第二次銀河内戦   作:Eitoku Inobe

6 / 84
-復讐戦の炎は誰にも止める事は出来ない-


帝国の日

-コルサント 総統府-

今日は帝国にとって重要な1日となった。

 

コルサントだけに留まらず他の惑星でも同様に慌ただしかった。

 

最近加わったコレリアやクワット、フォンドアもだ。

 

飾り付けや式典の準備などで政府も軍も慌ただしかった。

 

市街地のあちこちではホロネット・ニュースの人気キャスターが身振り手振りを交えて話している。

 

『今日は今は亡き皇帝陛下がクローン戦争を終結させ我が祖国を建国した記念日です』

 

ニューオーダー宣言の行われクローン戦争が終結した日。

 

今日こそが世に言う帝国の日だった。

 

『今は亡き皇帝陛下に哀悼の意を捧げ、今日という日に想いを馳せましょう、帝国の為に』

 

まだ朝方だと言うのにその盛況さは他と比べ物にならない。

 

半ば強制されている面もあるがそれだけではこれほどの盛り上がりにはならないだろう。

 

だがその裏ではある事が行われていた…

 

 

 

 

コルサントに住んでいる誰しもが帝国のことを歓迎しているとは限らない。

 

銀河内戦末期にはコルサントでも内戦が起きていたので当然今の状況を心良く思わない者もいるだろう。

 

だがそのような考えが現在の帝国で許されるはずなかった。

 

古いアパートの一角に帝国保安局や親衛隊保安局のITTが停泊しアポーとの周りをパトロール・トランスポートが囲んでいた。

 

兵員輸送機から数十名の保安局員が姿を表す。

 

黒いコートを着た指揮官と思われる男が全員に指令を出す。

 

「すべての住民を一斉逮捕しろ、反抗するようなら射殺して構わん、さあ行け」

 

保安局員達が一斉にアパオートに突入し散開していった。

 

突入時に既に銃声が聞こえていたがそんなの誰も気にしない。

 

今この場で殺すか刑務所に入れてから殺すかの違いだ。

 

数日延命するだけに過ぎない。

 

エレベーターや階段に白い軍服を着た保安局員達が駆け上がる。

 

ターゲットの部屋を見つけるとまずは扉を叩く所から始まった。

 

「開けろ保安局だ!」

 

当然ドアは開かず部下に命令して無理矢理解錠した。

 

数名の保安局員が容赦無く家を踏み荒らす。

 

「全て探せ」

 

「はい」

 

足音を思いっきり立てドアを壊す勢いで開ける。

 

テーブルをひっくり返し棚と言う棚を物色した。

 

その間にも上階や下から銃声と悲鳴が響いた。

 

痛みに悶絶する声や慈悲を懇願する声まで聞こえた。

 

ちょうど寝室の部屋を開けると中には男女が2人逃げる支度をしていた。

 

「ようやく見つけた、捕まえろ」

 

2人の手を保安局員が乱暴に掴み引き離す。

 

「やめろ!」

 

「お願いやめて!何も知らない!」

 

「いいから来い!行くぞ!」

 

手錠を填め外へ連れ出す。

 

また別の所ではターゲット達が諦めたのかぞろぞろ外に出ていた。

 

「案外多いな」

 

「ああ、輸送機の手配を頼まねば、なるべく早く出せ!」

 

外に連れ出された住民達は皆輸送機に載せられるかその場で射殺されるかだった。

 

アパートメントの端には死を選ばされた哀れな住民達の亡骸が積み重なっている。

 

手錠をはめられたま住民達は乱暴に輸送機に放り込まれた。

 

「一旦出せ!もう詰め込めん」

 

ドライバーが頷き数台の輸送機が発進した。

 

その背後では当然のように銃声が鳴り響いていた。

 

輸送機が発進した後も大勢の住民が外へ連行されていた。

 

このアパートメントに住む者達は皆かつてコルサント内戦で帝国側に反旗を翻した者だという確定的な情報がある。

 

なので帝国の日の盛況に乗じて一斉逮捕を行っているのだ。

 

結果逮捕による混乱はほぼ0であった。

 

「このままパレードまでには終わりそうか?」

 

「ああ、後3軒回れば終わりだ」

 

「大尉殿子供はどうしましょう」

 

少尉が数人の子供を引き連れて尋ねた。

 

大尉は副長の上級中尉と顔を見合わせると少尉に命令を出した。

 

「子供は貴重な人的資源だ、別ルートでアカデミーに送らせろ」

 

「了解いたしました、さあみんなこっちへ来るんだ」

 

子供達は虚な表情のまま静かに少尉に連れられた。

 

後に第一次コルサント一斉逮捕と名付けられた一連の事件は帝国の日の盛況さの雲に隠れ闇に消えた。

 

 

 

ジークハルトは珍しく緊張していた。

 

彼は今帝国の日の為だけに用意された総統の演説を連隊の全員と共に聞いている。

 

周りには他の帝国軍や親衛隊の部隊や師団、兵団などが同じように綺麗な隊列を作り聞いていた。

 

今日は帝国の日に合わせたパレードがあった。

 

連隊を率いて総統府の周りを凱旋し帝国の力を見せつける。

 

とまあ理由は色々あるのだが問題はパレードなのだから一般人が大勢いる事だった。

 

人に見られるのは緊張するしジークハルトにはパレードに関して軽いトラウマがあった。

 

まだ彼が中尉の階級だった事だった。

 

マコ=タの戦いを受けて行われた凱旋パレードで先頭を歩いていた彼は凱旋途中何故か道に巻かれていた謎の滑りに足を取られすっ転げてしまった。

 

後から聞いた話によれば凱旋を行なった場所に清掃用の洗剤が溢れっぱなしだったと言う事らしい。

 

そんな事あるのかと耳を疑いたくなる出来事だが確かにあった。

 

結果ジークハルトが処罰される事はなかったが大恥を掻いた事には変わりないだろう。

 

それ以来彼はパレードに対して謎の恐怖感を抱いていた。

 

そんな事を考えていると総統の演説が終わりパレードの開始を合図する軍楽隊の音楽が流れ始めた。

 

先頭を行進する親衛儀仗中隊と帝国儀仗中隊が半回転し綺麗な隊列のまま行進曲と共に進み始めた。

 

一番先頭にはヴィアーズ大将軍とシュメルケ上級大将がそれぞれスピーダーに乗り敬礼していた。

 

勇ましい行進曲と共に儀仗中隊は一糸乱れぬ隊列のまま軍靴の音を響かせ大衆が歓声をあげる中進み続けた。

 

ジークハルトの第六親衛連隊とストライク・フォースの行進は六番目であり今進んでいる二個中隊が終わればすぐだった。

 

『親衛連隊行進、第一親衛連隊ルテマン・アルブレート上級大佐』

 

渋い声の進行役の士官が連隊名と連隊長の名前を淡々と読み上げた。

 

しかし声のせいか不思議と気にはならなかった。

 

アルブレート上級大佐が敬礼し連隊の先頭に立って行進する。

 

副連隊長と連隊旗を持った大尉が彼の背後に続く。

 

さらにその背後にはフューラー・ストームトルーパーが数千人ほど続いた。

 

親衛隊のストームトルーパーは通常のインペリアル・ストームトルーパーとは少し違う。

 

最新技術を積極的に取り入れた親衛隊のストームトルーパーはより頑丈なアーマーに高性能な装備を身に付けている。

 

ヘルメットには強化感知ギアと小型のライトが常備された。

 

武装は新型のE-11Fブラスター・ライフルやDLT-19F重ブラスター・ライフルで今までのブラスター・ライフルより頑丈で汎用性が高い。

 

最近では帝国軍の特殊部隊などにも配備されている優れ物だ。

 

第一親衛連隊の後ろをAT-AT(全地形対応装甲トランスポート)の一個中隊が歩行している。

 

よく整備されていて走行は日の光を受けて光り輝いていた。

 

このAT-ATには背後にミサイルランチャーや対空用のブラスター・タレットが備わっており今までのAT-ATよりも敵を寄せ付けない装備になっていた。

 

そしてその後ろを第二、第三、第四、第五親衛連隊が行進している。

 

そろそろジークハルトと第六親衛連隊の番だ。

 

「ふぅ…」

 

「中佐緊張なされてるんですか?」

 

連隊旗を持ったヴァリンヘルト中尉が小声で話しかけてくる。

 

逆にヴァリンヘルト中尉はまるで緊張していない。

 

羨ましい限りだ。

 

「ああ少しな…」

 

「昔のあれだな…大丈夫コルサントはそんな事ない」

 

「そっそうだな…」

 

長い付き合いのアデルハイン少佐は覚えていたようだ。

 

大きく深呼吸して誰にもバレないよう目を瞑り心を落ち着かせる。

 

『続いて第六親衛連隊』

 

ついに名前が呼ばれた。

 

落ち着いて彼らは進み始める。

 

観客のいる右側の方を敬礼しながらジークハルトは向いた。

 

緊張で変に笑ったり硬い表情にならぬようあえて微笑を浮かべていた。

 

もともと容姿端麗な彼だ、優しそうな表情を浮かべられたら観客席は多少ざわつくに決まってる。

 

『連隊長ジークハルト・シュタンデリス上級中佐』

 

士官の紹介が終わりより一層ジークハルトに注目が集まる。

 

これではさらに緊張してしまう。

 

幸いド緊張のせいか微笑の表情は崩れる事なく連隊の出番は終わった。

 

最後に笑顔で手を振る息子マインラートと妻ユーリアを発見して緊張がほぐれたままジークハルトの出番は幕を閉じた。

 

 

 

-新共和国領 惑星オンダロン-

オンダロンが新共和国側に引き入れられたのは単に“お情け”と言う面が大きい。

 

インナー・リムに属するオンダロンは帝国領でも良かった。

 

しかしここの出身で故郷の自由の為テロリストにも等しい戦い方を選んだソウ・ゲレラや全滅したパルチザンの遺志を汲み取って新共和国側にしたのだ。

 

結果的にゲレラは目標を達成したと言えよう。

 

自由を得た故郷の姿をその目に焼き付ける事はできなかったが。

 

大使館の一行を乗せたテイランダー級シャトルはなんとかここまで逃げ延びた。

 

道中帝国の巡視艇に追われかけたりしたが誰1人死傷者は出ていなかった。

 

そして今はオンダロンの宇宙港では羽を休めていた。

 

「今オンダロンに到着しました、ひとまず帝国領は抜け出しています」

 

『わかった、迎えのフリゲートを出す、それまでオンダロンで待機していてくれ』

 

「わかりました」

 

『1時間ほどで着くだろう、それまでの辛抱だ』

 

「はい中将、ホズニアンで」

 

敬礼しコムリンクを切るとジョーレンのそばに寄った。

 

ジョーレンは自販機で買ったカフを飲みながら暗殺者がいないか目で見張っていた。

 

「後1時間で迎えがくる、フリゲートだそうだ」

 

「そうか、じゃああの船はどうすんだ?」

 

「もったいないけど処分だろうな、足がついちゃ困る」

 

「あれだけやっといてそりゃもう手遅れだろ」

 

「まあそうなんだが…」

 

2人がそんな話をしてるとヘルヴィが紙コップを2つ持ってきて手渡してくれた。

 

「あのよかったら…」

 

「あぁ…いやどうも」

 

「俺はもうあるからあんたが飲みなよ、気持ちだけ受け取っとくさ」

 

ジョーレンは断りジェルマンは照れ臭そうに受け取っていた。

 

心の中で「コイツ童貞臭いなぁ」とジョーレンは思っていたがクールな表情を作りなんとか口に出さないようにしていた。

 

「ヘルヴィさんはお父さんについて行ったのかい?」

 

ジョーレンはカフを一口飲みながら彼女に事情を聞いた。

 

「はい、父のような大使になりたくて勉強も兼ねて大使館に勤めていました」

 

「そうだったんですか」

 

「そうしたらあんなことになってしまって…本当にお二方は命の恩人です」

 

「いえいえそんな」

 

「まあそれくらいの働きはしたんじゃねぇの?とりあえず大使館メンバーが全員無事でよかった」

 

ジェルマンが少しムッとしたのを彼は確認した。

 

やっぱり童貞くさいなぁと思いつつジョーレンはこれからそんな相棒をからかっていく事に決めた。

 

 

 

-コレリア 軌道上ステーション-

コレリアの軌道上には数百隻以上の帝国艦が集まっていた。

 

造船所では久しぶりに全施設がフル稼働で動いており続々と失われた分の艦隊を取り戻していた。

 

続々とハイパースペースからインペリアル級やアークワイテンズ級などの主力艦が出現する。

 

「テルマー准将の第二十四機動艦隊到着、第二十五、第二十六機動艦隊も同様に到着」

 

「ローリング大将軍とオイカン元帥のリーパーが間も無くジャンプアウト、第一艦隊もです」

 

「ようやくか」

 

ステーションのブリッジから司令官はリーパーの到着を待った。

 

彼が副官と共にブリッジに立った瞬間リーパーと取り巻きの帝国第一艦隊はハイパースペースからの長旅を終えた。

 

帝国の威信を示したこのスター・ドレッドノートは周りの艦の何十倍も大きくそして強力だ。

 

ブリッジからその姿を見るだけでも鳥肌が立つ。

 

その反面もし自分がこれと戦う事になったらと思うと背筋がゾッとする。

 

こんな超弩級のスター・ドレッドノートを倒せるだろうか。

 

周りの付属艦を潜り抜けTIEの軍集団を掻き分け敵の砲火を躱しこの艦を撃破することが果たして可能なのであろうか。

 

否不可能だ。

 

死ぬに決まっている、やはり帝国艦隊に立ち向かおうなど自殺行為に等しい。

 

昔は出来たとしても今は違う。

 

再び帝国軍は進化した。

 

昔のようにむざむざと破れるような事はない。

 

その証拠に次々とハイパースペースから新型のインペリアル級が姿を表した。

 

昔のようにオナガー級スター・デストロイヤーやインターディクター級スター・デストロイヤーもいる。

 

「司令官、ローリング大将軍のシャトルがまもなく到着します」

 

「出迎えるぞ、こちらも渡す物がある」

 

司令官は部下を数名引き連れてブリッジを後にした。

 

艦隊の集結を最後まで見届ける事はなかったが司令官には確証があった。

 

帝国は必ず勝つ。

 

もはや敗北の屈辱は遠い過去のものだ。

 

集まり続ける帝国艦隊を背に司令官はそう思った。

 

 

 

-コルサント軌道上 ルサンキア-

続々とハイパースペースに突入していく帝国艦隊をシュメルケ上級大将とヴィアーズ大将軍の第一軍と第二軍は見守った。

 

囮部隊とは言えしっかりやってもらわねば。

 

尤もローリング大将軍がいる限り手柄を立てようといやでもしっかりやってくれると思うが。

 

昨日は帝国の日だった。

 

各地で帝国軍のほとんどをフル装備のままパレードに出していた為都合がいい。

 

そのまま兵器や兵員を艦に詰め込んで前線に運搬する事が出来るので迅速な展開が可能だ。

 

「閣下、後六個艦隊のハイパースペースジャンプで第三軍の編成は完了します」

 

「相当の声明発表まではあと何時間だ」

 

「3時間ほどです、それまでに第三主力艦隊の編成は完了するでしょう」

 

「なら我々も急がねばな、攻撃用の地上部隊は全て搬入済みだな?」

 

「はい、ホズニアン・プライム攻撃の第一軍四十五個兵団、シャンドリラ攻撃の第二軍三十個兵団、マジノ攻撃の第三軍四十五個兵団全軍準備完了です」

 

今回の戦いは400万人以上の大部隊が投入される。

 

新共和国の首都でありホズニアン・プライムを攻撃する為の第一主力艦隊と第一軍。

 

指揮官はシュメルケ上級大将で主に親衛隊が主軸となり迅速な首都陥落を目指す。

 

そして旧首都であるシャンドリラを攻撃する第二主力艦隊と第二軍。

 

ヴィアーズ大将軍が指揮を取り主に帝国軍や帝国地上軍が主力となる。

 

そしてマジノの防衛線から新共和国の主力軍を引き付ける第三主力艦隊と第三軍。

 

先程の通りローリング大将軍とオイカン元帥が指揮を取る。

 

第三軍が最も規模が大きく新共和国防衛艦隊と互角に渡り合える程の戦力を有していた。

 

「全艦に通達、ジャンプ隊形のまま待機だ」

 

「はい閣下」

 

士官はブリッジを後にしシュメルケ上級大将はブリッジから眼前に広がる帝国艦隊を見つめた。

 

インペリアル級が密集しその隙間を埋めるようにアークワイテンズ級やグラディエイター級が集まる。

 

真横を見つめれば同型艦のアナイアレイターが並んでいる。

 

これだけ見れば昔の帝国軍が復活したように思える。

 

だがまだ足りない。

 

追いつき追い越さねば。

 

もう二度と負けない為に。

 

すぐ先の戦いを見つめる彼の瞳はいつにも増して鋭く険しかった。

 

 

 

-アークセイバー ブリッジ-

ジークハルトとアデルハイン少佐、ハイネクロイツ少佐などの指揮官達はアークセイバーのブリッジに召集をかけられていた。

 

親衛隊宇宙軍の副旗艦となったこの艦は総旗艦であるルサンキアを守るべく目を光らせているように見えた。

 

付属艦としてグラディエイター級を二隻引き連れる姿はまさしく過去の姿を想起させた。

 

哨戒機のTIEファイターが艦隊の周辺を哨戒しインペリアル級のような巨艦が時折TIEファイターを影に隠してしまう。

 

帝国の偉大さを表す素晴らしい光景だ。

 

「そろそろ総統閣下の声明文発表だな…」

 

アークセイバーの艦長、リードリッツ・オイゲン准将はブリッジのモニターを見つめながら軽く深呼吸をした。

 

相当の演説が終わればすぐに戦場へジャンプしなければならない。

 

負けるつもりも死ぬつもりもないのだがやはり緊張はする。

 

彼の背後にいるジークハルトも同様であったように。

 

「哨戒行動中の全TIE部隊を収容しろ、なるべく全員に見せたい」

 

「了解しました」

 

ブリッジの下士官がTIE部隊に通信を繋げる。

 

他にも艦に異常がないか最終チェックをする下士官達がブリッジに溢れていた。

 

大幅なオートメーション化が為され整備などもたやすくなったのだがやはり最後は人間の手で行わなければ。

 

みようによっては完全にドロイドを信用出来ない滑稽な姿がそこにあるのだろう。

 

「総統府声明発表開始されました、モニターに映します」

 

下士官がコンソールを操作しブリッジのモニターに総統府の会見を映す。

 

大勢のホロネット・ニュース関係者に囲まれ会見を受けていた。

 

記者だけでなく軍人や民衆もその様子を固唾を飲んで見守っていた。

 

壇上に代理総統が立ち静かに周りを見渡す。

 

帝国を率いる者としての威厳が確かにそこにはあった。

 

見えなくともその圧に襲われジークハルトは身震いした。

 

まるで何十何百の激戦を潜り抜けてきたようだ。

 

総統はまだ喋ろうとしない。

 

何故なら人々の歓声がまだ収まらないからだ。

 

彼がいつも口を開く時は静まり返った状況だけだった。

 

その事をもうみんな理解しているのか口を閉しじっと総統の方を見つめていた。

 

『かつての皇帝はは20年以上も我が帝国の舵取りをする立場にありそれだけの期間、我が国に与えられた試練を全て乗り越えてきた』

 

ついに演説が始まった。

 

落ち着いた声のトーンで総統は演説を続ける。

 

『だが皇帝の死後帝国はどうなった?あの後の権力者は皆己の欲求に必死になった、皇帝の為にという意志は有ったものの彼らが成し遂げた唯一の功績というのは新共和国相手に無意味な戦いを続けこの帝国を存続させたという事だけである』

 

総統は真実を隠さなかった。

 

皇帝の死後彼のいう通り帝国は分裂した。

 

各地のモフは軍将と成り下がり己の欲求と亡霊じみた意志だけを原動力に戦っていた。

 

結果同胞同士の醜い争いが勃発し本来勝てるはずの新共和国に次々と敗北を重ねていった。

 

それは確かに愚かな行為だ。

 

『銀河協定を諸君らは覚えているだろうか?彼らは平和を誓い協定に愚かにも帝国のサインを押した、結果どうなった?』

 

市民達は俯いた。

 

その後のことは誰しもが知っている。

 

経済も治安も崩壊し全員が貧しくなった。

 

息詰まった感覚を覚えてもそれを吐き出す所はどこにもなかった。

 

この時初めて帝国市民は帝国の有り難みを知った。

 

だがもうその時はすでに手遅れに思えた。

 

『全て破壊されてしまった、人も建物も経済も栄光も生活も、これ以上に破壊された国がどこにあるというのだろうか?僅かな時で民衆はすっかり痩せ細り無気力な時をすごさる終えなくなってしまった』

 

まさに悲劇だ。

 

しかも実話でもある。

 

『私は悲しく思う、我が帝国は確実に崩壊の道を歩んでいる、そして新共和国は今にも我らを嘲笑いまやかしの平和に足を浸し優雅に酒を嗜んでいる』

 

総統の演説は嘆きから怒りに変わった。

 

『我々をこんな姿にしたのは誰だ?権力者か?軍人か?それとも民衆か?いや違う、平和を慈しみ平和を愛していた我々の国に奇襲を掛けその残忍な刃物で我々を引き裂き帝国を掻き殺した新共和国、延いては反乱軍にある!』

 

これもまた真実だった。

 

反乱軍は今までテロに近い行為を起こし力を蓄え奇襲により多くの命を奪った。

 

銀河を救った英雄達も蓋を開ければテロリストに変わりはない。

 

家族や親友を失った者達からすれば憎むべき敵だ。

 

『何故我らがそんな連中を前に屈辱の涙を流さなければならないのか、本来は彼らが我らの前に屈するべきである!その代価を支払い無惨な姿に成り果てたまま!』

 

総統はこの時特徴的な身振り手振りを交えて演説していた。

 

だがこの姿は見る者により感情的な一面を与え、聞く者の心を完璧に支配した。

 

そして両腕を前に広げこう宣言した。

 

『我々は今日復讐を開始する!銀河帝国は新共和国に対し戦線を布告する!』

 

言葉と共に民衆の歓喜の声が広がった。

 

あちこちで総統を称える声が聞こえ熱気と大歓声がコルサント中を包んだ。

 

涙を流し喜ぶ者もいれば大声をあげ戦いを待ち望む者もいた。

 

そして上空に位置する帝国艦隊にとってはそれは出撃の合図だった。

 

「全艦ハイパースペースへ、航路DC-E、“ターキンの跡に続け”」

 

オイゲン准将の命令と共にブリッジでは座標計算が行われ始めた。

 

ルサンキアやアナイアレイター、他のインペリアル級やクルーザーなどでもそうだ。

 

遠く離れたコレリアに駐留する第三軍は既に出撃していた。

 

艦隊は一瞬にして忙しくなった。

 

「ハイパードライブ座標セットDC-E、イニシアチヴのデータを使用」

 

「ドライブ正常に稼働中、1分後全艦ハイパースペースへ突入します」

 

下士官達の報告でブリッジはいっぱいだ。

 

独り言のようにジークハルトが言った。

 

「ついに始まるんだな…」

 

「ああ、総統の言う通り復讐戦だ」

 

「新時代の戦いでもある」

 

アデルハイン少佐もハイネクロイツ少佐も同じように続いた。

 

遂に艦隊の準備は整った。

 

そしてタイミングよく総統のこの言葉と共に艦隊は旅立つ。

 

『空を見上げて欲しい、栄光ある帝国の大艦隊が反逆者を討伐しに行く!皆手を振って見送って欲しい、帝国の意志が再び銀河に轟く姿を!!』

 

「全艦ハイパースペースへ!」

 

市民が手を振り声援を送る中軌道上の艦隊は皆ハイパースペースへ突入した。

 

青白い光に包まれ帝国艦隊は戦地へと出向いた。

 

始まってしまった。

 

再び銀河系に戦乱がもたらされた。

 

第二次銀河内戦の火蓋はこうして切られたのだ。

 

 

つづく




昨日言った通り今日は帝国の日!
さあみんなで祝いましょう!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。