第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「この力がナブーの民を誰1人傷つける事なくナブーを護らん事を切に願う。それこそが我らが歩む新たなこの星の歴史の一歩でありナブーの平和の為であるのだから」
-シード宮殿に記されたある一文より抜粋-


第三次ナブーの戦い

-惑星ナブー 海軍本部付近-

「総員!突撃用意!」

 

草陰から一斉に立ち上がったカドゥとグンガンの騎兵達がサーベルを引き抜き、或いはセスタを構えホーリス隊長の命令を待ち続けた。

 

一番先頭にいるホーリス隊長のカドゥにはレースで勝利して手に入れた大きな羽が何枚か付いており今までの功績を知らしめていた。

 

ホーリス隊長はサーベルを構え騎兵隊よりも二、三歩手前に出る。

 

彼の命令を全てのグンガン騎兵が待ち望んでいた。

 

「我々はこれより敵反乱軍及び帝国軍に対し騎兵突撃を行う!カタパルト攻撃用意!」

 

「ハッ!」

 

ファンバから下ろされたカタパルトに青い球体、ブーマが取り付けられ投擲可能な状態となった。

 

「我々が突撃と同時に敵陣へ投擲せよ、奴らにオータ・グンガでの借りを返してやれ。失われた同胞と今を生きる全てのグンガン達の為に戦え!」

 

騎兵達が「おお!!」と皆掛け声を上げ辺りには戦意が満ち溢れている。

 

ここにいる騎兵達は皆、親を失った者、妻や子を失った者、戦友を亡くした者、全員が故郷を破壊され何かを失っている。

 

だがそれはいち早くグンガンに知らせを出し、1人でも多くのグンガンを救おうとした王室解放軍もそうだ。

 

彼らは主君を失い裏切り者達から故郷を追われ自由を奪われた。

 

我らは皆、何かを失った者同士なのだ。

 

それは恐らくレジスタンスもそうだろう。

 

だから我らは手を取り合い、共に立ち上がる事ができた。

 

我らは同じ星に住まう友であり、何処か似た者同士なのだ。

 

だから時折仲違いをするし危機の時は共に戦える。

 

今からそうするように、これからもそうしていくように。

 

我らは失ったものを取り返し取り返せない分のツケを返す。

 

その魁たるのが我らはグンガン騎兵隊だ。

 

これほど誇らしいことはない。

 

ホーリス隊長は自らのカドゥを反転させサーベルを構える。

 

騎兵隊のリーハイ副隊長は手綱を離し専門の楽器を鳴らして全騎兵隊に突撃の合図を出した。

 

「突撃!」

 

ホーリス隊長の命令と共にグンガン達は大声を上げカドゥを走らせた。

 

何百、何千のカドゥがホーリス隊長に導かれ一斉に敵陣へ向け突撃を開始する。

 

草原を抜け、平原を駆けるカドゥの騎兵隊はもはや芸術的とも言える形容し難い美しさを作り出していた。

 

カドゥの足音と兵達の怒号が混じり、蹴られた土が周囲に跳ねて飛び回っていた。

 

特にホーリス隊長の羽の付いたカドゥは走る度に羽が翻りとても美しい。

 

そんなカドゥとグンガン達の後方からはカタパルトに乗せられたブーマが投擲されホーリス隊長達の頭上を横切った。

 

放たれたブーマは暫く空中を浮遊した後目標である保安軍の包囲網の敵陣に着弾した。

 

青い球体が地面に着くと同時に割れ中身のプラズマが周囲に放出された。

 

あまりの衝撃に何人かの保安隊員やストームトルーパー達はその場で気絶しプラズマにより多くの兵士の武装が使用不能になった。

 

「なっなんだ!?早く偏向シールドを!」

 

「ダメです!プラズマにやられました!機能しません!」

 

ストームトルーパーのE-11や保安隊員のCR-2ブラスター・ピストルがショートし火花を散らす。

 

ブーマの擲弾は数十秒に渡って降り注ぎ、その場の全員を混乱させた。

 

そして混乱したところへ騎兵の猛攻が訪れる。

 

「進め!!」

 

その掛け声と共にホーリス隊長はまず1人の保安隊員をサーベルで斬り倒した。

 

彼がこの戦いの最初の犠牲者だ。

 

戦線に到着した騎兵達は手に持つ武器で次々と保安隊員やストームトルーパーにトドメを刺した。

 

猛スピードで進みながらサーベルで敵兵を斬り、或いはセスタの長槍で敵兵を串刺しにし即死させる。

 

ブラスター・ライフルで応戦しようと引き金を引くがブーマから放たれたプラズマの影響で既にブラスターや他の携帯火器は殆ど使えず蹴散らされた。

 

左、右と右往左往する敵兵を叩き斬りホーリス隊長は確実に敵兵の数を減らした。

 

隣を見ればホーリス隊長の補佐役であるボフリー副官がセスタを振り回し近接戦でなんとか騎兵を仕留めようと駆け寄ったストームトルーパー達を皆殺しにした。

 

その一撃でヘルメットやアーマーが砕け周囲に白い破片が散らばった。

 

「止まるな!前進し多くの敵兵を屠れ!」

 

ホーリス隊長はカドゥを走らせながらまた1人のストームトルーパーがホーリス隊長のサーベルの餌食となった。

 

周りでも多くのストームトルーパーや保安隊員が騎兵隊の襲撃の餌食となり、その骸を平原に晒していた。

 

ある1人のグンガン騎兵が手持ちのブーマを密集した敵兵に投げつけその衝撃で数人を一気に気絶させる。

 

既に真横からの奇襲に耐えられなかった敵部隊は多くの兵士が討ち取られ潰走を始めていた。

 

武器も使えない、まともな支援も受けられない、目の前には死に物狂いで突撃する騎兵の群れがいる、こんな状況で歩兵に出来る事は限られていた。

 

銃剣やナイフで応戦しようとする気概のある者も何人かいたが重火器を持たぬ歩兵が騎兵に敵うはずもなくセスタやサーベルの前に斃れていった。

 

「後退!後退…ウッ…!」

 

後退を命じていた親衛隊の将校も1人のグンガン騎兵が投げたセスタに心臓を貫かれ即死した。

 

その騎兵はすぐにセスタを取り返しまた多くの敵兵を打ち倒す。

 

「敵軍は崩れている!今は好機だ!攻めて攻めて攻め立てろ!」

 

カドゥの上からホーリス隊長は命令を出し更なる突撃を命じた。

 

戦況は圧倒的グンガン側の優位、しかし敵の下士官や将校達が辛うじて効率的に退却と部隊再編を行おうとしている。

 

チリジリになった敵を蹴散らしつつひたすら突撃し敵部隊をかき乱すのが使命である彼らにとっては少し厄介だ。

 

「ジルディール上級中位から貰ったこれを使うか……」

 

ホーリス隊長はジェルマンが以前プレゼントしたDH-17ブラスター・ピストルをホルスターから取り出し、カドゥを走らせながら親衛隊の将校を撃った。

 

見事に弾丸は命中し親衛隊の将校は頭に直撃を喰らい死亡した。

 

「よし!意外と役に立つなこれ!」

 

また別の保安将校を撃ち、更にまた別の部隊長を急いでサーベルに切り替えて接近し斬り倒した。

 

騎兵隊は更に前進し破竹の勢いで敵軍を撃破し続けた。

 

騎兵隊本来の突破力に加え側面からの奇襲攻撃、更には退却を許さず徹底的に追撃し敵陣地を破壊、そして指揮系統を確実に破壊し敵の残兵を更に混乱へと陥れた。

 

上官がセスタの槍で貫かれ戦死し自らはカドゥの騎兵に追いかけられている。

 

忠誠心と精神力の強い親衛隊のストームトルーパーはともかく保安隊の歩兵達ではとても耐えられる恐怖ではなかった。

 

おまけに武器が使えないのだから立ち止まって戦おうとしてもすぐに蹂躙された。

 

しかも指揮官であるホーリス隊長の指揮はカドゥの上で自らも戦闘中なのにも関わらず的確で突撃支援にも余念がなかった。

 

「カタパルト隊、補給隊と共に前進し再び投擲支援せよ。我々は一気に前進する!」

 

『了解!』

 

腕のコムリンクから後方部隊に指示を出し再びカタパルトによるブーマの投擲支援を命じた。

 

コムリンクによる即時情報伝達が部隊を素早く動かし連続した突撃支援を持続させる。

 

これにより再び突撃を喰らう敵軍は火器が使用不可能となりまた騎兵突撃の威力を真っ向から受けることとなる。

 

ある種原始的な騎兵による突撃をここまで効果的に仕上げているのはこのように様々な要因があった。

 

しかしホーリス隊長の騎兵隊による突撃にも流石に限界がある。

 

彼は心の中でいつまでこの圧倒的攻勢が続くかという事を常に考えていた。

 

敵を斬り倒し騎兵達を鼓舞する瞬間もだ。

 

AT-ATやAT-STのような騎兵を遥かに上回りブーマによる支援投擲の効力も薄い相手が眼前に立ちはだかった時、いよいよ騎兵隊の突撃は停止し部隊は全滅するだろう。

 

そうならない為にも本来の目的を早急に達成する必要があった。

 

首都シードの奪還とナブーの解放、彼らの全て賭ける目標の為に。

 

 

 

 

「本部包囲部隊が内部の奇襲を受けて戦闘中らしい。我々も直ちに救援に迎えとの命令だ」

 

ストームトルーパーの分隊長が同じ分隊の副分隊長にそう告げた。

 

彼らは兵員輸送機に乗って移動するパトロール分隊で先ほども近くの村の警備と調査を行なっていた。

 

彼らのパトロール任務は単なる治安維持活動や敵軍の捕縛だけでなくエイリアン種族、近人間種族の逮捕と拘束も含まれていた。

 

偶々先ほどまでいた村にエイリアン種族や近人間種はいなかったが他の分隊は何人か摘発したそうだ。

 

その中にはナブーに住み着くグンガン族もおりその場で射殺されたらしい。

 

エイリアン種族根絶を目指す第三帝国は当然このナブーでもそれを実行し始めた。

 

特にこの惑星の代表エイリアン種族たるグンガンは弾圧されシードは疎か本来の住処すら奪われてしまった。

 

オータ・グンガは破壊され多くのグンガンが命を落とした。

 

今は生き残ったグンガン達が何処かに身を隠しており第三帝国とクーデター軍は必死で探していた。

 

近々グンガン捜索を本格しいよいよ本気の殲滅を開始するとも噂されている。

 

「我々偵察分隊まで向かわせるのか?」

 

副分隊長は分隊長に疑問を投げかけた。

 

「何でも中央の歩兵部隊がイオン攻撃を受けて手も足も出ないらしい。装甲部隊も動かせないようで近場の我々に急いで救援に向かうよう指示が出た」

 

「だが後二件、巡検する村が残ってるぞ」

 

「どうせ予備隊が回される、我々が気にする必要はない。輸送機に乗り込むぞ」

 

副分隊長は頷き輸送機に乗り込もうとした。

 

しかし突然強めの風が辺りに吹いて副分隊長は足を止め辺りを見回した。

 

「今何か凄い風が…」

 

「ナブーの気候のせいだろう、とにかく急ぐぞ」

 

分隊長は突然の突風をそう考え副分隊長と共に輸送機に乗り込んだ。

 

だがこれは大きな間違いだった。

 

風は風でも今の風はナブーの気候が生み出した自然のものではない。

 

人工的な、人為的に生み出した“()()()()”だ。

 

その機体はクローキング装置により可視化されていないだけでそこに確かに存在していた。

 

ストームトルーパー2人がクローキングと実際の空の風景の違いに気づけたら恐らく状況はもっと変わっていただろう。

 

何せ機体のパイロット達はストームトルーパーの兵員輸送機を先に発見し大分ヒヤヒヤしていた。

 

「……ホントにバレてないよな……ホントに気付いてないよな…?」

 

助手席に座るジェルマンは隣で冷や汗掻きながら操縦するジョーレンに対しそう告げた。

 

ジョーレンは一言「分からん…」とだけ返す。

 

彼らは唯一クローキング装置を備えているUウィングで解放軍最精鋭部隊を秘密裏にナブーのシード宮殿まで輸送するつもりだった。

 

このUウィングならレーダーにも引っかからないし目視での発見も不可能だ。

 

ただし今のように地表に若干近い時に発生する風はどうしようもない。

 

おまけに本来予定では出会うはずのなかった親衛隊のパトロール隊がいた事により2人は有り得ないほど注意力を払って進んでいた。

 

「レーザー砲とか増援部隊とか送ってこない辺りバレてはないと思うが…」

 

口ではそう言うジョーレンも内心はあまり確証がなかった。

 

だが今はとにかく早くシード宮殿に接近して部隊を展開する他ない。

 

「全陽動部隊、攻撃を開始したそうです」

 

コックピットに近づいてきたメンジス三佐は2人に戦闘開始の報せを告げた。

 

ジョーレンは早速「戦況は?」と彼に尋ねた。

 

「騎兵突撃は大成功、第1本部護衛軍も想定より善戦しているそうです。海軍とスターファイター隊は取り敢えず地上基地の24%の出撃妨害に成功したと」

 

「まずまずって所ですかね……特殊通路から先にシード近郊で待機しているソルーナ女王の隊からはどうですか?」

 

「敵には察知されていないそうです。しかしシードの守備隊は増援を出すわけでも、更に部隊を入れるわけでもなく以前動きなしと」

 

メンジス三佐の報告通り、シード守備隊は兵力を展開するわけでもなく、かと云って他の方面から増援を受け入れ守備を固めるわけでもなかった。

 

現状戦力を維持したままこちらに備えていると云った印象だ。

 

「そりゃまあそうだろうな。こっちにまともな機甲戦力がない以上地上戦では帝国軍とクーデター軍の方が圧倒的有利だ。それに連中はクリースとか言う奴らが新しい軍を連れて帰ってくるまで耐え抜けばいいって腹積りだろう。防戦一方でも奴らは構わないだろうしな」

 

帝国軍とクーデター軍は防戦一方でも問題はないが解放軍とレジスタンス軍は多少危険を孕んでいても勝負に出るしかない。

 

かなり不平等な戦いだがレジスタンス軍も解放軍ももはやそれが“()()()()”だ。

 

いつだって圧倒的優位な、もしくは平等な状況で戦えたことは少ない。

 

だからと言って負けるつもりもないが。

 

「まあ我々の作戦としちゃあむしろ首都の守備隊を更に増やして防備を固めて貰った方がいいんだがな。なるべく多く敵兵を“巻き込める”」

 

少し悪い顔をしながらジョーレンはそう呟きジェルマンも小さく頷いている。

 

そうこうしているとようやく目標の場所が見えてきた。

 

首都シード。

 

以前訪れた街並みはそっくりそのまま、上空から見るとよりその美しさが分かる。

 

「このまま裏側まで回って河川放出部から内部に侵入する」

 

緊張と共にジョーレンはシードの上空をそのままゆっくりと飛んだ。

 

下を見下ろせば大通りを封鎖するAT-ATの姿がよく見えた。

 

それ以外にも曲がり角に砲台やAT-STの姿がチラリと見え彼らを戦慄させた。

 

もし通常の市街地戦を展開し身を隠す為に曲がり角を曲がったらあのスカウト・ウォーカーがいたらと考えるとゾッとする。

 

歩兵を容赦なく蹴散らし大きな足音を鳴らして市街地を我が物顔で進軍するAT-STはさぞかし恐ろしいだろう。

 

下手すればAT-ATなんかよりもよっぽど脅威になるかもしれない。

 

「連中、相当強固に防衛網を張り巡らせてる……防衛に関しては本気らしいな」

 

独り言を呟きながらジョーレンは機体を旋回させシード宮殿を潜るように裏側へと侵入した。

 

以前TIEボーディング・クラフトを奪取した時と同じく給電格納庫は内部の1機も出撃せず静けさを保っていた。

 

だが侵入箇所は今日はここじゃない。

 

「宮殿地下の河川放出部……これか…」

 

ジョーレンはゆっくりと機体を移動させながら目標地点に到達した。

 

シード宮殿は自然と調和した美しい造りであり建物の数十メートル下には大きな滝が流れていた。

 

今より40年も前の通商連合のナブー侵攻を受け非常用の地下施設を増設したシード宮殿は実はこの滝が流れる洞窟とも一部が繋がっていた。

 

もう塞がれているがある一つの地下施設が滝が流れる奥底の洞窟と繋がっており多少面倒ではあるがシード宮殿に侵入する事が出来る。

 

この作戦ではUウィングで洞窟に侵入しそこから歩兵隊を展開する事が求められた。

 

だがそれは至難の業だ。

 

ジョーレンは機体の両翼を出来る限り小さくし全ての操縦支援システムを起動した。

 

一旦操縦桿から手を離し指の関節を鳴らし一息吐くとジョーレンはしっかり操縦桿を握り締めた。

 

「行くぞ」

 

ジョーレンの一言によりUウィングはゆっくりと洞窟に近づき始めた。

 

機体の数パーセントの速力しか出していないのだがUウィングはかなり洞窟に近づきコックピットの光が遮られ暗くなった。

 

Uウィングのライトが点灯し多少明るくなったが先が見えないのは変わりない。

 

機体を岩壁にぶつけないよう細心の注意を払いながらジョーレンは機体を奥へと進める。

 

とてつもない緊張がUウィングの船内に広がりコックピットにいない兵士達もジョーレンの操縦を固唾を飲んで見守っていた。

 

「後もう少し……もう少し……」

 

ジョーレンは機体の計器に目をやりながら機体の速力を調整する。

 

計器のメモリが僅かに揺れ動いた時ジョーレンは「今だ!」とエンジンを急停止しリパルサー・リフトで機体を浮遊させたままの状態にした。

 

機体はピタリと停止し1ミリたりともズレぬまま入り口部分まで侵入出来た。

 

安堵の息を漏らしジョーレンは背もたれに寄りかかる。

 

「よし、全員急ぐぞ。ブラスターと実弾銃の装備を忘れるな」

 

メンジス三佐が隊員達にそう促し彼もS-5ブラスター・ピストルをホルスターに仕舞い実弾銃を手に取った。

 

Uウィングのハッチが開き数人の擲弾兵と特殊部隊員が外へ出る。

 

「クリア」

 

他の隊員達も後に続きジェルマンとジョーレンを除く他全員が岩壁に偽装されている扉の前に集まっていた。

 

機体を固定させ残りの2人もメンジス三佐らの下へ向かった。

 

「コード入力完了、ドア開きます」

 

特殊部隊員がコードを入力しそれから数秒も経たないうちに外壁が崩れドアが開いた。

 

重火器を装備した擲弾兵が先行して中に入り先ほどのように安全が確保されると他の隊員も続いた。

 

目的地の地下室に行く間にジェルマンは独り言のように呟く。

 

「これで潜入には成功……後はレジスタンス軍の到着のみ……」

 

「そしてお前の“()()()()()”だな」

 

ジョーレンの言葉にジェルマンは小さく頷き部隊に続いた。

 

既に宮殿内に侵入成功、後は全ての役者が集まって舞台装置が作動するだけである。

 

 

 

 

 

 

-第三帝国領 コルスカ宙域 コルサント星系 惑星コルサント ギャラクティック・シティ-

ミッド・リムの狭間からかなり距離の離れたこのコア・ワールドの中心地たる惑星コルサントでは戦場など既に遠い場所の話に思われていた。

 

1年前ならともかく既にコルスカ宙域を含めたコア・ワールドの支配基盤は安定の域に達しておりこの地に戦火が降り掛かる事はなかった。

 

アンダーワールドなどの治安も第三帝国の全治安維持組織の徹底した活動により徐々に改善の兆しを見せている。

 

更に再び銀河系の中央政府の首都惑星となったことで移民が増え以前のような活発さを増していた。

 

もはや銀河内戦末期からコルサント臨時政府にかけての暗黒の姿はどこにもなかった。

 

再び終わりなき繁栄と発展の時代を迎え多くのコルサント市民がコルサントの住人であることを、第三帝国の国民であることを誇りに思っていた。

 

発展の裏に積み上げられたものはともかく表向きの発展と繁栄を享受し甘い汁を吸い続けた彼らはすっかり第三帝国と総統の虜となっていた。

 

故シーヴ・パルパティーンと同等、それ以上に持て囃され多くの国民が“Heil fuehrer(総統万歳)”と彼の肩書きと尊敬の言葉を口にした。

 

銀河の世界首都たるコルサント改造構想もシューペル建築総監の元で実行に移されていた。

 

首都の周辺だけ見れば第三帝国は敵なしの超大国に見えた。

 

だが内情を知っているものからすれば他の国民と共に楽観的な未来予想を思い浮かべている事など出来はしなかった。

 

特に第一線に立って祖国の敵を撃破し続ける親衛隊の将校ともなれば。

 

ジークハルトはもちろんそのうちの1人だった。

 

彼はまだコルサントに駐留したままだったが各地から送られてくる戦況は耳にしている。

 

良いものもあれば悪いものもある、全体的に芳しくはないがかといって悲観するほどでもないと言う状況だ。

 

しかし家にいる時はそのようなこと一切口に出さず、平凡な良き父として振る舞おうとしていた。

 

「ユーゲント・アカデミーはどうだ?楽しいか?」

 

帰宅しても着替えずまだユーゲントの制服のままでいる2人にジークハルトは軽く聞いてみた。

 

まだ2人は10代にも満たない子供達だ、流石に帝国アカデミーほどの本格的訓練はしていないだろう。

 

まずマインラートの方が答えた。

 

「楽しいよ!友達もいっぱいいるし新しいものいっぱいだし」

 

「勉強も先生達のおかげでとっても捗ってます」

 

「そうか、それは良かった」

 

ジークハルトは子供達の話を聞きながらにっこり微笑んだ。

 

2人が楽しく幸せなのはとても良いことだ。

 

親衛隊として戦う理由の半分はこの為にあると言っても過言ではない。

 

もう半分は……いや、今は考えない方がいい。

 

「2人とも毎日楽しそうにアカデミーに行ってるから安心したわ。辛かったらいつでも言ってね」

 

「ああ、まあそんなことはないと思うが……」

 

彼の言葉を遮るように連絡用の機器が音を鳴らし「なんだ…?」とジークハルトはポケットから取り出した。

 

どうやら親衛隊本部からの文章メールのようだ。

 

子供や妻に見せぬようささっと目を通しすぐにポケットにしまい戻した。

 

マインラートは「なんだったの?」と聞いてくるが流石に内容を明かす訳にはいかない。

 

「なんでもない、ただの仕事の内容だったよ。それよりももっと色々アカデミーのことを聞かせてくれ」

 

上手いこと誤魔化しつつジークハルトは息子の話に耳を傾けた。

 

だが思考はまだ先ほど見たメールの画面に捉われていた。

 

親衛隊司令部による特別戦略転換会議による方針変更の伝達。

 

十中八九モーデルゲン上級大将から薄々伝えられていた新勢力の台頭、だろう。

 

それにより第三帝国、いや銀河全体の戦況と戦略が大きく変わる。

 

しかし気になる点は幾つかある。

 

第一、今更銀河系の戦況を大きく変える程の勢力が台頭することなどあるのだろうか。

 

未知領域はチス・アセンダンシーとファースト・オーダーが、この銀河系は第三帝国とその他の中小の親帝国派と中立政府が、そしてレジスタンスがいる。

 

既に銀河系にこれ以上何かが出現する場所がなくあるとすれば本当に僻地の僻地、ワイルド・スペースや未知領域よりも果てから来る者くらいだろう。

 

だがそんな僻地から現れる連中など普通に考えれば高が知れている、態々親衛隊が方針を転換する事もない。

 

そうではないという事はつまり……。

 

「…でね、学校でもお父さんの話になったんだよ!」

 

ジークハルトの思考と意識はそこで一旦現実へと引き戻された。

 

意外なところで自分の名前が出てきた。

 

「なんでお父さんの話になったんだい?」とジークハルトは我が子に尋ねる。

 

「学校の先生達がね、こうなるべき人ってのでお父さんの名前を出したんだ」

 

どこか納得したようにジークハルトは頷く。

 

「クラスメイトがみんなテレビで見たことあるって言ってしました」

 

ホリーもそう付け加えジークハルトは苦笑を浮かべざるを得なかった。

 

教官の言葉は私への忖度だとしてもそこまで有名だとは思わなかった。

 

幾ら戦功多き人物だと言ってもジークハルトはまだ一軍団長の准将でしかない。

 

しかしそんな事を気にしないマインラートはすごく誇らしげだった。

 

ホリーもその話を楽しそうに聞きいて話ておりユーリアもまんざらでもない表情である。

 

マインラートはふと呟いた。

 

「僕もいつかお父さんみたいになりたいなぁ」

 

「………っ……」

 

それはマインラートにとっては本当にたわいない純粋な気持ちからなる呟きだったのだろう。

 

だがそれは、かつて同じ事を思いここまで来たジークハルトからすれば胸の底に隠してある痛みを呼び起こす引き金となった。

 

ああマインラート、やはりお前は私の息子だ。

 

同じ事を同じ年頃の頃思った。

 

父のようになりたいと、クローン戦争の英雄にして帝国軍の名将である父みたいな男になりたいと常々願った。

 

だから父の反対を押し切って軍に幼い頃から入り帝国軍人となった。

 

卒業したての頃、父が言った言葉をよく覚えている。

 

「何も出来なかった。何一つ守れなかった」

 

あの冷たい、自らを叱責するかのような言葉は今になってようやく理解出来た。

 

数百、数千という戦友を失った。

 

その中にはアカデミーの頃から共にいた大親友だっていた。

 

それでも何も出来ぬまま、何一つ守れなかった。

 

自分だけ生き延び今ここにいる。

 

その結果はどうだ?

 

この歪みから誕生した組織に身を寄せ、かつての栄光ある帝国軍の軍服など一つも身に付けていない。

 

邪の道を行き帰り道を見失った。

 

救われなかった、救えなかった。

 

全ての道を見失った。

 

だがまだ希望はある。

 

私の目の前に、“2()()”もいる。

 

「……マイン、そしてホリーも。2人は私じゃない、2人は2人、家族でも同じ人じゃない。だから態々私みたいになろうだなんて思わなくていいんだ」

 

ジークハルトは椅子から降りて2人に目線を合わせてゆっくりと諭すように話した。

 

ウェイランドで激励を飛ばしたあの部隊長とは思えない優しい語り草だった。

 

「マインはマインの道を、ホリーはホリーの道を進んで欲しい。きっと私とは違う道を行けるはずだ。私は、2人が本当に自分の意志で選んだ道に進んで欲しい」

 

2人の頭を撫でて優しく微笑みかける。

 

するとマインラートもホリーも照れ臭そうに笑みを浮かべた。

 

後ろでユーリアも微笑ましい気持ちで見守っている。

 

そう、こんな光景を守る為に私は私の道にまだいる。

 

今更引き返す事などもう不可能だ。

 

何があろうとこの家族を守って見せる。

 

ジークハルトは再び2人に語りかけた。

 

「大丈夫、きっとなんとかなる。だって2人は私達の“()()()()()()()()()()”」

 

 

 

 

 

-惑星ナブー 首都シード シード宮殿 玉座の間-

玉座の間には今や保安軍の姿は見えず代わりに代理司令官として派遣された親衛隊少将ルースト・ヴェルフェンスと配下の親衛隊将校、ストームトルーパーが警備の任についていた。

 

今は玉座の近くに親衛隊の幕僚達が集まっており作戦を立て直していた。

 

「海軍本部に籠る敵軍はまず中央の包囲部隊を側面から襲撃しています。また同様に右翼包囲部隊の第3保安機械化大隊と我が親衛隊の第45装甲大隊も攻撃を受けています」

 

「側面攻撃の為に配備した装甲部隊だったがこれでは救援に送れそうにない……よし本隊から二個大隊ほど救援を出そう。他の基地及び駐屯地の損害状況は?」

 

ヴェルフェンス少将は他の幕僚達に尋ねた。

 

そのうちのタブレットを持った親衛隊中佐が彼に報告した。

 

「本部から発艦したと思われる海上艦隊と潜水艦隊がミサイル攻撃により付近の海軍基地と保安隊駐屯地、スターファイター隊基地を攻撃しています」

 

「滑走路は数日あれば修復出来ますが現状出撃は出来ません。また海上からの航空攻撃も受けており被害は小規模ですが展開力に問題が生じています」

 

「TIEファイター部隊なら出せるはずだ、必要なら軌道上の艦隊から支援を取り付けろ。いやどうせなら首都防衛以外の主力兵団を全て動員して…」

 

幕僚達の報告にヴェルフェンス少将は一気に撃滅するプランを考えた。

 

だが副官のブレティス上級大尉が「しかしクリース宙将からは制圧のみ行えと命じられていますが」と付け加えた。

 

ヴェルフェンス少将は唸り声を上げ腕を組んで寄りかかった。

 

「だが放置する訳にもいかん。本部への攻撃は行わないが斗出した敵部隊を撃破する事くらいは許してくれるだろう…」

 

「では副兵団長のベルケー准将に攻撃命令を?」

 

中佐はヴェルフェンス少将に尋ね少将は「ああ」と相槌を打つ。

 

「包囲部隊の救援に迎え、救援の際に多少敵部隊を撃滅しても構わんと伝えろ。ただ手助けするだけでは士気も下がる」

 

「了解しました」

 

中佐は敬礼し他の幕僚と共に各部隊に指示を伝達し始めた。

 

ヴェルフェンス少将も席を立ち窓辺から宮殿の裏側を見つめた。

 

副官のブレティス上級大尉もそれに続く。

 

「連中の狙いは恐らくこのシードだ。海軍本部からの攻撃は揺動だろう」

 

「では主力本隊を差し向けてよろしいのですか?」

 

ブレティス上級大尉はヴェルフェンス少将の独り言に対してそう疑問を投げかけた。

 

ヴェルフェンス少将は問題なさそうに頷いた。

 

「確かに量的な主力はベルケーに渡したが質的な主力は全てこのシードに置いてある。敵軍がシードを襲撃しようとした瞬間が敵軍の敗北となるだろう」

 

この首都シードには王室保安軍保安隊3,200名に加え親衛隊9,700名が駐留している。

 

更に多くのAT-ATやAT-ST、対空防御用のAT-MP、更には市街地専用のオキュパイア・タンクやAT-DTまで存在していた。

 

中央の大通りは完全にAT-ATが塞いでおり各所に配備された対空砲網やAT-ST、ストームトルーパー達が鉄壁の防御網を形成していた。

 

更に住民にはより強力で強制力のある戒厳令を展開しておりシードは今や完全なる都市要塞と化していた。

 

「航空攻撃は宮殿の駐留スターファイター隊と防空隊が、地上攻撃には歩兵隊と幾多のウォーカーが、パルチザン戦にはタンクと小型ウォーカーが対処する。もはやシードを堕とすのは不可能だ」

 

それにこれらの部隊が仮に壊滅したとてシード宮殿が我々の手にある以上“()()()()”はこちらにある。

 

敵部隊を一瞬で無力化出来る秘密兵器だ。

 

「防衛体制の状況はどうなっている?」

 

「各装甲部隊及び歩兵部隊の展開は完了しています。まさかあのAT-DTが意外とバンカーとしてはそれなりに有効とは…」

 

「正直私も驚いている……がこの際使えるものは何でも使うべきだ。クリース宙将殿とグリアフ一佐が戻るまで、何としても凌ぐぞ」

 

「はい、我々の戦力だけではレジスタンスや他の勢力が救援に駆けつけた時、対処しきれませんからね」

 

ブレティス上級大尉は何処かため息混じりにそう呟いた。

 

今レジスタンス軍は勢いを増している。

 

このままどこかの基地から艦隊と地上部隊を一片に送られたら勝率は五分五分と言ったところだろう。

 

一個兵団を派遣したとはいえそれでもこの危険地帯を抑えるにはやや兵力不足だった。

 

「やはり我々だけでなく、他の兵団も含めた一個軍を送るべきだったと思いますが…」

 

「そう言うな上級大尉、いくら親衛隊が動きやすいとはいえそれでも限度がある。一個軍を送れるほどの余力はそんなにないさ」

 

むしろ一個兵団もよく送った方だ。

 

本来ナブーに対して行っていたのは武器支援と教導支援のみで逆にナブーの王室保安軍がデア・フルス・ソルー軍団を拡張させ親衛隊や帝国軍に戦力を提供するはずだった。

 

元々あの軍団は他の親衛隊兵団や親衛隊師団をベースとしておりやがては新たな親衛隊地上軍の部隊となる予定だ。

 

ナブーの現地人に親衛隊員を加えてライヒスホズニアン兵団やライヒスシャンドリラ兵団のような部隊を建設する。

 

その為にクリース宙将とグリアフ一佐は軍団を連れてナブーからロマムールの親衛隊司令支部に向かってもらっているのだ。

 

「我々とて厳しいのだ。コア・ワールドからインナー・リム、幾つかの飛び地のみに点在していた我々が一気に銀河系の支配者になるなど限界がある。時間を掛け、徐々に敵対者を排除していけば良いのだ」

 

「はあ……しかし…ん…?」

 

ブレティス上級大尉は怪訝な表情を浮かべていたがその直後耳元のコムリンクから情報が入り血相を変えた。

 

その様子を怪訝に思ったヴェルフェンス少将は彼に近寄った。

 

「何かあったのか?」

 

副官に尋ねると彼は小声でヴェルフェンス少将に告げた。

 

「ハイパースペースより接近する大型艦船を艦隊が補足しました。間違いありません、“()()()()()()()()”」

 

ブレティス上級大尉の一言は余裕そうな表情を浮かべていたヴェルフェンス少将の態度を大きく変えさせた。

 

それは予想外の不意を突く行動であり十分絶望的状況へ引き摺り込むのに十分な代物である。

 

だが彼らにとってそれは織り込み済みだ。

 

既にナブーの解放者達は彼らの一歩上を行っていた。

 

 

 

 

 

 

 

森林部を抜けた奥から何度もドシン、ドシンという重厚感溢れる歩行音が広がり王室解放軍の兵士達の恐怖を煽った。

 

あの全長20メートル、全高22.5メートルの巨体を持つ鉄の歩行者はなんと恐ろしい存在なのか。

 

兵士達はアレと戦い続けて心底そう思った。

 

基本的な実体弾やレーザー兵器は殆ど効かず、直撃しても銀灰色の装甲に黒ずんだ煤がつくだけだ。

 

おまけに相手の兵装は歩兵を即死させるどころか砲や車両をどれも一撃で破壊可能な代物だ。

 

退き際を誤るとそれだけで部隊が全滅しかねない。

 

いや実際に幾つかの小部隊は既に全滅しているところもあるだろう。

 

陽動とはいえこちらの損失と引き受ける圧力は大変なものであった。

 

「敵アサルト・ウォーカー、既に120メートル付近まで接近しています。間も無く森を抜けます」

 

兵士の1人がモニターの隣で指揮を取るフランケ一佐にそう告げた。

 

一佐は軍帽にゴーグルを掛けエレクトロバイノキュラーで森林部の方を見つめていた。

 

「スカウト・ウォーカーは」

 

「生き残りが1台います。他の車両やミサイル・ウォーカーは存在しません」

 

部下からの報告を受けコムリンクで散兵部隊に指示を飛ばす。

 

「ウォーカー隊、AT-ATの付属機のAT-STを撃破しろ。護衛機は危険だ」

 

『了解一佐!』

 

命令を了承し蛸壺壕に隠れる2人の兵士がスマート・ロケットを担ぎ頭を少し出した。

 

出現するであろう予測地点に砲塔を向け緊迫する状況の中、2人の兵士はAT-STの出現をずっと待った。

 

額から汗が流れ心臓はバクバク鼓動を早めている。

 

攻撃に失敗すれば2人は素早くAT-STの顎の中型ブラスターで素早く皆殺しにされるだろう。

 

迫り来る死の恐怖を固めた相手と2人は対峙しなければならない。

 

「照準を合わせろ……だがまだ撃つなよ……完全に姿を表してからだ……」

 

「はい…!」

 

先輩の兵士にそう諭されスマート・ロケットを担ぐ兵士はスコープに目を合わせた。

 

暗視効果のあるスコープは森林から接近するAT-STの姿を完璧に捉えている。

 

AT-ATの前を全速力で走るAT-STはどんどんこちらに接近しつつあった。

 

「まだだ……まだだぞ……もう少し引きつけて……」

 

足音も振動も2人の下まで届いている。

 

だが今撃っては迎撃されてしまう。

 

そうなっては全てが無駄であり絶対にあってはならないことだ。

 

たとえどれだけ怖かろうと、たとえどれだけ死が近づいていようと引き付ける。

 

「来ました……!」

 

木々の合間からAT-STが姿を表しその長細い足を前に出しながらゆっくり前に進んできた。

 

2人の存在を捉えたAT-STは早速中型ブラスター砲を周囲に放ってきた。

 

2人を守る蛸壺豪の周りがブラスター弾により爆発し土が巻き上がる。

 

だが2人の兵士は表情一つ変えずAT-STが更に接近するのを待った。

 

「完全有効距離です…!」

 

「よし、撃て!」

 

先輩の指示を受けもう1人の兵士はスマート・ロケットのミサイルを放った。

 

筒からロケット弾が飛び出し白い煙を噴き出しながらAT-STに迫る。

 

攻撃に集中し防御が疎かになっていたAT-STはそのボディに弾丸をモロに喰らい爆発四散した。

 

黒灰色の煙が吹き出し残された脚部が無惨に地面に斃れた。

 

AT-STはこれで完全に破壊された。

 

『AT-ST撃破完了!』

 

兵士の声がコムリンクから聞こえ前線司令部の将兵達は皆喜びの声を上げた。

 

「よくやった、急いで離脱しろ。総員!これより対ウォーカー戦闘を始める。目標はAT-AT1台のみ、だが相手は強敵だ。全火砲を敵にぶつけ目標ポイントまで誘き寄せる。抜かるなよ!」

 

「はい!」

 

フランケ一佐の勇ましい命令を受け将兵達は全員敬礼し持ち場に着く。

 

前線の守りを固める塹壕では部隊長達が「間も無く敵が来るぞ!」と味方に伝えていた。

 

DF.9対歩兵用砲塔や1.4FD・Pタワーなどの砲塔周りでは砲兵達が配置に着き敵を迎え撃つ準備を行なっていた。

 

中には本当に古い海軍本部で眠っていた重砲や野戦砲なども動員され砲塔の中に混じっている。

 

スピーダーや戦闘車両も到着し前線や後方には偏向シールドを備えたスピーダーがシールドを展開し始めた。

 

「グンガン・シールドの準備も行え。最悪アレで凌ぐぞ」

 

「はい…!」

 

ファンバに乗せられたグンガン達の偏向シールド発生装置が降ろされいざという時の起動の準備を始める。

 

司令部より後方には民間のスピーダーを改造したミサイル車両が数台控えており命中精度と装弾数はイマイチだが解放軍の火力を少しでも補っていた。

 

各員の配置が完了し前線司令部にも偏向シールドが掛かった。

 

「これでようやく2台目……ですか」

 

海軍の水兵隊を指揮するリューティ一等海尉はそう呟いた。

 

「そういうな、むしろ我々の兵力と装備からすれば1台撃破出来ただけで十分な戦果だ」

 

「ですね……しかし不安です。正直2台目の戦闘で保安隊はともかく我が水兵隊が耐えられるのか」

 

リューティ一尉は自ら初期の解放軍に参加した数少ない将校の1人だ。

 

その為解放軍と女王の為なら命を捧げる覚悟だしこの戦いで戦死しても悔いはないとさえ思っていた。

 

しかし他の水兵は違う。

 

そもそも保安隊の兵士達に比べて練度は低く戦闘慣れしているわけでもない。

 

それにリューティ一尉のように自主的に参加した者もいるだろうがそれ以上に上官に従っただけという水兵も大勢いる。

 

彼らがあの帝国軍最強のアサルト・ウォーカーと戦った時に逃げ出さず落ち着いて戦えるのかという士気と精神面での不安があった。

 

リューティ一尉麾下の水兵達は海軍歩兵のような存在ではなく本当に艦に務めていたり軍港で作業していた者に武器を持たせた兵だっている。

 

それが屈強な兵士ですら容易に心を挫かれるAT-ATと戦った時無事で済むのか。

 

リューティ一尉にとっては大きな不安だった。

 

「作戦は練った、それにこの防衛陣地はかなり頑丈な作りになっている。恐らくポイントまで引き寄せるだけなら持ち堪えられるはずだ」

 

フランケ一佐はそう一尉を宥めた。

 

当然一佐にも不安はあるがここは信じて耐え抜かねばならない。

 

最後に「信じよう、彼らを」と付け加えリューティ一尉も小さく頷いた。

 

「AT-AT接近!敵の射程範囲内に入りました!」

 

センサー士官の報告と共に前線には遂にAT-ATの重レーザー砲の猛攻が放たれた。

 

爆発と共に地面が抉れ土煙が辺りに充満する。

 

『全隊、攻撃開始』

 

コムリンクからフランケ一佐の命令が届き各地の部隊長達が攻撃命令を出す。

 

塹壕のあちこちからレーザー砲と実体弾の砲弾が放たれAT-ATに一斉に砲撃を開始した。

 

放たれる砲弾は殆どがAT-ATの何処かしらに直撃したが損傷どころかかすり傷ひとつ付けられていない。

 

AT-ATは進軍も攻撃も止めずまるで何事もないような感じだ。

 

後方から放たれるロケットミサイルも震盪ミサイルの対空防御により防がれ効力はなかった。

 

塹壕から放たれるブラスター砲も殆ど効果はなく早速幾つかの砲塔を破壊し始めた。

 

タワーや銃砲が吹き飛び兵士達も一旦後方に退却し塹壕の中に隠れた。

 

「怯むな!どんどん撃ち返してやれ!」

 

塹壕や各所から負けじと更なる砲撃が繰り出されるがAT-ATには全く効かない。

 

更に一歩、また一歩と前に進みその進撃度合いは止まる事を知らなかった。

 

だがそれこそがこのAT-ATの命を奪う事となる。

 

「目標地点到達!“ディージャ・ピーク”攻撃支援を!」

 

前線司令部からの命令を受け王立海軍駆逐艦“ディージャ・ピーク”から巡航ミサイルが放たれた。

 

事前に照準が定まっていた“ディージャ・ピーク”の巡航ミサイルはAT-ATに向かって接近し真上から垂直に降りてAT-ATの装甲を突き破り爆発した。

 

流石のAT-ATでも軍艦から放たれる巡航ミサイルに耐えらはせずその爆発力を機体内に溢れさせながら真っ二つに割れ地面に斃れた。

 

「やったぞ!AT-ATが倒れた!」

 

前線の塹壕の中では兵士達が互いに隣の戦友とAT-ATの撃破を喜び喝采の声を上げていた。

 

前線司令部でも将校達の喜びが湧き溢れフランケ一佐とリューティ一尉も安堵の息を漏らしていた。

 

AT-AT1台撃破しただけでも十分敵の注意を引き付けられるし大きな戦果となる。

 

だが問題なのは親衛隊のAT-ATは1台ではないということだ。

 

「一佐、センサー範囲圏内にゴザンティ級接近!AT-ATが2台搭載されています!」

 

「やはり来たか…」

 

フランケ一佐はただ重苦しい声音でそう呟いた。

 

元々装甲大隊の行動不能に合わせて別部隊のAT-ATが出現するのは当初から予測されていたことだ。

 

第1本部護衛軍はそれも含めて陽動していなければならない。

 

幸いにも他のスターファイター隊や艦隊が出来る限り駐屯地に損失を与えているがそれでも圧倒的に不利な状況だ。

 

「護衛のTIEファイターも確認されています」

 

「直ちに全ての偏向シールドを起動しろ、完全防御体制に入る。AT-AT2台を相手にするのは不可能だ…」

 

「了解…!」

 

各地の分隊シールドや偏向シールドが起動しファンバから降ろされたグンガン・グランド・アーミーの偏向シールドが全体を包んだ。

 

ゴザンティ級は森林を越え、ギリギリまで前線司令部の塹壕付近に接近しようとする。

 

先行したTIEブルート3機がレーザー砲で偏向シールドを攻撃し牽制するが当然シールドは破られることはなかった。

 

その間にフランケ一佐は司令部で各軍に支援要請を行なっていた。

 

「AT-ATに爆撃を頼む。流石に2台相手ではこちらに勝ち目はない」

 

『しかし一佐、我々の機体じゃAT-ATを撃破出来ません!』

 

海軍航空隊のパイロットがフランケ一佐に対してそう返答した。

 

実際彼らの使うN-1スターファイターやポリス・クルーザーの火力ではAT-ATを撃破するには少し力不足であった。

 

「それでもいい、とにかく敵の足を止めるんだ。その隙に後方に退却して部隊を……」

 

「一佐!センサーに新たな機影が…!」

 

その報告を聞いた時フランケ一佐は思わず言葉を止めた。

 

遂に敵のスターファイター隊が出撃し攻撃を開始したのだと思った。

 

だがそれは全くの的外れの予測であった。

 

「“X()()()()()()()()”来たんですよ!レジスタンスが!」

 

その興奮はすぐさま大きな戦果に変わった。

 

真横から接近するXウィングから2発のプロトン魚雷が放たれまず右側のAT-ATの装甲をぶち破りダメージを与えた。

 

更にYウィングが同じく魚雷を発射し更にプロトン爆弾を投下することでAT-ATを完全に破壊した。

 

もう1台のAT-ATは迎撃しようとミサイルを発射したが全てジャマー機能により命中せず代わりにAウィング2機から震盪ミサイルが発射された。

 

ミサイルはAT-ATに着弾しダメージを与える。

 

更にそこにレーザー砲が撃ち込まれ、仕舞いにはBウィングによる爆撃で完全に行動不能のダメージを喰らい暫くレーザーを撃ちまくった後地面に斃れた。

 

AT-ATを撃破したスターファイター達は護衛のTIEブルートも撃墜し輸送用のゴザンティ級にも攻撃を仕掛けた。

 

対空レーザーを掻い潜り逆に機体の火力を敵艦に叩き込んでいく。

 

数分も経たないうちにゴザンティ級は攻撃に耐え切れず爆沈し沈み始めた。

 

その様子を見ていた塹壕の兵士達は皆歓声を上げ救援の到着を大いに喜んでいた。

 

「いいぞ!いいぞ!」

 

「ありがとう!レジスタンス!」

 

兵士達の声援がパイロット達に届いたかは分からないがそれでも感謝の言葉は鳴り止まなかった。

 

司令部では1人フランケ一佐が感慨深そうに呟く。

 

「ようやく来た…!レジスタンスが…!」

 

遂に彼らの反撃が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

ハイパースペースから出現した数十隻のレジスタンス艦艇はスターファイターと共にナブー軌道上の艦隊に攻撃を仕掛け始めた。

 

多くの兵員を連れたMC80“スターリリーフ”は輸送艦を率いて地上へと向かった。

 

既に地上では旗艦“アルザス”から指揮するヴィアタッグ将軍の下、親衛隊との戦闘が始まっていた。

 

そして艦隊戦も激化の一途を辿っている。

 

突然の奇襲はナブー艦隊を大きく動揺させその体勢を崩す事に成功した。

 

旗艦“アルザス”と二隻のネビュラ級、“アレテューズ”と“ヴィラール”はその自前の火力と防御力で崩れた艦列に更に深刻な打撃を与えた。

 

モン・カラでレジスタンスの快進撃を支えた二隻の最新鋭艦はこの地でもその実力を発揮している。

 

だがアクバー元帥と違ってクロルティ司令官はこの二隻でそれぞれ突撃機動群を組むのではなく密集させて三隻の火力の全てを中央の敵艦隊へとぶつけていた。

 

MC85スター・クルーザーとネビュラ級スター・デストロイヤーの火力を一方的に受け続けたナブー艦隊は多くの艦が損傷し戦列を離脱しようとしている。

 

辛うじて攻撃を撃ち返しているインペリアル級やヴィクトリー級もあちこちに砲撃を受け損傷していた。

 

混乱したインペリアル級のブリッジでは艦長が他の将校と共に悲鳴を上げながら命令を出していた。

 

「早く全ての火力をあのモン・カラマリ・クルーザーにぶつけろ!TIEファイターも何もかも全て出すんだ!!」

 

「ですが艦長!両艦の新型艦も…!」

 

「とにかくなんでもいいから一隻でも撃破するんだ!!このままではやられる!!」

 

雑な命令により艦載機の発艦は混乱しインペリアル級の砲撃もどこに集中して撃っているのか分からない雑なものになっている。

 

既に僚艦の帝国貨物船が一隻砲撃に耐え切れず撃沈しそれに続くようにナブー艦隊のアークワイテンズ級も二隻轟沈した。

 

敵艦の合間を飛行するレジスタンス軍スターファイター隊の攻撃によりCR90やネビュロンBも撃破され始め戦闘開始から数分で指揮能力と艦の性能で劣るナブー艦隊は劣勢に追い込まれた。

 

その反面統率の取れたレジスタンス艦隊はクロルティ司令官が適切な判断を下し全艦隊に命令を出していた。

 

「攻撃艦以外は全て対空防御に専念し敵スターファイターを迎え撃て。残りの攻撃艦は更に火力を上げてスター・デストロイヤーに集中攻撃!今のうちに敵の主力を撃破するぞ」

 

以前ソード中隊が陽動の為に攻撃を仕掛けた時は帝国軍が使用するプロカーセイター級が三隻確認された。

 

しかし今の洗浄で確認されている艦の中にプロカーセイター級の存在は確認出来ず代わりにインペリアル級がいる。

 

もしかするとプロカーセイター級は別働隊としてナブーを離れているだけかも知れない。

 

となればインペリアル級とプロカーセイター級で挟み撃ちにするという状況も十分考えられる。

 

そうならないよう今のうちに危険な敵は排除しておくに限る。

 

「撃って撃って撃ちまくれ!」

 

アルザス”の艦砲射撃は更に苛烈さを増ターボレーザーの砲弾が流星の如く降り注いだ。

 

それに追随し“アレテューズ”と“ヴィラール”も大量のターボレーザー弾と震盪ミサイル、プロトン魚雷をインペリアル級やナブー艦隊に撃ち込む。

 

三隻の攻撃は遂にインペリアル級の耐久力を上回った。

 

1発の震盪ミサイルがブリッジのシールドを打ち破りブリッジを完全に破壊した。

 

ブリッジの司令機能の喪失はインペリアル級全体の機能を大きく衰えさせ更なる砲撃を一方的に受ける事になった。

 

システムが半ば解放する頃には既にインペリアル級の耐久値は限界であり船体が崩壊し始めていた。

 

「敵インペリアル級の崩壊を確認、敵艦を撃破しました!」

 

士官の1人が喜びを隠し切れない様相で報告した。

 

しかしクロルティ司令官は「まだを気を抜くなよ」と一言添えた上で命令を出す。

 

「このまま火力を中央に向け投射し続けろ。“スターリリーフ”はどうした」

 

司令官の問いに1人の幕僚将校が答える。

 

「部隊の展開を終えこちらに戻りつつあります」

 

「なら“スターリリーフ”と交代だ、我々も地上に部隊を展開する。“アレテューズ”と“ヴィラール”に交代支援を行わせろ」

 

アルザス”含めたレジスタンス艦隊の後方からゆっくり接近するMC80“スターリリーフ”は砲撃有効距離まで到達したのか敵艦隊へ向け砲撃を開始した。

 

スターリリーフ”の参戦を確認した“アルザス”は徐々にMC80と交代しナブー内への降下を開始した。

 

既にインペリアル級ともう一隻の帝国貨物船は撃沈し残りは既に崩壊寸前のナブー艦隊のみとなっていた。

 

「各艦に伝達、後10分敵艦隊に攻撃を仕掛けろ。それからしたら降伏を促せ」

 

クロルティ司令官の命令に幕僚は「よろしいのですか?」と尋ねた。

 

「構わん、もはや連中に我が艦隊を打ち破る戦力はない。とにかく艦隊を無力化し軌道上の制宙権さえ取れれば十分だ」

 

「了解しました」

 

「だが臨戦体制を崩すなとも伝えろ。敵の別働隊、もしくは帝国軍の増援が来るかもしれん」

 

通信士官がその旨を各艦に伝え“アルザス”は兵員投入の為に完全にナブーの惑星内に侵入した。

 

「将軍、このまま先遣隊が確保した高台近くに展開しようと思いますが」

 

クロルティ司令官は後ろのホロテーブルで作戦の打ち合わせをしていたヴィアタッグ将軍に聞いた。

 

ヴィアタッグ将軍は「頼む」と高台近くへの展開を促し“アルザス”もそれに従い航行した。

 

「司令部を地上に移す。私が地上に向かうまで敵の進路を阻害し爆撃で駐屯地からの出撃を阻害し続けろ」

 

「はい将軍」

 

機材や資料を手に取り地上軍の将校達が“アルザス”のブリッジを後にしようとしていた。

 

ヴィアタッグ将軍は最後に「それでは司令官、行ってくる」とクロルティ司令官に敬礼する。

 

「ご武運を将軍」

 

クロルティ司令官もそう返し“アルザス”の艦内から更に追加の兵員が展開された。

 

レジスタンス軍による攻勢はこれから本格的にスタートする。

 

 

 

 

 

ナブー各所での戦いは次第に激戦へと変貌していった。

 

最初は騎兵隊の突撃に始まり軍艦やスターファイター隊での奇襲攻撃が幾度となく行われていた。

 

しかし今では飛行場や艦隊から出発したスターファイター隊の攻撃を受けて連続的な攻撃は停滞していた。

 

現在ナブーの上空でクーデター軍のN-1スターファイターと解放軍のN-1スターファイターが激戦が繰り広げられている。

 

解放軍スターファイター隊は奮戦しているが親衛隊のTIEブルートやTIEインターセプターも加わったクーデター軍に少し劣勢な状況だ。

 

敵軍は数で勝り、練度でも王室海軍の航空隊を若干上回っている。

 

オーリー空将やドルフィ空将らのベテラン達の的確な指揮と支援によりカバーされているがそう長くは持たないと既に考えられていた。

 

『隊長!敵機にケツを取られました!』

 

ブラボー11がTIEインターセプターとN-1スターファイターに追われながらオーリー空将に助けを求める。

 

オーリー空将は1機のTIEブルートを撃破した後すぐに機体の方向を変えた。

 

「待ってろブラボー11、すぐに向かうそれまでシールドとスピードに出力を集中して耐え続けろ」

 

『りょっ了解!』

 

2機のレーザー弾を避けながら機体のスピードとシールドに出力を回す。

 

ブラボー11のN-1スターファイターは偏向シールドが分厚くなり敵機のN-1スターファイターの攻撃を喰らってもひとまず耐えられた。

 

だが今の機体のスピードではN-1スターファイターはともかく迎撃機のTIEインターセプターを振り切れなかった。

 

速力を全開にした敵機のN-1スターファイターもTIEインターセプターに続き再び攻撃を行う。

 

『隊長!敵機を振り切れません!』

 

ブラボー11は背後の敵を確認しながら再び悲鳴を上げた。

 

だがブラボー11に本当に危機的状況が訪れる前にその脅威は取り除かれた。

 

オーリー空将のN-1Tアドバンスト・スターファイターがTIEインターセプターにレーザー砲を命中させ機体のコントロールを奪った。

 

機体が制御出来なくなったTIEインターセプターはそのまま左後ろのN-1スターファイターに激突し2機とも破壊された。

 

2機の破片を避けながらオーリー空将のN-1Tアドバンスト・スターファイターはブラボー11のN-1スターファイターに近づく。

 

「もう大丈夫だブラボー11、しっかり友軍機と編隊を組んで飛行しろよ」

 

『ありがとうございます隊長!』

 

危機を脱したブラボー11は機体を翻し同じ部隊のウィングメイトの下へ戻った。

 

オーリー空将も機体を吹かせ敵部隊の編隊を崩そうと再び攻撃を始める。

 

なるべく編隊中央の敵機を集中的に狙い撃墜する。

 

右、左とレーザー弾を躱しながら反撃を叩き込み何機かの敵機をTIE、N-1問わず撃墜した。

 

味方機に取り付こうとするTIEインターセプター1機、TIEブルート2機の編隊に気づいたオーリー空将は素早く敵編隊の背後を取った。

 

まず右翼のTIEブルートにレーザー弾を喰らわせ撃墜する。

 

破壊されたTIEブルートの煙の中を突破し今度は左翼のTIEブルートに攻撃を集中した。

 

流石の耐久力もN-1Tアドバンスト・スターファイターの集中攻撃には敵わず撃墜され破片が地面に墜落した。

 

残されたTIEインターセプター1機は急いで離脱しようとするが既に間に合わず、捉えて離さないオーリー空将の猛攻により中のパイロットはTIEインターセプターごとナブーの空に消えた。

 

「チッ!このままじゃキリがない……どうする…?」

 

オーリー空将はN-1Tアドバンスト・スターファイターのコックピット内部でこの芳しくない状況の打破を考えた。

 

既に数十機はこの戦闘で撃墜したはずだがそれでも敵軍の攻撃は止まることを知らなかった。

 

むしろ時が経つに連れて敵機の数が増えているような感覚だ。

 

恐らく各地の駐屯地から徐々に発進する機体が増え始めているのだろう。

 

早くしなければホーリス隊長の騎兵隊やガイルス二佐らが指揮する艦隊、フランケ一佐の本部護衛軍が危険に晒される。

 

とはいえこのスターファイター隊の力ではこの状況を打破する方法はないに等しい、防戦が精一杯だ。

 

「機体を一纏めにして一点集中で脱出するか或いは……」

 

『一等空将!五時の方向を!』

 

「どうした!」

 

別部隊のエコー4が直接通信でオーリー空将に報告した。

 

機体を翻し報告を受けた方角を見るとそこには驚きの光景が広がっていた。

 

なるほど、エコー4が興奮気味に報告する理由もよく分かる。

 

『レジスタンスのスターファイター隊です!バスチル少佐の救援が到着したんですよ!』

 

エコー4の推察は正しかった。

 

ディカーを出立しハイパースペースを抜けたレジスタンス軍スターファイター隊は遂にナブーに辿り着いた。

 

彼らは緊急時の対応通り惑星から出撃したスターファイター隊は全て地上に向かい戦闘中の友軍の手助けを行った。

 

AT-ATやAT-STを航空攻撃で破壊ないし足止めし、地上で戦うナブーの兵士達を支援した。

 

そして今は劣勢という報告を受けた王室解放軍スターファイター隊の救援に彼らソード中隊が向かっていた。

 

『各機、散開し敵部隊を撹乱し味方部隊を解放する。友軍機のN-1はセンサーで表示されるし機体に赤色か青色のラインが入っている。誤射に気をつけつつ敵機を殲滅するぞ』

 

「了解!ではソードリーダー、先行します!」

 

ヴィレジコフ上級中尉を含めたソード中隊のAウィングが何機か最大速度で中隊の一歩前に出て戦闘に参加した。

 

Aウィングは今戦闘を行っているこの中のどの機体よりも速い。

 

TIEブルートどころかTIEインターセプターよりも、N-1スターファイターよりも恐らくN-1Tアドバンスト・スターファイターよりも速い。

 

この中で最速であり最高の迎撃機がAウィングだ。

 

そしてそれに乗り込むパイロット達も幾つもの修羅場を乗り越えてきた精鋭達だ。

 

全ての出力を火力と速力に回し偏向シールドは本当に最低限のエネルギーしか回していない。

 

だがそれ故にこの中で最も高速で最も素早く敵機を仕留められる。

 

先行したAウィング達は目にも止まらぬ速さでレーザーを掻い潜り敵機を爆炎と黒い煙と破片に変えていった。

 

編隊を喰い破り味方だと判断されたN-1に近づこうとする敵機を残らず始末する。

 

加勢に来たXウィングとYウィング、Bウィングも加わり徐々に戦況はレジスタンスと解放軍有利となっていった。

 

「堕ちやがれ親衛隊の“D()I()E()()()()()()”ども!」

 

罵倒と共に1機のTIEインターセプターを撃墜し更に流れるようにまた別のN-1スターファイターも撃墜した。

 

他のソード中隊機もこの乱戦状況の中、1機も撃破されることなく敵機を屠り友軍の進路を切り開いた。

 

ヴィレジコフ上級中尉のこの戦いでの撃墜スコア数が11機目に到達する頃レジスタンス機に向け解放軍から通信が入った。

 

『こちらナブー王室解放軍スターファイター隊のリック・オーリー一等空将だ。レジスタンス軍の救援、本当に感謝する。我々は再び敵駐屯地への攻撃を行いたい、それまで支援を頼めるだろうか』

 

「こちらソード中隊隊長コーラン少佐だ。こちらこそ我々も攻撃に同行したい」

 

TIEブルートを撃墜しながらコーラン少佐はオーリー空将の通信に答えた。

 

少佐のYウィングはオーリー空将のN-1Tアドバンスト・スターファイターの横につき、接近するTIEインターセプターの編隊を共に殲滅した。

 

後方からはドルフィ空将やエルバーガー隊長、ヴィレジコフ上級中尉の機体が結集した。

 

気づけば敵機を圧倒し生還した王室解放軍とレジスタンス軍のスターファイターが殆ど集まっていた。

 

その様子を見ながら2人のスターファイター隊長はとても勇気が湧き戦意に満ち溢れてくるのを深く感じた。

 

「全機、基地攻撃の準備だ。まあだがまずは……」

 

Yウィングのコックピットを操作しながらコーラン少佐はそう呟く。

 

それに同調するようにオーリー空将も同じようなことを続けて呟いた。

 

「ああ、まずは……」

 

目の前の敵を撃破するしかない。

 

2人は迫り来るTIEとN-1の群れにレーザー弾を撃ち込みながらそう吐き捨てた。

 

 

 

 

 

 

「第4駐屯地のスターファイター隊、突破されました」

 

「同じく戦闘中の第8歩兵大隊もレジスタンスの地上部隊に突破されました!」

 

「軌道上のナブー艦隊の損耗率、間も無く50%を突破します!」

 

「少将!このままでは各個撃破され兵団が壊滅してしまいます!」

 

ブレティス上級大尉はヴェルフェンス少将にそう進言した。

 

少将は各地の劣勢的な報告を聞きながらも玉座に落ち着いた面持ちで座っている。

 

しかし報告を受けるオペレーターや幕僚達は皆ブレティス上級大尉と同じく不安感に駆られた焦りのような表情だ。

 

「包囲部隊の戦力を引き抜いてレジスタンス軍の司令部撃破に使え。それと小型艦をなるべく惑星内に率いれて敵部隊を攻撃させろ。少しは支援の足しになるはずだ」

 

「了解」

 

「ナブー外への支援要請は?」

 

「マラステアの艦隊に一応救援は出しましたが……」

 

「ならば我々はこの首都シードでの籠城戦を開始する、偏向シールドを起動しろ」

 

ヴェルフェンス少将は各地に命令を出し首都全体に臨戦体制が敷かれ始めた。

 

シードに備え付けられていた大型偏向シールドが起動し市街地全土を透明な防御の膜で覆う。

 

首都の封鎖体制がより強化され市街地に溢れる兵士の数も増え始めた。

 

「武器弾薬、食料、医療物資の備蓄は?」

 

「各所問題がありません。少なくとも1ヶ月、1年程度なら総攻撃が続いても問題ない算段です」

 

ブレティス上級大尉はタブレットで備蓄量の正確な数字を見せながら少将の問いに答えた。

 

「問題はシールドだ。連中のことだからシード市民を抱え込んだままでは生ぬるい軌道上爆撃しかしないと思うが……」

 

「はい、しかし主力艦四隻分の軌道上爆撃を喰らい続ければやがてエネルギーに限界が生じます。そうなれば艦隊が壊滅状態の我々ではどうする事も出来ません」

 

ヴェルフェンス少将は偏向シールドの問題を提示しブレティス上級大尉が付け加えた。

 

実際彼ら親衛隊が持ち込んだ偏向シールドを使ってもあのレジスタンス軍の新型主力艦の軌道上爆撃を長く耐えられる可能性はないに等しい。

 

「市街地への電力供給を断つ……というのも可能性の一つかもしれんな。そうすれば連中……」

 

その時、ちょうどその時だった。

 

ヴェルフェンス少将が全てを言い終えようとするその時にそれは、“()()()()”。

 

40年前の“()()”を受けて女王“パドメ・アミダラ”が女王として最後に残したであろう守護装置。

 

誰も傷つける事なく誰も直接殺さずに戦闘能力だけを無力化する正にナブーの平和主義の具現者たる不殺の守護者。

 

その特異な能力からより強大な力を持つべきだとの議論もあった。

 

しかし最終的に選ばれたのはこれだった。

 

この守護者は一度だけ起動しその力を侵略者達に振るった。

 

それはもう4年も前の出来事だがまだ4年も前の出来事でしかなく、こんな短期間に頻繁に使われるべき代物ではなかった。

 

だが今こうしてこの不殺の守護者はその力を奮っている。

 

シード宮殿から稲妻を内に秘めた青白いエネルギーの塊が徐々に宮殿を離れ市街地へと広がっていった。

 

やがてシード市内全域がこのエネルギーの塊に包まれ、辺りは一時期的に陽の光が閉ざされ少し暗くなった。

 

あまりの眩しさに目を腕で守る者や細める者もおり、市街地の家々では子供達が物珍しそうに外を眺めていた。

 

光が稲妻と共に粒子となって消える頃には既にその力を発揮し終えていた。

 

辺りが徐々に明るくなると同時にその効力が発揮される。

 

パトロールのために浮遊していたプローブ・ドロイドやシーカー・ドロイドが全て力を失ったように地面に墜落していった。

 

AT-ATやAT-STといったウォーカーも、オキュパイア・タンクや他のリパルサー・タンクも全て機能を停止した。

 

特にリパルサー・タンクはその力を完全に失っている為浮遊力もなくその車体を地面に直接つけている。

 

市街地の兵士達は困惑しヘルメットやリストバンドのコムリンクで司令部に通信を取ろうとするがこれも全く機能しなかった。

 

これも全てアミダラが遺した不殺の守護者のおかげ、イオン・パルスの効力だ。

 

不殺の守護者が本来のナブーを護る為再びその力を解き放った。

 

「ダメです!外部の部隊と連絡取れないどころか、このシード宮殿の機器全部が麻痺しています!」

 

「通信システム、対空システム、一般的な制御システムもです!シールドも恐らく消失しました!」

 

それは士官達の報告を聞かなくても分かった。

 

彼らは座る前のコンソールやモニター類は全てスパークが飛び散っているしドア・コントロール・パネルも同様の状況だ。

 

辺りを見渡せば将校達のコムリンクも全てショートし使用できない状態だった。

 

「バカな……イオン・パルスは少なくとも宮殿内は無事なはずだ…!それになんで許可もなしに起動を…!?」

 

イオン・パルスはシード宮殿のキーを解除し起動シークエンスを実行しないと本来は起動しないはずだった。

 

だが現実はそうではない。

 

このようにイオン・パルスは起動しシード宮殿からシード市内の端から端に至るまでの兵力を全て無力化した。

 

「とにかく復旧と外部からの兵力の動員を…ッ!」

 

ヴェルフェンス少将から見て左側のドアが突然爆発し破片と煙が散乱し一時的に全員の視界を奪った。

 

煙と共に数十人以上の足音が聞こえ玉座の間に足音と同じだけの人間が入ってきた。

 

その格好は殆ど王室保安軍の兵士と変わりなかったが親衛隊員に十件の刺さった銃口を向け威圧している。

 

しかも兵士達の中には明らかにレジスタンス軍の装備を持った者もおり彼らが完全に敵であることを全員に知らしめた。

 

バン、バンと2発のブラスター弾とは全く違う銃声が聞こえた。

 

撃ったのはどうやらレジスタンス軍の兵士であり銃口からは白い煙が出ている。

 

「こいつは見ての通り実体弾を撃つ古い骨董品の銃だ。だがイオン・パルスでブラスター・ライフルが一つも使えない状態じゃ唯一殺傷能力のある銃を持っているのは俺たちだけだ」

 

ジョーレンが持っているのは非常用時として配布される特殊部隊用の拳銃と小銃、そして海軍本部にあったビンテージ物のリボルバー拳銃だ。

 

今発砲したのはそのリボルバー拳銃で銃口をヴェルフェンス少将の方へ向ける。

 

「他の連中の持ってる小銃もリロードに時間は掛かるが立派な小銃だ。全部試しに撃ってみるか?」

 

ジョーレンの脅しと共に兵士達は小銃を構え直し今一度その銃口から放たれる物の存在を教え込んだ。

 

「降伏して下さい、もはやあなた達に戦闘能力はない」

 

ジェルマンは小銃を下ろしヴェルフェンス少将に詰め寄った。

 

しかし少将は中々降伏の二文字を口にしない。

 

むしろこんな状況にも関わらずヴェルフェンス少将は啖呵を切って逆にジェルマン達に詰め寄った。

 

「ふん!無駄なことだ。このシードの戦力が無力化されたところでそれは全域の戦力ではない。すぐに友軍が投入されその時代遅れの武器で戦い逆に殲滅される!」

 

「され、それはどうかな」

 

ジョーレンからのアイサインを受け取りメンジス三佐はコムリンクをあえてこの場で起動した。

 

コムリンクから聞こえてくるのはシード市街地の音声、突入したソルーナ女王とシード解放部隊の音声だ。

 

今やシード市街地には王室解放軍の兵士で溢れていた。

 

 

 

 

 

 

ソルーナ女王とキャプテンコォロやシール隊長達が突入を開始したのはシード全体にイオン・パルス網が掛かったと確信した瞬間だった。

 

数十秒続いたイオン・パルスが消失した後、ソルーナ女王はELG-3Aブラスター・ピストルを構え部隊を導く。

 

このブラスター・ピストルはかつてパドメ・アミダラも同じものを使っておりこのブラスター・ピストルと共にナブーの戦いを戦い抜いた。

 

演技を担ぐ意味でもソルーナ女王はあえてこのブラスター・ピストルを選んだ。

 

「私に続け!!共にシードを!ナブーを解放せよ!!」

 

兵達の活性が湧きシード近郊で待機していた多くの解放軍兵士が喚声を上げ女王に続いた。

 

兵士達はシードに突き進んでいった。

 

その中には保安隊の保安隊員もいたし近衛兵も多くいた。

 

海軍の海軍歩兵だっていたしグンガン・グランド・アーミーのグンガンもいる。

 

色々な部隊の色々な者が集いナブーの君主の下シードとナブーを取り返すべく前へ前へと進んだ。

 

その頃シードの駐屯部隊はイオン・パルスの影響で混乱し大きく動揺していた。

 

ヘルメットで顔が見えなくても兵士1人1人が抱えている不安は伝染するものだ。

 

最初は一兵卒だけだった者がやがて下士官へ、そして小隊長、中隊長へと広がりやがては佐官以上の者へと広がっていく。

 

軍全体が不安感に駆られ動揺している中、そこに一斉に銃器を構え凄まじい形相で突っ込んでくる兵士の一団が投入されたらどうなるだろうか。

 

王室解放軍は最高司令官の女王から末端の歩兵に至るまで全員が死ぬ気で、そして何かの希望の為に全力で戦う者達だ。

 

武装も一級品とは言えないがいぶし銀の性能の良い武器を備えている。

 

一方親衛隊は性能の良い装備は全てダメになり不安感が全体を包んでいる。

 

確かに忠誠心と練度は高いがこの状況ではもはや“()()()()()()()”。

 

「降伏しろ!」

 

「手を上げろ!機体から降りて来い!」

 

解放軍の兵士達がCR-2ブラスター・ピストルやS-5重ブラスター・ピストル、敵から鹵獲したE-11やDTL-19を構え親衛隊を威嚇する。

 

反撃のしようがない親衛隊のストームトルーパー達は両手を上げパイロットはAT-STから姿を表した。

 

中には格闘戦でどうにかしようとする者もいたがグンガンの歩兵に取り押さえられ腕を捻られた。

 

「AT-ATからも降りて来い!全員集まれ!早く!」

 

兵士の誘導により親衛隊将校やストームトルーパーは全員ブラスターやウォーカーから離れた状態で何箇所かに纏められた。

 

恐らくせめてブラスターが何丁か使えればもう少し結果は違っただろう。

 

もっと反撃していただろうしこのように捕虜として並べられることなくシードの市街地で激戦を強いられていたはずだ。

 

しかしそのブラスターすらない状態ではそれすら出来ない。

 

スコップや銃器で殴るような原始的な戦闘を行おうにもこの状況では分が悪すぎた。

 

「陛下、今のうちに」

 

キャプテンコォロはソルーナ女王にそう促し女王も近衛兵とグンガンの精鋭達を連れて真っ直ぐシード宮殿の入り口に向かった。

 

「おっおい!」

 

「待て!」

 

2人のストームトルーパーがなんとか一行を止めようとソルーナ女王に迫るが寸前で護衛に入ったシール隊長により防がれた。

 

セスタによる足払いを喰らった後頭を殴られ駆けつけてきた別の兵士に捕らえられる。

 

あえてセスタを大きく目立つように振るい敵兵を威嚇した。

 

「行きましょう」

 

ソルーナ女王はどこか懐かしいシード宮殿に向かった。

 

1年前は制圧される側だったが今では立場が全く逆になっている。

 

奪われた自由と平和を取り返す側だ。

 

ここにはいないクリース宙将が掲げるナブーの栄光、それもまたナブーの歴史だ。

 

しかしその栄光がナブーの民に何を成す。

 

平和を生み出しただろうか、将又その栄光の中にいた民が幸せを感じていただろうか。

 

特にその栄光を掲げナブーを手中に収めた時、ナブーはどうなっていたか。

 

監房の中にいたソルーナ女王は直接その時の様子を見ていたわけではない、ただこの場にいるだけでなんとなく感じられる。

 

彼女が子供の頃、彼女が君主としてナブーにいた頃のシードはこんな暗く冷たい殺意や恐怖を張り合わせたような空気ではなかった。

 

活気に溢れ平和と優しさの暖かみが感じられる自慢の故郷だった。

 

その故郷は歪んだ歴史観を持つ者によって奪われ今の歪んだ彼の内面を映し出すような場所になってしまった。

 

人々は立ち上がる前に両足を鎖で繋がれ、冷たい空気に張り付けられている。

 

だが幸いにも生き延びた者はいた。

 

ソルーナ女王と共にかつての暖かいナブーを取り戻そうと思ってくれた者が大勢いた。

 

共に戦ってくれる者が今やこのナブー中に溢れている。

 

それは銀河の外からも来ている。

 

彼らはナブーの生まれではなくともナブーの為に戦ってくれる立派な仲間だ。

 

なればこそ、なればこそ女王の務めは一つだ。

 

彼ら彼女らの思いに応えること、それだけだ。

 

だからソーシャ・ソルーナは迷わず、止まらず駆けた。

 

シード宮殿の大きな階段をキャプテンコォロやシール隊長らと共に。

 

それは君主の帰還であり解放の第一歩である。

 

シード宮殿に女王が帰還した。

 

 

 

 

 

「どうやら市街地は完全に制圧したようだな」

 

「チィッ!」

 

「無駄だ!ここで我々を捕らえたとて既にマラステアからは救援の艦隊が向かっている!」

 

「それがどうした、お前達の負けは負けのままだ」

 

「我々の故郷を返してもらおう、第三帝国。我々はもう二度と、パルパティーンの遺産に苦しめられはしない!」

 

ジョーレンに続きメンジス三佐もそう言い捨て啖呵を切った。

 

あまりの形相にヴェルフェンス少将は押され玉座近くにまで押し戻された。

 

他の隊員達も頷き銃口を構えている。

 

もはや少将を味方する者は、味方出来る者は誰1人として存在しなかった。

 

「……“使()()()()()()()()”、確かそうだったな」

 

突如ヴェルフェンス少将はそう呟いた。

 

何かを疑問に思いジョーレンは射程距離を確保しながらもメンジス三佐らと共に一旦後方へ下がった。

 

少将は玉座の肘掛けのコントロール・ボタンに手を掛ける。

 

ジョーレンとジェルマンとメンジス三佐はそれに気づいたがあえて泳がせた。

 

それもいつでも対応出来る状態で。

 

「だがこの玉座にはまだ“使()()()()()()()()”」

 

そう吐き捨てたヴェルフェンス少将はスイッチを押し玉座からブラスター・ピストルを2丁取り出した。

 

元々この玉座にはブラスター・ピストルが隠されており第一次ナブーの戦いでこの隠しブラスター・ピストルがアミダラ女王の窮地を救った。

 

しかしクーデター勃発時、この玉座の間は密かにクーデター派の工作員が玉座に細工を仕掛けいざという時ソルーナ女王が使えないようにした。

 

そのせいで女王は大した反撃も出来ず捕まってしまった。

 

クーデター軍がナブーを占拠した後は細工が直され、再びブラスター・ピストルが使えるようになっていた。

 

そして今ここにはクリース宙将が隠した2丁のS-5重ブラスター・ピストルが隠されていた。

 

その1丁をヴェルフェンス少将が手に取りジェルマン達の方に向ける。

 

「道連れに死ね!」

 

ピストルの引き金を引こうとするヴェルフェンス少将だったがその行動は最後まで実行されることはなかった。

 

ジョーレンが容赦無くブラスター・ピストルを握る右手に銃弾を撃ち込んだ。

 

肉が抉れ血が飛びブラスター・ピストルが手からこぼれ落ちた。

 

ヴェルフェンス少将は苦痛に満ちた表情を浮かべるもすぐに左手でもう1丁のブラスター・ピストルを握った。

 

「降伏など誰がするか…ッ!」

 

「おい!」

 

総統万歳(Heil Fuehrer)……!」

 

S-5重ブラスター・ピストルの銃声が1発だけ玉座の間に鳴り響いた。

 

その銃声は誰かに向けられたものではなく、強いて言えばヴェルフェンス少将が最期の抵抗として自決の弾丸を自分の脳内に撃ち込んだ銃弾だった。

 

彼だった遺体から血が滴り斃れている。

 

「そんな……少将が……」

 

ブレティス上級大尉は唖然とした表情でそう呟き他の者達は皆動揺していた。

 

そんな中ジョーレンはただ1人声を上げた。

 

「おい!この中で今一番偉い奴は誰だ!この部隊の、司令部の中で今死んだコイツの次に偉い奴は誰だと聞いているんだ!」

 

その形相に負けたのかある1人の親衛隊将校が話し出す。

 

「その……副司令官のベルケー准将は直接指揮を……」

 

「じゃあお前は!お前の階級はなんだ!この中で何番目に偉い?」

 

「えっと私の階級は親衛隊大佐で一応この中では私が……」

 

「ならお前でいい!いいか?よく聞け。我々レジスタンスの援軍は今軌道上にいる部隊だけじゃない。お前達のスター・デストロイヤーを打ち破った新造艦三隻の艦隊がこれからさらに現れる」

 

本当は先ほど自決したヴェルフェンス少将を使って降伏させるつもりだったが死んでしまった為予定が崩れた。

 

ならばこの玉座の間にいる親衛隊部隊の司令部が降伏したという文言にしなければならない。

 

「一体何隻くらい…」

 

「後六個艦隊はくる、今地上に降ろされた戦力も込みでな。マラステアから来る艦隊とやらも殲滅出来るほどの戦力だ。お前達は仮に降伏せず戦い続けたとしてもそれとも戦わなきゃいけない」

 

敵を威圧し嘘でもなんでも本当らしく見せて恐怖を与える。

 

我々の戦力を誇張し相手が勝てるかもしれないという微かな希望と可能性を破壊するのだ。

 

「お前達もだぞ、司令官は自決したがお前達はまだ生きている。今度は生き残ったお前達が死ぬか我々の艦隊と戦うかを選ばなきゃならん事になる」

 

「降伏すれば身の安全は保証します」

 

ジェルマンは最後にそう付け加えた。

 

「選べ、降伏してひとまず生き延びるか。それともここで戦って死ぬか、だが後者を選んでもお前達の戦い振りを語り継ぐ奴は誰もいないぞ」

 

親衛隊大佐は他の将校達に目をやった。

 

皆目を合わせようとせず下を向いている。

 

だが彼らが思っている事は大体分かるし大佐自身も同じ思いだ。

 

だからこそ大佐は自らの口ではっきりと述べた。

 

「……わかった…!降伏する……!兵団司令部として降伏を宣言する……!」

 

その一言を聞いたジョーレンは今までの険しい鬼のような表情を変え柔和な笑みを浮かべた。

 

「それでいい、それでいいんだ」

 

ジェルマンも微笑を浮かべた。

 

するとドアが開きソルーナ女王と近衛兵達が入ってきた。

 

「陛下!」

 

「こちらへ」

 

メンジス三佐とジョーレンに手招きされソルーナ女王とキャプテンコォロらは階段を駆け上がった。

 

「制圧しました」

 

「流石です少佐、三佐、そして上級中尉。彼は?」

 

ソルーナ女王はジョーレンが掴んでいる男のことを尋ねた。

 

「おい、もう一度言ってくれ」

 

ジョーレンは彼にそう耳打ちし大佐は再び降伏の内容を口にした。

 

「我々親衛隊駐屯兵団は……降伏を宣言する……これは……司令部の意向だ……」

 

意味を理解したソルーナ女王は大きく頷き大佐の降伏を受け入れた。

 

すぐに背後に控えていたキャプテンコォロが「彼らを連れて行け!」と兵を呼んだ。

 

親衛隊将校達は後から来た保安隊員に連れられ玉座の間を後にした。

 

それから暫くしてソルーナ女王は玉座の間制圧を任された3人の指揮官に労いの言葉をかけた。

 

「メンジス三佐、部隊を率いよく戦ってくれました。バスチル少佐は素晴らしい手際で部隊の投入を成功させてくれました。そしてジルディール上級中尉」

 

「はい」

 

「我々が本来使うべきだったあの防衛兵器を取り返し、我々の勝利のチャンスを作って下さりありがとうございます」

 

「いえ、我々こそナブーの解放のお力添えが出来て光栄です」

 

ジェルマンは敬礼しソルーナ女王の言葉を受け取った。

 

もっと話したい様子だったソルーナ女王であったがキャプテンコォロに呼ばれ「それでは」とその場を離れた。

 

女王が離れた後、3人は大きな息をそれぞれ吐いた。

 

「…やった……んだな……僕達は……」

 

「ああ……シード宮殿を、シードを制圧した。我々はやり切った」

 

「ついに……我々の悲願が……」

 

メンジス三佐は全てを言い切る前にふらりと倒れてしまった。

 

「おいおい」と2人は三佐を起こしもう一度立ち上がらせた。

 

「しかしなんかこうも戦闘なく簡単に行くとなんか実感が湧かないね」

 

ジェルマンはふとそう呟いた。

 

実際彼らだけなら戦闘は殆どないに等しかった。

 

今までと違い銃撃戦を掻い潜り戦い勝利するという流れではなかった。

 

「いいじゃないか、死ぬ人間が少なく戦いが勝利で終わるってことはいいことだ。それもお前のおかげだ、ジェルマン」

 

ふと名前を出されたジェルマンはジョーレンの方に顔を向けた。

 

イオン・パルスによる首都シード全域の無力化、それはジェルマンが以前シード宮殿に潜入した時に行ったハッキングに起因する。

 

あの時既にイオン・パルスの制御を確保していたジェルマンは状態を維持したままその後戦闘に臨んだ。

 

数日経った後にも関わらず無事ジェルマンの手でイオン・パルスを起動出来たという事は恐らくクリース宙将もグリアフ一佐も気づいていなかったという事だろう。

 

そういう意味ではジェルマンが2人を出し抜き2人にも“()()()”ということになる。

 

「お前が本来死ぬべきだったかもしれない命を救ったんだよ。勝利と一緒に、お前が」

 

ジョーレンはどこか臭い言い回しで彼の功績を誉めた。

 

だがジェルマンも悪い気はしない。

 

彼の顔に溢れる微笑がそれを示しているだろう。

 

そしてこの第三次ナブーの戦いの結末も。

 

彼らは勝った、敵の不意を突き最大にして最弱の兵器を使用して。

 

レジスタンスが再び第三帝国から勝利をもぎ取った瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-アウター・リム・テリトリー ロザル宙域 ガレル星系 惑星ガレル-

ガレルの駐屯艦隊は地上部隊を回収し急いで撤収した。

 

その間にMC85“リバティ”率いるレジスタンス艦隊が惑星ガレルに突入し遂にガレルを取り返したのだ。

 

そしてその“解放(Liberty)”を成した艦隊はというと、ガレルの軌道上で帝国艦隊の襲来を待ち続けていた。

 

「警戒を怠るな、連中は絶対ガレルを奪還しにくるはずだ」

 

リバティ”のブリッジで司令官席に座る艦隊の提督はそう呟き鋭い眼差しでブリッジの景色を見つめた。

 

他の乗組員も警戒を怠らず、モニターを凝視し臨戦体制と監視体制を続けていた。

 

「せめて我々はアクバー元帥達の本隊が問題を解決するまでここの死守を…」

 

「提督!ハイパースペースより艦影多数接近!恐らく艦影から見てバトルクルーザークラスの敵艦が少なくとも十隻以上確認出来ます!」

 

ハイパースペースを監視していた士官は急いで提督に報告した。

 

今度はまた別の士官もそれに付け加えて報告する。

 

「その中に一隻、スター・ドレッドノートクラスの大型艦がいます!間違いなく17キロを超えています!」

 

「まさかこちらの方面にもスター・ドレッドノートを回してきたというのか……一体どこからそんな戦力が……ともかく全艦、ガレルの一歩前に出て敵を迎え撃つ。ガレル軌道上で戦っては絶対に被害が出る」

 

「了解!」

 

提督の判断により“リバティ”と他のネビュラ級やMC80やネビュロンB、CR90が後に続き最大船速でガレルの一歩手前まで進んだ。

 

全艦艇の砲門が敵艦隊のハイパースペース・ジャンプ予想地点に向けられ、いつでも戦える体制となっていた。

 

各艦のブリッジも慌ただしく報告がなされ戦闘前の後継を映し出した。

 

「全艦防衛陣形、モン・カラへの増援を既に要請済みだ。少なくとも耐え続ければやがて味方が来る…!」

 

「敵艦、ジャンプアウトしました」

 

士官の報告通りハイパースペースを航行中だった正体不明の大型艦隊はハイパースペースをジャンプアウトした。

 

しかしジャンプアウト地点は“リバティ”含めたレジスタンス艦隊が予測していた地点よりもかなり遠く、こちらの射程圏外でさえあった。

 

だがレジスタンス艦隊の艦砲が届かないのなら敵艦隊も同様に攻撃が届かないはずだ。

 

敵艦隊のジャンプアウトはとても不可解だった。

 

「何故あんな地点にジャンプアウトを……」

 

「奇襲に失敗したと判断し距離を取ったのでしょうか…」

 

幕僚が独り言のように呟く。

 

確かにその可能性はあったが提督の中ではどこかピンとこなかった。

 

土壇場でビビり判断を間違えたにしては初歩的なミス過ぎる。

 

それにこんなに距離が離れていてはもはや攻撃の意味すら消失していた。

 

「ともかくこの距離を維持しろ!今のうちに相手の出方を探りこちらの態勢を……」

 

「提督!!敵艦隊が!!」

 

「何!?」

 

もう士官の報告が報告する頃には十分遅過ぎるところまで迫っていた。

 

真紅の血のように赤い、赤い破壊の光線はレジスタンス艦隊をそのまま“()()()()()”。

 

被弾した、直撃した、一撃で沈んだ、そんなやわな表現では済まされない。

 

文字通り“()()()()()”のだ、レジスタンス艦隊を。

 

放たれた銀河で最初の一撃はMC85やネビュラ級といったレジスタンス最新鋭の軍艦を含めた艦隊を丸ごと飲み込み闇の底へと連れていった。

 

禍々しい程の赤は彼らのシンボルカラーとしてとても合っている。

 

艦隊所属を意味するラインも赤であり、その紋章も赤だ。

 

そしてこの怒り、憎しみなど囲められた出血の一撃は最初の一撃として十分なインパクトを誇っていた。

 

巨大な大砲からエネルギーが完全に放出され切り紅の超兵器の威力が全て発揮された時、それこそが彼らの宣戦布告の全文となる。

 

この一撃こそが帰還を知らせる凱歌となり、この一撃こそが“()()()()()”となるのだ。

 

惑星ナブーでレジスタンスが勝利を得たその時、反対側ではレジスタンスが敗北していた。

 

帝国の統一の日は近い。

 

 

 

つづく




私 だ(夜行性)


遂にナチ帝国も48、49、47…まあそんな感じです

うーん…長いような短いような……

とにかくどんどん書いていきますのでこれからもよろしくお願いしますわ(ヤクザ風)
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