあな」と一言で答えた。

 

今の帝国軍と親衛隊なら十分新共和単一なら打ち破れるだろう。

 

敵のスターホーク級も解析が進められ徐々に脅威は薄れていった。

 

更にはエグゼクター級三隻に秘密施設で見つけた艦隊もあれば十分だ。

 

だから敢えてフューリナー上級大将は尋ねた。

 

「結論から言えばあの戦術を使えば勝てるだろう、それも3週間以内にな」

 

「確かにヴィアーズ大将軍やオイカン元帥の戦術は効果的だろう」

 

「だが危険をあえて一つ挙げるとすれば新共和国と周辺国家の防衛軍が一斉に攻めてきた場合の事だ」

 

「逆に我々が手薄になり敗北する可能性があると」

 

「そして新共和国が防衛に回った場合も同様だ、そこは囮の艦隊に任せれば良いが」

 

「それだけか?」

 

「いや、敵将もそうだ」

 

シュメルケ上級大将はもう一つ付け加えた。

 

彼は冷静に物事を分析している。

 

味方への贔屓もなしにして。

 

「艦隊司令官のアクバー元帥は手練れだ、それにライカン将軍やメイディン将軍もいる」

 

「確かにどれも新共和国一の名将だ…が、本当に恐れているのはそれではないだろう?」

 

シュメルケ上級大将は静かに頷いた。

 

近年の戦いでは一騎当千とまではいかないものの大きく戦局を覆す事が多々あった。

 

無論そんな小さな危険に全霊を持って怯え、対処する必要はないのだが否定出来ないのも事実だ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()…どれも危険な存在だ、早いうちに取り除いておかなければ必ず反撃される」

 

「…少し早いが彼らを投入しようと思う」

 

「誰をだ」

 

驚く事もなく彼は誰を送るかを尋ねた。

 

上級大将程になると滅多な事では驚かない。

 

()()()()…奴ならスカイウォーカーすら倒せる見込みがある、陛下の遺産は効率よく使わねばな」

 

「流石だハンス、この復讐戦勝利は近いぞ」

 

シュメルケ上級大将は一転して意見を変えた。

 

それは友への信頼の証であり皇帝の手の者への信用の証であった。

 

「ようやくなのだな…エンドアからもう3年か…早いな」

 

「戦いの始まりは近い、常に最後に勝つのは我々帝国だ、ヤヴィンの後もそうだったように」

 

「亡き陛下と総統閣下の為に」

 

指を組みフューリナー上級大将を見つめるその視線は鋭かった。

 

まるで盃を捧げるかのようにシュメルケ上級大将も同じ言葉を述べた。

 

「亡き陛下総統陛下の為に」

 

捧げられたその言葉が具現化する時はそう遠くはなかった。

 

 

 

-コルサント ギャラクティック・シティ アパートメント街-

ちょうどコルサントは朝方だった。

 

美しい朝日がビルを照らし神秘と人工物が入り混じった光景を生み出していた。

 

だがコルサント市民にとってはなんら珍しい事ではない。

 

感じ方としては美しさというより慣れ親しんだ安心感という方だ。

 

長い間住んでいればそうなるだろう。

 

また時間が時間で朝の忙しさに追われ感傷めいた事を思っている暇はなかった。

 

『我が帝国政府としては真の賢さと勇気を持った亡命者達を迎え入れるとゼールベリック外務大臣は発表しました』

 

シュタンデリス家は朝食を食べながらそのホロネット・ニュースを眺めいていた。

 

帝国ホロネットは時折プロパガンダめいた事も発表するが市民の中では一番人気を誇っていた。

 

『またゼールベリック外務大臣は亡命時に新共和国側が帝国軍側の艦船に誤射した事について『これは意図的な可能性があり厳しく対応する』と言っていました、次のニュースです』

 

アナウンサーが再び原稿を読み始める。

 

このニュースに関しては軍関係者のジークハルトも無視は出来ない。

 

「貴方は戻らなくていいの?」

 

ユーリアは亡命事件に関して親衛隊から招集が掛かっているのではと心配した。

 

しかしジークハルトはカフを一口飲むと微笑を浮かべて彼女を宥めた。

 

「大丈夫、今のところそう言ったのは来ないし私の連隊は今の所コルサントの守備がメインだ」

 

「じゃあパパはお仕事行かなくていいの?」

 

「そうだよマイン、まだお休み中だからね」

 

「そうなら良いのだけど…」

 

「ひとまず今のところは大丈夫さ」

 

爽やかな顔でそう言ったが実の所ジークハルトも結構この事を気にしていた。

 

遠からず新共和国と帝国が戦争になる事は帝国側の軍人なら誰でも知っている。

 

何せ総統府や評議会はそう仕向けているのだから。

 

今回の亡命だってもしかしたら誰かの手引きがあったのかもしれない。

 

一部隊の指揮官でしかないジークハルトが考える事ではないが少なからずそう言った可能性はある。

 

今回の事件が開戦の導火線になるかもしれないのだ。

 

「平和な時代ももう終わりだな…尤も誰しもが平和な時代を望んでいるわけではなかったがな」

 

敗北した者達の心には平和程煩わしいものはなかった。

 

ジークハルト含め新共和国を憎んでいる将校はたくさんいる。

 

彼はともかく他のその将校達からして見れば理由などどうでもよかった。

 

復讐心に駆られた彼らが望むのはただ一つ。

 

新たな復讐戦だけだった。

 

 

 

-ホズニアン・プライム 新共和国防衛軍本部-

今日この日、この場所にはかつてから名を連ねる将校が集まっていた。

 

皆新共和国がまだ反乱同盟という名だった頃から支えている名将達だ。

 

優れた戦術的才能は帝国側も一目置くほどだった。

 

円形のホロテーブルをその名将達は囲んでいた。

 

「帝国艦隊の大まかな戦力は不明ですが協定で制限された戦力にコルサント戦で得た情報を合わせるとこの規模になると予想されます」

 

クリックス・メイディン将軍はホログラムを起動してテーブルの上に帝国艦隊を出現させた。

 

彼は元々帝国軍の軍人だった。

 

しかし亡命し前身の反乱同盟に加わりやがては将軍の地位を得た。

 

エンドア戦などで特殊部隊を指揮し新共和国に貢献したメイディン将軍だったが実は死亡したという噂も流れていた。

 

彼はシャンドリラ攻撃時に死亡したという噂が流れていたのだ。

 

実際彼は攻撃を生き延びておりこうして今もピンピンしていた。

 

「いや実際の艦隊戦力はそれ以上と見るべきだろう、今やクワットやコレリアまで帝国側なのだからな」

 

新共和国防衛艦隊最高司令官のギアル・アクバー元帥はホログラムの帝国艦を増やした。

 

モン・カラマリの名将は帝国の力を誰よりも知っていた。

 

故郷モン・カラは帝国軍に占領され10年以上を帝国との戦いに費やしてきた。

 

そこで培われた艦隊指揮能力は新共和国一だろう。

 

「地上部隊もきっと相当強化されているだろう、相手はあの名将ヴィアーズだからな」

 

「ライカン将軍、率直に伺いたい、ヴィアーズ大将軍が再び最前線に現れた時我々は勝てるだろうか」

 

カーリスト・ライカン将軍にタイベン将軍は尋ねた。

 

ライカン将軍は特にこのヴィアーズ大将軍を警戒し同時に認めていた。

 

惑星ホスでヴィアーズ大将軍のブリザード・フォースと死闘を繰り広げたのは何を隠そうこのライカン将軍なのだから。

 

彼の部隊運用の高さは誰よりも認識しているつもりだった。

 

タイベン将軍はジャクーの戦いでシャンドリラにいながらも見事な式で辛くも新共和国地上軍を勝利に導いた戦術の秀才だ。

 

彼の隣にいるブロックウェイ中将が前線で地上部隊を率いておりタイベン将軍はいまだにその事を気に病んでいた。

 

ブロックウェイ中将からすれば無用な心遣いなのだがタイベン将軍はそうは行かなかった。

 

だが2人とも優秀な地上部隊の指揮官だ。

 

「勝てるかは不明だ…彼の戦術は多岐に渡る、防衛戦術を取ればこちらは相当苦戦するだろう」

 

「ですが現在の戦力では防衛策を取る以外方法は…」

 

「艦隊戦力も同様だ、だが今の状態では戦力の増強は望めない」

 

アクバー元帥の発言は正しく元老院では今も軍備増強は叶わずにいた。

 

彼ら軍人としてみれば腹立たしい話だがだからと言ってクーデターを起こし軍事政権にする訳にもいなかい。

 

そんな事をしてしまえば独裁政治になり帝国となんら変わりなくなる。

 

「…防衛策を取る上で有効的な戦術が一つだけある」

 

防衛艦隊のナンツ提督は言葉を上げた。

 

「帝国艦隊は必ずこのホズニアン・プライムを狙ってくる、だがジャンプの長さには限界がありこの周辺で必ずジャンプアウトするはずだ」

 

ホログラムを星図に移し替え帝国艦隊の予測進路を移した。

 

「ここで敵に奇襲攻撃を掛ける、かつて我々がエンドアで受けた時のようにな」

 

「あの戦術を使うと言うのか、しかし敵に悟られる可能性があるぞ」

 

アクバー元帥は驚きつつも懸念を露わにした。

 

最初に使ったのは帝国側でありそれに察知するのは簡単な事だ。

 

「陽動の部隊を展開して誤魔化しましょう、帝国から奪取した重力井戸の技術を使えばルートを絞るのにも役立つでしょう」

 

「となると戦場は限られてくるな…」

 

ナンツ提督が差した周辺の惑星や衛星をスライドし調べる。

 

なるべく人々が住んでいる惑星は避けたい所だ。

 

「ここだ」

 

ナンツ提督はある一つの衛星を選んだ。

 

居住可能な惑星で大きさも申し分なくあまり人も住んでいない好都合な場所だった。

 

「衛星マジノ…ここから防衛戦を築き帝国を迎え撃とう」

 

「地上部隊の配置を急がねば」

 

ライカン将軍が顎に手を当て部隊配置を考え始めた。

 

その隣でタイベン将軍はメイディン将軍やブロックウェイ中将と戦術について吟味し始めた。

 

アクバー元帥も他の参謀将校や提督達と共に艦隊の配置を考えている。

 

悲しい事に軍部だけが唯一まともに機能していた。

 

 

 

-クワット 首都収監所-

僅か1日でジョーレンは武装を整えジェルマンと共に収監所の近くに待ち伏せていた。

 

エレクトロバイノキュラーで中の様子を覗く。

 

「あの牢屋の衛兵はざっと144人、一個中隊くらいだ」

 

「他の武装は?」

 

アーマーや装備を付けたジェルマンは装備をいじりながらジョーレンに尋ねた。

 

「軽いレーザー砲がざっと三十基くらい、ドロイドが二個中隊くらいだ」

 

「すごいな、なんで全部知ってるんだ」

 

「数年あればそれくらいすぐ分かる、ケーブルで行くぞ」

 

あえて理由を濁しジョーレンはA300ブラスター・ライフルにアセンション・ケーブルを取り付けた。

 

ジェルマンもジョーレンから借りたA280Cブラスター・ライフルにケーブルを取り付ける。

 

スコープで檻の中の様子を見る。

 

警備兵は殆どいない。

 

「さて任務だぞ」

 

ケーブルを発射し監獄の壁にしっかりと射し込む。

 

まるで恐怖を感じないのかジョーレンは一気に進んだ。

 

ジェルマンもそれに続きケーブルを射し壁に張り付いた。

 

「いい腕だぞジェルマン、このまま壁をよじ登る」

 

「僕はパスファインダーじゃないんだぞ?」

 

「そんなん知ったことか行くぞ!」

 

ジョーレンは壁を蹴りケーブルを安全縄にしながらゆっくりと進んだ。

 

ジェルマンもそれの後に続く。

 

まるで蜘蛛みたいだ。

 

「音を立てるなよ、聞かれるかもしれんぞ」

 

「無茶言わないでよ…!」

 

「ハハ、あの窓ガラスから侵入する」

 

ジョーレンは足で窓ガラスを蹴破ると振り子のように勢いを付け侵入した。

 

あんな事ジェルマンだったら不可能だろう。

 

だが最初にジョーレンが破ってくれたおかげで入りやすくなった。

 

慎重に窓の淵に手を掴み監獄内に飛び込む。

 

思いっきりスライディングしたせいか頭を壁にぶつけてしまった。

 

「遅いぞジェルマン、こっちはもう温まってる」

 

「あっ?ああ…仕事が早いな…」

 

ジョーレンの周りには2人くらいの衛兵が倒れ込んでいた。

 

さすが元パスファインダーだ。

 

ジェルマンも思わず苦笑を浮かべていた。

 

「どこにぶち込まれてるかメインコンピュータを使って調べる必要があるな」

 

「なら何処でもいいから端末を見つけないと、幸い機材は持ってる」

 

「そこは情報部将校殿に任せる、俺もそうだったか」

 

「あんたは敵をぶっ倒しまくってくれ」

 

「よし決まりだ」

 

彼の肩を叩くとジョーレンはA300を構え慎重かつ大胆に進む。

 

ジェルマンも同じように後に続いた。

 

道中で出会う衛兵や職員の数は少なかった。

 

恐らく重要施設からは離れているのだろう。

 

「端末を見つけた、バックからタブレットを!」

 

「自分で出せ、俺は見張りをしてる」

 

バックパックからタブレットを取り出すと端末に差し込んだ。

 

青白いモニターが浮かび上がりメインコンピュータの情報を映し出す。

 

キーボードを打ちコンピュータのアクセスを開いていく。

 

ジョーレンもびっくりするほどの速さだ。

 

「はっ早いな…」

 

「まあな、よしアクセス完了!思ったより簡単だったな」

 

「急げよ、何処にいるんだ?」

 

「待ってろ…E-2違う…E-3違う…E-5…E-6…いた、E-9の監房区画だ、ここから行けばかなり近い」

 

「わかった、なら強行突破だ、ドロイドにシャトルの用意をさせる」

 

「後少し手品の種を仕掛けておく」

 

「一体何するんだ?」

 

ジェルマンは一瞬のうちに何かプログラムのようなものを作っていた。

 

そして彼の言った通り本当に少しの合間で出来上がってしまったようだ。

 

端末からタブレットを抜き取ると急いでバックに仕舞い込んだ。

 

「おい何してる!」

 

直後衛兵1人に見つかったがジョーレンがすぐに撃ち殺した。

 

あまりの早撃ちだった為断末魔などはなく崩れ落ち倒れた音しかしなかった。

 

「さっさと行こう、バレんうちにな」

 

爽やかな顔のままジョーレンは走り出した。

 

 

 

-コルサント 統合本部ビル-

今日この日、帝国軍、親衛隊の高官達が集まっていた。

 

「情報部のスパイが新共和国の戦術を入手した」

 

周りを取り囲む将校達が驚きの声を上げた。

 

小声だが「どうやって…」とか「どう入手したんだ」などの独り言も聞こえた。

 

だがそれらは軽く無視され話は次に進む。

 

「新共和国軍は衛星マジノを基準に防衛戦を築く予定であり我々に対する奇襲攻撃が計画されている」

 

進行役の帝国宇宙軍作戦部長ミリッツ中将は淡々と説明した。

 

「恐らくここでの戦闘は避けられないと予測している、今回は諸将の意見を聞きたい」

 

「総統閣下はなるべく短期決戦を望んでおられる、その事も考慮して欲しい」

 

シュメルケ上級大将は一つ付け加えた。

 

彼の周りには彼を除いた12人の上級大将が並んでいた。

 

「では大将閣下」

 

親衛隊大将のアフレート・フェルベーリンが最初に手を挙げた。

 

シュメルケ上級大将は無言の合図で話す事を許可した。

 

彼は立ち上がり自分の戦術を話し始めた。

 

「初期の三方向からの同時侵攻ではなく戦力を集中させ一点突破を提案します、エグゼクター級を一度の戦いに三隻使用すれば自ずと勝利は見えてくるでしょう」

 

「だがそんなに艦隊を一まとめにしてしまえば指揮系統が複雑になる」

 

「では大まかに艦隊を3つに分け波状攻撃を行うのはどうでしょうか、指揮系統も分散が可能です」

 

「敵は我々の重力井戸技術を使用した兵器を開発中だと聞く、分散した艦隊を各個撃破されたら終わりだ」

 

フェルベーリン大将の戦術はいい案だったのだが現在の帝国の戦力ではあまり有効的ではなかった。

 

如何せん以前とは違い戦力が少なすぎる。

 

現在の帝国艦隊は親衛隊の宇宙艦隊を合わせても半分以下なのだから。

 

「…一つだけ私に考えがある」

 

次に声を上げたのはヴィアーズ大将軍だった。

 

将校のほとんどの目線がヴィアーズ大将軍の方を向いた。

 

「まず部隊は二つに分け二方向から攻撃する」

 

大将軍はテーブルのコンソールをタップしホログラムを浮かび上がらせた。

 

「マジノを攻撃する部隊はオナガー級や発見された特殊艦を中心とした高火力の艦隊でなるべく防衛艦隊を引き付けてさせる」

 

2つに分かれた帝国艦隊が衛星マジノの防衛艦隊と交戦する。

 

「そしてもう一方の機動艦隊が手薄になったホズニアン、シャンドリラを一斉に攻撃する」

 

迂回ルートを取ったもう一つの帝国艦隊がホズニアン・プライム、シャンドリラに攻め込む。

 

そして2つの惑星にはバツ印がつけられた。

 

「だが迂回はどうする?敵は重力井戸を使用して必ずマジノ方面に引き寄せるぞ」

 

1人の将校から懸念が挙げられた。

 

他の将校もあまりに綺麗に行き過ぎて机上の空論ではないかとも考えていた。

 

「以前ターキン・イニシアチヴが発見したディープ・コアを通るハイパースペース・ルートがあったはずだ」

 

「なっ…あれを使うというのか…」

 

「確かに総督の麾下艦隊は無事に通り抜けられたが…」

 

将校達は頭を抱えた。

 

ディープ・コアは未知領域と同じくまだわかっていない事が多い。

 

何故なら恒星と惑星が密集しており航行には危険が伴う為探索があまり進んでいないからだ。

 

その為ディープ・コア特別警戒区なんてものも存在する。

 

そんな場所を通ろうとするなど誰しもが自殺行為だと考えるだろう。

 

だが上級大将は違った。

 

「あのルートなら帝国艦隊は余裕で通り抜けられる、エグゼクター級だろうとな」

 

ヴィアーズ大将軍にとっては以外な賛同者だった。

 

彼はずっと直属の部下であるフェルベーリン大将の戦術を採用すると思っていたからだ。

 

「新共和国はマジノに全戦力を回す予定で首都の防衛力はほぼ空だ、エグゼクター級が2隻もいれば陥落させられるだろう」

 

「私も賛成です、少なくとも秘密施設で手に入った艦を使えば防衛艦隊とも対等に、いや打撃を与えられるでしょう」

 

オイカン元帥は珍しく興奮した面持ちでヴィアーズ大将軍の意見に賛同した。

 

親衛隊はともかく帝国軍側は後ローリング大将軍だけだ。

 

若干の不安がよぎる中ローリング大将軍はすぐに賛成の立場を取った。

 

「俺も賛成だ、どうせなら防衛艦隊も壊滅させる勢いでやらねばな」

 

「ならもう決まったな、ヴィアーズ大将軍の戦術を採用し陽動艦隊と攻撃艦隊による電撃戦を主軸と細部を考える」

 

ヴィアーズ大将軍は席に着いた。

 

全員の顔を見合わせシュメルケ上級大将は確認を取る。

 

「我々は2年近く屈辱の日々を耐え抜いてきた、ついに反撃の時だ」

 

たった2年だがそれ以前にここにいる者達は多くを失ってきた。

 

親衛隊の者も親衛隊ではない者もシュメルケ上級大将の言葉の重みは痛烈に感じていた。

 

屈辱などでは表せない感情が今も胸の中にある。

 

「帝国に勝利をもたらそう」

 

 

 

「止まれ!うっ」

 

「クソッグァッ!」

 

弾丸に2人の衛兵が斃れた。

 

素早く正確な銃撃に衛兵達は反撃すら叶わなかった。

 

「うっうおおおおお!」

 

半狂乱状態に陥った1人の衛兵が警棒を持って突進してくる。

 

この距離だと狙いはうまく定まらない。

 

ジョーレンはバックルからナイフを取り出すと衛兵が繰り出す警棒の一振りを避け腹部にナイフを刺し込んだ。

 

苦悶の表情を浮かべながら衛兵の息は途絶えた。

 

「こいつで最後か…」

 

死体を横に捨てると彼はあたりを見渡した。

 

ジョーレンの見事な腕前は誰にも警報を鳴らさせず援軍を呼ばせなかった。

 

おかげで他の生きている衛兵達はまだ彼らの存在に気付いていない。

 

「ジェルマン、牢屋は開きそうか」

 

「待ってくれ後少しだ…よし開いた!」

 

一斉に監房の扉が開いた。

 

中からは突然扉が開いて驚く声が聞こえた。

 

「帝国の務所と比べてずいぶん簡素な作りだな」

 

「帝国の刑務所も十分簡素だけどね」

 

軽口を叩きつつジェルマンはしっかりと仕事をこなした。

 

「我々は艦隊情報部のメンバーです、あなた方を救出しにきました」

 

「おぉ…!」

 

あちこちから歓声が聞こえる。

 

どんな声や姿でも自分を期待してれる感性は嬉しいものだ。

 

すると1人の初老の男が監房から出てきた。

 

「私はニルメス・セルヴェント、クワットの大使だ、助けてくれて本当に感謝する」

 

「いえとんでもない」

 

「私からもお礼を言わせてください」

 

セルヴェント大使の隣に美しい金髪をした美人が立っていた。

 

「えっと貴方は?」

 

ヘルヴィ・セルヴェント、大使の娘です」

 

「そうでしたか…私は情報部のジェルマン・ジルディール中尉です」

 

「ありがとうございます中尉さん」

 

「ハハハ…皆さんも早く監房から出てください!ジョーレンあれを吹っ飛ばせ」

 

「わかった、全部か?」

 

「全部だ、なるべく引き付けたい後船の用意も頼む」

 

「OKまかせろ、L8シャトルを出せ、起爆したら急いで近くの発着場に停めるんだ」

 

機械オンの返事が聞こえるとジョーレンは「いい子だ」と言ってコムリンクを切った。

 

そのままブレスレッドのスイッチを押し夜のうちにジョーレンが仕掛けておいた爆弾が起爆シークエンスが始まる。

 

「爆発の連鎖反応でこの施設は一時的に停電に陥りますが迷わずついて来て下さい」

 

「どこへ行くんだね」

 

大使館の1人が訪ねてきた。

 

とても心配そうな表情をしている。

 

「発着場まで向かいます、そこに迎えの船が来ているので急いで脱出しましょう」

 

「君たちに全て任せる」

 

セルヴェント大使はジェルマンに信頼の眼差しを向けた。

 

彼は無言の頷きでそれに応えた。

 

「そろそろ吹き飛ぶぞ…3…2…1…今だ」

 

収監所の動力パイプや動力区画に設置した爆薬が一斉に吹き飛ぶ。

 

あまりの衝撃の大きさに建物全体が一時的に揺れ直後エネルギーを失った為建物は全て停電に陥ってしまった。

 

しかしすぐに予備電源が回され消灯だけは復旧した。

 

「これでお前の手品が上手くいけば隔壁は閉じないんだな」

 

「非常時だけの監房ブロックの隔壁のプログラムを弄ったから多分」

 

数秒後ジェルマンの目論見は成功し隔壁は全て閉まらなかった。

 

よくやったという意味を込めてジョーレンは彼の頭をポンポンと撫でた。

 

「さあ行きましょう」

 

ジョーレンを先頭にして一行は走り出す。

 

衛兵のほとんどは消化活動や他の囚人達の監視活動に移った為大勢で移動していてもバレることはなかった。

 

しかも施設職員は皆混乱しており正常な判断が出来ておらずドロイドを起動することすら忘れていた。

 

「ちゃんと近いところに止めてくれたんだよな?」

 

「ああ、あの先だ!」

 

「塞がれてる!」

 

「爆薬で吹っ飛ばす」

 

ジョーレンはインパクト・グレネードを投げて隔壁を無理矢理こじあげた。

 

あまり頑丈ではないのかインパクト・グレネードの一撃で隔壁は粉微塵に粉砕されてしまった。

 

きっと帝国軍の施設だったらそうは行かなかっただろう。

 

「よし全員急いで!」

 

「足元にも気をつけて」

 

ジェルマンとジョーレンが大使館のメンバーを誘導する。

 

扉の先にはジョーレンが呼んだテイランダー級シャトルが停泊していた。

 

本当はもっと頑丈で武装がついているやつが欲しいのだがそんなこと言っている暇はない。

 

なるべく早く逃げなければならないのだから。

 

「おっと、大丈夫ですか?」

 

破片に躓きそうになったヘルヴィをジェルマンは優しく支えた。

 

「ありがとう」

 

「さあ急いで」

 

彼女を送り届けるとジェルマンは他に遅れた人がいないか確認した。

 

「これで全員だな」

 

「ああそうだな!」

 

ジェルマンに返答しながら彼はブラスターの引き金を引いた。

 

たまたま通りかかった衛兵が彼らのことを発見したのだ。

 

しかもかなり大勢いた。

 

「逃げよう!」

 

「侵入者だ!待て!」

 

衛兵達数人は警備用のブラスター・カービンで攻撃してきた。

 

しかし元パスファインダーと情報部将校の敵ではなかった。

 

放たれたブラスター弾はほとんど当たらず返り討ちに遭うばかりだ。

 

「ストームトルーパーよりも歯応えがないぜ!」

 

「えっ?戦ったことあんの?」

 

「当たり前だ、パスファインダーの仕事はストームトルーパーを殺す事と変わりない」

 

2人はまだ1日足らずの縁だったがいつの間にかかなり親しくなっていた。

 

ゆっくりと退き下がりながら確実に追手を始末する。

 

テイランダー級の近くまで退いた頃には数十人いた衛兵はもう2人程度しか残されていなかった。

 

その生き残り達も抵抗虚しく瞬殺されたが。

 

「クリア、ドロイド船を出せ!」

 

2人が乗り込むとドロイドが操縦するテイランダー級はゆっくりと浮上し収監所を離れた。

 

エネルギー不足なのか砲塔やレーダーは全く反応を示さない。

 

その中を悠々とジェルマン達を乗せたテイランダー級は空高く進んだ。

 

施設はまだ混乱しているのか追手が来る事はなくそのまま一気にハイパースペースまで突入した。

 

実際大使館メンバーの脱走に気づいたのはこの30分後の事であり彼らは追手の心配なく逃げ延びる事が出来たのだった。

 

シャトルはハイパースペースの中を進んだ。

 

首都ホズニアン・プライムを目指して。

 

既に帝国の牙が喉元まで迫っているとも知らずに。

 

 

つづく

 




知ってますかね皆さん
明日は帝国の日なんすよ(Twitterの一部のみ)
祝いましょう(強制)
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