第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「我が子よ、我が子よ。夜になったら眠りなさい。怖い怖い狼が出るぞ。我が子よ、我が子よ。布団の中へ隠れるように眠りなさい。怖い怖い狼は、お前を攫いにくるぞ。そうしなければ1人2人と、3人4人と霧の中へ消えてゆく。やがて誰も居なくなって、みんなみんな狼の子供になってしまうぞ。我が子よ、我が子よ。夜になったら眠りなさい。怖い怖い狼の手先とならぬうちに」
-未知領域の惑星に伝わる子守唄。狼とは恐らくファースト・オーダー、シス・エターナルのことでこの唄はファースト・オーダーのリザレクション計画の事を暗示していると考えられている-


レンディリ潜入

ジェルマンとジョーレンがバロスの崩壊を目撃したのはちょうど潜入中のレンディリの帝国軍総督府のモニターからだった。

 

シス・エターナル軍とレジスタンス軍の戦いがリアルタイムで流され丁度2人が目撃した時には既にバロスはスーパーレーザーの餌食となっていた。

 

スーパーレーザーの衝撃と動揺、仲間を失ったことへの怒りと悲しみ、様々な感情がジェルマンの中で湧き上がっていた。

 

ジョーレンも敵がスーパーレーザーを保有している事に大きな衝撃を受けていた。

 

少なくともこの銀河系であのスーパーレーザーを備えていたのは2つのデス・スターだけだったはずだ。

 

2人とも自らが来ている制服のことを思い出しつつなんとか感情を表に出さぬよう努力する。

 

今は潜入中だという事を今一度心に刻みジェルマンは小さな声で口を開いた。

 

「まさかスーパーレーザーなんてものを持ってたなんて……」

 

「一足遅かった……恐らくバロスの救援艦隊もバロスの駐留部隊も全滅だ…」

 

ジョーレンは悔しそうにジェルマンに言葉を返す。

 

ジェルマンも頷く事しか出来ず2人はモニターの側に群がる親衛隊や帝国軍の将兵を避けるようにその場を離れた。

 

なるべく人気のない通路を歩き会話を続ける。

 

「情報とは違いまだシス・エターナル側の高官も帝国軍側の高官も来ていないようだな」

 

「うん、今のうちにこのレンディリの情報を盗み出そうと思う。ここは帝国にとっても重要な拠点だ、シス・エターナルの事は分からなくても多くの情報が掴めるはずだ。それにノヴァン君のことも…」

 

2人のレンディリへの潜入任務の目的はこのレンディリの総督府に来ると言われているシス・エターナル側の人物と第三帝国の高官との接触の会話や情報を盗み出すことにあった。

 

また別の目標としてレンディリの情報センターの機密内容や今後の帝国の動向をチェックする必要があった。

 

帝国軍の進路や補給状態、高官の今後の動きが分かればレジスタンスとしては様々な対策が取れる。

 

補給部隊への襲撃や帝国軍本隊を待ち伏せて撃破、または高官の暗殺。

 

どれも第三帝国に多かれ少なかれダメージを与えられる。

 

特に今の第三帝国は以前の第一銀河帝国とは違い直接的な勢力基盤も少なく全体的な力が以前の帝国に比べて大きく劣っていた。

 

本来なら今の範囲まで軍を展開するのだってやっとの状態なはずだ。

 

第三帝国は半ば強制的な軍拡と徴兵などによる兵員増強によりかろうじて今の勢力圏を維持しているに過ぎない。

 

それが補給線を断たれたり主力部隊を撃滅されたり中枢の高官が暗殺されたりしたらかつての帝国以上にその影響は広がるだろう。

 

シス・エターナルの力があっても瓦解の道が見えてくる。

 

「ハックはどこからやるつもりだ。アストロメク用のソケットか?この格好じゃ目立つと思うが」

 

ジョーレンは袖を掴んでそう呟いた。

 

2人が着ているのは親衛隊の将校の制服であり階級章はそれぞれ少佐と大尉となっていた。

 

これは以前ナブーを陥落させた際に大量の捕虜から得たものであり軍帽の将校ディスクもポケットのコードシリンダーも偽造された架空の誰かのものに書き換え済みである。

 

これが帝国軍や親衛隊の技師官や作業員の制服だったらよかったのだがこの格好は将校のものだ。

 

佐官と尉官の将校が態々アストロメク用のソケットから端末を繋いでいたらそれは相当奇異な目で見られるだろう。

 

余計な会話も増えて潜入がバレる危険性が大幅に増える。

 

「だから将校らしい場所でハッキングをやろうと思う」

 

「将校らしい場所?一体どこ……ってまさか」

 

ジョーレンはそのまま曲がり角を曲がった瞬間に察し付いた。

 

そこはこの総督府の中央情報管理室、つまりレンディリの情報を一手に管理し統括する場所であった。

 

「おいおい……どうしてここなんだよ……もっと他にあるだろう……」

 

ジョーレンは頭を抱え完全に意気消沈していた。

 

「勝手知ったるレンディリの中央情報管理室だろ。まあ今は改装されてすっかり帝国スタイルだろうけど」

 

元々レンディリは新共和国領であったのでこの中央情報管理室もなんなら総督府も本来は新共和国の息のかかった場所だった。

 

ジェルマンもアカデミーでの最終試験の際にこのレンディリの中央情報管理室で試験を行ったものだ。

 

それこそジェルマンの言った通り今ではすっかり帝国のものだろうが。

 

「どうしてもここに入るのか…?」

 

「ああ、大尉と少佐ならいけるはずだ。さあ行こう!」

 

ジェルマンはジョーレンよりも先に中央情報管理室に向かった。

 

ジョーレンも後から渋々ついていく。

 

室内のドアの前には警備のストームトルーパーがE-11ブラスター・ライフルを装備した状態で2人立っていた。

 

ストームトルーパー達はジェルマンとジョーレンに声をかけ一旦止める。

 

「何用ですか?」

 

この中央情報管理室はそう気軽に入るべき場所ではない。

 

それ相応の理由と用事がなければこの警備のストームトルーパー達に追い返されてしまうだろう。

 

素早く最初に理由が出たのは嫌々ついてきたジョーレンの方だ。

 

「上官の命令で中央のデータバンクにアクセスして確認しなければならないことがある。それも重要な新共和国時代の情報をだ。安全性を考慮しこの管理室を選んだ」

 

「解りました、一応確認の為に御2人のコードシリンダーを確認させてください。既に将校ディスクは確認済みです」

 

「分かった」

 

2人は2本のコードシリンダーをポケットから差し出しストームトルーパーに渡した。

 

2人のトルーパーはソケットにコードシリンダーを差し込むとセンサーがOKのサインを出した。

 

「問題ありません。エイク・ペイトリー少佐、クイエス・ヴァント大尉、どうぞ中へ」

 

ストームトルーパーに導かれ2人は難なく中央情報管理室に入った。

 

中には数人の情報部将校がそれぞれモニターの前に座っており警備のストームトルーパーが室内の角に4人立っていた。

 

真ん中に座るこの情報管理室の責任者と思わしき人物が2人に声をかけた。

 

「事情はこちらで確認している。6番モニターを使ってくれ、そこなら当分空きがある」

 

「分かりました、えっと…」

 

「中央情報管理室長のブラントン大佐だ」

 

「御気遣いありがとうございます大佐」

 

帝国情報部の制服を着ているブラントン大佐はジョーレンの御礼に小さく頭を下げまたモニターに目線を集中させた。

 

ジェルマンも同じように「ありがとうございます」と言葉を送り6番のモニターの前に座った。

 

「まずは新共和国時代の……」

 

口ではそう言っているがジェルマンは既に6番のモニターを高速で偽造し始めた。

 

ジョーレンはあくまで「新共和国時代の情報の確認」という理由を述べた。

 

しかし2人が実際に開くのは今後を含めた第三帝国の機密情報である為もしかすると室長のブラントン大佐に疑われてしまうかもしれない。

 

偽造が成功しジェルマンは密かにソケットにメモリーを差し込み情報を移し始めた。

 

「ここか……」

 

ジェルマンは機密部分のアクセスコードを入力しメモリーへコピーを行うと共に閲覧も開始した。

 

機密情報にはやはりレンディリの事が多く記載されておりレンディリ宙域艦隊の進路や補給状況、宙域内の駐留軍の状態や情報、またレンディリ・スタードライブ社の新型ドレッドノート級開発計画などもあった。

 

無論機密情報はそれだけには留まらない。

 

コルサントやコア・ワールドの情報、そして第三帝国の国防軍や親衛隊などの情報も多く入っていた。

 

中には“()()()()()()()()()()()”なども…。

 

驚愕と恐怖を覚えながらジェルマンとジョーレンは確認して行った。

 

「これは……想像以上だ……」

 

「うん……物理的なダメージだけではなく情報戦などでも圧倒的な役に立つ……」

 

特に現在帝国に服属中の惑星政府の現在の立場を揺るがせるものばかりだ。

 

最もそれと同時に大きな衝撃を受けたものもあった。

 

特にこの“ホロコースト”と呼ばれるものは。

 

「ホロコースト……一体なんだこれは……?なんの計画なんだ……?」

 

ジョーレンはその名を口にしひたすらに疑問を浮かべた。

 

別に文字が読めないとか内容が深く書かれていないからとかそういう訳ではない。

 

むしろ深く書かれ過ぎている。

 

この機密情報の中にあった統計を記載した報告書はかなり正確に事細かく詳細が記されていた。

 

だからこそ余計に分からないのだ、この計画の意味が。

 

「ホロコースト……エイリアン種族排除法及び代理総統の信念、平和への最終的解決に基づき実行されるエイリアン種または近人間種、ハーフの“()()()()”…」

 

この文は基本的な説明から始まり現在の段階での成果を報告書として記している。

 

「我がロラク収容所では獲得したハット・スペース内のエイリアン種族、近人間種族への労働を用いた絶滅、新兵器実験などを用いた絶滅を行なっています……今月の成果は記載された統計の通りです…」

 

2人は文末の統計の数字を見つめそして絶句した。

 

あまりにも数の桁が、“()()()()”。

 

もしこの数字の1という数がエイリアン種族や近人間であった場合それはあまりにも膨大な数の人がこのホロコーストを実行中の収容所の中で虐殺されているということだ。

 

一体何百万、何千万人、何億、何十億、何百億の命が犠牲となったか、もうジェルマンとジョーレンでは計り知れない。

 

今もなお夥しいほどの命が帝国領に幾つも存在する収容所の中で消えている。

 

そう考えると背筋がゾクッとして途轍もない嫌悪感に見舞われた。

 

第三帝国は倒さなければいけない敵でエイリアン種族や捕虜に対して非人道的な行いをしていることは無論知っていた。

 

しかしここまでだとは誰も予想していないし考えてすらいなかった。

 

過去の第一銀河帝国のハイ=ヒューマン主義扇動の時だってここまではやらなかった。

 

第三帝国は完全に常軌を逸脱している。

 

「こいつは必ず写すぞ」

 

「分かってる…」

 

データを移したメモリーをポケットにしまうとジェルマンはモニターの画面を変えた。

 

建前として利用したレンディリが新共和国時代に残されたデータを見るために。

 

「記録……レンディリ新共和国アカデミー……あった…!」

 

ジェルマンはレンディリの新共和国アカデミーの情報が書かれた記録資料を発見し表示した。

 

どうやらレンディリ制圧直後にアディロン・ラングという帝国地上軍所属の帝国保安局員の少佐が調査した報告書のようだ。

 

ラング少佐によれば既にレンディリが親帝国派によって制圧された時点で新共和国アカデミーの生徒達は全員キャッシークか他の新共和国側の惑星に疎開していたらしい。

 

少佐が率いる調査を目的にした帝国保安局員達が旧アカデミーのビルを隈無く探したらしいが生徒は当然のことデータやビル内の物品など殆どが消え去っていた。

 

まるで最初からそんなものなどなかったかのようにとラング少佐は報告書に記録していた。

 

しかし手がかりはあったようだ。

 

アカデミー・ビルのデータも記録も全て抹消したが宇宙港や他の官舎の記録はまだ残っていた。

 

特に宇宙港ではレンディリから疎開中のアカデミーの生徒達の事が多く記されていた。

 

うち一つはジェルマンとジョーレンにとってとても目を引くものだ。

 

レンディリから輸送艦に乗り疎開を始めた生徒達の大半は新共和国と第三帝国の戦闘が決着する前に疎開先へ辿り着いていた。

 

だが輸送艦の何隻かは疎開先に“()()()()()()()”というのだ。

 

それがどのクラスの誰を乗せた輸送艦でどこへ向かう途中で行方を晦ましたのか、また何者に襲われ何が原因で輸送艦が消えたのかラング少佐達の調査ではそれ以上分からない。

 

それに調べる義理もなく行方不明になったという結果のみ分かれば現状それで良かった。

 

しかしラング少佐は最後にあることを付け加えている。

 

それも数日前に加筆した真新しいものだ。

 

最後には近年の状況を精査してのラング少佐の輸送艦消失の考察が書かれている。

 

新共和国アカデミーの輸送艦だけでなくここ数年銀河系から10代以下の青少年が突如として行方不明となる事例が多発している。

 

行方不明が増加したのは大凡銀河内戦末期のこと、そして突如行方不明の事例はピタリと消失した。

 

それも“()()()()()()()()()()()()()()”。

 

あまりにもそのタイミングが一致する為何らかのか因果関係を疑わざるを得ない。

 

だからこそラング少佐は最後にこう書き残した。

 

この新共和国アカデミーの輸送艦消失もシス・エターナルがなんらかの形で関与しているのではないかと。

 

その存在を示すかのように室長のブラントン大佐にある報告が舞い込んできた。

 

「大佐、間も無くシス・エターナルの高官が到着します」

 

「ああ、もうすぐか。ではそろそろ行くとしよう」

 

2人は近くの席に座る将校の報告を聞いてビクッとした。

 

今正にこのシス・エターナルという単語を読んだばかりだかりだからだ。

 

しかも2人の任務の目的はシス・エターナルに対する諜報だ。

 

ようやく2人が目標とする相手が現れた。

 

「私は少し室内を離れるが2人はどうする?」

 

ブラントン大佐はジェルマンとジョーレンに気を遣って尋ねた。

 

2人は席を立ち「我々も目的の資料は確認しましたのでこれで失礼します」と中央情報管理室を離れる口実とした。

 

「そうか、それではな」

 

ブラントン大佐に敬礼を返しジェルマンとジョーレンは元来たドアから外に出た。

 

暫く通路を歩きジョーレンはコムリンクを起動する。

 

停泊中のUウィングを介してディカーの司令部に連絡を入れる為だ。

 

「こちらシールズ、ヒドラは巣に入った。作戦を実行する」

 

ようやく本題の任務が始まる、シス・エターナルに対する初めての任務が。

 

 

 

 

 

これより少し前ジークハルトと副官のヴァリンヘルト大尉、フリシュタイン上級大佐がレンディリの軌道上の造船所区画にいた。

 

彼らはナブー奪還作戦に特殊部隊や精鋭部隊を運搬する艦艇を選んでいた。

 

特にレンディリにはレンディリ・スタードライブ社があり艦艇の建造技術も高い。

 

クワットやコレリアには少々知名度で見劣りするがドレッドノート級重クルーザーや他の共同開発製品などで確かなものがある。

 

特にドレッドノート級のような艦艇は本作戦においてうってつけだ。

 

既にジークハルトはドレッドノート級の何隻かを作戦に投入しようと考えていた。

 

「サイナーの方ではステルス・コルベットや“キャリオン・スパイク”のステルス技術を投入した艦艇が導入されるそうです」

 

ヴァリンヘルト大尉は建造中の何隻かのドレッドノート級を眺めながらそう報告した。

 

クローン戦争の時代より存在していたクローキング装置を兼ね備えたステルス・コルベット。

 

戦争中はクリストフシスの分離主義艦隊を突破し補給を成功させ帝国時代の黎明期には“キャリオン・スパイク”としてグランドモフターキンの足となり活躍した。

 

そして今回は皇帝の生まれ故郷の奪還作戦に投入されることになる。

 

「となると乗船するのはシャドウかストーム・コマンドーか、まあおいおい決まっていくだろうな」

 

「現物は殆ど目にしたことのないですがまさかこの戦いに投入されるとは」

 

「ああ、少しやり過ぎな気もするがナブーは帝国の精神中枢を成す惑星の一つだ。全力でやらなければ」

 

ヴァリンヘルト大尉の率直な感想にジークハルトは言葉を選んでそう答えた。

 

本当は親衛隊を投入してまで守り切れなかったことを悔しがり、というのも少なからずあるはずだ。

 

あんな負け方すれば余計に。

 

ナブー失陥の責任はシス・エターナルの到来で殆ど有耶無耶となったが少なからず覚えている輩は多いはずだ。

 

この隙にナブーを奪還し親衛隊の責任を生家で帳消しにしようと画策しているのであろう。

 

「それに加えてナブーは戦略的要所です。ハイパースペース・レーンの上に存在し、南アウター・リムとの距離も近い」

 

話に入ってきたフリシュタイン上級大佐は更に付け加えた。

 

だが上級大佐の言う通りナブーは戦略的にも重要な場所であることに間違いはない。

 

ミッド・リムとアウター・リムの境に位置し比較的名の知れた惑星である。

 

エナーク・ランなどのハイパースペースの上に位置しマラステアやエリアドゥほどではないが橋頭堡としても十分な使い勝手がある。

 

しかしフリシュタイン上級大佐はもう一つのナブーの価値を挙げた。

 

「それに何よりナブーは我々親衛隊が影響力を強く出せる。クリース大将らが支配基盤を再び確立すればですが。そうすればナブーを介して我々は大セスウェナや周辺に“()()()()()()()()()”」

 

「見張り…?一体何のことでしょうか」

 

フリシュタイン上級大佐の発言を完全には理解し切れなかったヴァリンヘルト大尉が率直に尋ねた。

 

ジークハルトも幾つか気になる点はあったがそれ以上に気になったのは周辺の中に現状味方であり第三帝国領であるはずの大セスウェナの単語が入っていたことだ。

 

確かに大セスウェナはレジスタンス軍が存在するとされる領域への派兵に消極的で本国からの指令を反対することも多い。

 

されど第三帝国の国益を大きく損ねることはせずむしろロマイトや帝国の橋頭堡となることで大きく貢献してきたはずだ。

 

「南アウター・リムには未だ抵抗勢力が多く情勢不安の場所も多い。そこでナブーを親衛隊及びFFISO(帝国情報保安本部)の部隊を置くことでいつでも不測の事態に対処出来る」

 

「サラスト戦は南アウター・リムから親衛隊を撤退させる為の一戦でしたがえらい方向転換ですね。再び南アウター・リムに親衛隊を駐屯させるなど」

 

ジークハルトは例題を持ち上げて何処か隠すように皮肉った。

 

確かに南アウター・リムから親衛隊は撤退したがマラステアの駐留軍や南アウター・リムには多くの国防軍が派遣されている。

 

旧大セスウェナ連邦軍の将兵だって現状まだ帝国側のはずだ。

 

結局同じ第三帝国の仲間すら信用していないという事ではないのか。

 

「あの時とは状況が一変しました。現状北部のレジスタンス軍はシス・エターナルとの戦闘で当分我々には手を出せずチス・アセンダンシーとの関係も比較的良好です。北部の守りは現状のままでいいと判断されました」

 

「それで不安の残る南部に再び部隊や保安局と情報部の目を展開しようというのですね。あちらも大セスウェナやマラステアの国防軍がいるのですが」

 

「国防軍だけでは不安です、それに大セスウェナ連邦は未だ独自の体制を維持している。真っ先に第三帝国に加わったとはいえ警戒は必要です」

 

疑わしき者は罰せよ、親衛隊保安局のモットーであり彼らの行動原理だ。

 

彼らにとっては大セスウェナはもう十分罰する、もしくは監視するに値する組織ということだろう。

 

尤も相手が相手なので街のチンピラを捕まえるようには行かないだろうが。

 

「それに大セスウェナは我々親衛隊の駐屯とエイリアン種族の逮捕状を跳ね除けました。それだけで十分疑うに値しますよ」

 

やはり主たる理由はそれか、ジークハルトは制帽を左手で持ちふと眺めながらそう考えた。

 

反エイリアン主義はとハイ=ヒューマン主義の増長は初期の第三帝国で国民意識を統合させここまでの勝利に大きく役立てた。

 

「帝国を崩壊に導いたのはスパイとなった多くのエイリアン達が謀略を行い帝国同士を戦わせ帝国の栄光を背後から略奪したのだ」と代理総統も何度か演説を行なっていた。

 

結果的に反エイリアン主義はエイリアン種族排除法などを成立させ今日までそれは続いている。

 

確かに明確な敵を作ることで人の意識はひとつに纏めやすくなる。

 

だがジークハルトの心の底では嫌悪感を抱いていた。

 

確かに初期反乱運動の時代から多くのエイリアン種族が積極的に活動に関わっていたしジークハルトの母もエイリアン種族のテロによって殺された。

 

だからジークハルトだって昔はエイリアン種族や近人間種族が嫌いだったし嫌悪していた。

 

それでもジークハルトの母を殺したようなエイリアン種族が全てではなかった。

 

中にはいい奴だっていたしジークハルトが会った中ではハイ=ヒューマン主義が強い中でも帝国を支持するエイリアン種族の人だっていた。

 

それに人間種だって全員が全員帝国を支持し真っ当に生きているわけではない。

 

結局姿が違うだけでそこに大した壁はなかったのだ。

 

「ドレッドノート級は主に特殊部隊の次にナブー内に侵入する突撃大隊と海兵大隊(Seebataillon)を乗せる。彼らが敵陣地と首都の一区画を制圧してくれれば我々の上陸も楽になる」

 

ついでに惑星内で戦闘してくれれば制空権奪取に役立つ。

 

ジークハルトは話を切り替え目の前に佇む停泊中のドレッドノート級に目線を移した。

 

この艦はインペリアル級やプロカーセイター級よりは小さいがかなりタフで火力も高い。

 

海兵隊員や突撃大隊の兵員の支援でも十分な力を発揮するだろう。

 

「どうせなら我々もドレッドノート級で先に地上に降りて司令部を設置しようか」

 

「えっ!?乗るんですか!?ドレッドノート級に!?」

 

ヴァリンヘルト大尉はジークハルトの独り言に異様なほど驚いた。

 

あまりに大きな声だったのでジークハルトと話を聞いていたフリシュタイン上級大佐は思わずヴァリンヘルト大尉の方に目を向けた。

 

彼は口を開けて大きく驚いている。

 

大尉がここまで驚くことは今まで殆どなかった。

 

前線でも平然と勇気を持って敵と戦っていた彼がここまで驚くのは何か理由があるのか。

 

「どうした大尉、何をそんなに驚いているんだ?」

 

ジークハルトの問いにヴァリンヘルト大尉はオドオドしながら逆に尋ねた。

 

「えっとそのですね准将……我々もドレッドノート級に乗るんですか…?」

 

「…?まあ状況によってはな。地上に早期に臨時司令部が設立出来るようならそちらの方がいい」

 

ジークハルトが答えるとヴァリンヘルト大尉は見るからに嫌そうな顔を浮かべた。

 

「どうしたんだ大尉、そんなにあの艦に乗りたくないのか…?」

 

ジークハルトは困惑した顔でヴァリンヘルト大尉に尋ねフリシュタイン上級大佐は横で怪訝な表情を浮かべていた。

 

ヴァリンヘルト大尉は恐る恐る唐突に理由を話し始めた。

 

「……准将は、“()()()()()”のことを知っていますか……?」

 

大尉から発せられたその単語を聞いた瞬間ジークハルトとフリシュタイン上級大佐は顔を見合わせなんとなく納得した。

 

そういえばあれはドレッドノート級と大きな関わりが、というよりドレッドノート級で構成された艦隊だったな。

 

ジークハルトは思わず苦笑を浮かべた。

 

「ああもちろん知っている。共和国時代に幾度となく行われてきた共和国の再軍備の一例、二百隻近いドレッドノート級で構成された艦隊で共和国の未来を期待されていたが処女航海中に謎のウイルスに罹り乗組員は全員病死、二百隻のドレッドノート級は全てどこかへハイパースペースへジャンプアウトしそのまま30年近く経った今でも艦隊の消息は不明……有名な話だな」

 

「はい……そしてアカデミーでその後……」

 

「ああ、消えたカタナ艦隊の呪いがその後全てのドレッドノート級に宿っていてドレッドノート級に配属された将兵は必ず呪いに罹り酷い目に遭うっていうアカデミーの噂話だろう?私の時代からあるぞそれ」

 

「えっ!?准将もご存知なんですか!?」

 

ヴァリンヘルト大尉は余計驚いた表情でまた尋ねてきた。

 

ジークハルトがアカデミーでこの噂を聞いたのは確か上級生の候補生達からだった。

 

なのでカタナ艦隊の噂話はもっと前から囁かれているだろう。

 

フリシュタイン上級大佐も隣で「私も聞いたことがありますね」と呟いていた。

 

「まあ尤も、その話をしていた候補生は次の日にはどこかへ消えていましたが」

 

おっと、色んな意味でまた別に怖い話だった。

 

まあともかくここまで広く噂されているということは逆に真実ではなく代々受け継がれる与太話なのだろう。

 

もし本当なら帝国の体質的により大規模に情報統制がなされているはずだ。

 

フリシュタイン上級大佐の例だけでなくジークハルトの世代の上級生だってきっと消えていただろう。

 

「それに、もし本当なら今頃ドレッドノート級乗りはみんな早死にするか沈んでもっと大きな問題になってるだろうし帝国も多分使わなくなっている。そうでないということならカタナ艦隊の亡霊など単なる噂話に過ぎない」

 

「ほっ本当ですか…?」

 

「そうでもなきゃ、私の代から大尉の代まで語り継がれてないはずだ。ドレッドノート級の性能を信じろ」

 

大尉の方に手を当て優しく諭した。

 

ヴァリンヘルト大尉はかなり不機嫌な様子のまま渋々納得を示していた。

 

しかしカタナ艦隊か、アカデミー時代に授業で習った程度でこんな所で聞く事になるとは。

 

遠い昔の出来事だがジークハルトは思わず懐かしさを覚えてしまった。

 

すると彼らの目の前のビューポートに一隻のスター・デストロイヤーがジャンプアウトした。

 

形状はインペリアル級と殆ど同じだが船体の赤いラインと船体下部の大型砲塔が特徴的な際だ。

 

ジークハルトはあの艦がなんとなく第三帝国のスター・デストロイヤーとは違うことを察知していた。

 

直後造船所の放送が全体に流れる。

 

『シス・エターナル艦到着。各将校は開式30分前にはレンディリ総督府に到着されたし』

 

「シス・エターナル……となるとあれが報告書で見たジストン級スター・デストロイヤーか」

 

ジークハルトはビューポートの先に見えるスター・デストロイヤーを眺めながら呟いた。

 

隣でフリシュタイン上級大佐は「今日はシス・エターナル側の使者がレンディリに来る日でしたね」と言っていた。

 

「一体、我々に何を告げに来たんでしょうか。態々コルサントではなくレンディリに会合場所を選んで」

 

ヴァリンヘルト大尉は疑問を口にしたがその問いに答えられる者は誰1人存在しなかった。

 

様々なジークハルト達でさえ知り得ない情報を知り尽くしているフリシュタイン上級大佐さえもだ。

 

ジークハルトはふと自嘲的に「我々のことを信用していないのかもな」と問いに答える。

 

だがシス・エターナルの信用云々はこの際関係ない。

 

連中の存在は銀河を大きく変える、それも第三帝国の良い方にだ。

 

せいぜい利用するしかない、彼らの正体が分からないうちは。

 

シス・エターナルが味方で居続ける限りその恩恵は必ず第三帝国の為になる。

 

この複雑怪奇な銀河情勢、そうでもしなければ生き残れない。

 

 

 

 

 

 

-大セスウェナ領域 セスウェナ宙域 エリアドゥ星系 惑星エリアドゥ エリアドゥ宇宙軍港-

宇宙軍港に停泊していた多くの艦船はその半数近くが出撃し今や守備隊と出撃を控えた“エグゼキュートリクス”麾下の本隊のみとなっていた。

 

エルデストが乗り込むアリージャンス級“オルタネート”らの艦隊は先に出撃しており既に準備は万全だ。

 

仮に早く“()”に食い付きレジスタンス艦隊が動きを見せ始めたとしても十分対処出来る状況だ。

 

尤もそうなるとヘルムートが考えていたターキン家の頭領がセスウェナを守ったという構図が崩れてしまうのだが。

 

ヘルムートは出撃の為に自身の旗艦であり大伯父のスター・デストロイヤーであった“エグゼキュートリクス”に今乗り込もうとしていた。

 

「ザーラ司令官と“ターキンズ・ウィル”の予備隊も配置についています。ロス提督の“ゴライアス”とバーク提督の“ヴィクトラム”の艦隊も同様にです」

 

彼の横を歩くセスウェナの代理司令官となったモッティ提督がそう報告した。

 

「コレリアン・トレード・スパインから進軍中の国防軍とマラステア派遣軍の親衛隊機動部隊の状況は」

 

彼らこそがレジスタンスとその奥に潜む新分離主義連合を巣穴から引き摺り出す為の“()”であり撃鉄のような役割を果たす。

 

国防軍はコレリアン・トレード・スパインを通ってアノート宙域と連合軍の残存領域を上から圧を掛ける。

 

それと同じ頃に大セスウェナ軍も行動を起こすつもりだ。

 

小艦隊を率いるトレークスがハイパースペースからギリギリまでアノート宙域まで接近しレジスタンス軍がアノートから出てくるのを“待つ”。

 

恐らく敵艦隊は国防軍のことも含めトレークスの小艦隊に食い付くだろう。

 

敵艦隊に打撃を与えつつトレークス小艦隊はドーラまでレジスタンス艦隊を引き付け最終的に本隊で叩く。

 

更にこの気に乗じて予備隊や本隊艦隊を動員しドーラを有するヴィデンダ宙域と隣接する2つの宙域の支配権を万全として当面の間はレジスタンスをアノート宙域に閉じ込め、名目上は侵攻の足がかりを建設する予定だ。

 

あそこはまだレジスタンスや旧新共和国の影響が強い。

 

「予定通り明後日にはレジスタンス艦隊と接触すると思われます。既に親衛隊の第336機動部隊は彼らが宣告していた領域に駐留し待機しているようですが」

 

「そうか……それで、アデルハードの艦隊はどうだ…?」

 

この戦いで国防軍の次に重要となってくるのはアデルハード総督の残存勢力であった。

 

このイレギュラーであり第三帝国、アノートのレジスタンス軍そして大セスウェナ全てに敵対する狂犬の存在が重要だった。

 

レジスタンス艦隊の撃破とアノート宙域の奪還を狙っている彼らは間違いなくレジスタンス軍を撃破する好機だとして艦隊の総力を上げて襲撃しようとするだろう。

 

恐らくレジスタンス軍はアデルハード艦隊を追撃しそのままアデルハード総督を今度こそ仕留めようとするはずだ。

 

そこへ来るのがトレークスの小艦隊だ。

 

建前上宙域内を広範囲パトロール中というトレークス小艦隊はそのままレジスタンス軍の侵入を発見し攻撃に加わる。

 

当然数の上で恐らくトレークス小艦隊は不利なのでどんどん奥地へと後退し引き寄せた所を待っていた本隊で叩く。

 

この作戦で重要なのはレジスタンス艦隊を如何にアノート宙域から引き摺り出し我々と戦わせるかに掛かっている。

 

レジスタンス軍が戦うと決めアノート宙域から一歩でも足を踏み出した瞬間レジスタンス軍の敗北は決まるのだ。

 

国防軍との戦闘を控え更にアデルハード総督との戦闘も行わなければいけないレジスタンスは全力を出せるはずもなく距離的に遠い新分離主義連合とてそれほど多くの増援を出すことは不可能だろう。

 

有意な状況で確実に勝つことがこの戦いで大セスウェナにとっては最も重要となってくる。

 

「スパイらの情報によればトゴミンダの衛星に潜んでいるらしく動きは何もありません。ただ同様にスパイから流した情報で我々の動きはある程度察知しているでしょうから恐らく食い付いてはくるでしょう」

 

「そこは出たとこ勝負という訳だな。まあいい、舞台は十分揃ってる」

 

「それと…これはまだ不確定な情報なのですが」

 

前置きと共にモッティ提督はヘルムートに耳打ちをした。

 

彼の声は他の誰かに聞かれぬようとても小さかったが同時に聞き取りやすくもあった。

 

その重要な情報を受け取ったヘルムートは制帽を大きく被り目線を落とす。

 

「…分かった、留意しておこう。それでは、エリアドゥとセスウェナの守備を頼んだぞ」

 

ヘルムートの目の前の儀仗兵達が儀仗用ブラスター・ライフルを構えヘルムートを出迎える。

 

ちょうど“エグゼキュートリクス”の上級将校用のハッチだ。

 

背後ではモッティ提督が「閣下、お気をつけて!」と敬礼している。

 

ヘルムートも微笑みかけ敬礼を返し“エグゼキュートリクス”に乗り込んだ。

 

ハッチが閉鎖されヘルムートは早速“エグゼキュートリクス”と艦隊の幕僚将校らに囲まれた。

 

「お待ちしておりました閣下、ブリッジまでどうぞ」

 

艦隊幕僚将校のリン・ジェイ司令官はヘルムートにそう告げた。

 

どうやら彼女も聞いた話によれば大伯父と共にバーチ・テラーの反乱に関わっていたらしい。

 

かつてはジオノーシスへの補給地点であるランパート・ステーションに配置されていたようだが時を経て大セスウェナ連邦軍の一員となった。

 

ヘルムートはブリッジに向かうまでに多くのことをジェイ司令官や他の将校から聞いた。

 

各部隊の詳細な状態や艦隊の状況、“エグゼキュートリクス”の様子など様々だ。

 

基本どの報告も作戦に支障をきたすことはなくヘルムートはひとまず安心した。

 

「ナブー方面ですがあちらはマラステアの監視下にある為特にこれといった動きはありません」

 

ジェイ司令官は一通りの報告を終えてタブレットを仕舞った。

 

しかし完全に話すことがなくなったわけではない。

 

別の意味で重要な事をヘルムートには話さなければならなかった。

 

「…それと“()()()()()()()()”が既にブリッジにお越しです。このままではケッセルの方々を連れて戦場へ向かうことになりますが」

 

ジェイ司令官はどこか困ったようにその事をブリッジに上がる途中のエレベーターの中で報告した。

 

ヘルムートも苦笑を浮かべ「問題ない、どうせ覚悟のキマった連中だ」と返した。

 

「それより心配なのはケッセル艦隊だ。この“エグゼキュートリクス”に乗っている限りは命の保障はあるが他は違う。最悪彼らは戦場に巻き込まれるし我々の動き次第によっては彼らを予備隊に組み込む可能性もある」

 

「一応インペリアル級一隻と護衛艦のヴィクトリー級が二隻付いているようですが」

 

形式上は三隻のスター・デストロイヤー、視察としては十分ではある。

 

尤も、どの程度戦場が激化するか分からない為十分かどうかの完璧な判断を下すのは難しいところではあるが。

 

「そうか、なるべく離れたところにいろとだけ伝えておいてくれ。我々はともかくレジスタンスとアデルハード総督なら撃ちかねない。親衛隊もだが」

 

そうこうしているとエレベーターがブリッジの階層に着き、全員が降りた。

 

ブリッジに上がると早速ヘルムートは多くの将校から敬礼を受けた。

 

「閣下、“エグゼキュートリクス”はいつでも出港できる体制を整えております」

 

一歩前に出て敬礼した“エグゼキュートリクス”の艦長であるヒンデイン・ダック艦長はヘルムートに早速報告した。

 

宇宙軍港に停泊している主力艦から護衛艦までの全艦艇、“エグゼキュートリクス”同様いつでも出撃出来る状態だ。

 

後はヘルムートの出撃の一言だけだ。

 

「さあグランドモフターキン、早く出撃いたしましょう!」

 

ダック艦長の後ろにはさも当然のように場違いな格好をしたケッセルの御令嬢がいた。

 

どうやらブリッジの乗組員はみんな慣れてしまったようで苦悶やら苦笑の色はひとつもなく普通に任務についていた。

 

ケッセルとは銀河内戦終結直後から多少の関わりを持っていた。

 

エリアドゥのロマイトを売り渡す代わりにケッセルのコアクシウムやケソリン燃料を受け取ったりと貿易を行なっていた。

 

第三帝国の台頭し大セスウェナが第三帝国の下に着いた後もこの緩やかな関係は続いている。

 

その為ヘルムートらはケッセルの主人であるクラリッサや他の面々とも面識があり彼女の奇行にも慣れていた。

 

故にヘルムートも気にせず何点か尋ねる。

 

「本当に、このままドーラに直行してよろしいか?尤もこの“エグゼキュートリクス”にいる限り命の保障はなされているが」

 

「はい構いませんわ。私達も半ばその為に来たのですから」

 

クラリッサは微笑を浮かべそう断りを入れた。

 

ヘルムートは隣の付き人のような少年の方に目を向ける。

 

一見すればただの少年だが彼の下の名前を聞けばきっと誰しもが驚愕するだろう。

 

「君はどうする、マルス・ヒルデンロード」

 

「私もこのまま行きますよ。それが私の使命ですから」

 

その返答はクラリッサは何処か喜んでいなかったが取り敢えず意思は確認出来た。

 

この無口に近い少年はまだ16、17歳でヘルムートとは2歳差の違いしかない。

 

同じまだ若い、いや周りの人々からすれば若過ぎる2人だ。

 

ヘルムートはその若さながら重荷を背負い、マルスはその若さながら全てを失いファースト・オーダーのスパイとして教育された。

 

ヘルムートとマルスはどこか容姿も似ている気がするとヘルムート自身は思っていた。

 

同じような白髪に近い銀髪、ヘルムートの方が少し白み掛かっているが殆ど変わりはない。

 

瞳の色は違えど兄弟と言っても誰も疑わないほどだ。

 

マルスは大昔“()”を見たと言っていた。

 

ある日の夜、彼が眠りの中でその夢と接触し1人の人間のような何かが現れマルスに近づいた。

 

それが男だったのか女だったのかは分からなかったそうだがその人間のような何かがマルスの方に触れた時眩い光に包まれ夢から覚めた。

 

鏡を見てみればマルスの髪は銀髪へと変貌し今の彼の姿になった。

 

ヘルムートはその現象に大きな既視感を覚えた。

 

彼も同じ夢を見たのだ、4年前に。

 

大セスウェナの指導者に祭り上げられ始めての戦闘で不安でいっぱいだった夜の事。

 

あの日見た夢でマルスとほぼ同じような出来事が起こりかつては大伯父のウィルハフやヘルムートの父と同じような色だった髪の毛が銀髪へと変貌していた。

 

この不可解な夢が遠く離れた、しかも多くの時間を隔てで別の人間が同じ夢を見るなど何かの奇跡かそれこそ神からの啓示と言わざるを得ない。

 

我々は恐らく何かを求められているのだ。

 

誰かは知らぬ者から何かを強く求められている。

 

それは使命かもしれないし将又破滅の啓示かも知れない。

 

ヘルムートやマルスにその何かがに何を求めているのか分からないがやる事は一つだ。

 

自らの意志を貫き自らの正しいと信じた選択を行うだけ。

 

使命の内容が分からない以上自分の道を行くしかないのだ。

 

その選択の一つが今下される。

 

「艦長、“エグゼキュートリクス”を出港させろ。我々はこの大セスウェナを守る為に出撃する。艦隊も我が旗艦に続け。エリアドゥから我々の秩序を広げるのだ!」

 

エリアドゥからインペリアル級“エグゼキュートリクス”と麾下艦隊が出撃しハイパースペースへジャンプする。

 

彼らが目指すのは戦場であり前線である。

 

若きターキンと若き“()()()()()()()”の遺児を乗せて。

 

彼らは戦場へと突き進む。

 

 

 

 

 

 

-第三帝国領 コルスカ宙域 惑星コルサント 帝国議会地区 帝国議会ビル-

かつてはこの地は元老院地区だとか連邦管区などと呼ばれていた。

 

それは第一銀河帝国の時代も殆ど変わらなかっただろうが第三帝国時代は大きく変化した。

 

まず元老院は消失し代わりに帝国統治評議会が、そして今ではCOMPNOR委員やモフなどの帝国議会(Reichstag)がその椅子に座っている。

 

その為この地区も帝国議会地区(Reichstagdistrikt)帝国議会管区( Reichstag Bezirk)という名称に変わった。

 

そして今日この帝国議会、ライヒスタークには多くの議員が集まりある議題を巡って珍しく意見が紛糾していた。

 

それはシス・エターナルから持ち込まれたとある兵器の原材料の製造、つまるところ人工的に生成されたカイバー・クリスタルの製造を依頼された。

 

本来カイバー・クリスタルというのは一部の惑星から自然的に発掘される鉱石であり人工的に製造するのはほぼ不可能だ。

 

しかしシス・エターナルによれば特殊な技法を使ってカイバー・クリスタルを製造することが出来るらしい。

 

尤もその製造法は教えてくれなかったが。

 

第三帝国に頼まれたのはカイバー・クリスタル製造工場を設立する為の工場の譲渡又は工場の建設だった。

 

見返りとして製造されたカイバー・クリスタルの30%とカイバー・クリスタルを用いて新たに建造するジストン級スター・デストロイヤーを譲渡するとシス・エターナルは言っていた。

 

されどこれが議会の者達はこの事を不審に思い反対し始めた。

 

第三帝国はこれでもかなりの人口を抱える大国だ。

 

普通に第三帝国に製造方法を伝授して第三帝国に製造されればよいではないか。

 

それをしないということは何か裏があるのではないか。

 

「…という以下の理由でシス・エターナルへの生産工場譲渡及び新規工場の提供は却下、又は小規模に留めるべきだと意見します」

 

COMPNOR出身の議員が反対の意見を述べて席についた。

 

周りの彼と同じ議員達は小さく頷いていた。

 

皆シス・エターナルに対し全幅の信頼が置けず不安視しているグループだ。

 

尤も全ての議員や派閥がそうであるという訳ではない。

 

特に数刻前に行われたバロスの戦いを踏まえてシス・エターナルを信用、もしくは近づいて利用しようと考える者も多く出始めていた。

 

「だが先程のバロスを破壊した敵艦の威力を見ただろう?あの力が我らに加わるとなれば第三帝国の軍事力は飛躍的に進歩する。もはや我々に楯突き歯向かう者はいなくなる」

 

軍出身であり代理総統に気に入られて議会に入ったこの大柄の議員は早速バロス線の戦果を取り上げ反論した。

 

国防軍代表として耳を傾けていたカイティス元帥も重い表情でシス・エターナル軍の戦果を思い出していた。

 

「むしろこのままシス・エターナルに軍事の技術的なアドバンテージを独占させる訳にはいかない。チスやファースト・オーダーを出し抜く為にも積極的にシス・エターナルの技術を取り入れるべきだ」

 

「しかし、連中の見返りを信用出来るのか…?確かにあのプラネット・デストロイヤーとカイバー・クリスタルを提供するとは言っていたが」

 

「信用するしかないだろう。それに我々は既にシス・エターナルの地上軍部隊を借りている身だ。その分の借りを返す必要がある」

 

既にシス・エターナルとは同盟関係を締結している。

 

彼らから軍事的な援助を貰っている上に今まで彼らが奪還したガレルや今しがた崩壊したバロスの領域は全て第三帝国に譲渡される手筈だ。

 

実際今ガレルでは第三帝国とシス・エターナルの共同で軍政下を敷いている。

 

もしここで関係を損ねるような事があればその恩恵は減ってしまうだろう。

 

「何せ我々の超兵器開発はあまり上手くいっていないのでな」

 

ヒェムナー長官に代わって総統府長官を務めているマーティン・ボーマン長官がそう告げた。

 

第三帝国とて技術を受動的に受けている訳ではない。

 

かつてコルサントで発見したアキシャル砲搭載のスター・デストロイヤー(実の所この艦はジストン級のプロトタイプなのだが)をベースにカイバー・クリスタルを使用した超兵器の開発を行なっていたが実際の所その進捗具合はお世辞にも良いとは言えなかった。

 

少なくとも形にしようと努力はしているのだがあのジストン級やエクリプス級、まだかつての第一第二のデス・スターのような超火力を掃射する能力は持ち合わせていなかった。

 

その為シス・エターナルが現物を第三帝国に提供するというのであればそれは悪い話ではなかった。

 

「だがシス・エターナルに我々の工場を譲渡するとなると生産力は大きく低下する」

 

軍需大臣のフリット・トード大臣は重い表情で危惧を述べた。

 

国防軍や親衛隊の武器や弾薬などの兵器類の供給を担う軍需省はこの工場の譲渡にあまり賛成していなかった。

 

同じく軍需省や財務省と深い関わりのあるシューペル総監も頷く。

 

「特にシス・エターナルが要求している工場の規模となれば数は限られてくる。我々第三帝国の国営工場か、それともクワットなどの大企業の工場か。どちらにせよ軍を維持する生産力に大きく影響が出る」

 

「そのことについてだがヴァティオン・クワット会長、貴方の率直な意見を伺いたい。実際の所生産力はどうなる?」

 

この議会の議長を務めているローリング大将軍はクワットの総取締役として呼ばれたヴァティオンに尋ねた。

 

ヴァティオンはトード大臣と代わるように立ち上がり口を開いた。

 

「ならば率直に言わせてもらうがこれ以上工場が減るような事があれば間違いなく第三帝国への兵器提供の能力は大きく下がる。それも数ヶ月もすれば現状の戦線が維持出来なくなる程だ」

 

その事に議員達は苦悶の声を上げ事態を重く受け止めた。

 

そもそも今の第三帝国が現在の戦線を維持出来ている事自体驚くべきことだ。

 

旧銀河共和国や第一銀河帝国ほどの広い領域を保持しておらず20億人いたストームトルーパーも帝国の分裂と度重なる戦闘により多くが離れていってしまった。

 

その為第三帝国はかつての第一銀河帝国のように大規模な派兵を行うのも一苦労なのだ。

 

辛うじて維持している戦線もクワットの多大な生産力と第三帝国が行なっている軍拡と工業力促進のお陰だ。

 

尤も後者は予算的な意味合いで功績に陰りが見え始めてはいるが。

 

「シス・エターナルがあの規模の工場を接収すれば現状我々が発注を受けている分の兵器を期日までに納入するのは不可能になる。恐らくそれはマー=ソンやブラスティック・インダストリーズ、コレリアン・エンジニアリングも同様だろう」

 

「どうにかして生産力を上げられないか?」

 

ある議員はヴァティオンにそう尋ねたが彼は「不可能だ」と首を振った。

 

まあクワットに関しては現在生産している全ての生産能力を第三帝国に向ければ何とかなるのだがそれはクワットにとって有益とは言えないだろう。

 

そこでヴァティオンはある事に切り込んだ。

 

「だが貴国に徴収されたエイリアン種族及び近人間種の労働者達を返してくれれば現状の工場数でも辛うじて生産力は保たれるだろう。何分新規では入ってきた労働者達だけではまだ足りない」

 

それは第三帝国に対してかなり鋭い一撃であった。

 

現状ホロコーストや平和の為の最終的解決については親衛隊や政府高官などで秘密にされておりまだ同盟諸邦国や一般には公開されていない。

 

だからエイリアン種族や近人間種がエイリアン種族排除法などで国外追放を受けたり逮捕された後の姿は誰も知らなかった。

 

同盟国や新規領に対しては特別逮捕などの理由でエイリアン種族や近人間種を収容所へと強制連行した。

 

その中にはクワットの社員や労働者として働く者も少なからず存在していた。

 

彼らの処遇がどうなっているかはヴァティオンとてつい最近まで詳しくは知らなかった。

 

ただ、“ある情報源”から得た情報で絶滅収容所やホロコーストの内情を知った。

 

それほど厳重に管理された事なのだからこのようなことを言われては黙り込むしかないだろうとヴァティオンは予測していた。

 

その予測は半ば当たっていたようで殆どの議員は口を閉ざし代わりに答えたのがハインレーヒ・ヒェムナー親衛隊長官、ホロコーストなどに深く関与している男だった。

 

「彼らに帝国への反逆意志があったかどうかを精査するまでは残念ながら返すことは出来ない」

 

「しかしこのままでは生産力の低下は免れないぞ」

 

「新規で工場を設立することは出来ないのか?」

 

ボーマン長官の問いにトード大臣は「出来ない事はないがそれでも完成は年を跨ぐ」と告げた。

 

人員を総動員したとしてもギリギリ来年の今頃に完成……到底間に合わない。

 

「人員の補填は必ず補償する。となるとまずは行動の提供だな」

 

エイリアン種族の話は殆ど語られる事もなく本来の議題に戻った。

 

第三帝国の路線は既に決定しているようだ。

 

 

 

 

-レジスタンス領 アノート宙域 惑星ベスピン クラウド・シティ アノート司令支部-

アノート宙域及びその周辺域のレジスタンス軍の司令部はクラウド・シティの行政府宮殿の一角に設けられた。

 

アノート宙域の駐留軍はモン・カラやヤヴィン、キャッシークなどにも負けない程の大規模な勢力で現状帝国軍の一個宙域艦隊と戦闘になっても耐え抜ける程の戦力を有していた。

 

だがそんなアノート宙域レジスタンス軍にも危機が訪れる。

 

それは突如襲来した帝国軍のことだ。

 

少なくとも一個艦隊の戦力がハイパースペースを通ってこのアノート宙域に向かってきている。

 

無論これを放置する訳にはいかないのでレジスタンス軍は兵力を展開し防戦に応じていた。

 

この司令部には常にその情報が流れピリついた雰囲気が流れていた。

 

「戦闘の状況はどうだ?」

 

新共和国軍の軍服にお高めのマントを身に纏った姿のランドは司令部の士官に尋ねた。

 

「現状帝国艦隊の侵入はジャヴィンで防いでいます。戦線の状況はこちらが優勢とのこと」

 

「惑星内への上陸戦も始まっておりこのまま地上戦にもつれ込めば戦線は膠着すると前線の司令官達は予想しています」

 

士官達の返答は正確で分かり易かった。

 

ランドの隣には彼の戦友のサラスタン、ナイン・ナンと駐留軍司令官のブレン・タントール将軍、エイダー・タロン将軍、ウィリアム・バーク提督らがいた。

 

皆銀河内戦中に活躍した優秀な反乱同盟軍時代からの指揮官達でそれぞれ部下の幕僚や参謀を背後に複数人連れていた。

 

特にタロン将軍はクローン戦争時代からの歴戦の将校でその経験は並みの将校を軽く凌駕している。

 

アノート宙域の将軍や提督達は皆士官からの報告を聞いてそれぞれ思考を巡らせた。

 

「帝国艦隊が無意味に攻撃を仕掛けてくるとは思えん。必ず策があるはずだ」

 

タロン将軍は真っ先に口を開きランドも「私も同感だ」と付け加えた。

 

「“()()()()()()”の報告ではマラステアに入っていた親衛隊の部隊が動き出したらしい。セレアン・リーチはまだ抵抗が激しくて開通出来ていないだろうが」

 

「となるとやはり後続の部隊が続いてくるでしょうか」

 

「間違いないだろうな」

 

タントール将軍の問いをランドは肯定した。

 

帝国軍の攻勢はこんなものでは済まない、きっと津波のように次々と押し寄せてくるだろう。

 

それかホズニアン・プライムを陥落させた時のように秘密のハイパースペース・ルートを通りながら迂回を繰り返し電撃的に直接攻撃を仕掛けてくるか。

 

第三帝国の戦術は大きく変化している。

 

それはかつてのような力がないからだろうがそれ故に油断は出来ない。

 

油断した結果のホズニアン・プライム、シャンドリラの陥落だ。

 

「新分離主義連合からの援軍はどうなっている?」

 

「既に援軍部隊は帝国軍の別働隊を撃破し後数日もすれば前線に到着するとの見通しです。それと首都防衛用に既に一個小艦隊がベスピンに入っています」

 

バーク提督の幕僚が全員に状況を報告する。

 

新分離主義連合との軍事同盟は両国のどちらかが危険に晒された時軍を派遣し共同して防衛に当たるという明文があった。

 

現在はその約束が発動しアノート宙域のレジスタンス軍が帝国軍からの攻撃を受けた為救援を送ってきたのだ。

 

既にレジスタンス軍は新分離主義連合軍の幾つかの領域確保の為に部隊を派遣した事がある。

 

今回出兵が早かったのもそれらで築かれた信頼関係の方が大きかったのだろう。

 

尤もあの2人の外交官の親子が真摯に対応し同盟を締結出来たのがやはり一番だろうが。

 

「幸いこちらの戦力にはまだ余裕がある。最悪防衛戦となれば我々は直ぐにでも郷土防衛部隊を編成し現場の戦力を十倍以上に跳ね上がらせる事が出来る。地の利の面から見ても有利なのはこちらだ」

 

タロン将軍の読み通り帝国軍がアノート宙域に侵入してきた場合帝国軍は徹底した防衛戦と地の利を用いた指揮官達の攻撃により苦戦を強いられることはまず間違いない。

 

かつて総督のユーブリック・アデルハードに反旗を翻したアップライジングやトレーディング・スパイン・リーグやノーブル・コートといった抵抗組織に参加していた者がまだ大勢いる。

 

彼らは皆正規軍との連携やゲリラ戦を意識した訓練を受けており非常時となれば彼らは即座にレジスタンス軍アノート郷土防衛部隊に組み込まれレジスタンス軍正規兵と共に戦う備えがあった。

 

ランドは今もかつてもこのベスピンの総督であったしナイン・ナンや他のアノート解放に関わった将兵達はアノート宙域のことを知り尽くしている。

 

むしろ誘い込んで帝国軍を一網打尽にする作戦も取れるのだ。

 

しかしそれは最後の手段であって普段からなるべく避けたいと言うのが司令部の考えであった。

 

帝国軍と戦えば少なからずアノート宙域の荒廃は避けられない。

 

「このまま新分離主義連合軍と共同で反抗すれば帝国軍に少なからず打撃を与えられるだろう。だが不安点はこの機に乗じて再びアデルハード総督の艦隊が動き出してこないかと言うことだが…」

 

「ああ、絶対にあのいやらしい男なら動くはずだな。尤もタントールが用意した警戒部隊がその時は知らせてくれるだろうが」

 

ランドがそんなことを呟いていると運命は早速最悪の報せを運んできた。

 

ある1人の士官が顔を真っ青にしてランド達の話し合いに割って入ってきたのだ。

 

「第八即応警戒部隊より緊急連絡です!アデルハード総督の艦隊と思われるインペリアル級多数の船団がベスピン方面に向け移動を開始したとのこと!」

 

「噂をすればなんとやらか……!」

 

「直ちに周辺域の部隊に命じて防衛戦闘を開始しろ」

 

タロン将軍の命令により司令部から即座に指示が伝達され辺りは一様に慌ただしくなった。

 

他の将軍や提督、その幕僚達も慌ただしくなり始め一気に緊迫感が増した。

 

「現地の部隊だけで防げるでしょうか。弱っているとはいえアデルハード総督の艦隊はかなりの規模です」

 

タントール将軍は防衛任務に当たる部隊の危惧を浮かべた。

 

「なら私が行こう。今からベスピンの“レストレーション”の艦隊を連れて行けば間に合うはずだ」

 

ランドはナイン・ナンの肩を持って彼らにそう提案した。

 

ナイン・ナンも「大変だがなんとかしてみせる」とサラスタン語で話した。

 

「頼めるか、カルリジアン将軍」

 

「ああ、任せな。行くぞ」

 

ランドとナイン・ナンは司令部を飛び出し彼らの愛機のメルクローラーⅡに急いだ。

 

司令部の将軍や提督達は敬礼で見送り彼らの武運を心の中でフォースに祈った。

 

「カルリジアン将軍なら大丈夫でしょう。彼は今までに何度もアデルハード総督に勝っています」

 

タントール将軍は今までの戦歴を思い浮かべながらそう呟いた。

 

タロン将軍も「ああ…」と相槌を打つがどこか不安そうな表情だった。

 

彼はその不安の種を独り言のように明かす。

 

「だが本当に問題なのは我々の直ぐ隣にある勢力だ。ホズニアン陥落以降殆ど動きを見せない大セスウェナ……この状況下でどう動く…?」

 

タロン将軍は頭の中で星図を浮かべ思考を巡らせた。

 

今までアノート宙域のレジスタンス軍は度々大セスウェナやその同盟や条約の枠組みに入っている惑星政府や星系政府を攻撃した。

 

だが毎回大セスウェナの軍は防衛戦を遂行するだけでそれ以上の反抗はしてこなかった。

 

彼らの動きは他の帝国軍勢力と比べて不明瞭な点が多い。

 

恐らく自分の領土さえ守れていれば良いと言う考えなのだろうが今回のようなチャンスを目の前にしてどう動くかはまだ将軍や提督達として分からなかった。

 

最悪なことにだけはならならければいいのだが。

 

タロン将軍は再びフォースに対し祈りを捧げた。

 

 

 

 

 

レンディリにはシス・エターナルとの会談を行う為に多くの第三帝国高官がレンディリに訪れ会場の席についていた。

 

中には親衛隊の上級大将や地上軍宇宙軍双方の将軍や提督も含まれていた。

 

周りにいる各分野の将校たちも皆佐官以上のエリートばかりだ。

 

真ん中にレンディリの総督が座っており反対側の席には既にシス・エターナルの将校やシス・トルーパーが並んでいた。

 

ちょうど真ん中の席には代理人として派遣されたシス・エターナルの信者が座っていた。

 

それもかなり位が高いようで黒いフードを被ったローブの上に幾つかの飾りがついている。

 

他のシス信者達はその様な飾りがないか代理人よりも少なく眼前の信者がより高位にいることを知らしめた。

 

代理人は顔に何か黒いマスクのようなものを装着しておりフードも相まって素顔は全く確認出来なかった。

 

「全将校及び連絡官、そろいました。コルアントへの特別ホロ通信も起動しています」

 

総督の副官が耳打ちしレンディリの総督は「そうか、ご苦労」と副官らを労った。

 

総督は国防軍と同じ軍服の首元を気にしながらふうと息を吐いた。

 

新軍服の襟元がどうもこの総督とは合わないようで度々襟元を緩めようとする場面が見受けられた。

 

副官は耳打ちしたその話はシス・エターナルの代理人にも聞こえていたようで信者は早速口を開いた。

 

「準備が整った様なら始めてしまいましょうか」

 

少量の声量で雑談していた将校や官僚達もその一言で一斉に代理人の方を向いた。

 

まだ時間的には10分以上の余裕がある。

 

これもシス・エターナルの到着と共に動き始めていたお陰でシス・エターナルの一団が会場に着く前には既に準備は終わっていた。

 

「まだ10分近くありますがよろしいのですか?」

 

総督はシス・エターナルの代理人に尋ねるが「構いませんよ」とすぐに返された。

 

そう簡単に判断は出来ない。

 

シス・エターナルがいいと言っても今コルサントの方はどんな状況か分からない為総督1人で判断は出来なかった。

 

その為総督は周りをキョロキョロしながら他の将軍や提督達、上級大将や大将達に判断を求めた。

 

将軍や提督達が黙り込む中親衛隊上級大将のクリアス・アルフェンマイヤー上級大将はその判断に応えた。

 

「もういいでしょう。不必要に客人を待たせるのは失礼だ」

 

アルフェンマイヤー上級大将の一言を聞いたレンディリの総督によりこの席の会は始まった。

 

「ご存知の通り我々の軍隊はレジスタンスの艦隊を殲滅し惑星バロスに駐留していた敵軍を一掃しました」

 

代理人は戦果を誇張することもなく変わらぬ声のトーンで話した。

 

実際バロスに駆けつけた救援艦隊もバロスに元々駐留していた艦隊も地上部隊も1人も生還者はいない。

 

皆あのジストン級とエクリプス級の超火力に何も出来ずに文字通り消し炭にされてしまった。

 

もはや近くに位置する惑星ロザルも陥落は間近なのは確実だろう。

 

あの超火力を前にシス・エターナル艦隊の動きを止められるものはこの銀河系のどこを探したって存在し得ないのだ。

 

「無論のこと獲得した全ての領域は第三帝国へ譲渡します。必要であれば暫く治安維持の為の兵士を貸し出すことも考えましょう」

 

「それは…ありがたいことです」

 

総督は余りの大盤振る舞いに礼を述べるしかなかった。

 

シス・エターナルの行動は第三帝国にとって今の所多大な利益しか与えていない。

 

シス・エターナルとは表面上第三帝国にとってとても“()()()()()()()”なのだ。

 

だからこそ何か裏があるのではないかと疑いの心も露わになってくる。

 

「それであなた方が本日レンディリにお越しになったのは今回のあなた方の戦果を我々に伝える為ですか?」

 

総督は代理人に尋ねる。

 

代理人は「いいえ、それだけではありません」とフードの奥から首を振って伝えた。

 

「今回は次に我々が行う戦争計画の事前伝達とその協力を求めに来たのです。次の戦いは第三帝国の力が必要不可欠ですので」

 

意外な言葉に総督達の後ろに控える将校達は騒ついた。

 

バロスのレジスタンス艦隊を殲滅したシス・エターナル軍が第三帝国に協力を求めるとは一体どんな敵がいるのだろうか。

 

それに態々協力を求める理由とは一体なんなのか、疑念がそれぞれ湧き上がっていた。

 

「まず我々はボーラ・ヴィオとアーヴァラを攻撃し制圧するつもりです。そこでまずボーラ・ヴィオを制圧中の我が軍から他の敵対勢力、中立勢力を遠ざける為の封鎖網の構築をお願いしたい」

 

「ボーラ・ヴィオ……そこに何かあるのですか?」

 

総督は彼らに尋ねたが代理人は一言、「我々双方の脅威となる勢力が生まれようとしています」とだけ告げた。

 

「今のうちに潰しておかなければ恐らく我々や第三帝国が総出となっても手強い敵が生まれるでしょう。そうならぬ為にも我々が直接叩き、連中が持つ技術を外へと流さぬよう封鎖を頼みたい」

 

総督は国防軍の将軍や提督達、アルフェンマイヤー上級大将や親衛隊の将官達に目線を送った。

 

国防軍親衛隊双方封鎖の為に必要な戦力と現状出せる戦力を協議し始めた。

 

周りの佐官将校達も集まり最初に判断を下したのは親衛隊の方であった。

 

アルフェンマイヤー上級大将は「親衛隊であれば現状封鎖部隊は展開出来ます」と総督に告げる。

 

それから一足遅く国防軍の将官達も「国防軍も同様です」と答えた。

 

「ボーラ・ヴィオの封鎖は理論上可能ですがこちらとしても国防軍最高司令部や議会の承諾の必要がある、まずそれだけはご理解いただきたい」

 

「構いませんよ。そしてもう一件、アーヴァラ7の攻略。こちらが何よりも重要です」

 

アーヴァラ7は砂漠の惑星で近年ここにホズニアン・プライムの陥落で幾つかの新共和国軍の部隊が逃げ込んだと噂されていた。

 

またアーヴァラ7の周辺には帝国軍の残党がいるのではないかとかグランド・マスターと同じ種族の人物がとか不思議な噂が近年になって増え始めていた。

 

「アーヴァラ7に新共和国軍の残党が逃げていることは既に把握済みです。しかし残党はかなりの地上部隊を有しており我々の地上軍では厳しい戦いになるでしょう」

 

「であればあなた方のスター・デストロイヤーでアーヴァラ7を吹き飛ばせばいいではないですか。あそこの地であれば星図から消失したとて誰も文句は言わんでしょう」

 

第三帝国にとって価値のある惑星は大都市の惑星かハイパースペース・レーンの要所の惑星か資源惑星だけである。

 

特にアーヴァラ7は距離的にも遠く砂漠である為価値も乏しい。

 

シス・エターナルが惑星ごと吹き飛ばしたって特に困ることはなかった。

 

「我々にはある“()()”を探さなければならない。その為にもアーヴァラ7をアキシャル砲で砲撃するのは望ましくない。だからこそ第三帝国に頼みたいのです」

 

「そのものとやらの捜索をですか?」

 

総督は尋ねたがすぐに首を振られた。

 

「必要なのは捜索ではなく我がシス・エターナル軍と共にアーヴァラ7の新共和国軍を殲滅して欲しいのです。あなた方の強大な地上軍の力を使って」

 

総督は息を飲んだ。

 

まさかこんな直接的に合同軍事作戦を提案されるとは思ってもいなかった。

 

特にあれほどの戦果を出された後では逆に「お前達はもう戦わなくていい」などと上から言われるのではないかと覚悟していた。

 

まさか帝国地上軍を貸せと言われるとは。

 

「我がシス・エターナル軍は艦隊は無論あの強さですが地上軍は如何せん規模が小さい。まだ発展途上なのです」

 

「だから我が帝国地上軍を?」

 

「はい、第三帝国の地上軍の強さは承知しています。シャンドリラを単独で陥落させ各地の陸戦でも殆ど負け知らず、正に栄光ある第一銀河帝国地上軍の末裔に相応しいと言えましょう」

 

確かに第三帝国の地上軍は強い。

 

数百万、数千万人の兵士に加え何十万、何百万台のウォーカーやタンク、スピーダーの機甲戦力を持ち航空戦力や海上戦力も保持している銀河有数の軍事力だ。

 

更に下士官兵や将校の練度も高く戦闘慣れしている。

 

マクシミリアン・ヴィアーズ大将軍やフレジャ・コヴェル中将、ハイス・グーリアン上級将軍やマーゼルシュタイン元帥などの優秀で画期的な戦術を生み出した指揮官も多い。

 

新技術の発展も目覚ましく銀河系最強の軍隊と断言してもいいほどだ。

 

その力を借りたいという気持ちは分からなくもない。

 

現に地上軍は様々な服属した惑星政府や同盟関係のある政府から救援要請を求められたり合同軍事作戦を提案されたりしている。

 

相手がシス・エターナルとてそれは例外ではなかった、それだけだ。

 

「アーヴァラ7の新共和国軍を撃破出来るのは第三帝国の地上軍のみです。是非とも共に仇敵を討ち倒しましょう」

 

代理人はどこか興奮気味に第三帝国の面々にそう告げた。

 

このことについて国防軍将校や親衛隊将校がそれぞれ総督らの後ろで話し合っている。

 

第三帝国とてそれほど余裕はない。

 

送り込める部隊にも限りがあるのだ。

 

一方名前が挙がらなかった親衛隊の面々はどうにかして親衛隊も一枚噛めないかということを画策していた。

 

親衛隊地上軍も練度や優秀な指揮官の多さでは親衛隊に引けをとっていない。

 

そもそも銀河協定の抜け道として軍事力を保有する為に生み出された組織なのだから母体は同じであり同じだけ戦闘を重ねているのだから練度は変わらないはずだ。

 

なんとかして帝国地上軍ではなく親衛隊地上軍が呼ばれたということにすれば親衛隊の名声は更に高まる。

 

そんな派閥争いのことをそれぞれ話していた。

 

「この議題もやはりコルサントの議会や国防軍最高司令部の決断がないと私個人としては何も言えません。無論悪い返答はしないよう努めます」

 

「はい、それがよろしいかと。きっと“()()()”主人も喜ばれますよ」

 

「我々の…?」

 

総督はその単語が気になった。

 

どことなく彼らシス・エターナルだけでなく第三帝国も含まれているような気がしたからだ。

 

そのことに気付いたのか代理人はこう答えた。

 

「“()()()()()()()()”」

 

そういずれ第三帝国も知る事になる。

 

シス・エターナルの指導者のこと、空白の玉座に帰ろうとする者がいることを。

 

シス・エターナルの指導者はダース・シディアスであり、帝国の指導者はシーヴ・パルパティーンだ。

 

我々は皆、1人の人間の下に跪く運命にあるのだから。

 

だが無論その言葉の意味まではジェルマンとジョーレンの手で“()()()()()()()()()()”。

 

 

 

 

 

 

-シス・エターナル本領 未知領域 惑星エクセゴル 玉座の間-

レンディリでの会談は密かにエクセゴルにも中継されていた。

 

あの会場にいた何人かの信者とシス・エターナル軍将校がスパイカメラの映像を乗ってきたジストン級に送りそれをエクセゴルへ中継していた。

 

かなり手間の掛かる作業だがこうでもしなければ銀河系と隔絶したエクセゴルへ直接映像を映し出すことなど不可能であった。

 

会談も半ば終わりに差し掛かりある程度の確証を得たシディアスは玉座に待たせていたダークサイドの戦士達に命令を下した。

 

まず最初に名前が呼ばれたのはセドリス・QLであった。

 

「セドリスよ」

 

「はい陛下!」

 

セドリスは笑みを浮かべたまま顔を上げた。

 

シディアスは低く恐怖を幾分にも含んだ声音でセドリスに命令を出す。

 

「聞いての通りだ、第三帝国は恐らく我々の要求に応じ軍隊を派遣してくるであろう。其方は我がシス・エターナル軍26番目の軍団であるテネブラス軍団を率い、第三帝国と共にアーヴァラ7を抑えよ」

 

命令を聞いたセドリスは頭を深々と下げ「ハッ!」と主人の命令を承諾した。

 

皇帝から与えられた力を使い皇帝の命令で存分に戦えるということはセドリスにとってこの上ない喜びであった。

 

その様子を見たシディアスはセドリスに念を押す。

 

「忘れるでないぞ、其方の命は単に相手を打ち負かすだけでなく“()()()()”を探す事にある。惑星の隅から隅を行き、街という街全てを探せ。それでも見つからぬなら追って新たな命を下す」

 

「お任せください陛下!必ずや奴を探し出し陛下の前に差し出してご覧にれましょう!」

 

シディアスの命令にセドリスは再び顔を上げた。

 

彼にとって今主人から与えられた任務を失敗という二文字で返す未来は全く見えなかった。

 

成功、もしくは大成功それだけだ。

 

「当然、分かっているとは思うがテネブラス軍団と其方に与えるジストン級を失うことは許されん。立て、ダークサイドの戦士よ。必ずや戦果を挙げ我がシス・エターナルに勝利を齎すのだ」

 

「ハッ!」

 

セドリスは立ち上がり一礼した後玉座の間を離れた。

 

今か今かと戦を待ち望んでいる彼の為のテネブラス軍団とジストン級に向かう為だ。

 

今すぐ戦地に赴き、必ず新共和国軍を討ち倒し“()”を捕らえてやる。

 

メラメラと燃えるセドリスの闘志が彼の表情に現れていた。

 

セドリスが玉座の間を去った後シディアスは残りの2人の戦士に命令を出した。

 

まず最初に名前が呼ばれたのはテドリン・シャという名のダークサイドの戦士であった。

 

「テドリン・シャよ、其方には銀河系に赴きある騎士団をエクセゴルへと呼び戻せ。我が軍が銀河系へと出ている間、このエクセゴルの守りを固めねばならん」

 

「お任せください陛下、必ずやご期待に応えてみせます」

 

テドリンは頭を下げ命令を承諾した。

 

セドリスと違いテドリンはとても落ち着いており受け答えも冷静そのものだった。

 

「其方の為に艦と精鋭部隊を用意した。何かあれば存分に扱え」

 

「そのようなご配慮をなさって下さるとは……恐悦至極に存じます。一層ご期待に添えるよう努力致します」

 

態度は違えどテドリンも根っこはセドリスと大差ない、皇帝に忠誠を誓い心酔している者達だ。

 

シディアス卿は最後に隣のダークサイドの戦士に命令を出した。

 

「ゼクル・ニスト、スカイウォーカー、マラ・ジェイド、フリューゲル、セドリス、そしてテドリンがエクセゴルを離れようとする今この聖地と余を守るのは其方のみとなる」

 

このエクセゴル、侵入の仕方を知っているのはごく僅かであり現状攻められたとしても返り討ちに出来るだけの戦力はある。

 

何よりこのエクセゴルの存在を知る人間が今の銀河系にはごく僅かであり殆ど誰も知らなかった。

 

その為安全ではあるのだが念には念を入れて、シディアスは頼れる優秀な戦士を1人エクセゴルに残しておく事にした。

 

それがこのゼクル・ニストである。

 

ニストはテドリンと同じように頭を下げ「お任せください陛下」と口を開いた。

 

「我が命に変えてもエクセゴルと陛下の命をお守り致します」

 

「任せたぞ、いよいよ我々の帝国は復活する。ここが正念場だ」

 

シディアスは笑みを浮かべた。

 

いつもの邪悪さを含んだような笑みではなくどこか物悲しい1人の老人のような笑みを。

 

「我々の使命を果たし我々の悲願を叶えよう。この銀河の為に」

 

そのパルパティーンの一言はエクセゴルの荒れる大気の中へと消えた。

 

 

 

 

 

 

 

レンディリでの会談は終わった。

 

シス・エターナルからの情報を受け取り第三帝国は新たな戦略を考えることとなった。

 

それと同じくジェルマンとジョーレンの任務も終了した。

 

シス・エターナルと第三帝国との会談を盗聴し密かにその情報をディカーの情報作戦室に送っていた。

 

今頃ディカーではディゴール大臣や上級将校達が大慌てで作戦や言葉の詳細を分析しているだろう。

 

だが任務を終えたジェルマンとジョーレンにはそんなこと関係ない。

 

今重要なのは急いでここから離脱することだ。

 

既に停泊させておいたUウィングは自動操縦でギリギリまでレンディリの中央首都に近づけてある。

 

後は適当な言い訳をつけてスピーダーか何かで離脱するのみだ。

 

「思ったより相手にバレなかったね」

 

「ああ、普通はこういうもんだ。だが盗聴までこうあっさり行くと不気味さが残るな……」

 

今まで幾度となく潜入任務を行なってきたジョーレンからしてみればむしろ敵に察知された時の方が少なかった。

 

ここまで来ればある種手慣れたものと言っても過言ではないだろう。

 

敵を騙す為、言いくるめる為の方便もすぐに出てくる。

 

今思い返せば反乱同盟軍や新共和国軍の軍服よりも帝国軍の軍服の方が長く来ているのではないか。

 

自嘲じみた事を思い浮かべながら歩いているとちょうど曲がり角が見えた。

 

恐らく誰も来ないだろうそう思って2人とも歩いていると同じ頃曲がり角の先でも同じような事を考えている人間がいた。

 

当然双方前方を全く気にしていなかった為“3()()”は曲がり角を曲がった瞬間衝突してしまった。

 

「うわっ!」

 

「なぁっ!?」

 

「痛いっ!?何!?」

 

大人3人がぶつかった衝撃は凄まじく3人とも地面へ倒れ普段からは想像出来ない情けない声を挙げた。

 

一番最初に起き上がったのはジョーレンであり即座に「すみません!」と謝罪の言葉を述べた。

 

すると次に起き上がってきた将校も「いやこちらこそ」と言ってきた。

 

どうやらぶつかってしまった相手も同じ親衛隊の制服を着ており胸の階級章も襟章もそれぞれ准将の階級を表していた。

 

髪は銀髪で顔は整っておりその瞳はブルーグリーンという言葉が一番相応しい色合いだった。

 

彼の後ろには運良く衝突を免れた2人の将校が多少困惑した様子で眺めていた。

 

2人のうちの親衛隊保安局の制服を着た片方は随分と今倒れた准将によく似ている。

 

するとその内のもう片方が准将の手を取り「しっかりして下さいよシュタンデリス准将」と彼の肩を持った。

 

「ああすまない大尉……そちらの2人もすまなかった」

 

シュタンデリス准将と呼ばれたその青年は起き上がろうとしていたジェルマンに手を貸した。

 

「ありがとうございます」と一言述べてからジェルマンはシュタンデリス准将の手を取り起き上がった。

 

「大丈夫ですか?シュタンデリス准将」

 

シュタンデリス准将とよく似た保安局将校は彼を心配した。

 

先程中央情報管理室でホロコーストの情報を知ってしまったジェルマンとジョーレンは一瞬だけこの将校を警戒した。

 

彼らがホロコーストの第一人者であり銀河系最大の罪を犯している連中だ。

 

その間にシュタンデリス准将はじっとジェルマンとジョーレンの方を見つめていた。

 

「…どうかされましたか…?」

 

ジョーレンは不思議そうな表情を作りシュタンデリス准将に尋ねた。

 

「あっいやなんでもない。すまなかったな少佐、大尉」

 

「こちらこそ申し訳ありませんでした」

 

ジェルマンはシュタンデリス准将に一礼し3人の横を通った。

 

シュタンデリス准将もといジークハルトはじっと2人が通り過ぎるのを見つめていた。

 

「どうかしたんですか?准将」

 

ヴァリンヘルト大尉は彼に尋ねる。

 

「彼らの腕章、第335FF歩兵師団と書いてあるが……あの師団は確かケラーの奪還と暴動鎮圧に向かっていたはずだ。レンディリにそこの所属の将校がいるとは些か不自然に感じるが」

 

「…調べてみましょうか?」

 

フリシュタイン上級大佐もどこか疑っていたようで即座にそう尋ねた。

 

親衛隊保安局の中央に務める上級将校がかなり深く疑うということはやはり何かあるはずだ。

 

「そうした方がいいかもな」

 

ジークハルトはそう呟き再び2人の方を見つめた。

 

するとこちらを振り返ったジェルマンとジークハルトの目が一瞬だけ合ったような気がした。

 

親衛隊とレジスタンス、2人とも真逆の組織に位置している。

 

それ故にこの先も会うことはないし互いに名前を知る機会も少ないだろう。

 

ましてや名前を知ったとしてもそれがこのレンディリでぶつかり合った人物だとは思わないはずだ。

 

ジークハルト・シュタンデリスとジェルマン・ジルディール。

 

仮にこの2人が物語を司る者だとしても彼らがこれ以上交わり合う事はなかった。

 

「少佐、大尉。どうされました?」

 

総督府の駐機場に向かったジェルマンとジョーレンは甲板士官の上級中尉から声を掛けられた。

 

ここでスピーダーを借りてUウィングに戻るつもりだ。

 

「郊外の停泊地までスピーダーを借りたい、なるべく急ぎで。どれかいい機体はあるか?」

 

ジョーレンは再びそれらしい理由を並べ立て上級中尉に尋ねた。

 

ジェルマンも表情と動作を合わせてジョーレンの理由に信憑性を持たせようとした。

 

その努力のおかげか上級中尉は一切疑いもせず2人を連れて近くのスピーダーまで案内した。

 

「T-44でよければ停泊していますが」

 

「これでいい、ありがとう中尉」

 

「ああ、上級中尉です少佐殿」

 

上級中尉の訂正にジェルマンとジョーレンは顔を見合わせた。

 

上級中尉にとっては小さな自己顕示欲だったがこの時のジェルマンとジョーレンは知識不足を疑われているのではないかと冷や汗を流しそうになった。

 

すかさずジョーレンが冷静に対処する。

 

「ああ、すまなかったな上級中尉」

 

「いえ、お構いなく。どうぞランドスピーダーへ」

 

上級中尉はT-44ランドスピーダーのドアを開け2人を中へ入れた。

 

「ありがとう、“上級中尉”」

 

「いえ、お気をつけて!」

 

上級中尉は2人に敬礼しジョーレンは運転席のキーを作動させT-44ランドスピーダーを動かした。

 

解放中の駐機場のシャッターを越えてジェルマンとジョーレンを乗せたT-44はそのまま市街地へと走った。

 

帝国に占領されたレンディリの姿がスピーダーの窓越しによく見える。

 

どうやらこの地は帝国に支配されていた時の方が活気があるようだ。

 

以前レンディリを訪れた時とは大きな違いだった。

 

無論こういう惑星だってある、何も知らず素直に第三帝国の成果を受け入れ日々を享受している市民の方がむしろ大多数だろう。

 

それでもその成果の裏には何千億もの罪のない人々が一方的に殺されている現実がある。

 

帝国の支配によって命を奪われ、尊厳を奪われ、自身の何もかもを奪われた人々が大勢いる。

 

彼ら彼女らの為にもやはり帝国は倒さなければならない。

 

2人は上級中尉に話した通り郊外の簡易駐機場にスピーダーを停泊させUウィングの停泊地に急いだ。

 

「見つけた」

 

2人は急いでUウィングに乗り込み機体のクローキング装置を起動させ最大速度でレンディリの大気圏を突破した。

 

ひとまずレンディリを脱する為にジョーレンはハイパースペースへと突入した。

 

「後で着替えよう、この制服をこれ以上来ている必要はない」

 

ジョーレンは首元のホックを取ると制服の上着をその辺に脱ぎ捨てた。

 

ジェルマンも同じように脱ごうとした瞬間Uウィングが通信を受信しているのを発見した。

 

「通信だ、しかもディカーから」

 

「つけてくれ」

 

スイッチを押すとコックピット前の簡易ホロプロジェクターが起動しディゴール大臣の姿を映し出した。

 

大臣は普段と変わらぬ声で2人に告げる。

 

『2人ともよく任務を成し遂げてくれた。だが君達には再び新たな任務を遂行してもらわなければならない』

 

ディゴール大臣は2人を労うと共に新たな任務の話を切り出した。

 

ジョーレンは「どんな任務ですか?」と大臣に問う。

 

『ヤヴィン司令部からの救援だ。シス・エターナル軍によって攻略されたガレルで生存者を発見した。シス・エターナル軍と戦い生き残った将兵の情報をここで逃す訳には行かない。既にヤヴィンからは救出チームが向かっている。君達もすぐに向かってくれ』

 

「ガレルに、ですか?」

 

『ああ、これはライカン将軍からの直々の依頼だ。君達の力を信じてのことだ、無論私も君たちを信頼している。絶対に生存者を救出してくれ』

 

「わかりました、直ちに向かいます」

 

ジョーレンはハイパースペースのジャンプアウト先をガレル周辺にセットしながらディゴール大臣に返答した。

 

大臣からは『頼んだぞ』と念を押されそこで通信は切れた。

 

どうやらもう座標計算が終わったらしくジョーレンはジェルマンに話しかけた。

 

「装備を整えておけ。ガレルにつけば間違いなく戦闘だ」

 

「ああ、分かってる。絶対に助けてやろう」

 

この時のジェルマンの顔は既に何度も死地をくぐり抜けた歴戦の猛者のような雰囲気を醸し出していた。

 

ジョーレンは微笑を浮かべながら頷き「ああ」と答える。

 

ジェルマンの成長がどこか嬉しい反面彼が兵士として成長し完成していくへの悲しみを覚えた。

 

2人の次の戦場は惑星ガレル、シス・エターナルに占領されそこには2人のレジスタンスの仲間が生存し潜伏している。

 

ついに彼らはシス・エターナルと直接対決するのだ。

 

ハイパースペースを進むジェルマンとジョーレンのUウィングは戦場へ向かって突き進んでいった。

 

 

つづく




ウィーーーーーーーース!!!!!(深夜)

ドウモ〜Eitokuデーーーース!!!!

ええ本日は本当になんでもない日ですけども…(以下略)


ついにナチ帝国も52話くらい(多分)、今の今頃には連載終了しているといいですね()

そいではまたいつの日か〜!
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