第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「我らは暗闇を征く者である。銀河は常に暗黒に満ち溢れその先は誰も知らない。ならばこそ銀河を征き我らは鎖を解いて回る。我らは闇に慣れ、常に備え続けなければならない。勝利と自由を手にする為に、この暗闇を生きていく為に。主は我らを常に導くであろう」
-シス信奉者の手紙より抜粋-


銀河系の夜明け
シスの帰還


シス・エターナル。

 

その存在が銀河系に知らされるのは今より26年後のことだ。

 

しかし時計は大幅に早められシス・エターナルは今、宣戦布告の声と共に銀河へと帰還を始めた。

 

第三帝国の存在が銀河系の時間を大幅に狂わせてしまった。

 

彼らの勝利は帝国の勝利であったがその代償として多くの命だけでなく時間さえも奪ったのだ。

 

その代償の結果が今未知領域から放たれている。

 

何百隻のスター・デストロイヤー、死後の世界を思わせる雷鳴轟く蒼白の世界。

 

シスの幾つかの聖地の一つであるこの地惑星エクセゴルでは隠された信奉者達がその信奉を唱和に合わせている。

 

何十万、何百万人の赤い装甲服を着た兵士がブラスター・ライフルを手に持ち整列している。

 

上空には6年も前から準備されていたシス・エターナルの忠実なる長槍、“ジストン級スター・デストロイヤー”。

 

そして幻のドレッドノート、“エクリプス級ドレッドノート”と“ソヴリン級スーパー・スター・デストロイヤー”。

 

前者はともかく後者は本当に計画でしか存在しなかった。

 

あの“ルサンキア”が存在していたコルサントの特別区画にもこの二隻のスーパー・スター・デストロイヤーの存在は書類上の計画の上でしかいなかった。

 

その為誰しもがこの艦は存在しない、幻の計画艦だと信じて疑わなかった。

 

噂話程度しか知らないレジスタンスの将兵も、この情報を知っている帝国軍の上層部でさえもだ。

 

だがこの艦は確かに存在している。

 

エクリプス級に至っては二隻、ソヴリン級は一隻軌道上に艦隊の旗艦として堂々たる姿を見せていた。

 

僚艦たるジストン級スター・デストロイヤー数百隻は殆ど自身の船体の一回りほど小さいインペリアル級と殆ど同じ見た目をしている。

 

しかし船体の下船部には巨大な大砲が備えられており赤い不気味な線が船体に引かれていた。

 

この艦こそ正に星を破壊する者を体現した姿だ。

 

時間さえかければこの銀河すらこの宇宙から消してしまうだろう。

 

これら全ての軍艦が、赤き尖兵達の軍隊が、それらを支え祈りと信奉を捧げる信奉者達が全てある1人の男が座る玉座を守っている。

 

信奉者の祈りは男の力を繋ぎ止め、尖兵達の軍隊はその力を持って男を直接守護し、全ての軍艦は男の敵を容赦無く消し飛ばす。

 

無敵の集合体、狂信的な一団、絶対的な大軍。

 

シス・エターナル全ての側面でありどれが欠けてもシス・エターナルを永遠たらしめる事は出来ない。

 

「祈りを捧げよ信奉者よ、余の玉座を守護せよシスの軍隊よ、外敵を全て排除せよシスの艦隊よ。シスの偉業と悲願が千年、万年と永遠に続くように!」

 

一斉に信奉者達は声を上げ赤き兵士、シス・トルーパー達は腕を上げ、艦隊は青いエンジンを更に燃やしている。

 

赤きシス・エターナルの紋章の入った旗が翻り我々の勝利を示そうとしていた。

 

周りに潜む異物の集団も男への忠誠とシスへの信奉心を示している。

 

「余の敵を全て滅ぼせ!余の敵のいる場所へ攻め立て進軍せよ。余の敵が来る侵略軍を全て打ち倒し守り続けよ。それこそがこのシス・エターナルに与えられた使命である」

 

再びワッと歓声が上がる。

 

男の演説は31年前から、28年前から素晴らしいものだ。

 

だがそれは彼のカリスマ性と今までの功績のみでありそこに異常なほどの信奉が揃えば更なる歓声に繋がる。

 

これこそがシス卿の力の全てだ。

 

自らが作り上げたものが今自分の目の前に広がっている。

 

素晴らしい光景だと男は自覚していた。

 

ダース・シディアスとして作り上げたものがこれだ、最強にして永遠の存在だ。

 

そして男はシーヴ・パルパティーンとして作り上げたものを取り戻さなければならない。

 

両方男が1人で作った男のものだ。

 

代理総統や大提督のものではない。

 

「まずは余の長らくの敵を打ち倒せ。我が軍の指揮を其方が取れ」

 

男は新たな自分の弟子の名を呼んだ。

 

「“()()()()()()()()”」

 

新たなダース・ヴェイダーはやはりスカイウォーカーでなくてはならない。

 

ルーク・スカイウォーカーは黒いフードを下ろしその命に従った。

 

新たなる希望はシスの希望となる。

 

9ABY。

 

銀河系から明かりが消え、暗闇の夜が訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未知領域の遠く彼方から宣戦布告の声が響くより前の刻、ある一隻のジストン級スター・デストロイヤーが聖地エクセゴルへと帰還した。

 

このジストン級は出撃の際は外部のナビゲーション・タワーの座標情報に依存せざるを得ないが帰還する時はそうではない。

 

この艦は単艦で対象者を引き連れエクセゴルへと帰ってきた。

 

「艦長、エクセゴルに到着しました」

 

副官の中尉と思われる人物がこのジストン級“ピルグリム”の艦長に報告した。

 

彼らの組織の名はシス・エターナル、そして彼らはシス・エターナル軍の将校。

 

挨拶やこの艦のちょっとした会話からそれくらいは予測が出来た。

 

現在この“ピルグリム”に囚われのルークにでさえ。

 

ライトセーバーは取られたが意外なことに手錠は付けられなかった。

 

恐らくは自分を連れてくることが目的なのだろうし物量で押しさえすれば無力化出来るとも踏んでいるのだろう。

 

事実流石のルークとはいえこの2,400メートルの大型艦船の全人員と戦って勝てる見込みはない。

 

ただの乗組員ならともかく今ルークの背後にピッタリくっ付いている赤いアーマーのストームトルーパーも多くいる。

 

アーマーも赤いだけでなく細部に微妙な差異が見られブラスター・ライフルもただのE-11とは形状が少し違う。

 

戦闘力も並のストームトルーパーより強いという雰囲気を受け取れた。

 

それにルークの隣には皇帝の手ことマラ・ジェイドとR2-D2がいる。

 

ルーク1人ないしR2と2人だけなら簡単に脱出出来るだろうが迷いのある彼女を連れての脱出は無事に済まない確率の方が高い。

 

途中で彼女と再び戦闘になる可能性もある。

 

「スカイウォーカー殿、皇帝の手、エクセゴルに到着しました。シャトルを用意していますのでそちらで地上に」

 

艦長は2人にそう促した。

 

「行きましょうスカイウォーカー卿、我らの主がお待ちです」

 

マーカーでルークに挨拶した男が再び頭を下げ艦長に続いてルークに促す。

 

ここで逆らっても良いことはひとつもないので促されるままに彼らに続いた。

 

艦長が部下から受け取ったものをルークに手渡す。

 

「それとこれをお返しします」

 

それは奪われたルークのライトセーバーだった。

 

ルークは機械の右腕で受け取り隣にいたR2も意外だと言った面持ちで見つめていた。

 

マラ・ジェイドはとても注意深く見つめていた。

 

いつこの男がライトセーバーを抜くかというのを見極めようとしているのだろう。

 

だがルークはライトセーバーを受け取りベルトのホルダーに静かにしまった。

 

彼女が危惧していたようなことは特にしなかった。

 

「では行きましょう」

 

艦長に連れられルークはマラ・ジェイドやR2と共に歩き始めた。

 

すると途中で1人の将校が「お前はダメだ」とR2を止めようとする。

 

ルークは歩みを止めた。

 

「彼は僕の友達だ、彼も連れて行く」

 

R2の前に立ちルークは父の代からの親友を庇った。

 

将校は「しかし…」と納得していない様子だったが艦長が「いい」と将校を宥める。

 

「すみませんスカイウォーカー殿、行きましょう」

 

艦長に連れられて彼らは“ピルグリム”のハンガーベイに停泊していたラムダ級に乗り込みエクセゴルの地表へと向かった。

 

この惑星は全体的に暗く不気味で何もない。

 

それを示すようにこの惑星からはダークサイドのフォースを強く感じていた。

 

ルークが少し頭を抱えため息を吐くほどだ。

 

この地は本当にシスの聖地に相応しい場所であろう。

 

R2は電子音で「大丈夫か?」と体調の優れなさそうなルークに尋ねた。

 

「ああ、大丈夫だよR2。ここはダークサイドのフォースが強いみたいだ、まさかまだこんな場所が残されているなんて」

 

もはや勝利が確定した銀河内戦末期、ルークは特別任務という体で各地のジェダイの聖地や残された資料を見付けるために探索していた。

 

ピリオの皇帝の保管庫では意外な物も手に入れられた。

 

しかし第三帝国の台頭と新共和国の敗北により状況は大きく変わり特別任務を続けられる有様ではなかった。

 

故にエクセゴルの存在もまだ知れなかったのだ。

 

ルークは窓から見える艦隊の姿を見つめた。

 

ルークが乗ってきたジストン級と同じスター・デストロイヤーが何百隻も艦列を並べている。

 

「これが皇帝の遺産……皇帝が最期に残したものか」

 

「まさかこんなところが存在していたなんてね」

 

マラ・ジェイドは意外なことにこの地をどうやら知らなかったようだ。

 

ルークよりもやや冷めた目で外の光景を見つめている。

 

「君もここを知らなかったのかい?」

 

マラ・ジェイドは答えなかったがどうやら知らないようだ。

 

一行を乗せたラムダ級は宮殿のような岩場の近くに停泊した。

 

「さあスカイウォーカー卿、皇帝の手、どうぞ」

 

男に導かれ2人とR2は護衛のトルーパーらと共にラムダ級のハッチから降りた。

 

外に出るとエクセゴルの肌寒い空気が肌の神経に触れ周りを見れば何十人かの将校とトルーパーが綺麗に整列し一行を出迎えた。

 

帝国軍や帝国の高官達が出迎えを受ける時の一般的な姿だ。

 

まさか自分がこんな扱いを受けるとはとルークは不思議な感触に見舞われた。

 

「こちらです」

 

男は2人を導き宮殿の中央に向かった。

 

宮殿は赤いトルーパーとその衛兵種と思われる護衛に守られ警備は厳重だ。

 

宮殿の奥からはただならぬ雰囲気を感じ、辺りを見回せば怪しい黒いローブを着た者達が何かを話している。

 

一体いつからこの場所はこれだけの者が住み組織として成り立っているのだろうか。

 

あの上空のスター・デストロイヤーの艦隊も一朝一夕で出来たものではないはずだ。

 

銀河帝国だってインペリアル級を二万五千隻も保有していたがそれだけの数を揃えるには長い年月が必要だった。

 

となればこの艦隊もそうなのだろうか。

 

まだ数百隻程度だと見受けられるがそれでも建造には長い長い年月が掛かったはずだ。

 

我々の知らないところでこんな艦隊が、こんな者が出来上がっていたなんて。

 

ルークは恐れを抱きつつ男の行くままに歩いた。

 

長き階段を渡り男が目指していた場所が見えてきた。

 

石造の塔のような場所には玉座がありそこにはルークでさえ一度は目にしたことのある人物が座っていた。

 

「お連れしました、我が主」

 

男は丁寧に頭を下げ2人を男の主に見せた。

 

その姿はルークとマラ・ジェイドの方からも見えている。

 

あまりの衝撃にルークは口を閉ざしマラ・ジェイドは絶句しその場に座り込んだ。

 

「どうして……どうしてここに……」

 

マラ・ジェイドはそう呟きながら涙を零した。

 

玉座の男は2人を見て口を開いた。

 

「こちらに、もっと寄ってくれ」

 

嗄れた声は前に聞いた時よりも増して今にも死にそうな雰囲気を醸し出している。

 

男の玉座の周りには特殊な機械やコードが見えておりまるでそれが玉座の男の命を繋ぎ止めているかのようだ。

 

近くには衛兵だけでなく黒いローブを被った手練れを思わせる者達が2、3人立っていた。

 

恐らく彼らはフォース感受者のダークサイドの戦士だろう。

 

ルークとマラ・ジェイドは言われた通り玉座に近づいた。

 

玉座の男はフードを被っており顔は深く見えなかったが近づくにつれてそれは鮮明になっていく。

 

どうやら玉座の男はルークとマラ・ジェイドが想像していたよりも更に醜くまるで死体のようだった。

 

「感じるぞ……余の新たな弟子……そして余の信頼のおける手……」

 

「久しぶりだな…まさか生きていたとは……“()()”…!」

 

ルークは玉座の男、銀河皇帝シーヴ・パルパティーンを睨みつけながらそう吐き捨てた。

 

パルパティーンはその肩書きを呼ばれニヤリと笑みを浮かべた。

 

ニタついた死体の笑みだ。

 

直後雷鳴が降り注ぎパルパティーンの顔は明かりに照らされ鮮明になった。

 

その姿はまるで死体そのもの、ゾンビという言葉が相応しい有様だった。

 

肌の色は以前よりも白く皺も同じく以前よりも深く掘り込まれ、その眼は盲目の瞳のように白く濁っていた。

 

嗄れた声にこもっているのは以前のような悪の帝王の恐怖というよりは死の存在を含んだどこか哀れなものだ。

 

玉座の周りの機械はまるで延命治療の為の装置にも見えてくる。

 

かつて第一銀河帝国という銀河の超大国を作り上げた男の姿とは思えないものだ。

 

以前のような、エンドアのデス・スターの玉座で会った時よりも全てが醜く変化していた。

 

あの憎しみを染み込ませたような黄色い瞳もなくこのパルパティーンからは全く力を感じなかった。

 

もしかしてこの男はあのエンドアの時よりも力は衰え死にかけに等しいのではないか。

 

油断ならぬ雰囲気を漂わせながらもどこかそう弱さを感じさせた。

 

しかし死んだはずの人間が生きているということがまず一番の驚きだ。

 

確かに初代デス・スターで命を捧げたオビ=ワンや寿命を全うしたヨーダ、身を挺して自分を守ってくれた父アナキンはフォースの霊体となって今も意志の存在として生きている。

 

シスにも同じような技術があるのだろうか。

 

だとすれば目の前の男を滅ぼすことなど出来るのだろうか。

 

そんな不安を心の中で消し飛ばそうとしながらルークはパルパティーンに向かって吐き捨てた。

 

「配下の者に命じてこんなところまで連れてきたのが運の尽きだ。お前は再び死ぬ、父に代わって僕がお前を倒す」

 

マラ・ジェイドはルークを睨みつけ一応の臨戦体制を取った。

 

彼女にとってまだこの目の前の死体は彼女の主人だ。

 

どんな姿であろうと主人は守らなくてはならない。

 

しかしパルパティーンは弱々しい高笑いを浮かべルークへ言葉を返した。

 

「スカイウォーカー、君では私を倒せんよ。選ばれし者だった君の父でさえ出来なかったことだ、こんな常に死に蝕まれ続けている身体でさえ私はまだ生きている」

 

何か口調や一人称がおかしい気がするが今はそんなことを気にしている暇はない。

 

ルークは再び啖呵を切って吐き捨てる。

 

「それはどうかな、広まりすぎた闇はいずれ光によって照らされる。お前の配下の軍隊が動き出そうとする瞬間、お前はその代償として光に照らされ再び敗北する」

 

「だとしてもだ、私には使命がありその為に私は必ず生かされる。エンドアの時に私が死に切れなかったように。君の父に選ばれし者の使命があったように私にも使命がまだある」

 

「ではその使命とはなんだ?僕はお前のような悪党を生かし続ける使命があるとは思えない」

 

ルークはパルパティーンに尋ねた。

 

パルパティーンはどこか嬉しそうな、それでいて満足げな表情で話した。

 

「私の民を、この銀河を“()()()()()()”という使命だ。この使命はまだ果たされていない」

 

この銀河を外敵から守る、一体何を言っているんだとルークは思った。

 

パルパティーンの言い方からしてその対象はレジスタンスやかつての反乱同盟ではない気がした。

 

ではその外敵とはなんだ、敵とは何なのか。

 

その疑問に反しパルパティーンはルークに更に問いかけてくる。

 

「私は君にもその使命を共に全うしてほしいと思っている。スカウォーカーよ、皇帝でもやはり使命を分かち合う友人のような者が必要なのだ」

 

「友人?シス卿らしからぬ発言だな」

 

「そんなことはない、余の弟子であり其方の父ヴェイダーも余の友であった。其方は父の代わりとなり余の命を全うするのだ」

 

ルークは眉を顰めながら身構えた。

 

目の前の死に体の皇帝はまだ自分をシス卿の弟子として迎え入れたいらしい。

 

流石はシス最大の暗黒卿ダース・シディアス

 

シディアスはそのままルークを睨みつけていたマラ・ジェイドに言葉を投げかけた。

 

「余の忠実な手よ、其方には申し訳ないことをした。本来なら其方はもっと早くにこの地にいるはずだった、彼らのようにな」

 

シディアスは側で控えているローブの男達に手を向けそう呟いた。

 

しかしマラ・ジェイドは「生きているだけで十分です」と答える。

 

「其方には再び余の忠実な手として働いてもらう。期待しておるぞ」

 

「ハッ!」

 

マラ・ジェイドは頭を下げシディアスに再び忠誠を誓った。

 

シディアスはそれを満足そうに見届け再びルークに目と意識を向けた。

 

今度は邪悪な笑みを浮かべてルークに話しかける。

 

「若きスカイウォーカー、其方やジェダイの力では余は倒せん。今は不完全ではあるが余は師から得た術によりやがて完全を取り戻すであろう。ダークサイドの力がある限り余は殺せん」

 

死に体の眼でシディアスはルークを凝視し最後にこう告げる。

 

「余に使えよ、父の代わりに余の半身となり我らに仇なす者を全て討つのだ。もはや其方に残された道はそれだけしかない」

 

まるでそれが定められた運命だと言わんばかりの顔でシディアスはルークを再び勧誘した。

 

エンドアの時と状況は一変している、この光景を見れば尚更だ。

 

死んだはずの皇帝も今こうして生きている。

 

もしかすると目の前の男の言う通り暗黒面の力がなければこの男を倒せないのかもしれない。

 

ルークは足場が揺らぐような感覚に見舞われ暫く言葉が出なかった。

 

「時間はある、よく考えるがよい。その間に余が差し向けた尖兵達が余の敵を、其方の友を根絶やしにするだろう」

 

皇帝の高笑いと共にエクセゴルの雷鳴が轟音を立て落ちた。

 

まるで今の状況を指し示すかのように。

 

 

 

 

 

 

-惑星コルサント 親衛隊本部-

「……という訳だ。ついに彼らは公に姿を現した」

 

数時間前にレジスタンスの主要惑星に送られたという宣戦布告文のホログラムをジークハルトはモーデルゲン上級大将から見せられた。

 

ホログラムの音声の人物は自分のことを“()()()()()()()()()”と名乗りレジスタンスへの攻撃を開始すると告げた。

 

音声が告げていたシスやシディアスという人物のダースという名称、どれも少し歴史の科目で聞いたことがある。

 

クローン戦争の頃まで存在していたジェダイと対を成す存在として存在していた組織だ。

 

しかしシスはジェダイよりも先に1,000年も前に滅んだはずだ。

 

内乱や敗北、度重なる戦争に耐え切れずシスは完全に滅亡したと曖昧ながらも語られた。

 

勿論シディアスとやらが滅んだ組織の名前と名称を勝手に詐称しているに過ぎないかもしれないが。

 

だがジークハルトにはそれとは別に少し気になる点が一つあった。

 

このシディアスという男の声、以前何処かで聞いたことのある声だ。

 

それもかなり身近で何度も聞き馴染みのあるようなそんな声に感じられた。

 

「このホログラムデータはハイドレーヒ大将らFFSBの上級将校がいる際にしか閲覧させてはいけないことになっている」

 

「ああ、シュタンデリス准将には特別、だ」

 

ハイドレーヒ大将はモーデルゲン上級大将の言葉にそう付け加えた。

 

副官格のフリシュタイン大佐も小さく頷いている。

 

だが珍しく接点のなさそうな2人が揃っているのはどうやらそれだけが理由ではなさそうだ。

 

モーデルゲン上級大将は話を戻す。

 

「既にシス・エターナルが先遣隊として出撃した艦隊がガレルを奪還したそうだ。レジスタンスの駐留艦隊は全滅」

 

「全滅?確かガレルには確認されただけでも新造艦を含めた一個星系艦隊程度の戦力はあったはずですが」

 

地上軍がメインとはいえジークハルトにもそれくらいの情報は舞い込んでくる。

 

ガレルの駐留艦隊は防衛戦で戦力の半数以上を喪失した後ガレルにそのまま帰投しそのまま現地の駐屯隊と共にガレルからの撤退を命じられた。

 

旗艦を失い指揮系統が半崩壊状態でいくら戦ってもそれはレジスタンス軍に一方的に嬲られるだけだ。

 

だが今思えばあの撤退は残存兵員の撤収というよりはこのシス・エターナルの艦隊を展開する為の布石だったのではないかとも思う。

 

ガレルの駐留艦隊は壊滅してもまだあの時のガレルには国防軍の数個兵団が展開していたはずだ。

 

本気で市街地戦を展開し防衛体制を構築すれば新造艦の力を持ってしても数ヶ月は耐え抜けるはず、少なくともジークハルトの防衛プランならそうなる。

 

恐らく国防軍総司令部もそれを認識しているだろう。

 

それでも撤退を出したということはやはり…。

 

「シス・エターナルの艦隊には少し“()()()”があってな。彼らはこのままガレルからロザルまで進軍し最終的にモン・カラまで攻め立てるつもりだ」

 

「一個艦隊のみでレジスタンスの艦隊最高戦力があるモン・カラまで一気に進軍出来るとは到底思えませんが…」

 

「無論我々も支援し同時攻勢を行うさ。しかしそれ以上にシス・エターナルの進軍は彼らが持つ“仕掛け”によって支えられる」

 

先程からモーデルゲン上級大将は仕掛けと言葉を濁してばかりだ。

 

一体その仕掛けとはなんだろうか。

 

話だけ聞くにシス・エターナルの艦隊はガレルのレジスタンス艦隊を殲滅してもまだモン・カラまでの進軍及び攻略が出来るほどの余力があるらしい。

 

よほどシス・エターナルの装備がいいのかそれもとも指揮官が有能なのか、もしくは両方合わせての結果なのか。

 

今の段階では全く判別が付かないがここでジークハルトはある別の予測を浮かべた。

 

もしシス・エターナル艦隊が“()()()()()()()()()()()()”を持っていたとしたら。

 

不意打ちで核弾頭を何発か撃ち込むのだって相当の打撃になるしオナガー級のような砲艦の攻撃もバカには出来ない。

 

だがそれ以上にジークハルトはある一つの兵器を思い浮かべた。

 

彼が知るところの最大の破壊兵器の存在を。

 

だが、まさか。

 

そんなことある訳がないという感情も含めて。

 

「そちらの攻勢は宇宙軍に任せるとして我々が君を呼んだのはもっと別の理由だ」

 

考え込むジークハルトにモーデルゲン上級大将はそう声をかけた。

 

この話をしたということは別の理由でもなんらかの関連はあるはずだ。

 

モーデルゲン上級大将はまずジークハルトに一つ尋ねた。

 

「君の新設軍団、設立してそれなりに時は立つと思うがどうだね?稼働は順調か」

 

第9FF装甲擲弾兵軍団タンティスベルクは創設してから数ヶ月が経つ。

 

「はい、新兵を交えての訓練も順調に進んでおりこのまま実戦に投入しても問題はないと思います」

 

「それはよかった、やはり君の部隊に任せるのが最適なようだ」

 

モーデルゲン上級大将は立ち上がりジークハルトの肩を軽く叩いた。

 

「ハイドレーヒ大将、“例の部隊”をシュタンデリス准将に見せても良いか?」

 

「構いませんよ、我々もついて行きましょう」

 

ハイドレーヒ大将とフリシュタイン大佐は立ち上がった。

 

まだよく分からないジークハルトは「一体何を…?」と尋ねるもモーデルゲン上級大将は「君の新しい部下達の披露だよ」としか言わなかった。

 

上級大将に連れられ一行は親衛隊本部の地下広場へと向かった。

 

エレベーターを使い幾つかの階段を降り衛兵に広場のコードを入力させる。

 

扉が開きジークハルト達は地下広場に入った。

 

「見えるか、これが全て“()()()()()”」

 

モーデルゲン上級大将の素振りはまるでサプライズプレゼントを誰かに見せるような感じだった。

 

ハイドレーヒ大将をそれに近しい笑みを浮かべフリシュタイン大佐もただ黙って見守っている。

 

だがこの光景を見せられたジークハルトに浮かぶ表情は困惑の二文字が最もよく合っている。

 

「上級大将……これは……」

 

目の前に広がる何百人もの兵士を見つめジークハルトは動揺し言葉を詰まらせた。

 

どう反応していいのかよく分からない。

 

モーデルゲン上級大将はそんなジークハルトのことは知らずに説明を始めた。

 

「彼らは“シス・トルーパー”、シス・エターナルの軍隊を構成する兵士だ。ここには今200人のシス・トルーパーがいる」

 

全身を赤いアーマーで固めその手にはE-11ブラスター・ライフルの改良品のような武器を持っていた。

 

そのアーマーはストームトルーパーというよりはクローン・トルーパーの衣装も導入されておりTKトルーパーとはまた別の中間の存在といった姿だ。

 

シス・トルーパーは全員、一糸乱れぬ姿で整列し静かに前を向いていた。

 

ストームトルーパー以上に感情を感じられず不気味さや人間らしからぬ姿に恐怖を覚える。

 

「これはシス・エターナルからの贈り物だ。シス・エターナルは第37軍団、通称マルガス軍団から幾つかの小隊や中隊を我々に贈呈すると言ってきた」

 

「それがこの部隊ですか?」

 

「その通り、指揮官はキャプテンST-C270。部隊名は第345中隊、先ほど言った通り200人のシス・トルーパーが全て君の下につく」

 

ポールドロンを付けたシス・トルーパーが前に一歩出る。

 

通常の将校に当てはめれば大尉の中隊長、経験や能力はまだ不確定な部分は多いが決して低くはないはずだ。

 

「それと同時にFFSBとFFIからも一個中隊と更にこの中隊配下の歩兵二個中隊が君の軍団に送られる。600人の精鋭だ」

 

こちらの新部隊についての認識はシス・トルーパーの部隊よりもよく知っているつもりだ。

 

親衛隊保安局と親衛隊情報部が主軸の部隊、この部隊は他の国防軍や親衛隊の戦闘隊に追随して敵勢力と見做した勢力を殲滅する悪い噂の多い部隊。

 

通常の忠誠将校や軍系の役割を持つ保安局員らの将兵とは違ってこの部隊は戦闘後の制圧地区の掃討作戦がメインの任務となっている。

 

恐らくはその過程で“()()()()”も遂行しているのだろう。

 

とても許し難い行いではあるが今のジークハルトでは止めようがなかった。

 

「部隊長はヴェルテス・ヘルリンカー上級大尉、シス・トルーパーの部隊と合わせて一個大隊の兵員がタンティスベルク軍団に編入される」

 

ジークハルトはモーデルゲン上級大将の説明を聞きながら深く考え黙り込んだ。

 

それに気づいた上級大将が「どうしたのだ?」とジークハルトに尋ねる。

 

「私の第9FF装甲擲弾兵軍団は数ヶ月前に軍団へ昇格したばかりです。何故そんな我々に更なる追加部隊を?」

 

この問いにジークハルトは逆に自分の疑問を投げかけた。

 

モーデルゲン上級大将はハイドレーヒ大将らに顔を合わせ数秒の間を置いてから答える。

 

「君は提出した今年の最終報告書の内容の中に特殊部隊対策や諜報対策、もしくは特殊部隊強化や諜報力の強化、特殊作戦と通常の兵員動員作戦の戦略を提示したな?」

 

それはモーデルゲン上級大将の言う通りだ。

 

間も無く1年の終わりが近づきジークハルトら一部の上級将校は報告書を書かなくてはならなくなった。

 

後1、2ヶ月もすれば年を跨ぎ次の年が来るだろう。

 

早めに布告書を書き終えたジークハルトは製作中に丁度ナブーの失陥と状況報告が送られ最終報告書の提案として組み込んだ。

 

「はい、そうですが」とジークハルトは答えモーデルゲン上級大将は頷きながら話を続けた。

 

「君の理論はハイドレーヒ大将とフューリナー上級大将が高く評価している。そこで君には失われたナブーの奪還を行なってもらいたい」

 

「私が、ですか?」

 

「ああ、シス・エターナルは現在北側の征伐に集中している。やがて本隊が現れるだろうが布石を置く為にも君に一役買って欲しい」

 

ナブーの奪還、今の状態ではかなり厳しいだろう。

 

レジスタンスの艦隊に合わせて兵一個師団、更には民衆の支持基盤も篤いはずだ。

 

それでもやれというのならやるしかない。

 

「取り敢えず私の役割はこれで済んだ。後は全てハイドレーヒ大将に任せるとする」

 

モーデルゲン上級大将はジークハルト達からの敬礼を受けてその場を後にした。

 

残されたハイドレーヒ大将は「場所を変えよう」とジークハルトに告げる。

 

シス・エターナルの到来と共に銀河系も大きく変わり始めている。

 

それも暗黒の方向へ。

 

 

 

 

 

シス・エターナルの襲来は第三帝国だけでなくその同盟国や加盟国にも告げられた。

 

特に事前に知らされていた大セスウェナでは執務室でヘルムートがその事を呟いていた。

 

「ついに彼らがきた……来てしまった……」

 

腕を組み事前に与えられた情報と入ってきたシス・エターナルと思われる艦隊の戦果が写っている書類に目を落とした。

 

「まず第一戦でレジスタンスの艦隊を丸ごと一つ持っていくか……」

 

「セスウェナから送り込んだ諜報網からも同様の報告が入っています、それとこちらを」

 

ザーラ司令官はタブレットをヘルムートに見せた。

 

彼女のタブレットにはスパイ達から送られたシス・エターナル所属のスター・デストロイヤーの画像と詳細な報告が記載されていた。

 

見た目は殆どインペリアル級スター・デストロイヤーと同等だが実際の大きさはインペリアル級を遥かに上回り船体下部には大型砲塔を備えている。

 

スパイ達の報告は大セスウェナの人員があのエクセゴルという惑星で視察したスター・デストロイヤーに酷似していた。

 

「これが件のジストン級……か」

 

「恐らくレジスタンス艦隊を殲滅したのもこの艦かと」

 

ザーラ司令官の分析はヘルムートの予測と一致していた。

 

あのジストン級というスター・デストロイヤーは単純な火力や大きさ以上にインペリアル級より一箇所遥かに優れている点がある。

 

その力を上手く使えばレジスタンス艦隊を一撃で全滅に追い込むなど造作もないことだ。

 

なんなら“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”。

 

「それと、艦隊の中にこのような軍艦が混じっていたとか」

 

タブレットをスライドしザーラ司令官は別の報告書と画像を出した。

 

添付されていた画像に写るのはあのジストン級が霞むほどの大きさを誇る黒色の超弩級戦艦だった。

 

エグゼクター級に似た形状にも見えるが船首が上下に伸びエグゼクター級とは大きく異なる姿をしている。

 

報告文にはスター・ドレッドノートクラスの大型艦船を確認と記されていた。

 

「この艦は……」

 

「スパイによるとこのドレッドノート艦は戦闘した形跡は見受けられないそうです。ご存じありますか?」

 

「いや………だが昔資料に記載されていたような……」

 

それもコルサントではなくこのエリアドゥに紙の書類として存在していたはずだ。

 

かなり昔に目を通した記憶がある。

 

まだ4年ほど前、銀河内戦の真っ只中でだ。

 

「ともかく、報告ありがとう。シス・エターナルはこのままモン・カラまで進軍するつもりなのだろうか」

 

「はい、間違い無いでしょう。艦隊は今現在進軍を停止していますが間も無く再び行動を起こすかと」

 

「在中の国防宇宙軍情報部の将校によればレジスタンス軍も対策に出る頃らしい。恐らく艦隊を動かしシス・エターナルの進軍を阻むつもりだ」

 

「場所としてはどこになりそうですか?」

 

ザーラ司令官は尋ねた。

 

ヘルムートは受け取った様々な情報と予測を交えて話す。

 

「私の予測で言えばバロス周辺になるだろう。少なくとも彼らはロザルの手前で防衛を行うはずだ」

 

ロザルは確かに初期反乱運動の頃からレジスタンス軍の求心地となっている。

 

フェニックス中隊やヘラ・シンドゥーラといった者達が戦果を挙げ最終的には解放まで成し遂げた。

 

今もレジスタンス軍の拠点の一つとして利用されている。

 

だがロザルの内情は全てがレジスタンスの意思で統一され対帝国の為に団結しているかと言われればそうではなかった。

 

元々ロザルのような銀河の中央政治とあまり縁もゆかりもないような惑星がわざわざ帝国の支配を受けていたのには理由がある。

 

ロザルの経済は破綻し国政もガタガタになりそんな状況下では帝国に助けを求める他なくなった。

 

帝国はロザルに重工業と資源採掘、軍務めという経済復興の為の職を与えロザルの立て直しを始めた。

 

その過程でロザルの環境は破壊され農民達は虐げられ多くの若者が軍工場か軍隊しか働き口のないという状態にまでなってしまった。

 

しかし経済が破綻している時よりは幾分かマシであった。

 

ロザルの解放が行われるまでは。

 

1BBYにロザルは反乱軍の手によって解放され自由の身となった。

 

それ以降帝国が姿を表すことはなくロザルの民はそれは晴れやかな気分となっただろう。

 

尤も長く続いたかは別問題だが。

 

帝国は銀河系から完全にロザルを切り離した。

 

ロザルに与えた重工業も軍役も資源も全てを取り上げ農業製品や残された資源などロザルが差し出してくるもの全てを受け取らなかった。

 

経済的に各地からブロックされロザル製品やロザルの輸出品は帝国によって厳しく統制され貿易船や違法商船は全て逮捕された。

 

反乱軍の愚かな理想に感化され帝国から離れた者はこうなる、ある種の見せしめにしたかったのだろう。

 

銀河系から救いの手も何もかも失ったロザルは一気に衰退の一途を辿った。

 

自らを解放してくれた反乱同盟軍もこの時点ではまだ小規模の抵抗勢力にしか過ぎず表立った経済支援を行うことは出来ない。

 

出来たとしても帝国軍の厳しい監視の目をすり抜けるのは難しいだろう。

 

反乱同盟軍が助けられるだけの力を持つまで少なくともあの当時から数えて後4年、5年は必要だった。

 

その僅か4、5年でロザルは経済破綻した時以上に落ちぶれロザルの活気や過去の姿は永遠に戻ってくることはなかった。

 

新共和国が誕生しようやくロザルを支援し始める頃にはもう手遅れの領域に足を踏み入れ始めていた。

 

それに新共和国もロザルばかり助けてやれる暇はない。

 

各地の復興も同時に行わなければならない為ロザルには最低限の支援しか行えなかった。

 

今はレジスタンス軍の拠点の一つとなって若干の活力を取り戻しつつあるが悲惨な過去を忘れたわけではない。

 

もし第三帝国かシス・エターナルかが惑星の一歩前まで迫ってきた時ロザルの民がどう反応を示すかは正直不明だ。

 

だが少なくとも全員が一丸となって徹底抗戦するようなことはないだろう。

 

それはレジスタンス軍も重々承知であると考えているのでヘルムートはこのバロスと言う惑星を予想に上げた。

 

「レジスタンスがどの程度の戦力を送ってくるかは不明だがシス・エターナルの勝利の方が可能性としては高いはずだ。指揮官や兵の練度で覆されるかもしれないけど…」

 

ヘルムートが全てを言い切る前に執務室のブザーが鳴った。

 

「入っていいぞ」

 

ヘルムートの許可と共にドアが開き彼のおじ、エルデストが入ってきた。

 

「アノート宙域のレジスタンス軍との戦闘計画と部隊編成が完了したから報告に来たぞ」

 

「おじ上!もう少し時間が掛かると思っていましたが早かったですね」

 

ザーラ司令官に敬礼を返しエルデストは計画の入ったタブレットをヘルムートに手渡した。

 

ヘルムートは早速計画書を目にし始めその間にエルデストは口頭で部隊の編成と軽い戦域の場所を述べ始めた。

 

「想定は会議の通り防衛戦、一応セネックス・ジュヴェックスの惑星ドーラと想定している」

 

「確かにここは我々の玄関口、エリアドゥとハイパースペース・ルートで繋がっている為部隊の展開と兵站確保も容易ですね」

 

「ああ、地の利もこちらにある。ここでの戦闘は優位を十分確保し続けられるはずだ」

 

第三帝国はセスウェナの軍にアノート宙域のレジスタンス軍を撃破するよう求めた。

 

恐らくモン・カラ、ヤヴィン、キャッシークの反抗による圧迫を受け更にナブーが陥落した事により焦りを覚えているのだろう。

 

今までは帝国の旧領、ウータパウのタラバ宙域やムスタファーのあるアトラヴィス宙域の内戦中に独立した中立地帯の併合で彼らは満足していた。

 

だが遂に軍事力による敵対者への攻撃が命じられた。

 

しかも代理総統の名義である為グランドモフの権限を持ってしても拒否は出来なかった。

 

「恐らく陸上戦は殆どないだろうがドーラの防衛司令官にカッセル司令官を置いた」

 

ヘルムートが手に持つタブレットにも記載されている内容だ。

 

カッセル司令官は以前大伯父ウィルハフがセンチネル基地に勤めていた時にそこの司令官を務めていた人物だ。

 

セスウェナの防衛司令官を務めていた頃にエンドアの戦いが勃発しそれ以降は大セスウェナの領域についた。

 

「艦隊の配置はまず前衛で敵と衝突するのがトレークスの小艦隊だ。第一主力の防衛部隊はバーク提督が率い遊撃隊はプラージが、航空艦隊はロス提督が務める」

 

全員艦隊指揮経験の豊富な優秀な将校達だ。

 

特にバーク提督やロス提督はバーチ・テラーの反乱時に大伯父ウィルハフと共に戦ったこともあるらしい。

 

「スターファイター隊はシア・ハブリンが指揮を取り、念の為にモッティにはエリアドゥ及びセスウェナの防衛司令官を任せる。そしてザーラ司令官が予備隊を、私が惑星駐留の本隊を……というのが現段階の発想なんだが……」

 

言葉の最後にエルデストはヘルムートの方に何度か目線を送っては目を背けていた。

 

「どうしました?」とヘルムートはおじに尋ねたがしばらくエルデストは言葉を詰まらせた。

 

「ああ……そのだな……惑星駐留の本隊には全軍の総司令官としてヘルムートと“エグゼキュートリクス”が来る事になっているんだが……やはりやめておくか?」

 

別にエルデストはこの若すぎるターキンの能力と胆力を心配している訳ではない。

 

むしろ彼はもっと幼かった頃に戦争というものを経験している、それがたとえお飾りの指揮官だとしてもだ。

 

だが最近の情勢化ではヘルムートにもやることが増えている。

 

そんな中でヘルムートを戦いに引っ張ってくるのは流石にオーバーワークすぎると考えていた。

 

それにヘルムートがいなくとも恐らくこの戦いには勝てる。

 

彼が出てくるのは最後の攻勢にすべきではないかとエルデストは思っていた。

 

しかしヘルムートは首を振る。

 

「おじ上、私は行くよ。何も戦いたいからとか指揮官は常に最前線にいるべきだとかそういうのじゃない。だけど今、私は前に出て“()()()()()()()()()()()()()()”という事実を作らねばならない」

 

大伯父ウィルハフには何度も言われた。

 

敵に舐められるな、と。

 

プラトーではジョヴァに何度も言われた。

 

獣や敵に一瞬の隙も見せてはならない、と。

 

それは今になって痛烈にその通りだと思う。

 

指導者は微塵の隙も相手に見せてはいけないのだ。

 

完全無欠の超鉄人を演じ敵が来るようであれば自らの手で完膚なきまでに叩きのめし、自領に土足で足を踏み入れた者がどうなるかを教えてやらねばならない。

 

「この時代だからこそ指導者が前に出て敵を打ち人々に安堵を与え、敵や対外者に我々の秩序を教えなければならない。その為にはどうしても必要だ」

 

ヘルムートは真剣な面持ちでエルデストに頼み込んだ。

 

その様子をザーラ司令官は静かに見守っている。

 

暫くするとエルデストはどこか負けたようにため息をついた。

 

「…分かった、では計画としては問題ないということで良いな?」

 

「はい」

 

ヘルムートは力強い眼光で力強く頷いた。

 

到底10代後半の青年とは思えない意志の強さだ。

 

その姿はまるであのウィルハフ・ターキンのようだとザーラ司令官は微笑を浮かべる。

 

ターキンの再来は新しい時代のターキンであると同時にこの銀河の変革者となりつつあった。

 

 

 

 

 

 

-レジスタンス同盟領 コメル宙域 惑星ナブー 首都シード シード宮殿 第三情報室-

シス・エターナルからの宣戦布告からまだ1日も経たずにレジスタンスは対策に迫られた。

 

ディカーへ帰還する時間も惜しい為シード宮殿の一部区画を借りて各所に指示を飛ばしていた。

 

そのうちの第三情報室は通信環境が整い傍受対策も完璧だということでディゴール大臣ら軍首脳が集まっていた。

 

ジェルマンとジョーレンはこの第三情報室に呼び出され急いで向かっていた。

 

「ジョーレン・バスチル少佐、ジェルマン・ジルディール大尉、只今到着しました」

 

ドアが開くと共に2人は敬礼し情報室に入った。

 

幕僚達との会話を一旦中断し2人に敬礼を返した。

 

「ということであとは頼む。早速で悪いがまず君達には先に命令を出す。危険ではあるが2人にはレンディリに飛んでもらい潜入調査して貰いたい」

 

「レンディリってあのコア・ワールドの?」

 

ジェルマンはディゴール大臣に尋ね大臣は小さく頷いた。

 

惑星レンディリ、コア・ワールドに位置する惑星で旧銀河共和国が誕生した時に設立に携わった惑星としてコア創始者に数えられている。

 

コア・ワールドの惑星である為長い歴史を誇り未だ栄え続ける人口6,000億人の惑星だ。

 

またレンディリ・スタードライブ社という企業の本拠地であり同社が建造したドレッドノート級重クルーザーは今もなお帝国軍や多くの矮星防衛軍が使用し続けていた。

 

第三帝国侵攻以前はレンディリも新共和国の加盟国でありホズニアン・プライムの分学校としてアカデミーが設立されていた。

 

亡きストライン中将の御子息であるノヴァン・ストラインもこの学校に通っていたはずだ。

 

だがレンディリは元々親帝国派の惑星であり住民の殆どは第三帝国、かつての第二帝国に加わることを望んでいた。

 

クローン戦争から帝国時代にかけての帝国の暮らしとその恩恵が忘れられなかったのだろう。

 

それに第二帝国は俗にコルサントの奇跡と呼ばれる大攻勢を成功させその後の銀河協定に希望を見出した。

 

総司令官であり後の帝国代理首相のパウルス・ヒルデンロードの力と代理総統のカリスマ性を横目に見れば敗北したとはいえ帝国が素晴らしいものに見えてくるだろう。

 

新共和国軍の支援を受けたレンディリの暫定政府も帝国併合派の市民に押され崩壊寸前でいつ事変が起きてもおかしくない状態だった。

 

そして“()()”は起きた。

 

ホズニアン・プライムが陥落し元老院議員は皆殺しにされ新共和国は崩壊した。

 

その余波は知っての通り銀河系全土に吹き渡った。

 

ナブーではクーデターが勃発し各地の惑星は独立と帝国への従属を始め或いは軍事政権があちこちに誕生し始めた。

 

レンディリとてその例外ではない。

 

新共和国軍の後ろ盾はなくなり抑えきれていない暴徒の衆が政府を襲い主権を簒奪した。

 

その後第三帝国へ早々に従属の意思を示しレンディリは晴れて第三帝国の直轄領となったのだ。

 

レンディリ駐留軍や政府関係者がその後どうなったのかは想像に難くない。

 

幸いなのはレンディリ・アカデミーの生徒達は皆キャッシークに避難したそうだが以前キャッシークに訪れた時に彼らは1人もいなかった。

 

「あそこは市民も完全に帝国シンパで帝国艦隊も駐留軍も今までの比ではないほどいる。潜入は難しいだろうがどうしてもやってほしいことがある」

 

「それは一体何ですか?」

 

「帝国軍基地へ潜入しシス・エターナルの軍高官との会話を諜報しろ」

 

2人は一瞬だけ顔を見合わせた。

 

その間にディゴール大臣は経緯を説明した。

 

「キャッシークのクラッケン将軍からの緊急伝令でシス・エターナル軍の上級将校と思わしき人物がレンディリの帝国軍司令部に到着することが判明した。我々はまだ、彼らに対する情報が乏しいどころか全くない状態だ。まず敵の動向や第三帝国との関係を表明する為にも会話の傍受、または状況報告を頼みたい」

 

「なるほど……確かに危険な任務ですがやるしかありませんね」

 

ジェルマンの発言にディゴール大臣は頷く。

 

「ステルス性能を備えたUウィングであれば帝国船を使わずとも潜入可能なはずだ。それとこちらで2着ほど帝国軍の軍服を用意した。潜入の際はこれを使え」

 

「ありがとうございます」

 

「それとこれは秘密事項であるが今回の任務を遂行する君たちには話さなくてはならない」

 

ディゴール大臣は重たい雰囲気で2人にそう告げた。

 

2人は真剣な面持ちのままディゴール大臣により耳を傾ける。

 

「あの宣戦布告が送られる数時間前、惑星ガレルに駐留していたレジスタンス宇宙軍の艦隊が“()()()()”」

 

「え?」

 

全滅、それは艦隊クラスになると滅多に聞かない単語である。

 

文字通り一隻も駐留艦隊の軍艦が帰還しなかったということでありもし本当ならレジスタンスにとっては大きな損害だ。

 

しかも解放したガレルに置かれた駐留艦隊となれば相当の艦艇がいたはずだ。

 

「恐らくシス・エターナルの仕業であるとレジスタンス軍司令部は検討しており今ガレルの軌道上にもそれと思わしき艦隊が駐留している。モン・カラでは防衛の為の艦隊を派遣する予定だがその勝率は…極めて低いと言ったところだろう」

 

大臣の深刻そうな面持ちはまるで変わることなく話もどんどん悪い方向へ流れていった。

 

勝利したと思えばすぐに困難が訪れる。

 

レジスタンスは誕生して早々いつもこれだ。

 

「連中の艦隊を撃破する為にもまずは君達の諜報作戦に掛かっている。頼んだぞ」

 

2人は無言で敬礼し任務を受諾した。

 

時代は辛く険しいがそれでも負ける気概は一切なかった。

 

新たな時代の、新たな任務の始まりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

-シス・エターナル占領下 アウター・リム・テリトリー ロザル宙域 ガレル星系 惑星ガレル-

ガレル、惑星ロザルと同じロザル宙域に属する惑星でハイパースペース・ルートを使えば数分で移動出来る。

 

ガレルは帝国にとっても重要な場所でありそれはレジスタンスにとっても同じことであった。

 

初期反乱運動の時代にはガレルを反乱分子のグループが拠点に利用したりしたものでその後ガレルは帝国に対し反乱を起こし独立した。

 

だがそれも第三帝国の勝利により状況は一変した。

 

新共和国の防衛艦隊が殆ど駐留していなかったガレルは帝国宇宙軍の攻撃を受けあっという間に陥落し帝国のモン・カラ攻略の足掛かりとして利用された。

 

最近ようやくレジスタンス艦隊の反抗が成功しガレルは再び解放されたはずだったのだがそうではないことは今のガレルの状況を知っていればすぐ分かるだろう。

 

レジスタンス駐留艦隊は全滅し地上部隊の抵抗も虚しく即座に陥落、今ガレルの軌道上には何十隻ものスター・デストロイヤーが駐留し地上のガレル・シティには赤い兵士達が街を我が物顔で闊歩している。

 

何度も隊列を組んだ一個分隊ほどの赤いシス・トルーパーが通路を歩き、将校や保安局員と思わしき男達がシーカー・ドロイドを引き連れ市民に聞き込みを行なっていた。

 

将校達のホロプロジェクターにはレジスタンスの将校の写真が写っており逃亡した敵兵を一兵残らず探し出し抹殺するつもりらしい。

 

町中のあちらこちらで少々乱暴な言葉遣いで市民を尋問する将校達の声が聞こえた。

 

ガレル・シティの大モニターやホロプロジェクターには全てプロパガンダの映像か指名手配犯とされたレジスタンス軍将兵の画像が映し出されている。

 

スピーカーから『我々は敵ではありません』という占領地特有の音声が垂れ流されていた。

 

「逃げたレジスタンス兵は全て見つけ次第その場で射殺しろ。匿っている者がいたら女子供問わず全て同じ手順で射殺しろ」

 

上官から命令を受けたシス・トルーパー達がガレル・シティに散開し偵察を始めた。

 

その様子を1人のボロ布を軍服の上から被った青年と1人のレジスタンス軍のパイロットスーツを着た青年が路地裏からその様子を除いていた。

 

「このまま街に出るのは無理そうですね……ウェクスリー少尉」

 

シス・トルーパー達を見つめながらボロ布のようなフードを被ったアショース・O・スタトゥラ少尉はそう小声で呟いた。

 

彼はガレル生まれでついこないだまで応用科学を学ぶために新共和国軍のアカデミーに通っていた生徒だった。

 

しかし状況が一変しレジスタンス軍は人手不足を補う為に、そして本人の意思もあって少尉として軍に正式に入隊した。

 

それは彼の側にいるテミン・スナップ・ウェクスリー少尉も同様である。

 

彼の半生には様々なことがありそれを一言で言い表すのは到底不可能だ。

 

ジャクー戦を生き延びた彼は正式にホズニアン・プライムのフライト・アカデミーに入学しパイロットになる為に勉学に励んでいた。

 

だがそんな中この戦争が始まってしまった。

 

テミンらは先んじてまずヤヴィン4のフライト・アカデミーに機体を持って疎開しひとまずはホズニアン・プライム陥落の難を逃れた。

 

だがやはりヤヴィンも人手不足でありテミンも少尉への任官を条件にスターファイター隊のパイロットとして戦闘に参加し始めた。

 

多くの戦友を失ったが彼は様々な戦いを生き残りその後モン・カラへ移動となった。

 

そこでガレル駐留艦隊に配属され艦隊ではなく地上勤務に移動していた為運良く艦隊全滅の悲劇を生き延びた。

 

だがその後地上にやってきたシス・エターナル艦隊に攻撃され彼の機体は撃墜された。

 

辛うじて撃墜を生き延びガレルの近郊に隠れていた所をこのスタトゥラ少尉に見つかり2人は今共に行動していた。

 

「とにかく船かスターファイターを見つけないと……この惑星を脱出してこの状況を正確にレジスタンスに伝えなければ」

 

「しかしどうやって確保します?それにあの艦隊がいる状態で出したとしても……」

 

2人は上を見上げガレルの空を眺めた。

 

青空を覆い尽くすほどのスター・デストロイヤーの数々が上空に駐留している。

 

そして都市の周りには先ほどから何十機ものシス・エターナル専用機と思われるTIEファイターが哨戒任務として飛び回っていた。

 

この状況下では仮にスターファイターを手に入れて脱出したとしてもTIEファイターに見つかり撃墜されるか敵艦隊に封鎖されるかのどちらかしかない。

 

脱出はとても難しい状況だった。

 

「戦闘力のある船が必要だ……尤もそれを使ったとして無事脱出出来るかは分からんが……」

 

2人は再びガレル・シティの大路地の方を見つめる。

 

正直近郊とはいえこの地にも長くいられるか分からない。

 

シス・エターナルの捜索範囲は徐々に広がるばかりで逃げ場は失われていくばかりだった。

 

それを象徴するかのようにどこからか銃声が聞こえシス・トルーパー達が駆けて行った。

 

銃声の奥からシス・トルーパーらの声が聞こえた。

 

「1人始末した、まだ隠れているはずだ。UA-SPを出して捜索範囲を広げろ」

 

「まずい…!ウォーカーを出される…!」

 

「一旦戻りましょう…!」

 

ウォーカーのセンサーであれば容易に2人の存在は見つかってしまう。

 

仲間を目の前で殺されて何も出来ず逃げる事しか出来ないのを悔しくて思いながら2人は走った。

 

2人と入れ替わるように一個分隊を引き連れたシス・エターナル軍の都市型強襲偵察ポッド、通称AU-SPが市街地に足を踏み入れた。

 

このウォーカーは旧共和国グランド・アーミーの全地形対応攻撃ポッド、AT-APをベースにしており3本の足などよく似ている面が多々見受けられた。

 

だがこのウォーカーの設計元は帝国地上軍の新型ウォーカー開発計画にあり最初にこの機体を使い実用に漕ぎ着けたのはシス・エターナルではなかった。

 

それは後方に位置するAT-MT(全地形対応メガキャリバートランスポート)もそうだ。

 

シス・エターナルは最新の兵器を使っている、しかしそれはどれも帝国軍のデータを元にして“ある仲介”を挟んでのことだ。

 

彼ら単体で何かを成し遂げるには少し力不足だった。

 

それは指揮官も同じことでこの艦隊を率いるフリューゲル・ヴァント元帥も元は帝国軍人である。

 

彼はエクリプス級ドレッドノート“エクリプスⅡ”のブリッジで艦隊の司令官達と共に戦略会議を開いていた。

 

全長17,500メートル、ターボレーザーや重レーザー砲が何十、何百砲門もあり600機近いTIEシリーズを搭載出来る上に重力井戸の発生プロジェクターまで備えている。

 

そしてこの艦最大の特徴にして最大の兵器アキシャル・スーパーレーザー砲。

 

ジストン級に搭載された廉価版などとは違いこのスーパーレーザーはあのデス・スターと同じ火力がそのまま放てる。

 

帝国時代は計画艦でしかなかったが今こうして現世に存在しておりこの“エクリプスⅡ”は艦名の通りエクリプス級の“()()()”だった。

 

「各員艦隊の損耗状況を……と言っても殆ど皆無か」

 

フリューゲルはまるで今の言葉が自分の発言かのようにそう振り返った。

 

何せレジスタンス艦隊と衝突した時は一隻の軍艦も失われておらずガレルを攻撃した際も損耗は軽微という言葉すら合わないほどの微々たる損害しか出ていなかった。

 

「地上の上陸戦と掃討戦で数十名の死傷者が出ています。尤もそれこそ微々たる損害であり既に半数の兵士は軍務に復帰しています」

 

ヴィット将軍は各艦内に搭載され現在地上に展開しているシス・トルーパー部隊の損失を報告した。

 

もはやここまで来ると損失などないに等しいだろう。

 

「スターファイター隊はレジスタンス軍の予想外の反撃に遭い9機程被撃墜を受けました。こちらとしても十分軽微に入る損失ですが」

 

スターファイター隊司令官のヴェル・テルノ中将はフリューゲルにそう進言した。

 

元々フリューゲルはスターファイター隊出身で本人はスターファイターを含めた艦隊運用を得意としていた。

 

彼がただのパイロットの士官から艦隊司令官の提督以上にまで昇進出来たのはそこに理由があった。

 

その為スターファイターの指揮にはかなりの心得がある。

 

「十分だ中将、あれだけの航空隊相手にこちらの損害はかなり少ない。損失を受けた部隊を再編成し徐々に哨戒も切り上げ始めろ」

 

「了解」

 

「艦隊の方はどうだ?流石に次の敵はそう簡単には撃破出来まい」

 

『問題ありません。既に閣下のご指示通り戦闘態勢を万全の状態で待機させております』

 

ジストン級“アドヒアレント”艦長のゼイロン・レンウィス司令官はフリューゲルにそう微笑を浮かべ報告した。

 

レンウィス司令官はエクセゴル出身であり士官として技術を学ぶ為に帝国軍に入隊していた事もあったがその後しばらくしてエクセゴルの方へ戻った。

 

彼は艦隊の第四分艦隊の指揮を任されており艦隊の副司令官的な立ち位置であった。

 

それはジストン級“デリファン”の艦長で第三分艦隊指揮官のハウゼン・サブロンド司令官も同様である。

 

「レジスタンスの次の動きは第三帝国から提示されたものとこちらで把握しているもので大まか予想出来ます。恐らく連中はこのまま惑星バロスで我々を迎え撃つつもりでしょう」

 

ブリッツェ中佐はホロテーブルに惑星バロスとレジスタンス艦隊の動きを表示した。

 

既にバロスには元々の駐留艦隊に加え地上部隊やスターファイター隊が幾つか存在している。

 

戦闘は避けられないだろう。

 

「連中は我々の火力を既に知っている。恐らく迎え撃つ艦隊も散開隊形を維持しつつ伏兵部隊を使用して我々を撃破する作戦を取るはずだ」

 

艦隊全体の副司令官であるグレッグ提督は全員にそう告げた。

 

彼はフリューゲルを補佐する為にあえて乗艦を持たずにこの“エクリプスⅡ”の中にいる。

 

その為副司令官との連携が取り易く判断が素早い。

 

「ならば重力井戸を使い伏兵艦隊を引き摺り出しアキシャル砲で一気に殲滅する方向でどうだろうか」

 

フリューゲルの提案に諸将は頷き賛同の意を示した。

 

更にフリューゲルは彼らにあることを許可し彼らに命じる。

 

「ならば各艦のアキシャル・スーパーレーザー砲の無制限使用を許可する。ただし、バロス本星への直撃と破壊は控えろ。惑星を直接攻撃する場合は敵が最終降伏に応じず私が直接命令を下しこの“エクリプスⅡ”が行う」

 

その判断にヴィット将軍やグレッグ提督らは納得したがレンウィス司令官のような者は反対した。

 

『しかし閣下、あの惑星には多くの敵兵がいます』

 

「だから降伏に応じない場合は本艦が直接撃つ。敵さえ降伏すれば我々は後は真っ直ぐ進むのみ、後のことは第三帝国とやらに任せればいい」

 

フリューゲルは宥めるようにそう言葉を返した。

 

だが彼自身がそれはただの詭弁でしかないと理解している。

 

惑星破壊というどこか倫理的に禁忌としているものを踏み越えてしまうこと、そして自分の手に持つ力への恐怖心。

 

その為にセーフティをかけたに過ぎない。

 

既に自分は“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”。

 

 

 

 

 

エクセゴルの出自は一般的には謎に包まれている。

 

そもそも大多数の市民は、なんなら政府や中央の大政府の者達でさえその存在を知らなかったのだから当たり前だ。

 

このエクセゴルはずっと未知領域の暗闇に包まれていた。

 

かつては肥沃な惑星だったこのエクセゴルもモラバンドやジオストのように荒れ果て今の闇が蠢く星へと変わってしまった。

 

この暗黒惑星の地下には古代のシス卿が造り上げたとされる秘密の造船所が存在していた。

 

この造船所はシスの古文書の一説によると命を吹き込むことでこの造船所は永遠の動力を手に入れ“刻すら凌駕し兵器や軍艦を建造し続ける”という。

 

それが嘘か真かまだ分からないがこの造船所は現代の造船技術が組み込まれ僅か数年でシス・エターナルの大艦隊を創り上げた。

 

このエクセゴルがなければシス・エターナルがこんな短期間にここまでの勢力を増やすのは無理だっただろう。

 

「あれは一体…」

 

ルークはシス信者達が謎の液体が入ったポッドに群がり機器を操作したり何かを記録したりする光景を目にした。

 

遠巻きから見るとオレンジ色の液体で中の物体は見え辛かったが一瞬だけ何かが動いたような気がした。

 

マラ・ジェイドは「さあ」と答えるだけで深くは語らなかった。

 

というより語れなかったのだろう、ここは彼女にとっても始めての場所だ。

 

「そいつは私達と同じ“()()()()()()()()()()”」

 

背後から誰かの声が聞こえた。

 

2人は振り返るとそこには玉座の近くで控えていた黒いローブの男が立っていた。

 

男はフードを下ろし顔を見せた。

 

ボサボサの黒髪に少しザラついて見える肌、茶色の目。

 

その風貌と感じからして彼もダークサイドの戦士だろう。

 

「見てみるか?」

 

男は2人を連れて液体の入ったポッドの側に寄った。

 

近づいてみるとだんだんポッドの中身が見えてくる。

 

中には髪の毛のない白い肌の皺だらけの老人のような何かが入っていた。

 

「皇帝のお考えは常に偉大だ。カミーノから得たクローニング技術はこの地で活かされこのフォースのクローン戦士に行き着いた。やがてこいつらはダークサイドのフォースを使いこなす強力な戦士になるだろう」

 

フォースを使える戦士をクローニングで生産、恐らくこのポッド全てにその戦士が入っているのだろう。

 

まだ育成途中だろうがそれでも十分恐ろしい。

 

遂に人工的にフォースの戦士を生み出せるようになってしまったのだ。

 

「私の名はセドリス・QL、やがてはお前がこのクローン戦士や我々を指揮することになるだろう。スカイウォーカー、いや新たなシス卿」

 

男は名を名乗りルークに告げた。

 

だがルークはまだ否定する。

 

「僕は暗黒面には落ちないし君達とは敵のままだ」

 

「いつまでもジェダイの思想を頑なに守ったっていいことはひとつもないぞ。それよりも皇帝につく方を選んだ方がいい。そうすれば私にしてくれたように皇帝は必ずお前を強くしてくれるぞ!」

 

セドリスは自慢げにそう語った。

 

彼は自らのライトセーバーを振るいその剣捌きを見せる。

 

「彼は元々ただの傭兵だった、帝国軍の将校を殺して死刑を言い渡されたけど皇帝陛下との決闘に敗れ彼の方に服従を誓った」

 

マラ・ジェイドは軽くセドリスの過去をルークに話した。

 

「つまり皇帝の力に屈したわけか」

 

ルークははっきりとそう吐き捨てる。

 

彼自身も皇帝の力は身をもって味わいよく知っていた。

 

あの凄まじいフォース・ライトニングはルークでさえ耐えるのは難しく下手すればあのまま死んでいたかもしれない。

 

父の助けがなければきっと。

 

その言葉を聞いたセドリスはライトセーバーをしまいルークに詰め寄る。

 

「それは間違いだスカイウォーカー、私は皇帝の力に屈したから今があるわけではない。皇帝の寛大さと彼の方への忠義が私を作ったのだ。お前も必ずや私の気持ちが分かるはずだ」

 

セドリスの言葉とは裏腹にルークは全く気持ちが理解出来なかった。

 

それよりも大きな不安感が彼を覆っていたからだ。

 

数多くのダークサイドの戦士を抱え何十万人以上の軍隊、何百隻の大艦隊、そして超高度な技術の数々。

 

これだけの相手をしながら第三帝国とも戦い続けられるのか。

 

そして復活したシディアスを完全に葬り去ることが出来るのか。

 

今までに感じたことのない不安感をこの時ルークは感じていた。

 

もしかするとこのエクセゴルに充満するダークサイドのフォースの影響かもしれないが。

 

「やがてフリューゲルの艦隊が再び大きな戦果を挙げてくる。我々の勝利はもはや確定したも同然だ。今から滅びゆくものに態々つく必要もない、皇帝に従えスカイウォーカー」

 

再びセドリスはルークを暗黒面の側へと勧誘した。

 

彼らは尋問官という存在と同じでダークサイドのフォースの使い手ではあってもシス卿ではないのだろう。

 

シスは常に2人、今その片方が空席で師匠は力を大きく失った状態だ。

 

早く完全な状態に戻りたいのだろう。

 

シスの全盛を、一千年の帝国を取り戻す為に。

 

それに頷くようにエクセゴルの雷鳴が轟いた。

 

フォースのダークサイドは常にこの若きスカイウォーカーを引き入れようとしている。

 

このエクセゴルの暗黒は希望の光すら覆い尽くそうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

-コルサント 親衛隊本部 親衛隊情報部長官執務室-

重苦しいようで何処か軽やかな雰囲気の漂う親衛隊情報部の長官執務室にジークハルトはいた。

 

本来は一生来るどころか来たくない場所の一つだったのだが命令であればそう駄々を捏ねる余裕もない。

 

ハイドレーヒ大将とフリシュタイン大佐はFFSBの白服を着ているのに対しジークハルトは普通の親衛隊員と同じ黒服を着ている。

 

そこにジークハルトは少しばかりの壁を感じていた。

 

彼らは同じ帝国内の同じ親衛隊という組織の人間であるのにも関わらずそこに壁がある。

 

だがその壁が何を意味するのかはまだ分からなかった。

 

「シュタンデリス准将、君は親衛隊に入る前に帝国地上軍にいたそうだな。君の軍歴はずっと地上軍勤務であると」

 

ハイドレーヒ大将は今一度ジークハルトの経歴の資料を読み彼に尋ねた。

 

「はい、ですがロイヤル・アカデミーでは艦隊とスターファイターを合わせた統合戦をメインに学んでいました。まあそれでも私のメインは陸上戦ですが」

 

「特殊部隊の運用は?」

 

「私自身は何回かありますしご存知の通り先日のサラスト戦でも部下が特殊部隊を使ってソロスーブ社の偏向シールドダウンに成功しています」

 

ジークハルトは更に問いに答えた。

 

そして最後に「尤も特殊部隊の運用は専門ではありませんが」と最後に付け加える。

 

実際帝国ロイヤル・アカデミーでも何回か講義で習い模擬戦戦術をやったこともあった。

 

しかし断りを入れたようにジークハルトの専門は地宙空の三部隊を用いた統合戦、その中でも地上戦だ。

 

特殊部隊運用の専門はアカデミー時代からそれを専門とし最終的に帝国軍特殊部隊司令部付将校となったリーゼンスティナーの方が適任だ。

 

尤も今どこにいるか消息不明のままだが。

 

「それでシュタンデリス准将は今回のナブー失陥をどうお考えに?」

 

フリシュタイン大佐はジークハルトに尋ねた。

 

ジークハルトは少し間を置いて忌憚のない意見を述べた。

 

彼らに忖度したところで特に良いことはない。

 

むしろ妙に勘繰られる可能性の方が高そうだ。

 

「敵は徹底的な司令部機能の麻痺による降伏を狙っていたと考えられます。恐らく最初から展開した部隊同士による決戦をするつもりなどむしろハナからなかったとさえ私は考えています」

 

むしろ艦隊ごと出現したレジスタンス軍は制宙権の獲得以外はほぼ陽動の為の存在ではなかったのだろうかとさえ思う。

 

偵察隊の報告だと最終的に一個師団ほどの部隊が展開されていたそうだが一個師団が親衛隊一個兵団と本気で戦闘したようには見えなかったらしい。

 

となればやはり最初から彼らの目標はシードの確保と司令機能の麻痺にありレジスタンス軍はその支援の為の存在だろう。

 

「狙っていたのかそれとも偶然なのかは分かりませんがその結果、駐留軍の意識は王室海軍本部周辺とレジスタンス軍に向けられました。ですので敵特殊部隊はかなりすんなりシード宮殿に潜入出来たでしょう。かなりの前準備を持って、だと思いますが」

 

そして高度なハッキング技術によるシード防衛の最終兵器の起動。

 

恐らく均衡していた親衛隊とレジスタンス軍の勢力差もそこで完全にひっくり返ったのだろう。

 

首都の防衛隊が陥落し全てが敵の手中にあっては兵の士気も大きく衰える。

 

その隙をつけば敵を一気に降伏させることさえ可能だ。

 

「もし仮に首都シードにイオン・パルスが存在しなかった場合はどうなると思う?」

 

「その場合は作戦自体が大きく変貌しそうですが……恐らくイオン・パルスが特殊部隊が持ち込んだ別の制圧兵器に変わるだけだと思います。そちらの作戦でも特段と問題はなさそうですから」

 

しかしレジスタンスは最初からイオン・パルスを起動する前提で作戦を組んでいたのだろうとジークハルトは考えていた。

 

それには現地の抵抗勢力も絡んでいる為深くは分からないが。

 

「では我々が奪還作戦を開始するとなった時、君はどう見る?」

 

ハイドレーヒ大将はいよいよ本題を切り出しまずジークハルトに尋ねてきた。

 

本来はこの話をする為に来たのであって今までの問いは全て前座に過ぎない。

 

既に敗因は親衛隊上層部や国防軍総司令部で議論されているだろう。

 

「師団以下の部隊で奪還を……というのはもう厳しいでしょう。レジスタンスの防衛艦隊が軌道上に駐留し地上部隊も多くの戦力を残しています。おまけに市民は親レジスタンス派が多そうですし」

 

クーデター軍政下のナブーは今までのナブーと状態が大きく違う。

 

市民は軍政下時代は表面上従っていただろうが今はレジスタンスや抵抗勢力に“解放され”その戦勝と共にレジスタンスを支持しているだろう。

 

元々女王から王冠と権威を簒奪し暴力で全てを纏め上げたのだ、親衛隊将校の自分が言うのもなんだがそれでは長く持たない。

 

既にナブーの民の心は第三帝国にはないだろう。

 

「奪還するにはやはり二、三個兵団か軍、星系軍クラスの部隊が必要でしょう。惑星の制宙権を獲得する為に艦隊も必要でしょうし」

 

「では情報作戦や特殊作戦を加えた状態ではどうなる?」

 

「私の頭の中の構想で言えば少なくとも軍クラスの部隊は動かさずに済むと思います」

 

フリシュタイン大佐とハイドレーヒ大将は彼の構想に耳を傾けた。

 

「まず敵艦隊及び惑星監視網、スターファイター隊に大規模な情報攻撃を仕掛けその隙に第一の主力部隊を展開。惑星内部に艦隊攻撃陣地を形成し軌道上に出現した突破艦隊と共にナブーの駐留艦隊を挟み撃ちにして撃破します。それと同時に先行して潜入した特殊部隊や空挺部隊が敵の退路を遮断、宮殿格納庫及び飛行場など航空戦力を有する拠点、また各所司令部に打撃を与えます」

 

本当ならホロテーブルに部隊などを表示して立体的に見せたいのだが今はまだ構想段階だ。

 

ジークハルトが話しているものもこれから多くの人が携わり完成していくだろう。

 

その指揮を誰が取るかはまだ不明だが。

 

「後は先行投入した部隊と共に機動力を持って首都シード並びに保安軍司令部、海軍本部、各駐屯地を制圧し惑星全体を攻略します。ですので優れた諜報能力と妨害能力、特殊部隊の展開力と機動力が求められるでしょう。主力としては機甲戦力やガンシップなどの空中機動部隊が望まれるかと」

 

ジークハルトは自分が話している間にハイドレーヒ大将とフリシュタイン大佐が何かを目で確認し合っているのを知覚した。

 

値踏みされているのかそれとも…。

 

全てを測り切るのは難しい。

 

暫くするとハイドレーヒ大将がジークハルトの方を見て口を開いた。

 

彼は本当に人の心がないと感じられるほど冷酷を身に纏っている。

 

「やはり君に任せるのが最適なようだ。我々親衛隊保安局と親衛隊情報部は統合され新たに親衛隊情報保安本部(Fuehrer Force Intelligence Security Office)となった。我々は今回の作戦で諜報と特殊部隊のバックアップを担当する。君には作戦立案者の1人として参加してもらう」

 

ハイドレーヒ大将の説明と共にジークハルトはフリシュタイン大佐からタブレットを手渡された。

 

ジークハルトはそれを受け取るとある程度読み始めた。

 

中心部隊は第31FF特務兵団、デア・フルス・ソルー兵団で指揮官はネヴィー・クリース親衛隊大将。

 

「君には私の腹心のフリシュタインを付けよう。彼は今回の作戦に際して連絡将校兼保安副課長として上級大佐に昇進し君のサポートに回る」

 

「よろしくお願いします、シュタンデリス准将」

 

フリシュタイン大佐改めフリシュタイン上級大佐はジークハルトにそう告げた。

 

「3日後に戦略会議がある。君もフリシュタインと共に出席してもらおう、要件はこれだけだ」

 

「わかりました、では私も新たな新部隊の再編成がありますのでこれで」

 

ジークハルトは立ち上がり執務室を後にする。

 

暫く歩き人気のなくなった情報部の区画でジークハルトは人目も憚らずため息をついた。

 

「どうやら再びコルサントを離れることになりそうだ」

 

シス・エターナルの到来と共に戦場は再びジークハルトを呼び始めた。

 

 

 

 

 

 

-コルサント 総統府-

「まずはガレルでの勝利、おめでとうございます」

 

ヒェムナー長官は目の前のシス信者達に深々と頭を下げた。

 

部下の親衛隊将校らも同じように反応を示す。

 

「レジスタンスは今頃、大きく狼狽している頃でしょう。今こそあなた方の悲願を」

 

ヒェムナー長官は目の前のローブを着た者達に告げた。

 

長官の微笑みにはどこか憧れや信奉のようなものが含まれている。

 

ヒェムナー長官は熱心なシスや暗黒面の信者の一面があった。

 

彼の憧れはいつも過去のシスの領域や帝国、その聖遺物にありエストラン宙域の開発もその為だ。

 

失われたシス領域を現代に蘇らせる事が第三帝国の勝利だと信じて。

 

「タシュ顧問は随分と貴方のことを信任しておいででした。貴方ならば我らシス・エターナルの信奉者として迎え入れても良いと」

 

「あの方にそう言っていただけるとは……光栄の至です。私も励まねばなりませんな」

 

恍惚とした表情でヒェムナー長官はそう呟いた。

 

ユープ・タシュ顧問はダークサイド信者の組織であるアコライツ・オブ・ザ・ビヨンドの指導者を裏で務めていた。

 

元々タシュ顧問の部下としても働き彼とフォース哲学を語り合い親交も深かったヒェムナー長官はこの今亡き皇帝の顧問を非常に尊敬していた。

 

タシュ顧問も彼の思想には共感を示しアコライツ・オブ・ザ・ビヨンドのことを許しさえあれば話し仲間に引き入れる気でいた。

 

尤もそうする前にタシュ顧問は銀河の表舞台やヒェムナー長官の前から姿を消してしまったのだが。

 

「貴方のエストラン宙域の復興計画はこちらも承知しています。貴方は過去のシス卿や偉大な帝国に対して多大なる貢献をなされている。とても素晴らしいことです」

 

「そう言って頂けるとは……恐悦至極に存じます」

 

ヒェムナー長官は再び頭を下げた。

 

すると親衛隊将校の1人がシス・エターナルの代表団に尋ねた。

 

「一つよろしいでしょうか?」

 

「何か?」

 

シス信者の代表は発言を許可する。

 

許可を確認し周りの人目も憚らずこの親衛隊情報部所属のヴァルテ・シェーンベルク少佐はそのままシス信者達に尋ねた。

 

「エストラン宙域の国家弁務官区計画はまだ公には公開されておらず、極秘項目として情報は厳しく統制されていたはずですが」

 

あの計画は親衛隊情報部や保安局で厳しく管理していたはず。

 

それをつい最近姿を表し第三帝国に接触を図ってきた組織が知っているはずないのだ。

 

普通に考えればおかしなことで理由を考えれば浮かぶことはひとつ。

 

「教えてくれたのですよ、“()()()()()()()()()()()”」

 

シス信者はそう曖昧な言葉で濁しフードの奥から偽りをふんだんに含めた微笑を浮かべた。

 

シェーレンベルク少佐は別にフォースやらを疑っているわけでもなければ信じているわけでもなかった。

 

されど彼は反ジェダイ思想を持っているだけだ。

 

当然このシス信者の発言は“()()()()”を含んでいるとシェーレンベルク少佐は感じ取った。

 

「やがてはこの方々と共にエストランを、シスの領域を復興していくのだ。知られたところで問題はないだろう」

 

ヒェムナー長官はシェーレンベルク少佐を宥めるように間に入った。

 

これ以上の追及は無意味であるし下手に関係を崩したくないとシェーレンベルク少佐もそれ以上は何も聞かなかった。

 

「それで、現在の帝国指導者の到着はまだでしょうか?」

 

シス信者はヒェムナー長官に尋ねた。

 

「もう間も無く、何分にも総統閣下は多忙なものでして」

 

「このこれほど短期に新共和国を倒し今や銀河系の宗主国の指導者となりつつあるのですから多忙の程は承知していますよ。ではまず別件からは話をしてもよろしいでしょうか?」

 

「別件……とは、一体なんのことでしょうか?」

 

ヒェムナー長官は首を傾げる。

 

シス信者は包み隠さず彼らに告げた。

 

「我々の艦隊は一隻一隻はこの銀河最大の火力を誇っていても如何せん数が足りません。あなた方や全ての帝国の力になる為には数が少ないのです」

 

「艦隊増強の為に軍艦を譲渡せよと?」

 

ヒェムナー長官の予測にシス信者は首を振った。

 

「そうではありません。一つは我々の主力艦であるジストン級の生産ラインを確保する為に物資支援を提供してほしい事、そしてもう一つは……」

 

シス信者は間をあけて彼らに告げた。

 

この援助こそが本命であり今後のシス・エターナルの為に最も重要なことだ。

 

「カイバー・クリスタル産出の鉱山開発計画と“()()()()()()()()()()()()()()()”をお願いしたいのです」

 

 

 

 

 

 

 

ルークはR2と共に玉座の前に立っていた。

 

ルークが自発的に来たのではなくシス・エターナルの信者に呼ばれた為だ。

 

玉座ではその席の長が薄気味悪く笑っている。

 

「来てやったぞ、何度も言うが僕は暗黒面に落ちるつもりはない。僕は父と同じように使命を全うする」

 

玉座に向かってルークはそう吐き捨ていつでも戦闘出来るようにライトセーバーに手をかけた。

 

玉座の男は目を開き口元をさらにニヤリと開かせた。

 

「其方の隣のそのアストロメク、前にも見た事がある」

 

シディアスは玉座から枝のような人差し指をR2に向けた。

 

ルークはR2を庇うように一歩前に出る。

 

シディアスは思い出に耽るようにゆっくりと口を開き言葉を放った。

 

「しかし余が初めて見た時は其方とは違う主人がいた。そしてまた別の時には私の友人が主人であった……今度は其方か」

 

ルークはふとR2の方に目線を向ける。

 

この時のR2が何処か本当に物悲しそうな雰囲気を出していたのは恐らくルークの勘違いではないだろう。

 

思い出しているんだ、遠い昔を。

 

目の前の悪人が言う通りまだルークと出会う前の記憶を。

 

「そのアストロメクは“()()()()()”であるな。そしてこれから其方の前の主人と同じ運命を再び見ることになろうとは」

 

シディアスは言葉の後に性格の悪い笑みを浮かべた。

 

低い声音がゆっくりと周囲に溶け込み恐怖を伝染させる。

 

「エンドアの時と同じだ、僕は父の跡を辿らない」

 

ルークは初めてエクセゴルに来た時と同じく啖呵を切りライトセーバーを構えた。

 

光剣を出しその剣先をシディアスに向ける。

 

周りの衛兵は一斉に戦闘の準備体制に移行しルークを牽制した。

 

恐らくここでシディアスを倒してもルークは死ぬ。

 

流石にこの大軍団相手に1人で勝てるほどルークはフォースを使った戦闘慣れをしていなかった。

 

それでもやらなければならない。

 

未来のために、レジスタンスや友人、たった1人の“()()()()”。

 

シディアスは目の前の青年が自分の命を奪おうとしているのにも関わらず笑い声を止めなかった。

 

むしろその様子を見てさらに笑みを深めた様子だ。

 

最後の暗黒卿はしばらく笑い続けその黄色い眼をルークに向けた。

 

「最後のジェダイ・マスター、其方はジェダイ・マスターである前に“()()()()()()()()”だ。親族への愛着が深くそして絶対的な血の繋がりを持つ者…」

 

「それがどうした、今の僕に関係は……っ!」

 

その一瞬、ルークの手先が震えライトセーバーが少し揺れ動いた。

 

シス卿はその様子を微塵も見逃すことはなかった。

 

ルークの瞳に“()()”が映った瞬間動揺したことに対しシディアスは満足感と高揚感に包まれ笑みはまた深まる。

 

一方のルークは完全に硬直し瞳孔を開きライトセーバーを持つのがやっとだった。

 

R2も驚きを隠せていないことが雰囲気から分かる。

 

「どうして……どうしてここに……」

 

ルークは動揺を隠し切れずただひたすらに混乱していた。

 

その様子を見てシディアスは満足感を示すだけだ。

 

「余も驚きであったぞ、まさかスカイウォーカーは“2()()()()()()()”。そして“()()()()()()()()()()()”が生まれているとは。生き残ったジェダイは皆よく隠したものだ」

 

フフッとシディアスは笑みを零し動揺するルークに告げる。

 

「だが古きジェダイ達の努力はこれで無駄となった、奴らの遺物はこれで消えた。余は隠された真実とスカイウォーカーを手に入れた。其方が堕ちぬのなら“()()()()()()()()()”」

 

「やめろ…」

 

「さあジェダイ。其方に残された道は其方が降るか、もう1人のスカイウォーカーを身代わりとするか。どうする?」

 

ルークはライトセーバーの光剣を戻し膝から崩れ落ちた。

 

どうして彼がここにいるのだ、どうしてあの時助けられなかったのだ。

 

自責の念と困惑がルークのフォースの調和を崩し黒色に曇ったフォースの雲を呼び込む。

 

今玉座の間の近くにはシス信者が1人の幼子を抱えて立っていた。

 

幼子は今眠っているがやがて目を覚ますだろう。

 

ルークはこの子を知っている、ルークとこの子は血が繋がっている。

 

とても可愛らしい子で生まれてきた時は喜びが心の奥から込み上げてきたものだ。

 

彼も彼女も穏やかな表情を浮かべていた。

 

この子はルークだけでなく多くの人達の希望だった。

 

だが2年ほど前にこの子は“()()()()”。

 

みんなで探した、自分達の用いる者全てを使って。

 

一度はあと少しのところまで辿り着いていたはずだ。

 

ルークもハンも戦争の始まりに居なかったのはその為だった。

 

「其方にもはや時間はない、されど余の時間は永遠だ。さあ選べ、どちらにせよ余は“()()()()()()()()()()()()()()()()”」

 

シディアスは幼子に目を向ける。

 

ベン・ソロ、新たなスカイウォーカーはシス信者に抱えられている。

 

スカウィウォーカーの血統は、再び暗黒に包まれようとしていた。

 

 

 

つづく




Moin Moin !

私 だ

いよいよナチ帝国も新章に入り陰湿な暗黒面の話に入ります

陰湿で陰湿でとにかく暗くて時々パーッと(カイバークリスタルが)光が入ります

これが命の輝きちゃんですかね(小並感)

そいではまた次のナチ帝国で〜
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