第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「平和は偽りであり、銀河は混沌に満ちている。だが我々にはフォースがあり調和は我々が作り出すものであると、自覚しなくてはならない」
-とあるレジスタンス軍将校の発言-


呼び声

ナブー各所ではまだ戦闘が続いていた。

 

宇宙では軍艦同士が砲を並べ合い、空中ではスターファイターが撃ち合い、地上では歩兵やウォーカーが殺し合っている。

 

民兵やゲリラによる親衛隊やクーデター軍の進軍妨害なども確認され始め徐々に戦いは惑星全体を巻き込んだ熾烈な全面戦争になりつつあった。

 

だが戦いはこれ以上続くことはない。

 

戦いの終了の合図が全軍の通信システムを介して一部のシステムが復旧したシード宮殿から放たれた。

 

女王ソーシャ・ソルーナの肉声によって。

 

『現在戦闘中の全軍に通達します。私はナブー王室現女王ソーシャ・ソルーナ、今私はシード宮殿の玉座の間からこの声明を発しています』

 

まずその一言を将兵達が聞いた時、判断は大きく分かれた。

 

親衛隊やクーデター軍は動揺しレジスタンス軍は耳を傾け解放軍は喜びを露わにした。

 

特に前線司令部でフランケ一佐は「制圧に成功したか!」と珍しく感情を表に出し喜んでいた。

 

ソルーナ女王の声明は一間を置いて続いた。

 

『我々はこのシード宮殿を含めたシード全市内を制圧しました。既にシードの守備隊を捕虜に取り、宮殿内の全ても私の手に戻りました』

 

これによりレジスタンスと解放軍の兵士は更に喜びの感情を露わにした。

 

首都シードの解放は兼ねてよりの悲願だ、この目標を達成することが彼らの一番の使命である。

 

一方の親衛隊とクーデター軍の様子は味方同士ながらも受け取り方はかなり違った。

 

クーデター軍の兵士達はその言葉を聞いた瞬間一斉に「シードが堕ちたのか…?」と不安を口にした。

 

捕虜に取られた仲間や司令部のことも心配しより一層不安を募らせれた。

 

それに対し親衛隊の将兵はキッパリとこう評した。

 

「そんなこと連中のハッタリに決まってる」と。

 

彼らはこれは敵の嘘とプロパガンダであり騙されてはいけないとクーデター軍と自軍の兵士に大声で宣言した。

 

首都シードがそう簡単に陥落する訳がない、あそこにはウォーカーを備えた1万人を超える守備隊がいるはずだ、連中の戦力で攻略できる訳がない。

 

それにシードにはイオン・パルスがあるのだから仮に部隊を抑えたとしても返り討ちに遭うだけだ。

 

まだ首都シードは依然として親衛隊の司令部がある、そう考えた何人かの将校は首都シードに通信を取った。

 

だが首都シードに通信が繋がる事は一度もなかった。

 

何者かに拒否され音信不通の状態が長く続いた。

 

そこでようやく親衛隊の将兵も「シードは陥落したのではないか」という現実の不安を抱え始めた。

 

追い打ちをかけるようにソルーナ女王の声明が更に届く。

 

『既に首都の軍司令部は我々に正式に降伏を宣言し我々も降伏を承諾しました。既にあなた方の司令部は負けを認め戦闘を放棄しました』

 

シードに通信も繋がらない、何の返答もない、おまけに軌道上の艦隊も壊滅寸前、この状況でこの一言が出されては将兵の戦意に大きなヒビが入るに決まっている。

 

多くのクーデター軍兵士やストームトルーパー達が「嘘だ…」と言って崩れ落ち、手からブラスターが戦意と共にこぼれ落ちた。

 

部隊長や将校達も自他双方にかける言葉が見つからず黙り込んだ。

 

空中でのスターファイター戦は殆ど戦闘が停止し爆発の光も減っていた。

 

軌道上では声明を聞きもはや戦闘能力はないと確信したナブー艦隊が一足先にレジスタンス艦隊に降伏を申し入れていた。

 

『あなた方がこれ以上命を懸けたところでこの結果は覆りません。そして我々もこれ以上の戦闘は望みません、捕虜となれば必ずあなた方の人権と待遇を守る事を誓いましょう。ですから…』

 

再び間を置き最後にソルーナ女王は告げる。

 

『親衛隊及びナブー・クーデター軍の武装解除と全面降伏をここに勧告します』

 

その一言と共にソルーナ女王は一言述べ通信を切った。

 

彼女がそれ以上自らの勝利を語る訳でもなく悪行を断罪する訳でもなくそれ以上の言葉は紡がれなかった。

 

しかしこの状況ではそれ以上の事を言わなくとも敵がやる事は決まっていた。

 

中央の包囲部隊を蹴散らし敵の補給地点などを攻撃していたホーリス隊長らの下に両手を上げた数十人のストームトルーパーとクーデター軍の将兵が現れた。

 

部隊長と思わしき親衛隊の将校が恐る恐る、屈辱を噛み締めながらホーリス体調に宣言した。

 

「…降伏する……!我々はお前達に降伏する……」

 

言い切った後その将校は顔を背けグンガンの騎兵隊員達は皆顔を見合わせていた。

 

ホーリス隊長は少し経った後自らのカドゥから降りてその将校達に近づいた。

 

リーハイ副隊長は「隊長!」と静止しようとしたが構わずホーリス隊長は彼らの前に出た。

 

隊長はグンガンの右手を差し出し親衛隊の将校に握手を求めた。

 

将校も恐る恐るその手を握った。

 

「降伏するというなら我々はそれを受け入れよう」

 

「隊長!」

 

リーハイ副隊長は反対する様子だった。

 

彼らのせいで故郷は破壊され多くの同胞が殺された。

 

そんな連中を降伏した程度で許していいのか、復讐心に似た感情が彼を捕らえていた。

 

「いいんだ副隊長、我々は反撃し首都を取り戻し勝利した。それで十分取り返したとは思わないか?これ以上やれば本当に血で血を洗うような、取り返しのつかない事になる」

 

それに彼らを受け入れなければシードで戦っているジェルマンやジョーレン達の苦労が全て無駄になる。

 

「降伏は受け入れられないらしいぞ」という誤ったイメージが広がれば彼らは誰1人投降せず最後の1人になるまで戦うだろう。

 

そうなっては全てが無駄だ、今得た勝利も水疱に消える。

 

「捕虜を本部に輸送する、輸送機の手配を頼む。それと警戒と警備、偵察だ。買ったとはいえまだ油断は出来ないぞ!」

 

カドゥに乗ると同時にホーリス隊長は素早く命令を出す。

 

グンガン騎兵達も命令を承諾しそれぞれ行動を始めた。

 

勝ったからこそ冷静でなくてはならない、ホーリス隊長はそう考えていた。

 

でなければ勝利などあっという間に勝利ではなくなってしまう。

 

が、勝利が嬉しくないという訳ではない。

 

本当は誰よりも飛び跳ねて大声を上げ喜びたいはずだ。

 

だがホーリス隊長は多くの兵の命を預かる指揮官なのだ、そう一兵卒のように喜んではいられない。

 

この戦いの勝利を維持する為に、ホーリス隊長のもう一つの任務は始まっていた。

 

 

 

 

 

 

-第三帝国 首都惑星コルサント 親衛隊本部-

ナブーでの第三帝国の敗北はこのコルサントまで広がっていた。

 

モン・カラ周辺で確認されているレジスタンス軍の新型主力艦がナブーにも出現し勝利に一躍勝ったと。

 

現地に派遣された親衛隊の一個兵団は降伏、司令官のヴェルフェンス少将は自決し第三帝国はナブーの支配権を失った。

 

また国防軍は「やはり我々を送っておけばよかったのだ」と言うかもしれないがおそらく彼らが送られていても同じ結末だっただろうとジークハルトは考えた。

 

重要なレジスタンスの新型艦ではなく地上の親衛隊のやられ方だ。

 

報告によれば確かにレジスタンス軍の師団と戦闘になったものの敗因はどうもそれではないらしい。

 

首都シードの陥落により司令部が陥落した為彼らは敗北しただけであって直接戦闘に敗れた訳ではない。

 

現に多くの捕虜がレジスタンスに取られてしまっている。

 

だが不思議なのはこのシード陥落についてだ。

 

このシードでさえも大規模な戦闘はなくむしろシードを守っていた部隊は殆ど損害もなく全員が投降したそうだ。

 

理由は不明だが一部の将校達の予測によればシード防衛用のイオン・パルスが作動した影響だとされている。

 

イオン・パルスなら兵員の命を奪う事なく兵器、ブラスター、通信機器全てを無力化する事が可能だ。

 

クローン戦争前のナブー侵攻後に設置され4年前のシンダー作戦でも新共和国軍と王室保安軍がイオン・パルスを作動し勝利したと報告を受けている。

 

しかしあれは当時の新共和国軍が防衛側に回っていたからであり今回と状況が反対だ。

 

そんな中でイオン・パルスを使用し親衛隊を無力化させたとと言うことは何らかの理由がある。

 

考えられるのはそう、“()()()()()()()()()()()()()()()”か“()()()()()()()()()()()()()()()()”かの2つだ。

 

いや、もしかすると両方合わせての結果だったかもしれない。

 

とにかくレジスタンスには相当実戦に慣れた優秀な特殊部隊が幾つか存在すると言うことになる。

 

現にイセノ通信ステーションの戦いの時も特殊部隊が先行しステーションを乗っ取ったという事後報告を目にしている。

 

他の報告書でもレジスタンス誕生以前に特殊部隊と思われる存在の破壊工作が記されていた。

 

レジスタンスは反乱同盟軍の頃から特殊部隊に力を込めていた。

 

恐らくそれは今も同じで初期反乱運動、銀河内戦、そしてホズニアン・プライム陥落やシャンドリラ陥落を経験し生き残った手練れが大勢いる。

 

もしかするとその存在はレジスタンスの新型軍艦よりも脅威となるだろう。

 

暗殺や中枢の破壊工作などで深いところまでダメージを与え第三帝国を弱らせる可能性があるかもしれない。

 

我々はそんな連中と戦わねばならない。

 

「……特殊部隊対策…か」

 

「ん?どうしたジーク?」

 

ジークハルトの独り言にアデルハイン大佐は声をかけた。

 

どうやら思考がぽろっと言葉に漏れてしまったらしい。

 

「いや、何でもない。年度末の最終報告書と提案書を考えてただけだ」

 

「そうか、あんまり気を詰めすぎるなよ?それでナブーの件本当なのか?」

 

親友を労いアデルハイン大佐は話の続きをヴァリンヘルト大尉に尋ねた。

 

考え事ばかりで全然聞いていなかったがどうやら彼らもナブーのことを話していたようだ。

 

最近は色々頭を使い考え込むことが多くなった気がする。

 

それは単純に将官に上がったからとかではなく色々な出来事と事件がいっぺんに起きすぎたせいだろう。

 

「ええ、何でもナブー陥落を免れたナブー側の高官がこちらに来るそうです」

 

ヴァリンヘルト大尉の言葉を聞きジークハルトは少し顔を向けた。

 

そんな話、自分だって聞いていない。

 

「大尉、その話どこで聞いた?」

 

ジークハルトはヴァリンヘルト大尉に尋ねてみた。

 

「食堂の隅で本部常駐組の佐官の方々が話していたのを聞きました。まあ多分噂話の類だと思うんですがね」

 

「ああ、あれだけ電撃的にナブーが陥落しまってはひょんな事でも起きない限り脱出は無理だしな」

 

アデルハイン大佐はそう付け加えたが情報源であるヴァリンヘルト大尉の話からしてどうもそう簡単に割り切れなくなってきた。

 

本部常駐組はシュメルケ元帥やフューリナー上級大将と言った高官達の幕僚を務めている親衛隊屈指のエリートだ。

 

当然ジークハルトがまだ知らない情報もふとしたことから入手することはある。

 

情報源としてはかなり信用性の高い場所だ。

 

「まあどっちにしろ、ナブーが陥落したって事実は変わらないんですがね」

 

ヴァリンヘルト大尉はどこか落ち込み気味にそう呟いた。

 

高官が来ようと来まいと彼らの行動次第でこの状況が一変する訳ではない。

 

もはやナブー陥落は過ぎ去った変えようのない事実だ。

 

「准将は我々の軍団がナブー奪還に充てがわれると思いますか?」

 

ヴァリンヘルト大尉はジークハルトに問い詰めた。

 

第三帝国とてこのまま陥落させたままにしておく訳はない。

 

必ず奪還作戦を考え帝国軍を国防軍親衛隊問わず送り込むつもりだ。

 

「それは後になってみないと分からないがコルサントにいる我々を送る可能性は低いだろう。何せナブーの近くにはローリング大将軍の息が掛かったマラステアがある。あそこの部隊が送られるはずだ」

 

「となると奪還作戦は国防軍が行うことになりそうだな」

 

「ああ、シェールナー辺りがやるだろう……ん?“ライアビリティ”からだ」

 

ポケットに入れていた虚無リンクが振動で通信が来ていることを伝えた。

 

すぐに取り出しジークハルトは「どうした」と連絡先の“ライアビリティ”へと繋いだ。

 

呼び出たのは“ライアビリティ”の艦長であるメルゲンへルク大佐だった。

 

『准将、コルサント軌道上に予定にないプロカーセイター級スター・デストロイヤーが三隻ジャンプアウトしました』

 

「何だと…?」

 

ジークハルトはその報告を聞き目を顰める。

 

先程の噂話からそう時間が経っていないせいかとてもこの報告は怪しく感じられた。

 

「親衛隊本部のログを確認してみよう。それでプロカーセイター級からは何か発進したか?」

 

『はい、ラムダ級シャトルが1機本部に向かったと思われます。准将、あれは一体なんですか?』

 

メルゲンへルク大佐はジークハルトにふと尋ねた。

 

検討や予測は付くが確証はない。

 

それにここであえて自らの推察を話す必要は今後の為にも意味はないだろう。

 

「さあな、ただ即座に撃破命令が出ていないということは少なくとも敵ではない。必要なら少し距離を取っても構わん、私が許可する」

 

『了解、また何かあれば連絡します』

 

通信が切れジークハルトは近くの窓辺から外を覗いた。

 

流石にここからそのラムダ級は確認出来ないがどことなくここに来ることの察しはついた。

 

「…やはり噂のナブーの高官ですか…?」

 

ヴァリンヘルト大尉はジークハルトに尋ねた。

 

「ああ、多分な」と返しジークハルトは彼らの方に穏やかな顔を見せる。

 

「まあ今の我々にはまだ関係ないさ。少なくとも“()()()”」

 

 

 

 

 

彼らの予想通りハイパースペースからジャンプアウトしてきた艦は全てナブー宇宙艦隊の艦であった。

 

旗艦“キング・オブ・ヴェルーナ”に連れられたプロカーセイター級、そしてデア・フルス・ソルー軍団の人員。

 

ラムダ級にはヴェルフェンス少将と一旦指揮を交代したクリース宙将とグリアフ一佐らが乗り込みコルサントの親衛隊本部へ向かっていた。

 

既にシャトルは特殊停泊場に泊まり2人は親衛隊本部の通路を幾人かの親衛隊将校に囲まれ進んでいた。

 

「このまま真っ直ぐ進めばシュメルケ元帥の執務室です。機密の為、入室は御2人だけとさせていただきます」

 

クリース宙将は将校の要求を了承し導かれるまま通路を進んだ。

 

彼はふと隣のグリアフ一佐に尋ねた。

 

「現状ナブーを脱出したと見られる部隊の報告は?」

 

「一切ありません。どうやら全員捕虜となったか脱出不可能となり惑星内部で抵抗を続けていると思われます」

 

「そうか、なるべく後者の行動を行なっていると切に願おう」

 

一佐は小さく頷き2人はそのまま歩いた。

 

しばらく行くと大きなブラスト・ドアが見えポールドロン付きの重武装のストームトルーパーが2人ドアの前に立っていた。

 

案内役の将校が一歩前に出て「クリース一等宙将とグリアフ一等陸佐をお連れした」とトルーパーに用件を伝えた。

 

ストームトルーパーは用件を受け入れ解除コードを入力する。

 

何枚かのブラスト・ドアがゆっくり開きトルーパー1人が「どうぞ」と手招きした。

 

「では行きましょう」

 

将校に連れられ3人は執務室の奥へと入った。

 

暫くするとドアが閉まり将校は椅子に座る白髪混じりの男に敬礼した。

 

「シュメルケ元帥、クリース宙将とグリアフ一佐をお連れしました」

 

元帥は敬礼を返し「ご苦労、下がって良い」と返す。

 

将校は命令通り執務室を退出した。

 

退出を見送るとシュメルケ元帥は一間を置き口を開いた。

 

「クリース宙将、グリアフ一佐、まずは今回のナブー失陥に際し親衛隊の力が至らなかったことを謝罪したい」

 

まず彼は謝罪の言葉を述べた。

 

それが真意なのか偽りなのかこの黄土色じみた瞳を持つ男からは感じ取れない。

 

しかしその言葉を述べることが親衛隊として、組織の最高司令官としての責任の取り方だろう。

 

「いえ、そんな。我々こそ敵を侮りすぎていました。連中は思った以上に抵抗力があり諜報、破壊工作、極秘作戦に長けていました」

 

「それは“()()()()()()()()()()()()”のことかな、宙将」

 

シュメルケ元帥はクリース宙将が思い浮かべる人物の姿を言い当てた。

 

やはり第三帝国でも少なくとも知名度はあるようだ。

 

「はい、ご存じでしたか」

 

「ああ、イセノの一件以降様々な事件と照らし合わせてその存在が浮上してな。今情報部や保安局が捜査中だ」

 

「でしたら我々も艦内での戦闘で得た情報をそちらに提示しましょう。少しは役に立つはずです」

 

「それはありがたい、ハイドレーヒに伝えておこう」

 

シュメルケ元帥は椅子に寄り掛かり微笑を浮かべた。

 

クリース宙将の背後に立つグリアフ一佐は「一つよろしいですか」と口を開いた。

 

シュメルケ元帥は無言でグリアフ一佐の発言権を許す。

 

「元帥殿はレジスタンスの特殊部隊員について検討がついているのでしょうか。私個人の意見としましては私と同じ“情報将校”だと思いますが」

 

「流石宙将の懐刀だ、実は私もそう考えている」

 

シュメルケ元帥はさらに微笑を深べ一佐の意見に賛同した。

 

多くの高官達は会議で「やはり新共和国特殊部隊の生き残りだろう」と決定づけていた。

 

恐らく大半はそうだろうがそれでも“2()()3()()”は確実に違う。

 

通信ステーションの制圧速度から鑑みて相手は相当情報戦を得意とする兵士が部隊の中にいる可能性が高い。

 

モン・カラの戦線でもインペリアル級が一隻敵部隊に驚異的な速度で拿捕されたという報告を受けている。

 

もはやこれは確証に近かった。

 

「特殊部隊の記録だけでなく情報部、宇宙軍情報部の記録も念入りに捜査するよう命じている。まあ新共和国の軍関係、特に情報部はデータが全て消えていて復元するのは難しいが」

 

新共和国の政府はともかく前内戦の経験がある軍関係、諜報組織などは事前に準備をしていたらしくホズニアン・プライムをかなり素早く奇襲したにも関わらずかなりの情報が事前に抹消されていた。

 

特に情報部はかなり素早くデータを抹消したらしく復元は不可能とさえ言われていた。

 

「さて、本題に入るとしよう。第三帝国はこのナブー失陥を重く受け止めている、と同時に奪還は“容易である”とも考えている」

 

「確かにナブーの近くにはマラステア、大セスウェナがあります。兵力の展開も兵站の確保も容易でしょう」

 

マラステアはローリング大将軍が銀河内戦中に自らの勢力を置いていた場所で資源の宝庫であり多くの兵力が駐屯している。

 

所属兵力の殆どは国防軍であるが特に問題はない。

 

何より単純な距離が近く多くの部隊を即座に展開出来る。

 

「それもある、が容易である理由はそれではない。我々には新たな力が加わる、ファースト・オーダーやチス・アセンダンシー以上の力がな」

 

「新しい帝国の一大軍閥がまた同盟を?しかしこの銀河系にこれ以上あなた方と肩を並べられる程の規模を持つ軍閥など存在しないと認識していますが」

 

「ええ、カイゼルシュラハト作戦に参加した勢力は現在の第三帝国の一部となり帝国への帰属を望まなかったデルヴァードス将軍やハースク提督達は皆“粛正”されたと聞いています。ローゼン・トルラックも死に、アデルハードも明日には敗死の報告を受けてもおかしくない状態まで弱体化しました」

 

グリアフ一佐はクリース宙将の言葉に付け加えた。

 

彼の言う通りもはや今の銀河系に第三帝国と方を並べて戦える程の勢力は存在しない。

 

有望株だった13人の軍将は皆フリシュタイン大佐の手によって粛清され、そうでない軍将達も皆虫の息だ。

 

アンシオンのドウル元帥のように真っ向から反抗してくる軍将も数少なくなり銀河内戦末期の名残は徐々に一掃されつつあった。

 

第三帝国に全て統一されると言う結果で。

 

「宙将、君はもし“()()()()()()()()()()()”が今も“()()()()()”としたらどうするね?」

 

シュメルケ元帥は突然会話の流れとしてはとても不可解に思える疑問を投げかけた。

 

まだ理解出来ないクリース宙将はひとまず自らが最も敬愛する人物を言葉通り当てはめた。

 

するとそこでようやく言葉の意味が理解出来る。

 

()()()()()()()()()”、その問いに繋がりクリース宙将は恐る恐る口を開いた。

 

()()()()()()()()()”。

 

「……それは、それは本当なのですか……?」

 

シュメルケ元帥は小さく頷いた。

 

「我々は取り戻した、故にあなた方の故郷であり我々の聖地を奪還するのも容易となるだろう。既に我々はナブー奪還作戦を計画中だ。そこで…」

 

元帥は将校を指で3人ほど呼んだ。

 

あらかじめ打ち合わせてあるのか親衛隊の制服を持った将校が2人とアタッシュケースを持った将校が1人姿を表した。

 

シュメルケ元帥は立ち上がりデスクの棚からアタッシュケースを取り出す。

 

「我々は先方として、客将としてあなた方2人を親衛隊に向かい入れたい。今から貴方がナブー奪還作戦の指揮官だ、クリース“()()”」

 

ケースを開け中身をクリース宙将改めクリース大将に見せた。

 

2本のコードシリンダーに大将を示す階級章、そして名誉銀十字勲章が入っていた。

 

「全て貴方に授けよう、親衛隊の大将として、ナブーを奪還する新たなる英雄としてまずはこれを身につけて欲しい」

 

クリース大将はゆっくりと勲章に手を伸ばした。

 

その顔はより一層笑みが増しておりとても興奮気味だった。

 

「貴方が連れてきたデア・フルス・ソルー軍団は新たに兵員と艦隊が追加されデア・フルス・ソルー兵団となりナブー奪還軍の中枢を成す存在となる。そこで、グリアフ“()()”」

 

ケースを持った将校がシュメルケ元帥と同じようにケースを開き中身を見せた。

 

同じく2本のコードシリンダーに加えて准将の階級章、そして一等白十字勲章が入っていた。

 

「デア・フルス・ソルー兵団の上級将校として、新たな親衛隊の情報将校として我らと共に戦って欲しい。君には専門の情報将校が何人か部下に付く、権限も普通の将校よりは高くなるだろう」

 

「ありがとうございます元帥、必ずナブーを奪還してご覧にれましょう」

 

グリアフ准将は親衛隊式の敬礼を行い早速シュメルケ元帥に忠誠を誓った。

 

「我々の聖地奪還を、“()()()()()()()()”」

 

勝利に湧き上がるナブーとは裏腹にこのコルサントでは黒い野望が再びナブーを覆い尽くそうとしていた。

 

レジスタンスの勝利はまだまだ程遠い。

 

 

 

 

 

そこにあるのはただの屍、人も人ならざるものも全てが屍となっている。

 

鋼鉄の残骸が或いは微粒子が残骸となって漂いデブリベルトを形成していた。

 

中には一撃で消し飛んだ新型主力艦のものもあるのだろうがここまで何もかも残骸となってはもはや見分けが付かない。

 

ただ無惨に、惨状という言葉すら生ぬるいほどの光景が広がっている。

 

この鋼鉄の屍達は自らの役目を一つも果たすことなく宇宙の塵となったのだ。

 

一方で人の屍はもっと無惨な姿で曝け出され、或いは微粒子となっている。

 

直撃を喰らった艦船の中にいた者は恐らくその屍すら残らず生きていた全ての証拠を暗黒の彼方へと連れ去られただろうし直撃でない者はもっと悲惨な死に方をしただろう。

 

爆発に巻き込まれその高熱で焼かれ、艦船の破片や外壁に押し潰され、宇宙空間へと放り出され、他にも様々な死に方がある。

 

直撃を免れギリギリ破片が残っている艦船の中にはもしかしたら人の腕や人の体らしきものも浮いていた。

 

遺体だけでも残るならそれはある意味で奇跡と言っていいだろう。

 

()()”が放った宣戦布告の第一射はそれだけの威力があり破滅を齎す厄災の象徴でもあった。

 

だがその中で1人だけ、まだ生命と言えるものを辛うじて保っている者がいた。

 

「……っ……ぅぅ……」

 

レジスタンス軍の軍服を着ており胸には大尉を示す階級バッジが付いている。

 

彼が乗っていたモン・カラマリ・クルーザーは一撃を喰らい彼が生きているのが不思議なほどグシャグシャに破壊された。

 

あの特徴的な船体はまるで保てておらず幾つかの破片と辛うじて蘇ったシールド発生装置から出る微量な偏向シールドによってなんとか生き永らえていた。

 

だが彼はもう時期死ぬ。

 

既に乗艦の撃沈の衝撃でブリッジにいた仲間は全員吹き飛ばされ今も宇宙空間を彷徨っている。

 

彼の左足だって衝撃で吹き飛ばされ破片が彼の腹部に刺さり軍服から血が滲んていた。

 

シールド発生装置もいつまで持つか分からなず空気ももうかなり少なかった。

 

「………レジス……タンス……に……知らせ……」

 

遠のく意識と感覚のない身体をなんとか動かし近くのコンソールを起動しようとした。

 

この存在を、この敵の事を必ず知らせなければならない。

 

あの敵は間違いなくレジスタンスを滅ぼしかねない本物の厄災だ。

 

今までの敵とは格が断じて違う。

 

仲間に危機を伝えなければならない。

 

でなければここを守備していた艦隊も全ての戦友達の死が無駄になってしまう。

 

しかし思いだけではどうしようもなかった。

 

男の身体はもう動かない上にコンソール類も全てシステムは死んでいる。

 

他のレジスタンス軍に危機を伝えることは不可能だ。

 

「……敵かん……たい……襲撃により……我が艦隊は……壊滅……生存者は……恐らく……なし……」

 

必死に言葉を紡ぎなんとか伝わらない状況を必死に伝えようとした。

 

だがその無意味な小さな抵抗もある一隻の軍艦を見ただけで言葉が止まった。

 

男の死にかけの瞳に映ったのは男が人生で初めて見る大きさの黒色の超弩級戦艦であった。

 

男は今までエグゼクター級やアセーター級、マンデイター級やベラトール級と言ったスター・ドレッドノートを直接目にしたことはない。

 

無論資料や講義では見たことあるが所詮は書類上の数値だけであり実際の姿は戦場で目撃したことがない。

 

命辛辛逃げ出したあのマジノ線での戦いでもだ。

 

そんなスター・ドレッドノートが今、自分の目の前にいた。

 

何隻ものスター・デストロイヤーを従え、まるで自らが死の体現者であるかのようにその黒い超弩級戦艦は航行している。

 

数千メートルあるはずの特殊な大砲をつけたようなインペリアル級に似たスター・デストロイヤーもまるでコルベット艦のように小さく見えた。

 

どことなく資料で見たエグゼクター級によく似ていたが船首にはエグゼクター級とは違い大きく伸びまるで鎌のような姿だ。

 

命を刈り取る死神の黒い鎌、正にその言葉が似合う。

 

だが艦隊を襲い仲間を皆殺しにしたのはあのスター・ドレッドノートではなかった。

 

あの一撃を放ったのはあの艦ではなかった。

 

周りの艦が、他のスター・デストロイヤーが放ったのだ。

 

あの一撃を、“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”。

 

「……我々の……希望……自由……自由は……!」

 

彼らの姿は死にかけの男から最後の希望さえも奪おうとした。

 

こんな相手にレジスタンス軍は勝てるのか、一撃で何もかも消されてしまうのではないか。

 

敵の姿を見る度に男はそんな気分になっていった。

 

一撃で即死した者ならまだしもこの惨状を僅かでも生き残ってしまった者は皆そう思うだろう。

 

黒き大鎌の超弩級戦艦に連れられ星の破壊者達は進軍を続ける。

 

ゆっくりと、ゆっくり死を運んでいく。

 

男が最期に見た光景は死の十字軍が進軍する姿でありその心にあったのは希望をゆっくりと蝕む絶望だけだった。

 

 

 

 

 

-未知領域 チス・アセンダンシー領 惑星シーラ 首都クサプラー フェル家執務室-

ヴィルヘルムはチス領や銀河系からの報告をタブレットで読みながら状況を把握していた。

 

銀河系ではどうやら惑星ナブーがレジスタンスの手に堕ち、ガレルも同じくレジスタンス宇宙軍が進駐したそうだ。

 

ヤヴィン周辺域はまだ不明だが他の戦線では殆どいい話を聞かない。

 

尤もそれは第三帝国が一番ご承知だろうが。

 

「そして我々は襲撃者は分からずじまい、まあほぼ無傷で追い払えただけで良しとするか」

 

キャルヒーコルでの戦いはチス・アセンダンシーと帝国軍の圧勝に終わった。

 

敵艦隊の陸戦隊を粉砕し敵艦隊の主力たるインペリアル級をほぼ無傷で拿捕出来た。

 

拿捕したインペリアル級は全てアセンダンシー領の造船所に送られ修復中であり技術士官達によれば一部の艦は後数週間もすれば使える状態になると言うことだ。

 

インペリアル級のような1,000メートル以上の大型主力艦が一隻でも多く使える事はチス・アセンダンシーと“新領土”を防衛する為にもとても都合がいい。

 

ヴィルヘルムが考えに耽っていると執務室のドアのブザーが鳴った。

 

「どうした?」

 

『タッグ元帥が面会を求めております』

 

何か重要な要件でもあったかと頭を巡らせ記憶を辿ってみるが特に思い当たる節はなかった。

 

しかし追い返す訳にも行かないので「入れてくれ」と頼んだ。

 

ドアが開き何故かウォッカの瓶を持ったタッグ元帥が姿を表した。

 

「一体何の用だ?態々物珍しいものを持ってきて」

 

「例の割譲条約の報告に来ただけさ。こいつは土産物だ」

 

ウォッカの瓶にはシャンドリラ・ウォッカと書かれている。

 

第三帝国とチス・アセンダンシーとファースト・オーダーは中立条約と不可侵条約に加えて新たに領土割譲条約を結んだ。

 

銀河系の北部八つの宙域をチス・アセンダンシー及び亡命帝国領とする代わりにオード・マンテルや惑星オリンダなどを含むブライト・ジュエル宙域などを割譲した。

 

ファースト・オーダーは惑星インダーと惑星コムラを有するダントゥス宙域とプレフスベルト宙域そしてペリン宙域を領土とした。

 

更に未知領域を正式な領土と認めると共に南アウター・リムの8つの宙域を新たに領土と設定した。

 

第三帝国としては自分達では抱えきれない厄介な部分を投げ出したつもりなのだろう。

 

だが本当の意味ではこれは“()()”だ。

 

帝国の再統一の為、まずはそれぞれに割譲条約で領土を展開しやがてその境目がなくなっていく。

 

恐らくは“()()()()()”から来たる者達によって。

 

今回の割譲条約も彼らの存在がなければ第三帝国は提案もしてこなかったはずだ。

 

「シャンドリラで条約が結ばれたからついでにか」

 

「ああ、モスマと言いシャンドリランは好きじゃないが生産品はまた別だ。流石にシーラのウォッカだけじゃあ飽きが来るだろう?」

 

ウォッカをヴィルヘルムのデスクに起き微笑を浮かべる。

 

「後でグラス」を持ってくるとヴィルヘルムは伝え早速彼に尋ねた。

 

「新領土の調子はどうだ?尤もあそこには以前から一部の帝国軍残存勢力が逃げ込んでいるという話があったが」

 

「我々に帰属する者が半分、そうではなく頑固として抵抗する勢力が半分と言ったところだ。相当厳しいことになる」

 

「そうか……まあ大まか予想通りだ。情報部と保安局による特殊作戦を実行を提案する。第三帝国が軍将を粛清した時のように我々も同じことをして勢力を手に入れる」

 

特殊作戦、かつては反乱同盟軍や反乱分子の勢力に対して行っていたものだ。

 

例えばインフェルノ分隊による潜入破壊工作など。

 

今回はそれを反対勢力の帝国軍残存勢力に行おうと言うのだ。

 

元は同じ帝国同士と言うことでタッグ元帥は少しばかり気が引けた。

 

本来は帝国同士の争いを避ける為に亡命したはず、どこかでそのようなしこりが残り続けていた。

 

今と昔とでは状況は大きく違うというのに。

 

「それで本当に新領土の首都をサーティネイニアンにするつもりか?確かに工業力のある惑星だが」

 

彼らはチス・アセンダンシー第二首都にして新領土の実質的な首都惑星を決める必要があった。

 

チスの会議の場では中央の惑星マイギートーなどを候補に挙げていたが最終的にはヴィルヘルムが候補として出したサーティネイニアンに決定された。

 

「サーティネイニアンは工業力があり辺境ながら人口も多い。いざ戦闘となれば工業力と人口で多くの部隊を展開出来るし要塞化して戦う事も可能だ。不安定な新領土の首都にはちょうど良い」

 

「だが本当の理由は“()()”ではないだろう?」

 

タッグ元帥はヴィルヘルムにそう尋ねた。

 

彼とは亡命する前から旧知の中でクローン戦争も一時期は共に戦った。

 

ヴィルヘルムは政治将校として、タッグ元帥は前線指揮官として。

 

戦友の問いに「流石だな」と微笑を浮かべ答えた。

 

「ああ、その通りだ。サーティネイニアンを首都とするのは単純な要塞能力からではない。あの惑星は新領土の中で最も外縁部と近く第一の防波堤となるに相応しい場所だ」

 

「“()()()()()()”の為、か?」

 

ヴィルヘルムは重く頷いた。

 

「我々が防波堤となるにはあの惑星しかない。これは既に“()()()”も承諾されたことだ。恩人であるチスの為、我々の銀河系を守る為に我々はあの地を“バスティオン”とする」

 

銀河の中心地から遠く離れた場所で、遠い未来の危機の為彼らは準備を重ねていた。

 

計り知れない命と、責任を背負いながら。

 

ヴィルヘルム達は必ず来る脅威に立ち向かおうとしていた。

 

 

 

 

-レジスタンス同盟領 コメル宙域 ナブー星系 惑星ナブー-

儀仗兵が儀仗用ブラスター・ライフルを捧げ将校達の敬礼の中をレイアとガー副議長、ディゴール大臣らは進んだ。

 

一行は解放されたナブーの視察と王室政府との同盟を深めるべくナブーを訪れていた。

 

先行してナブー解放に協力したヴィアタッグ将軍やクロルティ司令官達も2人を敬礼で迎えている。

 

無論ジェルマンとジョーレンもだ。

 

既に勝利から数日の時が過ぎ、小規模な戦闘も含めて戦いは完全に終結した。

 

一部の親衛隊や狂信的なクーデターシンパの保安軍将兵はゲリラ戦を展開し最後まで抵抗したが全てレジスタンス軍の兵士によって掃討された。

 

ナブーではソルーナ女王が解放宣言をシードを含めた全てのナブーの民に通告し首都シードの戒厳令含めた全てのクーデター軍が打ち出した軍政は撤回された。

 

今シードなどの市街地では戦の傷跡を癒そうと戦後復興が進んでおりグンガン達の故郷、オータ・グンガも再建が進められていた。

 

クーデター側として戦った王室保安軍の武装解除も順調に進み上級将校は逮捕されたが徴兵などで集められた末端の兵士達は皆故郷へ帰っていた。

 

しかし一部兵士への事情聴取によれば幾つかの部隊の保安隊員は上官の命令によりエイリアン市民を虐殺した疑いがありまだ何処か冷たい目が掛けられている。

 

一方でレジスタンス軍は直ちに動員だけるだけの戦力をこのナブーに展開した。

 

軍司令部の予想では恐らくマラステア宙域周辺から奪還と反撃の為の帝国軍が送り込まれるとされていた。

 

この帝国軍の部隊を防ぐには先行して送ったレジスタンス軍増援部隊では到底足りず更なる増援を送り数を揃える必要があった。

 

だがこの予想は大きく的を外れこの増援はハイパースペースのトンネルの中を航行する以外の任務は与えられなかった。

 

マラステア周辺域の帝国軍は意外なことに一隻たりとも軍艦が出撃することはなく地上軍が動員を始めているなどという情報は微塵も存在しなかった。

 

あまりにも不可解なのでレジスタンス軍は警戒を強めている。

 

だがこれでナブーの脅威がなくなったのは事実だ。

 

ナブーは本当の意味で解放された、その状況をソルーナ女王とレイアの光景が端的に示している。

 

「ソルーナ女王、お久しぶりです」

 

「オーガナ議員こそ、本当にお久しぶりです。ご無事で何よりでした」

 

2人は堅い握手を結んだ後互いに抱擁を交わした。

 

レイアとソルーナ女王の関係性は4年前のシンダー作戦時まで遡る。

 

2人はナブーを帝国軍の部隊から守るために古びたN-1スターファイターに乗り込み戦った事もあった。

 

それ以来彼女らは友の中であり数年前まではプライベートで連絡を取る事もあった。

 

しかし第三帝国の勝利後レイアは一般的な認知だと行方不明、ソルーナ女王は拘束され会うことすらままならなかった。

 

むしろ今こうして互いに抱擁を交わし合えている事自体が奇跡と言えよう。

 

レイアだってホズニアン・プライムが陥落した時は死んでいてもおかしくない状況だったのだ。

 

2人は互いがこうして生き延び圧政に負けんと戦い続けられることを深く喜び安堵した。

 

「まずはナブー解放、おめでとうございます」

 

「こちらこそ、レジスタンス軍の多大な支援に感謝します。彼らが1人でも欠けていればナブーの解放は不可能でした」

 

互いに謝辞と感謝の意を述べつつ「続きは宮殿で話しましょうか」と促し一行と共に宮殿の方へ向かっていった。

 

一団を眺めながらジェルマンは「本当にナブーを解放したんだな」と感慨深く呟いた。

 

「功績がデカ過ぎて自分じゃあイマイチ理解し切れないってか」

 

ジョーレンは揶揄うように言葉を返した。

 

「いや……まあそうかも」

 

「本当によくやったよ。クワットで出会った死にかけの…」

 

「バスチル少佐、ジルディール上級中尉」

 

ディゴール大臣が彼らの側により2人は大臣に敬礼した。

 

「任務ご苦労、よくやってくれた。ナブーの解放はガレルの解放と並んで我々の勝利を象徴する結果となった。本当によくやってくれた」

 

大臣は繰り返し彼らの任務の結果を褒め称えた。

 

ディカーを出立する頃とはまるで違っている。

 

「特にジルディール上級中尉の功績はナブー解放の直接的な要因となった。よってジルディール上級中尉は大尉に昇進することが決定した」

 

「本当ですか!?」

 

ディゴール大臣は頷き副官から新しい大尉のバッジを受け取る。

 

「これを君に」

 

今ある上級中尉の階級バッジを外し代わりに新しい大尉のバッジを付けた。

 

一歩離れてジェルマンは敬礼する。

 

「おめでとう大尉、これからも期待している」

 

「はい!大臣!」

 

ジェルマンは満面の笑みで敬礼しディゴール大臣の期待に応える心意気を増した。

 

隣でジョーレンも微笑んでいる。

 

次は自分の名前が呼ばれるとも知らずに。

 

「そしてバスチル少佐」

 

「はい…?」

 

「敵司令官自決の際、機転と素早い判断により降伏の既成事実を作り勝利に貢献したことも我々は高く評価している」

 

予想外のことを言われジョーレンはポカンとしていた。

 

その間にディゴール大臣は副官から勲章を受け取りジョーレンにつける準備をしていた。

 

「君には新しく作られた勲章を受け取ってもらいたい。今後も君の判断が我々を良い方向へ導いてくれることを願って」

 

勲章が付けられジョーレンも同じように敬礼した。

 

互いに新しいものが付けられどこか照れ臭そうだ。

 

ナブーの暖かい優しい風が2人を包む。

 

この時2人は初めて自分達の勝利を実感した。

 

 

 

 

 

 

-惑星マーカー ルーク・スカイウォーカー行方不明地点-

2、3機のUウィングがサーチライトを照らしながら夜のマーカーの荒野を捜索していた。

 

数人の兵士がハッチの側から身を少し乗り出してエレクトロバイノキュラーの目視で周囲を観察している。

 

『サーチャー2、どうだ?発見したか?』

 

別のUウィングから通信が届きパイロットがすぐに返す。

 

「サーチャー1からサーチャー2へ、こちらはまだ発見出来ず。サーチャー3、そちらはどうか?」

 

『こちらサーチャー3、こちらもダメです』

 

3機のUウィングともかなり長い時間捜索を行なっているが未だに足跡一つ見つからない。

 

ルークが乗ってきたXウィングも、彼が戦ったと思われる帝国軍の部隊の痕跡も全てだ。

 

『散開してもう一度探すぞ。捜索範囲を広げれば手がかりがっ…!なんだ…!?』

 

通信中のUウィングから突然けたたましい警報音が響いた。

 

「どうしました!?サーチャー1!?サーチャー1!?」

 

「機長!あれを!」

 

もう1人のパイロットが隣を指すとUウィングのエンジンが2基破壊され炎上していた。

 

そのままサーチャー1はマーカーの重力に引かれ浮上することなく地面に墜落し通信が途切れた。

 

何度も応答を呼びかけるがもうサーチャー1とは通信は繋がらなかった。

 

「ミサイル!?敵の攻撃か!?だがセンサーには…!」

 

『クソッ!やられた!』

 

サーチャー3は通信越しのそう言いながら地面に吸い寄せられた。

 

パイロットが「サーチャー3!!」と言うと同時にこのUウィングも大きな振動が襲った。

 

大ダメージを喰らいサーチャー1と同じく警報音が鳴り響いている。

 

「クソッ!嘘だろ!!」

 

必死に操縦桿を上げてなんとか不時着しようと努力した。

 

パイロットの努力は報われたのかUウィングは綺麗に不時着し衝撃と乗員達のダメージは最小限のもので済んだ。

 

しかも幸いなことに先ほど墜落したサーチャー3の近くに不時着出来た。

 

向こうもなんとか不時着の体制が取れたようで乗員の兵士達が武器を持って外に出ていた。

 

不時着したこのUウィングも急いでハッチを開き全員がブラスター・ライフルを持って姿を現した。

 

「一体なんの攻撃だ!?」

 

パイロットの問いにサーチャー3の乗員は「分かりません」と答えた。

 

「我々の機体は間違いなくミサイルや誘導兵器ではなくブラスター火器で直接攻撃を受けました。見てください、エンジンに小さな穴が幾つも空いてます」

 

燃え盛るエンジンには乗員の兵士の言う通りブラスター弾程度の穴が空いていた。

 

「どう言うことだ……空中からブラスター弾で撃たれたのか…?」

 

パイロットは謎の冷や汗を拭いながらエンジンの傷を見つめた。

 

周りでは他の兵士達が予備のブラスター・ライフルや非常時の為に持ってきたブラスター砲、イオン・ブラスターを持ち出し簡易的な防衛陣地を作っている。

 

この状況下ではいつ敵が襲ってきてもおかしくはない。

 

「こちらルーク・スカイウォーカー捜索隊、本部、聞こえるか本部!応答してくれ!」

 

通信機で本部と連絡を取ろうとする兵士もいたが全く繋がらず最終的には「クソッ!」と諦めてしまった。

 

機体もこれだけ損傷していては修復など不可能に近かった。

 

Uウィングもほぼ破壊され通信も繋がらないようでは当面はこの惑星から離脱出来ない。

 

尤も“()()()()()()()()”は別だが。

 

暗闇から突如赤い光弾が1発、放たれ捜索隊の兵士を辺り射抜いた。

 

殆ど無音の弾丸は撃たれた兵士の声すらも奪い静かな暗闇にボスンと死体が斃れる音だけが響いた。

 

だがその音が彼らへの宣戦布告であり戦闘開始の合図だった。

 

全ての兵士が一斉に物陰に隠れブラスター・ライフルを構えた。

 

「そいつはもうダメだ……!頭をやられてる……」

 

斃れた兵士を引き寄せようとする別の兵士を上官の伍長が引き止めた。

 

「来るぞ…!」

 

捜索隊の副隊長の少尉の言葉と共に全員がブラスター・ライフルを構えた。

 

暗闇の奥底から何個かの赤い目のようなものが、ゆらりゆらりとゆっくり前に進んでいる。

 

徐々に姿が現れ始め兵士の誰かが「IGシリーズのアサシン・ドロイド…!」と相手の製造元を呟いた。

 

そのIGシリーズの暗殺ドロイド、正式名称IG-99Eは両手で持つブラスター・ライフルを構え発砲出来る状態を整えた。

 

敵に撃たれる前にと捜索隊の兵士達は少尉の「撃て!」という命令と共に一斉ブラスター・ライフルの引き金を引いた。

 

赤や水色の光弾が何百発も一斉に放たれIG-99Eを襲う。

 

しかしIG-99Eは素早く弾丸を躱し岩影や木の影など遮蔽物を上手く利用しながら兵士達に接近する。

 

IG-99Eはまず自分にとっては厄介なイオン・ブラスターの砲手を優先して仕留めようとした。

 

パルス・ソードキャノンで砲手を素早く皆殺し、一時的にイオン攻撃を停止させる。

 

撃たれた兵士は地面に倒れ、他の兵士は仲間を守ろうと前に出た。

 

冷酷な暗殺ドロイドはこの兵士の一部隊の中に脚部の小型ミサイルを撃ち込む。

 

小型でも威力は十分で負傷した仲間を取り囲んでいた兵士達が3、4人一気に吹き飛んだ。

 

爆発によりコンテナなどで作ったバリケードも破壊され兵士達は攻撃態勢を少し変えた。

 

IG-99Eは容赦無くパルス・キャノンの弾丸を相手に撃ち当て、得意の接近戦に持ち込む。

 

彼が両手に持つパルスソードキャノンはその名の通り接近戦が可能な銃剣が最初から取り付けられている。

 

この銃剣はライトセーバーとの鍔迫り合いにも耐えられる代物で“()()()()()()()()()()”の名の通り、この武器はジェダイとも対等に戦えるし殺せる。

 

尤もそれはこの暗殺ドロイドが使ってこそ意味のがある。

 

弾丸を撃ちまくりながらIG-99Eは接近し銃剣で敵兵を斬り付け斬殺する。

 

返り血が黒色のボディに付き、このドロイドの狂気的であり狂信的な本性をより表面に出した。

 

兵士達はなす術もなく斬り殺されなんとか格闘戦で戦おうとする兵士も足を暗器で痛めつけられその隙に銃剣で心臓を突き刺された。

 

背後から押そうとする兵士も銃剣を引き抜き奇妙な体勢でパルス・ソードキャノンを構え引き金を引くIG-99Eの前に斃れた。

 

バタバタと兵士が倒され辺りには血と死体が散乱していた。

 

「なんだあいつは!?あんなのに勝てる訳ねぇ!!」

 

「おっおい!」

 

ある1人の兵士が恐怖に屈し逃げ出そうとした。

 

2人の兵士は止めようとするがIG-99Eの前には脱走兵も普通の兵士も大した違いはない。

 

皆“()()()”であり、聖戦に楯突く不信仰者、抹殺の対象だ。

 

彼らを皆殺しにし勝利を主に捧げることでIG-99Eのドロイド脳に植え付けられた“()()”は満たされ暗黒面も応えてくれる。

 

鉈を飛ばし逃げ出す兵士の背中を一突き刺し残りの2人をキャノンで撃ち殺す。

 

更に鉈をウィップで取り戻しそのまま鉈ごとウィップを振るう。

 

先端の鉈が力強く振られまだ生きている兵士達の手や足、顔や胴体のどこかしらを傷づけた。

 

ウィップを戻し鉈をしまうと生き残った兵士達をIG-99Eは1人づつ確実に始末した。

 

1人、1発ずつの銃声が聞こえその為に兵士達の断末魔や引き裂けるような声がマーカーの荒野に響いた。

 

「うう……嘘……だろ……」

 

Uウィングを操縦していたパイロットは地面を這い蹲りながら弱々しい声で呟いた。

 

彼の足はIG-99Eの鉈によって斬り裂かれもう1本なくなっていた。

 

他の箇所も切り傷だらけだ。

 

彼の目の前に先ほどまで話をしていた多くの兵士達が死体となって転がっている。

 

もはやうめき声一つ聞こえない本当の死の静寂だ。

 

そして遂にパイロットの側にも死を司るドロイドが足音を立てながら迫ってきた。

 

「……ク……ソ…ッ……」

 

刹那、銃声と共にパイロットの命は暗黒面の流れに運ばれた。

 

周囲に生者が存在しないことを確認するとIG-99Eはパルス・ソードキャノンをしまい死体だらけの戦場を後にした。

 

これでルーク・スカイウォーカーを探しに来た者はもう誰もいなくなった。

 

彼の消息は完全に絶たれたのだ。

 

 

 

 

-第三帝国領 アウター・リム・テリトリー オジョスター宙域 ウェイランド星系 惑星ウェイランド ウェイランド・ミディ=クロリアン研究所-

ヴォーレンハイト少将はいつも着ている白衣を脱ぎ、親衛隊の制服姿のまま急いで応接室に向かっていた。

 

応接室の前には警備兵の将校が2人立っており、ヴォーレンハイト少将の姿を確認すると敬礼した。

 

「既に到着しています」

 

「ああ、中に入れてくれ」

 

「承知しました」

 

解除コードを入力しヴォーレンハイト少将は応接室の中に入った。

 

応接室のソファーには既にコルサントから来た客人がティーカップを持って座っていた。

 

その背後には2人のFFSBの将校が立っており他の面々に威圧感を与えている。

 

ヴォーレンハイト少将の到着を確認するとソファーに座っていた将校も立ちヴォーレンハイト少将に敬礼した。

 

少将も敬礼を返しソファーに座る。

 

「お久しぶりです、ヴォーレンハイト少将。ウェイランドでの研究は如何ですか?」

 

将校の問いにヴォーレンハイト少将は「報告書で送った通りだ」とだけ返した。

 

「それより何故君がここに?フリシュタイン大佐。ハイドレーヒ大将の懐刀が態々何用でここに来た」

 

コルサントからの客人、フリシュタイン大佐は口元まで近づけていたティーカップを皿に戻しヴォーレンハイト少将に目を合わせた。

 

白髪に近い銀髪、秀麗で整った顔。

 

美形でありながらも彼の冷酷さは恐らくハイドレーヒ大将にも勝るとも劣らないだろう。

 

「研究報告は逐一細かく送っているはずだ。ハイドレーヒ大将やヒェムナー長官、シュメルケ元帥らからも『引き続き頼む』と言われた」

 

「私がここに来た理由は報告書の催促ではありませんよ。もっと重要な要件です」

 

「では一体なんの要件だ」

 

ヴォーレンハイト少将は目の前の親衛隊保安局の有力人物に物おじせず尋ねた。

 

彼らに怯えているようではこのウェイランド研究所の所長など務めらない。

 

「ウェイランド研究所の研究成果を発表してもらいます。“()()()()()()”」

 

その一言でヴォーレンハイト少将は察しがついた。

 

遂に、遂に想定されていたことがやってきてしまった。

 

ヴォーレンハイト少将の研究の原点は以前まで帝国の特殊機関が“()()()()”と結託して行なっていた。

 

元より知識や技術のあるその組織は“ハーヴェスター計画”という名で研究を行なっており実際に何人かのフォースの戦士を生み出していた。

 

今ヴォーレンハイト少将達が行なっているトレードチップ計画はハーヴェスター計画のデータの復元、そして新たな理論やハーヴェスター計画では行われなかった本格的なフォース感受者の人体実験など新しい角度からの研究を行なっている。

 

銀河内戦の影響でハーヴェスター計画の内容は消失し復元不可能となってしまったものも多い。

 

ロストテクノロジーを追いつつ新たな研究で前計画を追い越す、それがウェイランド研究所の使命だ。

 

そしてその研究結果を第一人者であり新たな第三帝国らを束ねる者へと献上せねばならない。

 

「貴方もご存知のはずだ、彼らは我々よりも一歩も二歩もこの手の研究に際しては先を行っている。彼らにこの研究の成果を見極めて貰い、新たな助言を今後に活かすのも重要なことです」

 

「……我々研究所に拒否権など無論ないのだろう?」

 

「ええ、勿論です。これは既に親衛隊司令部による決定がなされています、今回は直接私が代表としてお伝えに参りました」

 

つまり拒否権もなく必ずこの研究所の子供達を何人か連れていかなければならないということだ。

 

あの地に子供達を連れて行けば何をされるか分からない。

 

「誰を連れて行くかは貴方の選定次第ですが1人だけ、必ず連れて行ってほしい被験者がいます」

 

「誰だ?」

 

考えても分からないのでヴォーレンハイト少将はフリシュタイン大佐に尋ねた。

 

同じ親衛隊員だとしても指導部の一部は本当に腹の底で何を考えているか全く分からない者ばかりだ。

 

そんな中フリシュタイン大佐の口から放たれたのは意外な一言だった。

 

「ブルクハルト・オットー・フューリナー、フューリナー上級大将のもう1人のご子息にして貴方の、“()()()()”」

 

「……彼を、彼を連れていけというのか……?」

 

動揺を隠し切れない様相でヴォーレンハイト少将はフリシュタイン大佐にそう尋ねた。

 

フリシュタイン大佐は何故ヴォーレンハイト少将がこんなに動揺しているのか理解しかねると思っていた。

 

彼らは所詮どこまで行っても被験体でしかないのだしある意味では消耗品だ。

 

我々と同様変わりはいくらでもある。

 

「はい、司令部の命令であると同時に計画の為でもあります。彼には貴方から伝えるよう頼みます。日程や重要記述はこちらに」

 

フリシュタイン大佐はタブレットを手渡しヴォーレンハイト少将に見せた。

 

少将は真剣な面持ちでタブレットを見つめている。

 

我々は任務を果たした。

 

「それでは、我々はこれで失礼します」

 

「ああ……遥々報告ありがとう」

 

口ではそう言っていてもヴォーレンハイト少将はフリシュタイン大佐の一行に目も合わせようとしなかった。

 

ただずっと下を向きタブレットを見ている。

 

部下を引き連れフリシュタイン大佐は応接室を後にした。

 

一行はあえて実験室の見える通路を通った。

 

「報告書通り、計画は順調そうですね」

 

リッツァー中尉は様子を眺めながら少し暗い表情でフリシュタイン大佐に告げた。

 

「彼の手腕は間違いない。それは既に“()()()()()()()()()”で証明されている」

 

「そういえば大佐、以前一部の親衛隊将兵が何人かの候補生の記録を改竄していた件ですが、対象の候補生達を再検査した所やはり数値の基準は満たしていませんでした」

 

ミシュトライン中尉は話に関連付けてそうフリシュタイン大佐に報告した。

 

あの事件は彼らが直接その場で現行犯逮捕したものだ。

 

コンプノア・ユーゲントの候補生の適性検査の際に不正に検査データにアクセスし一部の候補生のデータを改竄していた事件。

 

改竄された候補生はほんの数人だけだったがもし数百人規模に渡っていたらかなり面倒なことになっていただろう。

 

「だろうな、そんなに多くフォース感受者が出現するとは思えない。基準を満たしていた候補生への処置は?」

 

「既に“()()()()()”への移籍を命じてあります。大多数はこのウェイランドへ来るでしょう」

 

ミシュトライン中尉の返答にフリシュタイン大佐は満足そうに「それでいい」と呟いた。

 

「我々はこの銀河で初めて人工的なフォース感受者による軍隊を形成、運用しなければならない。それこそが第三帝国と我々親衛隊に与えられた重大な使命の一つだ」

 

フリシュタイン大佐の演説じみた言葉に2人の中尉は大きく頷いた。

 

やがてこの研究は第三帝国を、それを守る親衛隊を強化するだろう。

 

我々がフォースに操られるのではなく、“()()()()()()()()()()()()”。

 

邪悪な狂気と人道から外れた計画は銀河系で今日も順調に稼働中である。

 

 

 

 

 

 

レイア達の訪問から3日が経ち、ナブーでは勝利と解放を祝う祝賀式が執り行われようとしていた。

 

多くの解放されたナブー高官達とレジスタンス側の高官達が参列し街中が祝賀のムードで彩られていた。

 

ジェルマンとジョーレンも勲章などを付けた正装に身を纏い式典に参加している。

 

しかしジョーレンが勲章の一つをUウィングのコンテナに忘れてきてしまった為慌てて撮りに行っていた。

 

「こんな時に忘れ物なんて……珍しいのか、それともらしいというのか」

 

「いやぁ勳章なんて何年振りに付けたか分からないからすっかり一つ忘れてしまった」

 

2人は少し早足で歩き急いで宮殿の方を目指した。

 

多くのシード市民が祝賀式に参加しておりその中にはある見慣れた人物もいた。

 

「あっあの人」

 

「どうした?」

 

ジェルマンはその人物を見つけジョーレンは首を傾げた。

 

「前に商品を買った店の店主だよ。あの人も式典に来てるんだ」

 

何処か感慨深そうにしているとその店主がこちらに顔を向けた。

 

しかも2人のことを気づいたのか人を掻き分けてジェルマンとジョーレンの下へ駆け寄ってきた。

 

2人は立ち止まりその店主は2人の前に現れた。

 

「あんたたち…っていうかあんた、もしかして前にうちにきた…?」

 

「はい、その……実はこういうものでして……」

 

ジェルマンは店主の問いに答えたがばつが悪そうに苦笑いを浮かべ軍服を示した。

 

あの時彼の店に訪れた時は当然観光客だと偽っており相手もまさかレジスタンスの軍人であるとは思ってもいなかっただろう。

 

もしかしたら騙されたと店主を不快にさせてしまうかもしれない。

 

ジェルマンは一瞬だけそのようなことを考えたが店主はすぐにニッコリと満面の笑顔を浮かべた。

 

「そうかい…!そうだったかい…!なんだか嬉しいな……あんた達が軍人さんなら新共和国クレジットでも支払いオーケーにしておくんだった」

 

店主のジョークに2人は微笑を浮かべ微笑ましい空間が広がった。

 

店主は涙ぐみながら2人に話した。

 

「……俺は、俺は子供の頃、丁度ナブー侵略に遭ってな。こないだみたいに街は他所の軍隊に占領され戒厳令が出され酷い目に遭った」

 

「そうだったんですね……」

 

「抵抗しようとした俺の両親は捕まってね、そのまま帰ってくることはなかった。今だってそういう家族や子供達はいっぱいいるだろうさ」

 

店主の言う通り両親や親族が殺害ないし逮捕されそのまま行方不明になっているケースは既に浅く調査しただけでも何十件も確認されている。

 

その殆どが抵抗罪や反逆罪、戒厳令違反、エイリアン種族を匿った罪など色々だ。

 

恐らく大半がナブー本星外に移送されたか殺されたか、恐らく今後もそのようなケースは増えていくだろう。

 

ナブーだけでなく銀河全域で。

 

「あの頃は結局共和国って存在は直接助けてはくれなかった。何人かのジェダイとやらがいたようだが宮殿を取り返したのはアミダラ女王陛下方だ」

 

怒りや諦め、何処か悲しみを帯びた声で店主はそう語った。

 

当時の銀河共和国ならそれは“()()()()”で済まされてしまう。

 

腐敗と停滞によりまともに機能していなかった。

 

もしかすると新共和国もああなっていたかも知れない。

 

「だがな、4年前も今もあんた達にとっては他所の星のナブーの為に助けに来てくれて戦ってくれた。俺が子供の頃とは違う、あんた達にみんなが助けられた」

 

「いえ、そんな」

 

「ああ、我々だってナブーの民が戦おうとしなければ助けられなかった」

 

「だとしてもだ、ありがとうな。俺も他の奴らもナブーも、あんた達に助けられた」

 

店主は微笑を浮かべ礼を言った。

 

本当に端的なありがとうという一言だったがそれだけで十分伝えきれない感謝の気持ちまで2人に伝わった。

 

ジェルマンとジョーレンも珍しく目頭が熱くなり被っている軍帽で隠し同じように微笑を浮かべた。

 

「どうも、それじゃあ我々はもう行かないといけないから」

 

「そうかい、時間を取らせて悪かったな」

 

「いえ、こちらこそありがとうございました。それじゃあ」

 

「それじゃあな、ありがとう軍人さん達」

 

ジェルマンとジョーレンは敬礼しその場を去り店主は微笑を浮かべたまま手を振った。

 

暫くシード宮殿に向かって歩き数分経ったところでジェルマンは口を開いた。

 

「あの店主の人、すごい喜んでたね」

 

店主の顔を思い出しジェルマンは再び暖かい気持ちになる。

 

「ああ、俺もあんなこと言われたのは初めてかもしれん。ずっと裏方だったしクローン戦争中なんて我々の存在はあってないようなものだ」

 

ジョーレンは何処か不思議そうな理解不能といった表情で淡々とそう喋った。

 

彼にとっては本当に感謝されることなど稀だったのだろう。

 

クローン戦争中では彼の言う通りジョーレン達を公にする事は出来ないし反乱軍の時代は恐らく汚い仕事ばかりやっていただろう。

 

その後はずっとクワットに潜伏し存在自体が殆ど抹消されていた。

 

そんな中で上官や同僚以外に初めて感謝の言葉を投げかけられた。

 

初めての感情で唖然とする他ないだろう。

 

「これから戦いが進んで他の惑星も解放されていった時、またこういう事言われるのかな」

 

ジェルマンはふと尋ねた。

 

ジョーレンは少し考えたが答えは出ずといった表情だ。

 

「さあな、さっきも言った通り俺はあんな事言われたのは初めてだ。でもきっと言われるさ、俺達は完全な正義じゃなくとも“第三帝国とやらよりはずっとマシだ”」

 

ジェルマンは小さく頷いた。

 

「このナブーみたいに罪もない一般人を意味もなく大量に殺して孤児を溢れ返させるような連中は必ず倒さなければいけない。倒してナブーと同じく元の姿に戻してやらないといけない」

 

「ああ、“()()()()”じゃなくて“()()()()()()()()()()”。第三帝国を必ず倒す」

 

昔は勝てるのかという小さな不安があった。

 

だが今ではそんな不安はもうない。

 

必ず勝ち必ず第三帝国を倒さなければならない。

 

たとえあの帝国がどれだけ巨大でとても勝てそうに見えなくとも諦めずに立ち向かわなければならない。

 

立ち向かい続けていれば必ずチャンスは訪れるはずだ。

 

我々は第三帝国に勝つ。

 

「それに勝てるさ、ノルマンディーとやらでは痛手を喰らったが各地では抵抗運動が盛んになりモン・カラやキャッシークでは反撃が始まっている。それにここも一つ勝利を得た」

 

そうだ、もうレジスタンスの攻勢は目に見える姿で始まっている。

 

報告ではガレルも解放し各地で快進撃が続いているそうだ。

 

各地ではハンやチューバッカ達に教導された抵抗組織が第三帝国に対して反旗を翻している。

 

そしてこのナブーも解放した。

 

まだ道は遠くとも歩みは始まっている。

 

レジスタンスの勝利の歩みが。

 

だが2人はまだ気づいていなかった。

 

レジスタンスの勝利の歩みに合わせて暗黒の使徒が銀河系に放たれ背後を付け狙っている事を。

 

2人はこの後知る事となる。

 

ある場所から放たれた声明と共に。

 

2人はそのまま宮殿の中に入り待機室を抜け近くの情報室に入った。

 

多くの保安将校や戦功を挙げた精鋭の兵士達が礼装で待っている。

 

その中には当然メンジス三佐らもいた。

 

「お疲れ様です!」

 

ジェルマンは声を掛けホロテーブルの前に座っていたメンジス三佐に敬礼した。

 

彼は振り返りジェルマン達に敬礼を返す。

 

メンジス三佐もシード宮殿奪還の功績が認められ二等陸佐に昇進、保安軍の特別情報室の情報室長に就任した。

 

「ジルディール大尉、バスチル少佐、ようやくお戻りでしたか」

 

「それで今は何をされているんですか?」

 

メンジス二佐達は何故かホロテーブルを囲みニュースチャンネルをいじっていた。

 

後数十分で祝賀式が始まってしまうというのにだ。

 

「それが先程から通信回線がどうも悪くて……民間はともかく宮殿で使用している通信もどうも不調子でして」

 

「その為に調整を?」

 

「はい、祝賀式中に何か大規模な不具合が起こったら困るので。しかし一体何が原因なのやら……」

 

メンジス二佐は体をホロテーブルに向け直し頭を掻いた。

 

ジェルマンとジョーレンもホロテーブルに近づいた。

 

「帝国の妨害行為かもな」

 

「いや、それにしては範囲が小規模過ぎる。正直帝国のホロニュース程度なら見れなくなったところで不都合は……」

 

ジェルマンが全てを言い切る前にホログラムが歪み何か新しいものを形成し始めた。

 

メンジス二佐が慌ててコンソール付近の将校に「何か操作したか?」と尋ねる。

 

しかしその将校は首を振りスイッチを押してもこのホログラムは消えなかった。

 

急いで他の将校達が原因を捜索し始めるがその前にホログラムがある一つ紋章のような形となった。

 

「なんだ…これは…?」

 

多くの将兵がこのホログラムに釘付けになる。

 

一体なんの紋章なのか、ジェルマン達には検討が付かなかった。

 

数秒の間を置きホログラムから音声が発せられる。

 

『我々に幾千年も前から楯突く愚かな反逆者どもよ』

 

ホログラムから発せられたのは老人の声、それも重鈍とした恐怖を感じる重みを含んだ低い声音だ。

 

その声音は更に言葉を続ける。

 

『我々は其方らを討つ為幾千の軍団と幾百の軍艦を引き連れ銀河へと還る』

 

「通信はどこから来ている!?」

 

メンジス二佐は部下に尋ねるも部下は「わかりません…!」とそれだけしか返せなかった。

 

老人の宣言はまだ続く。

 

『我々は紅き剣を戦列に並べ立て、鋼鉄の破壊者達が紅き長槍と共に前進し其方らを1人残らず討ち取るであろう』

 

「なんのことを言っているんだ…?」

 

「分からん…」

 

『さすれば帝国は全て統一され再び安全で安定した共同体へと、“新秩序(ルビ New Order)”へと姿を変えるであろう。幾千年と続く帝国を、幾万と続く帝国へ』

 

その一言を聞いたジョーレンは眉を顰めた。

 

聞き覚えるがある、この老人が今喋ったことが遥か昔に同じことを聞いた気がした。

 

それはまた別のところで声明を聞いているディゴール大臣達もそうだ。

 

大臣は怪訝な表情でこの声明を聞いていた。

 

「彼らが報告にあったガレルの駐留艦隊を殲滅したのでしょうか……?」

 

「恐らくはな……そしてこの言種……ニュー・オーダー……まさか…」

 

ディゴール大臣は眉を顰める。

 

その昔同じ発言を元老院の壇上から放ったある男の事を思い出した。

 

だが奴は死んだはずだ。

 

「…何だか凄く嫌な予感がします……恐ろしく悍ましいものが……」

 

「オーガナ議長…?大丈夫ですか…?」

 

悪寒を感じ偏頭痛のような頭の痛みを抱えレイアはその場に座り込んだ。

 

彼女が持つフォースが何かを感じ取らせたのだろう。

 

心配した周りの人間が彼女に駆け寄る。

 

「ルーク……」

 

老人の宣言はまだ続いた。

 

『我々は帰還する者であり、我々は旧領を奪還する十字軍であり、帝国の統一者である。やがては我々のこの赤き紋章がこの銀河全域に翻る事となるだろう!』

 

最後に老人はジェルマンや多くの人々に向けて己の名と進み征く組織の名を名乗った。

 

『我々の名は“シス・エターナル”、シスの永遠の繁栄を祈り導く者達。そして“余”の名は……』

 

-ダース・シディアス-

 

その一言は高らかに宣言された。

 

常に銀河の裏側にいたシス最大の暗黒卿がその名を銀河系に告げたのだ。

 

()()()()()()()()()()()”ではなく“()()()()()()()()()”と。

 

遂に始まってしまった。

 

シスによる新たな侵略が、シスによる次の戦争のステージが。

 

最後のシス卿による戦争の加速が始まる。

 

未知領域からシスの大軍が来襲する。

 

長槍(Xyston)”と“(Eclipse)”による破滅の一撃が先兵となりレジスタンスに襲い掛かる。

 

シス・エターナルVSレジスタンス。

 

間も無く“9ABY”、その一言と共に26年後の対決が今始まった。

 

 

つづく




わ た し だ

というわけでナチ帝国もついに49話!!

長いですわね…本当はこんなにやる予定なかったのにな…

しかしこれでひとまずナブー編は終わりっす

でも悲しいことにこれからが地獄みてぇな戦場の始まりっす

戦争は地獄だで()
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