第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

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「崩壊した帝国を再び一つにするのは難しいことであり、決して完璧に元の形には戻らないだろう。割れたガラスのように破片が様々な面を見せ一つだった帝国を複数の側面に分けてしまうからだ。そして何かしらの接着剤を使わなければ簡単には直らない。怪我もするし血も流れるだろう。戻す為の労力は壊す為の労力の何倍も必要になってくる」
-とある元第一銀河帝国総督の発言-


変わりゆく銀河

-アウター・リム アノート宙域境界線-

「よおし、各中隊私に続け。手始めに前方のスター・デストロイヤーに一撃を入れる」

 

ランドとナイン・ナンを乗せたメルクローラーⅡが迫り来るTIEファイターを2機撃墜し周辺のXウィングやYウィングと共に前方のインペリアル級に接近する。

 

インペリアル級はターボレーザーの対空砲を放ち一個編隊ほどのTIEファイターを突撃させてくるがレジスタンス軍のスターファイター隊はその攻撃を易々と躱した。

 

一個編隊のTIEファイター部隊を護衛のXウィングとAウィングが撃墜し爆撃部隊の脅威を排除する。

 

近くでは敵の注意を引く為に二隻のネビュロンBがインペリアル級と撃ち合っており二隻でようやく何とかなる程度だ。

 

ギリギリまで接近したYウィング部隊が大量のプロトン爆弾とイオン魚雷を投下しインペリアル級にダメージを与えていく。

 

加勢した近くのMC75軍需クルーザーがターボレーザー砲を次々と放ったおかげでインペリアル級は完全に船体の半分が破損しこれ以上の戦闘行動は出来なくなっていた。

 

「こいつはもう十分だ、他の艦の援護に向かう」

 

『了解、将軍!お供いたします!』

 

メルクローラーⅡを先頭に後続のスターファイターが次々とランドに続いた。

 

当初は圧倒的戦力差によりレジスタンス軍が不利であったが先行して守備に回っていたレジスタンス軍の部隊が命懸けの遅滞戦術を展開した事によりランド達の本隊が間に合った。

 

その結果数、質共にレジスタンス軍の優勢でありアデルハードの残党艦隊を押し続けていた。

 

アデルハード総督の艦隊は既に鉄の封鎖でかなりの兵員を失い度重なるレジスタンス軍との戦闘に敗北した事により練度は大幅に弱体化しており消耗し切っていた。

 

一方のレジスタンス軍は新共和国崩壊時点ではかなり厳しい状態であったがレジスタンスという統一された抵抗組織の誕生により状況が大幅に改善した。

 

更には隣国の親分離主義連合との軍事同盟により武器弾薬の交換が進み物資に大きな余裕が生じていた。

 

孤立した軍将VS多くの仲間を得たランド率いるアノート宙域レジスタンス軍、もはや勝敗は見え切っている。

 

メルクローラーⅡの側では一隻のプロカーセイター級に向かったBウィング一個中隊が見事に敵艦に爆撃を与えそのままプロカーセイター球を沈めていた。

 

また別の場所では接近し砲撃し合っていたCR90コルベットがレイダー級コルベットに打ち勝ち大破したレイダー級は間も無く撃沈した。

 

かつてであれば反対の光景が当たり前だったのだが今では状況は一変している。

 

特に現在コア・ワールドなどの銀河系中央を牛耳る第三帝国に加わろうともしないアデルハード総督の軍隊など所詮この程度だ。

 

第三帝国からの支援だけでも受け取っていたらまた違っていたであろうが。

 

軍将達のプライドは常に合理的な判断を阻害しその結果無意味な犠牲と内乱を生む。

 

その結果帝国は弱体化し負けていったのだ。

 

そういやって勝ち続けてきたランド達にはこの心理がよく分かり、その轍を踏まぬよう誓っていた。

 

『カルリジアン将軍、前方に敵艦を発見!これは……帝国軍の大型貨物船です。あの艦から爆撃機や迎撃機が出ています』

 

すぐ真横を飛ぶAウィングに乗り込んだ中隊長はメルクローラーⅡに報告した。

 

彼女の言う通り目の前の艦は確かに帝国軍で使用されていた貨物船であった。

 

隣でナインが「撃破しないと厄介だ」とランドに伝える。

 

「ああ、分かってる。周辺のスターファイターは全機結集、三方向から同時にあの艦を叩く。私は前方をやるから中隊長は左から周り込め。爆撃隊長は右からだ」

 

『了解!』

 

『了解』

 

ランドの命令で集まったスターファイターが三方向に分かれ一隻の帝国貨物船に狙いを定める。

 

本来この艦は共和国宇宙軍で使用されたアクラメイター級アサルト・シップを改造して造られていた。

 

今ではすっかり新規の建造方法で造られた艦が大半だが。

 

いよいよ使用出来る軍艦が少なくなってきたのかアデルハード総督は遂に後方の部隊の貨物船まで引っ張り出してきたようだ。

 

輸送船まで使って数を揃えるのは反乱同盟軍の方が先にやっていた事だが今ではすっかりその立場も逆転してしまったらしい。

 

だが敵の貨物船はかなりの大型艦でターボレーザー砲や局所防衛砲台を保持している為油断は出来ない。

 

更には出撃したTIEインターセプターやTIEファイターが妨害に来る。

 

先行したメルクローラーⅡとXウィングやAウィングが先行して道を切り開く。

 

火力と防御力を駆使しレジスタンス軍スターファイター隊は敵機を1機づつ撃墜していった。

 

パイロットの練度も低い敵軍は呆気なく蹴散らされスターファイターの進路を作ってしまった。

 

それはランドやナインが率いる部隊だけでなくAウィングの中隊長やYウィングの爆撃隊も突破に成功し帝国貨物船に接近した。

 

『全機爆撃開始!!』

 

爆撃隊長の命令で三方向から接近したYウィングやBウィングがプロトン魚雷やプロトン爆弾を投下し貨物船に大打撃を与えた。

 

更にもう一撃とAウィングやXウィングも震盪ミサイルとプロトン魚雷を撃ち込み更にダメージを与えた。

 

耐久値に限界が生じた帝国貨物船はそのまま崩壊し爆沈した。

 

『敵艦を撃破した!』

 

爆撃隊長の通信音声が聞こえ一斉にスターファイターが離れていく。

 

ナインが喜びの笑みを浮かべる中艦隊の旗艦である“レストレーション”からメルクローラーⅡに通信が入った。

 

『こちら“レストレーション”、敵艦隊が後退していきますが追撃しますか?』

 

ランドは「ああ」と即答した。

 

「アデルハードには悪いがこれでおしまいだ。我々もそこまで暇じゃないのでね」

 

『了解』

 

艦隊の前衛が崩されアデルハード艦隊は徐々に後退し始めていた。

 

既に戦闘領域はアノート宙域の境界線から完全に隣の宙域に移動している。

 

敵艦隊が敗走している、そう考え流のが妥当だがランドにはある不安点と気になることがあった。

 

「“レストレーション”、指揮官のブラマッシュ中将を呼んでくれ」

 

話し合いをする為に旗艦から艦隊の指揮官を呼び出す。

 

呼び出されたランドの代わりに艦隊の指揮を取るレジスタンス宇宙軍中将、ブラマッシュ中将はメルクローラーⅡのホログラムに映り敬礼した。

 

『カルリジアン将軍、どうかされましたか』

 

オールバックの金髪の上から軍帽を被るブラマッシュ中将はすぐにランドに尋ねた。

 

ランドはメルクローラーⅡの操縦を隣のナインに任せながら中将に問いかける。

 

「敵艦隊がこのまま移動し続けた場合、どこまで行くか予想を立てられるか?」

 

『既に分析班が予想を立てています。そちらに転送します』

 

ブラマッシュ中将から分析班の敵艦隊撤退予想図が転送され中将のホログラムの前に浮き出る。

 

このまま行くとアデルハード艦隊はノートゥーイン・コリドーに向かいそうだという分析だった。

 

この予想図はランドのある懸念と一つにあった。

 

「まずいな…敵艦隊はこのままセスウェナの方面まで逃げるつもりかもしれん」

 

『セスウェナへ…?ですがアデルハード艦隊はセスウェナの帝国軍と軍事的同盟を締結しているという報告は受けていませんが…』

 

“帝国”と言っても3、4年前のように一つの巨大な銀河帝国という存在がある訳ではない。

 

そこから星の数ほど分裂し軍将化した勢力を帝国と呼称しているだけであってその軍将勢力同士の仲が決して良好とは限らなかった。

 

特にエリアドゥやセスウェナを含めた大セスウェナ領域は銀河内戦の末期に多くの軍将と地方勢力、惑星政府を統合して大セスウェナ連邦という一つの国家に昇格しておりアデルハード総督の軍閥とはあまり仲は良くなかった。

 

むしろ新共和国軍の本格的軍事介入がある前は度々国境紛争を繰り返していたそうだ。

 

その為負けそうだからと言ってアデルハード総督がセスウェナ方面へ逃げ込んだとしても大セスウェナの軍が手助けしてくれる訳ではない。

 

特に近年では大セスウェナ連邦は第三帝国陣営に加わりグランドモフの称号を受けている。

 

その第三帝国とも仲が良好ではないアデルハード総督が彼らの手助けを借りれるとは到底思えなかった。

 

「多分奴の考えはそうじゃない。奴は無理矢理セスウェナを我々と戦わせるつもりだ。こっちがセスウェナの軍艦を一隻でも攻撃すれば連中は戦わざるを得なくなる。セスウェナ軍を引き摺り出して互いに潰し合ってる間にアデルハード総督は漁夫の利を得る算段だろう」

 

『ですがそのような方法を取ればアデルハード艦隊も無事では済みませんよ…?』

 

「もう既に無事じゃないからな。最後の足掻き……いやアデルハードの賭けってやつだ。我々はまんまと賭けに嵌ってしまった」

 

顔だけ見ればむさ苦しい男だが意外と勝負師だったのだなとランドはこの時苦笑混じりに思った。

 

だが流石は賭博でベスピンの総督権を手に入れた男だ、勘が鋭い。

 

完全に罠に嵌る前に気づけたのは僥倖だった。

 

「なんとかして今から後退するぞ、このままじゃあターキンの飼い犬と衝突しちまう」

 

『了解、直ちに…』

 

『将軍!!敵艦隊の反対方向よりインペリアル級の小艦隊を発見!!こちらに接近しています!!』

 

だが一足遅かったようだ。

 

周辺を警戒していたブラハトック級ガンシップから通信が入った。

 

メルクローラーⅡを旋回させて見るとそこには無傷のインペリアル級五隻の小艦隊が佇んでいた。

 

ランドとナインは険しい顔を浮かべる。

 

「まずいな…急いで後退するぞ、アノート宙域内で迎え撃って…」

 

『将軍、敵艦隊が徐々に回り込み始めました!我々の退路を断つつもりです!』

 

「アデルハードめ…我々を絶対に後退させないつもりだな…?」

 

『遊撃部隊で応戦しろ。今のうちに小型艦と中型艦を後退させるんだ。まだ間に合うはずだ…!』

 

ブラマッシュ中将は冷や汗を掻きながら最低限の命令を出す。

 

今ここで大型艦を旋回させ後退させては二方向から敵に狙い撃ちされるだけだ。

 

だとすれば時間を稼いでいる間に離脱出来る艦から離脱させるのが最善手であろう。

 

先程まで圧倒的優勢であったレジスタンス軍に曇りが差し掛かる。

 

その様子を作り出したトレークス・デルヴァードス少将率いる小艦隊は慎重にレジスタンス艦隊と戦闘中のアデルハード艦隊に近づいた。

 

どこか想定していた様子とおかしい。

 

「レジスタンス艦隊及びアデルハード艦隊を発見、このまま領域侵犯で迎撃可能ですが…」

 

「ああ、無論そうするつもりだ。しかし我々が出る前にこんなところまで来ているとは…想定外だ」

 

トレークスは顎に手を当て首を傾げた。

 

本来ならトレークス麾下の小艦隊はもう少し前方に移動するはずだった。

 

しかし彼らが一旦ジャンプアウトしたこの領域まで既に敵は前進していた。

 

「思いの外追撃が長引いたのでしょうか…」

 

トレークスの副官はそう考えるが詳しいことまで完全に把握する事は出来ない。

 

「…分からんがアデルハード艦隊の動きからしてこのままドーラまで引き寄せるのは恐らく不可能だ。本部に暗号通信を打電しろ、“不死鳥の足が止まってしまった”」

 

「了解」

 

通信士官が作業している間にトレークスは次の命令を出す。

 

「作戦は変更だ、我々も今すぐ戦闘に加わりアデルハードとレジスタンス双方をこの場所に押さえ付ける。厳しい戦いになるが全員頼んだぞ!」

 

「了解!」

 

トレークスの小艦隊は戦闘中のレジスタンス軍とアデルハード艦隊双方に砲撃した。

 

両者とも大セスウェナの領域を侵犯した為、建前上はそうだ。

 

それはレジスタンスも元帝国の軍閥も関係ない。

 

ここで生贄になってもらおう。

 

 

 

 

 

 

-アウター・リム・テリトリー ヴィデンダ宙域 惑星ドーラ 大セスウェナ連邦艦隊集結地点-

惑星ドーラにはレジスタンス軍撃破の為に密かに集結した大セスウェナの宇宙艦隊が艦列を並べ命令を待っていた。

 

旗艦“エグゼキュートリクス”を始めとしたインペリアル級のような主力艦やヴィクトリー級、プロカーセイター級、アークワイテンズ級やレイダー級の中、小型艦、クエーサー・ファイア級やインペリアル・エスコート・キャリアー、セキューター級などの空母と様々な軍艦が揃っている。

 

中にはアリージャンス級バトルクルーザーやプリーター級スター・バトルクルーザーなどのインペリアル級を軽く超える大型艦も中に存在していた。

 

されど指導者ヘルムートが乗り込むこの艦隊の総旗艦は依然として“エグゼキュートリクス”でありただのインペリアル級スター・デストロイヤーのはずなのだが何処か神々しいオーラのようなものを纏っているように見えた。

 

以前部下の1人から「旗艦を大型でより頑丈なバトルクルーザーやドレッドノートに変更してはどうか」と提案されたことがあった。

 

元々ヘルムートが乗っていたのはそれこそプリーター級やアリージャンス級、ベラトール級であり大伯父の舟とはいえインペリアル級を旗艦とする必要はなかった。

 

しかヘルムートは旗艦の座を断じて譲る事はしなかった。

 

彼は“エグゼキュートリクス”を旗艦に望んだ。

 

この艦でセスウェナの敵を駆逐することこそ、真に大伯父達の意志を継ぐことになるだろう。

 

ヘルムートにとって“エグゼキュートリクス”はただのインペリアル級ではなくある種道標のように感じていた。

 

「しかし流石ですわね。秘密裏にこれだけの艦隊を動員出来るなんて、流石ターキン家のホームですわ」

 

クラリッサはブリッジのビューポートから艦隊を眺めながらそう呟いた。

 

1宙域の戦力しか保持していないクラリッサやケッセルの軍隊とは違い大セスウェナはこの南アウター・リムの殆どの部隊を接収して様々な惑星政府を一つにした巨大な連邦軍だ。

 

以前は第二帝国や新共和国についでこの銀河系で最も巨大な軍を保持しておりそれは第三帝国に組みした今でも変わらない。

 

エリアドゥのロマイトを始め様々な資源に恵まれておりセスウェナ造船所などクワットほどではないが独自で軍艦や兵器を製造出来る技術力も持っている。

 

「まあ我々はかつての第18軍の戦力を丸ごと併合しただけではなく、各地の惑星政府の軍隊や軍閥の戦力も吸収していますからね。統一などに時間は掛かりましたが、掛けた甲斐はあった」

 

簡単な道ではなかった。

 

何度も多くの軍将と戦ったし様々な誘惑を跳ね除けこのターキン家が代々守り継いできた領土を残すことが出来た。

 

その苦労は今なら報われたように思える。

 

「羨ましいですわ、私達の領域では総動員を掛けても防衛の為の戦力しか確保出来ませんもの」

 

「そもそも国土の問題がありますからね、我々の領域に比べ貴国の領域はお世辞にも大きいとは言えない」

 

クラリッサ達が有する領域はあくまでケッセル宙域とその周辺の一部のみだ。

 

それも銀河の大分角の方に位置し燃料資源が豊富とはいえ立地的にはあまり良くない。

 

むしろそんな状態でよくあれだけの精強な軍隊を保持していられるとヘルムートは逆に感心していた。

 

度々密かに送り込んでいる特務大使から送られてくる演習の様子などを眺めているとその精強さや戦闘力の高さに驚かされる。

 

クラリッサ自身はどうか分からないがケッセルは“()()”に向いていない。

 

ハット・スペースが第三帝国の国家弁務官区である以上ケッセルの仮想敵はまずハット・スペースの国家弁務官区だ。

 

国家弁務官区には治安維持と周辺のレジスタンス軍殲滅も兼ねてかなりの大部隊が派遣されている。

 

それも100%親衛隊の管轄で油断出来ない相手だ。

 

数で負けている以上ケッセルはいざ戦争になった場合防衛側に位置する。

 

その為専ら防衛を主体とした演習をよく行なっているのだがヘルムートや他のセスウェナの軍将校達はケッセル軍の練度に驚かされていた。

 

艦隊と地上部隊の連携で完全に攻め入る敵を迎撃し逆に隙を作り出すことで相手を内側に引き入れ領域内で“殲滅する”という搦手も得意だった。

 

クラリッサも口ではこう言っているが内心は「まあうちの軍の方が強いですわ」くらいに思っているだろう。

 

そしてその上で彼女が考えていることは別にあるはずだ。

 

「あなた方なら独自の陣営や安全保障同盟を築いても良かったと思うのですが、何故それをなさらずに第三帝国へ?」

 

「…………」

 

ヘルムートは黙り込んだ。

 

そのことはヘルムートにとって人生の失敗の一つと考えていたからだ。

 

自分の想像力や状況判断の能力が足らなさ過ぎた。

 

それと同時に“()()()()()()()”のもまずかったとヘルムートは考えていた。

 

彼は苦々しい思いを含みながら理由を自嘲的に話す。

 

「…単に私の失敗ですよ。新共和国のせいにするつもりもありませんし仰る通りやろうと思えば出来たはずだ。それでもやらなかったのは“()()()()()”からでしょう。あの時の希望と奇跡を」

 

「あの時の希望と奇跡…とは?」

 

マルスがヘルムートに尋ねた。

 

「かつて第三帝国が動く前に一度だけコルサントは“()()”され帝国は最後の勝利を得ていた。俗に“コルサントの奇跡”と呼ばれるあの戦いのことだ。私は本気で彼らなら帝国を再建し正しい方向へ導けると信じていた」

 

マルスはその単語を聞くだけでパアッと顔が明るくなった。

 

彼を見ると3年、いやもう4年ほど前の事を思い出す。

 

銀河内戦の末期、突然やってきたある1人の“()()”のことを。

 

そのモフは直接我々に義勇兵の志願を募るよう協力を申し込んできた。

 

最初は当然、全員が「これは何らかの罠だ」と疑りの目を向け非協力的であろうとした。

 

それでもあの当時の乱戦状況の銀河系において自ら足を運んで態々遠く離れたエリアドゥまでやってきたのだ。

 

最悪自分が死ぬかもしれないのに罠を敷く為にそんなことするとは思えない。

 

それにヘルムートはそのモフが言った事を思い出した。

 

「我々が、君の先祖が作った帝国をもう一度信じてはくれないか」と。

 

そのモフの中には今まで見た軍将達とは違い確かな“()()”のようなものがヘルムートには見えた。

 

故にヘルムートはそのモフの強力通り密かに義勇兵を送り後に“()()()()()()()()”と呼ばれる帝国最後の勝利に貢献出来た。

 

あのモフは帝国にとって絶望的な状況の中、それこそ奇跡と呼べる作戦を成功させてしまった。

 

その結果第二帝国というあの状況では考えられないほど強大な帝国の後継政府が誕生し今に至る。

 

故にヘルムートはコア・ワールドに残った第二帝国を信じ、最終的に第三帝国に降った。

 

強い意志とそれに集う者がいれば奇跡は起こるのだと、モフが亡くなり“()()()()()()”にもその魂は受け継がれているのだとヘルムートは信じていた。

 

だがそれは幻想でありヘルムートの失態だった。

 

第三帝国は彼の意に反し、ただ悪戯に罪のない人々を捕らえては虐殺し代理の名の下帝国を悪変に導く帝国の真の敵だ。

 

そんな者に与してしまったヘルムートもまた、自身を愚か者と考えていた。

 

「第三帝国はあの時とまだ同じだと思っていた……だが、それは大きな間違いだった。後悔はしていないと思うが……出来うるならあの時の判断を取り消したいものだ」

 

ヘルムートは自嘲混じりに笑った。

 

だがクラリッサは重たい表情を浮かべる訳でもなくかと言って嘲笑う訳でもなく平然とした顔でこう告げた。

 

「そうでしょうか、まだ今でも十分取り消せると思いますわよ」

 

あまりにも単純で意外過ぎる返答にヘルムートは無意味に思慮を巡らせていた。

 

「それはどういう…」と尋ねる前に慌てて入ってきた将校がヘルムートに報告した。

 

「閣下!国防軍の艦隊がこの場所にジャンプアウトしてきます!」

 

「何?そんな報告受けて…なっ!」

 

ヘルムートが否定するより先にある一隻の軍艦がセスウェナ艦隊の前方にジャンプアウトした。

 

全長およそ19キロの超弩級戦艦(Star Dreadnought)、その姿は見る者を圧倒し何がきたのかをすぐに知らしめた。

 

「……あれが噂の……」

 

「ええ、帝国宇宙軍の総旗艦……“死神( Reaper)”」

 

ケッセルから来た2人は初めて見るだろう。

 

ヘルムートはもはやその巨体には驚かなくなっていたが何故このタイミングで現れたのかということを考え閉口していた。

 

帝国宇宙軍の総旗艦にしてこの銀河の表舞台に立つ三隻のエグゼクター級スター・ドレッドノートのうちの一隻、エグゼクター級“リーパー”。

 

宇宙軍長官のバロー・オイカン大提督の乗艦であり現在はハンバリンに駐留しているはずだが何故かここに多数のインペリアル級ごと現れた。

 

明らかに一個艦隊ごとここにジャンプアウトした気がする。

 

「各艦の識別を確認……どれもハンバリンに駐留する帝国宇宙軍第一艦隊のものです」

 

「閣下……これは一体……」

 

ダック艦長はヘルムートの方を見つめたがヘルムートも答えをすぐに出すのは難しい。

 

「…事前にレジスタンス艦隊とアデルハード艦隊の動き次第によっては応戦すると通告していたが…」

 

「ですがこちらは事前に援軍を送るなどという事は聞いていませんでしたよ…?」

 

ジェイ司令官はヘルムートに問い詰める。

 

「国防軍が北から進むのと同じように横合いからアノートに進軍するつもりなのだろう。恐らく我々がエリアドゥにいないからドーラに来たまで……しかし虎の子の第一艦隊をアノート戦に持ってくるとは」

 

「閣下!“リーパー”よりラムダ級シャトルが本艦に着艦することを求めていますが…」

 

通信士官の1人がヘルムートに報告する。

 

ビューポートから外を覗いてみれば通信士官の言う通り1機のラムダ級がまだ小さいがこちらに近づいてきているのが見えた。

 

「断る訳にもいかん……恐らくあれに乗っているのは宇宙軍長官本人だ。だが……」

 

ヘルムートはケッセルから来たクラリッサとマルスの方を見つめる。

 

ケッセルの視察団を見られ第三帝国の本国から問い詰められるような事は非常に面倒だ。

 

されど帝国宇宙軍の長官の乗艦を断ることもそれはまた面倒なことになる。

 

どうにかして彼女らを隠して宇宙軍長官のオイカン大提督をこの艦に入れなければならない。

 

「着艦を許可しろ。ジェイ司令官、ダック艦長は出迎えを頼む」

 

「了解!」

 

「了解」

 

2人は幾人かの部下を連れてブリッジを後にした。

 

その後ヘルムートはブリッジの辺りを見渡しながらうろうろする。

 

「どういたしますかお嬢様。このまま“()()()()()()()()()()”にいるのが見つかればかなり面倒なことになりますが」

 

「あら、第三帝国の方々が私を見つけられるとお思いで?」

 

「十中八九、見つかりますね。何処か隠れる所にいて貰わないと…」

 

クラリッサのような目立つ格好をしていれば殆どが軍服か戦闘服、作業服の“エグゼキュートリクス”の艦内じゃすぐにバレる。

 

それに恐らく2人は第三帝国に顔が割ているはずだ。

 

見つかればすぐに捕まってしまう可能性もある。

 

何せケッセルは未だに第三帝国への参集を蹴り続けているのだから。

 

そうこうしていると時間が経つのは早いものでハンガーベイの司令塔から『ラムダ級シャトル着艦しました』と報告が入った。

 

もう後数分も経たずに宇宙軍の高官達が入ってきてしまう。

 

しかし2人を当分入れて置けるようなスペース、ブリッジには少ない。

 

するとある1人の若い、と言ってもヘルムートよりは年上の中尉が彼に提案した。

 

「あの閣下…ブリッジ近くの倉庫ならどうでしょうか。あそこなら誰も入りませんし人とすれ違うことも少ないですし何より長時間いても問題ありません」

 

「そこだ、助かった中尉。お2人とも今すぐ私について来て下さい」

 

ヘルムートはキョトンとした2人を連れて中尉の言っていた倉庫まで向かった。

 

「暫くの間待ってて下さい」

 

「はい…わかりまし」

 

そのまま2人を入れてと伝え倉庫の扉を閉めた。

 

ヘルムートは急いで戻り一息吐いた。

 

襟元などを触り軍服に問題がないことをチェックし一行を待った。

 

それから数分も経たずに彼らはやってきた。

 

ブリッジまで上がってきた帝国宇宙軍のトップであるバロー・オイカン大提督がまず彼に敬礼した。

 

彼の背後にいる多くの将官達も敬礼しヘルムートと近くにいた全ての将校が敬礼を返した。

 

「対レジスタンス会議以来ですね、グランドモフヘルムート」

 

「オイカン大提督こそ、お久しぶりです。何故このドーラに?」

 

互いに握手を交わしヘルムートは単刀直入に尋ねた。

 

オイカン大提督も包み隠さずその理由を答えた。

 

「アノート宙域の攻略の為ですよグランドモフ。こちらとしては何故あなた方がこのドーラ周辺に艦隊を展開させているのか疑問です」

 

「件の宙域でアデルハード総督の軍閥とレジスタンス軍の戦闘を確認しました。戦闘の規模から言ってこのままでは旧大セスウェナ連邦構成惑星にも被害が及ぶ可能性があります。その為に守備と警備隊を動員しているだけですよ」

 

嘘は言っていない。

 

だが意外なことにオイカン大提督ら正規の宇宙軍は我々の行動を知らなかったようだ。

 

エリアドゥやセスウェナに残ったモッティ達がよくやってくれたのだろう。

 

「決して直接アノートに攻め込むつもりはないのですね」

 

「大セスウェナに駐留する軍は全て国土の治安維持を行うだけで限界です。それは“()()()()()()()()()()()()()”」

 

オイカン大提督は苦笑を浮かべ「痛い所を突かれる」と呟いた。

 

第三帝国が今の状況を無理をして作っていると言うのは十分承知している。

 

だからこそ我々にも助けを求めかつての新共和国領でも志願兵を今すぐ募り部隊を形成していた。

 

「確かに帝国軍は黎明期以上に少ない戦力を分散させすぎている。それも一方向だけではなくこの銀河系ほぼ全方位に」

 

ヘルムートは彼が引き連れた将校団の方に目を向ける。

 

皆オイカン大提督の発言を否定出来ずにバツの悪そうな顔で目を背けていた。

 

彼らとて現実を知らない訳ではない。

 

むしろ知っているからこそこの険しい現実のことを語りたくないのだろう。

 

特に南アウター・リムでは既にナブーを失陥しているしシス・エターナル艦隊が来るまでは彼ら宇宙軍だって負け続きで一時期はガレルすら失っていた。

 

「宣告しておきますが我々の兵力は無限ではない。再三に渡って侵攻命令を拒否しているのもその為です。不安を抱えたまま攻め手を担うのは気が引けますから」

 

誇張しすぎているとはいえ嘘ではない。

 

最近は治りを見せている周辺の軍将の反乱勢力もいつ再起するか分からない。

 

さらにナブーが失陥したことにより大セスウェナはまだ点と点であるがレジスタンスに挟み撃ちにされている。

 

何より第三帝国の命令で侵略し後から来る親衛隊とかの部隊を領域内に引き込んでは大変な事になる。

 

彼らのやることに生半可なものは一つもない。

 

「だが総統は大セスウェナに戦うことを望んでいる。貴方の大伯父のウィルハフ・ターキン総督のように“()()()()()()()()()()()”としてあるべき姿を望んでいる」

 

「“()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”」

 

ヘルムートは鋭い口調でオイカン大提督に答えた。

 

オイカン大提督は唖然とした表情で何処か悲しそうに微笑む。

 

実直な職業軍人であると多くの経験豊富だとの評価を持つオイカン大提督が今の第三帝国の現状に満足しているとは思えない。

 

むしろオイカン大提督はヘルムートと同じような気持ちで同じような立場ではないのかと考えていた。

 

背後の将校団は動揺していたがオイカン大提督はどこか冷静で、羨ましそうな雰囲気をヘルムートは感じ取っていた。

 

「我々は十分第三帝国に貢献している。大セスウェナの元の領域に合わせてそれ以外にも多くの星系や惑星を併合し帝国の再建に役立ててきた。軍事以外の面の評価もお願いしたいものです」

 

「それは総統や周りのCOMPNORやライヒスタークの連中次第だろう。私が出来る事は……残念ながら少ない」

 

オイカン大提督は申し訳なさそうに呟いた。

 

彼の性格上出来ないと言うのもあるし立場上大セスウェナの肩を持つのも難しいのだろう。

 

彼を責めるのではなくむしろ味方に引き込もうとヘルムートが考えた矢先部下から報告が入った。

 

「閣下、パトロール中の小艦隊から暗号通信です。“()()()()()()()()()()()()()()”と」

 

「…そうか、位置は」

 

ヘルムートはすぐに位置を尋ねる。

 

報告した部下は「ポイント3-67です」と答えた。

 

「閣下…」

 

ダック艦長は不安そうな表情で詰め寄る。

 

これは真っ先に衝突するトレークスの小艦隊のみ発令を許された特別な暗号文だ。

 

通常作戦が不可能だと判断した場合にトレークスの判断で暗号文が打たれそれを受け取ったドーラに駐留する司令部が予備作戦に切り替えるか否かの判断を行う。

 

だが実際にはこの暗号文が送られた時点で作戦の切り替えは決まっていた。

 

ヘルムートは小さく頷き指示を出す。

 

「周辺の全艦隊及びドーラの駐留艦隊に伝達、今すぐポイント3-67にジャンプしトレークス小艦隊に加勢せよ。予備作戦に変更し対処に当たる、急げ!」

 

通信士官達が頷き、一斉に各部隊へ伝達し始めた。

 

内情を理解していないオイカン大提督らは首を傾げ将校団もざわつき始めた。

 

オイカン大提督を始め何人かの将校達は部下から報告を聞いていた。

 

「申し訳ありませんがオイカン大提督、我々は出撃しなければなりません。加盟領域にレジスタンス軍の侵入を発見しました、それもかなりの大部隊です」

 

「こちらでも確認している。“リーパー”とその配下の艦以外は全て前線へ急行させろ。包囲戦術を展開し大セスウェナ艦隊と共にレジスタンス軍を囲み潰す」

 

流石共和国軍時代からの歴戦の提督、良い判断だ。

 

すぐ様ヘルムートも了承しそれぞれ命令を出した。

 

「我々も急いで“リーパー”に戻るぞ」

 

「はい大提督!」

 

オイカン大提督と彼の部下の将校団は全員“エグゼキュートリクス”のブリッジを後にし始めた。

 

ヘルムートはオイカン大提督に最後敬礼し「それでは、戦場で」と言葉を送った。

 

大提督も敬礼を返し2人はそれぞれの立場の責務を全うする。

 

「クリフォードの機動部隊は戦場にジャンプアウトしたすぐ直後にトレークスの艦隊に合流するよう伝えろ。トレークスも相当無理をしているはずだ」

 

「了解」

 

「バーク提督の艦隊は最左翼にジャンプアウトし中央をおじ上の“オルタネート”とロス提督の航空艦隊は中央に配置しろ。ハブリン司令官にはジャンプアウトと同時に直ちに出撃して航空攻撃を敢行するように伝えろ。そして最右翼の帝国宇宙軍との連結部は我々で担当する」

 

「はい閣下!指定ポイントへのジャンプアウト急げよ!」

 

ダック艦長は部下に命令を出しその間にヘルムートは忘れないうちにブリッジ近くの倉庫に向かった。

 

本当に第三帝国の人々が帰ったか確認し倉庫を開けた。

 

「あら、意外に早かったのですね」

 

クラリッサは平然とした顔で言ってきた。

 

ヘルムートも特に気にすることなく彼女に伝える。

 

「ようやくお待ちかねの戦闘の時間ですよ」

 

クラリッサは微笑を浮かべ倉庫から出てきた。

 

ヘルムートの言う通りいよいよ“()()()()()()”大セスウェナとレジスタンス軍の戦いの始まりだ。

 

 

 

 

 

-シス・エターナル第三帝国共同占領下 アウター・リム・テリトリー ロザル宙域 ガレル星系 惑星ガレル-

ガレルの軌道上には未だにジストン級が一隻駐留しており地上には軍政の為にシス・エターナルの一個軍団と新たに来た国防軍の二個師団がガレル・シティに駐留していた。

 

軌道上にもインペリアル級が三隻追加されジストン級一隻とインペリアル級三隻の合同機動部隊がガレルを完全に監視していた。

 

国防軍の二個師団と言っても単なるストームトルーパーや地上軍トルーパーの一個師団ではない。

 

インペリアル級に常駐する海兵部隊に加え宇宙軍トルーパーらも混ぜ合わさっている。

 

宇宙軍トルーパーとストームトルーパーの合同部隊は現在でもテンペスト・フォースなど割と珍しい部類ではない。

 

このような軍政下においては治安維持の為にも数を必要としており警備などの為に宇宙軍トルーパーが動員されることもあった。

 

その為地上にISB(ルビ 帝国保安局)の二、三個中隊が展開されているのも建前としては似たような理由だ。

 

治安維持や警察機能を維持する為に法執行機関の専門としてISBまたはFFSBの所属兵員達が地上で“()()()()()()”を実行する。

 

その為に彼らには高い権限が与えられ治安維持や法執行の為には多少の荒業も許可されていた。

 

だがその高い権限が行使される大半の理由はやはり“()()()()()()()()()()”であったり積極的にレジスタンスを支持したり情報を流していたとされる“()()()()()()()”だ。

 

だが最近では市民の抵抗活動が大きくなってきたようでゲリラの掃討や捕縛の任務も請け負っていた。

 

今日もガレル・シティでは保安局員達が権限を行使し“()()”してる様がブラスター・ピストルの銃声と共に否が応でも分かる。

 

先程近くのアパートメントに入っていった2人の保安局員も銃声の後、ピストルをホルスターにしまいながらタバコを吹かしながら出てきた。

 

保安局員が出てくると同時に彼らの部下と共われる他の兵士達が幾つかの器具や袋を持ってアパートメントに入っていた。

 

その様子をローブを着た青年、Uウィングで密かにガレルに入ってきたジェルマンはフード越しからその様子を眺めていた。

 

「おい、あんまり見るな。目を付けられるぞ」

 

ジョーレンはジェルマンに忠告し「すまない」とジェルマンは目を背けた。

 

数歩歩くだけでもあちこちに帝国軍の将兵の姿が見える。

 

何かを話している宇宙軍トルーパーや近くを一個分隊ほどで歩くストームトルーパーの隊列、壇上に立って市民に今後のことを説明する将校など様々だ。

 

だが誰もこの中にレジスタンス軍の最精鋭のスパイが紛れ込んでいるとは夢にも思わないだろう。

 

何せ現地のレジスタンス兵士は既に1人残らず殺したはずだ、少なくとも第三帝国とシス・エターナルはそのような認識でいた。

 

だが実際には2名ほどの生存者がおりそれを助ける為に“3()()”の救出者がこのガレルに潜伏していることをまだシス・エターナルと第三帝国は知らない。

 

「ねえ…あれが…」

 

右手でジョーレンを呼びジェルマンはある3〜4人のトルーパーに目を向ける。

 

そのトルーパーはアーマーが白ではなく真っ赤に染まっており持っているブラスターもE-11とはかなり違っていた。

 

ジョーレンは小さく頷く。

 

「ああ、あれが噂のシス・トルーパーか…」

 

平然とした態度でシス・トルーパー達の側を通り抜ける。

 

やはりシス・トルーパー達も2人を疑うことなく反対方向へ歩いていった。

 

シス・トルーパーの話はレジスタンスにも流れてきている。

 

シス・エターナルの先兵たるこの赤き兵士達はブラスター弾をものともせず前進を続け新型ウォーカーの援護を受けて新しいブラスター・ライフルの大火力で敵兵を蹂躙していく。

 

ある者の噂ではシス・トルーパーのブラスター・ライフルの射撃だけでXウィングが撃墜されたらしい。

 

これらが誇張表現だとしても現にこのガレルのレジスタンス軍守備隊はシス・エターナル軍とシス・トルーパーに攻撃され全滅している。

 

シス・トルーパーは十分危険に値する存在だ。

 

「あの装備…全体的に国防軍や親衛隊のトルーパーなんかよりも10年以上先の装備を使っている。だが節々にどことなくクローン・トルーパーアーマーらしさも感じた」

 

「新世代のトルーパー・アーマーっていうこと…?」

 

「間違いなくそうだ、連中からアーマーを引っぺがして持ち帰れたらいいんだがな」

 

十分に話したジョーレンは口を閉ざし再び周りに溶け込んで黙って歩いた。

 

ガレル・シティの市民は皆なるべく兵士に目を合わせず下を向いて歩いている。

 

何かの被り物やフードで顔を隠しどこか足早に歩いていた。

 

中にはすっぽりポンチョやローブで身を隠している者もちらほら見受けられる。

 

目を合わせて疑われてはたまったものではないし単純に“()()()()()”というのもあるだろう。

 

レジスタンス軍が駐留していた時もこんな有様だったかは分からないし流石に帝国だってどこもかしこもがこんな有様ではないだろう。

 

ただ今のガレルは間違いなく“()()”と表現していいだろう。

 

強大な暴力によって支配され常に誰かが殺されている。

 

上空を何度もTIEファイターが飛んでいるしその更に上の軌道上にはスター・デストロイヤーがガレルを見下ろすように静かに鎮座している。

 

市街地には新型のウォーカーやオキュパイア・タンクが巡回し市民を監視していた。

 

民間のスターシップでは到底この惑星からは脱出出来ない。

 

陥落と共にこのガレルは巨大な監獄惑星になってしまったのだ。

 

抵抗しようとする者もいるらしいが今は支援出来る状態ではない。

 

とても残念だと思いながら2人はある場所で立ち止まった。

 

「ここだな…」

 

2人は看板を確認しある酒屋に入っていく。

 

ここはガレル・シティの中ではそれほど名が知れている訳ではないがそれでも占領前はそれなりに繁盛していた。

 

だが今ではすっかり開店休業状態、店の中はすっからかんで人気は少ない。

 

こんな状況だから仕方がない、誰も今のガレル・シティの外を歩きたくないし店の中で何かを食べたり飲んだりするという気分でもないのだろう。

 

されど完全に人がいないという訳ではなく2、3人の人影が見えた。

 

その中にジェルマンとジョーレンが入ることによって少しは人気も増えるだろう。

 

尤もジェルマンとジョーレンはここへ飲みにきた訳ではないが。

 

テーブル席に座る1人の男の前に座りウェイター・ドロイドに2人はジャワ・ジュースを頼んだ。

 

ドロイドが離れていくことを確認しまずジョーレンが口を開いた。

 

「昼間っから酒が飲めるとはいい身分だな。流石レジスタンスの中佐殿だ」

 

小声だったがその声の掛け方は反対側の男の正体を明かすのに十分だった。

 

男はフードを取りテーブルに置かれた飲み物を口にする。

 

「全く失礼な、飲んでいるのはただのモーフ・ジュースだよ。流石にアルコールは飲めない」

 

微笑を浮かべながらもう1人の救出者、ラクティス・ストライン中佐はグラスを回して答えた。

 

それからすぐに2人分のジャワ・ジュースをウェイター・ドロイドが運んできた。

 

コップを置かれドロイドが離れた時から彼らの会話は始まった。

 

「レンディリからここまでよく来てくれた。ありがとう」

 

「仲間の危機を危機から助けるのは当然のことですよ」

 

ジャワ・ジュースの中に何か入っていないか確認しながらジェルマンはそう答えた。

 

ラクティスは再びモーフ・ジュースを口に含みながら立ち上がろうとした。

 

「さて、2人も来たことだし早速救出に向かおうとしよう。既に位置は把握している」

 

早く助けて早く離脱するつもりでいたラクティスは早速2人を連れて現場へ向かおうとしていた。

 

だがジェルマンは窓の方に目をやりながら「待ってください」とラクティスを止める。

 

「ああ、まあまずは落ち着いて座って。それと窓の方に目を向けないように」

 

ジョーレンも同意しラクティスに忠告した。

 

ラクティスは渋々言われた通りに座り「どういうことだ」と2人に尋ねた。

 

ジェルマンは敵に悟らせないように文字を打った彼がよく使う端末をテーブルの下からラクティスに渡す。

 

ラクティスは渡されたその端末チラリと一読し彼は内心大きく動揺した。

 

何せ端末にはただ一言「見張られている」と書かれていたからだ。

 

ラクティスはなんとか表情に出さぬよう努める。

 

「我々が店に入った辺りから恐らくISBの将校と職員の2人くらいに見張られています。誰をつけて誰に言われてかは分かりませんが」

 

ジェルマンはジャワ・ジュースを少し飲みながらラクティスに伝えた。

 

彼らの言う通り路地の店の向かいの路地裏から2人の保安局員がマクロバイノキュラーで店の様子を探っていた。

 

ジョーレンはジェルマンに「つけられたとしたらいつだと思う」と小声で尋ねた。

 

「もしかするとレンディリで何かを疑われたのかも知れない」

 

ジェルマンはあの時ぶつかった将校達がジェルマンの後ろで話していた会話を朧げだが思い出していた。

 

まだ半信半疑だったがどこか我々のことを疑っているようだった。

 

もしかするとそれでなんらかの経路を伝ってこのガレルの駐留部隊に伝わったのかも知れない。

 

だがまだ保安局員のみで店内に突入してこないことを考えるとまだなんとかするチャンスはある。

 

「このままじゃまともに動けないぞ。どうするんだ?」

 

ラクティスは2人に詰め寄り尋ねた。

 

そこでジェルマンはあることを告げる。

 

「“()()()()()()()()()()”、まだ潰せるうちに」

 

そこには一点の揺らぎもなくジェルマンの意志は確固としておりその為の作戦も抜かりない。

 

そんなジェルマンの様子を隣で見つめるジョーレンはどこか頼もしくもあり、情報部員としての成長が嬉しくもありそれと同時にどんどん“()()()()()”へ寄ってくる悲しみもあった。

 

何せジェルマンはこの長きに渡る戦争で大分“成長した(変わってしまった)”のだから。

 

 

 

 

 

 

-シス・エターナル占領下 ドゥミナス宙域 ドーネアン星系 惑星ドーネア-

レジスタンス軍の守備隊はバロスでの大敗を聞きこのまま守り続けるのは不可能だと考え上層部の命令で市民を連れてバロスまで撤退した。

 

その為シス・エターナル艦隊は一回も戦闘することなくこのドーネアまで最も簡単に侵入出来たのだ。

 

戦闘することなくその脅威を誇ったシス・エターナルのジストン級やエクリプス級はドーネアを見下ろすように艦隊を配置している。

 

そして“エクリプスⅡ”のブリッジからフリューゲルもドーネアを見下ろすように眺めていた。

 

ブリッジから宇宙空間や眼前の星を眺めることはこれが初めてではない。

 

むしろ飽きるほど眺めてきたし眺めたすぐ後にその惑星にスターファイターに乗り込んで惑星の中を敵機を堕としながら飛び回ったことだってある。

 

長い軍役生活の中でフリューゲルは昔のように星々を眺めて目を輝かせることを大分前から忘れていた。

 

だが“()()()”とはそう言うことなのだ。

 

「地上に罠や敵の残党、バトル・ドロイドや自動砲塔を用いた防衛陣地は確認出来ず敵は本当にドーネアを放棄してロザルまで後退したと思われます」

 

ブリッツェ中佐はタブレットを持ちながらフリューゲルに報告する。

 

敵が既に撤退したのを確認しているとはいえ人命が掛かっている以上万が一のことも考えて行動しなければいけない。

 

幸いにも惑星内にそのようなトラップがないのは僥倖といった所だろう。

 

兵員がいなくともバトル・ドロイドや自動防衛タレットを市街地に配備し上陸した部隊を迎撃されるだけで相当の兵員が死傷する。

 

本来ならそれを避ける為にもなるべく電撃的な制圧を行う事が多いのだが今回のシス・エターナル艦隊はあえてそれをしなかった。

 

ゆっくり堂々と行軍し迫り来るレジスタンス軍や敵対勢力をその力を持って徹底的に叩きのめし1人の生存者も出さぬほどの戦果を轟かせシス・エターナルの力を告示させることが彼らの使命だ。

 

「このまま第三帝国の軍が到着するまで待ちましょうか」

 

ブリッツェ中佐はフリューゲルに判断を仰いだ。

 

「いや、むしろガレルやその周辺に駐留する帝国軍に急ぐよう命じろ。我々はこのまま全戦力を結集させロザル攻略戦に乗り出す」

 

「ついに…ですか…?」

 

「ああ、ついにだ。ロザル攻略戦はシディアス卿も我々を期待し強くお望みだ。早急に彼の地を帝国へと奪還する」

 

フリューゲルは断言した。

 

このロザル攻略は再びシス・エターナルの力を誇示する為にもある目的の為にも非常に重要視されていた。

 

目的の一つである“()()()()()()()()()()()()()()()”を行う為にもこのロザルはどうしても破壊せず制圧しなくてはならなかった。

 

何せこのロザルにはまだカイバー・クリスタルが大量に埋蔵されている。

 

これを採掘し今後更にジストン級やソヴリン級、エクリプス級といった超兵器搭載艦を製造しなくてはならない。

 

()()()()()()()()()”。

 

「ガレルに駐屯している第19軍団と“オラクル”を引き上げさせて合流させましょうか?」

 

ガレルに残してある第19軍団とジストン級“オラクル”は今のシス・エターナル艦隊だと戦力の一翼を担う存在だ。

 

アキシャル・スーパーレーザーたった1門だけで主力艦何十隻分の大きな力を発揮するし第19軍団のシス・トルーパー達は皆精鋭だ。

 

陸戦に回せば心強い。

 

「ガレルの軍政は完全に第三帝国が引き継ぐよう取り付けてある。間も無く地上の撤収が始まり1時間以内にはドーネアまで到着するだろう」

 

「そうでしたか。ではドーネアへ上陸した部隊も撤収させましょうか?」

 

「後1時間したら撤収させろ。“オラクル”と合流した後に全艦艇を率いてロザルへ進撃しロザル攻略作戦を実行する。ロザルの破壊が事実上不可能な分、恐らく艦隊戦よりも地上戦が激化するだろう。作戦規定通り上陸する各部隊には入念に最終チェックを済ませるよう伝えろ」

 

「了解!」

 

このロザル攻略作戦だけはシス・エターナル軍の司令部が進軍方向を決めた時点で事前に用意してきたものだ。

 

特に地上戦はヴィット将軍のような経験豊富な地上軍出身の将軍達が集まって作戦を作り上げた。

 

ロザルはレジスタンス軍にとっても精神的な重要拠点である為死に物狂いで戦うだろう。

 

ならばこちらは確実な作戦を持って死に物狂いで敵を駆逐するまで。

 

シス・エターナルに敗北の二文字はなく、常に勝利の二文字しかないのだ。

 

「ロザル……か。レジスタンスは必死に戦うだろうが、市民の方はどうだか…」

 

「元帥閣下!エクセゴルより報告です!」

 

連絡将校のハイラン少佐が敬礼しフリューゲルの側に来た。

 

ハイラン少佐は新たに“エクリプスⅡ”に配属された純粋なシス・エターナル軍の将校でエクセゴルとフリューゲル個人の連絡役を務めていた。

 

エクセゴルから、ということはただの報告ではないのだろう。

 

「シディアス卿からか?それとも司令部からか」

 

「軍司令部からです。エクセゴルから新たに一隻ジストン級“ピルグリム”が特別任務を受けた精鋭班と第3軍団を乗せてボーラ・ヴィオに出撃したとのことです」

 

ピルグリム”といえば例のジェダイと皇帝の手を連れてくる時に銀河系に先行した“エクリプスⅡ”の艦隊と共に最初に銀河系に足を踏み入れたうちの一隻だ。

 

そのジストン級が再び銀河系に精鋭班と第3軍団を連れて出撃すると言うことは何かしらの軍事任務を請け負っているのだろう。

 

「特別任務とはなんだ?無論大体想像は付くが」

 

特にボーラ・ヴィオというところでだ。

 

ボーラ・ヴィオには放棄されたカミーノアンのクローニング施設がある。

 

そこへシス・エターナル軍が送り込まれるということはクローニング施設の破壊や技術の奪取を目論んでいるのだろう。

 

今のシス・エターナルのクローニング技術はまだ“()()()()”。

 

「どうやら例の“()()()()()()”がボーラ・ヴィオにいるらしく…それの討伐任務とのことです」

 

自体はフリューゲルが想像していたことよりもずっと複雑だった。

 

その理由が絡んでいるのならただの一個軍団とジストン級では足りない。

 

やはり“()()()()使()()”には“()()()()使()()”を以ってあたらねばならない。

 

それは闇でも光でも関係なくだ。

 

「この戦いはロザル攻略以上に重要になるぞ。さて、新たなフォース使い殿はどうするか」

 

フリューゲルは戦闘が起こるであろう方向を一瞥しそう呟いた。

 

間も無く9ABYに入ろうとする中、銀河系ではまだまだ戦いの火蓋がスーパーレーザーですら掻き消せないほど残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「少しトイレ」

 

ジャワ・ジュースを飲み干したジェルマンは席を立ち、店のトイレの方に向かった。

 

その途中である1体のウェイター・ドロイドと一瞬すれ違った。

 

するとそのウェイター・ドロイドは充電が切れたのかこの店の店主に「マスター、充電をしてきてもよろしいですか?」と尋ねた。

 

「ああ構わん、どうせ誰もうちには来ないさ」

 

「ありがとうございます」

 

機械音声でウェイター・ドロイドは充電器のある方へ向かっていった。

 

店主は不貞腐れた様子で暇そうにカウンターに椅子を置いて座っている。

 

なんならこのまま店の酒を飲み始めてもおかしくない態度と雰囲気だった。

 

そうこうしているとジェルマンがトイレから戻ってくる。

 

「待たせた」

 

ジェルマンが席に着く瞬間も監視している保安局員達はしっかり見ていた。

 

部下の保安局員が上官の保安局員の中尉に尋ねる。

 

「何か仕掛けたのでしょうか」

 

「かもな、こうなるとやはりストームトルーパーや宇宙軍トルーパーの歩兵部隊が必要だ」

 

「こちらに気づいてますかね」

 

保安局員は中尉に尋ねる。

 

「いや、恐らくその可能性はないだろう。それにまだ相手がレジスタンスあたりの情報部員と決まった訳ではない。単なる脱走兵かもしれない」

 

彼らがジェルマン達を監視している理由はレンディリからフリシュタイン上級大佐に要請されてだった。

 

なんでも「レジスタンスのスパイと思わしき人物がガレルに向かった可能性がある」という理由をつけてだ。

 

部署は違うとはいえ同じ保安局員でしかもフリシュタイン上級大佐は保安局の中でもかなり中枢の人物だ。

 

命令を拒絶する事は出来ずカッらは送られてきた顔写真を手がかりにガレル・シティを捜索していた。

 

すると運よく店に入る瞬間にジェルマンやジョーレンを発見出来たのだ。

 

しかしまだ本人かどうか確証はない為突撃を躊躇っていた。

 

「やはり今突撃した方がいいのでは」

 

「いや、相手の人数も考えた場合我々だけでは勝ち目がない。もう少し人を集めっ…」

 

中尉は全てを言い終える前にどこかの屋上から飛んできた赤い光弾に額を撃たれ斃れた。

 

「中尉!」

 

中尉に声を掛けた部下の保安局員も直後同じように赤い光弾を受けて即死した。

 

路地裏の影には無惨に2人分の死体が転がっていた。

 

この時初めてジェルマンは窓の方から路地裏を見た。

 

彼は静かに「やったようだね」と呟く。

 

「そうだな、それじゃあそろそろ移動するか。ジャワ・ジュースも飲み終わっちまったし」

 

コップを置くと「その前にトイレ」と今度はジョーレンがトイレに向かった。

 

「代金は僕が払いますよ」

 

「じゃあ奢りを受けようかな」

 

2人は席を立ち会計を店主に頼んだ。

 

ジェルマンは財布から帝国クレジットを出し全員の代金を払う。

 

そうこうしているとジョーレンがトイレから帰ってきた。

 

「もう払い終わったよ」

 

「そうか、後で返す」

 

「いやいいって」

 

ジェルマンは財布をしまい3人は堂々と店から出た。

 

もう彼らを見張る保安局員達は“()()()()()()()”。

 

3人は堂々と道を歩きやがて周りのトルーパーが少なくなったタイミングで彼らは路地裏へと消えた。

 

路地裏を早歩きで進みながら3人は目的地を目指す。

 

その途中でジェルマンはビルとビルの上から空を眺めた。

 

多くのラムダ級やセンチネル級が軌道上のシス・エターナルのスター・デストロイヤーに集まっていた。

 

あの動きをジェルマンは習ったことがある。

 

「ねえ、あれは撤退……しているのか…?」

 

ジェルマンの問いと共に2人は顔を上げその様子を眺めた。

 

ジェルマンとは違い銀河内戦や初期反乱運動で幾度となく帝国軍と戦い、その動きを知っているジョーレンとラクティスは「間違いない」と口を揃えて言った。

 

「あれは占領下から一部部隊を撤退させるか移動させる時の動きだ。支援の為に他のスター・デストロイヤーやスターファイターが大分警戒している」

 

「しかも事前の準備がいいのか機器類の回収は終えて兵員の回収が始まっている。どの程度の規模が地上に展開されているか分からないが平均的なインペリアル級と一緒であのペースなら後1時間ちょっとで終わるだろう。もしかするとそれより早いかもしれない」

 

「撤退を行なっているのがシス・エターナルだけってのが怖いところだな……ガレルの支配を完全に第三帝国に譲って残りの戦力を全て最前線にぶつけるつもりか?」

 

今のジョーレン達がシス・エターナル軍がどこまで進んだは完全に把握するのは難しい。

 

されどそう遠くない日にロザル辺りまでシス・エターナル艦隊は進み大激戦が繰り広げられるだろう。

 

「行き先はロザルかドーネアだろうな。また我々の仲間と激突してその後どうなるか…今度こそ勝ってもらいたいものだが」

 

「はい…その為ににも我々はまず生存者を救出しないと」

 

「そうだな」

 

ラクティスに案内されながらガレル・シティの裏を駆け回り本来彼らが目指していた目的の場所に辿り着いた。

 

「ここだ」

 

ラクティスは目の前のガレル・シティの中心地からだいぶ端の方に位置する廃墟のアパートメントに指を差し3人で中に入っていく。

 

ジョーレンが周囲を警戒しながらラクティスに指示された場所まで突入した。

 

彼らの目の前にはカモフラージュされた大きな穴があった。

 

「生存者は2人で片方はパイロットだ。そしてもう片方は技術士官で捨てられたドロイド類を繋げてこの穴を掘り隠れているガレル・シティの郊外まで繋げたらしい」

 

「じゃあここを通れば生存者のアジトに?」

 

「その通りだ、早速行こう。早くしないと帝国にバレてしまう」

 

既に2人の保安局員をジェルマンがあの店のウェイター・ドロイドをコントロールして暗殺している。

 

時期にまずあの店にストームトルーパーの分隊が駆けつけガレル・シティを総出で探し始めるだろう。

 

このガレルに留まっていられる時間はとても短かった。

 

3人は穴の中に入りそのままゆっくり進み続ける。

 

流石にトンネルに灯りをつける余裕はなかったのか真っ暗で3人はそれぞれ手持ちのライトを付けた。

 

「離脱の時の安全も考慮して敵の注意をこのガレル・シティに引き付ける必要がある。恐らく連中が総出で探せばこんな場所すぐに見つかる」

 

「それに特にこの街には保安局員が多い。仲間を殺されている以上躍起になるだろうし彼らは捜査のプロだし人員の方はジョーレンの言う通りだ。市街地か敵の簡易駐屯地で一悶着起こさないとストライン中佐を生存者達に会わせられない」

 

ジェルマンとジョーレンは歩きながら脱出のことについて話していた。

 

ステルス機とはいえ今の状況でXウィングとUウィングを出して一瞬でも哨戒中のTIEブルートかインターセプターに見つかったら終わりだ。

 

特に今の殺気立っている帝国軍相手に見つかりでもすればすぐに一個中隊どころか一個大隊のTIEの群れがやってきて戦闘するまでもなく全滅だろう。

 

そうなっては困る為まずは「我々の狙いは地上だ」と敵に思わせ意識を地上に集めないといけない。

 

生存者の救出など間違っても知られてはならないのだ。

 

「だが2人対帝国軍二個海兵部隊はほぼ勝ち目なんてないだろう。どうするつもりだ?」

 

ラクティスは2人に聞いてみた。

 

彼らは特殊部隊とはいえ戦力差がありすぎる。

 

「まず前提条件としてシス・エターナル軍の撤退が完了することだ。多分今物事を起こしても即応体勢にある帝国軍に迎撃されて全滅する」

 

「そうだね、それと後はやっぱり…」

 

「“()()()()()()()()()()()”、こいつらが事を起こすと同時に我々もそれに混じって戦った方が相手に被害を与えられる」

 

ガレルで抵抗活動が激しくなり始めているのはジェルマンやジョーレンだって来る前に知っている。

 

ガレル・パルチザンはレジスタンス軍が遺した大量の物資を使い独自の抵抗勢力を設立したらしい。

 

保安局や占領部隊が鎮圧に当たっているがこの手の抵抗勢力の性質上、毎回確実な成果を挙げられずに終わっている。

 

まだ物資もあり士気も高い彼らに混じって戦うなら少なくとも十分な陽動になるはずだ。

 

だが一つ問題がある。

 

「パルチザンに混じってって、そいつらと接触出来たのか?」

 

ラクティスは2人に尋ねた。

 

帰ってきた返答は“N()O()”、ラクティスはポカンとした。

 

「接触どころか全体像だって掴めてませんよ。ただいるって事だけは分かりますが」

 

「おいおいおい、ちょっと待て。それじゃあどうやって混じって戦うんだ?最悪敵だと認識されて撃たれるぞ?というかその前にパルチザンがいつ戦闘を起こすか分かるのか?」

 

ラクティスは呆れた顔で彼らにどんどん問い詰めた。

 

このままじゃあ運任せでなんとかすることになる。

 

だが経験豊富なジョーレン達がそんなことをするはずがない。

 

既に予測は打ってあった。

 

「パルチザンに接触出来てないから誤認の可能性は拭い切れないがまあなんとかする。それにパルチザンがいつ頃行動を起こすかは既に予測がついている」

 

ジェルマンも大きく頷いた。

 

ラクティスはすぐに「一体いつなんだ?」と聞いた。

 

「多分連中もシス・エターナルが撤退するのを待ってる。撤退が完了して残りの部隊が「もう大丈夫だ」と油断した隙におっ始めるつもりだろう。それも帝国軍は比較的集まりやすい中央通りでだ」

 

あまりに正確に見えるジョーレンの推測にラクティスは驚いた。

 

まるで話に聞くジェダイのように未来が見えているようだった。

 

「すごいな、どうしてそんなに分かったんだ?」

 

ラクティスは驚きながら尋ねた。

 

するとジョーレンの答えはすぐに返ってきた。

 

「市街地に俺やジェルマンみたいな格好の奴がちらほらいただろう?みんな体を覆うほどのローブや布で隠している。多分そいつらは俺達と同じようにこうやって、武器を隠している」

 

ジョーレンは自分のローブを開きラクティスに内側を見せた。

 

内側にはブラスター・ピストルや換装式ブラスターのパーツがあり中には簡易爆弾やナイフまであった。

 

ジェルマンも同じように内側を見せる。

 

彼の装備も似たようなものでジェルマンはどちらかといえば機器類にアクセス出来るものがジョーレンと比べて多かった。

 

ホルスターを隠しブラスター・ピストルだけ所持しているラクティスの装備とは大違いだ。

 

「こんなものをずっと隠し持っていたなんて、とんでもないな」

 

「まあ多分パルチザンの方はここまで良い装備じゃないでしょうが。多分頑張ってそれぞれA280を1丁とかデトネーターを何個かとかそんな感じですよ」

 

「ともかく、そんな奴らがガレル・シティに出始めているし帝国軍は撤退支援に注力していて調べる余裕はない。撤退終了と共に必ず何かが起こるぞ」

 

「そうか…なら陽動の方は2人に任せる。だが戦場からの回収の方はどうする?」

 

「頃合いを見て離脱するさ」

 

パルチザンが離脱する前に密かに退却すれば案外離脱出来るものだ。

 

ジョーレンは何度か現地の抵抗勢力を隠れ蓑にして諜報や破壊工作をしているから嫌でも手慣れている。

 

「ならこちらで撤退を支援する」

 

ラクティスの提案にジョーレンは「いや、危険すぎる」と断りを入れた。

 

「軽歩兵が単騎で撤退する方が危険だ。それに生存者の片割れは若いが腕のいいパイロットだ、まともなスターファイターさえ与えれば少なくともTIEインターセプターの一個編隊よりかは役に立つ」

 

「ですが危険です」

 

「どっちにしろ2人の方が危険だ。それなら航空支援を合わせて全員の危険を軽減した方がいい。重要なのは生存者を回収して全員で離脱することだ。シス・エターナルの兵器を見てきた分我々も証言者として重要になってくる。新型のXウィングを早速お披露目するのはちっと癪だが」

 

この時ジョーレンは悩んでいた。

 

確かに航空支援があれば帝国により打撃を与えられその混乱に乗じて脱出しやすくなる。

 

されど重要ターゲットを戦場に出し危険に晒すことになる。

 

それにそのパイロットがどこまでUウィングを上手く扱えるか分からない。

 

それでも今のところ安全に離脱するにはこの方法が一番のように感じられた。

 

「我々はあのスターファイター隊だ。特殊部隊と同じほど摩耗しそれ故に常に高水準の練度を誇っていた。我々を信じてくれ」

 

ラクティスは断言しジェルマンとジョーレンにそう訴えかけた。

 

ジェルマンはジョーレンの方を見つめて判断を託した。

 

だが少なくともジェルマンはもうラクティス達に任せるつもりのようだ。

 

まだ危険は払拭出来ずにいるが仕方ない。

 

「……わかった。レジスタンス軍のスターファイター隊に全てを任せる」

 

ラクティスは満足げに頷きそろそろ通路の奥が見えてきた。

 

3人は急いで走り奥の洞穴に出る。

 

すると警戒しブラスター・ピストルを構えた2人の青年が奥から姿を表した。

 

「待てスナップ!私だ、ラクティス・ストライん中佐だ」

 

ラクティスは名を名乗り警戒心を解かせようとした。

 

2人ははブラスターを降ろし名前を呼ばれたパイロットの方が恐る恐る顔を出した。

 

「中佐…!」

 

どうやら彼らが生存者のようだ。

 

ラクティスは彼らに駆け寄り「よく生きていた!」と力強く握手した。

 

安心した2人の生存者はホッと大きな息を吐きフラフラと倒れかけた。

 

「よかった…もうダメかと」

 

「ギリギリセーフだったな。特殊部隊の精鋭も来てくれた」

 

「ジョーレン・バスチル少佐だ」

 

「ジェルマン・ジルディール大尉です」

 

2人は挨拶し生存者の方も言葉を返す。

 

「テミン・ウェクスリー少尉です」

 

「アショース・スタトゥラ少尉です。あなた方がいて助かった」

 

「いいや、悪いがもう一働きしてもらう」

 

ジョーレンはまず最初に2人にそう宣告する。

 

ジェルマンも頷きラクティスは説明を始めた。

 

「スナップ、お前はUウィングを動かせるか?」

 

「新共和国の機体だったらなんでも使えますよ」

 

「その粋だ、お前達の鬱憤を晴らす時が来た。レジスタンス軍スターファイター隊の力の見せ所だ」

 

ラクティスの悪い笑みにウェクスリー少尉も微笑を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

レジスタンス軍とアデルハード総督の艦隊と大セスウェナ軍の三つ巴の戦いは三者が接触してからもうかなりの時間が経っていた。

 

未だ数で劣るトレークスの小艦隊は中遠距離からの牽制射撃と集中砲撃を浴びせ全ての敵を戦場に括り付けていた。

 

既に幾つかのパトロール隊が戦場に加わりトレークスの配下の艦艇は中型艦や小型艦だけなら星系艦隊にも匹敵する数まで増えていた。

 

だがやはりそれでも数が足りない。

 

単独で未だにアデルハード総督の艦隊やレジスタンス艦隊よりも数が少なかった。

 

「各艦無理せず戦線を維持しろ。これ以上後ろに下がらせなければそれでいい!連中をとにかくここに縛り付けろ!」

 

インペリアル級の集中砲撃が二、三隻のレジスタンス軍とアデルハード軍の小型艦を撃沈させる。

 

しかし両軍の戦力は小型艦を幾つか失ったからといって戦いをやめるほど小さくはない。

 

「やはり、あの動きから言ってアデルハード総督は自らを捨て石にしてでもここでレジスタンス軍を我々と戦わせダメージを負わせるつもりだったのでしょう。アデルハード艦隊が積極的にレジスタンスの退却を阻止しています」

 

戦術分析官のロイズ大尉はトレークスに報告した。

 

トレークスはレジスタンス軍が既にここまで奥深くまで侵入している事やアデルハード艦隊の動きに疑問を持ち戦術分析官や幕僚達に分析を頼んでいた。

 

「アデルハード総督の捨て身の攻勢という訳か…利用しようとして利用されていたのは一体どっちか…」

 

「少将、ハイパースペースより友軍機動部隊接近。プラージ准将の機動部隊のようです」

 

センサー士官の報告と共にトレークス小艦隊の背後から三隻のインペリアル級と護衛艦のアークワイテンズ級やヴィクトリー級が出現し砲撃と共に早速戦線に加わった。

 

三隻のインペリアル級から放たれる高火力は全く薄れることなく敵に打撃を与え牽制し続ける。

 

クリフォードの機動部隊は暫し遠距離から砲撃した後トレークスの小艦隊ではカバーし切れない部分に展開した。

 

中には攻撃を機動部隊と交代する軍艦もおり戦いっぱなしだったトレークス小艦隊も未だ戦場ではあるが束の間の休息を得た。

 

「プラージ准将の機動部隊は我々の小艦隊に合流し防衛戦を実行しています」

 

「前衛のインペリアル級をクリフォードの機動部隊と交代させシールドとターボレーザー砲の再チャージを行え」

 

トレークスの階級は少将、クリフォードの階級は准将で現在の最高指揮権はトレークスが持っている。

 

トレークスの旗艦“プリンシパリティ”から命令が届き、クリフォードの機動部隊は徐々に前進し前衛を交代した。

 

最大出力の火力と防御力を維持するクリフォードの機動部隊は圧倒的な圧倒的な砲撃を撃ち出す。

 

「機動部隊は到着したが残りの艦隊はどうなっている?伝令からしてもう少し時間がかかりそうだが」

 

「数分前の暗号通信ではまだ到着には時間が掛かると言っていますが」

 

「だろうな…だが耐えられないという訳ではない。このまま攻勢を最低限に保ちつつ現状を維持する」

 

「了解」

 

トレークス達の目的は周知の通り敵の殲滅ではない。

 

本隊が来るまでレジスタンス艦隊を戦場に括り付けておけば良いのだ。

 

シビアな戦いになるだろうが出来ぬ事ではない。

 

「少将、プラージ准将の“シンパサイザー”よりホロ通信です」

 

「よし、開いてくれ」

 

通信士官が回線を設置しトレークスの前にホログラムのクリフォードが現れた。

 

お互いに敬礼を交わして話を始める。

 

『アデルハード艦隊の一部が移動し始めている。足止めしますか?』

 

「いや、積極的に攻勢をかけたアデルハード艦隊は我々が追わなくてもレジスタンス軍が迎撃してくれる。我々はこのままレジスタンス艦隊に圧力を掛け続けるぞ」

 

『わかりました、それとこれは似たような別件なのですが“シンパサイザー”の分析官がアデルハード艦隊に対して気になる点を見つけまして』

 

トレークスは眉を顰めた。

 

今回の作戦を一度は破綻させレジスタンス軍をここまで引き連れてきたアデルハード艦隊の同行は是非ともしっかり確認しておかなければならない。

 

今度また妙な動きをされた場合に対処しなければ既に参戦している自分達の身が危ないからだ。

 

トレークスは「どんなだ?」と彼に尋ねた。

 

『アデルハード艦隊の一部が移動を始め陣形を転換しています。それもどうやら司令部の命令を一部蒸してしているようで』

 

「確かに一部の艦艇が後方の退路を立つ部隊に合流しつつあるが……それは本当なのか?」

 

トレークスはクリフォードの聞き返した。

 

いくら負けっぱなしの軍閥とはいえここまで来てアデルハード総督の命令を無視して独自の動きを始めるなど考えにくい。

 

それともこのヤケクソじみた戦いに嫌気が差したのだろうか。

 

『戦闘の最中に友軍艦の進路を妨害しようとするアデルハード艦隊の姿を幾つか確認しています。逃亡の妨害をしているとも取れますが』

 

「いや、逃亡するつもりなら既にアデルハード艦隊での同士討ちが発生しているはずだ。その間にジャンプアウトする艦も出てくる、だがまだそんな事例確認されていない」

 

そもそもアデルハード艦隊が離脱出来るなら今頃レジスタンス艦隊は小型艦から離脱しスターファイター隊が無理やり突破口を開こうと捨て身の攻撃でもなんでも繰り出しているはずだ。

 

未だそれが出来ずアデルハード艦隊が頑強に防御網を展開しているということはまだその段階ではないということだ。

 

完全にアデルハード艦隊が崩れたのならその隙をついてレジスタンス軍は急いで撤退を始めるだろう。

 

『情報部員を動員して敵艦隊の通信傍受を行いますか?』

 

「いや…恐らく通信傍受は難しいだろう。敵も情報漏洩には気を遣っているはずだ」

 

平時ならともかく戦闘中の今では傍受どころか相手に取り付くことも難しい。

 

仮に相手が内乱状態にあったとしても同様だ。

 

「引き続き警戒は頼む。敵が一触即発の状態にあることは確かだ」

 

『はい、では各艦にそう伝達します』

 

クリフォードがそう伝えホロ通信を切ろうとしたその時、ある一つの報告が舞い込んできた。

 

「少将、ハイパースペースから一個機動部隊ほどの艦影を確認しました」

 

ハイパースペースを監視するセンサー士官はブリッジの窪みからトレークス達に報告した。

 

ここでセンサー士官が言う機動部隊とはクリフォードが率いるようなスタンダードな帝国宇宙軍の単位の機動部隊だ。

 

実際この機動部隊にはインペリアル級三隻とアークワイテンズ級六隻で構成されていた。

 

問題は“()()()()()()()()()()()()()”と言う点だ。

 

「本隊の先遣隊か…?」

 

「いや…流石に早すぎます、それに我々以外の機動部隊はまだ出撃していない。一体どこの部隊が…?』

 

2人は疑問の表情を浮かべ探査中の部下の報告を待った。

 

彼らの会話から10秒も経たずにセンサー士官が調べ上げ、そして困惑していた。

 

「機動部隊の艦艇の所属は恐らく……全て“()()()”です」

 

報告を聞いた途端トレークスとクリフォードは部隊の察しが付いた。

 

だいぶ前からマラステアから出撃した親衛隊の機動部隊がある宙域に待機すると宣告していた。

 

その不可解な行動を止める権限もない為ひとまずは了承し親衛隊の機動部隊、第336機動部隊は今の今までその宙域から動かずにいた。

 

恐らくアノート宙域の牽制、又は大セスウェナやアノートの監視を任務にしていると考えられていたのだがこの機動部隊は突如として動き始めた。

 

それも態々一個機動部隊で最前線へと。

 

「本当に親衛隊で間違いないのか?」

 

トレークスは聞き返すがセンサー士官は「使用している通信回路がデータベースに記録されている親衛隊艦と99.9%一致しています」と答えた。

 

『マラステア派遣軍の部隊だとすれば辻褄が合います』

 

「ああ…だが何故…」

 

何故今になってしかも一個機動部隊で動き出したのか。

 

もしこの部隊が小艦隊や一個艦隊にまで膨れ上がっていたら話は別だ。

 

このまま戦闘に参加し一気にレジスタンス軍を叩いてしまおうと画策しているのだろう。

 

だがレジスタンス軍とアデルハード艦隊のこれだけの戦力を前に一個機動部隊は流石に少なすぎる。

 

親衛隊は勇猛果敢で常に総統の為前進し続けると専らの噂だが流石に勝てそうにない戦に首を突っ込むような猪武者ではないはずだ。

 

「親衛隊艦隊と目される機動部隊、間も無くジャンプアウトします」

 

報告と共にハイパースペースからインペリアル級三隻、アークワイテンズ級六隻がジャンプアウトした。

 

やはりセンサー士官の予測は正しく各艦艇にそれぞれ親衛隊の紋章や親衛隊所属を示すラインが引かれている。

 

マラステアから現れた第336機動部隊だ。

 

「データベースと照合した結果、あの部隊は第336機動部隊で間違いありません」

 

「親衛隊機動部隊、移動を開始します」

 

乗組員の報告と共に第336機動部隊は移動を開始した。

 

特に砲撃するわけでもなく、戦場から離れるわけでもなくゆっくりと回り込むように進み始める。

 

偏向シールドの防御力を全開にし戦場を眺めるように進むこの親衛隊の部隊はどの陣営からも奇異な目で見られていた。

 

それはレジスタンスでも同様で最初に親衛隊を発見したのはナインの一言だった。

 

彼が突然真横を見てランドに「親衛隊のスター・デストロイヤーがいる!」と叫んだ。

 

サラスティーズ語が分かるランドは急いでナインと同じ方向を向いた。

 

すると本当に親衛隊のインペリアル級とアークワイテンズ級がいたのだ。

 

ランドは一瞬だけ背筋からすうっと生気が奪われていく感じに見舞われた。

 

急いで“レストレーション”のブラマッシュ中将にホロ通信を繋いだ。

 

「中将……こりゃ大変なことになってきたぞ…」

 

『はい将軍!こちらでも確認しています。確認されているだけでもインペリアル級スター・デストロイヤー三隻、アークワイテンズ級六隻の機動部隊がいます!』

 

ブラマッシュ中将も見るからに焦っているようだった。

 

このまま親衛隊が続々と戦場に来られてはここにいるレジスタンス艦隊は全滅だ。

 

そう遠くないうちに大セスウェナ艦隊も到着し本当に包囲戦が始まってしまうだろう。

 

「後続の艦隊は確認出来るか?」

 

『いえ、少なくともこの領域にはいません。それにハイパースペースにもこれ以上の艦艇はセンサーの届く範囲では確認出来ません』

 

ランドはブラマッシュ中将の報告を聞き、違和感を覚えた。

 

「おっと、それは妙だな…この戦場に機動部隊一つしか送ってこないほど親衛隊はケチな連中じゃないはずだ。それに、こちらにターボレーザーの1発すら撃ってこないなんて更に妙だ」

 

流石銀河一の博打師、洞察力に優れている。

 

すぐに親衛隊の妙な点に気づき混乱をこれ以上広めずに済んだ。

 

親衛隊が本当に戦う気があるのならハイパースペースからジャンプアウトした直後から砲撃を始めているはずだ。

 

それをしないということは彼らの目的は別にある。

 

その目的が大胆にも彼らの前で達成されるとはこの戦場にいる殆どの者が思わなかっただろう。

 

だが実際に親衛隊の作戦はこの場で始まった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”。

 

それに呼応するかのように親衛隊のインペリアル級やアークワイテンズ級も突然砲撃を開始する。

 

それも全てアデルハード艦隊の一部に向けられたものだ。

 

突然味方から、そして親衛隊から砲撃を受けたアデルハード艦隊は何隻かの軍艦が撃沈し態勢が崩れた。

 

その隙にアデルハード艦隊の一部の艦艇が命令や指揮系統を無視しハイパースペースへと入っていく。

 

レイダー級やアークワイテンズ級のような艦艇だけでなくインペリアル級やプロカーセイター級、セキューター級のような大型艦も例外ではなかった。

 

突然味方へ砲撃する艦、突然ハイパースペースに突入する艦、突然のことになす術なく攻撃を受け続ける艦などアデルハード艦隊は正に大混乱といった状況だった。

 

これを砲撃を喰らわせながら冷笑混じりに見守っている者達がいた。

 

親衛隊だ。

 

完全に上手くいった。

 

この状況でこれ以上事態が悪くなることなどない。

 

特に第336機動部隊司令官のクーリズ准将はまるで酔いしれているかのように満足な表情を浮かべていた。

 

アデルハード艦隊はハイパースペースへのジャンプと砲撃で数を大幅に減らしつつある。

 

「長官、既に目標数の半数がジャンプに成功しました。このまま“()()()()()”を続け最終的な殿部隊の退却支援を行います」

 

クーリズ准将はホログラムに映る1人の男に報告した。

 

普段不機嫌、むしろ感情がないように見えるホログラムの親衛隊大将も今日はどこか満足そうな顔だった。

 

『そうか、ではこのまま作戦を続行せよ。アデルハード艦隊の戦力の半数、このまま我々親衛隊が頂く』

 

「ハッ!」

 

ハイドレーヒ大将は最後にそれだけ命令しホロ通信を閉じた。

 

このアデルハード艦隊突然の内乱と離反は全て親衛隊の、親衛隊情報(FFI)の工作によるものだ。

 

親衛隊情報保安本部(FFISO)の下位組織に位置するFFIはアデルハード艦隊の中に第三帝国に亡命したいと考える者達がいることを察知しハイドレーヒ大将の命令で彼らと接触した。

 

FFIは同じ下位組織の親衛隊保安局(FFSB)と協力し離反の為の特殊作戦を立案した。

 

FFISOが提出した離反支援作戦はシュメルケ元帥によって選定された部隊によってついに今日、実行に移されたのだ。

 

この作戦は国防軍もましてや大セスウェナ軍も知らない。

 

裏切られると思っていなかったアデルハード総督の衝撃は相当であるしレジスタンス艦隊にとっても予想外の出来事だった。

 

何も裏の事情を知らない者達は一体今何が起こっているか全く分からなかった。

 

「離反部隊のほぼ全てがハイパースペースへとジャンプし目標地点に向かっています。残りは殿の艦隊と我々だけです」

 

乗組員がクーリズ准将に報告し准将も「ではまず殿部隊を先にジャンプさせろ」と命令した。

 

残された数隻の軍艦を守るように親衛隊艦隊が前進し攻撃を喰らわせる。

 

既に多くの艦が撃破されたアデルハード艦隊の反撃能力は低く第336機動部隊にとってはなんのダメージもないに等しかった。

 

殿の部隊がハイパースペースへジャンプし第336機動部隊も退却を始めた。

 

既にアデルハード艦隊は混乱して態勢が崩れており大セスウェナ艦隊も突然の事に驚きを禁じ得なかった。

 

「敵艦隊の離反を手引きしたのか…?それも前々から作戦を立てて……」

 

『アデルハード艦隊の半数が……いや既に失われた艦も合わせればもうそれ以上が…………このままでは…!』

 

クリフォードの危機は既に当たっていた。

 

この気を逃さずレジスタンス艦隊は退却を始めた。

 

既にアデルハード艦隊に封鎖能力はなく今が絶好のチャンスだった。

 

「スターファイター隊急げ!残りの艦にありったけの火力を向けて退路の穴をこじ開けろ!その間に離脱出来る艦は急いで離脱しろ!」

 

メルクローラーⅡが先頭に立ち残りの敵艦に何十機ものスターファイターが突っ込んでいく。

 

魚雷やミサイルをありったけ撃ち込み、離脱しようとするCR90やブラハットク級も火力を押し当て他の艦がより楽に離脱出来るよう支援した。

 

レジスタンス軍の撤退が始まろうとしていた。

 

いやもう始まっている。

 

何隻かの艦船はハイパースペースへとジャンプしアノート宙域への帰路に着き始めていた。

 

このままではトレークス達が踏ん張ってきた意味がない。

 

ましてや作戦事態が瓦解してしまう。

 

「レジスタンス艦隊!後退していきます!」

 

「少将!ご命令を!」

 

「こうなったら一隻でも多くの敵艦を屠れ!少しでも敵にダメージを当たるんだ!」

 

トレークスはヤケクソじみた命令を出した。

 

もうこの状況をどうにか出来る戦力をトレークスはお持ち合わせていない。

 

辛うじて残っているアデルハード艦隊の封鎖網も後数十分、数分もすれば全壊するだろうしトレークスの小艦隊とクリフォードの機動部隊では代わりを務める事は出来ない。

 

少なくともレジスタンス軍を撃退することには成功したがこのままでは大きな戦果は挙げられず第三帝国の命令に従ってアノート宙域の侵略に加担さぜるを得なくなる。

 

そうすれば後から入ってきた第三帝国が何をするか分からないし何より第三帝国の侵略作戦の為にセスウェナの民を戦地に送り出す事はなんとしてでも避けたかった。

 

「なんとしてでも…!」

 

「少将!後方から!!」

 

通信士官は喜びの声音と共にトレークスに声を掛けた。

 

トレークス達がレジスタンス艦隊に圧力をかけていた事により辛うじて“間に合ったのだ”。

 

「“()()()()()()()()()()()”」

 

奇跡とは起こるのだとトレークスはその時思った。

 

彼らの背後から一斉に何十、何百隻の軍艦がジャンプアウトする。

 

全て味方の、全てドーラから駆けつけた大セスウェナと国防宇宙軍だ。

 

その中に一隻のインペリアル級なれどどこか異彩を放つ軍艦がいる。

 

これこそ“エグゼキュートリクス”、ターキンの乗艦だ。

 

エグゼキュートリクス”から命令が出される。

 

「全てのセスウェナの敵を駆逐せよ」と。

 

 

 

 

 

ガレルの酒屋の前に密かにストームトルーパーと保安局員が集まっていた。

 

監視中だった2名の保安局員からの定期連絡が途切れ安否を確認する為にまず一個分隊ほどの保安局員とストームトルーパーが送り込まれた。

 

当然2名の保安局員は死亡しておりトルーパー達は協議した結果部隊を更に集めて酒屋に突入する手筈となった。

 

狙撃兵もいる可能性があるのでスカウト・トルーパーや工兵によるシーカー・ドロイドの偵察も行い万全を期して突撃を行おうとしていた。

 

既にシス・エターナルの移動は完了し考慮すべき事は何もない。

 

軍曹のポールドロンをつけたストームトルーパーが部下達に指示を出し酒屋の周辺を取り囲んだ。

 

軍曹の合図で近くに彼の部下のストームトルーパーが集まる。

 

『ユニット2-32配置につきました』

 

『ユニット2-33同じく配置についてます』

 

分隊を構成する各隊から報告を受け軍曹は命令を出す。

 

「30秒後突入する、各隊は突入を援護せよ」

 

『了解』

 

『了解』

 

指示を出した30秒のうちにストームトルーパー達は装備の最終チェックを行い突入の決意を固めた。

 

装備を完璧に整えたストームトルーパー3人が軍曹の側により軍曹は突入の秒数を指で数えた。

 

人差し指が折られた瞬間軍曹が突入の合図を出した。

 

軍曹を先頭に4人のストームトルーパーと数人の保安局員が酒屋に突っ込み乱暴にドアを開けた。

 

「動くな!」

 

酒屋の店主やドロイド、何人かいた客に銃口を向け全員を立たせ身をチェックする。

 

後から回り込んでいたストームトルーパー達も突入し軍曹達に加わった。

 

「一体なんなんですか!?」

 

店主は彼らに尋ねたが保安局員の1人から「黙っていろ!」と怒鳴られ萎縮してしまった。

 

ウェイター・ドロイドもスリープモードにされ入念なボディチェックも行われた。

 

1人の保安局員が上官の保安局員の少尉に駆け寄り報告する。

 

「全員と店内を調べましたがブラスター類、友軍の保安局員を殺害したような武器類は見つかりませんでした」

 

「シーカー・ドロイドも問題なしと言っています」

 

ストームトルーパー達からも同様の報告を受け取り少尉は険しい表情を浮かべた。

 

「貴様、自衛用に武器を所持しているという事はないな?」

 

ブラスター・ピストルを突きつけ少尉は店主を脅す。

 

店主は慌てながら「いえそんなもの持ってません!!」と返答した。

 

「ドロイドにも異常な点は見当たりません。恐らく店内から出た後に行動を起こしたと思われます」

 

「そうか、では捜索隊を市街地に展開するよう要請しろ。敵は恐らく既に外に出たはずだ。我々はこの店の全ての目撃者を尋問する」

 

「尋問!?一体なんの話ですか!!」

 

「うるさい、しのごの言わずに…」

 

少尉が全てを言い切る前に大きな音と少しの振動が彼らに伝わった。

 

少尉や戦闘経験がある軍曹達はこの音に聞き覚えがあった。

 

爆発音だ、それもサーマル・デトネーターのような爆薬を使った爆発音だった。

 

少尉は急いで店から出て周囲の様子を確認した。

 

店から出た少尉から見て右側から大きな煙と炎が上がっているのが見える。

 

そのすぐ後にインペリアル級の司令部から通信が入った。

 

『セントラル・ストリートで抵抗勢力の活動を確認。周辺のパトロール隊及び即応出来る部隊は直ちに現場へ急行せよ』

 

「こちら2-3分隊、了解した。直ちにストームトルーパー隊を急行させる」

 

少尉は通信を返し軍曹を呼び出す。

 

「ここは我々に任せて急いで現場へ急行しろ。スカウトチームも急げ!恐らく店にいたであろう相手は全員そこにいるはずだ」

 

「了解、全隊、現場へ急行する」

 

軍曹に続き分隊のストームトルーパー達と狙撃と偵察の為に待機していたスカウト・トルーパー達が前線へ向かった。

 

少尉は店にいた全員を連行するよう部下に命じながら爆発が起こった方を見つめる。

 

「保安局員を殺したのはただのパルチザンなのか…?だが彼らが追っていたのは…」

 

まだ保安局員としての経験がさほど高くない少尉はそれ以上の想像は出来なかった。

 

それでもこれだけ部下に命じ適切な判断を行えただけで十分だ。

 

尤も少尉が相手にしようとしているのはその判断の更に上をいくだろうが。

 

既に戦闘が行われている中央通りでは多数の死傷者が出ていた。

 

まず爆発により何人かのストームトルーパーが死傷しその後の銃撃戦で更に犠牲者が増えた。

 

無論ストームトルーパー達とてやられっぱなしではなく直ちに反撃を開始した為ガレルのパルチザン達にも犠牲者が出ていた。

 

「今すぐ増援部隊を要請!宇宙軍トルーパーでも地上軍トルーパーでもなんでもいいから寄越してくれ!」

 

アーマーすら着ていない地上軍の中尉がSE-14Cを片手に援軍を要請した。

 

彼はたまたま戦場に居合わせていただけで全く武装出来ていなかった。

 

物陰に隠れながらブラスター・ピストルで味方のストームトルーパー達を援護している。

 

ガレルのパルチザン達は建物の二階や屋上からストームトルーパー達を狙撃する部隊と真正面で戦闘する部隊に分かれて戦っていた。

 

彼らが使うA280CやDH-447スナイパー・ライフル、DH-17ブラスター・ピストルは全てガレルの駐留軍が残していった武器だ。

 

所詮元は民間人のパルチザンは奇襲攻撃を成功させたはいいが敵に立て直しを図る時間を与えてしまった。

 

指揮系統に従い態勢を立て直したストームトルーパー達が乗っていた兵員輸送機の残骸を盾にしながら防戦していた。

 

「チッ!この!」

 

パルチザンの1人がサーマルデトネーターを投げるが逆に起爆する前にストームトルーパーに投げ返されそのパルチザンは爆発に巻き込まれて死亡した。

 

パルチザンが使う武器は全てレジスタンス軍の潤沢なティバナ・ガスを使ったものなので当然ストームトルーパーのアーマーを貫通出来るがやはり練度が違いすぎた。

 

パルチザンは常に正規軍の帝国軍に対し苦戦を強いられていた。

 

「タンクの支援が来たぞ!」

 

SE-14Cを持つ中尉が戦闘しているその場の全ての将兵に大声で告げた。

 

彼の言う通り道の反対側からTX-225 GAVr“オキュパイア”武闘強襲用戦車が10人ほどのストームトルーパーを乗せてやってきた。

 

オキュパイア・タンクの車体に取り付けられたEウェブがパルチザン達に牙を向く。

 

その大火力で逃げ切れなかった3人のパルチザンが肉塊へと変貌しEウェブのブラスター弾はそのまま市街地の建物や壁を破壊した。

 

オキュパイア・タンクは移動しながら車長の|ICAT《インペリアル・コンバット・アサルト・タンク》コマンダーが命令を出す。

 

「前方二階部分、砲撃で吹き飛ばせ」

 

コマンダーの命令によりオキュパイア・タンクの中型ブラスター砲が建物の二階に向けて砲弾を放つ。

 

直撃を受け2階部分は大爆発で吹き飛び中にいたパルチザンもこの建物の住民ごと死亡した。

 

爆風が周囲に飛び散り砂煙が舞い上がる。

 

「歩兵は射撃手以外全員前進!直ちに戦闘に合流せよ!」

 

コマンダーの指示を受けて一斉にストームトルーパーが降りて戦闘に加わる。

 

オキュパイア・タンクもその後をゆっくりとついて行ったのだが数メートル進んだ瞬間タンクが突如下から爆発した。

 

大爆発でコマンダーとEウェブの射撃手のストームトルーパーは吹き飛ばされタンクはそのまま大破し炎に包まれた。

 

「2名負傷!」

 

すぐにストームトルーパーが駆けつけ吹き飛ばされたコマンダーとストームトルーパーを引きずり衛生兵のいる安全地帯まで運んだ。

 

副分隊長の伍長が戦闘していた中尉に「リパルサーリフトに反応する地雷の攻撃を受けた模様です」と報告した。

 

「貴重なタンクが!まあいい…兵士を集めろ!数で敵を!」

 

中尉は狙撃され隣にいた伍長も同じように正確に頭を撃ち抜かれた。

 

「狙撃手がいる!新しいAT-STか装甲車が来るまで二階に登って直接制圧しろ!」

 

更に援軍に来た宇宙軍トルーパーやストームトルーパーに兵員輸送機に乗っていた軍曹が指示し帝国軍兵士達は分散していった。

 

直後、まだ残っていた兵員輸送機の燃料部分に狙撃手が弾丸を撃ち込み更に爆発が広がる。

 

誰の攻撃か分からないパルチザン達はその様子を見て喜びながらも困惑していた。

 

「これでパルチザンの攻撃はもう少し続けられるかな」

 

その狙撃手、フードを被っていたジョーレンは換装式のA280-CFEのスナイパー・アタッチメントを外しアサルト・ライフルモードに切り替える。

 

狙撃ポイントから移動し建物の階段の側まで接近した。

 

丁度地上にいたストームトルーパー達が上がってきたところだ。

 

ジョーレンは相手が反撃出来ない絶好のタイミングを狙ってA280-CFEの引き金を引く。

 

突然敵が現れ弾丸を撃ち込まれた事により4人いたうちの2人が即座に撃ち倒され残りの2人も反撃に出ようとしたがジョーレンの反応速度には敵わず呆気なく撃ち殺された。

 

「上階に敵兵がいるぞ!」

 

再び建物に突入してきたストームトルーパーが仲間に呼びかける。

 

今度の相手は5人、流石に銃撃戦となれば面倒だ。

 

ジョーレンは倒したストームトルーパーがベルトにつけていたサーマル・デトネーターを起動し死体ごと下に投げつけた。

 

普通にデトネーターを投げるだけでは即座に投げ返される可能性があるがこれなら簡単に投げ返すのは不可能だ。

 

離れようとした数人のストームトルーパーを巻き込んでサーマル・デトネーターは起爆した。

 

5人の兵士のうち3人が即死し2人も負傷した為当分ジョーレンを追う事は出来なくなった。

 

更に疎に入ってこようとするストームトルーパーや宇宙軍トルーパーをA280-CFEで何人か撃ち倒しジョーレンは一旦階段から離れた。

 

敵兵を引き付けておくにはこれで十分だ。

 

破壊された窓ガラスから隣の建物に移り屋上から地上のストームトルーパーを何人か狙撃する。

 

「いたぞ!撃て撃て!」

 

ジョーレンに気づいたストームトルーパー達が急いでE-11で撃ち返すが既に物陰に隠れている為1発も命中しなかった。

 

トルーパー達はジョーレンを引き付ける部隊と内部から攻撃する隊に分かれた。

 

パトロール中の部隊が集まってきている為単一の中隊や小隊が到着、と言う事ではなくても兵士の数は足りているらしい。

 

長居しているとAT-ATはともかくAT-STやインペリアル・アサルト・タンクが来てしまうかもしれない。

 

先程オキュパイアを1両撃破したとはいえ全体数から考えればまだまだいるはずだ。

 

「ジェルマンのやつ、しっかり対車両地雷を巻いたんだろうな」

 

インパクトグレネードを建物の下の敵兵に投げつけジョーレンは再び建物の中に入った。

 

既に敵兵が浸透しているようでもう2人のストームトルーパーと鉢合わせてしまった。

 

「敵がいたぞ!」

 

2人のストームトルーパーは叫びながらE-11でジョーレンに向かって発砲した。

 

既に物陰に隠れていたジョーレンはホルスターからブラスター・ピストルを取り出し2丁で敵を銃撃した。

 

一度に2人のストームトルーパーを倒しジョーレンは移動を始めた。

 

建物の中ではストームトルーパー同士、ジョーレンを探している声が聞こえる。

 

「建物から離れて迫撃砲で建物ごと…!」

 

「なんだ!」

 

「クソッ!敵兵だ!ワァッ!?」

 

ジョーレンはしっかりブラスター・ライフルを握り締めながらゆっくりと声と銃声が聞こえた方向へ向かった。

 

あの様子じゃストームトルーパー達は一切反撃が出来なかったのだろう。

 

銃口をしっかり向けながらジョーレンは前に進んだ。

 

曲がり角を進んだ先でジョーレンはその銃口を最も簡単に下ろしてふうっと一息付いた。

 

「ジェルマン……地雷設置は終わったのか?」

 

A180ブラスター・ライフルで敵兵を殲滅していたのはジェルマンだった。

 

完全な奇襲で生き残っていた3人のストームトルーパーを一切の反撃を受ける事なく返したのだ。

 

だがジェルマンはどこか焦っているようだった。

 

「早くこの建物から出よう!ストームトルーパーの迫撃砲兵がこの建物ごと吹き飛ばそうとしている!」

 

今彼らの前の前に倒れているストームトルーパー達も同じことを言っていた。

 

それよりも先にジョーレンにはある音が聞こえた。

 

「ああ……そうだな……伏せろ!」

 

ジョーレンは急いでジェルマンの頭を下げさせた。

 

その直後、建物が大きな振動と爆音に包まれ近くの天井が崩壊した。

 

天井や真横から砂煙が巻き荒れ建物が揺れ続ける。

 

「もう撃ち始めたのか!?」

 

「一回まで降りてドアから出る!行くぞ!」

 

辺りが揺れる中、2人は立ち上がり低い姿勢のまま走り出した。

 

振動と落ちてくる砂煙のせいでうまく走れないがこのままでは迫撃砲を喰らうか天井に潰されるかでどの道死んでしまう。

 

階段を滑り落ちるように降りて急いで近くのドアから建物を抜け出た。

 

「生きてるか!?」

 

「ああ、それと今迫撃砲の弾道が見えた!向こう側の建物だ!突っ切って破壊しないとヤバい!」

 

「合図と共に俺が戦闘に行く!お前は右にサーマル・デトネーターを投げろ、俺は左に投げる!」

 

ポーチからサーマル・デトネーターを取り出し指で数を数える。

 

3、2、1、ジョーレンが走り出しジェルマンもそれに続く。

 

2人が大通りに出た瞬間、それぞれ左右にサーマル・デトネーターを投げた。

 

2人に敵兵が気付いた時にはもう遅い、左右両方で大爆発が巻き起こり2人を追うのに時間が掛かってしまった。

 

その間にジェルマンとジョーレンは急いで迫撃砲陣地まで接近する。

 

護衛のストームトルーパーと宇宙軍トルーパーが数人2人にブラスター・ライフルで銃撃したがすぐ反撃され蹴散らされた。

 

「このまま建物を登る!」

 

ジョーレンの合図でベルトにつけていたアセンション・ケーブルをブラスター・ライフルに取り付け建物の壁に向けて発射する。

 

2人は物凄い勢いで壁を駆け上がった。

 

これもイセノの戦いの前にジョーレンがアセンション・ケーブルによる建物の壁の踏破法を教えてくれたお陰だ。

 

壁を駆け上った2人はその勢いのまま迫撃砲がある屋上へと着地した。

 

突然人が現れた事により迫撃砲兵や護衛のストームトルーパー数人は唖然としていた。

 

だがそれが命取りとなる。

 

ジェルマンとジョーレンの制圧射撃でトルーパーは全員撃ち倒され迫撃砲の脅威は去った。

 

「迫撃砲制圧完了!」

 

「そして左100メートル地点からAT-ST!」

 

ジェルマンの一息ついた報告からすぐにジョーレンの緊迫した報告が付け加わった。

 

どうやら地表にいるパルチザンを相当しているようでこちらには気づいていない。

 

「迫撃砲で潰すぞ!」

 

砲の位置を変えAT-STに砲口を向ける。

 

ジェルマンが砲弾を手にしジョーレンに渡す。

 

距離的にこのまま撃ったとしても問題はないはずだ。

 

「ある弾全部使え」

 

「分かった!」

 

まずジョーレンはジェルマンから受け取った砲弾を迫撃砲の中に入れた。

 

ポンッという音と共に砲弾が飛び出し運よくAT-STに命中する。

 

表面装甲が大きく破壊され足取りも一瞬止まった。

 

「効いてる、どんどん寄越せ」

 

次々と砲弾を撃ち、AT-STや周りの随伴兵も纏めて攻撃した。

 

2、3発迫撃砲を喰らった辺りでAT-STは力尽きたように斃れ周りの兵士も全滅した。

 

「スカウト・ウォーカー撃破」

 

これで歩兵最大の脅威は去った。

 

だが今の連続砲撃で迫撃砲が制圧されたことがバレてしまった。

 

すぐにストームトルーパーや宇宙軍トルーパー達が集まってくる。

 

「あそこだ!撃て!」

 

再びE-11の銃弾が彼らを横切り掠める。

 

「厄介な連中め!」

 

ジェルマンは最後に持っていた迫撃砲を叩き敵兵の一団に投げつけた。

 

その衝撃で爆弾の代わりとなった砲弾はすぐに爆発し敵兵の掃討に役立った。

 

「また地表に降りる!」

 

迫撃砲を蹴り倒し建物の屋上から落とすとジョーレンは移動を始めた。

 

ジェルマンもジョーレンに続き再び地上に戻った。

 

「戦闘はまだ続いてるのかな」

 

「ああ、だがそろそろ退き時だろう。多分大隊や中隊クラスの部隊が展開され始める」

 

これほど派手にやったのだから今頃もはや小隊や分隊程度を送るだけでは済まなくなる。

 

確実に潰そうと重装備を持った中隊や大隊が現れるだろう。

 

いくら市街地戦の利がパルチザンにあるとしてもそれほどの大部隊相手では全滅は必須だ。

 

「おーい!あのウォーカーをやったのはあんた達か!?」

 

建物の影から2、3人のパルチザンと思われる男達が現れた。

 

手を振りこちらに接近しようとしている。

 

「助かった!あれのせいで後一歩で死ぬところだった!」

 

彼らはそれぞれ礼を述べジェルマン達に微笑みかけた。

 

だがジェルマンやジョーレンから送られた言葉は彼らとは対照的に緊迫感のあるものだった。

 

「伏せろー!!」

 

ずっとパルチザン達ではなく上空を眺めていたジョーレンは急いでジェルマンと共にその場にうずくまった。

 

「え?」

 

パルチザン達は言われたことの内容や意味を理解出来ず伏せることなく黄緑色のレーザー弾と砂煙の中に消えた。

 

直後ジェルマンとジョーレンの側にも爆風が巻き上がったが辛うじて負傷することなく済んだ。

 

悲鳴のような音と共に爆風を生み出した元凶である帝国軍のTIEブルートは飛び去っていった。

 

だがきっとすぐに戻ってくるだろう。

 

「先に航空支援を出してきやがった!!建物に隠れるぞ!!このままじゃあ100%助からん!」

 

2人は急いで立ち上がり再び近くの建物に避難した。

 

ジェルマンは一瞬だけパルチザン達がいた場所を見つめた。

 

そこには目を背けたくなるようなものが転がっており彼らの末路は悲惨なものだと認識した。

 

心の中ですまないと呟き再びレーザー砲の射撃を喰らわないよう隠れた。

 

「警戒中のTIEがすぐに駆けつけてきやがったか!もっと掛かると思ってたんだがな…!」

 

「僕とジョーレンのどっちかが囮となってその間にどっちかがグレネードを奴に叩き込もう。コックピットかエンジンに命中すればライフルようのでも問題ないはずだ」

 

A180にグレネードランチャーを装着し通りをレーザー砲で爆撃するTIEブルートに狙いを定めた。

 

「よしならどっちも囮でどっちも攻撃手だ、俺かお前に敵が喰らい付いたらその隙にに方向からグレネードを叩き込む」

 

ジョーレンもA280-CFEにグレネードランチャーを装着しまずジョーレンが大通りに出た。

 

当然敵のTIEブルートもジョーレンに気づき狙いを定める。

 

その間にジェルマンも通りに出てTIEブルートに狙いを定めた。

 

TIEブルートがジョーレンを撃とうとする中ジェルマンとジョーレンは既に引き金を引いていた。

 

放たれたグレネードはエンジンとコックピットそれぞれに命中しコントロールを失ったTIEブルートはそのまま近くの建物に墜落した。

 

小爆発が起こりTIEブルートは完全に沈黙する。

 

「重ファイター撃破!だが今度はインターセプターが来てる!」

 

ジェルマンの報告通り反対側から物凄い速さでTIEインターセプターが接近していた。

 

再び伏せて砲撃を躱そうとする中1発たりとも黄緑色のレーザー弾がTIEインターセプターから放たれることはなかった。

 

どこからともなく放たれた赤いレーザー弾がTIEインターセプターを撃破したのだ。

 

「赤のレーザー…ジョーレン!」

 

「ああ!潮時ってことだ!」

 

帝国軍のスターファイターのレーザー弾は基本的に黄緑色、そして赤いレーザー弾のスターファイターは理論上このガレルには“2機”しかいない。

 

姿を隠す衣を剥がし2機のスターファイターが姿を表した。

 

ラクティスのXウィングとウェクスリー少尉が操縦するUウィング。

 

ジェルマンとジョーレンを迎える為に現れたのだ。

 

「スナップ、地上の2人を回収しろ。支援は俺がなんとかする」

 

『了解中佐!』

 

Uウィングが地表に急行し空中に残ったのはラクティスのT-70 ステルスXウィングのみとなった。

 

折角だ、このT-70の性能を試そうじゃないかとラクティスは機体のペダルを踏み速力全開で航空支援を行おうとする周辺のTIE部隊に割って入った。

 

全翼のSフォイルに取り付けられたテイム&バック社製の試作レーザー砲の威力が試される。

 

一瞬で頑丈なTIEブルートを爆炎に変え更に連続して敵機を撃墜する、

 

「いい火力だ!」

 

また別の1機を撃墜しながらラクティスはそう喜んだ。

 

並のXウィングのKX-9レーザー砲とは威力がまるで違う。

 

調節も楽でしかも衝撃も少なかった。

 

「今度は隠し球の出番だ」

 

操縦桿から機体を操作し機体下部のブラスター砲で地上のストームトルーパー達を狙撃する。

 

ばら撒かれたブラスター砲が数人のストームトルーパーに直撃し即死させた。

 

対歩兵用として思いの他便利だ。

 

再び空へと向かい迫り来るTIEインターセプターやTIEブルートを返り討ちにする。

 

このT-70 Xウィングはプロトン魚雷が8発も装填出来る便利な代物だ。

 

簡易的な爆撃機にもすぐ変貌出来るしスターファイターとしても申し分ない戦闘力を持っている。

 

更にラクティスの操縦技術がこの新型のXウィングをより脅威的なものへと変貌させた。

 

今のラクティスに空戦で勝てるものなどそうはいないだろう。

 

「いいぞ!最高だ!」

 

航空支援を行おうとするスターファイターは皆撃墜されたかラクティスを追ってその任務を放棄した。

 

地上からは圧倒的な勢いで敵兵を薙ぎ払うラクティスのXウィングの姿が見えた。

 

悠々自適に空を舞い敵を蹴散らすその姿は正に反乱軍から続くレジスタンス軍の紋章である伝説の鳥(スターバード)を彷彿とさせた。

 

星々を征く鳥は自由を齎しやがて銀河を解放し救うのだ。

 

その魁となる機体がこのXウィングでもある。

 

ラクティスが無双に近い戦い方をする姿は階段を登り屋上まで辿り着いたジェルマンとジョーレンにも見えていた。

 

「流石レジスタンス軍のパイロットだ。殆ど敵うものなしだ」

 

ジェルマンも微笑を浮かべながら頷いた。

 

すると彼らの前にUウィングが停泊しハッチが開く。

 

スタトゥラ少尉が2人に手を差し伸べ「登ってください!」と伝えた。

 

「行こう」

 

「ああ、ガレルとはこれでおさらばだ」

 

2人はUウィングに乗り込み機体は徐々に浮上した。

 

Uウィングは最大速度で大気圏を離脱しようと進んだ。

 

その近くをラクティスのXウィングも飛んでいた。

 

彼が周辺のTIEを殆ど撃破してくれたおかげで空中で殆ど戦うことなく大気圏を離脱出来た。

 

『クローキングを作動する。こっちと合わせて一気に離脱するぞ!』

 

「了解!」

 

XウィングとUウィングがそれぞれクローキング装置を作動し肉眼での視界からもセンサーからも姿を消した。

 

これで軌道上のインペリアル級やスターファイター隊が捜索を始める頃にはもう彼らの居場所は分からず終いとなってしまう。

 

『座標をコフリジンⅤに合わせろ。ひとまずそこに友軍艦が待機している』

 

「了解、座標をコフリジンⅤへ」

 

2機のスターファイターが透明なままハイパースペースへと入った。

 

こうしてガレルからレジスタンス軍の生存者は誰1人いなくなった。

 

生存者と救出者の全員が無事帝国の支配下から脱出出来たのだ。

 

多くの情報と共に。

 

 

 

 

 

 

インペリアル級の合間からエグゼクター級“リーパー”がその火力を惜しみなく発揮する。

 

後退する艦隊の離脱を支援するMC80やスターホーク級がなんとかその火力を受け止めようとしているがやはり限界があった。

 

何隻もの主力艦が既に大破し航行不能になって退艦、もしくはその場で撃沈していた。

 

コルサントの解放、マジノ線、ラクサス攻略の時と同じように“リーパー”は容赦のない正確な砲撃を次々と打ち出していった。

 

その圧倒的な火力を前にレジスタンス軍は耐えるしか方法がなかった。

 

オイカン大提督は頑丈な突撃型の防衛線を展開し防御と攻勢を両立させていた。

 

スターファイターによる爆撃行動を行おうとしてもそれは無意味だった。

 

「各機編隊を崩すな!今度こそ爆撃を敢行するぞ!」

 

YウィングやBウィングの爆撃部隊が護衛のAウィングやXウィングと共に“リーパー”へ突進する。

 

しかしそこに妨害者が現れた。

 

突然1機のYウィングがあらぬ方向からレーザー砲を喰らい撃墜されたのだ。

 

「なんだ何があった!?」

 

一旦部隊は散開し警戒にあたるが今度は護衛のAウィングが撃墜され更にXウィングやBウィングも餌食となった。

 

部隊長のBウィングの前を何機かの黒い物体が通る。

 

刹那、物体の進んだ後には爆発とスターファイターの機体の破片が漂っていた。

 

「チッ!まさか!」

 

部隊長は歯噛みし周辺を警戒する。

 

すると全域に通信が掛かった。

 

それも敵側のスターファイター隊からだ。

 

『レジスタンス軍に告げる、今すぐ尻尾を巻いて逃げ出した方がいい。私はシア・ハブリン元帥(Air Marshal)、お前達の機体を1機残らず“()()”してやる』

 

この通信は1機のTIEディフェンダーから放たれていた。

 

シア・ハブリン、その名はレジスタンス軍には広く知れ渡っている。

 

ウエスタン・リーチ平定戦に参加しその後多くの反乱軍との戦いに参加してきたエースパイロット。

 

彼の半生はドラマにまでされ絶対的な英雄として扱われてきた。

 

負傷してからもハブリン元帥は戦い続け彼は“反乱の破壊者(The Rebel Destroyer)”と呼ばれていた。

 

ハブリン元帥は見事にTIEディフェンダーを操り敵機を1機残らず撃破していく。

 

部下の正式採用されたTIEストライカーも見事な連携でレジスタンス軍スターファイター隊を阻んだ。

 

特にハブリン元帥の戦いぶりは正に一騎当千といった有様で僚機と合わせてスターファイター隊の半数を撃破していた。

 

「“リーパー”と“エグゼキュートリクス”に近づけさせるな、彼の方を全力でお守りしろ!」

 

『了解!』

 

『了解!』

 

3機のTIEディフェンダーが編隊を組んで再びレジスタンス軍の戦列を崩しに飛び回った。

 

その様子は“リーパー”のブリッジでも確認されていた。

 

「攻撃に出たレジスタンス軍のスターファイター隊はセスウェナ軍のスターファイター隊に防戦され思うように攻撃が行われていません」

 

「流石は反乱の破壊者…しかしハブリン元帥がセスウェナにいるのは確認していましたがまさかTIEディフェンダーまであるとは」

 

ザーツリング少将はふとそう呟いた。

 

だいぶ前からハブリン元帥が大セスウェナ連邦のスターファイター隊を指揮している事は知られていた。

 

彼の教育した部隊が幾つかの紛争に介入していることもだ。

 

だがTIEディフェンダーを保持していたと言う記録はなかった。

 

大セスウェナ連邦の軍事パレードでも確認されていなかった機体だ。

 

()()()()()()()()”。

 

「やはりセスウェナを第三帝国領として組み込むのは無理だったと言う話だ。グランドモフの権限で釣ったはいいが今やその権限で半独立性を維持している」

 

「やはり第三帝国にとってセスウェナは危険です」

 

バルシュンテル少将はオイカン大提督に進言する。

 

彼の危惧はある種当然だろう。

 

「だが今セスウェナをなんらかの理由をつけて捜査すれば間違いなくセスウェナは第三帝国を離れ我々と戦うことになる。“()()()()()()()()()()()()()”、それは恐らく以前の帝国の時から変わらない」

 

故にグランドモフターキンがいたからセスウェナは常に帝国であり続けた。

 

第三帝国も同じであると踏んだのだろうが、恐らくあの若いターキンやエリアドゥ、セスウェナの者達が第三帝国に抱いている疑念がそうさせなかったのだ。

 

そしてその疑念は半ば当たっているのだろう。

 

「それにセスウェナは第三帝国にとって十分有益だ。攻める理由は見当たらない」

 

オイカン大提督はブリッジのビューポートから反対側で戦闘する“エグゼキュートリクス”を眺めながた。

 

今思えばあの若いターキンを庇うような言動が多いのはやはり彼らの真っ直ぐさが原因だろうか。

 

いざとなれば第三帝国とすら立ち向かえそうな気概とあの意志の強さ、それでいてあの歳で獲得したとは思えないカリスマ性。

 

ターキンの血を引く者は頼もしくもありやはり恐ろしくもある。

 

だから親衛隊やCOMPNORの一部のメンバーはセスウェナを疑っているのかも知れない。

 

尤もその雰囲気は国防軍とて例外ではないが。

 

「敵艦隊は間も無く全艦艇がジャンプを始めるはずだ。追撃の準備を各艦に伝えろ」

 

「了解」

 

オイカン大提督は相手の動きを予測し的確に指示を出す。

 

相手は引き際を心得ているようだが十分な打撃は与えたはずだ。

 

このままアノート宙域に侵攻しまず橋頭堡と突破口を確保する。

 

その時今のように大セスウェナと共闘出来るかは分からないがその時はマラステア派遣軍をぶつければいいだけの話だ。

 

オイカン大提督は職業軍人として私情や思慮を押し殺し任務に徹した。

 

それは戦闘中のヘルムートも同様であった。

 

彼は“エグゼキュートリクス”のブリッジから冷静に戦況を見極めていた。

 

「敵艦隊はまもなくハイパースペースに入るな。それにオイカン大提督は追撃を仕掛けるだろう」

 

「どうしてそのようなことが?」

 

マルスはヘルムートに尋ねた。

 

「我々が到着した段階でレジスタンス艦隊はもう退却するつもりだったはずだ。我々の包囲を受け後退戦をせざるを得なくなっただけで隙があれば全軍で戦場を脱したいはずだ」

 

元よりアノート宙域のレジスタンス軍の敵はアデルハード総督であってセスウェナではない。

 

あくまでも状況的にセスウェナは偶発的に巻き込まれただけだ。

 

どのような背景があろうとその事実は変わらない。

 

だが大セスウェナとしては領域を守ると言うことで兵を展開する理由としては十分であった。

 

アノートへの直接侵攻はオイカン大提督達に任せておくとして後方の軍政や残党の掃討活動はセスウェナとて協力せざるを得ないだろう。

 

だがヘルムートとしては第三帝国に任せておくよりはそちらの方がいいと今は考えていた。

 

第三帝国に直接何かを与えるのは危険過ぎる。

 

与えたものや与えた場所で何をするか想像するのは容易い。

 

「国防軍も流石ですがやはりあなた方の軍隊は違いますわね。演習通り、むしろ演習以上の練度を誇っていらっしゃいますわ」

 

クラリッサは微笑を浮かべながらヘルムートに感想を述べた。

 

「ケッセルの指導者にそう言って頂けるのは幸いです。我々とてただずっと新共和国や第三帝国の顔色を窺ってきた訳ではないので」

 

「このまま追撃戦まで拝見させてもよろしくて?」

 

「どうぞ、と言っても積極的に戦うのは国防軍の方でしょうが。ハブリン司令官とスターファイター隊を戻せ、追撃出来る体勢を構築する」

 

「了解」

 

何百機のTIEストライカーやTIEファイターが母艦に帰還を悟られないよう戻り始める。

 

レジスタンス軍のスターファイター隊は相当疲弊しておりもはや追撃出来る状況ではなかった。

 

大破した何隻かのMC80やMC75、スターホーク級などの大型主力艦を盾にしながら放棄し動ける全てのレジスタンス艦艇が壊滅したアデルハード艦隊の合間からハイパースペースへジャンプした。

 

レジスタンス軍にとってもはやこれ以外の選択肢はなかった。

 

この宙域での戦いにレジスタンス軍は敗北したのだ。

 

そしてセスウェナと帝国宇宙軍の連合艦隊が勝利した。

 

だがこれはほんの前哨戦に過ぎない。

 

()()()()()()”。

 

「ハイパースペース・アクティブ追跡装置を作動、補足した艦隊の足取りを可能な限り確認せよ。大伯父の遺品、ありがたく使わせてもらう」

 

かつてターキン・イニシアチヴが理論を形成していたハイパースペース追跡装置、このセスウェナの地でも理論を形にする絶え間ない努力がなされていた。

 

元よりターキン・イニシアチヴは名前の通りウィルハフ・ターキンが設立したシンクタンクだ。

 

その為銀河内戦の末期には多くのターキン・イニシアチヴのスタッフや研究員、科学者達がセスウェナとエリアドゥに逃げ込んできた。

 

彼らとエリアドゥの豊かな資本がこの追跡装置を第三帝国とはまた別の形で開発に成功した。

 

「予測を掴み次第報告を、“リーパー”の方にも情報を提供する」

 

「よろしいのですか?」

 

ダック艦長はヘルムートに尋ねた。

 

「構わん、こちらが何を使ったかはもう分かっているはずだ。なるべく早く大部隊で追撃を可能にする、今のうちに各艦、各隊補給を。パイロットや砲手も交代交代で休憩を取れ」

 

「了解、伝達します」

 

「特にトレークスの小艦隊は優先的に後方に回せ、次点でクリフォードの機動部隊だ。先行部隊はよくやってくれた」

 

アデルハード艦隊の予想外の動きで彼らには本当に大きな負担を掛けてしまった。

 

結局相手を利用するこの陰謀詐術めいた作戦は逆に相手に利用され無理やり戦いに巻き込まれる形となった。

 

それがアデルハード総督であれ親衛隊であれ国防軍であれ結局良いように利用しようとして利用されたのは我々だった。

 

向いていないと言うことなのか単に因果応報なのか結果だけ見れば誰にも分からない。

 

少なくともレジスタンス軍と戦いポーズを取ると言う当初の目標には成功したがそれ以上に利用された気がする。

 

それが結果的に先祖の領域を守り、発展に寄与出来るなら由としよう。

 

だがそうではないのなら…。

 

「……クラリッサ殿、マルス殿、少し時間を頂けますか」

 

ヘルムートは2人の名前を呼んで問いかけた。

 

クラリッサは首を傾げ「まあ良いですが…」と了承した。

 

マルスもクラリッサが行くならと頷いた。

 

「艦長、“オルタネート”にいるおじ上に伝えておいてくれ。ホロ通信で会議を開きたい」

 

「はい、分かりました」

 

「一体なんの話をするおつもりで?」

 

クラリッサはヘルムートに問い詰めた。

 

するとヘルムートは微笑を浮かべこう答えた。

 

「我々の“()()”のことですよ」

 

彼の微笑には哀しみのようなものも混ざっていたしどこか希望のようなものも混ざっていた。

 

それが彼らの歩む未来の暗示だと言わんばかりに。

 

 

 

 

 

 

-アウター・リム・テリトリー イリーニウム星系 惑星ディカー レジスタンス軍最高司令部-

ジェルマンとジョーレンがガレルで生存者を救出したことはすぐにディカーのレジスタンス軍司令部にも行き渡った。

 

丁度この時の司令部はセスウェナ軍との戦闘で受けたアノート宙域の損失について話し合っており雰囲気がとても暗い中だった。

 

その為彼らの報告は小さな事ではあるが司令部の幕僚達の表情に笑顔と安堵を取り戻させた。

 

「死傷者はなし、軽傷を負った者もいないようです」

 

「それは何より、今彼らはどこへ行っているのだ」

 

報告を聞いていたディゴール大臣は報告に来た士官に尋ねた。

 

「コフリジンⅤ周辺にいるヤヴィン軍のネビュラ級です。そこに合流すると」

 

あの頑丈なスター・デストロイヤーであれば仮に帝国軍の攻撃を受けてもなんとか退けて離脱出来るだろう。

 

ライカン将軍はどんな事にも確実性を追求する男だ。

 

彼が指揮に加わっているならまず安全性は保たれている。

 

「合流次第ひとまずヤヴィン4へ向かうそうですが」

 

ディゴール大臣は考え込むようなポーズを取った。

 

彼らをこのままなんの任務も与えずヤヴィンに戻すのは頂けない、というより時間が惜しい。

 

特にアノート宙域の損害やモン・カラ方面の危機を鑑みれば尚更だ。

 

彼らには悪いがもっと働いてもらう必要がある。

 

「ソロ将軍の抵抗勢力支援任務はどうなっている?」

 

ミレニアム・ファルコンに乗ったハンとチューバッカと幾人かの特殊部隊員と共に各地の抵抗勢力を支援し教導している。

 

おかげで帝国軍は補給路や駐屯地で無視出来ない被害を被っており戦線の維持に翳りが差し掛かっていた。

 

「今の所自分達だけで問題ないとソロ将軍は仰っていましたが…」

 

「では2人もその任務に……いや」

 

ディゴール大臣は途中で言葉を切り上げ命令を出すのを撤回した。

 

隣で会議に参加していたヴィアタッグ将軍は「どうした大臣?」と声を掛けた。

 

「…各地の特殊部隊や情報部員の位置を知りたい。出してくれるか」

 

ディゴール大臣の要求に答えホロテーブルを操作していた将校がそのまま望み通りの星図を映し出した。

 

銀河各地に展開している地上軍宇宙軍問わずの特殊部隊の位置やスパイなどの情報部員の位置が正確に記されていた。

 

「今命令が入っていない特殊部隊はごく僅かです」

 

「1つだけある、“()()”とバスチル少佐とジルディール大尉らに任せよう」

 

ディゴール大臣は決断し正確な命令を出し始める。

 

「かなり古い軍艦だがアノート宙域へ失った分の戦力を補填出来るだけの戦力がまだ残されている造船所がある。そこにバスチル少佐とジルディール大尉らを向かわせる」

 

すぐにその場所を気づいたヴィアタッグ将軍は「まさか…正気か…?」とディゴール大臣に尋ねた。

 

その場所には確かに今の帝国軍もマークしていないが軍艦が残されている放棄されたクローン戦争時代の造船所がある。

 

だがあそこに残された軍艦は想像以上に古い上にこの戦争でどのくらい役に立つかは全く計り知れない。

 

「ないよりはマシだ。それに最悪バラしてしまえばスターホーク級やネビュラ級の建造に役立てられる」

 

「あの骨董品艦隊を……まあ確かにないよりはマシだが…」

 

「私とて手は出したくないがこの状況下においては仕方ない。直ちにネビュラ級に通達しろ、バスチル少佐とジルディール大尉は補給を受け次第直ちに指定された座標にジャンプし放棄された造船所から武器類を運搬せよと」

 

通信士官が小さく頷き、コフリジンⅤにいるネビュラ急に通信を繋いだ。

 

その間にディゴール大臣は命令を次々と出す。

 

「アノート宙域の司令部に通信を、この情報を伝える。それとバスチル少佐達とは別の特殊部隊にも通信を」

 

「一体どの特殊部隊に向かわせましょうか」

 

幕僚の1人がディゴール大臣に尋ねた。

 

既にディゴール大臣はもう誰を送るか決めている。

 

彼は速やかに部隊名を答えた。

 

「“地獄(Inferno)”……“コルウス”のアイデン・ヴェルシオ中佐に直接繋げ。この任務は彼女の部隊とバスチル少佐達にしか託せない」

 

ディゴール大臣は確固たる意志を含んだ瞳で断言した。

 

過去の遺物でレジスタンスの応急処置を画策する彼らだが彼らはまだ知らない。

 

この任務はシス・エターナルとの新たな戦いの始まりであると。

 

最終決戦に繋がる序章にしか過ぎないことを。

 

この銀河で知っている者がいるとすればそれはたった“1()()”だけのはずだから。

 

9ABY、この第二次銀河内戦はシスの到来を迎えたった1年ではあるが大きく歪曲しようとしていた。

 

 

 

 

つづく




ああ!!眠い!!(眠い)

というわけで眠い中のナチ帝国最新話です!!

眠い!!

すっごい眠い!!
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